特許第6506467号(P6506467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6506467
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】対向ピストン型エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/28 20060101AFI20190415BHJP
   F01L 1/02 20060101ALI20190415BHJP
   F01L 1/04 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   F02B75/28 A
   F01L1/02 C
   F01L1/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-242066(P2018-242066)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2019年2月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511062933
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 達
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】黒木 正宏
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−119498(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103321744(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0220264(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0281599(US,A1)
【文献】 米国特許第06250263(US,B1)
【文献】 特開2015−129501(JP,A)
【文献】 特開2007−046534(JP,A)
【文献】 特開2013−083199(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0319351(US,A1)
【文献】 特開2003−172107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/24−28
F01L 1/00−32、36−42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、
前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、
前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、
前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、
前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、
前記第1吸気バルブと前記第2吸気バルブどうし、及び、前記第1排気バルブと前記第2排気バルブどうしが、それぞれ、前記第2方向から見て交差するように配置されることを特徴とする対向ピストン型エンジン。
【請求項2】
第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、
前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、
前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、
前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、
前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、
前記バルブ駆動機構は、
第1吸気カムと前記第1吸気バルブとの間に配置される第1吸気スイングアームと、
第1排気カムと前記第1排気バルブとの間に配置される第1排気スイングアームと、
第2吸気カムと前記第2吸気バルブとの間に配置される第2吸気スイングアームと、
第2排気カムと前記第2排気バルブとの間に配置される第2排気スイングアームと、を有し、
前記第1吸気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1吸気カムに当接し、
前記第1排気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1排気カムに当接し、
前記第2吸気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2吸気カムに当接し、
前記第2排気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2排気カムに当接することを特徴とする対向ピストン型エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ピストン型エンジンに関し、特に、対向して配置される各エンジン部が独立したシリンダ等を有する対向ピストン型エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低振動等の効果を有する対向ピストン型エンジンが開発されている。この種の対向ピストン型エンジンでは、互いに対向するように対置された2つのピストンが、直線的に往復運動するように構成されることで、エンジン運転時の制振効果を発揮している。
【0003】
特許文献1に、上記した対向ピストン型エンジンの一例が記載されている。具体的には、この対向ピストン型エンジンでは、エンジンブロックに1つのシリンダを形成し、このシリンダの内部で、2つのピストンヘッドが互いに対向するように往復運動する。また、このシリンダに連続する容積空間が形成されており、この容積空間に、吸気用バルブ、排気用バルブおよびスパークプラグが配設されている。このようにすることで、シリンダの組立加工を容易とし、シリンダの鋳造効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5508604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されたエンジンでは、対向するピストン同士の間に、吸気バルブ、排気バルブおよびこれらのバルブを駆動する駆動機構が配設される。よって、ピストン同士の間隔が長くなり、このことがエンジン全体の小型化を阻害してしまう恐れがあった。
【0006】
特に、対向ピストン型エンジンを小型の車両に内蔵させる場合、ピストンの往復方向に於ける長さが長くなると、車両の内部設計を行う際に、対向ピストン型エンジンが制約の原因になってしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サイズの小型化が図られた対向ピストン型エンジン、特に、ピストンの往復方向に於ける長さを短くした対向ピストン型エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対向ピストン型エンジンは、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、前記第1吸気バルブと前記第2吸気バルブどうし、及び、前記第1排気バルブと前記第2排気バルブどうしが、それぞれ、前記第2方向から見て交差するように配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の対向ピストン型エンジンは、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、前記バルブ駆動機構は、第1吸気カムと前記第1吸気バルブとの間に配置される第1吸気スイングアームと、第1排気カムと前記第1排気バルブとの間に配置される第1排気スイングアームと、第2吸気カムと前記第2吸気バルブとの間に配置される第2吸気スイングアームと、第2排気カムと前記第2排気バルブとの間に配置される第2排気スイングアームと、を有し、前記第1吸気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1吸気カムに当接し、前記第1排気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1排気カムに当接し、前記第2吸気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2吸気カムに当接し、前記第2排気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2排気カムに当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の対向ピストン型エンジンは、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、前記第1吸気バルブと前記第2吸気バルブどうし、及び、前記第1排気バルブと前記第2排気バルブどうしが、それぞれ、前記第2方向から見て交差するように配置されることを特徴とする。これにより、本発明の対向ピストン型エンジンによれば、第2方向に於いて、バルブ駆動機構を、第1シリンダおよび第2シリンダの外縁よりも外側に配置することで、第1方向に於いて第1シリンダと第2シリンダとを接近させることができ、対向ピストン型エンジンを全体的に小型化することができる。更にこれにより、本発明の対向ピストン型エンジンによれば、第1方向に於いて、各バルブが占める長さを短くでき、対向ピストン型エンジンを全体的に小型化することができる。
【0013】
本発明の対向ピストン型エンジンは、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部で往復運動する第1ピストンと、前記第1ピストンの往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフトと、前記第1ピストンと前記第1クランクシャフトとを運動可能に連結する第1コネクティングロッドと、前記第1シリンダに設けられた第1吸気バルブおよび第1排気バルブと、を有する第1エンジン部と、前記第1シリンダとは別体として対向する第2シリンダと、前記第2シリンダの内部で往復運動する第2ピストンと、前記第2ピストンの往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフトと、前記第2ピストンと前記第2クランクシャフトとを運動可能に連結する第2コネクティングロッドと、前記第2シリンダに設けられた第2吸気バルブおよび第2排気バルブと、を有する第2エンジン部と、前記第1吸気バルブ、前記第1排気バルブ、前記第2吸気バルブおよび前記第2排気バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構と、を具備し、前記第1エンジン部と前記第2エンジン部とが整列する方向を第1方向とし、前記第1クランクシャフトおよび前記第2クランクシャフトが伸びる方向を第2方向とした場合、前記バルブ駆動機構は、前記第2方向に沿って見た場合、前記第1シリンダおよび前記第2シリンダの外縁よりも外側に配置され、前記バルブ駆動機構は、第1吸気カムと前記第1吸気バルブとの間に配置される第1吸気スイングアームと、第1排気カムと前記第1排気バルブとの間に配置される第1排気スイングアームと、第2吸気カムと前記第2吸気バルブとの間に配置される第2吸気スイングアームと、第2排気カムと前記第2排気バルブとの間に配置される第2排気スイングアームと、を有し、前記第1吸気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1吸気カムに当接し、前記第1排気スイングアームは、前記第2エンジン部が配設される側から、前記第1排気カムに当接し、前記第2吸気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2吸気カムに当接し、前記第2排気スイングアームは、前記第1エンジン部が配設される側から、前記第2排気カムに当接することを特徴とする。これにより、本発明の対向ピストン型エンジンによれば、第1方向に於いて、バルブ駆動機構が閉めるスペースを短くすることができ、対向ピストン型エンジンを全体的に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る対向ピストン型エンジンを示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は上面図である。
図2】本発明の実施形態に係る対向ピストン型エンジンのバルブ駆動機構を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る対向ピストン型エンジンの各ポートを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して本形態の対向ピストン型エンジン10の構成および動作を説明する。
【0018】
以下の説明では、前後上下左右の各方向を適宜用いる。ここで、前方とは対向ピストン型エンジン10全体に於いて第1エンジン部11が配置される方向であり、後方とは前方に対峙する方向である。また、前後方向が第1方向であり、上下方向が第2方向である。
【0019】
図1を参照して、対向ピストン型エンジン10の基本構成を説明する。図1(A)は対向ピストン型エンジン10の側面図であり、図1(B)は対向ピストン型エンジン10の上面図である。
【0020】
図1(A)および図1(B)を参照して、対向ピストン型エンジン10は、前方側に配置された第1エンジン部11と、後方側に配置された第2エンジン部21と、を有している。第1エンジン部11と第1シリンダ12とは、両者の間の中央に上下方向に伸びる対称線である仮想線58に対して線対称に配置されている。
【0021】
第1エンジン部11は、第1シリンダ12と、第1シリンダ12の内部で往復運動する第1ピストン13と、第1ピストン13の往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフト14と、第1ピストン13と第1クランクシャフト14とを運動可能に連結する第1コネクティングロッド15と、第1吸気バルブ17と、第1排気バルブ18と、を有する。第1吸気バルブ17および第1排気バルブ18は、図2に示す。
【0022】
第2エンジン部21は、第2シリンダ22と、第2シリンダ22の内部で往復運動する第2ピストン23と、第2ピストン23の往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフト24と、第2ピストン23と第2クランクシャフト24とを運動可能に連結する第2コネクティングロッド25と、第2吸気バルブ27と、第2排気バルブ28と、を有する。第2吸気バルブ27および第2排気バルブ28は、図2に示す。
【0023】
また、第1エンジン部11と第1シリンダ12との間には、第1エンジン部11と第1シリンダ12とが有する各バルブの進退動作を駆動するバルブ駆動機構30が配置されている。バルブ駆動機構30の構成は、図2を参照して後述する。バルブ駆動機構30は、駆動機構収納部31に内蔵されている。駆動機構収納部31は、第1エンジン部11と第2エンジン部21との間に配設された筐体部材である。
【0024】
図2を参照して、上記した対向ピストン型エンジン10が備えるバルブ駆動機構30の構成を説明する。図2はバルブ駆動機構30の拡大側面図である。
【0025】
バルブ駆動機構30は、第1バルブ駆動機構301および第2バルブ駆動機構302を有する。第1バルブ駆動機構301は上方部分に配置され、第2バルブ駆動機構302は下方部分に配置されている。
【0026】
第1バルブ駆動機構301は、第1吸気バルブ17を駆動する機構として、第1吸気バルブスプリング40、第1吸気スイングアーム46、第1吸気カム36を有している。第1吸気バルブスプリング40は、第1吸気バルブ17に対して、第1吸気バルブ17が閉まる方向に付勢力を与えている。第1吸気スイングアーム46は、一端が第1吸気バルブ17の後端に接触し、他端が第1吸気カム36の外面に接触している。更に、第1吸気スイングアーム46の中央部付近を、シャフトが回転自在に貫通している。係る構造は、後述する他のスイングアームに関しても同様である。第1吸気カム36は、略卵形形状を呈しており、カムシャフト44に対して相対回転不可能に接続されている。
【0027】
更に、第1バルブ駆動機構301は、第2吸気バルブ27を駆動する機構として、第2吸気バルブスプリング42、第2吸気スイングアーム48、第2吸気カム38を有している。第1吸気カム36と、第2吸気カム38とは、所定の位相差を持ってカムシャフト44に接続されている。第2吸気バルブスプリング42は、第2吸気バルブ27に対して、第2吸気バルブ27が閉まる方向に付勢力を与えている。第2吸気スイングアーム48は、一端が第2吸気バルブ27の後端に接触し、他端が第2吸気カム38の外面に接触している。第2吸気カム38は、略卵形形状を呈しており、カムシャフト44に対して相対回転不可能に接続されている。
【0028】
第2バルブ駆動機構302は、第1排気バルブ18を駆動する機構として、第1排気バルブスプリング41、第1排気スイングアーム47、第1排気カム37を有している。第1排気バルブスプリング41は、第1排気バルブ18に対して、第1排気バルブ18が閉まる方向に付勢力を与えている。第1排気スイングアーム47は、一端が第1排気バルブ18の後端に接触し、他端が第1排気カム37の外面に接触している。第1排気カム37は、略卵形形状を呈しており、カムシャフト45に対して相対回転不可能に接続されている。
【0029】
更に、第2バルブ駆動機構302は、第2排気バルブ28を駆動する機構として、第2排気バルブスプリング43、第2排気スイングアーム49、第2排気カム39を有している。第1排気カム37と、第2排気カム39とは、所定の位相差を持ってカムシャフト45に接続されている。第2排気バルブスプリング43は、第2排気バルブ28に対して、第2排気バルブ28が閉まる方向に付勢力を与えている。第2排気スイングアーム49は、一端が第2排気バルブ28の後端に接触し、他端が第2排気カム39の外面に接触している。第2排気カム39は、略卵形形状を呈しており、カムシャフト45に対して相対回転不可能に接続されている。
【0030】
図3を参照して、対向ピストン型エンジン10の排気および吸気の為の各ポートの構成を説明する。図3は、対向ピストン型エンジン10の各ポートが配置される部分の上面図である。この図では、混合気または排気が流通する経路を点線の矢印で示している。
【0031】
第1シリンダ12には、第1吸気ポート50と第1排気ポート51とが接続している。第1吸気ポート50は、第1シリンダ12に流入する混合気が通過する径路である。第1排気ポート51は、第1シリンダ12から排出される排気が通過する径路である。
【0032】
第2シリンダ22には、第2吸気ポート52と第2排気ポート53が接続している。第2吸気ポート52は、第2シリンダ22に流入する混合気が通過する径路である。第2排気ポート53は、第2シリンダ22から排出される排気が通過する径路である。
【0033】
また、図1および図2には図示しないが、対向ピストン型エンジン10は、第1クランクシャフト14および第2クランクシャフト24の回転力で、カムシャフト44およびカムシャフト45を回転させる図示しないカムシャフト駆動機構を有する。更に、対向ピストン型エンジン10は、第1クランクシャフト14の回転方向と第2クランクシャフト24の回転方向を反転させる図示しない反転機構を有する。
【0034】
ここで、上記した各図を参照して、対向ピストン型エンジン10の動作を説明する。対向ピストン型エンジン10を構成する第1エンジン部11および第2エンジン部21は、4ストロークエンジンであるため、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程を繰り返す。これにより、第1クランクシャフト14および第2クランクシャフト24を回転させ、発電機等の負荷を駆動し、更には、車両等の機械構造に駆動力を与える。ここで、第1エンジン部11および第2エンジン部21は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程を同時に行う。
【0035】
図2(A)等を参照して、第1エンジン部11の各行程に於ける動作は次の通りである。
【0036】
吸込行程では、第1吸気カム36が第1吸気スイングアーム46を回転させ、第1吸気スイングアーム46が第1吸気バルブ17を進出させ、且つ、第1排気スイングアーム47で押圧されない第1排気バルブ18を退出させた状態で、第1ピストン13が第1シリンダ12の内部で前方に向かって移動する。これにより、燃料(例えばガソリン)と空気との混合物である混合気を、図3に示した第1排気ポート51を経由して、第1シリンダ12の内部に導入する。
【0037】
圧縮行程では、第1吸気スイングアーム46に押圧されない第1吸気バルブ17が退出した状態となり、更に、第1排気スイングアーム47に押圧されない第1排気バルブ18も退出した状態となる。この状態で、回転する第1クランクシャフト14の慣性により、第1ピストン13が後方に向かって押し出され、第1シリンダ12の内部で混合気が圧縮される。
【0038】
燃焼行程では、図示しない点火プラグが第1シリンダ12の内部で点火することで、第1シリンダ12の内部で混合気が燃焼し、これにより第1ピストン13が下死点である前方の端部まで押し出される。
【0039】
排気行程では、第1吸気スイングアーム46で押圧されない第1吸気バルブ17を退出させ、且つ、第1排気スイングアーム47で押圧される第1排気バルブ18を進出させた状態で、回転する第1クランクシャフト14の慣性により第1ピストン13が後方に押し出され、第1シリンダ12の内部に存在する燃焼後のガスは、図3に示した第1排気ポート51を経由して、外部に排出される。
【0040】
第2エンジン部21の各行程に於ける動作は次の通りである。
【0041】
吸込行程では、第2吸気カム38が第2吸気スイングアーム48を回転させ、第2吸気スイングアーム48が第2吸気バルブ27を進出させ、且つ、第2排気スイングアーム49で押圧されない第2排気バルブ28を退出させた状態で、第2ピストン23が第2シリンダ22の内部で後方に向かって移動する。これにより、燃料(例えばガソリン)と空気との混合物である混合気を、図3に示した第2吸気ポート52を経由して、第2シリンダ22の内部に導入する。
【0042】
圧縮行程では、第2吸気スイングアーム48に押圧されない第2吸気バルブ27が退出した状態となり、更に、第2排気スイングアーム49に押圧されない第2排気バルブ28も退出した状態となる。この状態で、回転する第2クランクシャフト24の慣性により、第2ピストン23が前方に向かって押し出され、第2シリンダ22の内部で混合気が圧縮される。
【0043】
燃焼行程では、図示しない点火プラグが第2シリンダ22の内部で点火することで、第2シリンダ22の内部で混合気が燃焼し、これにより第2ピストン23が下死点である後方の端部まで押し出される。
【0044】
排気行程では、第2吸気スイングアーム48で押圧されない第2吸気バルブ27を退出させ、且つ、第2排気スイングアーム49で押圧される第2排気バルブ28を進出させた状態で、回転する第2クランクシャフト24の慣性により第2ピストン23が前方に押し出され、第2シリンダ22の内部に存在する燃焼後のガスは、図3に示した第2排気ポート53を経由して、外部に排出される。
【0045】
本実施形態の対向ピストン型エンジン10では、上下方向に於いて、バルブ駆動機構30を構成する構成部材を、第1シリンダ12および第1ピストン13の外縁よりも外側に配置している。
【0046】
図2(A)を参照して、具体的には、第1吸気バルブ17を駆動する、第1吸気バルブスプリング40、第1吸気スイングアーム46および第1吸気カム36を、第1シリンダ12および第2シリンダ22の上方縁部よりも、上方に配置している。更に、第2吸気バルブ27を駆動する、第2吸気バルブスプリング42、第2吸気スイングアーム48および第2吸気カム38を、第1シリンダ12および第2シリンダ22の上方縁部よりも、上方に配置している。
【0047】
また、第1排気バルブ18を駆動する、第1排気バルブスプリング41、第1排気スイングアーム47および第1排気カム37を、第1シリンダ12および第2シリンダ22の下方縁部よりも、下方に配置している。更に、第2排気バルブ28を駆動する、第2排気バルブスプリング43、第2排気スイングアーム49および第2排気カム39を、第1シリンダ12および第2シリンダ22の下方縁部よりも、下方に配置している。
【0048】
係る構成にすることで、前後方向に於いて、バルブ駆動機構30を構成する各部材が、第1シリンダ12と第2シリンダ22との間に配置されないので、バルブ駆動機構30の幅を短くすることができる。ひいては対向ピストン型エンジン10全体の長さを短くすることができる。これにより、対向ピストン型エンジン10を車両に内蔵させた場合、車両の内部で対向ピストン型エンジン10が占める容積を小さくすることができ、車両設計の自由度を向上することができる。
【0049】
更に、図2(A)を参照して、対向ピストン型エンジン10の左方側に配置される第1エンジン部11に含まれる第1吸気スイングアーム46は、第1吸気カム36に右方側から当接している。即ち、対向ピストン型エンジン10全体に於いて第1エンジン部11が配置される方向と、第1吸気カム36に対して第1吸気スイングアーム46が配置される
方向とが逆である。係る事項は、第1排気スイングアーム47、第2吸気スイングアーム48、第2排気スイングアーム49に関しても同様である。係る構成にすることで、バルブ駆動機構30の幅を更に短くできる。
【0050】
更に、図1(A)を参照して、本実施形態の対向ピストン型エンジン10では、第1エンジン部11および第2エンジン部21を構成する主要な構成部品が、前後方向に沿って規定された仮想線57上に配置されている。具体的には、第1エンジン部11の第1シリンダ12、第1ピストン13、第1クランクシャフト14および第1コネクティングロッド15が、仮想線57上に配置されている。更に、第2エンジン部21の第2シリンダ22、第2ピストン23、第2クランクシャフト24および第2コネクティングロッド25も、仮想線57上に配置されている。このように、各エンジン部の各構成要素を仮想線57上に配置することで、各エンジン部が動作することで発生する振動が相殺され、制振効果を向上することができる。
【0051】
更に、第1エンジン部11と第2エンジン部21とは、左右方向に規定された仮想線58に対して、線対称に配置されている。かかる構成によっても、各エンジン部が動作することで発生する振動が互いに相殺され、制振効果を向上することができる。
【0052】
図1(A)を参照して、第1エンジン部11の第1シリンダ12と、第2エンジン部21の第2シリンダ22とは、連続した空間ではなく、個別の燃焼室として形成されている。このようにすることで、先ず、第1シリンダ12および第2シリンダ22が、略円筒状の空間として形成されることから、燃焼室の形状がシンプルに成り、吸気効率および排気効率を高くすることで出力を増大させることができる。また、第1シリンダ12および第2シリンダ22は、略円筒形状を呈しているため、対向ピストン型エンジン10が運転される際に、第1シリンダ12および第2シリンダ22に於ける熱の授受が略一様に成るので、運転時に於ける第1シリンダ12および第2シリンダ22の変形が抑止されている。
【0053】
更に、本形態では、第1エンジン部11の第1シリンダ12と、第2エンジン部21の第2シリンダ22とが、個別に吸気バルブおよび排気バルブを有している。具体的には、第1エンジン部11の第1シリンダ12の後方端部に第1吸気バルブ17が配設され、第1シリンダ12の後方端部に第1排気バルブ18が配設されている。従って、エンジン運転時に於いて、第1シリンダ12を流通する混合気および排ガスの流路55が簡素化され、これと燃焼室形状のシンプル化により燃焼タフネスを向上することができる。同様に、第2エンジン部21の第2シリンダ22の前方端部に第2吸気バルブ27が配設され、第1シリンダ12の前方端部に第2排気バルブ28が配設されている。従って、エンジン運転時に於いて、第2シリンダ22を流通する混合気および排ガスの流路56が簡素化され、第1シリンダ12と同様に燃焼タフネスを向上することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 対向ピストン型エンジン
11 第1エンジン部
12 第1シリンダ
13 第1ピストン
14 第1クランクシャフト
15 第1コネクティングロッド
17 第1吸気バルブ
18 第1排気バルブ
21 第2エンジン部
22 第2シリンダ
23 第2ピストン
24 第2クランクシャフト
25 第2コネクティングロッド
27 第2吸気バルブ
28 第2排気バルブ
30 バルブ駆動機構
301 第1バルブ駆動機構
302 第2バルブ駆動機構
31 駆動機構収納部
36 第1吸気カム
37 第1排気カム
38 第2吸気カム
39 第2排気カム
40 第1吸気バルブスプリング
41 第1排気バルブスプリング
42 第2吸気バルブスプリング
43 第2排気バルブスプリング
44 カムシャフト
45 カムシャフト
46 第1吸気スイングアーム
47 第1排気スイングアーム
48 第2吸気スイングアーム
49 第2排気スイングアーム
50 第1吸気ポート
51 第1排気ポート
52 第2吸気ポート
53 第2排気ポート
55 流路
56 流路
57 仮想線
58 仮想線
【要約】
【課題】サイズの小型化が図られた対向ピストン型エンジン、特に、ピストンの往復方向に於ける長さを短くした対向ピストン型エンジンを提供する。
【解決手段】本発明の対向ピストン型エンジン10は、第1エンジン部11および第2エンジン部21とを有してる。また、第1エンジン部11および第2エンジン部21が備える各バルブを駆動するバルブ駆動機構30が、第1エンジン部11の第1シリンダ12および第2エンジン部21の第2シリンダ22の外縁よりも外側に配置される。係る構成とすることで、バルブ駆動機構30の幅を短くすることができ、ひいては対向ピストン型エンジン10全体を小型化することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3