特許第6506575号(P6506575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506575
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20190415BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20190415BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M10/058
   H01M2/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-50936(P2015-50936)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-171021(P2016-171021A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】川端 雄介
(72)【発明者】
【氏名】前園 寛志
(72)【発明者】
【氏名】占部 浩児
(72)【発明者】
【氏名】山本 真由美
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−284018(JP,A)
【文献】 特開2014−120470(JP,A)
【文献】 特開2015−032386(JP,A)
【文献】 特開2014−199727(JP,A)
【文献】 特開2007−323845(JP,A)
【文献】 特開2013−164982(JP,A)
【文献】 特開2009−032451(JP,A)
【文献】 特開2014−127375(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 2/02
H01M 6/02−6/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、を含む電極体と、
前記電極体を収容し、扁平筒状の側壁部と、前記側壁部の軸方向の一方端を封鎖する底部とを含む電池ケースとを備え、
前記電池ケースに収容された前記電極体の前記負極は、前記正極よりも前記底部側へ突出する部分を有し、
前記側壁部は、前記底部の長手方向の端部に接続される部分において肉厚部を有し、
前記肉厚部の前記軸方向における長さは、前記正極よりも前記底部側へ突出する前記負極の部分の軸方向における長さよりも長く、
前記肉厚部の前記底部と反対側の端では、前記側壁部の厚みが不連続になっており、
前記肉厚部の前記底部と反対側の端は、前記側壁部の軸方向の他方端と前記底部との間の中間よりも底部側に設けられる、電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記肉厚部における前記側壁部の厚みは、前記軸方向において前記底部から離れるにしたがって薄くなっている、電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池であって、
前記側壁部の軸方向の寸法が前記側壁部の軸方向に直交する方向の寸法よりも大きい、電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池であって、
前記底部の厚みが前記肉厚部における最小厚みより厚い、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば大画面のスマートフォンやタブレット等、電力消費量が比較的大きな携帯機器の普及が進んでいる。これに伴い、電池の大容量化及び大型化の要求が高まっている。
【0003】
大容量化又は大型化された電池は、落下した際に大きな衝撃を受ける。したがって、このような電池について、落下時の衝撃によって生じる問題への対応が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、外装缶において、側面部に切り欠き部又は溝を設けた角形電池が開示されている。当該電池の外装缶は、落下による衝撃を角部に受けた際、切り欠き部又は溝から変形する。これにより、落下の衝撃によって外装缶に生じる歪曲部が小さくなる。その結果、歪曲部が外装缶内の電極体を押し潰す量が低減され、内部短絡が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−127375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の角形電池では、外装缶の側面部において、切り欠き部は、電極体において最も外側に位置する正極板の底面部方向の先端と対向する側面部の位置から、外装缶の底面部と側面部との境界までの間に設けられている。そのため、落下による衝撃を角部に受けた際、側面部は、正極板と底面部との間の位置において変形する。この場合、変形した側面部が、電極体の端部に接触しやすい。その結果、電極体のセパレータの端部が押し上げられ、正極板が負極板と接触する可能性が高くなる。
【0007】
そこで、本願は、落下時における電極体の正極と負極との接触の発生を抑制することが可能な電池を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る電池は、電極体と電池ケースとを備える。電極体は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを含む。電極ケースは、前記電極体を収容し、扁平筒状の側壁部と、前記側壁部の軸方向の一方端を封鎖する底部とを含む。前記電池ケースに収容された前記電極体の前記負極は、前記正極よりも前記底部側へ突出する部分を有する。前記側壁部は、前記底部の長手方向の端部に接続される部分において肉厚部を有する。前記肉厚部の前記軸方向における長さは、前記正極よりも前記底部側へ突出する前記負極の部分の軸方向における長さよりも長い。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電池によれば、落下時における電極体の正極と負極の接触の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電池の概略を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電池のII−II断面図である。
図3図3は、図2の肉厚部11a付近の拡大図である。
図4図4は、図1に示す電池に含まれる電極体の中間体を示す平面図である。
図5図5は、図1に示す電池に含まれる電極体の概略を示す斜視図である。
図6図6は、図1に示す電池の落下時の状態を示す図である。
図7図7は、側壁部に肉厚部を設けない場合の落下時の電池ケースの変形の一例を示す図である。
図8図8は、側壁部に肉厚部を設けた場合の落下時の電池ケースの変形の一例を示す図である。
図9図9は、肉厚部の変形例を示す図である。
図10図10は、肉厚部の変形例を示す図である。
図11図11は、電池の変形例を示す図である。
図12図12は、肉厚部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態における電池は、電極体と電池ケースとを備える。電極体は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを含む。電極ケースは、前記電極体を収容し、扁平筒状の側壁部と、前記側壁部の軸方向の一方端を封鎖する底部とを含む。前記電池ケースに収容された前記電極体の前記負極は、前記正極よりも前記底部側へ突出する部分を有する。前記側壁部は、前記底部の長手方向の端部に接続される部分において肉厚部を有する。前記肉厚部の前記軸方向における長さは、前記正極よりも前記底部側へ突出する前記負極の部分の軸方向における長さよりも長い(第1の構成)。
【0012】
第1の構成によれば、側壁部の底部に接する部分は、肉厚部が形成されているので、他の部分より強度が増している。そのため、底部と側壁部との間の角部が電池の落下により衝撃を受けた場合、側壁部の肉厚部の変形度合いより、肉厚部以外の部分での変形度合いの方が大きくなりやすい。ここで、肉厚部の軸方向の長さは、正極よりも底部側へ突出する前記負極の部分の軸方向における長さより長い。そのため、落下の衝撃によって変形した側壁部が、負極が正極よりも底部側へ突出する部分のセパレータと干渉しにくくなる。その結果、落下時における電極体の正極と負極の接触の発生を抑制することができる。
【0013】
前記肉厚部における前記側壁部の厚みは、前記軸方向において前記底部から離れるにしたがって小さくなるよう形成することができる(第2の構成)。
【0014】
第2の構成によれば、落下時の肉厚部の変形度合は、底部から離れるにしたがって大きくなる。そのため、側壁部の角部における強度を高めつつ、角部への衝撃により変形しやすい側壁部の部分を、底部と正極との間の位置からより適切にずらすことができる。
【0015】
前記側壁部の軸方向の寸法は、前記側壁部の軸方向に直交する方向の寸法よりも大きくすることができる。この場合、電池が電池ケースの角部から落下した際、電池が衝突した面と側壁部との角度が45°よりも大きくなり、側壁部に対して底部よりも大きな力が作用し得る。これにより、側壁部のうち底部に近い部分に大きな変形が生じ得る。このような場合にも、電池ケースの側壁部の肉厚部は、高い効果を発揮する。すなわち、底部に接続される側壁部の軸方向の肉厚部の長さは、底部と正極の距離より長い。このため、側壁部のうち底部と正極との間に相当する部分より、ここを外れた部分の方が、変形度合いが大きくなりやすい。そのため、電池ケースと電極体との干渉がより生じにくくなる。
【0016】
前記底部の厚みは、前記肉厚部における最小厚みより厚くすることができる。これにより、底部の変形度合いよりも、側壁部の肉厚部以外の部分の変形度合いが大きくなりやすくなる。そのため、電池ケースと電極体との干渉がより生じにくくなる。
【0017】
[実施形態]
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0018】
(電池の構成)
図1は、実施形態に係る電池100の概略を示す斜視図である。電池100は、いわゆる角形電池であり、実質的に扁平な矩形状をなす。以下、説明の便宜上、電池100の面積が広い側面の短辺方向(x方向)を幅方向、当該面積が広い側面に垂直な方向(y方向)を厚み方向、幅方向及び厚み方向に垂直な方向(z方向)を高さ方向と称する。
【0019】
図1に示すように、電池100は、電池ケース1と、電極体2とを備えている。電池ケース1は、電極体2を収容する。電池ケース1内には、電解液(図示略)も収容されている。電池ケース1は、扁平筒状の側壁部11と、側壁部11の軸方向の一方端を封鎖する底部12と、他方端を封鎖する蓋14とを含む。
【0020】
側壁部11は、高さ方向に延びる軸を囲む扁平筒状をなす。すなわち、本実施形態では、高さ方向と軸方向は同じである。側壁部11は、幅方向の寸法よりも厚み方向の寸法が小さい。より詳細には、側壁部11は、互いに対向する一対の幅広部111と、一対の狭面部112とを有する。幅色部111は、平板状をなす。各狭面部112は、一対の幅広部111の幅方向の両端に設けられ、一対の幅広部111同士を連結する。狭面部112の軸方向に垂直な面における断面は円弧になっている。
【0021】
ただし、側壁部11の形状は、これに限定されない。例えば、四角筒状又は楕円筒状等であってもよい。すなわち、側壁部11の軸方向に垂直な面における断面形状は、矩形又は楕円形とすることができる。
【0022】
側壁部11の外面を構成する面のうち、幅広部111の外面の面積は、狭面部112の外面の面積より広い。すなわち、幅広部111の各外面は、実質的に扁平な矩形状をなす電池100において、面積が広い側面を構成する。狭面部112の各外面は、電池100において、面積が狭い側面を構成する。
【0023】
側壁部11は、軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも大きい。言い換えると、側壁部11の高さ方向の長さは、側壁部11の幅方向及び厚み方向の各最大長さよりも大きい。よって、電池ケース1は、側面視において縦長の概略長方形状をなす。
【0024】
図2は、厚み方向の中央を通り高さ方向に沿う平面で切断された電池100の断面図である。
【0025】
図2に示すように、電池ケース1は、側壁部11と、底部12と、蓋14とを含んでいる。側壁部11、底部12、及び蓋14は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム合金等の金属で構成される。側壁部11及び底部12は、一体的に形成されている。
【0026】
底部12は、側壁部11の軸方向の一方端を封鎖する。底部12は、側壁部11とともに、ケース本体10を構成する。ケース本体10は、高さ方向において、底部12と反対の端部に開口101を有する。ケース本体10は、例えば、アルミニウム合金等の金属板を深絞り加工することによって形成することができる。以下、高さ方向において、開口101が位置する方を上、底部12が位置する方を下と称する場合がある。
【0027】
底部12の縁は、側壁部11と接続されている。底部12は、電池100の幅方向を長手方向とする細長い形状をしている。底部12の長手方向の端部は側壁部11の狭面部112と接続されている。
【0028】
側壁部11は、底部12の長手方向の端部に接続される部分において肉厚部11aを有する。肉厚部11aは、側壁部11の厚みが他の部分より厚くなっている部分である。この例では、肉厚部11aの軸方向における一方端は底部に接し、他方端は、蓋14と底部12との間に位置している。肉厚部11aは、蓋14と底部12の間の中間よりも底部12側に設けられる。
【0029】
また、肉厚部11aの厚みは、側壁部11の軸方向において底部12から離れるにしたがって薄くなっている。すなわち、肉厚部11aの上端(蓋14側の端)から底部12へ向かうにつれて側壁部11の厚みが厚くなっている。肉厚部11aの寸法については、後述する。
【0030】
電極体2は、正極21と、負極22と、セパレータ23とを含む。正極21と負極22の間にセパレータ23が配置される。正極21、負極22及びセパレータ23は、いずれも層状をなす。電極体2が電池ケース1に収容された状態では、正極21、負極22及びセパレータ23の各層の面は、底部12に対して略垂直となる。電極体2は、正極21と底部12との距離が、セパレータ23と底部12との距離より長くなる状態で電池ケース1に収容される。
【0031】
電池ケースに収容された状態において、セパレータ23の高さ方向の寸法は、正極21の高さ方向及び負極22の高さ方向の寸法のいずれもよりも大きい。正極21の高さ方向の寸法は、負極22の高さ方向の寸法より小さい。セパレータ23の高さ方向の両端部は、正極21及び負極22の高さ方向の両端部より外側に突出している。負極22の高さ方向の両端部は、正極21の高さ方向の両端部より外側に突出している。すなわち、負極22が正極21より底部12側へ突出する部分が存在する。
【0032】
そのため、正極21と底部12との距離は、セパレータ23と底部12との距離より長い。負極22と底部12との距離は、正極21と底部12との距離より短く、セパレータ23と底部12との距離より長い。この例では、セパレータ23は、底部12に接触していないが、接触してもよい。
【0033】
図3は、図2の肉厚部11a付近の拡大図である。図3に示すように、肉厚部11aの軸方向における長さbは、底部12と正極21との軸方向における距離aよりも長い。言い換えると、肉厚部11aの上端(蓋14側の端)から底部12までの長さbは、底部12と正極21との高さ方向のマージンaより大きい。
【0034】
また、肉厚部11aの軸方向における長さbは、負極22における正極21より底部12側へ突出している部分の長さh(正負極対向マージン)より長い。この正負極対向マージンは、言い換えると、電極体2の底部12側の端部において、正極21と対向していない負極22の部分の軸方向における長さである。これにより、底部12と狭面部112とでなす角に衝撃が加わった場合、肉厚部11aよりも肉厚部11aより上側(蓋側)の部分が変形しやすくなる。すなわち、肉厚部11aより上側の部分を、電池100が角から落下した場合に、より変形させたいポイントに設定することができる。
【0035】
このように、電池100が角から落下した場合の変形度合いが大きくなる位置を制御することで、電極体2と電池ケース1との干渉を起こり難くすることができる。その結果、例えば、落下時の電池ケース1の変形によって、セパレータ23がめくれて、正極21と負極22が接触する事態を起こり難くすることができる。電池100の落下時における電池ケース1の変形については、後で詳しく説明する。
【0036】
肉厚部の軸方向の長さbは、例えば、0.2mm〜10mmとすることができる。肉厚部11aの厚みの最大値と最小値との差dは、例えば、0.2mm〜2mmとすることができる。図3に示す例では、肉厚部の軸方向の長さbと底部12及び正極21の間の軸方向における距離aとの差cは、0mmより大きくなっている。
【0037】
製造時に歩留まりを確保するために、電極体2と電池ケース1との間にマージンが設けられる。マージンは、例えば、0.2〜2mm程度とすることができる。肉厚部11aの厚みの最大値と最小値との差dは、このマージンと同程度、又はマージンより小さくことができる。この場合、上記の差dをマージンと同程度又はマージンより小さくすることで、変形対策の観点から適切な位置に肉厚部11aの上端を配置することができる。また、上記の差dをマージンより小さくすることで、肉厚部11aと電極体2との干渉を避けることができる。
【0038】
なお、底部12の厚みfを、肉厚部11aにおける最小厚みe(本例では側壁部11の厚み)より厚くしてもよい。これにより、底部12の剛性を高め、底部12を変形しにくくすることができる。
【0039】
図2に示すように、蓋14は、ケース本体10の開口101を封鎖する。蓋14は、取付孔141及び注液孔142を有する。取付孔141及び注液孔142は、それぞれ、蓋14を高さ方向に貫通する。
【0040】
取付孔141には、絶縁部材31及び負極端子32が取り付けられる。絶縁部材31は、負極端子32と蓋14とを絶縁する。絶縁部材31は、例えば、ポリプロピレン等で構成することができる。負極端子32は、例えば、ステンレス鋼等で構成することができる。
【0041】
絶縁部材31は、概略円筒状をなし、取付孔141に挿入されている。負極端子32は、概略柱状をなし、絶縁部材31に挿入される。すなわち、負極端子32と蓋14との間には、絶縁部材31が配置されている。絶縁部材31及び負極端子32の一部は、蓋14から電池ケース1の外に露出する。
【0042】
蓋14の内面には、例えばステンレス鋼等で構成されるリード板33が設けられている。リード板33は、負極端子32と接続されている。リード板33と蓋14との間には、絶縁部材34が配置される。
【0043】
電池ケース1内において、負極端子32と電極体2との間には絶縁板35が配置されている。絶縁板35は、負極端子22と電極体2との間で短絡が生じるのを防止する。
【0044】
注液孔142は、電解液(図示略)を電池ケース1に注入する際に使用される。注液孔142は、封止栓4によって封止されている。
【0045】
電極体2は、正極21、負極22、及びセパレータ23を積層して捲回することで形成される捲回体である。ただし、電極体2の構成は、これに限定されるものではない。
【0046】
正極21には、正極リード24が接続される。正極リード24は、蓋14にも接続される。すなわち、正極21は、正極リード24を介して電池ケース1と電気的に接続されている。したがって、電池ケース1は、電池100の正極端子として機能する。
【0047】
負極22には、負極リード25が接続される。負極リード25は、リード板33にも接続される。上述したように、リード板33は、負極端子32と接続されている。よって、負極22は、負極リード25及びリード板33を介し、負極端子32と電気的に接続されている。
【0048】
特に図示しないが、電極体2のうち、電池ケース1の底部12に近い部分(図2及び図3における下部)には、絶縁テープが貼付されていてもよい。
【0049】
(電池の製造方法)
以下、電池100の製造方法の概略を説明する。ただし、電池100の製造方法は、本実施形態で述べる例に限定されるものではない。
【0050】
まず、電極体2を形成する。図4は、電極体2の形成に際して作製される中間体2iの概略を示す平面図である。中間体2iを作製するため、各々帯状をなす正極21、負極22、及びセパレータ23を準備する。
【0051】
正極21は、正極集電体211と、正極合剤層212とを含む。正極集電体211は、帯状に形成されている。正極集電体211は、例えば、アルミニウムもしくはチタン等の箔、平織金網、エキスパンドメタル、ラス網、又はパンチングメタル等によって形成される。
【0052】
正極合剤層212は、正極集電体211の両面に形成される。正極合剤層212は、正極集電体211の一部を露出させるように正極集電体211上に設けられる。正極合剤層212は、例えば、正極集電体211の長辺方向の一方端部を露出させる。正極集電体211のうち正極合剤層212から露出している部分には、正極リード24が接続される。
【0053】
正極合剤層212は、正極活物質と、導電助剤と、バインダとを混合して形成される。正極活物質として、例えば、マンガン酸リチウム、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、酸化バナジウム、又は酸化モリブデン等を用いることができる。導電助剤として、例えば、黒鉛、カーボンブラック、又はアセチレンブラック等を用いることができる。バインダとして、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0054】
負極22は、負極集電体221と、負極合剤層222とを含む。負極集電体221は、帯状に形成されている。負極集電体221は、例えば、銅、ニッケル、もしくはステンレス等の箔、平織金網、エキスパンドメタル、ラス網、又はパンチングメタル等によって形成される。
【0055】
負極合剤層222は、負極集電体221の両面に形成される。負極合剤層222は、正極集電体211の一部を露出させるように負極集電体221上に設けられる。負極合剤層222は、例えば、負極集電体221の長辺方向の一方端部を露出させる。負極集電体221のうち負極合剤層222から露出している部分には、負極リード25が接続される。
【0056】
負極合剤層222は、負極活物質と、バインダとを混合して形成される。負極活物質として、例えば、天然黒鉛、メソフェーズカーボン、又は非晶質カーボン等を用いることができる。バインダとして、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロース、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム等のゴムバインダ、PTFE、並びにPVDF等を単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0057】
セパレータ23は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、もしくはポリフェニルサルフィド(PPS)等の多孔性フィルム又は不織布によって形成することができる。
【0058】
負極22、セパレータ23、正極21及びセパレータ23をこの順で積層することにより、中間体2iを作製する。なお、図4に示す中間体2iでは、正極21の上のセパレータ23の図示を省略している。セパレータ23は、正極21の両面に配置される。正極21は、2枚のセパレータ23の間に配置される。なお、負極22、正極21及びセパレータ23の積層形態はこれに限られない。例えば、セパレータ23,負極22、セパレータ23及び正極21を、この順で積層することもできる。負極リード25は、中間体2iの長辺方向において、正極リード24が配置される端部と逆の端部又は同じ端部に配置される。
【0059】
作製した中間体2iを捲回して押圧し、扁平状に成形する。これにより、図5に示す渦巻状の電極体2が得られる。電極体2の捲回軸方向の一方面(上面)からは、正極リード24及び負極リード25が突出している。なお、捲回した中間体2iの側面及び/又は底面は、絶縁体のテープで覆われてもよい。
【0060】
ケース本体10は、例えば、アルミニウム合金板を深絞り加工することによって成型することができる。深絞り加工時に、側壁部11に肉厚部11aを形成することができる。
【0061】
電極体2は、図2に示すように、ケース本体10に挿入される。このとき、電極体2は、捲回軸方向の他方面(下面)がケース本体10内の底部12と対向するよう、ケース本体10に挿入される。電極体2は、底部12上に載置される。なお、電極体2と底部12との間に隙間が設けられてもよい。
【0062】
ケース本体10内の電極体2上には、絶縁板35が配置される。電極体2の上面から突出する正極リード24の先端部は、蓋14に接続される。電極体2の上面から突出する負極リード25の先端部は、リード板33に接続される。絶縁部材31、負極端子32、リード板33、及び絶縁部材34は、蓋14に組み付けられている。
【0063】
次に、ケース本体10における開口101の外周縁部に蓋14を接合する。蓋14は、例えば溶接等によってケース本体10に接合することができる。これにより、ケース本体10の開口101が蓋14によって封鎖される。
【0064】
その後、注液孔142から電解液(図示略)を電池ケース1に注入する。電解液は、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた溶液である。有機溶媒として、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、又はγ‐ブチロラクトン等を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。リチウム塩として、例えば、LiPF、LiBF、又はLiN(CFSO等を用いることができる。
【0065】
電解液(図示略)を電池ケース1内に注入した後、封止栓4によって注液孔142を封止する。封止栓4は、例えば溶接等によって、蓋14における注液孔142の外周縁部と接合される。これにより、電池100を得ることができる。
【0066】
(実施形態の効果)
本実施形態に係る電池100によれば、落下時において、電極体2の損傷が発生するのを抑制することができる。以下、具体的に説明する。
【0067】
図6は、電池ケース1の狭面部112と底部12とがなす角部15から電池100が落下した状態を示す。電池100が落下し、電池ケース1の角部15が面Sに衝突した場合、角部15が変形する。より詳細には、電池100が面Sから受ける衝突力Fにより、主として、狭面部112のうち底部12に近い部分(下端部)112aが変形する。
【0068】
上述したように、電池ケース1は、側面視において縦長の概略長方形状をなす。このため、電池100は、電池ケース1の角部15から落下した際、狭面部112の方向よりも底部12の方向に傾きやすい。よって、電池100が衝突する面Sと狭面部112とがなす角度θは45°よりも大きくなりやすい。この場合、底部12に作用する力F1よりも大きな力F2が狭面部112に作用し、下端部112aに比較的大きな変形が生じ得る。
【0069】
しかしながら、本実施形態において、電池ケース1内の電極体2は、下端部112aに肉厚部11aを有し、肉厚部11aの長さbは、正負極対向マージンhより長い(図3参照)。肉厚部11aにより、電池ケース1の角部15の剛性が高められている。また、肉厚部11aの上端は、正極21の底部12側端部より上に配置されやすくなる。電池100の落下により、狭面部112の下端部112aが変形した場合、肉厚部11aより上(蓋14側)の部分の変形度合いが肉厚部11aの変形度合いより大きくなる。そのため、変形した下端部112aと電極体2との干渉が生じにくい。
【0070】
一般に、電池ケース内の電極体が捲回体である場合、電池の落下によって電池ケースの角部15が変形したときに、電極体の捲きずれが生じ得る。例えば、変形した角部によって電極体のセパレータが押し上げられ、電極体において内部短絡が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態では、肉厚部11aにより、電池ケース1の変形部分が制御される。そのため、変形した角部15によって正極21、負極22、及び/又はセパレータ23が押し上げられるという事態が生じにくい。その結果、電極体2の捲きずれの発生が抑制され、電極体2の内部短絡を防止することができる。
【0071】
図7は、側壁部に肉厚部を設けない場合の落下による電池ケースの変形の一例を示す図である。図7に示す例では、底部12と側壁部11との境目すなわち角部付近で変形度合いが最も大きい。そのため、変形した角部によって正極21、負極22、及び/又はセパレータ23が押し上げられる可能性が高い。例えば、深絞り加工により電池ケースを作製した場合、角部の厚みが他と比べて薄くなることがある。このような場合は特に、角部付近の変形度合いが他の部分より大きくなりやすい。
【0072】
図8は、本実施形態の電池100における落下による電池ケースの変形の一例を示す図である。図8に示す例では、肉厚部11aにより角部の剛性が高くなっている。そのため、肉厚部11aの上端付近の方が角部より変形度合いが大きくなる。肉厚部11aの上端は、正極21の端部より上に配置されやすいので、変形した側壁部11によって正極21、負極22、及び/又はセパレータ23が押し上げられる可能性が低い。
【0073】
このように、本実施形態に係る電池100によれば、落下時における電極体2の損傷の発生を抑制することができる。
【0074】
本実施形態では、特に、肉厚部11aにおける側壁部11の厚みは、底部12から軸方向に離れるにしたがって薄くなっている。したがって、肉厚部11aにおける落下による変形度合いは、底部12から離れるにしたがって大きくなる。そのため、落下時には、正極21の底部12に対向する端部よりも上(蓋14側)で、側壁部11の変形が最も大きくなる可能性がより高くなる。結果として、電極体2の捲きずれがより生じにくくなり、電極体2の損傷の発生をより抑制することができる。
【0075】
本実施形態に係る電池100は、落下時において、側壁部11に大きな変形が発生しやすい場合により有効である。すなわち、本実施形態において、側壁部11は、軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも大きい。このため、落下した電池100が衝突する面Sと狭面部112との角度θが45°よりも大きくなりやすく、狭面部112の下端部112aに大きな変形が生じ得る。しかしながら、肉厚部11aによって、変形するポイントが正極21の端部より上になりやすい。したがって、下端部112aに大きな変形が生じ得る場合であっても、電極体2と下端部112aとの干渉を低減することができる。なお、側壁部11の軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい場合であっても、電極体2と下端部112aとの干渉を低減する効果は得られる。
【0076】
[変形例]
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0077】
上記実施形態では、肉厚部11aにおける側壁部11の厚みは、底部12から軸方向に離れるにしたがって薄くなっている。これに対して、肉厚部11aの厚みは均一であっても上記の効果を得ることはできる。図9は、肉厚部11aの変形例を示す図である。図9に示す例では、肉厚部11aの厚みは均一になっている。これにより、肉厚部11aの上端では、側壁部11に段差がある。このように、側壁部11に厚みが不連続になる箇所を設けることでも、落下による変形位置を制御することができる。
【0078】
図10は、肉厚部11aの他の変形例を示す図である。図10に示す例では、肉厚部11aの内面は曲面になっている。肉厚部11aの内面は、狭面部112と底部12とがなす角へ向かって凹む凹状をなす。このように、肉厚部11aの内面にRをつけることで、肉厚部11aにおける側壁部11の厚みを、底部12から離れるにしたがって薄くすることができる。
【0079】
上記実施形態において、電池ケース1の側壁部11は、軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも大きくなるように構成されている。しかしながら、側壁部11は、軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも小さくてもよいし、軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法と実質的に等しくてもよい。
【0080】
この場合、例えば、図11に示すように、底部12の厚みgを、肉厚部11aにおける最小厚みeより大きくすることができる。これにより、側壁部11の肉厚部11a以外の部分の変形度合いの方が、肉厚部11a及び底部12の変形度合いより大きくなりやすくすることができる。その結果、電極体2と下端部112aとの干渉を、より低減することができる。
【0081】
例えば、側壁部11の軸方向に直行する方向の寸法が、軸方向の寸法の1.5倍を越える場合、例えば、底部12の肉厚fを、肉厚部11aの最小厚みeすなわち側壁部11の厚みの1.4倍〜4.0倍とすることができる。これにより、落下による底部12の変形度合いより、側壁部11の肉厚部11a以外の部分の変形度合いの方が大きくなる可能性をより高めることができる。一例として、底部12の肉厚fは、0.5mm〜0.6mmとすることができる。この場合、側壁部11の肉厚部11aにおける最小肉厚eは、0.15mm〜0.35mmとすることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、側壁部11の狭面部112に肉厚部11aが設けられる。狭面部112に加えて、幅広部111にも肉厚部11aを設けることができる。これにより、落下時の衝撃による幅広部111と電極体2との干渉を低減することができる。例えば、側壁部11の軸方向の寸法が軸方向に直交する方向の寸法よりも小さい場合に、落下時に幅方向の力が大きくなりやすい。この場合、幅広部111の肉厚部11aによって、幅広部111と電極体2との干渉をより効果的に低減することができる。
【0083】
図12は、幅広部111の肉厚部11aの構成例を示す断面図である。図12は、幅方向の中央を通り高さ方向に沿う平面で切断された電池100の部分断面図である。図12に示す例では、幅広部11は、底部12に接続される部分において肉厚部11aを有する。肉厚部11aの軸方向における長さは、底部12と正極21との軸方向における距離よりも長い。
【0084】
上記実施形態において、電池ケースは、底部と反対の面に開口を有する電池ケース本体と、当該開口を封鎖する蓋とを有している。しかしながら、電池ケースの構成は、これに限定されるものではない。例えば、電池ケースの側壁部に開口を設け、電極体を電池ケースに収容した後に当該開口を封鎖してもよい。
【符号の説明】
【0085】
100:電池、1:電池ケース、11:側壁部、11a:肉厚部、12:底部、2:電極体、21:正極、22:負極、23:セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12