(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505898
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】位置感知システム
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20190415BHJP
G01D 5/14 20060101ALN20190415BHJP
【FI】
G01B7/30 H
!G01D5/14 E
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-45217(P2018-45217)
(22)【出願日】2018年3月13日
(62)【分割の表示】特願2015-551218(P2015-551218)の分割
【原出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2018-136321(P2018-136321A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年4月9日
(31)【優先権主張番号】1300132.6
(32)【優先日】2013年1月4日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518082297
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・コントロールド・パワー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL CONTROLLED POWER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピアス,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マディソン,ウェイン
【審査官】
九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−083422(JP,A)
【文献】
特開平05−126512(JP,A)
【文献】
特開平08−340693(JP,A)
【文献】
特開2004−190839(JP,A)
【文献】
特開2011−080788(JP,A)
【文献】
特開2004−332635(JP,A)
【文献】
特開平06−042907(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0174213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチドリラクタンス機械のための位置感知システムであって、
磁石と、磁石キャリアと、センサ要素と、磁石シールドと、センサシールドとを含み、
前記磁石キャリアは、井戸を形成し、
前記磁石は、前記井戸内の前記磁石キャリア上に取り付けられ、
前記磁石間に間隙が規定され、
前記磁石キャリアは、前記井戸が回転可能なシャフトの実質的に外側に位置するように、前記スイッチドリラクタンス機械の前記回転可能なシャフトの端に取り付けられ、
前記センサ要素は、回路板に取り付けられ、前記センサ要素は、前記磁石によって生成される磁束が前記スイッチドリラクタンス機械の前記シャフトの軸に対して垂直な方向において前記井戸内に集中させられるような方法において、前記磁石キャリアによって形成される前記井戸内の前記磁石間に規定される前記間隙に位置し、
前記センサシールドは、前記センサシールドが前記センサ要素を前記スイッチドリラクタンス機械の電気切換えによって引き起こされる電気干渉から遮蔽するように、前記センサ要素及び前記磁石を取り囲み、
前記磁石シールドは、前記磁石と前記センサシールドとの間に配置され、前記磁石、前記センサ要素及び前記回路板を取り囲む、
位置感知システム。
【請求項2】
前記磁石は、前記磁束が馬蹄形磁石の経路に従うように配置される、請求項1に記載の位置感知システム。
【請求項3】
前記センサ要素を取り囲む前記センサシールドは、前記磁石によって生成される前記磁束を取り囲む、請求項1又は2に記載の位置感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチドリラクタンス(SR)機械のための位置感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
Controlled Power TechnologiesのSpeedstart(登録商標)のような一部の既知のS
R機械は、センサと磁石とを含む感知機構を含む。静止センサがSR機械の回転シャフト
の端に取り付けられる磁石によって生成される磁場の変化を感知する。
【0003】
センサは磁束密度の上方値及び下方値によって定められる動作範囲又は公差帯域(toler
ance band)を有する。磁束密度が公差帯域の下方値より下にあるならば、センサはそれ
を検出し得ず、従って、正しく機能し得ない。磁束密度が公差帯域の上方値を超えるなら
ば、センサ信号は飽和させられる。
【0004】
図1は、従来技術に従った磁束密度対距離における磁性減衰の図式的な実施例を示して
いる。このグラフに示されるように、センサが磁石から離れる方向に移動させられるとき
、磁束密度は非線形式に減少する。特定の磁石の磁場強度は、センサの動作範囲との組み
合わせにおいて、特定のセンサ/磁石の組み合わせのための機能又は動作範囲帯域を決定
付ける。
【0005】
機械の中心線(即ち、位置センサ軸)に沿って電磁場がないように相巻線接続を構成し
得るが、実際には、数多くの要因が非ゼロ磁場をもたらし得る。これらの要因は、抵抗率
に影響を及ぼす局所化された加熱に起因する並行導体における不均一な電流共有、巻線接
続の異なる長さ、及びロータ偏心を含む。
【0006】
既知のSR機械は、異なる熱膨張係数及び磁気減衰特性を有する、鋼、プラスチック及
びアルミニウムのような、様々な材料の構成部品で構成される。SR機械の典型的な動作
温度は−40℃〜200℃の範囲内にあるので、構成部品の熱膨張の結果として有意な程
度の動作がセンサと磁石との間で起こり得る。この膨張はセンサによって感知される磁場
強度の変化をもたらし、極度の温度でセンサの動作範囲の外側に入る磁束密度をもたらし
得る。
【0007】
更に、SR機械内の高電流の頻繁な切換えは電磁干渉を生む。小さな角位置誤差を伴う
発火相電流(firing phase currents)が極めて高い電流スパイク及び予測不能な性能を
招き得る。これはロータが電流レベルを制限するインダクタンス(又は上昇インダクタン
ス)を伴わない不整列位置にある状態でコイルが発火させられるときに特に当て嵌まる。
【0008】
この場合のために、コイルが不整列位置において発火させられるとき、漂流磁界はより
一層大きい可能性が高い。何故ならば、ステータ歯は大きな空気間隙内への磁束をもたら
し、故に、漂流磁界は鋼積層内に十分に閉じ込められないからである。
【0009】
漂流磁界の比較的高い生成を伴う大きな電流は、悪化させられるセンサ誤差を引き起こ
し得る。センサは機械制御ループ内にあるので、比較的小さな位置誤差が最終的には制御
の喪失に至り得ることを予測し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、センサの動作範囲が最大限化され且つ上記で議論した問題が少なくとも軽減
される、SR機械のための位置感知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は請求項1に記載するような位置感知システムを提供する。
【0012】
本発明の磁石キャリア及び磁石シールドは、磁石及び磁石キャリアによって形成される
井戸内の磁束をシャフトの中心軸(z軸)に対して垂直な方向において集中させるよう、
一対の磁石が磁石キャリア内に保持されることを可能にする。
【0013】
好ましくは、位置センサはセンサシールドを更に含み、センサシールドはセンサ要素を
取り囲み、センサシールドは、センサ要素を、例えばSR機械の切換えによって引き起こ
される外部電気干渉から遮蔽する。
【0014】
位置感知システムは、磁石、磁石キャリア、センサ要素及び回路板を取り囲む、外部シ
ールドを更に含み得る。
【0015】
次に、図面を参照して、一例により、本発明の実施態様を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来技術に従った磁束密度対距離における磁気減衰の図式的な実施例を示すグラフである。
【
図2a】本発明に従った磁石キャリアを示す断面図である。
【
図2b】本発明に従った磁石キャリアを示す平面図である。
【
図3】本発明に従った入れ子にされた磁石キャリア、磁石シールド、センサ及びセンサシールドの配置を示す断面図である。
【
図4】
図3の磁石キャリア、磁石及びセンサを示す詳細図である。
【
図5】従来技術の軸方向動作範囲及び本発明のための軸方向動作範囲を示すグラフである。
【
図6】従来技術の径方向動作範囲及び本発明のための径方向動作範囲を示すグラフである。
【
図7】シールドを有さないシステムのための機械の中心での磁場強度を示すグラフである。
【
図8】シールドを有さない感知システムのロータ角度位置誤差を示すグラフである。
【
図9】本発明に従ったシールドを有する感知システムの中心磁場強度を示すグラフである。
【
図10】本発明に従ったシールドを備える感知システムのロータ角度位置誤差を示すグラフである。
【
図11】本発明に従った磁場キャリア井戸内に閉じ込められる磁束管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3を参照すると、本発明はロータシャフト4を有するSR機械のための位置感知シス
テムを含む。ロータシャフト4の中心軸が
図4においてZ−Zによって示されている。
【0018】
感知システムは、磁石キャリア6、センサ要素8、センサシールド10、外部磁石シー
ルド20、及び第1の磁石12と第2の磁石14とを含む一対の磁石を含む。
【0019】
センサ要素8は、ロータシャフト4の端と整列させられる幅木のような回路板16に取
り付けられる。
【0020】
第1の磁石12及び第2の磁石14は、磁束が馬蹄形磁石の経路に類似する経路に沿う
ように、「馬蹄形」構成内に配置される。第1の磁石12、第2の磁石14、及び磁石キ
ャリア6は、センサ要素8及び回路板16をその内側に位置付ける井戸18を形成する。
【0021】
断面が円形であるセンサシールド10は、センサ要素8を取り囲み、第1及び第2の磁
石12,14からの磁束を取り囲むように作用し、且つセンサ要素8を例えばSR機械の
電気切換えによって引き起こされる如何なる漂流磁界からも遮蔽するようにも作用する。
【0022】
外部磁石シールド20は、第1の磁石12、第2の磁石14、磁石キャリア6、センサ
要素8及び回路板16を取り囲む。
【0023】
磁石キャリア6内の第1及び第2の磁石12,14の配置は、「馬蹄形」磁石を効果的
に形成し、それにより、磁石12,14によって生成される一次磁束管は、井戸18内に
形成される内部空気空間を横断して流れる。
【0024】
磁石12,14、磁石キャリア6、センサシールド10及びセンサ要素8の組合わせは
、広範囲の温度に亘る感知システムの機能範囲の有意な増大をもたらすことを示した。例
えば、
図5のグラフは、(「現在特定範囲」(“current spec range”)として示す)従
来技術の感知システムのための、並びに本発明に従った感知システムのための、軸方向感
度、即ち、センサからの距離に対する磁束密度を示している。このグラフの感知システム
は、従来技術システムのための2mmと比べて4.8mmの動作範囲を有する。グラフは
センサ要素8に近い漂流磁界の影響を減少させるシールドの効果を示している。
【0025】
図6は(「現在特定範囲」として示す)従来技術感知システムの、並びに本発明に従っ
た感知システムの、径方向動作範囲を示している。
【0026】
図7は、SR機械が400rpmで発火させられるときの相電流に起因する、3相、1
2ステータ極、8ロータ極のSR機械の中心での、磁束密度を示している。その結果は従
来技術システムのためである。この場合、磁束密度Bzは、(
図4に本発明に関して示す
z軸に対応する)SR機械の中心z軸に沿うセンサ要素8での磁束密度を示している。磁
束密度Bノーマル(Bnormal)はセンサ要素8の周りの径方向磁束場の全ての積分である。
【0027】
図8は従来技術感知システムの位置誤差を示している。センサ要素場所で異なるレベル
の磁束密度のために位置誤差計算を行い得る(信号ノイズ研究)。センサ信号の最低値に
関して位置誤差は0.8度であり得る。それはフィードバック誤差を引き起こし、最終的
には制御の喪失を引き起こし得る。
【0028】
図9は本発明に従ったセンサシールドと磁石とを備える感知システムの中心磁場を示し
ている。この配置は、SR機械の中心での相発火事象(phase firing event)からの磁場
を、無視し得るレベルまで減少させることが分かる。
【0029】
図10は本発明に従った感知システムの位置誤差を示している。位置誤差は0.012
度であり得る。それは如何なる有意なフィードバック誤差をも引き起こす可能性が低く、
センサ要素整列等の幾何学的公差内にある。
【0030】
所与の実施例において、センサシールドを備えない感知システムを有するSR機械のた
めの最大の起こり得る位置誤差は0.8度である。センサ要素8の場所での磁場の最大の
大きさは約0.2mTである。
【0031】
本発明に従った感知システムを有する機械のための最大の起こり得る位置誤差は0.0
12度である。センサ要素場所での磁場の最大の大きさは3μTであり、それは(30μ
T〜60μTの間にある)地球の磁場よりも小さい。
【0032】
従って、本発明の感知システムは、センサ要素8の場所での磁束密度の大きさ及び起こ
り得る位置誤差を、約70の因数だけ(by a factor of approximately 70)減少させ
ることが分かる。
【0033】
センサシールド8を備えないロータ位置誤差は、システム内の誤差フィードバックを引
き起こして、最終的にはSR機械の制御されない動作をもたらす可能性が高い。しかしな
がら、他の要因が中心位置での磁場に影響を及ぼし得るし、SR機械の制御されない動作
の度合いを増大させ得る。
【0034】
従って、本発明のセンサシールド10及び磁石配置は、大量生産において制御するのが
極めて困難であり且つ中心磁場問題の度合いを強め得る、SR機械の電子機器からの漂流
磁界及び偏心ロータに対する保護手段をもたらす。
【0035】
図11はSR機械のシャフトの軸に対して垂直な方向において磁束管22を集中させる
ことに関する本発明の効果を示している。