(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の係合軸が、それらの軸方向が互いに平行な状態で配置され、隣り合う前記係合軸の両端同士がリンクプレートにより一定のピッチで連結されたチェーンの診断装置であって、
前記チェーンの上方に、その係合軸の移動方向に沿って、前記ピッチの略整数倍の長さ間隔で配置された2つの反射型の光電センサーと、
これら2つの光電センサーの投光部から投射される検出光が、前記チェーンの移動に伴い前記複数の係合軸と交差して反射し、受光部に入射することで生じる検出信号をそれぞれ入力し、これら検出信号の時間ずれの大きさに基づいて、チェーンの伸び量を検出する伸び検出装置とを備え、
前記光電センサーは、前記検出光の中心軸が、前記チェーンの隣り合う前記係合軸の中心軸間を結ぶ直線に対しほぼ垂直で、前記直線上における前記検出光の広がり幅が、前記直線上における隣り合う前記係合軸の外周面間隔より小さくなる位置に設置されていることを特徴とする診断装置。
前記光電センサーの前記チェーンとの対向面から、このチェーンの上面までの距離を、走行時における前記チェーンの上下方向振れ幅より大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の診断装置。
前記光電センサーは、前記検出光の中心軸が、前記係合軸の軸線に対しほぼ垂直で、前記検出光の広がり幅が、前記チェーンの両側の前記リンクプレートの内面間隔より小さくなる位置に設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の診断装置。
前記光電センサーは、前記検出光の中心軸が、前記係合軸の軸線に対する垂直線に対し前記チェーンの幅方向に沿って傾斜した場合、この傾斜した前記検出光の広がり幅が、隣り合う前記リンクプレートの内面間隔より小さくなるように、傾斜角度を制限したことを特徴とする請求項3に記載の診断装置。
前記光電センサーは、前記検出光の中心軸が、前記チェーンの幅方向中心位置からオフセットされている場合、このオフセットされた前記検出光の広がり幅が、前記リンクプレートの内面間隔より小さくなるように、オフセット量を制限したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の診断装置。
前記チェーンは無端状を成し、駆動側のスプロケットと従動側のスプロケットとの間に掛け渡されており、前記2つの光電センサーの設置位置は、前記チェーンの、前記駆動側及び従動側の各スプロケットとの各接点間距離を基準距離とした場合、これら接点位置から、前記接点間の内側に、前記基準距離の1/4以内の距離離れた位置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の診断装置。
前記チェーンの切断時に動作し、前記チェーンが掛け渡された前記スプロケットを固定するラチェット操作用のすり板がチェーンの長さ方向に沿って設けられている場合、前記2つの反射型の光電センサーは、このすり板を避けて、その前後に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の診断装置。
前記チェーンカバーの外側に少なくとも1つの前記光電センサーを配置し、前記チェーンカバーには、前記検出光を透過させる開口を設けたことを特徴とする請求項8に記載の診断装置。
前記駆動側のスプロケットと前記従動側のスプロケットとの間に掛け渡されて、上側走行路と下側走行路からなる往復走行路を構成する前記無端状の前記チェーンの、前記下側走行路の上方に、前記2つの光電センサーを配置したことを特徴とする請求項6に記載の診断装置。
【背景技術】
【0002】
一般にエスカレータやオートロードなどの搬送装置では、乗客や物を乗せる踏み段や、乗客が把持する移動手摺を設けており、これらは駆動装置により回転駆動される無端状のチェーンと同期して循環移動する。このチェーンは、チェーンを構成するピンとブッシュ部分の摩耗などにより経時的にローラ間距離に伸びが生じる。この伸びが大きくなるとスプロケットとうまく噛み合わず、スプロケットの歯を乗り越える歯飛びを起こすことがある。このようにチェーンがスプロケットを乗り越えると、例えば、上昇時に乗客の重量によって踏み段がずり落ちる逆走状態になってしまう。
【0003】
このような問題が生じないように、チェーンの伸びを計測し、これを監視することが提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0004】
特許文献1に開示されたチェーンの伸びを測定する技術は、渦電流式変位センサーをチェーン上面の離れた2か所に配置し、各ローラの通過をそれぞれセンサーで検出できるようにし、さらに2つのセンサー信号はデータロガーで記録するものである。両センサーがそれぞれ検知したローラ通過時刻は、チェーンが伸びた分に比例した時間差が生じるので、それを読み取り、チェーンの伸び量を算出する方法であり、チェーンの伸び量を測定する基本原理となっている。
【0005】
しかし、上述した渦電流式変位センサーは、対象物の検出範囲(検出できる距離)が短い(一般的に数mm程度)ため、センサーをチェーンの極近傍に配置しなければならないという制約がある。そのため、運転中に生じるチェーンの振れによって、チェーンとセンサーが接触してセンサーが破損する恐れが生じる。また磁気式のため、ローラの通過を検知する精度があまり高くないという問題がある。
【0006】
特許文献2に開示された提案は、センサーとして渦電流変位センサーに代えて、変位検出できる距離範囲が長いレーザー変位センサーを用いている。この提案では、センサーをチェーンから離して設置できるため、運転中にチェーンとセンサーが接触する危険を回避することが可能となる。
【0007】
ただし、レーザー変位センサーは、一般的に高価(数万円以上)であるため、設置コストがかかり、チェーン伸びを検知するシステム全体のコストが高くなってしまう。
【0008】
そこで、本件出願人によって提案された特許文献3の発明では、レーザー変位センサーに代えて、センサーコストが大幅に安い光電センサーを用いている。この発明では、基本的に透過型の光電センサーを用いおり、チェーンのローラを上下から挟むように投光ヘッドと受光ヘッドを配置して、光軸がローラに当たるように構成し、ローラが通過する際、光軸が遮られて、ローラの通過タイミングを検出できるようにしている。
【0009】
このセンサーを2組、チェーン上の離れた2か所に配置し、それぞれのチェーンローラ通過タイミングを検出して、検知時刻の差から、チェーンの伸びを検出する。
【0010】
しかし、透過型光電センサーをチェーンの上下を挟むように配置した場合、チェーンの下面に、投光ヘッドまたは受光ヘッドのいずれかを配置することとなる。このため、チェーンから滴下したチェーン油が直接滴下して、ヘッド面が汚損されてローラ通過を検知できなくなる恐れがある。そこで、上下の光電センサーヘッドの光軸を、チェーンのローラに対して斜めに当たるように上下のセンサーヘッドを配置し、下側のセンサーヘッドがチェーンの真下の位置から外れるように配置して、チェーン油の滴下による汚れを防いでいる。
【0011】
このように、2つのセンサーヘッドの光軸面をチェーンローラに対して垂直ではなく、角度をつけた場合、光軸がローラ左右のリンクプレートに当たる可能性が高くなり、誤検出の恐れが生じる。また、そういった誤検出を防ぐために、光軸のシビアな現場調整が必要となり、センサー位置の調整に多くの時間を要した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチェーンの診断装置の斜視図である。
【
図2】チェーン走行時におけるチェーンのローラと、センサーの検出光との関係を示す図である。
【
図3】チェーンのローラとセンサーの検出光との関係を説明する図である。
【
図4】チェーン走行時にセンサーの検出光がローラを検出する過程を説明する図である。
【
図5】センサーとチェーンとの距離が小さ過ぎるため、チェーン走行時の上下方向のぶれにより、センサーにローラが接触する場合を説明する図である。
【
図6】センサーから出力される検出信号の波形を示す図である。
【
図7】2つのセンサーからの検出信号によりチェーンの伸びを検出する場合を、伸びの無い場合と比較して説明する図である。
【
図8】チェーンとセンサーとの関係を、チェーンを横断した方向から見た図で、センサーが適切な位置に配置された場合と、不適切な位置に配置された場合とを比較して示している。
【
図9】センサーがチェーンの幅方向に傾いて取り付けられた状態を示す図である。
【
図10】センサーがチェーンの幅方向に傾き、かつオフセットされて取り付けられた状態を示す図である。
【
図11】センサーの検出光が曲線状に広がる場合を説明する図である。
【
図12】2つのセンサーを専用の治具により取り付ける場合を説明する図である。
【
図13】2つのセンサーをチェーンが巻き掛けられるスプロケット近くに設置する場合の図である。
【
図14】2つのセンサーをすり板の前後に設置する場合の図である。
【
図15】チェーンカバーを設けた場合に、センサーをチェーンカバーとチェーンの間に設けた構成を示す図である。
【
図16】チェーンカバーを設けた場合に、センサーをチェーンカバーの外側に設け、検出光を、開口を通してチェーンに充てる場合の図である。
【
図17】2つのセンサーを、無端状チェーンの下側走行路の上方に設置した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明の実施の形態に係るチェーンの診断装置の一例を示す。
図1では、チェーン10として、駆動用のスプロケット12と、従動用のスプロケット13との間に掛け渡されたものが対象となる。駆動用のスプロケット12は、エスカレータ駆動用の図示しないモータの減速機11に設けられている。従動用のスプロケット13は、図示しない無端状の踏み段や手摺ベルトを駆動するために用いられる。
【0019】
チェーン10は、周知のように、 複数のローラ又はブッシュ等の係合軸(この実施の形態では係合軸をローラとして説明する)10aが、それらの軸方向が互いに平行な状態で配置され、隣り合うローラ10aの両端同士がリンクプレート10bにより一定のピッチで連結されている。この実施の形態に係る診断装置は、
図1で示すように、2つの反射型の光電センサー15,15と、チェーン10の伸び検出装置16とを有する。
【0020】
2つの光電センサー15,15は、チェーン10の上方に、その移動方向に沿って、チェーン10のピッチの整数倍の長さ間隔で配置されている。なお、反射型の光電センサー15は、一般的に、検出光の光軸が反射した場合に信号がオンするタイプとオフするタイプの2種類があり、どちらを用いてもよいが、ここでは説明を解り易くするため、チェーン10のローラ10aが通過して光軸が反射された場合に信号がオンするタイプを用いた場合を説明する。これら光電センサー15の検出光の中心軸は、チェーン10のローラ10aに対して、上部から直角に当たるように配置する。
【0021】
伸び検出装置16には、2つの光電センサー15,15の検出信号がそれぞれ入力される。すなわち、光電センサー15の投光部(図示省略)から投射された検出光が、チェーン10の移動に伴い、その複数のローラ10aとそれぞれ交差して反射し、受光部(図示省略)に入射することで生じる検出信号をそれぞれ入力する。そして、これら両検出信号の時間ずれの大きさに基づいて、チェーンの伸び量を検出する。伸び量がある閾値を超えたら、アラームを出すなどの制御に用いる。
【0022】
光電センサー15は、
図2で示すように、検出光の中心軸が、チェーン10の隣り合うローラ10aの中心軸間を結ぶ直線xに対しほぼ垂直で、直線x上における検出光の広がり幅wが、直線x上における隣り合うローラ10a,10aの外周面間隔(後述するP−d)より小さくなる位置(直線xからの距離L)に設置されている。
【0023】
例えば、
図3で示すように、 反射型の光電センサー(以下、単にセンサーと呼ぶ)15の光軸面(投光部、受光部の面)15aは、それぞれ、チェーン10側に向けて、かつ、チェーン10の走行方向に略平行となるように配置する。ここで、チェーン10のローラ10a、10a間のピッチをP、各ローラ10aの直径をd、検出光の垂直線に対する広がり角度をα、センサー15の光軸面15aから直線xまでの距離をLとした場合、センサー15は、下式(1)で求められる位置に設置する。
2×L×tan(α) < P−d ・・・(1)
【0024】
なお、
図3はセンサー15とチェーン10のローラ10a間の距離Lを、
図2で示した上記式(1)を満足する値よりも大きく取った場合に発生する現象を示している。
【0025】
図2のように、直線x上における検出光の広がり幅wが、直線x上における隣り合うローラ10a、10aの外周面間隔P−dより小さくなる位置に設置されている場合、すなわち式(1)を満足している場合は、チェーン10の走行時、
図2(a)で示すローラ10aとの位置関係ではセンサー15からの検出光は、ローラ10a間を透過するため反射されず、センサー15の検出信号はオフ状態となる。これに対し、
図2(b)で示すように、センサー15からの検出光がローラ10aに当たると、検出光が反射されて、センサーヘッドの受光部で検知され、センサー15の検出信号はオンする。
【0026】
すなわち、式(1)の関係に距離Lを設定した場合、検出光の広がり幅wがローラ10a間距離(外周面間距離)よりも小さいため、センサー15の検出光がローラ10aを検知しない時間があり、信号がオフしている時間が生じる。このため、チェーン10の走行に伴い、
図4(a)で示すように、破線で示す2番目のローラ10a2が検出光に進入した状態から、図示左方に進行して
図4(b)で示すように検出光が抜ける状態までの間、信号がオン状態を継続する。そして、3番目のローラ10a3が次に検出光に進入するまでのわずかな時間だけ、信号がオフした波形となる。
【0027】
したがって、センサー15の検出信号は、
図6で示すようにオン・オフを交互に繰り返す矩形波信号となる。すなわち、ローラ10aの直径dと、ローラ10aの外周面間距離(P−d)に比例した比率で、信号のオン時間とオフ時間が生じた波形となる。なお、この実施の形態で用いる反射型のセンサー15は、透過型に比べ検出光の広がりが比較的大きいので、ローラ10aを検知している時間がローラ10aを検出しない時間よりも長くなり、
図6のようなオン時間がオフ時間よりも長い幅広の波形となる。ただし、ローラ10aが検出光に進入した時刻は信号の立ち上がりによって正しく検出できる。
【0028】
図7は、チェーン10の走行中の、2つのセンサー15,15による検出信号の波形を模式的に示している。同図(a)はチェーン10が伸びていない場合、(b)は、チェーン10が伸びた場合の波形である。チェーン10が伸びていない場合は、
図7(a)のように、2つのセンサー15.15の検出信号のオン時刻はほぼ同時となり、時間ずれは生じない。
【0029】
一方、チェーン10が伸びてくると、
図7(b)のように、2つのセンサー15,15からの検出信号に時間ずれが生じる。これらの信号は
図1で示したチェーン伸び検出装置16に入力されるので、このずれをマイコンなどで検出してやれば、チェーン10の伸び量を測定することができる。
【0030】
なお、
図3のように、距離Lが大きいと、検出光の広がり幅wが大きくなり、幅w(=2×L×tan(α))が、隣り合うローラ10aの外周面間隔(P−d)よりも大きくなってしまう。このため、常に検出光がローラ10aを検出してしまい、センサー15の検出信号がオンの状態を継続するので、ローラ10aの通過時刻を検出できない。これに対し、前述のように式(1)を満足するw<(P−d)の関係であれば、検出光がローラ10aを検知しない時間が生じるため、ローラ10aがセンサー光軸を通過する度に信号が必ずオン・オフし、ローラ10aが通過したことを検知できる。
【0031】
また、
図5(a)で示すように、チェーン10とセンサー15との距離Lが小さすぎる場合、チェーン10の走行中の上下の振れによって、
図5(b)で示すように、ローラ10a2がセンサー15と接触して、これを損傷する可能性がある。そこで、センサー15の、チェーン10との対向面から、このチェーン10の上面までの距離は、走行時におけるチェーンの上下方向振れ幅より大きく設定する。すなわち、センサー15の、光軸面15aとチェーン10のローラ10aまでの距離L−(d/2)は、チェーン10の走行中の、チェーンローラの走行方向に対する上下直角方向の振れ幅をB0とした際に、下式(2)を満足するように設定する。
B0 < L−(d/2) ・・・ (2)
【0032】
このように構成すると、走行中のチェーン10に上下方向のブレが生じても、チェーン10のローラ10aがセンサーに振れてこれを損傷することを確実に防止することができる。
【0033】
上述の実施の形態によれば、低コストな反射型の光電センサーを、チェーン10の上面側の所定の距離に設置するだけで、検出光の光軸調整なしに、チェーン10の伸びを低コストに、かつ精度良く検出できる。また、センサー15がチェーン10の上方にだけあるので、チェーン10から滴下する油がセンサー15の光軸面15a上につかず、光軸面15aの汚損が生じない。さらに、センサー15の光軸面15aが下向きなので、粉塵などの付着も少ないという副次的な効果も有する。
【0034】
次に、
図8で示す実施の形態を説明する。
図8は、チェーン10とセンサー15との関係を、チェーン10を横断した方向から見た図である。すなわち、
図8はセンサー15の検出光の広がり幅w2と、チェーン10の左右リンクプレート10b、10b間の距離wLとの関係を示している。
【0035】
この場合、センサー15は、検出光の中心軸が、チェーン10のローラ10aの軸線に対しほぼ垂直で、この検出光の広がり幅w2が、
図8(a)で示すように、両側のリンクプレート10b、10bの内面間の距離wLより小さくなる位置に設置する。すなわち、チェーン10の幅方向についても
図8(b)で示すように、チェーン10とセンサー15の光軸面15aとの距離Lを大きくし過ぎると、検出光が、その広がりにより常時両側のリンクプレート10bに当り、反射光を生じることから、ローラ10aを検知できなくなる恐れがある。
【0036】
そこで本実施形態では、距離Lを、下式(3)の関係に設定する。
2L×tan(α) < WL ・・・ (3)
このように設定すると検出光の広がり幅w2が、左右のリンクプレート10b間の距離wL内に収まるため、ローラ10aの通過を正しく検出できる。
【0037】
図9は、
図8で示したセンサー15が傾いて取付けられ、検出光の中心軸が、ローラ10aの軸線に対する垂直線に対し、チェーン10の幅方向に沿って角度β傾斜した場合を示している。この場合、この傾斜した検出光の広がり幅は、傾斜角度β分、傾き方向に偏倚して形成される。このように検出光が傾斜し、検出光の広がり部分が傾き方向に偏倚した
図9の場合、検出光の図示左部分が左側のリンクプレート10bに当ってしまい、ローラ10aを検出できなくなる。このため、検出光が偏倚しても、その広がり部分が、両側のリンクプレート10b、10bの内面間隔wLより小さくなるように、傾斜角度β及び距離Lを制限する。
【0038】
すなわち、
図9で示すようにセンサー15の傾き角度βによる検出光の偏倚量をL×tan(β)とした場合、センサー15からの検出光の広がり部分が、両側のリンクプレート10b、10bの内面間隔wLより小さくなるためには、下式(4)を満足するように、傾斜角度β及び距離Lを制限する。
2L×tan(α)+L×tan(β) < wL ・・・ (4)
【0039】
したがって、センサー15の取付けに当っては、傾斜角度β及び距離Lが、式(4)を満足する範囲内となるように、
図12で示すように、専用の治具20などを用いて正確に位置決めする。
【0040】
図10は、
図9で示したように、センサー15が角度β傾くと共に、チェーン10の幅方向に間隔d、オフセットされている場合を示している。この場合、この傾斜した検出光の広がり幅は、傾斜角度β分、傾き方向に偏倚すると共に、オフセット間隔d分も加わって偏倚する。このように検出光の広がり部分が偏倚した
図10の場合は、検出光の図示左部分が左側のリンクプレート10bに当ってしまい、ローラ10aを検出できなくなる。このため、検出光が偏倚しても、その広がり部分が、両側のリンクプレート10b、10bの内面間隔wLより小さくなるように、傾斜角度β、オフセット間隔d、及び距離Lを制限する。
【0041】
すなわち、
図10で示すように、センサー15の傾き角度βによる検出光の偏倚量をL×tan(β)とし、オフセット間隔をdとした場合、センサー15からの検出光の広がり部分が、両側のリンクプレート10b、10bの内面間隔wLより小さくなるためには、下式(5)を満足するように、傾斜角度β、オフセット間隔d、及び距離Lを制限する。
2L×tan(α)+ L×tan(β) + d < wL ・・・ (5)
【0042】
したがって、センサー15の取付けに当っては、傾斜角度β、オフセット間隔d、及び距離Lが、式(5)を満足する範囲内となるように、
図12で示した専用の治具20などを用いて正確に位置決めする。
【0043】
センサー15の検出光の範囲が
図11で示すように曲面形状の場合、検出光の広がり範囲wを、w=f(L)とすると、f(L)< P−d となるように、センサー15との距離Lを設定すればよい。これにより、直線的に広がるという検出光の範囲の仮定では成立しないような、曲線的に検出光範囲が変化する反射型センサーであっても、同様に使用可能となる。
【0044】
次に、
図13で示す実施の形態を説明する。前述した
図1の実施の形態では、2個の光電センサー15,15を、チェーン10の中央付近に配置したのに対し、本実施形態では、
図13で示すように、センサー15をそれぞれ、駆動用のスプロケット12及び従動用のスプロケット13の近くに配置した。すなわち、センサー15は、チェーン10の、各スプロケット12,13との各接点間の内側の、これら接点位置から、接点間の距離の1/4以内の位置に設置する。
【0045】
このようにセンサー15を、スプロケット近傍に配置した場合、チェーン10の上下の振れが小さい範囲となるため、測定精度が向上するという効果がある。すなわち、チェーン10の中央部付近にセンサーが配置されていると、チェーンを支持する左右の接点からの距離が大きいためにチェーンの振れが大きい部分で測定することとなる。反射型の光電センサー15の場合、チェーン10の上下の振れは、センサー15とチェーン10との間の距離Lを変化させたことに相当するため、検出光をローラ10aが通過するタイミングが、本来のタイミングから変化してしまう。特に、エスカレータのダウン運転時には、無端状を成すチェーン10の上側はゆるみ側になるため、チェーン10の弛みや振れが大きくなり、影響を受けやすい。
【0046】
しかしながら、
図13の実施の形態では、センサー15がそれぞれ、スプロケット12,13の近傍にあるため、チェーン10が上下に振れる量が中央付近よりも小さくなる。したがって、チェーンが上下に振れた際の測定精度の低下を小さく抑えることができる。
【0047】
図14は2つのセンサー15,15を、すり板18の前後に配置した場合を示している。一般に、エスカレータの駆動に用いられるチェーン10では、チェーン10の万一の切断時に、踏段が逆走して乗客が転倒するのを防ぐため、チェーン10を従動用のスプロケット13に引っかけて回転を止めるためのすり板18が設置されている。
【0048】
すなわち、すり板18は、チェーン10の切断時に、図示しないリンク機構などにより動作し、チェーン10が掛け渡されたスプロケット13を固定するラチェット操作するために用いられる。このすり板18は図示のように、チェーン10の長さ方向に沿って設けられており、2つのセンサー15,15は、このすり板18を避けて、その前後に配置する。
【0049】
このように、すり板18のような付属物を避けて、センサー15を設置したので、センサー15の位置は必然的にスプロケット12,13近くに設置されることになる。したがって、前述したように、チェーン10の走行時における上下方向のずれが少ない位置に設置されることとなり正確な検出が可能となる。
【0050】
図15及び
図16は、チェーン10の油の周囲への飛散を防ぐチェーンカバー21が配置された場合を示している。
図15は、チェーン10の上方に、周囲への油の飛散を防ぐために配置されたチェーンカバー21と、チェーン10の上面との間の隙間に、少なくとも1つのセンサー15を配置した構成を示している。
図16は、チェーン10の上方に、周囲への油の飛散を防ぐために配置されたチェーンカバー21の外側に、少なくとも1つのセンサー15を配置し、チェーンカバー21には、検出光を透過させる開口21aを設けた構成を示している。
【0051】
このようにチェーンカバー21が設けられていても、センサー15をチェーン10の上方に配置して、チェーン10の伸びを確実に検出することができる。
【0052】
図17は2つのセンサー15,15を、無端状のチェーン10の、下側走行路の上方に配置した場合を示している。無端状のチェーン10は、駆動側のスプロケット12と従動側のスプロケット13との間に掛け渡されて、上側走行路と下側走行路からなる往復走行路を構成しているが、2つのセンサー15,15は、上述のように下側走行路の上方に配置している。
【0053】
エスカレータの駆動に用いられるチェーン10は、エスカレータを上昇駆動する場合、無端状のチェーン10には、チェーン10の上側走行路に駆動力がかかる。このため、上側走行路のチェーン10は基本的にはピーンと張った状態となり、前述した各実施の形態で示したように、チェーン10の上側走行路の上方にセンサー15,15を配置することで、チェーン10の伸びを精度良く測定できる。
【0054】
これに対し、エスカレータを下降駆動する場合は、チェーン10の駆動力が主に下側走行路に働くため、チェーン10の上側走行路は、チェーン10の重量によるテンションは加わるものの弛みが大きくなり、測定精度が低下する傾向がある。
【0055】
そこで、エスカレータを下降駆動する場合は、
図17で示すように、駆動力がかかり、ローラと張った状態となるチェーン10の下側走行路の上方に2つのセンサー15,15を配置する。この構成により、下降運転するエスカレータにおいて、より精度良く、チェーン10の伸びを検出できる。
【0056】
また、上述の各実施の形態では、チェーン伸びの測定対象として係合軸としてローラを用いたローラチェーンの場合について記載したが、必ずしも測定対象がローラチェーンである必要は無い。すなわち、ローラを有さずに、係合軸がピンおよびブッシュのみで構成されたコンベアチェーンなどにも、同様に適用可能である。その場合、検出光の光軸はローラではなく、ブッシュに当ててブッシュ間の伸びを測定することとなるが、基本原理はローラ間距離を検出する場合と同じである。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】チェーン10の上方に、その移動方向に沿って配置された2つの反射型の光電センサー15,15と、チェーン10の移動に伴いローラ10aと交差して生じる検出信号の時間ずれの大きさからチェーンの伸びを検出する伸び検出装置16とを備え、光電センサー15は、検出光の中心軸が、チェーン10の隣り合うローラ10aの中心軸間を結ぶ直線xに対しほぼ垂直で、検出光の広がり幅が、隣り合うローラの外周面間隔より小さくなる位置に設置されている。