(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定部は、前記第1の移動体の位置と移動方向と移動速度と、他の無線通信装置を搭載した第2の移動体の位置と移動方向と移動速度とから、自装置から送信される電波と、前記他の無線通信装置から送信される電波とが干渉する時間帯を予測し、前記時間帯では、送信される前記パケットの数を、複数の設定値のうち前記最小数により近い前記設定値まで減少させる、
請求項3に記載の無線通信システム。
前記決定部は、自装置と通信先装置との間に見通しがあると判定された場合、送信される前記パケットの数を、複数の設定値のうち前記最小数により近い前記設定値まで減少させる、
請求項3に記載の無線通信システム。
前記無線通信装置は、前記バッファの残量、前記第1の移動体の位置、前記第1の移動体の移動方向、前記第1の移動体の移動速度、他の無線通信装置を搭載した第2の移動体の位置、前記第2の移動体の移動方向、前記第2の移動体の移動速度、通信先装置から受信されたパケットの受信電波強度、及び、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)のトライアル回数のうち少なくとも1つを含む変数を使用して、前記制御周期あたりに送信される最適な前記パケットの数を示す設定値を学習する学習部を更に備え、
前記決定部は、前記変数により示される通信環境で、前記制御周期あたりに送信される前記パケットの数を、学習された前記設定値に決定する、
請求項1に記載の無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態の無線通信装置、無線通信システム及びプログラムについて説明する。
【0008】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態の無線通信システムの装置構成の例について説明する。
【0009】
[無線通信システムの装置構成の例]
図1は第1実施形態の無線通信システムの装置構成の例を示す図である。第1実施形態の無線通信システムは、無線通信装置1、中継装置2a〜2c、及び、制御装置3を備える。
【0010】
無線通信装置1は、移動体5に搭載される。移動体5のタイプは乗用、寝台用、荷物用など任意でよい。第1実施形態では、移動体5がエレベータの乗りかごである場合を例にして説明する。移動体5は、制御装置3により制御される巻上機4により昇降する。すなわち、
図1の例は、エレベータシステムに適用される無線通信システムの例を示す。
【0011】
また、中継装置2a〜2c、及び、制御装置3は、例えばバス又はネットワーク等の有線方式の通信路によって相互に通信可能なように接続されている。
【0012】
以下、中継装置2a〜2cを区別しない場合、単に中継装置2という。なお、中継装置2の数は、3台に限られず任意でよい。また、中継装置2と制御装置3との通信については、必ずしも
図1のように別々に分ける必要はなく、一部又は全部を共通にしてもよい。
【0013】
無線通信装置1は、中継装置2と無線通信する。無線通信装置1から中継装置2に送信されるパケット(無線信号)は任意でよい。無線通信装置1から中継装置2に送信されるパケットは、例えば安全信号、音声信号及び映像信号を含む。
【0014】
安全信号は、移動体5を安全に走行させるために必要な信号(移動体5の安全性を示す信号)である。実施形態の安全信号は、例えば移動体5のドアの開閉状態を示す情報、及び、各階のドアの開閉状態を示す情報等を含む。ドアの開閉状態は、例えばセンサ及びリレー回路等により検出される。
【0015】
中継装置2は、無線通信装置1からパケットを受信すると、当該パケットに含まれる安全信号及びシーケンス番号等のデータを制御装置3に送信する。中継装置2は、例えばシリアル伝送によって、制御装置3にデータを送信する。なお、中継装置2が制御装置3にデータを送信するトリガは、例えば制御装置3からリクエスト信号を受信した場合である。
【0016】
次に、第1実施形態の無線通信装置1の機能構成の例について説明する。
【0017】
[無線通信装置の機能構成の例]
図2は第1実施形態の無線通信装置1の機能構成の例を示す図である。第1実施形態の無線通信装置1は、センサ11、無線制御部12及び無線部13を備える。
【0018】
センサ11は、所定のタイミングでセンサ情報を取得する。センサ情報は任意でよい。センサ情報は、例えば移動体5のドアの開閉状態を示す情報等である。センサ情報を取得するためのトリガ信号は、例えば一定の周期信号でもよいし、パケットの送信タイミング等の必ずしも周期的とはいえない信号でもよい。なお、センサ11は、周期的に情報を取得する場合であっても、必ずしも制御装置3と同期する必要はない。
【0019】
次に、無線制御部12の動作について説明する。無線制御部12は、時間情報部121、生成部122、バッファ123、監視部124及び決定部125を備える。
【0020】
時間情報部121は時間情報を生成部122に入力する。時間情報は、必ずしも時刻又は日時を示す情報である必要はなく、時刻又は日時に相当するシーケンス番号(カウンタ値)でもよい。時間情報部121は、例えば一定時間毎、又は、送信毎にシーケンス番号をインクリメントする。シーケンス番号が一定時間毎にインクリメントされる場合は、例えば無線通信装置1の電源投入時からセンシング周期でシーケンス番号がインクリメントされる場合等である。
【0021】
生成部122は、センサ11から受け付けたセンサ情報と、時間情報部121から受け付けた時間情報(例えばシーケンス番号)とを含むパケットを生成する。なお、生成部122は、無線部13(無線機)に応じて、パケットのヘッダ及びフッタ等を追加する機能を有していてもよい。
【0022】
バッファ123は、生成部122により生成されたパケットを一時的に記憶する。バッファ123は、例えば無線部13が処理中の場合にパケットを記憶する。
【0023】
監視部124は、バッファ123の使用量(残量)と、無線部13側のバッファ131の使用量とを監視し、バッファ123の使用量と、バッファ131の使用量とを決定部125に入力する。
【0024】
なお
図2の例では、無線制御部12側のバッファ123、及び、無線部13側のバッファ131が個別に監視できる場合を示しているが、バッファ123及び131を区別して監視できるとは限らない。そのため、監視部124は、バッファ123及び131を区別して監視できない場合、例えばバッファ123及び131、並びに、バッファ123とバッファ131との間の通信路を、1つのバッファとみなして監視する。
【0025】
決定部125は、複数のパケットに含まれるデータ(上述の安全信号等)を多数決で判定する判定制御の制御(判定)周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定する。より具体的には、決定部125は、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を、判定制御に必要なパケットの最小数から、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数までの範囲内で決定する。
【0026】
次に、決定部125は、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数と、制御周期Tの長さとから、当該制御周期T内で送信されるパケットの送信タイミングを決定する。決定部125は、例えば制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信タイミングを、制御周期Tの長さを当該パケットの数で割ることにより得られた間隔(等間隔)に決定する。また例えば、決定部125は、制御周期Tの開始のタイミングから所定の間隔毎に、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数だけパケットを送信することにより、パケットの送信タイミングを決定する。すなわち、決定部125は、連続して複数回パケットを送信するか、間隔をあけて複数回パケットを送信するかを判断する。制御周期Tの開始のタイミングから所定の間隔毎に、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数だけパケットを送信する場合では、例えば制御周期Tの前半部分でパケットを送信し、制御周期Tの後半部分では、パケットを送信しない等の制御が可能になる。
【0027】
決定部125は、例えばバッファ123の使用量と、バッファ131の使用量とに基づいて制御周期Tあたりに送信されるパケットの数(パケットの送信タイミング)を決定する。バッファ123及び131が空に近いほど、パケットが処理されるまでの時間が短くなるとともに、バッファ123及び131がオーバーフローする確率が減少する。したがって、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数は、例えばバッファ123及び131の空き数の関数により決定される。すなわち、制御周期Tあたりに遅延なく送信可能なパケットの数は、バッファ123及び131の残量が少ない程、多くすることができる。
【0028】
ただし、決定部125は、バッファ123及び131の空き数を具体的に特定することができない場合には、パケットの送信依頼の応答時間の関数によって、バッファ123及び131の空き状態を推測する。パケットの送信依頼の応答時間の関数は、無線制御部12が、無線部13にパケットの送信処理を依頼してから、無線部13がパケットの送信処理を完了するまでの時間から、バッファ123及び131の空き状態を推測する関数である。決定部125は、推測された空き状態から、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定する。
【0029】
一方で、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数の決定(送信タイミングの決定)には一定の制約がある。それは、制御(判定)周期Tと、無線制御部12の処理速度と、無線部13の処理速度と、制御装置3(判定部33)の判定処理方法とによって定まる。まず、無線制御部12の処理速度と、無線部13の処理速度とによって、最小送信間隔Xminが決まる。次に、最小送信間隔Xminと制御周期Tとから、制御周期Tあたりに送信可能なパケット数Nmax=INT(T/Xmin)が決まる。ここでINTは、T/Xminの整数部分を示す。
【0030】
また、制御装置3の判定部33は、K個のパケットを用いた多数決により、L(1<L≦K)個以上のデータが一致したデータを採用する。Kは3以上の整数であり、後述するレジスタ部32から読み出されたデータの個数を表し、例えばK個のデータはシーケンス番号が連続する。判定処理に必要なパケットの最小数はL個となる。これは、L個のパケットに含まれるデータが全て一致している場合は、判定部33が、当該データを採用することができるためである。例えば過半数の場合、L=INT(K/2)+1である。
【0031】
多数決により判定する判定処理は、例えば移動体5の状態(例えばドアの開閉状態等)の判定処理である。移動体5の状態の判定処理では、まず、制御装置3の受信部31が、無線通信装置1から、決定部125により決定された数のパケットを制御周期T内に受信する。そして、制御装置3の判定部33が、決定部125により決定された数のパケットに含まれる移動体5の状態を示すデータのうち、最も多いデータが示す移動体5の状態により、移動体5の状態を判定する。
【0032】
以上のように、決定部125は、パケットを最大Nmax回送信できるところ、システム要件を充足する範囲でL回までは自由にパケットの送信回数を削減するとともに、送信タイミングを自由に決定できる。そのため、例えば許容遅延時間が閾値以下の場合には、生成部122及び決定部125は、バッファ123及び131の状態を効率化させつつ、できるだけ早くパケットの送信が行われるように制御する。例えば、移動体5から送信される信号として、安全信号以外の信号(例えば映像信号及び音声信号等)がある場合には、安全信号以外の信号を含むパケットについての処理(生成部122及び決定部125の処理)をしないことにより、安全信号を含むパケットをできるだけ早く送信できるようにする。これにより、例えばパケットの欠損確率を減少させつつ、システム全体(
図1の例ではエレベータシステム)の応答速度を向上させることができるので、当該システムの信頼性を向上させることができる。
【0033】
次に、無線部13の動作について説明する。無線部13は、バッファ131及び通信部132を備える。
【0034】
バッファ131は、無線制御部12から受け付けたパケットを一時的に記憶する。通信部132は、バッファ131からパケットを読み出し、決定部125により決定された数のパケットを、1つの制御周期T内で、ブロードキャスト送信する。
【0035】
次に、実施形態の制御装置3の機能構成の例について説明する。
【0036】
[制御装置の機能構成の例]
図3は第1実施形態の制御装置3の機能構成の例を示す図である。第1実施形態の制御装置3は、受信部31a〜31c、レジスタ部32、判定部33及び制御部34を備える。
【0037】
受信部31aは、中継装置2aから、上述の安全信号、及び、上述のシーケンス番号等を含むデータを受信する。同様に、受信部31bは、中継装置2bから、上述の安全信号、及び、上述のシーケンス番号等を含むデータを受信する。同様に、受信部31cは、中継装置2cから、上述の安全信号、及び、上述のシーケンス番号等を含むデータを受信する。
【0038】
以下、受信部31a〜31cを区別しない場合、単に受信部31という。
【0039】
受信部31によりデータが受信された時刻と、無線通信装置1によりデータが送信された時刻との差は、常に一定ではなく、無線環境、及び、中継装置2の負荷等に起因して変動する可能性がある。中継装置2の負荷は、例えば中継装置2に搭載されている無線機の負荷、及び、当該無線機の制御部として機能するCPU(Central Processing Unit)等の負荷である。
【0040】
レジスタ部32は、受信部31によりデータが受信された時刻と、無線通信装置1によりデータが送信された時刻との差を吸収する。
【0041】
図4は第1実施形態のレジスタ部32の動作の例を説明するための図である。受信部31は、中継装置2からデータを受信すると、当該データに含まれるシーケンス番号に基づくアドレスに当該データを書き込む。例えばアドレス0は、シーケンス番号Nに対応する。また、アドレス0の記憶領域は、中継装置2aから受信されたデータの記憶領域、中継装置2bから受信されたデータの記憶領域、及び、中継装置2cから受信されたデータの記憶領域を含む。データの読出しは、判定部33の判定タイミングに従って行われる。レジスタ部32は、例えば判定部33からデータの読出し要求があった場合に制御周期Tに含まれる全てのデータを読み出す。なお、レジスタ部32のデータは、制御周期T未満の読出し周期毎に読み出されてもよい。
【0042】
図3に戻り、判定部33は、レジスタ部32から読み出されたデータを、例えばシーケンス番号が連続したK個のデータのうち、半数を超えるL個が同一であれば、その一致した結果を判定結果として制御部34に入力する。
【0043】
制御部34は、判定部33から判定結果を受け付けると、当該判定結果に基づいて、巻上機4、及び、地上側(各階)のドアの開閉状態等を制御する。
【0044】
次に、第1実施形態の無線通信装置1の動作方法の例について説明する。
【0045】
[動作方法の例]
図5は第1実施形態の初期設定処理の例を示すフローチャートである。
図5の初期設定処理は、無線通信装置1の動作状態が初期状態S0のときに実行される。初期状態S0は、例えば無線通信装置1の起動直後等の動作状態である。はじめに、決定部125が、制御装置3(判定部33)の判定方法、及び、制御装置3(判定部33)の制御(判定)周期Tを決定する(ステップS1)。判定方法は、例えばK個のパケットを用いた多数決により、L(1<L≦K)個以上のデータが一致したデータを採用する方法である。
【0046】
次に、決定部125が、ステップS1の処理により決定された判定方法による判定制御に必要なパケットの最小数と、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数の初期値とを決定する(ステップS2)。
【0047】
初期値は、判定制御に必要なパケットの最小数から、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数までの範囲内で決定される。初期値は、例えば判定制御に必要なパケットの最小数と、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数との中間値である。また例えば、初期値は、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数である。
【0048】
ステップS2の処理が終了すると、無線通信装置1の動作状態は、初期状態S0から通常動作状態S3に遷移する。
【0049】
図6は第1実施形態のパケットの送信制御処理の例1を示すフローチャートである。
図6の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、バッファ123及び131の残量が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS11)。残量が閾値より小さくない場合(ステップS11,No)、処理は終了する。
【0050】
残量が閾値より小さい場合(ステップS11,Yes)、決定部125は、パケットの送信回数を減少させるように変更すると、制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信回数が、判定制御に必要なパケットの最小数より小さくなるか否かを判定する(ステップS12)。
【0051】
判定制御に必要なパケットの最小数より小さくならない場合(ステップS12,No)、決定部125は、制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信回数を減少させる(ステップS13)。決定部125は、例えば制御周期Tの送信間隔を長くすることにより、制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信回数を減少させる。
【0052】
判定制御に必要なパケットの最小数より小さくなる場合(ステップS12,Yes)、決定部125は、制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信回数を増加させる(ステップS14)。決定部125は、例えば制御周期Tの送信間隔を短くすることにより、制御周期Tあたりに送信されるパケットの送信回数を増加させる。
【0053】
ここで、ステップS14の処理を行う理由について説明する。変更後の送信回数が、判定制御に必要なパケットの最小数より小さくなる場合は、例えば、通信環境が悪い中で継続して送信回数を減少させ続けた場合等が想定される。そのため、現在の通信環境が悪いという理由で、パケットの送信を控えすぎると、この先、更に通信環境が悪くなった状況でパケットを送信しなければならなくなる可能性がある。よって、実施形態の無線通信装置1では、決定部125は、更に通信環境が悪くなった状況でパケットを送信しなければならなくなる状況を回避するため、ステップS14の処理を実行する。
【0054】
図7は第1実施形態のパケットの送信制御処理の例2を示すフローチャートである。
図7の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、上述のパケットの送信依頼の応答時間が閾値より大きいか否かを判定する(ステップS11−2)。応答時間が閾値より大きい場合(ステップS11−2,Yes)、処理はステップS12に進む。応答時間が閾値より大きくない場合(ステップS11−2,No)、処理は終了する。
【0055】
ステップS12〜ステップS14の説明は、
図6と同様なので省略する。
【0056】
以上、説明したように、第1実施形態の無線通信装置1では、決定部125が、複数のパケットに含まれるデータを多数決で判定する判定制御の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を、判定制御に必要なパケットの最小数から、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数までの範囲内で決定する。そして、通信部132が、決定された数のパケットを、制御周期T内で送信する。
【0057】
これにより第1実施形態の無線通信装置1によれば、制御に必要な所定の数以上のパケット(無線信号)を、移動体5から安定的に通信先装置(第1実施形態の例では中継装置2)に送信することができる。
【0058】
また、以上、説明したように、第1実施形態の無線通信システムは、移動体5(乗りかご)に設置される無線通信装置1と、地上側に設置される中継装置2と、制御装置3とを備える。中継装置2及び制御装置3は、有線ケーブルにより接続される。無線通信装置1は、少なくとも、上述の安全信号と、上述のシーケンス番号とを送信する。制御装置3は、複数の中継装置2から受信されたデータ(安全信号及びシーケンス番号)を、シーケンス番号によって整列する。そして、制御装置3は、制御周期T内に送受信可能な回数以下の任意な数のデータによって、移動体5の状態(例えばドアの開閉状態)の多数決判定を行う。そのため、無線通信装置1は、制御装置3が状態判定に使用するデータ数以上のデータを送信する。具体的には、無線通信装置1の決定部125は、複数のパケットに含まれるデータを多数決で判定する判定制御の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を、判定制御に必要なパケットの最小数から、制御周期Tあたりに送信可能なパケットの最大数までの範囲内で決定する。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の説明については省略し、第1実施形態と異なる箇所について説明する。
【0060】
[無線通信システムの装置構成の例]
図8は第2実施形態の無線通信システムの装置構成の例を示す図である。第2実施形態の無線通信システムは、無線通信装置1a及び1b、中継装置2a〜2c、並びに、制御装置3を備える。第2実施形態では、移動体5が2つある点が、第1実施形態とは異なる。なお、
図8の例では、移動体5が2つの場合を示しているが、移動体5の数は2つに限られず、3つ以上でもよい。
【0061】
無線通信装置1aは、移動体5aに搭載される。移動体5aは任意でよい。第2実施形態では、移動体5aがエレベータの乗りかごである場合を例にして説明する。移動体5aは、制御装置3により制御される巻上機4aにより昇降する。
【0062】
無線通信装置1bは、移動体5bに搭載される。移動体5bは任意でよい。第2実施形態では、移動体5bがエレベータの乗りかごである場合を例にして説明する。移動体5bは、制御装置3により制御される巻上機4bにより昇降する。
【0063】
以下、無線通信装置1a及び1bを区別しない場合、単に無線通信装置1という。同様に、移動体5a及び5bを区別しない場合、単に移動体5という。
【0064】
中継装置2及び制御装置3の説明は、
図1と同様なので省略する。
【0065】
次に、第2実施形態の無線通信装置1の機能構成の例について説明する。
【0066】
[無線通信装置の機能構成の例]
図9は第2実施形態の無線通信装置1の機能構成の例を示す図である。第2実施形態の無線通信装置1は、センサ11、無線制御部12及び無線部13を備える。
【0067】
センサ11の説明は、
図2と同様なので省略する。
【0068】
無線制御部12は、時間情報部121、生成部122、バッファ123、監視部124、決定部125、取得部126、測定部127及び記憶部128を備える。すなわち、第2実施形態では、取得部126、測定部127及び記憶部128が追加されている点が、第1実施形態とは異なる。
【0069】
取得部126は、移動体5の状態を示す状態情報を取得する。状態情報は、例えば移動体5の移動情報、及び、移動体5のドアの開閉状態等を含む。また、移動情報は、例えば移動体5の位置、移動方向及び移動速度等を含む。移動体5の移動情報には、自装置が搭載された移動体5の移動情報だけでなく、隣接する移動体5等の他の移動体5の移動情報も含む。
【0070】
取得部126は、例えば制御装置3から中継装置2を介して、他の移動体5の移動情報を取得してもよい。
【0071】
また例えば、取得部126は、中継装置2により取得された受信電波強度から、他の移動体5の移動情報を取得(推測)してもよい。具体的には、中継装置2が、各移動体5に搭載された無線通信装置1から送信されたパケット(例えばビーコン等の制御パケット、及び、送信対象データを含むデータパケット等)の受信電波強度を取得し、当該受信電波強度を無線通信装置1に送信する。そして、無線通信装置1の取得部126が、中継装置2から受信された受信電波強度から、他の移動体5の移動情報を推測する。
【0072】
なお、取得部126は、自装置が搭載された移動体5の位置は、移動体5に搭載されたセンサ(例えば無線通信装置1のセンサ11等)により取得してもよい。
【0073】
測定部127は、パケットの受信電波強度、パケットの送信に要した時間、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)のトライアル回数等から、送信に使用されるチャネルの使用状況等の無線環境を測定する。
【0074】
記憶部128は情報を記憶する。記憶部128に記憶される情報は、例えば中継装置2の設置位置、及び、中継装置2で使用される無線機の特性等を示す環境情報である。無線機の特性は、例えば無線機が、特定のチャネルを使用した場合に他のチャネルにどの程度の干渉を及ぼすか等の無線機特有の情報である。記憶部128は、例えば中継装置2の設置時の環境を示す環境情報を記憶してもよい。
【0075】
なお、メンテナンス状況により昇降路内の設置物が変更されることも考えられるから、記憶部128に記憶されている環境情報を、後から変更できるようにすることがより望ましい。環境情報の変更方法には、例えば情報端末を無線通信装置1に接続して、当該情報端末から環境情報を書き換える方法がある。また例えば、環境情報の変更方法には、サービスセンター等から無線通信装置1にリモート接続し、当該サービスセンターから環境情報を書き換える方法がある。
【0076】
第2実施形態の決定部125は、取得部126により取得された移動体5の状態情報を使用して、上述の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定することができる。
【0077】
無線通信装置1aの決定部125は、例えば移動体5a(第1の移動体)の位置と移動方向と移動速度と、無線通信装置1bを搭載した移動体5b(第2の移動体)の位置と移動方向と移動速度とから、自装置から送信される電波と、無線通信装置1bから送信される電波とが干渉する時間帯を予測し、当該時間帯では、通信部132から送信されるパケットの数を、複数の設定値のうち上述の最小数により近い設定値まで減少させる。
【0078】
また例えば、決定部125は、移動体5のドアが開いている場合、通信部132から送信されるパケットの数を、複数の設定値のうち上述の最小数により近い設定値まで減少させる。
【0079】
ここで、移動体5の状態情報を使用してパケットの送信制御処理をする場合の例について、
図10及び
図11を参照して説明する。
【0080】
図10は第2実施形態のパケットの送信制御処理の例1を示すフローチャートである。
図10の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、移動体5のドアが開いているか否かを判定する(ステップS11−3)。
【0081】
ここで、ステップS11−3の処理を実行する理由について説明する。移動体5が停止階で停止し、ドアが開いている場合には、昇降路外の無線による干渉が発生しうる。また、ドアが開いている場合には、巻上機4がロックされており、上述の安全信号を送信する必要性が走行時に比べると低い。そのため、移動体5が停止階で停止している間には、パケットの送信頻度を減らすことが可能である。
【0082】
移動体5のドアが開いている場合(ステップS11−3,Yes)、処理はステップS12に進む。移動体5のドアが開いていない場合(ステップS11−3,No)、処理は終了する。
【0083】
ステップS12〜ステップS14の説明は、
図6と同様なので省略する。
【0084】
なお、生成部122は、例えば移動体5が停止階で停止している間は、安全信号を送信するためのパケットの生成を停止してもよい。これにより、バッファ123及び131に既に記憶されたパケットの送信処理が終われば、バッファ123及び131を空にすることができる。送信を停止又は送信回数を減少させていた状態から、通常の送信状態に復帰させるトリガとしては、バッファ123及び131が空になったことを示す信号、移動体5のドアを自働で閉めるためのタイマ、制御装置3等の地上側からの信号、又は、これらの組み合わせを使用することができる。
【0085】
図11は第2実施形態のパケットの送信制御処理の例2を示すフローチャートである。
図11の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、他の移動体5が接近しているか否かを判定する(ステップS11−4)。
【0086】
ここで、ステップS11−4の処理を実行する理由について説明する。他の移動体5に搭載されている他の無線通信装置1により使用されるチャネルが、別のチャネルになっており、電波の干渉がないことが最も望ましい。しかし、チャネル数には限界があるため、隣接する移動体5が複数存在する場合には、隣接する移動体5に搭載された無線通信装置1の間で一部又は全部のチャネルが重複することが考えられる。したがって、この電波の干渉の影響を軽減させる必要がある。移動体5がエレベータの乗りかごである場合に特に問題となるのは、隣接された乗りかごが近接する場合と、隣接された乗りかごに搭載された無線通信装置1が中継装置2と通信リンクを確立する場合である。
【0087】
移動体5毎に使用されるチャネルを割り振ることができれば、当該移動体5に搭載された無線通信装置1の間で電波が干渉する可能性は小さい。しかし、システム要件、及び、使用される無線機規格によっては、チャネルを十分に確保することができない場合がある。チャネルを十分に確保することができない場合には、隣接する移動体5の間で電波が干渉する可能性が高い。
【0088】
そこで、決定部125は、隣接する移動体5が近接する場合には、隣接する移動体5で使用されるチャネル、隣接する移動体5で使用される無線機の他チャネルへの干渉の度合い、及び、自装置が搭載された移動体5との距離によって、上述の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定する。決定部125は、例えば隣接する移動体5が近接する場合を、当該移動体5との距離が距離閾値以下となるか否かにより判定する。
【0089】
他の移動体5との距離が短いほど、電波干渉の影響が多いものと予想される。したがって、より具体的には、自装置が搭載された移動体5との距離が距離閾値以下であり、かつ、自装置に使用されているチャネルへの電波の干渉の影響が干渉閾値より大きい場合には、バッファ123及び131のオーバーフローが発生する可能性が高くなる。そのため、決定部125は、隣接する移動体5が近接する場合、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を減少させる。
【0090】
また、無線通信装置1と中継装置2の間で通信ができなくなった場合には、通信のリンクが切断される。そのため、無線通信装置1は、通信リンクが切断された中継装置2と、再度、通信するためには、通信リンクを再確立させる必要がある。通信リンクを確立するためには、管理パケットによる通信が必要である。そのため、無線通信装置1が、通信リンクを確立する間は、当該無線通信装置1は隣接する移動体5に搭載された無線通信装置1に対する干渉源となりうる。
【0091】
したがって、通信リンク切れが疑われる無線通信装置1と中継装置2との間で通信が発生することが見込まれる位置に、他の移動体5が侵入した場合には、当該移動体5に搭載された無線通信装置1が、CSMA/CAによって送信できない確率が上昇する。CSMA/CAによって送信できない場合には、バッファ123及び131にパケットが蓄積されることになる。このため、他の移動体5に搭載された無線通信装置1が通信リンクを確立する間は、バッファ123及び131がオーバーフローする確率が高まる。
【0092】
以上の理由により、決定部125は、隣接する移動体5が近接する場合、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を減少させる。
【0093】
他の移動体5が接近している場合(ステップS11−4,Yes)、処理はステップS12に進む。他の移動体5が接近していない場合(ステップS11−4,No)、処理は終了する。
【0094】
ステップS12〜ステップS14の説明は、
図6と同様なので省略する。
【0095】
また、第2実施形態の決定部125は、無線通信装置1と中継装置2との間が見通し環境か否か(LOS(Line Of Sight)/NLOS(Non Line Of Sight))、CSMA/CAのトライアル数、及び、受信電波強度も使用して、上述の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定することができる。
【0096】
なお、測定部127により測定された受信電波強度は、他の移動体5の位置を取得できない場合に、当該他の移動体5の位置の予測に使用される。また例えば、測定部127により測定された受信電波強度は、LOS環境(見通し環境)とNLOS環境(見通し外環境)との境界領域の整合性を事後的に確認するときに使用される。
【0097】
決定部125は、例えば自装置と通信先装置との間に見通しがあると判定された場合、通信部132から送信されるパケットの数を、複数の設定値のうち上述の最小数により近い設定値まで減少させる。
【0098】
ここで、見通し環境か否かを判定してパケットの送信制御処理をする場合の例について、
図12を参照して説明する。また、CSMA/CAのトライアル数を使用してパケットの送信制御処理をする場合の例について、
図13を参照して説明する。
【0099】
図12は第2実施形態のパケットの送信制御処理の例3を示すフローチャートである。
図12の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、見通しがあるか否かを判定する(ステップS11−5)。
【0100】
ここで、ステップS11−5の処理を実行する理由について説明する。見通し環境か否かは、記憶部128に記憶された上述の環境情報、自装置が搭載された移動体5の位置、及び、他の移動体5の位置によって決まる。より具体的には、環境情報からLOS環境として特定される領域、及び、環境情報からNLOS環境として特定される領域がある。また、環境情報から直ちに見通し環境を特定できず、LOS環境であるか否かは、他の移動体5の位置にも依存する領域がある。
【0101】
LOS環境では、パケット誤りが少ない。そのため、決定部125は、判定部33の判定制御に必要なパケットの最小数により近い数まで、パケットの送信回数を減少させることができる。
【0102】
一方、NLOS環境では、LOS環境に対してパケットの誤り率が高い。そのため、NLOS環境では、LOS環境の場合よりも多くのパケットを送信する必要性がある。したがって、決定部125は、例えば自装置が搭載された移動体5が、必ずNLOS環境になる領域にいるとき、パケットの送信回数を増加させる。また、決定部125は、自装置が搭載された移動体5が、NLOS環境になるか否かが他の移動体5の位置により変わる領域にいる場合、他の移動体5の位置も参照して、パケットの送信回数を決定する。
【0103】
なお、決定部125は、移動体5の移動方向、及び、移動体5の速度を考慮して、制御周期T内のパケットの送信開始タイミングではLOS環境になりそうな場合は、見通し環境の判定時ではNLOS環境であっても、送信回数を減少させてもよい。
【0104】
見通しがある場合(ステップS11−5,Yes)、処理はステップS12に進む。見通しがない場合(ステップS11−5,No)、処理はステップS14に進む。
【0105】
ステップS12〜ステップS14の説明は、
図6と同様なので省略する。
【0106】
図13は第2実施形態のパケットの送信制御処理の例4を示すフローチャートである。
図13の送信制御処理は、無線通信装置1の動作状態が通常動作状態S3のときに実行される。はじめに、決定部125が、直近のCSMA/CAトライアル数が閾値より大きいか否かを判定する(ステップS11−6)。
【0107】
ここで、ステップS11−6の処理を実行する理由について説明する。CSMA/CAのトライアル数が閾値より大きいということは、他の移動体5に搭載された無線通信装置1等の他の無線機からの電波干渉があることを示している。そして、電波干渉が大きい場合には、パケット誤りの確率が高いため、制御周期T内に送信するパケット数は多いほうが望ましいが、同時にパケットの送信までに時間を要することが予想される。そのため、決定部125は、直近のCSMA/CAトライアル数が閾値より大きい場合、判定部33の判定制御に必要なパケットの最小数により近い数まで、パケットの送信回数を減少させることができる。
【0108】
直近のCSMA/CAトライアル数が閾値より大きい場合(ステップS11−6,Yes)、処理はステップS12に進む。直近のCSMA/CAトライアル数が閾値より大きくない場合(ステップS11−6,No)、処理は終了する。
【0109】
ステップS12〜ステップS14の説明は、
図6と同様なので省略する。
【0110】
以上、説明したように、第2実施形態の無線通信装置1では、決定部125が、無線通信装置1と中継装置2との間が見通し環境か否か、CSMA/CAのトライアル数、及び、受信電波強度も使用して、上述の制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定する。
【0111】
第2実施形態の無線通信装置1によれば、より多岐に渡る送信制御が可能になるので、制御に必要な所定の数以上のパケット(無線信号)を、第1実施形態の場合よりも、より安定的に移動体5から通信先装置(第2実施形態の例では中継装置2)に送信することができる。
【0112】
(第2実施形態の変形例1)
次に、第2実施形態の変形例1について説明する。第2実施形態の変形例1の説明では、第2実施形態と同様の説明については省略し、第2実施形態と異なる箇所について説明する。第2実施形態の変形例1では、無線部13(無線機)を複数、備える場合について説明する。
【0113】
[無線通信装置の機能構成の例]
図14は第2実施形態の変形例1の無線通信装置1の機能構成の例を示す図である。第2実施形態の変形例1の無線通信装置1は、センサ11、無線制御部12、無線部13a及び無線部13bを備える。
【0114】
無線制御部12は、時間情報部121、生成部122、バッファ123a及び123b、監視部124a及び124b、決定部125、取得部126、測定部127a及び127b、並びに、記憶部128を備える。
【0115】
無線部13aは、バッファ131a及び通信部132aを備える。無線部13bは、バッファ131b及び通信部132bを備える。
【0116】
すなわち、
図14では、通信機能に係る機能の構成が冗長化されている点が、
図2の場合と異なる。決定部125は、第2実施形態の場合と同様にして、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を決定する。そして、決定部125は、バッファ123a及びにバッファ123bのうち、より空いている方のバッファ123に、より多くのパケットを記憶する。なお、決定部125は、無線部13側のバッファ131の残量も考慮して、よりバッファ(バッファ123及び131)が空いている方に、より多くのパケットを記憶してもよい。
【0117】
第2実施形態の変形例1では、送信側の無線通信装置1において、バッファ123及び131の状態が効率化されるため、パケットの欠損確率を減少させることができ、無線通信システム全体の信頼性を向上させることができる。また、複数の無線部13が搭載されているので、異なる通信規格、又は、異なる周波数を使用することにより、通信経路を冗長化してもよい。通信経路が冗長化されることにより、無線通信の信頼性を向上させることができる。
【0118】
なお、
図14の例では、無線部13が2つの場合を示しているが、無線通信装置1に3つ以上の無線部13が搭載されていてもよい。
【0119】
(第2実施形態の変形例2)
次に、第2実施形態の変形例2について説明する。第2実施形態の変形例2の説明では、第2実施形態と同様の説明については省略し、第2実施形態と異なる箇所について説明する。第2実施形態の変形例2では、学習部を更に備える場合について説明する。
【0120】
例えば無線通信装置1に搭載されたセンサ11等の移動体5に設置されているセンサは、経年劣化等の影響によって示す値が変化する可能性がある。そのため、無線制御部12で制御に使用されている各種の評価関数が、不適切になる可能性がある。そこで、バッファ123及び131のオーバーフローの発生を防ぐために、上述の制御周期Tあたりに送信される最適なパケットの数を学習する学習部を備える場合について説明する。
【0121】
[無線通信装置の機能構成の例]
図15は第2実施形態の変形例2の無線通信装置1の機能構成の例を示す図である。第2実施形態の変形例2の無線通信装置1は、センサ11、無線制御部12、無線部13を備える。無線制御部12は、時間情報部121、生成部122、バッファ123、監視部124、決定部125、取得部126、測定部127、記憶部128及び学習部129を備える。無線部13は、バッファ131及び通信部132を備える。
【0122】
学習部129は、バッファ123及び131の残量、移動体5a(第1の移動体)の位置、移動体5aの移動方向、移動体5aの移動速度、無線通信装置1bを搭載した移動体5b(第2の移動体)の位置、移動体5bの移動方向、移動体5bの移動速度、中継装置2(通信先装置)から受信されたパケットの受信電波強度、並びに、CSMA/CAのトライアル回数のうち少なくとも1つを含む変数を使用して、制御周期Tあたりに送信される最適なパケットの数を示す設定値を学習する。
【0123】
決定部125は、学習に使用される変数により示される通信環境で、制御周期Tあたりに送信されるパケットの数を、学習された設定値に決定する。
【0124】
なお、上述の学習部129は、自装置が搭載された移動体5で閉じた学習系を構築することもできるし、無線通信システム全体に係る情報も含む学習系を構築してもよい。例えば、学習部129は、無線通信システム上の遅延等を制御装置3から取得することができる場合は、当該遅延を最小化させることを含む学習系を構築してもよい。
【0125】
(第2実施形態の変形例3)
次に、第2実施形態の変形例3について説明する。第2実施形態の変形例3の説明では、第2実施形態と同様の説明については省略し、第2実施形態と異なる箇所について説明する。第2実施形態の変形例3は、第2実施形態の変形例1及び2を組み合わせた場合を示す。
【0126】
[無線通信装置の機能構成の例]
図16は第2実施形態の変形例3の無線通信装置1の機能構成の例を示す図である。第2実施形態の変形例3の無線通信装置1は、センサ11、無線制御部12、無線部13a及び無線部13bを備える。
【0127】
無線制御部12は、時間情報部121、生成部122、バッファ123a及び123b、監視部124a及び124b、決定部125、取得部126、測定部127a及び127b、記憶部128、並びに、学習部129を備える。
【0128】
無線部13aは、バッファ131a及び通信部132aを備える。無線部13bは、バッファ131b及び通信部132bを備える。
【0129】
各機能ブロックの説明は、上述の第2実施形態の変形例1及び2と同様なので省略する。第2実施形態の変形例3によれば、通信機能に係る機能ブロックが冗長化されている場合でも、学習部129を備えることにより、上述の制御周期Tあたりに送信される最適なパケットの数を学習させることができる。
【0130】
最後に、第1及び第2実施形態の無線通信装置1のハードウェア構成の例について説明する。なお、第1及び第2実施形態の中継装置2のハードウェア構成も無線通信装置1のハードウェア構成と同様である。
【0131】
[ハードウェア構成の例]
図17は第1及び第2実施形態の無線通信装置1のハードウェア構成の例を示す図である。無線通信装置1は、制御装置201、主記憶装置202、補助記憶装置203、表示装置204、入力装置205及び通信装置206を備える。制御装置201、主記憶装置202、補助記憶装置203、表示装置204、入力装置205及び通信装置206は、バス210を介して接続されている。
【0132】
なお、表示装置204及び入力装置205は備えていなくてもよい。表示装置204及び入力装置205を備えていない場合は、例えば情報端末等を接続することにより、無線通信装置1の状態等を確認する。
【0133】
制御装置201は補助記憶装置203から主記憶装置202に読み出されたプログラムを実行する。制御装置201は、例えばCPU等の1以上のプロセッサである。主記憶装置202はROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)等のメモリである。補助記憶装置203はメモリカード、及び、HDD(Hard Disk Drive)等である。
【0134】
表示装置204は情報を表示する。表示装置204は、例えば液晶ディスプレイである。入力装置205は、情報の入力を受け付ける。入力装置205は、例えばハードウェアキー等である。なお表示装置204及び入力装置205は、表示機能と入力機能とを兼ねる液晶タッチパネル等でもよい。通信装置206は他の装置と通信する。
【0135】
無線通信装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、メモリカード、CD−R、及び、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供される。
【0136】
また無線通信装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また無線通信装置1が実行するプログラムを、ダウンロードさせずにインターネット等のネットワーク経由で提供するように構成してもよい。
【0137】
また無線通信装置1で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0138】
無線通信装置1で実行されるプログラムは、無線通信装置1の機能のうち、プログラムにより実現可能な機能を含むモジュール構成となっている。
【0139】
プログラムにより実現される機能は、制御装置201が補助記憶装置203等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、主記憶装置202にロードされる。すなわちプログラムにより実現される機能は、主記憶装置202上に生成される。
【0140】
なお無線通信装置1の機能の一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよい。ICは、例えば専用の処理を実行するプロセッサである。
【0141】
また複数のプロセッサを用いて各機能を実現する場合、各プロセッサは、各機能のうち1つを実現してもよいし、各機能のうち2以上を実現してもよい。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。