【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。先ず、製造された多孔質セルロースビーズまたは吸着体の物性の試験方法につき説明する。
なお実施例の欄では、1重量部に相当する具体的量を1kgとした時、1体積部に相当する具体的量は1Lになるものとする。
【0073】
試験例1 ビーズ表面のSEM観察
各製造例、参考例で得られた多孔質セルロースビーズ、または吸着体を5倍体積量の30%エタノールで洗浄し、多孔質セルロースビーズに含まれる液体部分を30%エタノールで置換した。次いで、50%エタノール、70%エタノール、90%エタノール、特級エタノール、特級エタノール、特級エタノールを順に用いて多孔質セルロースビーズを同様に処理し、液体部分をエタノールで置換した。さらにt−ブチルアルコール/エタノールが3/7の混合液を用いて多孔質セルロースビーズを同様に処理した。次いで、t−ブチルアルコール/エタノール=5/5、7/7、9/1、10/0、10/0、10/0の混合液を順に用いて多孔質セルロースビーズを処理し、液体部分をt−ブチルアルコールで置換した後、凍結乾燥した。凍結乾燥を行なった多孔質セルロースビーズに蒸着処理を行い、SEM像を撮影した。
【0074】
試験例2 排除限界分子量と最大細孔径の測定
(1)カラム充填
多孔質セルロースビーズまたは吸着体をRO水に分散させ、1時間脱気した。脱気した多孔質セルロースビーズまたは吸着体を、線速105cm/hでカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製Tricorn 10/300)に充填した。その後、pH7.5の溶出液(129mL)を線速26cm/hでカラムに通液した。
【0075】
(2)マーカー添加
マーカーとして以下のものを用いた。
・Blue Dextran 2000(Pharmacia FIne Chemicals社製)
・Low Density Lipoprotein(SIGMA社製),MW3,000,000
・Thyroglobulin(SIGMA社製),MW660,000
・フェリチン(SIGMA社製),MW440,000
・Aldolase(SIGMA社製),MW158,000
・IgG ヒト由来(SIGMA社製),MW115,000(参考例1には不使用)
・Bovine Serum Albumin(Wako社製),MW67,000
・Cytochrome C(Wako社製),MW12,400
・Bacitracin (Wako社製),MW1,400
前記溶出液を線速26cm/hでカラムに通液しながら、上記マーカーをpH7.5のバッファーにて5mg/mLに薄めたものを、各々12μLずつ注入した。なお、マーカーの濃度は都度微調整した。
【0076】
(3)測定
測定器として、DGU−20A3、SCL−10A、SPD−10A、LC−10AD、SIL−20AC、CTO−10AC(それぞれSHIMADZU社製)を用い、測定ソフトウェアとして、LCSolutionを用いた。液量測定には50mLメスシリンダーを用いた。
マーカー注入と同時にUVモニターおよび液量の測定を開始し、
1)ブルーデキストランの最初のピークに対応する液量をV
0(mL)とした。
2)各マーカーのピークに対応する液量をV
R(mL)とした。
3)カラム内の多孔質セルロースビーズまたは吸着体のトータルボリュームをV
t(mL)とした。
【0077】
(4)算出
各マーカーのゲル相分配係数(K
av)を次式で算出した。
K
av=(V
R−V
0)/(V
t−V
0)
【0078】
(5)排除限界分子量と最大細孔径の算出
各マーカーのK
avと分子量の対数をプロットし、直線性を示す部分から下記式の傾きと切片を求めた。
K
av=k×L
n(分子量)+b
次いで、求めた傾きと切片からK
avが0の時の分子量、つまり排除限界分子量を求めた。次に、中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の下記相関式に排除限界分子量を代入し、求まった値を試料粒子の細孔の最大径とした。
球状タンパク質の中性緩衝液中の直径(Å)=2.523×分子量
0.3267【0079】
試験例3 平均細孔径の算出
上記試験例2(5)において、直線性を示す部分の最大K
av/2に相当する分子量を前記中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の相関式に代入し、求まった値を多孔質セルロースビーズまたは吸着体の細孔の平均径とした。
なお、試験例2および試験例3において、吸着体の目的吸着物質に対するK
avを測定する場合、目的吸着物質が吸着されてしまい、正確な測定ができなくなるおそれがある。よって、吸着体の目的吸着物質に対するK
avは、目的吸着物質と近い分子量を有する2種以上のタンパク質のK
avを測定し、それらのデータから計算で求めた。例えば、目的吸着物質がIgGの場合、フェリチンとアルブミンのデータからK
avを求めた。
試験例4 IgGアクセシブルな比表面積(以下、単に比表面積ともいう)の算出
多孔質セルロースビーズの細孔構造を、各マーカー分子の直径に相当する円筒型の孔と仮定し、IgGアクセシブルな比表面積を算出した。具体的には、上記試験例2(5)で求めた直線の式と、前記中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の相関式を利用し、排除限界分子量からIgGの分子量(本試験例では14万6千とした)までの間におけるKavと細孔径をプロットして得られる直線を得た。この直線を任意に区割りし、各区間Kav(各区間の円筒型細孔容量とみなす)から各区間の円筒型細孔の壁面積を求め、これをIgG相当点まで累積し、IgGアクセシブルな比表面積とした。
試験例5 理論IgG飽和吸着量の算出
試験例4で算出したIgGアクセシブルな比表面積から理論IgG飽和吸着量を算出した。具体的には、下記式で多孔質セルロースビーズ中の単位体積当たりのIgG個数を求めた。
単位体積当たりのIgG個数=IgGアクセシブルな比表面積÷IgG占有面積
算出されたIgG個数から単位体積(ビーズの沈降体積)あたりのIgG重量を算出し、理論IgG飽和吸着量とした(沈降時のビーズの充填率を60%と仮定)。
尚、IgG占有面積は前記中性緩衝液中の球状タンパク質の直径と分子量の相関式から求めた。
【0080】
試験例6 メジアン粒径の測定
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場社製LA−950)を用いて、多孔質セルロースビーズの体積基準の粒度分布を測定し、メジアン粒径を求めた。
【0081】
試験例7 強度評価
AKTAexplorer 10S(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、多孔質セルロースビーズまたは吸着体をそれぞれ3mL入れ、線速450cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールと蒸留水で調製)を1時間通液して充填した。次いでpH7.4リン酸バッファー(シグマ製)を任意の線速で通液し、圧密化がおきる線速を求めて強度評価とした。
【0082】
試験例8 RT3分での動的吸着量(DBC)測定
(1)溶液作成
以下の溶液を調製した。
A液:pH7.4リン酸バッファー(シグマ製)
B液:pH3.5Mの35mM酢酸ナトリウム(ナカライテスク社製の酢酸、酢酸ナトリウム、RO水で調製)
C液:1M酢酸(ナカライテスク社製の酢酸とRO水で調製)
D液:1mg/mLのヒトポリクローナルIgG溶液(ニチヤク社製ガンマグロブリンニチヤク1500mg/10mLとA液で調製)
E液:6M尿素(関東化学社製の尿素とRO水で調製)
各溶液は、使用前に脱泡した。
【0083】
(2)充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置として、AKTAexplorer 100(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、本発明の吸着体をそれぞれ3mL入れ、線速450cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールとRO水で調整)を1時間通液して充填した。フラクションコレクターに15mlの採取用チューブをセットした。この溶出液の採取用チューブには、あらかじめ中和液を入れておいた。
【0084】
(3)IgG精製
A液を線速300cm/hで9mL通液し、次いでD液を、UVをモニターしながら、IgGが10%破過するまで線速300cm/hで通液した。ここで、5%破過した時のIgG負荷量をRT3分での5%DBCとした。次いで、A液を線速300cm/hで30mL通液し、B液を線速300cm/hで30mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を線速300cm/hで9mL,E液を線速300cm/hで9mL通液し、再生処理を行った。
【0085】
試験例9 RT6分での動的吸着量測定
試験例8の(3)における線速を150cm/hとして求めた。
【0086】
試験例10 RT9分での動的吸着量測定
試験例8の(3)における線速を100cm/hとして求めた。
【0087】
試験例11 エポキシ基定量
エポキシ化多孔質セルロースビーズを、グラスフィルター(TOP社製3G−2)上で15分間吸引ろ過(サクションドライ)し、サクションドライ後の多孔質担体1.5gをスクリュー菅(マルエム社製)に秤量し、1.3Mチオ硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製チオ硫酸ナトリウムとRO水で調整)4.5mLを加えた。45℃で30分間加温した後、RO水を加えて液量を50mLとし、100mLのガラス製ビーカーに移し、1%フェノールフタレイン溶液(和光純薬工業社製フェノールフタレインとエタノールで調整)を数滴添加した。0.01N塩酸(和光純薬工業社製、容量分析用)で滴定し、エポキシ基含量を求めた。
【0088】
試験例12 デキストラン硫酸導入量の定量
デキストラン硫酸とトルイジンブルーが親和性を有することを利用して測定した。すなわち1mLの吸着体に対し、約90mg/Lに調整したベーシック・ブルー17(東京化成社製)水溶液を120mL加え、10分間攪拌、60分間静置後、上清のベーシック・ブルーを630nmにおける吸光度により定量し、その減少量から求めた。
【0089】
製造例1
(1)アルカリ水溶液Aの作製
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液を作製し、4℃に調整した。
(2)セルロース分散液Aの作製
旭化成ケミカルズ社製局方セルロースPH−F20JP(メジアン粒径:21μm)9.2重量部と蒸留水104重量部を混合し、攪拌しながら4℃に調整した。次いで設定温度と攪拌を維持しながら4℃に調整したアルカリ水溶液Aを40重量部投入し、30分間攪拌した。
(3)多孔質セルロースビーズの作製
4℃に調整されたセルロース分散液A154重量部と、4℃に調整されたオルトジクロロベンゼン776重量部と、4℃に調整されたソルビタンモノオレエート(span80相当品)7.8重量部を混合し、ディスクタービン(rushton turbine)翼2枚(
図16参照。以下、同様)を取り付けたセパラブルフラスコ内にて、300rpm(Pv値:0.2kW/m
3)で4℃、30分間攪拌し、エマルションを作製した。設定温度と攪拌を維持しながら4℃に調整されたメタノール57重量部を凝固溶媒として加えた。また凝固溶媒の添加所要時間は2秒であった。その後、攪拌数と設定温度を維持しながら20分間攪拌した。吸引濾過を行なった後、エタノール240重量部を用いて洗浄を行い、次いで500重量部の水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを得た。
図1に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。得られた多孔質セルロースビーズを、38μmと90μmの篩を用いて湿式分級した。
(4)架橋 − 方法A(特開2008−279366参考法)
上記多孔質セルロースビーズ11体積部に蒸留水を加えて16.5体積部として、反応容器に移した。ここに4N NaOH水溶液(ナカライテスク社製のNaOHと蒸留水で調製)を3.86体積部加え、40℃に調整した。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を1.77重量部投入し、40℃で4時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋1回ビーズを得た。
得られた架橋1回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質ビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて、120℃で1時間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化したオートクレーブ済みの架橋1回ビーズを得た。
次いで、このオートクレーブ済みの架橋1回ビーズ11体積部に蒸留水を加えて16.5体積部とし、反応容器に移した。これに4N NaOH水溶液(ナカライテスク社製のNaOHと蒸留水で調製)を3.86体積部加え、40℃に調整した。ここにデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を1.77重量部投入し40℃で4時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過しながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋2回ビーズを得た。
得られた架橋2回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質ビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて120℃で60分間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、オートクレーブ済みの架橋2回ビーズを得た。
(5)架橋多孔質セルロースビーズの物性試験
上記架橋多孔質セルロースビーズのメジアン粒径は75μmであった。また、平均細孔径は215Å、最大細孔径は1756Åで、排除限界分子量は5.0×10
8であった。また、比表面積は7.17×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は79g/Lであった。
【0090】
製造例2 無配向型プロテインAの調製
本発明で使用した無配向型プロテインAは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。これは、Staphylococcus aureus由来プロテインAからシグナルシーケンス(Sドメイン)及び細胞壁結合ドメイン(Xドメイン)を除いた部分にあたり、WO2006/004067においてSPA’として記載されているものである。当該無配向型プロテインAを、WO2006/004067の実施例に記載の方法に準じて調製した。なおこのWO2006/004067の全内容が、本願に参考のため援用される。
【0091】
実施例1
下記手順に従って、無配向型プロテインAを固定化した吸着体を作製した。製造例1で得られた架橋多孔質セルロースビーズ11.0mLに、RO水を加えて全量を17.0mLとし、50mLの遠沈管に入れ、これを25℃にてミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)上に取り付けた後、攪拌した。次に、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をRO水に溶解させて、8.64mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を6.0mL作成し、先程の架橋多孔質セルロースビーズを入れた遠沈管に加え、25℃で1時間攪拌した。反応後、グラスフィルター(シバタ社製 11GP100)上で、濾液の電気伝導度が1μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、ホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズを得た。洗浄濾液の電気伝導度は、導電率計(EUTECH
INSTRUMENTS社製、ECTester10 Pure+)で測定した。
得られたホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズ9.0mLをグラスフィルター(シバタ社製 11GP100)上でpH8のバッファー(0.5Mクエン酸三ナトリウム二水和物(関東化学社製)、0.15M塩化ナトリウム(関東化学社製))30mLで置換した。pH8のバッファー(0.5Mクエン酸三ナトリウム二水和物、0.15M塩化ナトリウム)を用いて、置換後のホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズを、遠沈管に移し入れ、総体積量14.0mLとなるように液量を調整した。ここに、上記製造例2で調製した、無配向型プロテインAの濃度が67.58mg/mLの溶液を5.327g加えた後、6℃にて、0.08NNaOH(ナカライテスク社製のNaOHとRO水で調製)を用いて、pHを12に調整した後、6℃にて23時間、ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用い、攪拌させながら反応させた。
23時間反応後、2.4Nクエン酸(関東化学社製クエン酸とRO水で調製)を用いて反応液のpHを5.0に調整した後、6℃で4時間、ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用いて、攪拌させた。引き続き、5.5%ジメチルアミンボラン(DMAB)水溶液(キシダ化学社製ジメチルアミンボランとRO水で調整)を0.39mL加えて、6℃で1時間攪拌した後、反応温度を25℃に上昇させ、25℃で18時間、ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用いて攪拌しながら反応させた。反応後、反応液の278nm付近の吸収極大のUV吸光度を測定しプロテインAの導入量を求めた。
反応後のビーズをグラスフィルター(シバタ製 11GP100)上で、ビーズの3倍体積量のRO水で洗浄した。次いで、3倍体積量の0.1Nクエン酸水溶液(関東化学社製クエン酸一水和物とRO水で調製)を加え、当該ビーズに0.1Nクエン酸一水和物を加えて全量を30mL以上とし、遠沈管に入れ、25℃で30分間攪拌しながら、酸洗浄を行った。
酸洗浄後、ビーズをグラスフィルター(シバタ製11GP100)上で、ビーズの3倍体積量のRO水で洗浄し、次いで、ビーズの3倍体積量の水溶液(0.05M水酸化ナトリウム、1M硫酸ナトリウム(ナカライテスク製水酸化ナトリウム、関東化学社製硫酸ナトリウム及びRO水で調製))を加えた。次に、当該ビーズに水溶液(0.05M水酸化ナトリウム、1M硫酸ナトリウム)を加えて全量を30mL以上とし、遠沈管に入れ、室温で30分間攪拌しながら、アルカリ洗浄を行った。
アルカリ洗浄後、ビーズをグラスフィルター(シバタ製 11GP100)上で、ビーズの20倍体積量のRO水で洗浄した。次に、ビーズの3倍体積量の0.5Nクエン酸三ナトリウム水溶液(関東化学社製クエン酸三ナトリウム二水和物とRO水で調製)を加え、濾液が中性になっていることを確認した後、RO水を用いて、洗浄濾液の電導度が1μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄濾液の電導度は導電率計(EUTECH INSTRUMENTS社製、ECTester10 Pure+)で測定した。
得られたプロテインAを固定化した吸着体について、試験例8〜10に従って物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:35g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:43g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:49g/L(吸着体充填体積)
RT9分での5%DBC:51g/L(吸着体充填体積)
【0092】
製造例3
凝固溶媒を15重量%クエン酸一水和物メタノール溶液とした以外は製造例1と同様に多孔質セルロースビーズを得た。
図2に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例1と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は190Å、最大細孔径は718Åで、排除限界分子量は3.2×10
7であった。また、比表面積は1.04×10
8m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は114g/Lであった。
【0093】
実施例2
製造例3で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:33g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:43g/L(吸着体充填体積)
【0094】
製造例4
(1)多孔質セルロースビーズの作製
攪拌速度を500rpm(Pv値:1.1kW/m
3)とした以外は、製造例1と同様に、多孔質セルロースビーズを作製した。
図3に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また90μmの篩を63μmの篩に変更した以外は、製造例1と同様に分級を行った。
(2)架橋 − 方法B
上記多孔質セルロースビーズ20体積部に蒸留水を加えて30体積部とし、反応容器に移した。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を2.3重量部投入し、40℃に調整しながら攪拌を続けた。40℃に調整後、30分間攪拌した。次いで、2N NaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)7.1体積部を用意し、1時間に1/4ずつ加えた。この間、温度を40℃に維持し、攪拌も継続した。最後の1/4量を添加後、同温度で1時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋1回ビーズを得た。
得られた架橋1回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質セルロースビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて、120℃で1時間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化したオートクレーブ済みの架橋1回ビーズを得た。
次いで、このオートクレーブ済みの架橋1回ビーズ20体積部に蒸留水を加えて30体積部とし、反応容器に移した。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX−314(ナガセケムテックス社製)を2.3重量部投入し、40℃に調整しながら攪拌を続けた。40℃に調整後、30分間攪拌した。次いで、2NNaOH水溶液(ナカライテスク社製と蒸留水で調製)7.1体積部を用意し、1時間に1/4ずつ加えた。この間、温度を40℃に維持し、攪拌も継続した。最後の1/4量を添加後、同温度で1時間攪拌した。反応終了後、吸引濾過をしながら、ビーズの20倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、架橋2回ビーズを得た。
得られた架橋2回ビーズを容器に移し、蒸留水を加えて、全量を架橋多孔質セルロースビーズの10倍体積量とし、オートクレーブを用いて120℃で60分間加温した。室温まで放冷した後、ビーズの5倍体積量以上の蒸留水で洗浄し、オートクレーブ済みの架橋2回ビーズを得た。
(3)架橋多孔質セルロースビーズの物性試験
上記架橋ビーズのメジアン粒径は56μmであった。また、平均細孔径は336Å、最大細孔径は3400Åで、排除限界分子量は3.8×10
9であった。また、比表面積は6.88×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は75g/Lであった。
このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなか・BR>チた。
【0095】
実施例3
製造例4で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:36g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:70g/L(吸着体充填体積)
【0096】
製造例5
凝固溶媒を15重量%クエン酸一水和物エタノール溶液とした以外は製造例1と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図4に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例1と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は163Å、最大細孔径は1040Åで、排除限界分子量は1.0×10
8であった。また、比表面積は7.85×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は86g/Lであった。
【0097】
実施例4
製造例5で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:36g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:8g/L(吸着体充填体積)
【0098】
製造例6
63μmの篩を90μmの篩に変更した以外は、製造例4と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図5に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例4と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。このビーズは装置で通液可能な最大線速である3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0099】
実施例5
製造例6で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:36g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:42g/L(吸着体充填体積)
【0100】
製造例7
攪拌速度を700rpm(Pv値:3.1kW/m
3)とした以外は、製造例6と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図6に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例6と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなかった。
【0101】
実施例6
製造例7で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:38g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:49g/L(吸着体充填体積)
【0102】
製造例8
攪拌速度を250rpm(Pv値:0.1kW/m
3)とした以外は、製造例6と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図7に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例6と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μm、平均細孔径は130Å、最大細孔径は562Åで、排除限界分子量は1.5×10
7であった。また、比表面積は8.72×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は96g/Lであった。
【0103】
実施例7
製造例8で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:37g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:36g/L(吸着体充填体積)
【0104】
製造例9
攪拌翼を
図16に示すH字形状部を2つ有する大型翼(本明細書ではWH型大型翼という)1枚とし攪拌速度を350rpm(Pv値:1.1kW/m
3)とした以外は、製造例6と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図8に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例6と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。造粒直後の粒度分布は、実施例5と比べて広かった。メジアン粒径は75μmであった。平均細孔径は418Å、最大細孔径は1137Åで、排除限界分子量は1.3×10
8であった。また、比表面積は8.38×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は92g/Lであった。
【0105】
実施例8
製造例9で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:35g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:29g/L(吸着体充填体積)
【0106】
製造例10
凝固溶媒の添加所要時間を60秒とした以外は、製造例6と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図9に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例6と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。平均細孔径は194Å、最大細孔径は747Åで、排除限界分子量は3.7×10
7であった。また、比表面積は1.02×10
8m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は112g/Lであった。
【0107】
実施例9
製造例10で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:31g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:55g/L(吸着体充填体積)
【0108】
製造例11
攪拌翼を傾斜パドル翼2枚とした以外は、製造例7と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図10に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例7と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン径は75μmであった。平均細孔径は221Å、最大細孔径は2407Åで、排除限界分子量は1.3×10
9であった。また、比表面積は6.42×10
7m
2/m
3、理論IgG飽和吸着量は70g/Lであった。
【0109】
実施例10
製造例11で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:34g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:36g/L(吸着体充填体積)
【0110】
製造例12
調整温度を9℃とした以外は、製造例11と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図11に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例11と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0111】
実施例11
製造例12で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:34g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:22g/L(吸着体充填体積)
【0112】
製造例13
調整温度を0℃とした以外は、製造例11と同様に、多孔質セルロースビーズを得た。
図12に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例11と同様に、分級を行い、次いで架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
【0113】
実施例12
製造例13で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得た結果、物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:35g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:14g/L(吸着体充填体積)
【0114】
製造例14
(1) セルロース分散液Bの作製
旭化成ケミカルズ社製局方セルロースPH−F20JP(メジアン粒径:21μm)76gと蒸留水800gを混合し、攪拌しながら4℃に調整した。次いで設定温度と攪拌を維持しながら4℃に調整したアルカリ水溶液Aを400g投入し、30分間攪拌した。
(2) 多孔質セルロースビーズの作製
4℃に調整されたセルロース分散液B1276gと、4℃に調整したオルトジクロロベンゼン7801gと、4℃に調整したソルビタンモノオレエート(span80相当品)78gを混合し、ディスクタービン(rushton turbine)翼2枚を取り付けたステンレス容器内にて460rpm(Pv値:5.0kW/m
3)で4℃、15分間攪拌し、エマルションを作製した。設定温度と攪拌を維持しながら4℃に調整されたメタノール592gを凝固溶媒として加えた。また凝固溶媒の添加所要時間は5秒であった。その後、攪拌数と設定温度を維持しながら30分間攪拌した。加圧濾過を行なった後、洗浄液としてメタノール3000gを用いて洗浄を行い、次いで3000gの水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを得た。
図13に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。また、製造例1と同様に、得られた多孔質セルロースビーズを、38μmと90μmの篩を用いて湿式分級した。
その後、製造例4と同様に、架橋された多孔質セルロースビーズを得た。メジアン粒径は75μmであった。
【0115】
実施例13
製造例14で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:35g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:57g/L(吸着体充填体積)
【0116】
製造例15
セルロース分散液Bを1212g、オルトジクロロベンゼンを8238g、ソルビタンモノオレエート(span80相当品)を85g、凝固溶媒としてのメタノールを740gとした以外は、製造例14と同様にして、多孔質セルロースビーズを得た。
図14に示す通り、表面に良好な孔が空いていることが確認できた。製造例14と同様に分級と架橋を行った。
【0117】
実施例14
製造例15で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、その後、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得て、物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA導入量:30g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:60g/L(吸着体充填体積)
【0118】
製造例16 配向型プロテインAの調製
本発明で用いた配向型プロテインAは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。これは、Cドメインの4、7、35、42、49、50、58番目のLysをArgに、29番目のGlyをAlaに置換したCドメイン変異体を、4つ連結させた(ただし、C末端のLysだけは無置換である)構造に相当する。当該配向型プロテインAを、WO2011/118699に記載されたCドメイン変異体、およびその連結体の調製方法に準じて調製した。なおこのWO2011/118699の全内容が、本願に参考のため援用される。
【0119】
実施例15
製造例14で得られた架橋多孔質セルロースビーズ3.5mLを遠沈管に入れ、RO水を加えて、全量を6mLとした。これを25℃にてミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)上に取り付けた後、撹拌した。次に過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をRO水に溶解した、11.16mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を2.0mL加え、25℃で1時間撹拌した。反応後、グラスフィルター(シバタ社製 11GP100)上で、濾液の電気伝導度が1μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、ホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズを得た。洗浄濾液の電気伝導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS社製、ECTester10 Pure+)で測定した。
得られたホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズ3.5mLをグラスフィルター(シバタ社製 11GP100)上で、pH12の0.6Mクエン酸 バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、水酸化ナトリウム、RO水を用いて調整)で置換した。pH12の0.6Mクエン酸バッファーを用い、置換後のホルミル基含有架橋多孔質セルロースビーズを、遠沈管に入れ、総体積量7.5mLとなるように液量を調整した。ここに、製造例16で調製した配向型プロテインAが入った水溶液(プロテインAの濃度が63.7mg/mL)を0.82g加えた後、6℃にて23時間、ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用い、攪拌させながら反応した。
その後、反応液を回収(反応液1)し、pH8の0.1Mクエン酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、RO水を用いて調整)で置換して、6℃で4時間ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用いて、攪拌した。引き続き、5.5重量%濃度のジメチルアミンボラン水溶液(和光純薬工業社製ジメチルアミンボランとRO水で調製)を1.93mL加えて、6℃で1時間攪拌した後、反応温度を25℃に上昇し、25℃で18時間、ミックスローター(アズワン社製 ミックスローターMR−3)を用いて攪拌しながら反応した。反応後、反応液を回収した(反応液2)。反応液1及び2の278nm付近の吸収極大のUV吸光度を測定し、仕込んだリガンド量から差し引くことで、プロテインA固定化量を算出した。
反応後のビーズをグラスフィルター(シバタ製 11GP100)上で、ビーズの3倍体積量のRO水で洗浄した。次いで、3倍体積量の0.1Nクエン酸一水和物(関東化学社製クエン酸一水和物とRO水で調製)を加え、当該ビーズに0.1Nクエン酸一水和物を加えて全量を30mL以上とし、遠沈管に入れ、25℃で30分間攪拌しながら、酸洗浄を行った。
酸洗浄後、ビーズをグラスフィルター(シバタ製11GP100)上で、ビーズの3倍体積量のRO水で洗浄し、次いで、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(ナカライテスク製水酸化ナトリウム、関東化学社製硫酸ナトリウム及びRO水で調製)を加えた。次に、当該ビーズに、0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を30mL以上とし、遠沈管に入れ、室温で30分間攪拌しながら、アルカリ洗浄を行った。
アルカリ洗浄後、ビーズをグラスフィルター(シバタ製 11GP100)上で、ビーズの20倍体積量のRO水で洗浄した。次に、ビーズの3倍量の0.1Nクエン酸ナトリウム水溶液(関東化学社製クエン酸三ナトリウム二水和物+RO水で調製)を加え、濾液が中性になっていることを確認した後、RO水を用いて、洗浄濾液の電導度が1μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄濾液の電導度は導電率計(EUTECH INSTRUMENTS社製、ECTester10 Pure+)で測定した。
得られたプロテインAを固定化した吸着体について、試験例8〜9に従って物性評価を行った。結果を以下に示す。
プロテインA固定化量:9g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:56g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:64g/L(吸着体充填体積)
【0120】
実施例16
加えるリガンドの量を1.64mLとした以外は、実施例15と同様の方法で目的とする吸着体を作製した。物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:17g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:61g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:79g/L(吸着体充填体積)
【0121】
比較製造例1
(1) セルロース溶液の作製
100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスPH101,メジアン粒径:73μm)を加え、120℃に加熱して溶解した。この温度で貯蔵することが困難なため、用時調整とした。
(2) 架橋多孔質セルロースビーズの作製
チオシアン酸カルシウムを用いて作製される多孔質セルロースビーズを、WO2010/095573の実施例を参考に、以下のように作製した。具体的には、上記セルロース溶液に界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加し、140℃に予め加熱したオルトジクロロベンゼン480mL中に滴下し、300rpmにて攪拌した。次いで上記分散液を40℃まで冷却し、メタノール190mL中に注ぎ、凝固させた。吸引濾過を行なった後、メタノール190mLにて洗浄した。このメタノール洗浄を数回行なった。さらに大量の蒸留水で洗浄した後、吸引濾過を行い、多孔質セルロースビーズを得た。濾過後の多孔質セルロースビーズ100gを121gの蒸留水に60gの硫酸ナトリウムを溶解した液に加え、50℃で2時間攪拌した。次いで、45重量%の水酸化ナトリウム水溶液3.3gと水素化ホウ素ナトリウム0.5gを加えて攪拌した。50℃で攪拌を継続しながら、45重量%の水酸化ナトリウム水溶液48gとエピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分置きに添加した。添加終了後、50℃で16時間反応させた。反応後、40℃に冷却し、酢酸2.6gを加えて中和し、吸引濾過を行い、蒸留水で洗浄した。53μmと90μmの篩を用いて湿式分級を行ない、平均粒子径78μmの架橋された多孔質セルロースビーズを得た。
(3) 物性試験
上記架橋多孔質セルロースビーズの表面孔径は1649Åで、平均細孔径は793Å、最大細孔径は14100Åで、排除限界分子量は2.9×10
11であった。このビーズは線速3057cm/hでも圧密化しなかった。
このように、比較製造例1で得られた架橋多孔質セルロースは、かなり大き過ぎる細孔を有するものであった。また、毒性の高いチオシアン酸カルシウムを含む溶液が廃液として残ってしまった。
【0122】
比較例1
比較製造例1で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いて、実施例1と同様にプロテインAを固定化した吸着体を得た結果、物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:32g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:41g/L(吸着体充填体積)
【0123】
比較例2
比較製造例1で作製した架橋多孔質セルロースビーズを用いた点と、配向型プロテインAが入った水溶液の量を0.51mLとした点以外は、実施例15と同様に配向型プロテインAを固定化した吸着体を作製した。物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:8g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:35g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:41g/L(吸着体充填体積)
【0124】
比較例3
配向型プロテインAが入った水溶液の量を0.76mLとした点以外は、比較例2と同様に配向型プロテインAを固定化した吸着体を作製した。物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:10g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:41g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:48g/L(吸着体充填体積)
【0125】
比較例4
配向型プロテインAが入った水溶液の量を1.01mLとした点以外は、比較例2と同様に配向型プロテインAを固定化した吸着体を作製した。物性は以下の通りとなった。
プロテインA導入量:15g/L(吸着体体積)
RT3分での5%DBC:44g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:52g/L(吸着体充填体積)
【0126】
参考例1
比較的、モノクローナル抗体の吸着量が大きいタイプとして販売されている、プロテインAが導入された架橋多孔質アガロースビーズ、MabSelect SuRe LX(ジーイーヘルスケア社製)の平均細孔径は425Å、最大細孔径は2970Åで、排除限界分子量は2.5×10
9であった。ビーズ表面のSEM像を
図15に示す。吸着性能は以下の通りであった。
RT3分での5%DBC:46g/L(吸着体充填体積)
RT6分での5%DBC:61g/L(吸着体充填体積)
【0127】
実施例17
(1)エポキシ化
実施例14で作製した多孔質セルロースビーズを38μmと150μmの篩を用いて湿式分級を行った。この分級後のビーズ1体積部にRO水1体積部を加え、さらに2N水酸化ナトリウム水溶液を0.53体積部加えて45℃で30分間加温した。次にエピクロロヒドリンを0.18体積部加えて45℃2時間攪拌した。グラスフィルター上で濾過を行い、大量のRO水でビーズを洗浄し、エポキシ基含有多孔質セルロースビーズを得た。エポキシ含有量は湿潤重量1gあたり17μmolであった。
(2)デキストラン硫酸の固定化
エポキシ基含有多孔質セルロースビーズ0.7体積部に26wt/vol%のデキストラン硫酸(硫黄含量約18%、分子量約4000)水溶液を添加して、液量を1.0体積部とした。次いで2N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、PHを9.5に調整した。その後、40℃16時間攪拌した。グラスフィルター上で濾過を行い、大量のRO水でビーズを洗浄し、デキストラン硫酸が固定化されえたビーズを得た。デキストラン硫酸導入量はビーズ1mLあたり14mgであった。
(3)残存エポキシ基の封止
デキストラン硫酸固定化ビーズ1体積部にRO水1体積部とモノエタノールアミン0.25体積部を添加し、45℃2時間攪拌し、残存エポキシ基の封止反応を行った。グラスフィルター上で濾過を行い、大量のRO水でビーズを洗浄し、目的とする吸着体を得た。
(4)LDLコレステロール吸着試験
ヒト血液を3000rpmで15分間遠心処理を行い、LDLコレステロール濃度が93mg/dLの血漿を得た。この血漿3mLを生理食塩水で洗浄した吸着体0.5mLに加えて、37℃で2時間振盪した。振盪後の上清のLDLコレステロール量をLDLコレステロールキット(積水メディカル社製コレステストLDL)を用いて測定し、吸着体に吸着されたLDLコレステロール量を求めた。ただし、ビーズの替わりに生理食塩水を用いた場合の上清のLDL濃度が81mg/dLであったので、これを計算に用いた。89%のLDLコレステロールが吸着体に吸着されたことが分かった。すなわち、吸着体へのLDLコレステロール吸着量は吸着体1Lあたり、5.0gであった。
実施例18
実施例17で加えた血漿量を6mLとした以外は、実施例17と同様にLDLコレステロール吸着試験を行った。ただし、ビーズの替わりに生理食塩水を用いた場合の上清のLDL濃度が87mg/dLであったので、これを計算に用いた。その結果、63%のLDLコレステロールが吸着体に吸着されたことが分かった。すなわち、吸着体へのLDLコレステロール吸着量は吸着体1Lあたり、7.0gであった。
【0128】
参考例2
吸着型血漿浄化器リポソーバー LA−15(カネカ社製)に充填されている吸着体を用いた以外は、実施例17と同様にLDLコレステロール吸着試験を行った。その結果、80%のLDLコレステロールが吸着体に吸着されたことが分かった。すなわち、吸着体へのLDLコレステロール吸着量は吸着体1Lあたり、3.9gであった。
【0129】
参考例3
吸着型血漿浄化器リポソーバー LA−15(カネカ社製)に充填されている吸着体を用いた以外は、実施例18と同様にLDLコレステロール吸着試験を行った。その結果、53%のLDLコレステロールが吸着体に吸着されたことが分かった。すなわち、吸着体へのLDLコレステロール吸着量は吸着体1Lあたり、5.5gであった。