特許第6505965号(P6505965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6505965
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】自動走行する床掃除機及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20190415BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   A47L9/28 E
   G05D1/02 J
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-193801(P2013-193801)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-61375(P2014-61375A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2016年6月8日
【審判番号】不服2018-1530(P2018-1530/J1)
【審判請求日】2018年2月5日
(31)【優先権主張番号】10 2012 108 802.0
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592022394
【氏名又は名称】フォルヴェルク・ウント・ツェーオー、インターホールディング・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VORWERK & COMPAGNIE INTERHOLDING GESELLSHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド・ヴィンドルフェル
【合議体】
【審判長】 柿崎 拓
【審判官】 長馬 望
【審判官】 藤井 昇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−307354(JP,A)
【文献】 特開2004−49592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行する床掃除機(1)であって、ハウジング(6)と、前記ハウジング内に配置された1又は複数の車輪(2,3)と、を有し、前記車輪により走行中の前記床掃除機(1)は、カーペット縁(14)に代表される、上方へ傾斜した障害面をもつ長尺で高さの低い障害物を、その障害物の長手方向に対して直角又は鋭角をなす走行方向に乗り超えることができ、かつ、前記床掃除機(1)は障害物を検知する手段を有する、前記床掃除機(1)において、
前記床掃除機(1)は、前記障害面又は前記障害物に隣接する床領域を掃除するための手順を実行可能であるように形成されており、その手順は、床領域の走行中における前記障害物を検知する手段による検知の結果として前記床掃除機(1)が前記障害物の長手方向に沿った走行方向(R)を決定することと、決定された前記走行方向(R)に基づいて前記障害面に関して前記障害物に隣接する床領域上を走行することと、その走行中に全ての前記車輪(2,3)が床領域上に存在していることと、を含み、 かつ、
前記手順により前記障害物の長手方向に沿って走行中、平面視にて、走行方向に沿った前記ハウジング(6)の境界縁であって前記障害面に対向する側の前記境界縁の、前記障害面からの距離が、前記床掃除機(1)における走行方向に垂直な方向の前記ハウジング(6)の幅(b)に対応する距離よりも小さいことを特徴とする床掃除機。
【請求項2】
障害物に到達したこと、又は、乗り超え可能な障害物を乗り越えたことが、床からの距離の変化に基づいて床センサ(18)により検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項1に記載の床掃除機。
【請求項3】
障害物の検知のために、コーナー掃除ブラシ(5)のモータ電流の量が利用可能であるか又は利用されることを特徴とする
請求項1又は2に記載の床掃除機。
【請求項4】
センサによる障害物の検知のために、触覚センサの信号が利用可能であるか又は利用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の床掃除機。
【請求項5】
前記床掃除機(1)が、平面視におけるハウジングの外郭を超えて延びるブラシ剛毛(16)を具備するコーナー掃除ブラシ(5)を有し、少なくとも前記コーナー掃除ブラシ(5)の回転中、障害物に到達したこと、又は、乗り超え可能な障害物を乗り越えたことが、前記コーナー掃除ブラシ(5)を駆動する電気モータのモータ電流の変化に基づいて検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項1〜4のいずれかに記載の床掃除機。
【請求項6】
前記床センサ(18)が、非接触方式にて動作するセンサであることを特徴とする
請求項2に記載の床掃除機。
【請求項7】
前記床センサ(18)が接触方式のセンサとして形成されており、障害物に到達すること、又は、超えることが可能な障害物を越えることが、前記接触方式のセンサにより検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項2に記載の床掃除機。
【請求項8】
前記床掃除機(1)が壁追随センサを有しており、障害物に到達すること、又は、超えることが可能な障害物を越えることが、前記壁追随センサの信号の評価に基づいて検知可
能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項1〜7のいずれかに記載の床掃除機。
【請求項9】
前記床掃除機(1)が、平面視にて、長手軸(20)をもつ1又は複数の掃除ブラシ(4)を有し、前記掃除ブラシ(4)は、前記ハウジング内に配置されており、かつ、
前記床センサ(18)は、平面視にて、前記掃除ブラシ(4)の長手軸(20)と、前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対する垂線(S)とにより規定される前記ハウジング内の所定の領域に配置されており、
前記垂線(S)は、平面視にて、前記ハウジングの境界縁に対向する側の前記車輪の側面上にて前記車輪の直ぐ外側に前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対して垂直に延在しており、かつ、
前記ハウジング内の所定の領域は、前記掃除ブラシ(4)の長手軸(20)に対して前記車輪(2,3)の方向にあってかつ前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対する垂線(S)に対して前記ハウジングの境界縁の方向にあることを特徴とする
請求項2に記載の床掃除機。
【請求項10】
自動走行する床掃除機(1)であって、ハウジング(6)と、前記ハウジング内に配置された1又は複数の車輪(2,3)と、を有し、前記車輪により走行中の前記床掃除機(1)は、カーペット縁(14)に代表される、上方へ傾斜した障害面をもつ長尺で高さの低い障害物を、その障害物の長手方向に対して直角又は鋭角をなす走行方向に乗り超えることができ、かつ、前記床掃除機(1)は障害物を検知する手段を有する、前記床掃除機(1)を動作させる方法において、
床領域を走行中に前記床掃除機(1)の前記障害物を検知する手段により障害物が検知された後、
前記障害面又は前記障害物に隣接する床領域を掃除するために前記床掃除機(1)が前記障害物の長手方向に沿って走行するように前記床掃除機(1)の走行方向を変更し、その走行中、全ての前記車輪(2,3)が前記障害面に関して前記障害物に隣接する床領域上に存在しているとともに、平面視にて、走行方向に沿った前記ハウジング(6)の境界縁であって前記障害面に対向する側の前記境界縁の、前記障害面からの距離が、前記床掃除機(1)における走行方向に垂直な方向の前記ハウジング(6)の幅(b)に対応する距離よりも小さくなるように動作させることを特徴とする
床掃除機の動作方法。
【請求項11】
障害物に到達したこと、又は、乗り超え可能な障害物を乗り越えたことが、床からの距離の変化に基づいて床センサ(18)により検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項10に記載の床掃除機の動作方法。
【請求項12】
障害物の検知のために、コーナー掃除ブラシ(5)のモータ電流の量が利用可能であるか又は利用されることを特徴とする
請求項10又は11に記載の床掃除機の動作方法。
【請求項13】
センサによる障害物の検知のために、触覚センサの信号が利用可能であるか又は利用されることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の床掃除機の動作方法。
【請求項14】
前記床掃除機(1)が、平面視におけるハウジングの外郭を超えて延びるブラシ剛毛(16)を具備するコーナー掃除ブラシ(5)を有し、少なくとも前記コーナー掃除ブラシ(5)の回転中、障害物に到達したこと、又は、乗り超え可能な障害物を乗り越えたことが、前記コーナー掃除ブラシ(5)を駆動する電気モータのモータ電流の変化に基づいて検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項10〜13のいずれかに記載の床掃除機の動作方法。
【請求項15】
前記床センサ(18)が、非接触方式にて動作するセンサであることを特徴とする
請求項11に記載の床掃除機の動作方法。
【請求項16】
前記床センサ(18)が接触方式のセンサとして形成されており、障害物に到達すること、又は、超えることが可能な障害物を越えることが、前記接触方式のセンサにより検知
可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項11に記載の床掃除機の動作方法。
【請求項17】
前記床掃除機(1)が壁追随センサを有しており、障害物に到達すること、又は、超えることが可能な障害物を越えることが、前記壁追随センサの信号の評価に基づいて検知可能であるか又は検知されることを特徴とする
請求項10〜16のいずれかに記載の床掃除機の動作方法。
【請求項18】
前記床掃除機(1)が、平面視にて、長手軸(20)をもつ1又は複数の掃除ブラシ(4)を有し、前記掃除ブラシ(4)は、前記ハウジング内に配置されており、かつ、
前記床センサ(18)は、平面視にて、前記掃除ブラシ(4)の長手軸(20)と、前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対する垂線(S)とにより規定される前記ハウジング内の所定の領域に配置されており、
前記垂線(S)は、平面視にて、前記ハウジングの境界縁に対向する側の前記車輪の側面上にて前記車輪の直ぐ外側に前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対して垂直に延在しており、かつ、
前記ハウジング内の所定の領域は、前記掃除ブラシ(4)の長手軸(20)に対して前記車輪(2,3)の方向にあってかつ前記車輪(2,3)の幾何学上の軸(19)に対する垂線(S)に対して前記ハウジングの境界縁の方向にあることを特徴とする
請求項11に記載の床掃除機の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1には自動走行する床掃除機に関し、その床掃除機は、典型的にはカーペット縁のような上方へ傾斜した障害面をもつ高さの低い長尺の障害物を、その障害物の長手方向に対して直角又は鋭角の走行方向に乗り超え(本明細書では「乗り越え」には「乗り上げ」の意味も含む)て走行することができる。さらにその床掃除機は、障害物検知のための手段を備える。
【0002】
同様に、本発明は、上述した機能と手段を有し自動走行する床掃除機を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
このような床掃除機は既に多くの形態が知られている。例えば、特許文献1〜4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開102011000536号公報
【特許文献1】独国特許出願公開102008014912号公報
【特許文献1】独国特許出願公開102011000250号公報
【特許文献1】独国特許出願公開1020110036772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、このような自動走行する床掃除機は、カーペット縁又は床の敷居などの障害物に到達する直前に走行している床面に対して、上方へ傾斜したすなわち隆起した又は立ち上がった縁部をもつ極めて小さい障害物を乗り越えることもできる。
【0006】
これらのタイプの床掃除機の掃除方針の設定は、例えば建物の部屋と同様であったり又は建物の部屋の一部(のみ)であったりする、掃除のために選択された所定のスペースが、所定の規則的シーケンスにて走行されることにより、可能な限りほぼ全ての到達領域をカバーするべく、走行面に対する掃除ブラシの動作及び/又は塵の吸引を実行するようにするものである。この掃除方針の範囲内に存在する可能性がありかつ乗り超える可能性がある上述の障害物は、それぞれ、ロボット掃除機の内部又は部屋の所与の壁に設けた所定の指示器に予め設定されたパターンによる方向に従って乗り越えられる。障害物はさらに、複数回にわたって乗り越えられることもある。
【0007】
上述した従来技術を基として、本発明の目的は、さらに効果的な掃除を可能とする、自動走行する掃除機及びその動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記目的を達成する自動走行する床掃除機が実現される。その態様では、障害物又はその障害物に隣接する領域を掃除する手順が実行される。
その手順においては、床掃除機が、障害物の長手方向に基づいて走行方向を想定するとともに、障害面に関しては、その障害物の前方の床領域上を走行することを含む。そして、床掃除機における走行方向に沿った境界縁は、障害面から所定の横方向距離をもって走行する。その横方向距離は、床掃除機における走行方向に対して垂直な方向の幅に対応する距離よりも短い。
部屋の掃除における上記の手順後の経路や最初の経路においては、障害物に乗り上げて障害物(例えばカーペット)を掃除することも可能ではあるが、上記の手順を設けることにより、床掃除機は、目標設定した方式にて長尺の障害物に沿って(例えばカーペット縁に沿って)走行することができる。
障害物における対象とする端面のことを、本明細書では「上方へ傾斜した障害面」又は「障害面の直前の領域」とも称しているが、この障害物の端面が目標設定した通りに掃除されることが可能となる。
特に、床掃除機は、床領域上を障害面に沿って走行することもできる。その床領域は、障害物の前方に存在しており、すなわちその床領域はそれに応じてより低い位置にある。この床掃除機の走行は、掃除経路の途中で、床掃除機における例えばブラシ剛毛が障害面と接触しないように行われる。
特に、複数のこのような掃除経路をプログラミングにより設定してもよい。各々の掃除経路は、例えば床掃除機のブラシ剛毛による障害面との接触が生じるまで、又は、床掃除機のブラシ剛毛が障害面と少なくとも部分的に重なりを生じるまでは、障害面に近づいていくものである。
【0009】
このように床掃除機が、掃除方針において、目標設定した通りに走行方向を変更又は適応させることにより、乗り越え可能な長尺の障害物を考慮するという事実によれば、この床掃除機が当該障害物自体を掃除することもまた可能である。例えば、上方へ傾斜し障害面を乗り越えずにその上方へ傾斜した障害面に対する別個の掃除を完了した後に、当該障害物自体の掃除を行う。障害面の掃除後に床掃除機は、例えば特定の期間の間だけ又は特定の掃除が完了するまで、障害物上を走行するだけである。このことは、障害物のベース面が、床掃除機のベース面に対して所定の寸法を有しているときに特に意義がある。すなわち、例えば、障害物の幅及び/又は長さが、慣用的な走行方向における床掃除機の寸法の少なくとも2倍又はそれ以上のときである。
【0010】
このような自動走行する床掃除機を動作させる方法において、目的を達成する別の可能な解決手段が提供される。それによれば、障害物を検知した後、床掃除機はその走行方向を変更する。その走行方向の変更は、床掃除機が障害物に沿って走行するように行われ、その際、障害物が、床掃除機における走行方向に沿った境界縁から所定の距離にあるように行われる。その所定の距離は、走行方向に対して垂直な方向の床掃除機の幅に対応する距離よりも小さい。このような変更は、最初に障害物又は障害面を乗り越えた直後に行ってもよい。しかしながら、予め設定されたパターンに従った部屋内の通例の走行後(又は走行後にのみ)に行ってもよく、又は、これらの事象の間すなわち、1回目又は複数回目に障害物又は障害面を乗り越えたときと、設定された掃除方針に従った掃除の完了時と間に行ってもよい。
【0011】
本発明の更なる特徴は、以下に、図面も参照して説明され示される。図面は上述した概念に関係する好適な態様である。しかしながらそれらの好適な態様は、本明細書に記載され若しくは図面に示された、又は、独立して若しくは全体概念としての、1又は複数の個々の特徴のみに関して重要である。
【0012】
この種の床掃除機は、上述の先行技術文献に記載されており、本願の特許請求の範囲におけるこれらの先行技術文献の特徴を包含する目的のために、それらの開示は、非接触走査や可能なセンサ構成等による部屋検知の実施例に関しても本願の開示に含まれるものとする。
この種の床掃除機においては、マイクロプロセッサが設けられることが好適である。特に、1又は複数の揮発性及び/又は不揮発性メモリがマイクロプロセッサに接続され、それによりプログラム、特に走行プログラムすなわち掃除方針が実行される。
さらに好適には、このような床掃除機が、床領域及び/又は部屋の検知能力を備えており、例えば、上述した非接触走査によるものである。特に、床掃除機に設けられた赤外線及び/又は1若しくは複数のセンサを用いたセンサの走査による。また、超音波及び/又は赤外線センサも可能である。
さらに好適には、床掃除機が、住居の掃除されるべき1又は複数の部屋のマッピングを作成する。例えば、任意に”ティーチイン”走行(学習走行)を行ってマッピングを作成し、それに続いてこのマッピングに基づいて掃除経路を実行する。
【0013】
上方へ傾斜した障害面は、このタイプの床掃除機により乗り超えられることが可能であり、一般的に、周囲の床に対して数mmの高さ、例えば1mmから20mm、30mm又は40mmまでの垂直方向に立ち上がった障害面を含む。上方へ傾斜した障害面の範疇には、上記の垂直方向距離による上方傾斜した障害面が、非常に急峻若しくは直立的であるもの、又は、階段状であるものが含まれる。いずれにしても、障害物の縁に対して垂直な方向に計測した障害面の幅は、数cmまでの範囲であり、例えば、5mmから20mmである。
【0014】
別の好適例においては、乗り越えることができる長尺の障害物が検知されかつ床掃除機がその障害物に沿って走行するように走行方向が変更された後、その長手方向に沿った走行が、走行方向のコンピュータ支援指示を用いて行われる。これは、床掃除機のブラシが、可能な最も効果的なやり方で障害物の縁を掃除するように、特に、上方へ傾斜した障害面を掃除するように行われる。
例えば、実質的に鉛直方向の回転軸をもつブラシである円形ブラシを設けてもよい。後に詳述するが、このブラシは、そのブラシ剛毛の円形の回転領域が床掃除機のハウジングの平面視での外郭を超えて突出している。そして、走行中に、円形ブラシの回転するブラシ剛毛の円の中央線上に障害物の縁が位置するように走行する。あるいは走行中に、ブラシ剛毛の円に対して障害物の縁が接線を形成するように、又は、障害物の縁がブラシ剛毛の円のやや内側で円弧を切断するように走行する。
【0015】
上記に加えて又は上記に替えて、障害物の縁に沿って複数回の走行を行ってもよい。この場合、例えば、ハウジング境界縁(床掃除機のハウジングにおける、障害物の縁に沿った走行方向に延在する境界縁)と障害物の縁の間の距離を変えて行ってもよく、又は、障害物の縁部との重なりをもって若しくは重ならずに行ってもよい。このことは、1つの走行中には、上述の円形ブラシが最も効果的なやり方で障害物の縁部を掃除するように行う一方、別の走行中には、ハウジングの平面視にて実質的に水平な回転軸をもつ掃除ブラシが障害物の縁部を掃除するように行う。
【0016】
乗り越えられる障害物は、床掃除機によって種々の方法により検知されてもよい。
【0017】
従って、その一方で、床センサを用いて床からの距離の変化を検知しかつ適切に評価することもできる。これに関して、これらのタイプの床掃除機はしばしば床センサを有している。この床センサは段差を回避することを目的とし、それにより床掃除機が段差に落ちることを防止する。この目的のために、このような床センサはしばしば、床掃除機において通常の掃除を行う走行方向における前部領域に配置されている。
【0018】
しかしながら、後に詳述するが、本発明の態様における特別な構成が提供される。
【0019】
さらに、上述したように、床掃除機はブラシを備えてもよい。ブラシは、好適にはコーナーブラシとして形成され、さらに実質的に鉛直方向の回転軸を有することが好適である。いずれにしてもこのブラシは、回転中には平面視におけるハウジング外郭を超えて延びる剛毛を具備しており、そして乗り越え可能な障害物に到達するか又は乗り越えたとき、斯かるコーナーブラシを駆動する電気モータのモータ電流の変化に基づいて検知することができる。
【0020】
さらに、床センサがさらに、接触センサとして形成されてもよい。このようなセンサは触覚センサとも称される。障害物に到達したこと又は乗り越えられる障害物を乗り越えたこと及びそれによる乗り越えた床の鉛直高さの検知可能な変化を、直接接触により検知してもよい。接触センサは、例えば、床上に載置され鉛直方向に可動であるスライド脚として形成してもよい。
好適には走行方向に、任意には全方位に、角柱、球若しくは半球、又は凸曲面にて設けられるそれらの接触センサによって、床掃除機は、障害物に捉えられ留められることを回避することができる。
【0021】
床掃除機はさらに、壁追随センサを有してもよい。このタイプのセンサは、少なくとも床掃除機による特定の経路と関係して、また、しばしば掃除すべきスペースを検知するための始動経路と関係して、壁に沿って走行できるように慣用的に設けられる。本発明の態様においては、この壁追随センサを床センサの信号を評価するために用いることができ、壁追随センサの信号と組み合わせる。壁追随センサの信号ではなく床センサの信号が検知された場合、乗り越え可能な障害物が存在するのか、又は、そうではなく例えば壁へと移行する境界が存在するのか、といったような評価が行われる。
【0022】
上述した通り、床掃除機はハウジングを有し、ハウジングは平面視にてハウジング外郭を具備しかつ走行面をもつ1又は複数の車輪を具備する。さらに床掃除機は少なくとも1つの掃除ブラシを有し、掃除ブラシは長手軸を具備する。車輪及び掃除ブラシはまた、ハウジング外郭内に配置されている。同じく平面視にて床センサも、ハウジング外郭内の所定の領域に配置されている。ハウジング外郭内の所定の領域は、掃除ブラシの長手軸と車輪の幾何学上の軸に対する垂線とによりその範囲を規定される。この垂線は、車輪走行面の直ぐ外側に延びており、車輪走行面から見てハウジング境界縁に対向する側の側面上から延びている。
【0023】
円形ブラシが設けられるとき、その円形ブラシは、全体的に又は部分的に上述したハウジング外郭内の領域に位置してもよい。さらにこの円形ブラシは、走行する車輪から見て、掃除ブラシの反対側に位置している。
【0024】
特に、掃除ブラシがその長手軸の方向に、車輪すなわち車輪走行面を超えてハウジング境界縁の方へ延びているとき、上述したハウジング外郭内の領域の範囲が、掃除ブラシにおける少なくともこの外方に延長した部分において掃除ブラシの長手軸に平行に延びる軸により設けられることが好ましい。この軸は、掃除ブラシにおける車輪に対向する側の限界を規定しており、一般的には掃除ブラシの径方向の剛毛長さに基づいて規定される。
【0025】
上述したハウジング外郭内の領域はまた、この形態にて床掃除機の1つの車輪についてのみ設けられてもよい。走行方向の変更のために旋回可能な車輪を含む場合、上記の規定は、直進走行中の車輪の位置についてのものである。
【0026】
しかしながら、2つの車輪が設けられる構成が好適であり、それらが掃除ブラシの軸に対し平行に延びる共通軸上に配置されることが、さらに好適である。
【0027】
このような構成の結果として、床掃除機がカーペット縁等の障害物の縁に沿って走行しているとき、床センサは既にカーペットと重なってすなわち相対的に低い鉛直高さを記録しているが、関係する車輪及び/又はブラシはなおカーペットの下の床面のレベルに存在していることを可能とするように、床センサが設けられる。。
【0028】
特に円形ブラシの形態にてコーナー掃除ブラシが設けられるときは、コーナー掃除ブラシのモータ電流量を評価することにより障害物を検知してもよい。障害物に遭遇したとき又は障害物を乗り越えたとき、トルク及びそれによるモータ電流が変化し、その結果、評価が可能となる。
【0029】
これに替えて又はこれに加えて、上述した触覚センサすなわち接触センサを用いて評価を行ってもよい。このセンサにより与えられる信号もまた、それに応じたように評価され、任意であるが壁追随センサの信号と連携させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、カーペット縁に沿って走行中の自動走行する掃除機を示した図である。
図2図2は、図1に対応する図であり、ハウジング境界縁に関係する車輪及び円形ブラシの配置を示した図である。
図3図3は、図1及び図2に対応する床掃除機の底面図であり、走行中に想定されるカーペット縁との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。しかしながら、図面は実施例の一つとして示すものである。
【0032】
自動走行する床掃除機1が開示されている。
【0033】
この床掃除機は、特に図3に示されるように、2つの車輪2、3を具備しており、一例として、それらが個別に駆動されることが好適である。
【0034】
さらに、床掃除機1は、実質的に水平な軸の周りで回転する掃除ブラシ4と、実質的に垂直な軸19aの周りで回転するコーナー掃除ブラシ5とを具備する。コーナー掃除ブラシ5は、一例では、円形ブラシとして形成されることが好適である。
【0035】
ハウジング6は、床掃除機1の平面視にて認識でき(具体的には図3の底面図に示されている)、ハウジング境界縁(図3を参照)は、実質的に、長方形部分7と円形部分8とを備えている。一例として、長方形部分7は それに続く円形部分8より若干小さい幅で形成されており、円形部分8は直線状の延長部分9も具備し、延長部分9は長方形部分7に繋がっている。
【0036】
さらに、床掃除機1は、詳細に図示しないが、マイクロプロセッサとこれに接続された電子メモリとを具備するとともに、制御装置と制御プログラムを具備する。それらの中には走行ルーチンが記憶されており、また、それらの走行ルーチンは計測若しくは検知されたパラメータに基づいて生成可能若しくは変更可能である。
【0037】
床掃除機1が走行するスペースを検知するために、床掃除機1は非接触走査装置を有している。本実施例では、カバー部10に設けられている。これに関しては、当初に記述した先行技術にも記載されている。
【0038】
図1は、床掃除機1の典型的な走行状況を示している。
【0039】
床掃除機1は、先ず、図示された部屋11内を壁12に沿って走行する。例えば、この図には、元の走行方向Vが破線で示されている。その途中で、床掃除機1は、カーペット13に乗り上げる。カーペット13は、長尺の障害物としてのカーペット縁14を具備する。この場合、カーペット縁14は、一般的な用語における上方へ傾斜した障害面も表現している。
【0040】
センサによる検知の結果として、任意には上述した走査による検知の結果として、床掃除機1が、元の走行方向Vに対するカーペット縁14の向きを決定することが可能である。この特別な掃除モードが選択されているときはいつでも、それが任意選択であっても固定ルーチンとして設定されていても、床掃除機1は、カーペット縁14に対して実質的に平行に延在する走行方向Rに掃除経路を形成する。
【0041】
これに関して、床掃除機1の走行は、走行方向に沿った障害面(この場合はカーペット縁14)から床掃除機1が離れて走行するように行われる。そして、床掃除機1における走行方向に沿った境界縁からカーペット縁14までの距離は、床掃除機1の幅bに対応する距離よりも小さい。これにより、特に、障害物に接触することなく障害物の前方の床面を掃除することができる。この距離は、連続的に小さくなっていってもよく、任意であるが幾つかの経路を経て小さくなっていってもよい。この距離はまた、上述した幅bより小さく、例えば上述した幅bからその100分の1までに対応する距離でもよく、あるいは、床掃除機1が障害物に最終的には接触するような動作モードにさえ拡張してもよい。
【0042】
さらに、カーペット縁14からのハウジング境界縁までの距離、一実施例においては特にハウジング境界縁9若しくは選択的には境界縁15(図3を参照)までの距離であって任意にはハウジング境界縁がカーペット縁14と重なることもある、その距離は、次のように選択される。すなわち、コーナー掃除ブラシ5(図1及び図2に示される)が設けられる場合にはそのコーナー掃除ブラシ5が、ブラシ剛毛16により規定されるその円形面領域17に関してカーペット縁14と所定の重なりをもって走行するように、例えばカーペット縁14が円形面領域17の中央線上に位置して走行するように、選択される。
しかしながら、このような走行において、その距離が次のように設定されてもよい。すなわち、カーペット縁14が円形面領域17に対し接線方向外方に延在するように、又は好適には、カーペット縁14が円形面領域17に対しその円弧を若干切断して延在するように設定されてもよい。
【0043】
さらに、この距離は、特に次のように選択されてもよい。すなわち、コーナー掃除ブラシが設けられておらず、水平軸の周りで回転する掃除ブラシ4の末端領域が、走行中に上述したカーペット縁14を掃除するように選択する。これに関して、異なる複数の位置を実現することもできる。例えば、掃除ブラシ4の端面が、障害物の縁と関連性を有するが、障害物の縁から所定の距離をもって走行するか、又は、障害物の縁と接触して若しくは重なりをもって走行する。
【0044】
さらに好適には、床掃除機1(図3参照)は、床センサ18を有する。床センサ18は、接触式又は非接触式にて動作する。床センサ18が、ハウジング外郭内の所定の領域に配置されることは明らかであり、関係する車輪2の幾何学上の軸19又は掃除ブラシ4の幾何学上の軸20に基づいてこの軸19又は軸20より外側であってハウジング6の境界縁の側面に配置される。
別の実施例においては、異なる構成で実現される。床センサ18が、同じく平面視に基づいて、ハウジング外郭内の所定の領域に配置される。このハウジング外郭内の所定の領域は、掃除ブラシ4の長手軸と、幾何学上の車輪軸20に対する垂線Sとにより規定される。垂線Sは、車輪3の走行面の直ぐ外側に延在しており、それは車輪3の走行面から見てハウジング6の境界縁に対向する側の車輪3の側面上である。
【0045】
このように、カーペット縁14に沿った走行は、この床センサ18を用いて制御(協働した制御)することができる。床センサ18が(既に)カーペット13のより高い隣接領域と重なっている限り、ここで対象としている特定の掃除動作において床掃除機1は、カーペット縁14に沿って走行し、好適には、カーペットにより覆われていない床領域に向かってカーペット縁14から離れて曲がるような傾向を若干もって走行する。それにより、床センサ18が、もはやカーペット(この例の場合)又は一般的な障害物との重なりを記録しなくなる毎に、床掃除機1がカーペットに対して戻っていくという動きを生じる。
【0046】
カーペット縁14又は一般的な床障害物のセンサによる検知に替えて、上方へ傾斜した障害面の検知を、例えば円形ブラシとして形成されたコーナー掃除ブラシ5のモータ電流をモニタリングすることにより行ってもよい。記録されたモータ電流がその後、例えば関連する抵抗回路により検知され、そのロボット吸引装置の制御回路又は制御プログラムにより評価される。
掃除経路の途中、実質的に均一な床面上では、モータ電流は掃除される床の条件の関数として比較的小さなバンド幅内に存在する、すなわち実質的に一定値に存在する。カーペット縁14のような障害物を超える場合、トルクの増大が生じてモータ電流を増加させる。
更なる信号、例えば壁追随センサの信号の評価によりこのトルクの増大すなわちモータ電流の増加が例えば壁12又は家具等のスペース境界に到達したことにより生じたものではないと示された場合、このモータ電流の増加は、床掃除機1が障害物を乗り越えたことによると評価することができる。
その後ルーチンが開始され、そのルーチンでは、同じ床面領域内で後方及び前方に複数回走行することにより、常に同じように生じるモータ電流の増加を、例えばカーペット縁14である障害物の縁として評価することができる。そして、走行方向をこの検知されたカーペット縁14に対応する向きとすることができる。この複数回の前後走行は、上述した他のセンサに関して任意に(最初に)行ってもよい。
【0047】
加えて又は替わりに、触覚センサをもうけてもよい。触覚センサは、側面のハウジング境界縁の外側の直ぐ隣に位置する床の高さをモニタリングする。床面の隆起が、特に壁追随センサからの追加メッセージを伴わずに識別された場合、これを、カーペット縁14の平坦な障害物と解釈してもよい。走行方向の変化についての上述の説明に対応して、ここでも同様に、任意にこのような領域で複数回走行した後、障害面に沿った所望する走行を生じるように走行方向を変更しかつ設定してもよい。
【0048】
開示された全ての特徴は(それら自体)本発明に関連する。関係する/添付する優先権書類(先行出願の複写)の開示内容もまた、本願の特許請求の範囲におけるこれらの書類の特徴を統合する目的も含め、その出願の開示の全てがここに含まれる。任意従属形式における従属項は、特にこれらの請求項の分割出願を行うために、従来技術の独立した発明の改良を特徴としている。
【符号の説明】
【0049】
1 床掃除機
2、3 車輪
4 掃除ブラシ
5 コーナー掃除ブラシ
6 ハウジング
7 長方形部分
8 円形部分
9 直線状部分
10 カバー部
11 スペース
12 壁
13 カーペット
14 カーペット縁
15 ハウジング境界縁
16 ブラシ剛毛
17 円形面領域
18 床センサ
19、20 軸
19a 軸
R 走行方向
S 垂線
V 元の走行方向
b 幅
図1
図2
図3