特許第6505840号(P6505840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6505840風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505840
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20060101AFI20190415BHJP
   B63B 9/06 20060101ALI20190415BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   B63B35/00 T
   B63B9/06 B
   B63B35/44 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-528843(P2017-528843)
(86)(22)【出願日】2015年9月23日
(65)【公表番号】特表2018-502761(P2018-502761A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】ES2015070691
(87)【国際公開番号】WO2016083634
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】P201431758
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】517182815
【氏名又は名称】サイテック オフショア テクノロジーズ エセ.エレ.ウー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガルドス トバリナ,アルベルト
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19727330(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19846796(DE,A1)
【文献】 国際公開第2001/73292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63B 9/06
B63B 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームであって、少なくとも、
風力タービン(2)のための支持タワー(1)と、
同一の2つの浮体要素(3)と、
上記支持タワー(1)と上記2つの浮体要素(3)とを連結するバー構造体(5)と、
上記2つの浮体要素(3)に付帯し、かつ、当該2つの浮体要素(3)の直下に配される平らな安定化要素(4)と、を備え、
上記2つの浮体要素(3)はそれぞれ、鉄筋コンクリート製又はプレストレスト・コンクリート製であり、円筒形状であり、平行であり、端部が閉じられており、
上記安定化要素(4)は、2つの略矩形状の第1コンクリートスラブ(4a)を備え、
上記第1コンクリートスラブ(4a)は、堅固又は軽量なリブ構造であり、上記2つの浮体要素(3)の軸に対して垂直に配されており、補助バー構造体(7)を用いて当該2つの浮体要素(3)に連結していることを特徴とする浮体式プラットフォーム。
【請求項2】
上記安定化要素(4)は、2つの略矩形状の第2コンクリートスラブ(4b)を備え、
上記第2コンクリートスラブ(4b)は、堅固又は軽量なリブ構造であり、上記2つの浮体要素(3)の外側において、当該2つの浮体要素(3)の軸に対して平行に配されており、上記補助バー構造体(7)を用いて上記2つの浮体要素(3)に連結していることを特徴とする請求項1に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項3】
上記2つの浮体要素(3)はそれぞれ、卵型の断面を有し、凸形状により端部が閉じられており、横方向の仕切り又は隔壁によって、コンパートメント化され、かつ内部が補剛されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項4】
上記バー構造体(5)及び上記支持タワー(1)は鉄筋コンクリート製又はプレストレスト・コンクリート製であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項5】
上記バー構造体(5)及び上記支持タワー(1)は鋼鉄製であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項6】
上記バー構造体(5)及び上記支持タワー(1)は、鋼鉄とコンクリートとの混合体であることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項7】
ブイ(8)を組み込んでおり、
上記ブイ(8)は、海底上のアンカー手段、信号を電気的に送受信する回転手段、及び/又は、上記浮体式プラットフォーム自身の係留(12)を連結するスイベル・ジョイント(13)を備えた係留用回転手段を備えることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項8】
海底への上記アンカー手段は、自身を海底に固定するための、対応する、アンカー(14)、コンクリートブロック、及び/又は杭を有する、少なくとも3つの係留索(9)を備えることを特徴とする請求項7に記載の浮体式プラットフォーム。
【請求項9】
上記回転手段は、
上記ブイ(8)上又は上記浮体式プラットフォーム上に配されたスイベル・コネクタ(10)と、海底から延び、上記浮体式プラットフォームに達するケーブル(11)と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の浮体式プラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、従来使用されてきた技術を超える顕著な革新及び利点を組み込んだ、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームである。
【0002】
具体的に、本発明は、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの新技術を提案する。その特定の構成により、現在開発中の試作品に対して費用が大幅に削減される。当該浮体式プラットフォームは、喫水の低下により、水深が浅い場所、及び水深が深い場所のいずれでもよりよく使用される。そして、当該浮体式プラットフォームは、極めて容易に製造、及び運搬される。
【背景技術】
【0003】
風力タービンを用いて電気エネルギーを生成する風力エネルギーの利用は、現在の最新技術において知られている。近年、その開発は優先度が高く、主として地上の風力発電ファームが使用されている。
【0004】
地上の風力タービンが幾つかの環境問題を抱え、海上の風力がより大きなエネルギーポテンシャルを備えていることから、風力タービンを沿岸部で活用する研究が進められている。上記風力タービンは、浅瀬では海底に直接取り付けられる。あるいは、上記風力タービンは、幾つかの異なるタイプの浮体式プラットフォームに取り付けられる。当該浮体式プラットフォームは、様々なアンカーシステムを用いて、当該プラットフォームが位置する場所に固定される。
【0005】
現在開発されている、風力タービンを支持するための様々なタイプの浮体式プラットフォームは、海底油田、及び海底ガス田において既に利用されているプラットフォームに由来する。海底油田、及び海底ガス田で利用される浮体式プラットフォームは、安定性に対する厳しい要求を満たし、波の作用に対してほとんど動かない。
【0006】
具体的に、高い安定性と少ない動きを実現するための基本的な方策を検討すると、下記の3つのグループに区別できる。
・主として係留索によるプラットフォームの安定化
緊張係留索は、海底に対してプラットフォームを固定し、実質的にプラットフォームを動かなくする。これによりプラットフォームが安定する。しかし、緊張係留索を用いたプラットフォームの安定化は、(1)運搬中に補助浮体システムを必要とする、(2)プラットフォームを位置決めし、プラットフォームを海底に固定する作業が複雑、(3)設置コストが極めて高い、という事実ゆえに不利である。
・主としてバラストによるプラットフォームの安定化
このプラットフォームは、水面上に表出する表面が少ないことが特徴である。これにより、プラットフォームに対する波の作用が抑えられて、プラットフォームの動きも抑えられる。プラットフォームが位置決めされると、浮体要素はほとんど水中に沈む。また、当該浮体要素は、重心位置を下げるために強力なバラストを備え、これによりプラットフォームが安定する。
【0007】
このグループでは、単一の極めて長い垂直円筒浮体要素で構成されたタイプのプラットフォームが最もシンプルである。円柱ブイのように、風力タービンが当該浮体要素の上部に配置され、バラストは、重心位置を下げるために当該浮体要素の下部に配置される。STATOIL社によるHYWINDデザインが代表例である。同タイプに係る他の特許として、例えば、国際出願公開公報第2010/106208号、及び国際出願公開公報第2013/093160号がある。国際出願公開公報第2012/13116号は、浮体垂直シリンダの下部に水平片持ち梁要素が配され、浮体垂直円筒体の端部にアンカーシステムが固定され、これにより風の方向を向くことが可能な変形例を開示する。
【0008】
このタイプのプラットフォームの中には、本発明と同一の出願人によるスペイン特許公報第2440984号に記載されたプラットフォームも含まれる。そのプラットフォームは、少なくとも2つの浮体円筒体と、当該浮体に同時に連結したブレース構造と、上記浮体及び/又は上記ブレース構造に配置・固定された風力タービンタワーと、を備える。上記プラットフォームは、補助構造によってプラットフォームに固定された、コンクリート製の平衡錘を備える。当該補助構造は、下方領域に向かって突出し、上記プラットフォームの喫水を実質的に増加させる。
【0009】
バラストによるプラットフォームは、とりわけ、(1)喫水が大きい、(2)運搬作業、及び設置作業が複雑である、(3)コストが高い、という点が不利である。
【0010】
このグループには半浸水型プラットフォームも含まれる。半浸水型プラットフォームでは、風力タービンを支持する複数の垂直支柱に対応して水面上に表出する表面が少なく、通常、浮体要素の大部分が浸水している。
【0011】
メタセンター高さ(傾心高さ)を増加させるために支柱間の間隔を保ち、重心をメタセンターの下方に置くために補助的なバラストを使用することにより、プラットフォームが安定する。
【0012】
様々なタイプのプラットフォームが開発されており、それらは、通常、互いに支持し合う複数の垂直円柱浮体要素で構成されている。WINDFLOAT及びTRI-SYM型、又はドイツ特許公報第2010058号に記載されたプラットフォームは、3つの垂直円柱体を有する半浸水型プラットフォームの例である。
【0013】
米国特許出願公開公報第2012/0103244号は、4つの垂直浮揚性支柱を有する半浸水型プラットフォームに対応する。4つの垂直浮揚性支柱のうちの3つは、正三角形の頂点に配置されており、4つ目は中央に配置されている。4つ目の垂直浮揚性支柱が上記風力タービンタワーを支持する。
【0014】
国際出願公開公報第2002/10589号は、半浸水型プラットフォームの一つを提示する。当該半浸水型プラットフォームは、中央浮体チャンバー及び緊張垂直アンカーケーブルを有する。緊張垂直アンカーケーブルもまた、補助的なアンカー索システムとともに中央に位置する。これにより、国際出願公開公報第2002/10589号に記載されたプラットフォームは、半浸水型プラットフォームの組み合わせとして分類され、かつ、張力アンカー索タイプのプラットフォームにより安定する。
【0015】
さらに、米国特許出願公開公報第2011/0155038号は、3つ以上の垂直円筒浮体を有するプラットフォームを提示する。上記3つ以上の垂直円筒浮体は、張力ケーブルにより海底につながれている。
【0016】
これらの半浸水型プラットフォームは、高コスト、及び、通常は高く保たれる喫水高さが不利である。喫水高さは、海上輸送及び設置作業の複雑さにより生ずる。
・主として浮力によるプラットフォームの安定化
喫水を低下させるために、バラストの使用をできる限り控える必要がある。その場合、バージのようにメタセンターを重心よりも高い位置に保持するために、水面上に表出する表面をできるだけ大きくして安定化を図ることが一つの選択肢となる。さらに、波に誘発されるプラットフォームの動きをできる限り抑えることを目的として、波の周期から十分に離れた振動周期を有する、プラットフォームの構造、形状、配置、及び物理的特性を獲得するという点でさらなる課題がある。
【0017】
係留設備を備えたバージのケースを考える。当該係留設備は、バージの位置を保持し、係留ラインの分散システムを用いることで恒久的及び実質的に固定方向を維持する。このケースにおいて、風及び波は、バージのあらゆる水平軸に作用しうる。これが、それら水平軸がすべての方向に対して同様の慣性又は反応特性を備えていなければならない理由である。ピルボックス型フローター、又は日本国出願公報特開2004‐251139号がこのアプローチに相当する。ピルボックス型フローターは、四角または円形の水平断面を有する。日本国出願公報特開2004‐251139号は、Oリング状の単胴型フローターを開示する。
【0018】
次のような可能性もある。具体的に、バージは係留によって固定点に位置する。バージは、風向計のように、風向きに合わせるために上記固定点の周囲を回転する。この場合、バージは、好ましくは一方向において波及び風の作用を受ける。これが、主要水平長手軸のアライメント、及び上記主要水平長手軸に対する水平面上の垂直方向のアライメントに応じて慣性及び反応特性が大きく相違する構造体を検討する価値がある理由である。
【0019】
これらのタイプのプラットフォームは、安定性を考慮した場合に実現可能である。しかしながら、同時に、水平軸周りの振動周期は、波動周波数域の最大エネルギーバンドに位置する。その結果、タービン高さの動きが運転要件と相容れなくなる。それゆえ、これらのタイプは技術的に不適切であると考えられてきた。
【0020】
使用される材料について、コンクリートははるかに耐久性があり経済的に有利な材料であるという事実にもかかわらず、今日に至るまで提案されてきたほぼすべての浮体式フラットフォームは鋼鉄製である。しかしながら、コンクリートにも幾つかの欠点が存在することも事実である。例えば、(1)重量、(2)完全又はほぼ不完全な抗張力の欠如、(3)曲げ応力にさらされたときのコンクリートのひび割れ、である。これが、主に圧縮によって機能する構造要素と安定性とを目的としたときに、重量が利点となる場合、又は重量が決定的要因とはならない場合に限ってコンクリートが使用されている理由である。
【0021】
本発明は、風力エネルギーを利用する特定のプラットフォーム、及び対応するアンカーシステムによって現在の上記課題を解決することを目的とする。これにより、上記特定のタイプのプラットフォーム、及び対応するアンカーシステムを、シンプル、実用的、かつ経済的に、組み立て、設置、使用、メンテナンスすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際出願公開公報第2010/106208号
【特許文献2】国際出願公開公報第2013/093160号
【特許文献3】国際出願公開公報第2012/13116号
【特許文献4】スペイン特許公報第2440984号
【特許文献5】ドイツ特許公報第2010058号
【特許文献6】米国特許出願公開公報第2012/0103244号
【特許文献7】国際出願公開公報第2002/10589号
【特許文献8】国際出願公開公報第2002/10589号
【特許文献9】米国特許出願公開公報第2011/0155038号
【特許文献10】日本国出願公報特開2004‐251139号
【特許文献11】日本国出願公報特開2004‐251139号
【発明の概要】
【0023】
本発明は、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームを提供することを目的として開発された。上記浮体式プラットフォームは、エネルギーを生成するために風力タービンを使用するタイプであり、浮遊のみにより安定を図る洋上プラットフォームのグループに含まれる。上記浮体式プラットフォームは、固定点への係留により位置決めされ、風向きに合わせるために上記固定点の周囲を回転することができる。
【0024】
上記浮体式プラットフォームは、請求項1の前半部分で説明するタイプのプラットフォームであり、風力タービンを有する支持タワーと、円筒形状の2つの浮体要素と、を備える。上記2つの浮体要素は、同一であり、アライメントの主要縦軸に対して水平かつ平行である。上記支持タワーと上記2つの浮体要素は、バー(棒)構造体によって互いに連結する。上記2つの浮体要素は、水中に沈む安定化要素に連結する。
【0025】
前段に示すように、浮遊により安定化を図るプラットフォームが直面する課題は、許容範囲内で安定し、波の周期から十分に離れた振動周期を有するとともに、プラットフォームの、ある構造、形状、配置を得ることにある。
【0026】
本発明は、ツイン・ハル構造(双胴構造)のプラットフォームを提案する。当該プラットフォームは、水平で平行な円筒形の、同一の2つの浮体要素を備える。当該2つの浮体要素は、卵型の断面を有し、端部が閉じられている。これにより、同様の浮体表面を有するモノ・ハル(単胴構造)のプラットフォームと比較して水平方向の安定性が高まる。また、本発明に係るツイン・ハル構造のプラットフォームは、水中に沈む安定化要素を有する。当該安定化要素は、波に誘発されるプラットフォームの動きをできる限り抑えて、プラットフォームの喫水を大幅に低下させる特性を有する。
【0027】
上述した、水中に沈む安定化要素は、ほぼ平坦であり、上記2つの浮体要素に付帯し、かつ、当該2つの浮体要素の直下に配される。上記安定化要素は、2つの略矩形状の第1コンクリートスラブを備え、堅固又は軽量なリブ構造であり、上記2つの浮体要素の軸に対して垂直に配されており、上記第1コンクリートスラブと同一平面上にある補助バー構造体を用いて当該2つの浮体要素に連結する。
【0028】
上記安定化要素は、上記プラットフォームのピッチ周期を大いに増大することができる。これは、ひとつには上記スラブの質量による慣性に起因し、ひとつには、付加的な、関連する水力学的質量の慣性に起因する。
【0029】
上記2つの浮体要素の軸に対する横方向の振動を制限する必要もある場合には、上記安定化要素は、略矩形状の2つの第2コンクリートスラブを備えてよい。当該2つの第2コンクリートスラブは、2つの浮体要素の外側下方において、当該2つの浮体要素の軸に対して平行に配されており、補助バー構造体を用いて上記2つの浮体要素に連結する。当該補助バー構造体は、上述した動きを同様の方法で制限する。
【0030】
製造費用及びメンテナンス費用の削減を目的として、上記浮体要素及び上記安定化要素は、何れも鉄筋コンクリート製又はプレストレスト・コンクリート製である。上述したように、コンクリート構造は、重さ、極めて低い抗張力、又は強い曲げ応力にさらされたときのひび割れの存在、といった点で課題を有する。開発された構成が用いられる場合、過剰な重量はそれほど深刻にはならない。重心が、下方に下がり、メタセンターの十分下方に位置するためである。これによりプラットフォームの安定性が大幅に高まる。それと同時に、浮体要素は、中空で、比較的壁が薄いため、喫水の低下した状態が維持される。
【0031】
本発明に係る別の特性は、上記2つの浮体要素が、卵型の断面を有し、凸状の形状によって端部が閉じられていることにある。この構成によれば、上記2つの浮体要素が静水圧を受けているとき、その静水圧は上記2つの浮体要素の圧縮によって生ずるが、当該2つの浮体要素を構成するコンクリートが、圧縮によって作用し、ひび割れを防ぐ。さらに、上記2つの浮体要素の圧縮をさらに担保するため、当該2つの浮体要素は、プレストレスコンクリート技術を使って予圧に供される。それと同時に、上記2つの浮体要素は、横方向の仕切り又は隔壁によって、コンパートメント化され、かつ内部が補剛される。
【0032】
好ましくは、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームにおいて、バー組立体は、鉄筋コンクリート製又はプレストレスト・コンクリート製である。
【0033】
他の実施形態では、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームにおいて、バー組立体は、鋼鉄製である。
【0034】
さらに他の実施形態では、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームにおいて、バー組立体は、鋼鉄とコンクリートとの混合体である。
【0035】
さらに、上記浮体式プラットフォームは、ブイを組み込む。当該ブイは、海底上のアンカー手段と、信号を電気的に送受信する回転手段と、回転手段とを備える。上記アンカー手段は、少なくとも3つの係留索を有する。当該3つの係留索はそれぞれ、自身を海底に固定するための、対応するアンカー、コンクリートブロック、及び/又は杭を有する。上記回転手段は、スイベル・コネクタとケーブルとを備える。スイベル・コネクタは、上記ブイ上又は上記浮体式プラットフォーム上に配される。ケーブルは、海底から延び、上記浮体式プラットフォームに達する。上記係留用回転手段は、スイベル・ジョイントを備え、当該スイベル・ジョイントに対してプラットフォームの係留が連結される。この構成により、本発明に係るプラットフォームは、風向計のように、風向きに合わせるためにブイの周囲を回転することができる。これにより、縦方向のピッチ振動及び横方向のロッキング振動は別々の現象として扱われ、風力タービンの運転に対する影響に応じて最適化される。
【0036】
本発明により、海洋環境に設けられ、かつ、海洋環境に適用される風力エネルギーを利用するためのプラットフォームの建設は、シンプル、実用的、経済的、かつ効率的になる。
【0037】
本発明に係るプラットフォームは、上記課題をすべて満足に解決する先例のない解決方法を提供する。そして、低い喫水という要求を満足する、風力エネルギーを利用するための特定のタイプの浮体式プラットフォームを実現できる。さらに、通常の運転環境条件及び過酷な運転環境条件の両方において、風力タービンとその支持タワーに好適な、安定性及び波に起因する動きをもたらす浮体式プラットフォームを実現する。これらは、いずれも費用を削減するなかで実現される。
【0038】
風力エネルギーを利用するための上記浮体式プラットフォームの他の特性及び利点は、制限されない例を通して、添付の図面において説明される、好ましいが非排他的な実施形態の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る、より詳細な、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る、より詳細な、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係る、より詳細な、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係る、ブイを組み込んだ、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
図6】本発明の好ましい実施形態に係る、より詳細な、ブイを組み込んだ、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームの概略図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に概略的に示されるように、エネルギーを生成するための風力タービンを用いた、風力エネルギーを利用するための浮体式プラットフォームは、風力タービン(2)を有する支持タワー(1)と、複数の浮体要素(3)と、安定化要素(4)と、バー組立体(5)と、を備える。
【0041】
上記支持タワー(1)と複数の上記浮体要素(3)はバー構造体(5)によって互いに連結されている。同時に、同一のバー構造体(5)は、複数の上記浮体要素(3)間に設けられ、複数の上記浮体要素(3)に連結されている。
【0042】
複数の上記浮体要素(3)は、円筒形状であり、卵型の横断面を有し、水平かつ平行である。また、上記浮体要素(3)は、横方向の仕切り及び隔壁によって、コンパートメント化され、かつ内部が補剛されている。
【0043】
この好ましい例となる実施形態において、複数の上記浮体要素、上記支持タワー、及びバー組立体は、鉄筋コンクリート製、又はプレストレスト・コンクリート製である。
【0044】
図1におけるこの好ましい例となる実施形態において、複数の上記浮体要素(3)は、基本的には円錐形の端部を有する。
【0045】
図2及び図3における略図に示されるように、複数の上記浮体要素(3)はそれぞれ、下方において縦方向に延びる補剛リブ(6)をキールとして有する。
【0046】
また、図2は、複数の上記浮体要素(3)が安定化要素(4)を一体化する(組み込む)方法を示す。安定化要素(4)は、ほぼ水平かつ平坦で、水中に沈み、4つの略矩形状のスラブで構成される。2つの第1スラブ(4a)は、軽量で、かつリブ構造である。当該2つの第1スラブ(4a)は、複数の上記浮体要素(3)の端部かつ下部において、複数の当該浮体要素(3)の軸に対して垂直に配される。2つの第2スラブ(4b)もまた、軽量で、かつリブ構造である。当該2つの第2スラブ(4b)は、複数の上記浮体要素(3)の外側かつ下部において、複数の当該浮体要素(3)の軸に対して平行に配される。
【0047】
この安定化要素(4)は、補助バー構造体(7)によって複数の上記浮体要素(3)に連結する。この好ましい例となる実施形態において、上記スラブは、鉄筋コンクリート製、又はプレストレスト・コンクリート製である。
【0048】
図5及び図6の略図に示されているように、風力エネルギーを利用するための本発明に係る浮体式プラットフォームは、本発明に係る上記プラットフォームに付加的に設けられるブイ(8)を組み込んでもよい。上記ブイ(8)は、海底上のアンカー手段と、信号を電気的に送受信する回転手段と、係留用回転手段と、を備える。
【0049】
図5及び図6に概略的に示されている好ましい実施形態において、海底上の上記アンカー手段は、3つの係留索(9)を有する。当該3つの係留索(9)はそれぞれ、自身を海底に固定するための、対応するアンカー(14)及び/又はコンクリートブロック及び/又は杭を有する。信号を電気的に送受信する上記回転手段は、スイベル・コネクタ(10)と、ケーブル(11)と、を備える。ケーブル(11)は、海底から延び、本発明のプラットフォームに達する。上記係留用回転手段は、スイベル・ジョイント(13)を備える。スイベル・ジョイント(13)に対して、プラットフォームの係留(12)自身が連結される。
【0050】
この例となる実施形態において、上記スイベル・コネクタは、ブイ(8)上に配される。
【0051】
上記プラットフォームは、容易に建造される。また、上記プラットフォームは、喫水が低く、その航海用浮胴体の構成ゆえに、困難なく曳航により運搬されうる。
【0052】
詳細、形状、寸法、他の付属要素、及び風力エネルギーを利用するための本発明に係る浮体式プラットフォームを製造するために用いられる材料は、技術的に同等のその他のものに好適に代替されうる。それらは、本発明の本質、及び下記に含まれる請求項によって定義される範囲から逸脱しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6