(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
(研削器具1の構造)
まず、
図1に基づいて研削器具の構造について説明する。
図1は、研削器具1の概略の構造を示す図であり、
図1(a)に概略の構成図、
図1(b)及び
図1(c)に実際の研削器具1の写真を示す。
【0017】
図1に示すように研削器具1は、回転体10、取付軸12及び砥石部20を備えている。
回転体10は、後述する砥石部20と同じ材料を、焼結などにより円柱状に固めたものであり、円柱形状の2つの端面のうちの一端10a側の回転中心軸上に取付軸12が取り付けられている。
【0018】
取付軸12は、ステンレスなどの金属製の棒材であり、フライス盤70やドリルなどの回転軸74のチャック72に研削器具1を取り付けるための軸である。
砥石部20は、砥粒と結合剤を混ぜて焼き固めたもので、高速で回し、硬い砥粒によって被加工物80の面(被加工面80a)を少しずつ削り取って加工するものである。被加工物80の材質、加工の目的(立体画像の形状)などによって、適当な結合度(結合の強さ)、粒度(砥粒の大きさ)などの砥石を選ぶようになっている。
【0019】
砥粒の材質としては、アルミナ研削材、人造エメリー研削材、アルミナジルコニア研削材などのアルミナ質研削材や黒色炭化ケイ素研削材、緑色炭化ケイ素研削材などの炭化ケイ素質研削材などを用いる。
【0020】
砥石部20は、回転体10と一体として円筒形状に焼結されたものの先端部分を研磨などにより削って、回転体10の端面のうち取付軸12が取り付けられている端面10aと反対側の端面10bに、長手方向が、端面10bの直径と一致するように細長い直方体形状に形成したものである。
【0021】
なお、砥石部20の長手方向の長さは、被加工面80aに形成する立体画像の大きさによって決定される。
(立体画像形成工程)
次に、
図2に基づき、被加工面80aに立体画像を形成するための工程について説明する。
図2は、立体画像形成工程を模式的に示した模式図である。
【0022】
図2に示すように、立体画像形成工程は、以下の(ア)〜(ウ)の工程により構成されている。
(ア)研削器具1の取付軸12をフライス盤70のチャック72に挿入して締め付け、回転軸74に取り付ける。また、フライス盤70のテーブル76に被加工物80であるSUS材の平板(以下、SUS板80とも呼ぶ)を載置して固定する(
図2(a)参照)。
(イ)フライス盤70の回転軸74を
図2(b)中に下向きの矢印で示すように降下させて、研削器具1の砥石部20をSUS板80の被加工面80aに当接させる(
図2(b)参照)。
(ウ)フライス盤70の回転軸74を所定の回転数で回転させつつ、フライス盤70のテーブル76を所定の立体画像が得られるように、研削器具1の移動軌跡が
図2(c)中に横方向の矢印で示すように直線状になるように移動させる(
図2(c)参照)。
(立体画像形成工程の特徴)
次に、
図3に基づき、以上のような立体画像形成工程の特徴について説明する。
図3は、上記立体画像形成工程で形成した立体画像の例を示す図である。
【0023】
上記のように、研削器具1を回転させながらSUS板80の被加工面80a上を相対的に移動させると、被加工面80a上に、砥石部20の幅で螺旋状に極小幅の溝が形成される。
【0024】
この溝は螺旋状に連続的に形成されているため、加工が済んだ被加工面80aをある目線の方向から目視すると、目線の反対方向から溝で反射した光が目線に入り、それ以外の
方向からの光は目線以外の方向に反射されるため目線に入らないことになる。
【0025】
このとき、視認することができる画像を
図3(a)に示す。
図3(a)では、被加工面80a上で、上下に分かれたリングから形成される立体的な円筒状の模様を複数視認することができる。
【0026】
このうち1つの模様において視認できる上下2つのリングの一方は、回転体10の端面10bの直径上に配置された砥石部20のうち、回転体10の回転中心から端部までの長さ(
図1中に示す砥石部20では、ほぼ半径)の部分で形成された模様であり、他方は、砥石部20の残りの部分(
図1中に示す砥石部20では、ほぼ他の半径)で形成される模様である。
【0027】
さらに、目線を右向きにずらすか被加工面80aを左に回転させた場合に視認できる模様を
図3(b)に示す。
図3(b)では、円筒状の模様が
図3(a)に示す模様を斜め方向から視認したものとなる。
【0028】
これは、被加工面80aに形成された溝から反射して目線に入る光が
図3(a)に示す場合に比べ、目線をずらすか被加工面80aを回転させた分、斜めの位置で反射するためである。
【0029】
また、目線を左向きにずらすか被加工面80aを右に回転させた場合に視認できる模様を
図3(c)に示す。
図3(c)でも
図3(b)と同様な原理で、円筒状の模様が
図3(a)に示す模様を斜め方向から視認したものとなる。
【0030】
以上のように、本立体画像形成加工を施した被加工面80aに対し目線を回転させるか、被加工面80aを回転させると、立体画像形成加工により被加工面80aに形成された溝から目線方向に対してのみ光が反射され、目線の方向以外の光が目線に入らないことで、円筒状の模様が立体的に回転しているように見える。
[第2実施形態]
次に、
図4に基づき、研削器具1の砥石部20を異なる形状とした第2実施形態について、
図4は、研削器具2の概略の構造を示す図であり、
図4(a)に概略の構成図、
図4(b)及び
図4(c)に実際の研削器具2の写真を示す。
【0031】
第2実施形態における研削器具2は、
図4に示すように、回転体10の円形の先端端面10bのうち、回転体10の回転中心を原点として270度分(端面10bの4分の3)を削除して形成してある。
【0032】
砥石部20以外の構造は、第1実施形態における研削器具1と同様であるため、同じ符号を付し、説明を省略する。
このような、研削器具2を用いて、第1実施形態と同じ立体画像形成工程により被加工物80の被加工面80aを加工した立体画像の例を
図5に示す。
図5(a)は、被加工面80aを正面視した図であり、
図5(b)は、被加工面80aを右斜めから見た図であり、
図5(c)は、被加工面80aを左斜めから見た図である。
【0033】
第2実施形態(研削器具2を用いた立体画像形成工程)においても、第1実施形態(研削器具1を用いた立体画像形成工程)と同様に、円筒状の模様が立体的に回転しているように見える(
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)参照)。
[第3実施形態]
次に、
図6に基づき、研削器具1の砥石部20を異なる形状とした第2実施形態について、
図6は、研削器具3の概略の構造を示す図であり、
図6(a)に概略の構成図、
図6
(b)及び
図6(c)に実際の研削器具3の写真を示す。
【0034】
第2実施形態における研削器具3は、
図6に示すように、回転体10の円形の先端端面10bのうち、回転体10の回転中心から外れた位置に、半円状の凸部を残し、その部分を砥石部20とし、その他の部分を削除して形成してある。
【0035】
砥石部20以外の構造は、第1実施形態における研削器具1と同様であるため、同じ符号を付し、説明を省略する。
このような、研削器具3を用いて、第1実施形態と同じ立体画像形成工程により表面加工した立体画像の例を
図7に示す。
図7(a)は、被加工面80aを正面視した図であり、
図7(b)は、被加工面80aを右斜めから見た図であり、
図7(c)は、被加工面80aを左斜めから見た図である。
【0036】
第3実施形態(研削器具3を用いた立体画像形成工程)においても、第1実施形態と同様に(研削器具1を用いた立体画像形成工程)に、円筒状の模様が立体的に回転しているように見える(
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)参照)。
[第4実施形態]
次に、
図8に基づき、研削器具1の砥石部20を異なる形状とした第4実施形態について説明する。
図8は、研削器具4の概略の構造を示す図であり、
図8(a)に概略の構成図、
図8(b)及び
図8(c)に実際の研削器具4の写真を示す。
【0037】
砥石部20以外の構造は、第1実施形態における研削器具1と同様であるため、同じ符号を付し、説明を省略する。
第4実施形態における研削器具4は、
図8に示すように、回転体10の円形の先端端面10bを、長手方向が、端面10bの直径と一致し、回転体10の回転中心から半径の長さとなるように細長い直方体形状に形成したものである。
【0038】
このような、研削器具4を用いて、第1実施形態と同じ立体画像形成工程により表面加工した立体画像の例を
図9に示す。
図9(a)は、被加工面80aを正面視した図であり、
図9(b)は、被加工面80aを右斜めから見た図であり、
図9(c)は、被加工面80aを左斜めから見た図である。
【0039】
第4実施形態(研削器具4を用いた立体画像形成工程)においても、第1実施形態と同様に(研削器具1を用いた立体画像形成工程)に、円筒状の模様が立体的に回転しているように見える(
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)参照)。
[第5実施形態]
次に、
図10に基づき、第1実施形態〜第4実施形態と異なる立体画像形成工程としてものについて説明する。
図10は、第5実施形態における立体画像形成工程で形成した立体画像の例を示す図である。
【0040】
第5実施形態では、第4実施形態における研削器具4を用いて立体画像形成を行っているため、研削器具の説明は省略する。
第5実施形態では、フライス盤70の回転軸74を回転させつつ回転軸74を連続的に移動させるのではなく、
(ア)回転軸74を回転させつつ研削器具4の砥石部20をSUS板80に当接させSUS板80の被加工面80aを研削する。
(イ)その後、砥石部20をSUS板80から離隔する。
(ウ)回転軸74の位置を移動させる。
(エ)(ア)〜(ウ)を繰り返し、SUS板80に、非連続的に立体画像を形成する。
【0041】
このよう立体画像形成工程により表面加工した立体画像の例を
図10に示す。
図10(a)は、被加工面80aを正面視した図であり、
図10(b)は、被加工面80aを右斜めから見た図であり、
図10(c)は、被加工面80aを左斜めから見た図である。
【0042】
第5実施形態(研削器具4を用いた立体画像形成工程)では、第1実施形態〜第4実施形態と異なり(研削器具4を用いた立体画像形成工程)、直方体の両端面を除いた形状の模様が立体的に回転しているように見える(
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)参照)。
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、研削器具1,2,3、4の回転体10は、円柱形状としたが、円柱形状でなくとも、四角柱などの多角柱の形状あるいは樽状などであってもよい。
(2)上記実施形態では、研削器具1,2,3、4を回転させるためにフライス盤70を用いたが、フライス盤70でなくともドリルなどを用いてもよい。
【0043】
また、ロボットアームの先端に研削器具1,2,3、4の回転機構を取付けて研削器具1,2,3、4を回転させつつ被加工物80に対して移動させるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、フライス盤70のテーブル76を移動させることによって研削器具1,2,3、4と被加工物80の被加工面80aとを相対的に移動させていたが、被加工物80を固定し、フライス盤70やドリルなどの回転軸を移動させることによって、研削器具1,2,3、4と被加工物80の被加工面80aとを相対的に移動させてもよい。
(4)上記実施形態では、研削器具1,2,3、4を被加工面80a上で直線状に移動させていたが、移動方向は直線状でなくても、円状の曲線や自由曲線などを描くように移動させてもよい。
(5)上記実施形態では、研削器具1,2,3、4の回転体10の端面10bを切削加工して砥石部20を形成していたが、回転体10を他の材質(例えば金属材料など)で形成し、その端面10bに砥石部20を埋め込みや接着あるいはボルトなどで機械的に取り付けるようにしてもよい。
(6)上記実施形態では、被加工物80としてSUS板を用いていたが、光が反射する材質のものであればSUS板以外のアルミ材などの金属材料あるいはアクリルやプラスチックなどの樹脂材を用いてもよい。
(7)上記実施形態では、研削器具1,2,3,4として、回転体10の先端に砥石部20を形成していたが、砥石部20の代わりに、金属や硬質樹脂の線材などをブラシ状に多数配列したものとしてもよい。また、そのブラシに、砥粒を付着させるようにしてもよい。