(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、複数の異なる前記設定残量において、前記素材の残量がそれぞれの前記設定残量に達すると、以降の前記上昇時間を、前記設定残量よりも多い場合の前記上昇時間よりも長くするように前記駆動部を制御する、
請求項4に記載の素材分離装置。
前記制御部は、前記ブロー部により前記エアーを吹き付けて前記素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で前記吸着パッドに前記素材を吸着させた後に、前記第1の所定位置よりも低い第2の所定位置まで前記吸着パッドを上昇させる速度を遅くすることによって、前記素材の残量が前記設定残量に達したとき以降の前記上昇時間を、前記設定残量よりも多い場合の前記上昇時間よりも長くする、
請求項4に記載の素材分離装置。
前記制御部は、前記ブロー部により前記エアーを吹き付けて前記素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で前記吸着パッドに前記素材を吸着させ、前記第1の所定位置よりも低い第2の所定位置まで前記吸着パッドを上昇させた後、前記エアーを停止させた状態で前記吸着パッドを前記第2の所定位置に所定時間停止するように制御し、
前記所定時間を長くすることによって、前記素材の残量が前記設定残量に達したとき以降の前記上昇時間を、前記設定残量よりも多い場合の前記上昇時間よりも長くする、
請求項4に記載の素材分離装置。
前記制御部は、前記ブロー部により前記エアーを吹き付けて前記素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で前記吸着パッドに前記素材を吸着させた後、前記駆動部により前記吸着パッドを前記第1の所定位置の高さよりも低い第2の所定位置に上昇させ、前記エアーを停止させた状態で前記吸着パッドを前記第2の所定位置に所定時間停止してから前記吸着パッドを前記駆動部により前記第1の所定位置まで上昇させるように制御する、
請求項1に記載の素材分離装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の素材分離装置では、近年の処理速度の向上の要望に対応しようとすると、上記吸着パッドの制御の速度を上げることになるためダブルブランクの発生頻度が多くなるおそれがある。ダブルブランクの状態でプレス加工を行うと、プレス機械あるいは金型に過負荷が生じるおそれがある。
本発明の目的は、上記従来の素材分離装置の課題を考慮し、ダブルブランクの発生を低減し処理速度を上げることが可能な素材分離装置および素材分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る素材分離装置は、載置部と、ブロー部と、吸着部と、駆動部と、制御部と、を備える。載置部には、積層された複数枚のシート状の素材が配置される。ブロー部は、載置部に載置された複数枚の素材にエアーを吹き付けて最上面の素材の少なくとも一部を浮遊させる。吸着部は、複数の吸着パッドを有し、エアーが吹き付けられた状態の最上面の素材を上方から吸着パッドにより吸着して保持する。駆動部は、吸着部を上下方向に駆動する。制御部は、素材を吸着した吸着パッドを第1の所定位置まで上方移動させるように制御する。制御部は、素材の所定残量において設定された上昇時間より、所定残量よりも残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御する。
【0007】
詳しくは後述するが、本願発明者は、素材の残量が減少するとダブルブランクが発生する頻度が多くなる傾向を発見し、その傾向に基づいて、第1の発明では、所定残量において設定された上昇時間と比較して、所定残量より残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御する。
すなわち、従来は上記傾向を発見していなかったため、積層されている全ての素材について同じ上昇時間で素材を分離させていたが、上記発明のように少なくとも一部において上昇速度を短くできるため、全体として処理速度を上げることができる。
【0008】
また、所定残量における上昇速度を、上記一部における上昇時間よりも長くしているため、ダブルブランクの発生を抑制できる。
なお、ダブルブランクとは、素材が2枚だけでなく、3枚以上移動される場合も含む。 第2の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、所定残量とは、積層された複数枚の素材において、最も素材のダブルブランクが発生しやすい残量である。
【0009】
従来は上記傾向を発見していなかったため、積層されている全ての素材についてダブルブランクが発生しない最も遅い上昇速度で素材を分離させる必要があったが、上記発明のようにダブルブランクが多くなる所定残量以外の範囲の少なくとも一部において、上昇速度をあげることができるため、処理速度を上げることが出来る。
また、ダブルブランクが発生しやすい所定残量では、上昇時間を長くするためダブルブランクを低減できる。
【0010】
第3の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、所定残量は、2枚である。
素材の残量が減少するとダブルブランクが発生しやすいことから、残量が2枚の場合に、その上側の素材を上昇させる際に下側の素材がつられて上昇しやすいといえる。
このため、残量が2枚のときのダブルブランクの発生を低減できる上昇時間では、積層されている素材の全範囲においてダブルブランクの発生を低減できる。
【0011】
第4の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、素材の残量が、所定残量以上であり予め設定された設定残量に達すると、以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くするように駆動部を制御する。
これにより、素材の残量が予め決められた設定残量以下の場合において上昇時間を長くでき、素材のダブルブランクの発生を低減できる。
【0012】
また、素材の残量が設定残量よりも多い場合には、上昇時間を短く出来るため処理速度を上げることができる。
第5の発明に係る素材分離装置は、第4の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、複数の異なる設定残量において、素材の残量がそれぞれの設定残量に達すると、以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くするように駆動部を制御する。
【0013】
このように、複数個所で処理速度を減少させることにより、できるだけ処理速度を下げずにダブルブランクの発生を低減できる。
第6の発明に係る素材分離装置は、第5の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、素材の残量が減少するに伴って、段階的または連続的に上昇時間を遅くするように駆動部を制御する。
【0014】
このように、複数個所で段階的または連続的に処理速度を減少させることにより、できるだけ処理速度を下げずに素材のダブルブランクの発生を低減できる。
第7の発明に係る素材分離装置は、第4の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、ブロー部によりエアーを吹き付けて素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッドに素材を吸着させた後に、第1の所定位置よりも低い第2の所定位置まで素材を上昇させる速度を遅くすることによって、素材の残量が設定残量に達したとき以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くする。
【0015】
ダブルブランクが発生しやすい残量において、上昇速度を遅くすることによって、最上面の素材が下側の素材から離れやすくなり、素材のダブルブランクの発生を抑制できる。
一方、ダブルブランクが発生しにくい残量の範囲で上昇速度を速くすることによって、上昇時間を短くし、処理速度をあげることができる。
第8の発明に係る素材分離装置は、第4の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、ブロー部によりエアーを吹き付けて素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッドに素材を吸着させ、第1の所定位置よりも低い第2の所定位置まで吸着パッドを上昇させた後、エアーを停止させた状態で吸着パッドを第2の所定位置に所定時間停止するように制御する。制御部は、所定時間を長くすることによって、素材の残量が設定残量に達したとき以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くする。
【0016】
ダブルブランクが発生しやすい残量において停止時間を長くすることによって、エアーを停止してから最上面の素材以外の素材が落下する時間を十分に確保できるため、素材のダブルブランクの発生を抑制できる。
一方、ダブルブランクが発生しにくい残量の範囲で停止時間を短くすることによって、上昇時間を短くし、処理速度をあげることができる。
【0017】
第9の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、ブロー部によりエアーを吹き付けて素材の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッドに素材を吸着させた後、駆動部により吸着パッドを第1の所定位置の高さよりも低い第2の所定位置に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッドを第2の所定位置に所定時間停止してから吸着パッドを駆動部により搬送位置まで上昇させるように制御する。
【0018】
このように、制御することにより、ダブルブランクの発生を低減しつつ処理速度を上げることが出来る。
第10の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、駆動部は、駆動源としてサーボモータを有する。
このように、各々の吸着パッドを上下駆動する駆動部の駆動源としてサーボモータを用いることにより、速度及び加速度が可変制御可能になり、吸着パッドの駆動を精度よく制御できる。
【0019】
第11の発明に係る素材分離方法は、ブロー工程と、吸着工程と、上昇工程と、制御工程と、を有する。
ブロー工程では、積層された複数枚のシート状にエアーを吹き付けることによって最上面の素材の少なくとも一部を浮遊させる。吸着工程では、エアーが吹き付けられた状態の素材を上方から吸着して保持する。上昇工程では、吸着した素材を第1の所定位置まで上昇させる。制御工程では、吸着した素材を第1の所定位置まで上方移動させる上昇時間を制御する。制御工程では、素材の所定残量において設定された上昇時間より、所定残量よりも残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御する。
【0020】
これにより、少なくとも一部において上昇速度を短くできるため、全体として処理速度を上げることができる。
また、本願発明者が発見した傾向に基づいて、所定残量における上昇速度を、上記一部にける上昇時間よりも長くしているため、ダブルブランクの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ダブルブランクの発生を低減し処理速度を上げることが可能な素材分離装置および素材分離方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
はじめに、素材分離装置におけるシート状の素材のダブルブランクの発生について、本願発明者が検討し発見した内容について説明する。なお、ダブルブランクとは、最上面の素材の吸着パッドによる上昇につられてその下側の素材も上昇することであり、素材が2枚だけでなく、3枚以上、上昇移動される場合も含む。
本願発明者は、素材のダブルブランクの発生について積層枚数、処理速度(吸着パッドの上昇時間)を変更し検討を行った結果、処理速度が速いほど(吸着パッドの上昇時間が短いほど)素材のダブルブランクが発生しやすく、さらに同じ処理速度(上昇時間)であってもスタックにおける素材の残量が少ない場合にダブルブランクが発生する頻度が多くなる傾向を発見した。すなわち、一定の処理速度で素材の分離動作を行った場合であっても、素材の残量が減少すると素材のダブルブランクの発生頻度が多くなる傾向がある。
【0024】
一枚だけでなく、2枚以上の素材がつられて上がるダブルブランク現象は、素材間の油膜張力や分離する瞬間に発生する真空状態が要因と考えられる。本願発明者が発見した傾向は、スタックされた素材の枚数が少なくなると、吸着したい素材と、その下の素材以下のスタックにおける油膜や表面張力が弱くなるためと考えられる。
上記傾向を発見し、本願発明者は、ダブルブランクの発生を低減し処理速度を上げることが可能な素材分離装置および素材分離方法を提供する。
【0025】
次に、本発明に係る実施の形態の素材分離装置について図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1−1.素材分離装置の構成)
図1は、本実施の形態の素材分離装置1の構成を示す図である。図に示すように、素材分離装置1は、主に載置部2と、ブロー部3と、吸着部4と、吸着パッド駆動部5と、位置検出部6と、制御部10と、を備える。
【0026】
素材分離装置1は、複数枚のシート状の素材が積層されたスタックから一枚の素材を分離する。素材分離装置1で分離するシート状の素材としては、例えばアルミニウム、マグネシウム等の非磁性体材料が挙げられる。本実施の形態では、アルミシートを例に挙げて説明する。
素材分離装置1は、アルミシート11が積層されたスタック12から一枚のアルミシート11を吸着部4によって吸着して上方の搬送位置へと移動する。搬送位置に移動されたアルミシート11は、コンベア100によって搬送されていく。コンベア100は、吸着機能を備えており、素材分離装置1によって分離されたアルミシート11を吸着して保持しながら次の作業装置(例えばプレス装置)に向けて搬送する。
【0027】
制御部10は、位置検出部6による検出に基づいて載置部2、ブロー部3、吸着部4および吸着パッド駆動部5を制御する。
(1−2.載置部)
載置部2は、載置台21と、載置台21を昇降駆動する載置台駆動部22とを有する。
載置台21には、アルミシート11が複数枚積層されたスタック12が載置される。載置台駆動部22は、載置台21を昇降駆動する。
【0028】
載置台駆動部22は、
図1に示すように載置台21の左右に配置されており、載置台21を昇降可能に支持する。
載置台駆動部22は、図示しない油圧シリンダ、油圧シリンダに接続された油圧回路および油圧回路に作動油を供給するポンプ等を有している。制御部10が載置台駆動部22の油圧回路のバルブおよびポンプ等を制御することによって、載置台21が昇降駆動する。
【0029】
(1−3.ブロー部)
ブロー部3は、空気を吐出する複数のノズル31と、高圧空気を生成するエアーコンプレッサ32と、バルブ33とを有する。複数のノズル31は、対向するように、スタック12の上端近傍であって左右に配置されている。ノズル31は、スタック12の上端近傍の側方に向けて高圧空気を吐出し、最上面のアルミシート11を浮遊させる。エアーコンプレッサ32は、複数のノズル31に圧縮空気を供給する。バルブ33は、エアーコンプレッサ32とノズル31の間に設けられている。エアーコンプレッサ32は常時駆動されており、制御部10によるバルブがオンされるとノズル31から圧縮空気が吐出され、バルブ33がオフされるとノズル31からの圧縮空気の吐出が停止される。
【0030】
(1−4.吸着部)
吸着部4は、
図1における左右方向および紙面奥行方向に複数並んで配置された吸着パッド部41と、それぞれの吸着パッド部41に接続されたバルブ42と、すべてのバルブ42に接続された真空ポンプ43(
図1参照)とを有する。なお、
図1では、図を見やすくするためにすべての吸着パッド部41に対するバルブ42は記載していない。
【0031】
図2(a)および
図2(b)は、吸着パッド部41および吸着パッド駆動部5の構成を示す部分断面図である。
図2(a)は、吸着パッド部41が上方に移動した状態を示す図であり、
図2(b)は、吸着パッド部41が下方に移動した状態を示す図である。
図2に示すように、吸着パッド部41は、アルミシート11に吸着する吸着パッド411と、吸着パッド部41の上端に接続されたパッド支持部材412と、パッド支持部材412の上端が接続されたチューブ接続部413と、チューブ接続部413の上側に配置された駆動接続部414と、を有している。
【0032】
吸着パッド411は、ゴムなどによって形成されており、アルミシート11に吸着する。パッド支持部材412は、中空の円筒状の部材であり、吸着パッド411の内側空間と繋がっている。チューブ接続部413には、バルブ42に繋がっているチューブ44が接続される。バルブ42は真空ポンプ43と接続されている。吸着パッド411がアルミシート11の上面に当接した後、真空ポンプ43を動作させることによって、吸着パッド411の内側空間の空気が、パッド支持部材412、チューブ接続部413、チューブ44およびバルブ42を介して真空ポンプ43によって吸引される。
【0033】
駆動接続部414は、チューブ接続部413と吸着パッド駆動部5の間を接続する。
(1−5.吸着パッド駆動部)
吸着パッド駆動部5は、複数のサーボモータ50と、サーボモータ50の回転駆動を上下方向の駆動に変換する変換部51とを有する。サーボモータ50、変換部51、および吸着パッド部41の順に上から配置されている。
【0034】
サーボモータ50は、吸着パッド部41ごとに設けられ吸着パッド部41を上下動させる駆動源として用いられる。サーボモータ50は、その回転軸501が鉛直方向と一致するように配置されている。
変換部51は、サーボモータ50と同軸上に配置されたボールネジ511と、ナット512と、ナット512の回転方向の動きを規制する規制部513と、規制部513と接続されている円筒部514と、ボールネジ511、ナット512、規制部513、および円筒部514を覆うハウジング515とを主に有する。
【0035】
ハウジング515は、円筒形状であって、上端にサーボモータ50が配置されている。サーボモータ50の回転軸501は、ベアリング53によってハウジング515に回転可能に支持されている。
ボールネジ511は、鉛直方向に沿って配置されており、回転軸501と連結し同軸上に配置されている。ナット512はボールネジ511に挿通されており、ナット512の内側のネジ部と、ボールネジ511の表面のネジ部が螺合している。
【0036】
規制部513は、ナット512と連結して設けられており、ボールネジ511の回転によってナット512が供回りすることを防ぐ。例えば、ハウジング515の内周面が平面視において四角形状に形成されており、規制部513もハウジング515の内周に沿って四角形状に形成されている。
円筒部514は、ボールネジ511の周囲にボールネジ511と非接触に配置されている。円筒部514の上端は、規制部513に接続されており、下端は駆動接続部414と接続されている。
【0037】
なお、複数のハウジング515は、支持フレーム8(
図1参照)によって載置部2の上方に支持されている。
以上のような構成によって、サーボモータ50を駆動すると、ボールネジ511が一方向に回転する。
図2(b)に示すように、規制部513によって供回りが規制されたナット512がボールネジ511の回転に伴って下方に移動する。そして、規制部513を介してナット512と連結している円筒部514が下方に移動し、吸着パッド部41が下方に移動する。
【0038】
また、ボールネジ511の回転方向を逆にすることによって、吸着パッド部41は上方に移動する。
(1−6.位置検出部)
位置検出部6は、光電センサであり、
図1に示すように光を発する投光部61と、投光部61から投光した光を受光する受光部62とを有する。投光部61と受光部62は、スタック12の上端位置に設けられており、スタック12を左右方向から挟むように配置されている。
【0039】
投光部61からの光がスタック12によって遮られ受光部62が受光しなくなると、スタック12の最上面がシート分離位置に達したことを検出して制御部10へと信号を送信する。ここで、シート分離位置とは、最上面のアルミシート11の分離動作が開始される位置のことである。
(1−7.制御部)
制御部10は、載置台駆動部22の油圧シリンダ、油圧回路およびポンプ等を制御し、載置台21を昇降移動する。制御部10は、位置検出部6による検出に基づいて、載置台21を停止してエアーコンプレッサ32を駆動してノズル31からアルミシート11に向けてエアーを吹き付ける。
【0040】
また、制御部10は、サーボモータ50を駆動して、吸着パッド411を下方に移動し、吸着パッド411を停止させた後、真空ポンプ43およびバルブ42を駆動してアルミシート11を吸着パッド411に吸着させる。
制御部10は、記憶部13を有している。記憶部13には、吸着パッド411のモーション(後述する
図4参照)、後述する設定残量、後述する第1の所定速度および第1の所定停止時間などが記憶されている。
【0041】
<2.動作>
次に、本発明にかかる実施の形態の素材分離装置1の動作を説明するとともに、素材分離方法の一例についても説明する。
本実施の形態の素材分離装置1では、スタック12のアルミシート11の残量が減少し設定残量に達すると、一枚のアルミシート11をコンベア100に吸着させる位置まで上昇移動させる時間を長くするように制御を変更する。
【0042】
スタック12から一枚のアルミシート11を分離させるシート分離動作について説明した後に、スタック12全体における動作について説明する。
<2−1.シート分離動作>
はじめに、1枚のアルミシート11をスタック12から分離する際の動作について説明する。
【0043】
図3は、アルミシートの分離動作を説明するためのフロー図である。また、
図4は、吸着パッド411のモーションを示す図であり、アルミシートの分離動作における吸着パッド411の位置と移動速度の変化を示す。
ステップS10において、制御部10は、載置台駆動部22を駆動し、載置台21を上昇させる。次に、ステップS20において、位置検出部6によってスタック12の上端がシート分離位置に達したことが検出されると、ステップS30において、制御部10は、載置台21の上昇を停止する。
【0044】
次に、ステップS40において、制御部10は、ブロー部3のバルブ33をオンしてエアーをノズル31から噴出する。この動作によってスタック12の最上面のアルミシート11および最上面よりも下側の数枚のアルミシート11が浮遊する。本実施の形態の素材分離装置1では、左右にノズル31が設けられており、アルミシート11の全体が浮遊する。
【0045】
次に、ステップS50において、制御部10は、バルブ42をオンして吸着パッド411の内側の空気の吸引を開始する。
次に、ステップS60において、制御部10は、サーボモータ50を駆動して吸着パッド411を吸着位置まで下降させ、浮遊状態の最上面のアルミシート11に吸着パッド411を押し付ける。この吸着パッド411の下降は、
図4の時刻t0〜t1の区間Aに相当する。また、吸着位置が、
図4においてh0として示されている。
【0046】
次に、ステップS70において、アルミシート11を吸着させるために、吸着パッド411は、アルミシート11に押し付けた状態(時刻t1の位置)で時刻t2まで保持される。この吸着パッド411の状態の保持が、
図4において、時刻t1〜t2の区間Bとして示されている。
次に、制御部10は、ステップS80において、吸着パッド駆動部5を駆動して吸着パッド411を一時停止位置まで上昇させる。この吸着パッド411の上昇は、
図4の時刻t2〜t3の区間Cに相当する。また、一時停止位置は、
図4においてh1と示されている。
【0047】
次に、制御部10は、ステップS90において、吸着パッド411が一時停止位置に到達すると、ステップS100において、バルブ33をオフしてエアーブローを停止する。
続いて、制御部10は、ステップS110において、吸着パッド411を一時停止位置に所定時間停止する。これによって、最上面のアルミシート11以外のエアーブローによって浮遊していたアルミシート11が落下する。この吸着パッド411の一時停止は、
図4の時刻t3〜t4の区間Dに相当する。
【0048】
次に、制御部10は、ステップS120において、吸着パッド411を搬送位置まで上昇させる。搬送位置(
図4においてh2と示されている)に到達すると、制御部10は、吸着パッド411の移動を停止する(ステップS130)。そして、吸着パッド411に吸着されたアルミシート11はコンベア100に吸着される。この吸着パッド411の上昇時間は、
図4において時刻t4〜t5の区間Eに相当する。
【0049】
ステップS140の後、制御部10は、ステップS140において、バルブ42をオフして吸着パッド411によるアルミシート11の吸着を解除する。吸着が解除されたアルミシート11は、コンベア100によって搬送される。
以上のようにして、積層された複数枚のアルミシート11から一枚のアルミシート11だけが分離されて搬送される。
【0050】
<2−2.全体動作>
次に、スタック12全体における動作について説明する。
図5は、スタックの全てのアルミシートを分離する動作を示すフロー図である。
本実施の形態の素材分離装置1では、スタック12におけるアルミシート11の残量が予め設定した設定残量に達すると上昇時間が長くなるように制御する例について説明する。すなわち、初期枚数(シート分離動作を行う前の最初の状後)から設定残量の一枚前の残量までのアルミシート11の上昇時間よりも、設定残量から残量が0枚になるまでのアルミシート11の上昇時間が長くなるように制御が行われる。この設定残量は予め設定されている。
【0051】
また、本実施の形態の最初に説明したように、本願発明者は、アルミシート11の残量が少ないほど、ダブルブランクの発生頻度が多くなることを発見した。そのため、スタック12に残された素材の枚数が2枚の場合に、最もダブルブランクが発生しやすいことになるので、設定残量は、2枚以上の値に設定される。
はじめにステップS210において、スタック12が載置台21に載置される。例えば、スタック12におけるアルミシート11の積層枚数が600枚とする。また、設定残量を、例えば50枚と設定する。
【0052】
次に、ステップS220において、制御部10は、シート分離動作を行う。シート分離動作は、上述したステップS10〜ステップS150の動作である。なお、新たなスタック12が載置されたときのはじめのステップS80における吸着パッド411の上昇速度を初期速度とし、ステップS110における停止時間を初期停止時間とする。
この初期速度および初期停止時間は、アルミシート11の残量が設定残量+1枚(例えば、51枚)のときにダブルブランクが発生しないように設定されている。これは、設定残量に達するまでの間では、最も残量が少ない設定残量+1枚のときに最もダブルブランクが発生しやすいためである。
【0053】
次に、ステップS230において、全てのアルミシート11をコンベア100に移動したか否かが検出される。なお、はじめに載置台21に載置されるアルミシート11の積層枚数はあらかじめ設定されているため、制御部10はスタック12から分離したアルミシート11の数をカウントすることによって載置台21上のアルミシート11の残量(枚数)を検出できる。
【0054】
すべてのアルミシート11の移動が終了していない場合には、ステップS240において、制御部10は、アルミシート11の残量が設定残量に達したか否かを検出する。
ステップS230およびステップS240において制御部10がいずれもNOを検出した場合には、制御はステップS220へと戻り、シート分離動作が行われる。
すなわち、アルミシート11の残量が設定残量(例えば、50枚)になるまで、ステップS220〜ステップS240が繰り返される。そして、アルミシート11の残量が設定残量に達すると、ステップS250において、制御部10は、区間Cにおける上昇速度を初期速度よりも遅い第1の所定速度に設定し、区間Dにおける停止時間を初期停止時間よりも長い第1の所定停止時間に設定する。
【0055】
ステップS250において設定が変更されると、制御はステップS220へと戻り、変更された設定(第1の所定速度および第1の所定停止時間)で、シート分離動作が行われる。
図6は、区間Cにおける上昇速度を遅く設定し、区間Dにおける停止時間を長く設定した後のシート分離動作における吸着パッド411の位置の時間変化を示す図である。
図6には、設定変更前の吸着パッド411の位置の時間変化のグラフが2点鎖線で示されている。
図6に示すように、時刻t2〜t3´の間は、時刻t2〜t3の間よりも長く設定され、時刻t3´〜t4´の間は、時刻t3〜t4の間よりも長く設定されている。
【0056】
また、この区間Cにおける上昇速度と区間Dにおける停止時間は、残量が2枚の際にダブルブランクが発生しないように予め設定された値である。これは、スタック12からのアルミシート11の分離動作において残量が2枚の状態で上側のアルミシート11を取る際に、ダブルブランクが最も発生しやすいためである。
そして、ステップS230において、制御部10が全てのアルミシート11が移動されたことを検出すると、制御が終了する(ステップS260)。
【0057】
以上のように、アルミシート11の残量が多いときには、分離速度を速くし、アルミシート11の残量が少なくなると分離速度を遅くすることによって、ダブルブランクを低減し処理速度を上げることができる。すなわち、従来は、本願発明者が発見した傾向(同じ速度であってもアルミシートの残量が減少するとダブルブランクが発生する頻度が多くなること)が認識されていなかったため、ダブルブランクが発生しないような遅い処理速度(例えば2枚のときの上昇速度)でスタックの全てのアルミシートを上昇移動させていた。しかしながら、本実施の形態では、ダブルブランクの発生頻度が高い残量においてのみ上昇速度を遅くするため、スタック12全体としての処理速度は向上する。
【0058】
処理速度の向上について例を示して説明する。なお、素材分離装置1からプレス装置にアルミシート11を搬送させるとして、素材分離装置の処理速度を、プレス装置の一分間の成形回数(shot per minute以下spmという)であらわす。
例えば、スタック12の積層されているアルミシート11の枚数を610枚とし、初期の処理速度が16spmに設定され、残量が10枚に達したときに16spmから15spmに処理速度を変更する場合、スタック12の全てのアルミシート11を15spmで処理する場合と比較して、600/60=10時間の短縮が可能となる。
【0059】
以上のように、本実施の形態の素材分離装置1および素材分離方法では、ダブルブランクの発生を低減し処理速度をあげることが可能となる。
<3.主な特徴>
(3−1)
本実施の形態の素材分離装置1は、載置部2と、ブロー部3と、吸着部4と、吸着パッド駆動部5(駆動部の一例)と、制御部10と、を備える。載置部2には、積層された複数枚のアルミシート11(シート状の素材の一例)が配置される。ブロー部3は、載置部2に載置された複数枚のアルミシート11にエアーを吹き付けて最上面のアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させる。吸着部4は、複数の吸着パッド411を有し、エアーが吹き付けられた状態の最上面のアルミシート11を上方から吸着パッド411により吸着して保持する。吸着パッド駆動部5は、吸着部4を上下方向に駆動する。制御部10は、アルミシート11を吸着した吸着パッド411を搬送位置(第1の所定位置の一例)まで上方移動させるように制御する。制御部10は、アルミシート11の2枚の残量(所定残量の一例)において設定された上昇時間より、初期枚数から設定残量+1枚までの間(所定残量よりも残量が多い範囲の少なくとも一部の一例)における上昇時間を短くするように制御する。
【0060】
本願発明者は、同じ速度であってもアルミシート11の残量が減少するとダブルブランクが発生する頻度が多くなる傾向を発見し、その傾向に基づいて、所定残量において設定された上昇時間と比較して、所定残量より残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御する。
すなわち、従来は上記傾向を発見していなかったため、積層されている全ての素材について同じ上昇時間で素材を分離させていたが、上記実施の形態のように少なくとも一部において上昇速度を短くできるため、全体として処理速度を上げることができる。
【0061】
また、所定残量における上昇速度を、上記一部における上昇時間よりも長くしているため、ダブルブランクの発生を抑制できる。
(3−2)
本実施の形態の素材分離装置1では、所定残量とは、積層された複数枚のアルミシート11において、最もアルミシート11のダブルブランクが発生しやすい残量である。
【0062】
従来は上記傾向を発見していなかったため、積層されている全てのアルミシート11についてダブルブランクが発生しない最も遅い上昇速度でアルミシート11を分離させる必要があったが、上記実施の形態のようにダブルブランクの発生が多くなる所定残量以外の範囲の少なくとも一部において、上昇速度をあげることができるため、処理速度を上げることが出来る。
【0063】
また、ダブルブランクが発生しやすい所定残量では、上昇時間を長くするためダブルブランクの発生を低減できる。
(3−3)
本実施の形態の素材分離装置1において、所定残量は、2枚である。
すなわち、アルミシート11の残量が減少するとダブルブランクが発生しやすいことから、残量が2枚の場合に、その上側のアルミシート11を上昇させる際に下側のアルミシート11がつられて上昇しやすいといえる。
【0064】
このため、残量が2枚のときのダブルブランクの発生を低減できる上昇時間では、積層されているアルミシート11の全範囲においてダブルブランクの発生を低減できる。
(3−4)
本実施の形態の素材分離装置1では、制御部10は、アルミシート11の残量が、所定残量以上であり予め設定された設定残量に達すると、以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くするように吸着パッド駆動部5を制御する。
【0065】
これにより、アルミシート11の残量が予め決められた設定残量以下の場合に分けて上昇時間を変更することができる。すなわち、設定残量以下の場合おいて上昇時間を長くでき、処理速度を上げることが出来る。
また、アルミシート11の残量が設定残量よりも多い場合には、上昇時間を短く出来るため処理速度を上げることができる。
【0066】
(3−5)
上記実施の形態の素材分離装置1では、制御部10は、ブロー部3によりエアーを吹き付けてアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッド411にアルミシート11を吸着させた後に、搬送位置(第1の所定位置の一例)よりも低い一時停止位置(第2の所定位置の一例)までアルミシート11を上昇させる速度を遅くすることによって、アルミシート11の残量が設定残量に達したとき以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くする。
【0067】
これにより、ダブルブランクが発生しやすい残量において、区間Cにおける上昇速度を遅くすることによって、最上面のアルミシート11が下側のアルミシート11から離れやすくなり、アルミシート11のダブルブランクを抑制できる。
一方、ダブルブランクが発生しにくい残量の範囲で、
図4に示す区間Cにおける上昇速度を速くすることによって、上昇時間を短くし、処理速度をあげることができる。
【0068】
(3−6)
上記実施の形態の素材分離装置1では、制御部10は、ブロー部3によりエアーを吹き付けてアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッド411にアルミシート11を吸着させ、搬送位置(第1の所定位置の一例)よりも低い一時停止位置(第2の所定位置の一例)まで吸着パッド411を上昇させた後、エアーを停止させた状態で吸着パッド411を一時停止位置に所定時間停止するように制御する。制御部10は、所定時間を長くすることによって、アルミシート11の残量が設定残量に達したとき以降の上昇時間を、設定残量よりも多い場合の上昇時間よりも長くする。
【0069】
これにより、ダブルブランクが発生しやすい残量において、
図4に示す区間Dにおける停止時間を長くすることによって、エアーを停止してから最上面のアルミシート11以外のアルミシート11が落下する時間を十分に確保できるため、アルミシート11のダブルブランクを抑制できる。
一方、ダブルブランクが発生しにくい残量の範囲で、
図4に示す区間Dにおける停止時間を短くすることによって、上昇時間を短くし、処理速度をあげることができる。
【0070】
(3−7)
上記実施の形態の素材分離装置1では、制御部10は、ブロー部3によりエアーを吹き付けてアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させた状態で吸着パッド411にアルミシート11を吸着させた後、吸着パッド駆動部5により吸着パッド411を搬送位置の高さよりも低い一時停止位置に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッド411を一時停止位置に所定時間停止してから吸着パッド411を吸着パッド駆動部5により搬送位置まで上昇させるように制御する。
【0071】
このように、制御することにより、ダブルブランクを低減しつつ処理速度を上げることが出来る。
(3−8)
上記実施の形態の素材分離装置1では、吸着パッド駆動部5は、駆動源としてサーボモータ50を有する。
【0072】
このように、各々の吸着パッド411を上下駆動する吸着パッド駆動部5の駆動源としてサーボモータ50を用いることにより、吸着パッド411の駆動を精度よく制御できる。
(3−9)
本実施の形態の素材分離方法は、ステップS40(ブロー工程の一例)と、ステップS50およびステップS60(吸着工程の一例)と、ステップS70〜ステップS120(上昇工程の一例)と、ステップS240〜S270(制御工程の一例)と、を有する。
【0073】
ステップS40(ブロー工程の一例)では、積層された複数枚のアルミシート11(シート状の素材の一例)にエアーを吹き付けることによって最上面のアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させる。ステップS50およびステップS60(吸着工程の一例)では、エアーが吹き付けられた状態のアルミシート11を上方から吸着して保持する。ステップS70〜ステップS120(上昇工程の一例)では、吸着したアルミシート11を搬送位置(第1の所定位置)まで上昇させる。ステップS240〜S270(制御工程の一例)では、吸着したアルミシート11を搬送位置まで上方移動させる上昇時間を制御する。ステップS240〜S270(制御工程の一例)では、所定残量において設定された上昇時間より、所定残量よりも残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御する。
【0074】
これにより、少なくとも一部において上昇速度を短くできるため、全体として処理速度を上げることができる。
また、本願発明者が発見した傾向に基づいて、所定残量における上昇速度を、上記一部にける上昇時間よりも長くしているため、ダブルブランクの発生を抑制できる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
(A)
上記実施の形態では、1つの設定残量に達すると、吸着パッド411の上昇時間を長くするように制御していたが、設定残量は1つに限られず、2つ以上であってもよい。例えば、第1の設定残量と第2の設定残量が設けられた場合について以下に説明する。
すなわち、アルミシート11の枚数の減少に伴ってアルミシート11の上昇時間が3段階に長くなるように制御が行われる。なお、第1の設定残量および第2の設定残量については、予め設定されている。
【0076】
図7は、2つの設定残量を定めた場合のスタックの全てのアルミシートを分離する動作を示すフロー図である。
はじめにステップS310において、スタック12が載置台21に載置される。例えば、スタック12におけるアルミシート11の積層枚数が600枚とする。また、第1の設定残量を例えば100枚に設定し、第2の設定残量を例えば50枚に設定する。
【0077】
次に、ステップS320において、制御部10は、シート分離動作を行う。シート分離動作は、上述したステップS10〜ステップS150の動作である。なお、新たなスタック12が載置されたときのはじめのステップS80における吸着パッド411の上昇速度を初期速度とし、ステップS110における停止時間を初期停止時間とする。
この初期速度および初期停止時間は、アルミシート11の残量が第1の設定残量+1枚(例えば、101枚)のときにダブルブランクが発生しないように設定されている。これは、第1の設定残量に達するまでの間では、最も残量が少ない第1の設定残量+1枚のときに最もダブルブランクが発生しやすいためである。なお、この変形例における第1の設定残量は、実施の形態における設定残量よりも多いため、変形例における初期速度は、上記実施の形態の初期速度よりも速く設定でき、変形例における初期停止時間は、上記実施の形態の初期停止時間よりも短く設定できる。
【0078】
次に、ステップS330において、全てのアルミシート11をコンベア100に移動したか否かが検出される。なお、はじめに載置台21に載置されるアルミシート11の積層枚数はあらかじめ設定されているため、制御部10はスタック12から分離したアルミシート11の数をカウントすることによって載置台21上のアルミシート11の残量(枚数)を検出できる。
【0079】
すべてのアルミシート11の移動が終了していない場合には、ステップS340において、制御部10は、アルミシート11の残量が第2の設定残量に達したか否かを検出する。
次に、アルミシート11の残量が第2の設定残量に達していない場合は、ステップS350において、制御部10は、アルミシート11の残量が第1の設定残量に達したか否かを検出する。
【0080】
ステップS330〜ステップS350において制御部10がいずれもNOを判定した場合には、制御はステップS320へと戻り、シート分離動作が行われる。
すなわち、アルミシート11の残量が第1の設定残量(例えば、100枚)になるまで、ステップS320〜ステップS340が繰り返される。そして、アルミシート11の残量が第1の設定残量に達すると、ステップS360において、制御部10は、区間Cにおける上昇速度を初期速度よりも遅い第1の所定速度に設定し、区間Dにおける停止時間を初期停止時間よりも長い第1の所定停止時間に設定する。
【0081】
ここで、第1の所定速度および第1の所定停止時間は、アルミシート11の残量が第2の設定残量+1枚(例えば、51枚)のときにダブルブランクが発生しないように設定されている。
ステップS360において設定が変更されると、制御はステップS320へと戻り、変更された設定(第1の所定速度および第1の所定停止時間)で、シート分離動作が行われる。
【0082】
再び、ステップS320〜ステップS340が繰り返され、アルミシート11の残量が第2の設定残量(例えば、50枚)に達すると、制御部10は、ステップS370において、区間Cにおける上昇速度を第1の所定速度よりも遅い第2の所定速度に設定し、区間Dにおける停止時間を第1の所定停止時間よりも長い第2の所定停止時間に設定する。
この第2の所定速度および第2の所定停止時間で以降のステップS320のシート分離動作が行われる。
【0083】
ここで、第2の所定速度および第2の所定停止時間は、アルミシート11の残量が2枚のときにダブルブランクが発生しないように設定されている。
そして、ステップS330において、制御部10が全てのアルミシート11が移動されたことを検出すると、制御が終了する(ステップS380)。
なお、3つ以上の設定残量が定められていてもよく更に段階的に上昇時間を長くするようにしてもよい。また、上昇時間を変更する設定残量を例えば一枚ごとに設定することによって段階を増やして見かけ上連続的に変化させてもよい。
【0084】
(B)
上記実施の形態では、設定残量において、区間Cの速度を遅く変更し、区間Dの時間を長く変更しているが、区間Cと区間Dのいずれか一方のみ変更してもよい。また、上記(A)において、第1の設定残量に達すると区間Cの速度を遅くし、第2の設定残量に達すると区間Dの時間を長くするようにしても良く、その逆でも良い。
【0085】
(C)
上記実施の形態では、設定残量を境にしてアルミシート11の残量が設定残量よりも多い場合よりも、設定残量以下の場合の上昇時間を長く設定しているが、設定残量以下の範囲において一部の範囲の上昇速度を他の範囲の上昇速度よりも速く設定してもよい。
例えば、スタック12のアルミシート11の枚数が600枚であり、設定残量を300枚に設定し、残量が300枚よりも多い場合には16SPMで処理し、残量が300枚に達した際に、14SPMに変更したとする。このような場合に、残量が200枚になるまでダブルブランクの確認を行いダブルブランクが発生しない場合には、残量が200枚〜100枚の間の処理速度を15SPMや16SPMに変更するようにしてもよい。
【0086】
また、設定残量よりも多い範囲において、一部の範囲の上昇速度を他の範囲の上昇速度よりも遅くしてもよい。すなわち、上記の例において、残量が500枚になるまで15SPMや14SPMで処理を行い、ダブルブランクが発生しない場合に、残量が500枚に達すると処理速度を16SPMに上昇させるように処理をしてもよい。
要するに、最もアルミシート11のダブルブランクが発生しやすい残量が2枚の場合においてダブルブランクが発生しないように設定された上昇時間よりも、2枚よりも残量が多い範囲の少なくとも一部における上昇時間を短くするように制御すればよい。また、2枚の場合にダブルブランクが発生しないように設定された上昇時間でスタック12の全てのアルミシート11を上昇移動させる場合よりも、トータルの時間が短くなりさえすれば全体としての処理速度を上げることが出来る。
【0087】
(D)
上記実施の形態では、吸着パッド411の上下方向の駆動にサーボモータ50が用いられているが、エアシリンダが用いられてもよい。
(E)
上記実施の形態では、載置台駆動部22に油圧シリンダが用いられていると説明したが、サーボモータが用いられてもよい。
【0088】
(F)
上記実施の形態では、制御部10が、分離されたアルミシート11の枚数をカウントすることにより残量を検出しているが、時間を計測して残量を検出してもよい。また、載置台駆動部22の油圧シリンダのストロークを検出する位置センサを設けて、油圧シリンダのストロークから残量が検出されてもよい。また、載置台駆動部22にサーボモータを用いた場合、制御部10は、サーボモータの駆動量から残量を検出してもよい。
【0089】
更に、スタック12を載置した載置台21の重さを計測して、残量を検出してもよい。すなわち、分離していくに従ってアルミシート11が減少し載置台21の重さが所定の重さに達すると上昇時間を長くするように制御が行われる。
(G)
上記実施の形態では、区間Cにおける吸着パッド411の上昇を停止させるとともに、ブローを停止していたが、厳密なものではなく、区間Cおよび区間Dの途中で止めても良い。なお、区間Dの途中で止める場合には、ブローを止めてから最上面以外のアルミシート11が落下するための十分な時間吸着パッド411を停止するほうが好ましい。