(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図12Dに基づき、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係るシートフレーム1について説明する。シートフレーム1は、車両に搭載される車両用シートの骨格をなすものである。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。
「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。
また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0021】
[1.シートフレーム1の概要]
まず、
図1を参照しながら、シートフレーム1の構成の概要について説明する。
図1に示されるように、シートフレーム1は、主にシートバックフレーム10とシートクッションフレーム20とにより構成される。シートバックフレーム10は、シートフレーム1における背もたれ部分の骨格をなし、シートクッションフレーム20は、シートフレーム1における着座部分の骨格をなす。
【0022】
図1に示されるように、シートバックフレーム10は、逆さU字形の上部フレーム11と、シート幅方向左右の端部をなす一対のサイドフレーム12と、一対のサイドフレーム12の下端部を連結する下部フレーム13と、を備える。
【0023】
上部フレーム11は、上部フレーム11の両側下部をなす上部フレーム側部11Aにおいて、サイドフレーム12に溶接されている。
また、上部フレーム11の上端には、ヘッドレスト取付部17が溶接により取り付けられる。ヘッドレスト取付部17は、図示しないヘッドレストから垂下する2つのヘッドレストステーが挿通される管状体である。
また、上部フレーム11の上部フレーム側部11Aより上方における両端部にクロスメンバ14が架設されている。クロスメンバ14の中央部分には、左右よりもシート上方に凹んだ凹部14Aが形成される。凹部14Aは、左右のヘッドレスト取付部17の間に設けられることとしてよい。
このようにシートフレーム1では、クロスメンバ14に凹部14Aを形成することにより、シートフレーム1の軽量化を図っている。
なお、凹部14Aは、クロスメンバ14の下端に形成しているが、上端に形成してもよい。また、凹部14Aはクロスメンバ14の上端と下端の両方に形成してもよい。
【0024】
図1に示されるように、左右のサイドフレーム12の下端部の間にはリクライニングユニット40の回転軸16が、左右のサイドフレーム12を貫通した状態で取り付けられる。
なお、リクライニング操作部を操作することによりリクライニングユニット40を動作させることで、シートクッションフレーム20に対するシートバックフレーム10の角度を調整可能となっている。
【0025】
シートバックフレーム10の中央部には、乗員からの荷重を受け止める受圧部材15が架設されている。ここで、受圧部材15は、支持部15A、ワイヤ15B、ワイヤ15Cを備える。
支持部15Aは、乗員の背部を支持し、例えば板バネやSバネ等の弾性部材により構成される。なお、支持部15Aにおいてシート前方の面を支持面と称する。
ワイヤ15Bは、支持部15Aと、下部フレーム13の前壁部13Bにそれぞれ係止される。具体的には、ワイヤ15Bは、下部フレーム13の前壁部13Bに対しては、前壁部13Bに形成された貫通孔に嵌合するクリップ50を用いて係止される。
ワイヤ15Cは、支持部15Aの上端部と、クロスメンバ14にそれぞれ係止される。
このように、支持部15Aは、ワイヤ15Bとワイヤ15Cによりシートバックフレーム10に固定される。
【0026】
次に、シートクッションフレーム20について説明する。
図1に示されるように、シートクッションフレーム20は、上方から見たときに方形枠状の外形形状をなす。そして、シートクッションフレーム20は、シート幅方向左右の端部にそれぞれ構成する一対のクッションサイドフレーム22と、シートクッションフレーム20の前端部を構成するパンフレーム21と、左右のクッションサイドフレーム22を連結する連結パイプ23とを主たる構成要素とする。例えば、連結パイプ23は、丸パイプ等の中空部材であり、乗員の臀部を支持する受圧部材24の後端が取り付けられる。
【0027】
図1に示されるように、左のクッションサイドフレーム22の後端部の上部には、第1連結ブラケット18が取り付けられている。そして、第1連結ブラケット18には、リクライニングユニット40を介して左のサイドフレーム12が連結されている。
また、
図4に示されるように、右のクッションサイドフレーム22の後端部の上部には、第2連結ブラケット19が取り付けられている。そして、第2連結ブラケット19には、リクライニングユニット40を介して右のサイドフレーム12が連結されている。
なお、第1連結ブラケット18と第2連結ブラケット19の構成の詳細については後述する。
【0028】
[2.サイドフレーム12の構成]
次に、
図2,
図3A,
図3B及び
図3Cを参照しながら、サイドフレーム12の構成について説明する。
図2は、シートバックフレーム10の左側面図である。
図3Aはサイドフレーム12の外側面図、
図3Bはサイドフレーム12の後面図、
図3Cはサイドフレーム12の内側面図である。
【0029】
図2、
図3A及び
図3Cに示されるように、サイドフレーム12の側部を構成するサイドフレーム側部12Aには、エアバッグ取付孔31A、エアバッグ取付孔31B、エアバッグ取付孔31C、貫通孔31Dを含む複数の貫通孔が形成される。
エアバッグ取付孔31A、エアバッグ取付孔31B及びエアバッグ取付孔31Cは、エアバッグユニットの取り付けに用いられる貫通孔である。ここで、エアバッグユニットには、エアバッグ本体、エアバッグの展開方向を案内する力布、エアバッグ取付用のプレート等が含まれる。例えば、エアバッグ取付孔31B及びエアバッグ取付孔31Cは、エアバッグの力布を取り付ける孔であり、エアバッグ取付孔31Aはエアバッグ本体のリテーナから延出するボルトが挿通される孔である。
貫通孔31Dは、上部フレーム側部11Aの下端と対向する位置に形成されており、貫通孔31Dにおいてサイドフレーム12と上部フレーム11が溶接される。
【0030】
図2、
図3A及び
図3Cに示されるように、サイドフレーム12の側部を構成するサイドフレーム側部12Aには、その後縁12Cに沿って延在する第1補強部30Aが形成される。なお、後縁12Cは、サイドフレーム12の側面をなすサイドフレーム側部12Aと、後面をなすサイドフレーム後部12Bとの境界に当たる屈曲部である。
第1補強部30Aは、例えばサイドフレーム側部12Aの一部をプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として構成される。
ここで、第1補強部30Aは、サイドフレーム側部12Aにおいて最も幅が広い幅広部12Dに少なくとも設けられる。
本実施形態では、第1補強部30Aは、後縁12Cに沿って、上下方向において貫通孔31Dと対向する位置から、エアバッグ取付孔31Cと対向する位置に渡って設けられている。
すなわち、第1補強部30Aは、サイドフレーム12と上部フレーム側部11Aとが重なる位置に少なくとも設けられており、これによりサイドフレーム12と上部フレーム11との接合部分の強度を高めることができる。
なお、第1補強部30Aの上端は、サイドフレーム12と上部フレーム11との溶接位置よりも上方に位置することとしてよい。
また、
図2に示されるように、第1補強部30Aは、側面視において上部フレーム11、クッションサイドフレーム22と上下において重なる位置に設けられている。
【0031】
図2、
図3A及び
図3Cに示されるように、サイドフレーム12の側部を構成するサイドフレーム側部12Aには、第1補強部30Aの上端と下端の間の中間位置から、シート前方に延在する第2補強部30Bが形成される。
第2補強部30Bは、第1補強部30Aと同様に、サイドフレーム側部12Aの一部をプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として構成される。
ここで、第2補強部30Bは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bとの間に形成される。
なお、第2補強部30Bの後端は、第1補強部30Aに接続し、両者が一体となっている。そして、第2補強部30Bの前端は、エアバッグ取付孔31Bよりもシート前方に位置するとともに、サイドフレーム側部12Aの前縁よりはシート後方に位置する。
【0032】
図2、
図3A及び
図3Cに示されるように、サイドフレーム12の側部を構成するサイドフレーム側部12Aには、第1補強部30Aの下端から、シート前方に延在する第3補強部30Cが形成される。
第3補強部30Cは、第1補強部30Aと同様に、サイドフレーム側部12Aの一部をプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として構成される。
ここで、第3補強部30Cは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Cとの間に形成される。
なお、第3補強部30Cの後端は、第1補強部30Aに接続し、両者が一体となっている。そして、第3補強部30Cの前端は、エアバッグ取付孔31Cよりもシート前方に位置するとともに、サイドフレーム側部12Aの前縁よりはシート後方に位置する。
【0033】
また、
図2に示されるように、シートフレーム1を骨格とする車両用シートに着座する乗員を模した3次元マネキンの胴部の軸線を示すトルソラインTに対して、第2補強部30Bは略直交する角度(すなわち略直角)で、第1補強部30Aから延在している。
一方で、第3補強部30Cは、トルソラインTに対して直交しない角度(すなわち鋭角)で、第1補強部30Aから延在している。
すなわち、第2補強部30Bと第3補強部30Cとは、第1補強部30Aから延在する角度がそれぞれ異なっている。
このように、第1補強部30A、第2補強部30B、第3補強部30Cの延在角度をそれぞれ異ならせることで、様々な方向からの荷重入力に対して剛性を強化することができる。
また、第1補強部30A、第2補強部30B、第3補強部30Cはそれぞれ上下方向においてリクライニングユニット40よりも上側に設けられる。
【0034】
また、第1補強部30A、第2補強部30B、第3補強部30Cのシート内側の底部(すなわち、ビードの底部)は、サイドフレーム12の前方に設けられたフランジの端部よりもシート外側に位置する。
また、第1補強部30Aの上端部は、下端部に比べて幅を狭くすることとしてよい。
また、第2補強部30B及び第3補強部30Cの前端部は、後方部に比べて幅を狭くすることとしてよい。
また、第2補強部30B及び第3補強部30Cの前端部は、下部フレーム13の前壁部13B、受圧部材15の支持部15A、リクライニングユニット40の取付部、ヘッドレスト取付部17、回転軸16よりも前方に位置することとしてよい。
また、第1補強部30A、第2補強部30B、第3補強部30Cはいずれもヘッドレスト取付部17よりも前方に位置することとしてよい。
【0035】
図3Bに示されるように、サイドフレーム12のサイドフレーム後部12Bの中央部分には、後面補強部30Dが形成される。サイドフレーム後部12Bには、上部と下部にそれぞれ貫通孔31Eと貫通孔31Fが形成される。
後面補強部30Dは、サイドフレーム後部12Bの一部をプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として構成される。後面補強部30Dは、第1補強部30Aの上端に対向する位置から、第1補強部30Aの下端より下方の位置まで延在している。
また、後面補強部30Dの上端は、サイドフレーム後部12Bに形成された貫通孔31Eよりも上方に位置し、後面補強部30Dの下端は、サイドフレーム後部12Bに形成された貫通孔31Fよりも下方に位置するように後面補強部30Dが形成される。
ここで、後面補強部30Dにおいて貫通孔31Eと貫通孔31Fとの間に位置する中央部分は、上端と下端よりも幅が広い幅広部となっている。
また、後面補強部30Dの下端は、下部フレーム13と上下方向で重なる位置にある。
このように、サイドフレーム後部12Bに後面補強部30Dを形成したことで、サイドフレーム後部12Bの広い範囲で強度を高めることができる。
【0036】
以上のように、サイドフレーム12のサイドフレーム側部12Aに、第1補強部30A、第2補強部30B及び第3補強部30Cを一体に構成した逆F字状のビード部を設けたことにより、サイドフレーム側部12Aの広い範囲の強度をバランスよく向上させることができる。
また、第1補強部30Aを後縁12Cに沿って設けたことで、後縁12Cの強度を高めることができる。
また、第1補強部30Aは、サイドフレーム側部12Aにおける幅広部12Dに少なくとも設けたことで、幅広部12Dにエアバッグ等の部品が取り付けるための各種貫通孔が形成された場合においても幅広部12Dの強度を高めることができる。
また、第2補強部30Bと第3補強部30Cによりエアバッグ取付孔31Aを上下に挟む位置に形成することで、エアバッグ取付孔31Aの周囲の強度を高めることができる。
また、第2補強部30Bをエアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bの間に設けたことで、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bの周囲の強度を高めることができる。
また、第3補強部30Cをエアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Cの間に設けたことで、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Cの周囲の強度を高めることができる。
【0037】
[3.第1連結ブラケット18及び第2連結ブラケット19の構成]
次に、
図1、
図4乃至
図6Cを参照しながら、第1連結ブラケット18及び第2連結ブラケット19の構成について説明する。
【0038】
図4は、
図1における視点IVからの第2連結ブラケット19周辺の部分拡大図である。
図5A、
図5B、
図5Cはそれぞれ、第1連結ブラケット18の外側面図、後面図、内側面図に相当する。
また、
図6A、
図6B、
図6Cはそれぞれ、第2連結ブラケット19の外側面図、後面図、内側面図に相当する。
【0039】
図5A、
図5B及び
図5Cに示されるように、第1連結ブラケット18には、脆弱部18A、シャフト貫通孔18B、ボルト締結用孔18C、ボルト締結用孔18Dが設けられる。
脆弱部18Aは、シャフト貫通孔18Bとボルト締結用孔18Dとの間に設けられ、シート外側に屈曲した部分である。第1連結ブラケット18に荷重が入力された場合には、脆弱部18Aにおいて変形しやすくなっている。
シャフト貫通孔18Bは、回転軸16が挿通されるとともに、左のリクライニングユニット40が取り付けられる。第1連結ブラケット18には、左のリクライニングユニット40を介して左のサイドフレーム12が連結される。
ボルト締結用孔18C及びボルト締結用孔18Dには、ボルト及びナット等の締結具により左のクッションサイドフレーム22が固定される。
例えば、車両の後面衝突時においては、第1連結ブラケット18の脆弱部18Aが変形することで衝撃が吸収される。
【0040】
図6A、
図6B及び
図6Cに示されるように、第2連結ブラケット19には、脆弱部19A、シャフト貫通孔19B、ボルト締結用孔19C、ボルト締結用孔19D、脆弱部19Eが設けられる。
脆弱部19Aは、シャフト貫通孔19Bとボルト締結用孔19Dとの間に設けられ、シート外側に屈曲した部分である。第2連結ブラケット19に荷重が入力された場合には、脆弱部19Aにおいて変形しやすくなっている。
シャフト貫通孔19Bは、回転軸16が挿通されるとともに、右のリクライニングユニット40が取り付けられる。第2連結ブラケット19には、右のリクライニングユニット40を介して右のサイドフレーム12が連結される。
ボルト締結用孔19C及びボルト締結用孔19Dには、ボルト及びナット等の締結具により右のクッションサイドフレーム22が固定される。
また、脆弱部19Eは、シャフト貫通孔19Bとボルト締結用孔19Cとの間に設けられ、シート外側に屈曲した部分である。第2連結ブラケット19に荷重が入力された場合には、脆弱部19Eにおいて変形しやすくなっている。
例えば、車両の後面衝突時においては、第2連結ブラケット19の脆弱部19A、脆弱部19Eが変形することで衝撃が吸収される。
【0041】
なお、第1連結ブラケット18の脆弱部18Aに関し、シャフト貫通孔18B側との第1接続部と、ボルト締結用孔18D側の第2接続部とはシート幅方向において略同じ位置にある。すなわち、第1連結ブラケット18においては、第1接続部と第2接続部についてシート幅方向においてオフセットさせていない。
一方で、第2連結ブラケット19の脆弱部19Aに関し、シャフト貫通孔19B側との第1接続部に対して、ボルト締結用孔19D側の第2接続部はシート幅方向においてシート内側に位置している。すなわち、第2連結ブラケット19においては第1接続部と第2接続部についてシート幅方向においてオフセットさせている。
また、第1連結ブラケット18においては、シャフト貫通孔18Bとボルト締結用孔18Cとの間には脆弱部が設けられていない。
一方で、第2連結ブラケット19においては、シャフト貫通孔19Bとボルト締結用孔19Cの間には脆弱部19Eが設けられている。
このように、第1連結ブラケット18と第2連結ブラケット19とにおいて脆弱部を非対称に設けたことで、シートフレーム1に荷重が入力された場合の変形のしやすさを変えている。
【0042】
図1に示されるように、左のクッションサイドフレーム22には、高さ調整ユニット41が設けられており、右のクッションサイドフレーム22には同様の部品が設けられていない。そのため、左のクッションサイドフレーム22に連結する第1連結ブラケット18には、右のクッションサイドフレーム22に連結する第2連結ブラケット19に比べて、後面衝突時にはより大きな荷重が入力される。
これに対し、シートフレーム1においては、上述したように第1連結ブラケット18と第2連結ブラケット19に非対称の脆弱部を設け、第1連結ブラケット18よりも第2連結ブラケット19をより変形しやすくしたことで、第1連結ブラケット18と第2連結ブラケット19の変形が同程度となるように調整することができる。
【0043】
[4.下部フレーム13の構成]
次に、
図7乃至
図11を参照しながら、下部フレーム13の構成について説明する。
図7は、シートフレーム1の正面図であって、下部フレーム13周辺の部分拡大図である。
図8は、シートフレーム1の後面図であって、下部フレーム13周辺の部分拡大図である。
図9は、
図7のIX-IX断面図であり、
図10は、
図7のX-X断面図である。
図11は、
図7の視点XIからの矢視図であり、下部フレーム13の凹部76周辺の部分拡大図である。
【0044】
図7乃至
図9に示されるように、下部フレーム13は、シート後部を構成する後壁部13A、シート前部を構成する前壁部13B、及び後壁部13Aと前壁部13Bの下端を連結する連結部13Cを備える。
【0045】
[4.1.下部フレーム13の前壁部13Bの構成]
まず、下部フレーム13の前壁部13Bの構成について主に説明する。
図7及び
図9に示されるように、前壁部13Bは、支持部15Aと対向するシート幅部分を連結部13Cから上方に延出させた部分である。
図7に示されるように、支持部15Aには、下端に3つのクリップ50が取り付けられたワイヤ15Bが取り付けられる。そして、前壁部13Bには、クリップ50と嵌合する貫通孔である取付部51が3箇所形成される。
図7に示されるように、取付部51は、支持部15Aから離間し、かつ支持部15Aの下方に設けられている。また、取付部51は、支持部15Aの左右方向の端よりも内側に設けられている。
そして、ワイヤ15Bに取り付けられたクリップ50を前壁部13Bの取付部51に嵌合させることで、前壁部13Bにワイヤ15Bが固定される。
【0046】
図7に示されるように、前壁部13Bにおいて、各クリップ50の取付部51の上部には、それぞれシート幅方向に延在した上側補強部60A、上側補強部60B、上側補強部60Cが形成される。
図7に示されるように、上側補強部60A、上側補強部60B、上側補強部60Cはそれぞれ略同一水平面上に形成されており、左側に上側補強部60A、中央に上側補強部60B、右側に上側補強部60Cが設けられる。
なお、上側補強部60A、上側補強部60B、上側補強部60Cは、前壁部13Bの一部をプレス加工によりシート後方に凹ませたビード部として形成されるものである。
【0047】
図7に示されるように、上側補強部60A、上側補強部60B、上側補強部60Cは、それぞれ前壁部13Bの上縁に沿った形状に形成される。すなわち、前壁部13Bの上縁は、中央が直線状、左右の端部が円弧状となっており、それに合わせて上側補強部60Aの左側端部が円弧状でそれ以外が直線状、上側補強部60Bは直線状、上側補強部60Cの右側端部が円弧状でそれ以外が直線状に形成される。
また、上側補強部60Aの左側端部の位置は、対向する取付部51よりもシート幅方向で外側に位置する。同様に、上側補強部60Cの右側端部の位置は、対向する取付部51よりもシート幅方向で外側に位置する。
【0048】
図7に示されるように、前壁部13Bと連結部13Cの境界部であって、上側補強部60Aと対向する取付部51の下方には、互いに離間した下側補強部61Aと下側補強部61Bが形成される。下側補強部61A及び下側補強部61Bは、前壁部13Bと連結部13Cの境界部をプレス加工によりシート後方に凹ませたビード部として形成される。
図7に示されるように、上側補強部60Aと対向する取付部51は、シート上下方向において、上側補強部60Aと、下側補強部61A及び下側補強部61Bとの間に設けられる。
また、上側補強部60Aの左側端部の位置は、下側補強部61Aよりもシート幅方向外側に位置する。そして、上側補強部60Aの右側端部の位置は、下側補強部61Bよりもシート幅方向外側に位置する。
すなわち、下側補強部61Aと下側補強部61Bは、上部に設けられた上側補強部60Aに対しシート幅方向内側に形成される。そして、下側補強部61Aと下側補強部61Bの間隔は、上側補強部60Aの幅方向の長さよりも短い。
【0049】
図7に示されるように、前壁部13Bと連結部13Cの境界部であって、上側補強部60Bと対向する取付部51の下方には、互いに離間した下側補強部61Cと下側補強部61Dが形成される。下側補強部61C及び下側補強部61Dは、前壁部13Bと連結部13Cの境界部をプレス加工によりシート後方に凹ませたビード部として形成される。
図7に示されるように、上側補強部60Bと対向する取付部51は、シート上下方向において、上側補強部60Bと、下側補強部61C及び下側補強部61Dとの間に設けられる。そして、上側補強部60Bと対向する取付部51は、シート幅方向において、下側補強部61C及び下側補強部61Dとの間に設けられる。
また、上側補強部60Bの左側端部の位置は、下側補強部61Cよりもシート幅方向外側に位置する。そして、上側補強部60Bの右側端部の位置は、下側補強部61Dよりもシート幅方向外側に位置する。
すなわち、下側補強部61Cと下側補強部61Dは、上部に設けられた上側補強部60Bに対しシート幅方向内側に形成される。そして、下側補強部61Cと下側補強部61Dの間隔は、上側補強部60Bの幅方向の長さよりも短い。
【0050】
図7に示されるように、前壁部13Bと連結部13Cの境界部であって、上側補強部60Cと対向する取付部51の下方には、互いに離間した下側補強部61Eと下側補強部61Fが形成される。下側補強部61E及び下側補強部61Fは、前壁部13Bと連結部13Cの境界部をプレス加工によりシート後方に凹ませたビード部として形成される。
図7に示されるように、上側補強部60Cと対向する取付部51は、シート上下方向において、上側補強部60Cと、下側補強部61E及び下側補強部61Fとの間に設けられる。
また、上側補強部60Cの左側端部の位置は、下側補強部61Eよりもシート幅方向外側に位置する。そして、上側補強部60Cの右側端部の位置は、下側補強部61Fよりもシート幅方向外側に位置する。
すなわち、下側補強部61Eと下側補強部61Fは、上部に設けられた上側補強部60Cに対しシート幅方向内側に形成される。そして、下側補強部61Eと下側補強部61Fの間隔は、上側補強部60Cの幅方向の長さよりも短い。
【0051】
また、
図7に示されるように、上側において隣り合う上側補強部60Aと上側補強部60Bの間隔は、下側において隣り合う下側補強部61Bと下側補強部61Cの間隔よりも短い。同様に、上側において隣り合う上側補強部60Bと上側補強部60Cの間隔は、下側において隣り合う下側補強部61Dと下側補強部61Eの間隔よりも短い。
【0052】
例えば後壁部13Aの前面に受圧部材15を取り付ける場合には、後壁部13Aと前壁部13Bとの間には、回転軸16が設けられており、スペースが十分でないため、受圧部材15の取り付け作業が容易ではない。
一方で、シートフレーム1では、下部フレーム13の前壁部13Bに、受圧部材15のワイヤ15Bを取り付ける取付部51を設けたことで、回転軸16と作業者の手が干渉することがないため、受圧部材15の取り付けの作業性を向上させることができる。
【0053】
[4.2.下部フレーム13の後壁部13Aの構成]
次に、下部フレーム13の後壁部13Aの構成について主に説明する。
図8に示されるように、後壁部13Aは、側部70A、側部70B、接続部71A、接続部71B及び傾斜部72を有する。
側部70A、側部70Bはそれぞれ、シート幅方向の端を構成し、サイドフレーム12の外形に沿った形状に形成される。
【0054】
図9に示されるように、傾斜部72は、側部70A及び側部70Bの間に設けられ、下端が上端よりも前方に位置するように傾斜している。また、傾斜部72は、側部70A及び側部70Bよりもシート前方に位置する。
接続部71Aは、側部70Aと傾斜部72とを接続する略半円状の部分である。そして、接続部71Aは、シート幅方向外側にかけて傾斜している。
接続部71Bは、側部70Bと傾斜部72とを接続する略半円状の部分である。そして、接続部71Bは、シート幅方向外側にかけて傾斜している。
【0055】
図8に示されるように、傾斜部72は、上縁に補強部72Aが設けられている。補強部72Aは、シート後方に出っ張ったフランジ部である。このように傾斜部72に補強部72Aを設けることにより、傾斜部72の上縁の強度を向上させることができる。
また、
図8に示されるように、傾斜部72のシート幅方向の端は、支持部15Aのシート幅方向の端よりも外側に位置する。
【0056】
図8に示されるように、傾斜部72には、同一水平面上に複数の貫通孔73が形成される。具体的には、傾斜部72には、シート幅方向左側に複数(3つ)の貫通孔73が、そしてシート幅方向右側に複数(3つ)の貫通孔73がそれぞれ略等間隔に形成される。この貫通孔73は、矩形の長孔であり、シート幅方向に対して傾いた形状で形成される。
なお、貫通孔73は、前壁部13Bとシート前後方向において重なる位置に設けられる。
また、
図10に示されるように、貫通孔73のうち少なくとも一つ(例えば最外の貫通孔73)については、ヘッドレスト取付部17よりも外側に位置する。
【0057】
図9に示されるように、傾斜部72と前壁部13Bの間隔は、下方から上方にかけて次第に拡がっている。こうすることで、下部フレーム13の下部をコンパクトに構成することができる。
また、
図9に示されるように、後壁部13Aの上端は、前壁部13Bの上端よりも上に位置している。また、支持部15Aの下端は、前壁部13Bの上端よりも上であって、且つ後壁部13Aの上端よりも下に位置している。
また、
図9に示されるように、シートバックフレーム10とシートクッションフレーム20を回動可能に連結する回転軸16に対し、前壁部13Bは前方に、傾斜部72を含む後壁部13Aは後方に位置する。すなわち、下部フレーム13では、後壁部13Aと前壁部13Bは、回転軸16をシート前後で挟み込む位置に配される。
また、
図9に示されるように、前壁部13Bは、支持部15Aと略平行に設けられる。なお、支持部15AはトルソラインTと略平行であるため、換言すれば前壁部13BはトルソラインTに対して略平行に設けられる。
【0058】
図10に示されるように、シートバックフレーム10のシートクッションフレーム20に対する回動を制御するリクライニングユニット40に対し、傾斜部72は、側面視においてリクライニングユニット40の内側に収まっている。
また、傾斜部72は、側面視においてリクライニングユニット40とサイドフレーム12との溶接部52と重なる位置に設けられる。
【0059】
また、
図9に示されるように、傾斜部72を延長した面に対し、クッションサイドフレーム22の受圧部材24を取り付ける取付部である連結パイプ23がシート前方に位置する。
【0060】
図8に示されるように、側部70A及び側部70Bの上部にはそれぞれ、上方に突出する上方突出部75が設けられる。上方突出部75は、サイドフレーム12に沿った形状に形成されており、サイドフレーム12の後面補強部30Dに対向する位置に補強部74が形成されている。なお、補強部74は、シート前方に凹むビード部として形成され、後面補強部30Dと係合する形状となっている。
また、傾斜部72の左右端部は、左右の上方突出部75よりもシート幅方向内側に位置する。
なお、側部70A及び側部70Bは、サイドフレーム12と溶接により接合される。
【0061】
シートフレーム1では、サイドフレーム12の形状に沿った側部70Aと側部70Bの間に、側部70Aと側部70Bよりも前方に位置する傾斜部72を設けたことにより、シートフレーム1の後部の下部フレーム13周辺のスペースを拡大することができる。これにより、シートフレーム1を用いた前席の車両用シートについて、後部に着座する乗員の足入れスペースを拡大することができる。
【0062】
また、
図11に示されるように、下部フレーム13の下面であって、連結部13Cと側部70Bの連結部には、シート後方側に凹む凹部76が形成される。なお、連結部13Cと側部70Aの連結部にも、同様の凹部76が形成される。
図11に示されるように、凹部76のシート幅方向で内側の端部は、側部70B(すなわち上方突出部75)よりもシート幅方向内側に位置する。
また、側部70B側の凹部76は、接続部71Bとシート前後方向で重なる位置に設けられる。同様に、側部70A側の凹部76は、接続部71Aとシート前後方向で重なる位置に設けられる。
【0063】
以上説明した本実施形態に係るシートフレーム1によれば、サイドフレーム12のサイドフレーム側部12Aに第1補強部30A、第2補強部30B及び第3補強部30Cを設けたことにより、サイドフレーム12の剛性を向上させることができる。
ここで、第1補強部30A、第2補強部30B及び第3補強部30Cはそれぞれ延在する方向が異なるため、様々な方向からの荷重の入力に対しての剛性を向上できる。
【0064】
また、シートフレーム1によれば、下部フレーム13の前壁部13Bに受圧部材15の取付部51を設けたことにより、受圧部材15の取付作業性を向上させることができる。
また、前壁部13Bの取付部51には、上下に補強部を設けたことにより取付部51周辺の剛性を向上できる。
【0065】
また、シートフレーム1によれば、下部フレーム13の後壁部13Aの中央部に傾斜部72を設けたことにより、シートフレーム1の後面の下部フレーム13周辺部のスペースを拡げることができる。これにより、シートフレーム1を用いた前席の車両用シートについて、後部に着座する乗員の足入れスペースを拡大することができる。
【0066】
[5.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下においては、
図12A乃至
図12Dに基づいて、サイドフレーム12のサイドフレーム側部12Aに形成される補強部(ビード形状)の変形例について説明する。
図12A乃至
図12Dはそれぞれ、変形例に係るサイドフレーム12の外側面図を示している。
【0067】
まず、第1の変形例に係るサイドフレーム12について説明する。
図12Aに示されるように、第1の変形例に係るサイドフレーム12には、補強部80A、補強部80B、補強部80C、補強部80D及び補強部80Eが形成される。ここで、補強部80A、補強部80B、補強部80C、補強部80D及び補強部80Eはそれぞれ、サイドフレーム側部12Aをプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として形成される。
補強部80Aは、サイドフレーム側部12Aの後縁12Cに沿って設けられる。
補強部80Bは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bとの間においてシート前後方向に延在するように設けられる。
補強部80Cは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Cとの間においてシート前後方向に延在するように設けられる。
補強部80Dは、エアバッグ取付孔31Cの下側にシート前後方向に延在するように設けられる。
補強部80Eは、エアバッグ取付孔31Bの上部において、サイドフレーム側部12Aの前縁に沿って設けられる。
【0068】
図12Aに示されるように、補強部80A、補強部80B、補強部80C、補強部80D及び補強部80Eをいずれも他の補強部に連結させず、各々を独立したビード部として設けることとしてよい。
また、補強部80A、補強部80B、補強部80C、補強部80D及び補強部80Eはそれぞれ延在する方向が異なることとしてよい。
【0069】
次に、第2の変形例に係るサイドフレーム12について説明する。
図12Bに示されるように、第2の変形例に係るサイドフレーム12には、補強部81A、補強部81B及び補強部81Cが形成される。ここで、補強部81A、補強部81B及び補強部81Cはそれぞれ、サイドフレーム側部12Aをプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として形成される。
補強部81Aは、サイドフレーム側部12Aの後縁12Cに沿って設けられる。ただし、補強部81Aの下端は、シート内側に向けて屈曲している。
補強部81Bは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bとの間においてシート前後方向に延在するように設けられる。また、補強部81Bの後端は、補強部81Aに連結している。
補強部81Cは、エアバッグ取付孔31Bの上部において、サイドフレーム側部12Aの前縁に沿って設けられる。
【0070】
次に、第3の変形例に係るサイドフレーム12について説明する。
図12Cに示されるように、第3の変形例に係るサイドフレーム12には、補強部82A、補強部82B、補強部82C及び補強部82Dが形成される。ここで、補強部82A、補強部82B、補強部82C及び補強部82Dはそれぞれ、サイドフレーム側部12Aをプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として形成される。
補強部82Aは、サイドフレーム側部12Aの後縁12Cに沿って設けられる。ただし、補強部82Aの下端は、シート内側に向けて屈曲している。
補強部82Bは、エアバッグ取付孔31Aとエアバッグ取付孔31Bとの間においてシート前後方向に延在するように設けられる。また、補強部82Bの後端は、補強部82Aに連結している。
補強部82Cは、補強部82Aの屈曲箇所からエアバッグ取付孔31Cに向けてシート前後方向に延在するように設けられる。また、補強部82Cの後端は、補強部82Aに連結している。
補強部82Dは、エアバッグ取付孔31Bの上部において、サイドフレーム側部12Aの前縁に沿って設けられる。
【0071】
最後に、第4変形例に係るサイドフレーム12について説明する。
図12Dに示されるように、第4の変形例に係るサイドフレーム12には、補強部83A、補強部83B及び補強部83Cが形成される。ここで、補強部83A、補強部83B及び補強部83Cはそれぞれ、サイドフレーム側部12Aをプレス加工によりシート内側に凹ませたビード部として形成される。
補強部83Aは、サイドフレーム側部12Aの後縁12Cに沿って設けられる。
補強部83Bは、円環状に形成され、後端部が補強部83Aに連結する。そして、補強部83Bは、エアバッグ取付孔31Aと、エアバッグ取付孔31B及びエアバッグ取付孔31Cの間に形成され、エアバッグ取付孔31Aを内包する。
補強部83Cは、エアバッグ取付孔31Bの上部において、サイドフレーム側部12Aの前縁に沿って設けられる。