(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
図1は実施例1の冷蔵庫1の正面図である。
図2は
図1のA−A断面図である。冷蔵庫1の断熱箱体10には,上方から冷蔵室2,左右に併設された製氷室3と上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の順番で貯蔵室を有している。冷蔵庫1は,それぞれの貯蔵室の開口を開閉するドアを備えている。これらのドアは左右に分割された回転式で,冷蔵室2の開口を開閉する冷蔵室ドア2a,2bと,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の開口をそれぞれ開閉する引き出し式の製氷室ドア3a,上段冷凍室ドア4a,下段冷凍室ドア5a,野菜室ドア6aである。以下では,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5は,まとめて冷凍室7と呼ぶ。
【0013】
ドア2aには庫内の温度設定の操作を行う操作部26を設けている。冷蔵庫1とドア2a,2bを固定するためにドアヒンジが冷蔵室2上部及び下部に設けてあり,上部のドアヒンジはドアヒンジカバー16で覆われている。また,庫外温度センサ37,及び庫外湿度センサ38(
図2参照)は,冷蔵庫1の温度の影響を受け難い位置として,例えば,冷蔵庫1のドアヒンジカバー16の内部に設けている。
【0014】
ドア2a,2b,3a,4a,5a,6aの閉状態で,ドア2a,2b,3a,4a,5a,6aが接する断熱箱体10の断熱仕切り壁28,40,29,46の前方端部(すなわち開口縁)には,それぞれ仕切りカバー36a,36b,36c,36dを設けてある。引き出し式のドア3a,4a,5a,6aを開くと,庫外の空気が仕切りカバー36a〜36d(以下,まとめて仕切りカバー36)に接触するため,結露が生じるおそれがある。このため仕切りカバー36の内側には,冷媒が流れる配管(結露抑制器53)を設けて高温冷媒を供給することで,結露発生を抑制できる(
図3参照)。
【0015】
次に,
図2を用いて冷蔵庫1の内部の構成について説明する。冷蔵庫1の外箱10aと内箱10bの間には,発泡断熱材を充填した断熱箱体10を形成し,断熱箱体10の内部には,複数の真空断熱材25を実装している。各貯蔵室は断熱仕切壁28によって,冷蔵室2と上段冷凍室4,及び製氷室3が隔てられ,また,同様に断熱仕切壁29によって下段冷凍室5と野菜室6が隔てられている。ドア2a,2bの庫内側には複数のドアポケット33a,33b,33cと,冷蔵室2には複数の棚34a,34b,34c,34d(総称して棚34)が上下方向に設けてあり,複数の貯蔵スペースに区画されている。断熱仕切壁28の上方には,貯蔵室35(例えば,冷蔵室2の温度帯よりも低めに設定された貯蔵室)を設けている。
【0016】
また,断熱仕切り壁28,40,29には,それぞれ仕切りカバー36a,36b,36cを設けてあり,冷蔵庫1の底面部に設けた断熱仕切り壁46の前方にも,同様に仕切りカバー36dを設けている。
【0017】
上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6には,それぞれの前方に備えたドア4a,5a,6aと一体に移動する収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられており,ドア4a,5a,6aを手前側に引き出すことにより,収納容器4b,5b,6bも引き出せるようになっている。製氷室3にもドア3aと一体に移動する収納容器3bが設けられ,ドア3aを手前側に引き出すことにより,収納容器3bも引き出せる。
【0018】
冷却器14は下段冷凍室5の略背部に備えた冷却器収納室8内に設けてあり,冷却器14の上方に設けたファン9により,冷却器14と熱交換した冷気が冷蔵室冷気ダクト11,冷凍室送風ダクト13,及び製氷室送風ダクト(図示なし)を介して,冷蔵室冷気吐出口11a,11b,11c,及び冷凍室冷気吐出口13a,13b,13cから,冷蔵室2,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各貯蔵室へそれぞれ送られる。各貯蔵室への冷気の送風は,冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ21にそれぞれ備えたバッフルの開閉により制御される。
【0019】
冷却器14の下部にはラジアントヒータ22を設けている。除霜時に発生したドレン水(融解水)は樋23に一旦落下し,ドレン孔27を介して圧縮機24の上部に設けた蒸発皿32に排出される。冷蔵庫1の背面下部に設けた機械室39内には,圧縮機24の他に第一の放熱器50と放熱用ファン54が配置されている。冷蔵庫1の上壁上部後方にはメモリー,インターフェース回路を搭載した制御基板31が配置されており,制御基板31のROMに記憶された制御手段に従って冷凍サイクル,及び送風系の制御が実施される。なお,制御基板31は基板カバー30で覆われている。
【0020】
冷蔵室2を冷却する冷蔵室冷却運転の場合には,冷蔵室ダンパ20を開,冷凍室ダンパ21を閉にし,冷蔵室冷気ダクト11に設けた吐出口11a,11b,11cから冷蔵室2に冷気が送られる。冷蔵室2を冷却した後の冷気は,冷蔵室2下部に設けた冷気戻り口(図示なし)に流入し,その後,冷却器14に戻される。
【0021】
冷凍室7を冷却する冷凍室冷却運転の場合には,冷蔵室ダンパ20を閉,冷凍室ダンパ21を開にし,冷凍室冷気ダクト13のそれぞれに設けた複数の吐出口13a,13b,13cから冷気が吐出されて,上段冷凍室4,下段冷凍室5,及び製氷室3を冷却した後,冷却室冷気戻り部17から冷却器14に戻される。冷蔵室2,及び冷凍室7の温度は,庫内に設けた冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42で検知され,庫内の温度に応じて冷蔵室2と冷凍室7を同時に冷却する運転もあり,その場合には冷蔵室ダンパ20と冷凍室ダンパ21をいずれも開にして各貯蔵室に冷気を送風する。
【0022】
野菜室6の冷却手段については種々の方法があるが,例えば,冷蔵室2を冷却した後に野菜室6に冷気を送る方法や,野菜室6専用の風量調整装置(図示なし)を用いて,冷却器14で熱交換して発生した冷気を直接野菜室6に送る方法がある。本実施例においては,野菜室6への冷気の供給方法についてはいずれの場合でも良い。
図2では,野菜室6に流入した冷気は,断熱仕切壁29の下部前方に設けた野菜室側の冷気戻り部18aから野菜室冷気戻りダクト18を介して,野菜室冷気戻り部18bから冷却器14下部に流入する。
【0023】
図3は冷蔵庫1に設けた放熱器の配置を示す図である。放熱器としては,例えば断熱箱体10の表面近傍に配した冷媒が流れる配管を採用できる。第一の放熱器50(
図5参照)は,冷蔵庫1の背面側下部に設けた機械室39内に設置してあり,例えば,フィンチューブ式の熱交換器とファン(いずれも図示なし)から構成されている。第二の放熱器51と第三の放熱器52は冷蔵庫1の側面断熱壁内に埋設している。第二の放熱器51,第三の放熱器52は,冷蔵庫1の側面に代えて天面や背面に沿って配置してもよい。
【0024】
結露抑制器53は冷媒からの放熱によって仕切りカバー36a〜36dを加熱している。結露抑制器53の端部は,冷媒が流れる配管が仕切りカバー36から離間する部分と考えてもよい。
図3では,冷媒は機械室39側から野菜室6下方の断熱仕切り壁46(仕切りカバー36d)に向かって流れ,冷凍室7の断熱仕切り壁29,40,28(仕切りカバー36c,36b,36a)の順に流れた後に,冷凍室7及び野菜室6側方を経てから機械室39側へ向かって流れる場合を例示している。結露抑制器53は,冷凍室ドア3a,4a,5aに接する部分を含んで設けているが,野菜室のドア6aや観音式の冷蔵室のドア2a,2bに接する部分を含んで設けても良い。なお,冷蔵庫1の冷蔵室や冷凍室の室数は特に限定されない。また,各貯蔵室のドアタイプは引き出し式と観音式の何れでも良い。
【0025】
図4は断熱仕切り壁29,40の断面模式図である。ドア3a,4a,5aが接する又は近傍に位置する仕切りカバー36b,36cと略接触するように,結露抑制器53のパイプを設けている。結露抑制器53に冷媒を流すと,熱44により仕切りカバー36b,36cを加熱して結露を抑制できる。しかし,結露抑制器53は冷凍室7を加熱する熱45も発生させるため,庫内の熱負荷増加によって省エネルギー性能が悪化する。このため,結露が抑制可能な温度範囲で,結露抑制器53を流れる冷媒の流し方を調整し,結露抑制器53の温度を低くすることが好ましい。
断熱仕切り壁29,40と同様に,ドア3a,4a,6aが接する又は近傍に位置する断熱仕切り壁28,46の仕切りカバー36a,36dにも,結露抑制器53を配設している。第二の放熱器51,第三の放熱器52を配設する冷蔵庫1の側方や背方は,周囲に暖房器具等が設置され得るが,結露抑制器53は断熱箱体10の開口側に埋設してあるため,冷蔵庫1の周囲の急な温度変化の影響を受け難い。放熱器50〜52,及び結露抑制器53の中で最下流に結露抑制器53を配することで,第一のキャピラリチューブ67,第二のキャピラリチューブ73(
図5参照)に流入させる冷媒の温度を効果的に低下させておくことができ,省エネルギー性能が高い冷却運転が可能となる。
図5は本発明の実施例1に係る冷凍サイクル構成の概略図である。冷蔵庫1は,冷凍サイクルによる冷媒の循環を利用して冷気を生成している。冷媒を圧縮する圧縮機24の吐出側のパイプ55には,第一の放熱器50を接続している。第一の放熱器50は,例えば,フィンチューブ式の熱交換器と機械室ファン54から構成されている。第一の放熱器50,第二の放熱器51及び第三の放熱器52がそれぞれ順番に接続されており,第三の放熱器52の出口側に接続したパイプ56は三方弁48の入口側aと接続してある。三方弁48の内部には,パイプ57(b側)とパイプ92(c側)のいずれかと接続できるように弁体(図示なし)を有しており,例えばステッピングモータ(図示なし)などで弁体を回転させることで,パイプ57(b側),またはバイパスパイプ92(c側)を選択して流路を切り替えることができる。
【0026】
図5に例示した状態は,三方弁48の内部の弁体を切り替えてパイプ57(b側)に接続した場合である。パイプ57を通過した冷媒は,結露抑制器53に流入して仕切りカバー36が加熱される冷却運転である。結露抑制器53を通過した後,パイプ91に流出した冷媒は,第一のドライヤ100,第一のキャピラリチューブ67,パイプ68を経て冷却器14に流れる。冷却器14の出口側には,第一のキャピラリチューブ67の近傍に配されることで,第一のキャピラリチューブ67を流れる冷媒と熱交換可能な熱交換部69を有するパイプ70が接続されている。冷却器14を通過した冷媒は,パイプ70を経て圧縮機24の吸込側に流れる。第一のキャピラリチューブ67は冷媒を減圧させるものである。結露抑制器53は放熱器50〜52,及び結露抑制器53の中で最下流側に設けてあり,これらの中では第一のキャピラリチューブ67に最も近い位置に設けられている。
【0027】
一方,三方弁48の内部の弁体を切り替えてバイパスパイプ92(c側)に接続した場合は,結露抑制器53に冷媒が流れないので仕切りカバー36を加熱しない冷却運転,すなわちバイパス運転である。バイパスパイプ92に流入した冷媒は,第二のドライヤ101,第二のキャピラリチューブ73,パイプ68を経て冷却器14に流れる。第一のキャピラリチューブ67と第二のキャピラリチューブ73がパイプ68で合流した後は,共通の冷媒配管で構成されている。
図5に示した実施例1の冷凍サイクルでは,第二のドライヤ101は第一のドアイヤ100よりも吸湿能力を小さくしているのが特徴で,例えば,第二のドライヤ101の体積は,第一のドライヤ100よりも小さい。
【0028】
図6は本発明の実施例1に係る機械室の一例である。冷蔵庫1の背面側下部に設けた機械室39の外観である。機械室39は機械室カバー(図示なし)で覆われている。機械室ベース47には機械室ファン54の上流側に設けた第一の放熱器50と,下流側に設けた圧縮機24を備えている。圧縮機24の上部には蒸発皿32を設けてある。結露抑制器53とバイパスパイプ92を切り替える三方弁48を,取り付け具49を用いて機械室39内に実装している。パイプ56から三方弁48の入口側aに冷媒が流入し,三方弁48の出口側bに接続してあるパイプ57から結露抑制器53に流れ,その後,再び機械室39内に配設されたパイプ91を経由して第一のドライヤ101に流れるようになっている。また,三方弁48の出口側cに接続しているバイパスパイプ92の他端は,結露抑制器53を経由しないので第二のドライヤ101に直接接続されている。ここで機械室39の上部には,第一のドライヤ100,第二のドライヤ101を冷蔵庫1に固定具(図示なし)によって固定されている。
【0029】
図7は第一のドライヤ100の外観,
図8は
図7に示した第一のドライヤ100のB-B断面図である。第一のドライヤ100の入口側には開口部102と開口部103を備え,開口部102はパイプ91と接続し,出口側の開口部107は第一のキャピラリチューブ67と接続されている。冷凍サイクルの真空引きを行う場合,第一のドライヤ100の入口側開口部103と接続したパイプ109と,圧縮機24に設けたパイプ108を真空装置に接続して真空引きを行う。真空引き終了後,それらは封止されて外気とは遮断される。第一のドライヤ100の入口側には,真空引き用に開口部103を別に設けているが,第二のドライヤ101には必ずしも設けなくて良い。
【0030】
第一のドライヤ100の内部にはメッシュ104,105を設けてあり,メッシュ104と105で形成される領域106に水分等を吸湿する吸湿剤を充填している。開口部102から第一のドライヤ100に流入した冷媒は,冷媒中に混入している不純物(主に水分)が,粒状の吸湿剤(モレキュラーシーブス)の表面から吸着されて,第一のドライヤ100の下流側に接続してある第一のキャピラリチューブ67に流入しないようにしてある。一般に,冷蔵庫で使われるキャピラリチューブの内径はφ1.0mm以下で,減圧中に冷媒温度が氷点下以下になるので冷媒中に水分が混入すると凍結し,キャピラリチューブ内で閉塞する恐れがあるため,キャピラリチューブに冷媒が流入する前に,ドライヤで水分等を取り除いている。
【0031】
次に
図5に示した本発明に係る実施例1における,結露抑制器53の制御について説明する。
【0032】
図9は仕切りカバー36の経時変化の一例である。結露抑制器53に冷媒を流して仕切りカバー36を加熱する状態を加熱運転と呼ぶ。結露抑制器53をバイパスさせる状態を非加熱運転と呼ぶ。本実施例では,予め決められた加熱運転と非加熱運転の時間に応じて状態を繰り返し切り替える制御を行う。これにより,仕切りカバー36の表面平均温度111は,常時加熱運転の表面平均温度110よりも低くできる。このため,仕切りカバー36(または,結露抑制器53)から,庫内への熱侵入をより抑えられる。更に,三方弁48の出口側のbとcを封止することができるので,圧縮機24が停止している時に,第一の放熱器50,第二の放熱器51,第三の放熱器52の高温高圧冷媒が冷却器14に流入しない。従って,圧縮機停止中の冷媒を介した庫内熱負荷の増加を抑制でき,省エネルギー性能を向上できる。ここで結露抑制器53と第一のドライヤ100の途中に二方弁(図示なし)を設けて,結露抑制器53内の高温高圧冷媒の流入も抑えると,更に省エネルギー性能が向上する。
【0033】
図10は結露抑制器53の加熱制御のイメージ図である。横軸は相対湿度,縦軸は結露抑制器53による加熱割合である。例えば,相対湿度が高いRH2の場合,仕切りカバー36の表面で結露する可能性が高くなるので,結露抑制器53側に冷媒を流す時間(tA2)の割合を長く,結露抑制器53のバイパス側,すなわちバイパスパイプ92に冷媒を流す時間(tB2)の割合を短くする。反対に湿度が低いRH1の場合,仕切りカバー36の表面で結露する可能性が低くなるので,結露抑制器53側に冷媒を流す時間の割合(tA1)を短く,結露抑制器53のバイパスパイプ92に冷媒を流す時間の割合(tB1)を長くすると良い。
【0034】
加熱運転と非加熱運転の制御は,冷蔵庫1に設けた庫外温度センサ37,庫外湿度センサ38で得られた冷蔵庫周囲の温度と湿度によって制御できる。仕切りカバー36に温湿度センサを取り付け,その検出温湿度に応じて仕切りカバー36に結露が生じないように,三方弁43によって切り替え制御を行えば良い。設置スペースの問題や,仕切りカバー36と接触するドアパッキンとの干渉による熱侵入量の増加が懸念される場合は,庫外温度センサ37,庫外湿度センサ38を冷蔵庫1の天井面に設けても良い。
【0035】
図5,
図6に示したように,第二のドライヤ101は第一のドアイヤ100よりも吸湿能力を小さくしているのが特徴で,例えば,第二のドライヤ101の体積は第一のドライヤ100よりも小さく,機械室39に実装し易いようにしている。同じ吸湿能力のドライヤを2個使用するよりも,コスト低減を図ることができる。第二のドライヤ101の体積を小さくし,吸湿能力を小さくできる理由について以下に説明する。
【0036】
図11は冷蔵庫運転開始時の制御例である。例えば,冷凍室センサ42で検知される冷凍室温度が,外気とほぼ同じT0から冷却運転を開始し,所定の温度T1に到達するまでの運転制御について説明する。すなわち,冷蔵庫購入後の初めての運転や,冷蔵庫を長時間停止させた後の運転で,庫内の温度が高い場合を想定している。庫内温度が高いので圧縮機は高速回転で運転し,放熱性能を高めるために結露抑制器53に冷媒を流し,結露抑制器53側に接続されている第一のキャピラリチューブ67とその上流側に設けた第一のドライヤ100に冷媒が流れるように三方弁48を制御している。
【0037】
冷蔵室ダンパ20,冷凍室ダンパ21はいずれも開状態にして,冷蔵室2,冷凍室7を同時に冷却している。従って,複数に分割して設けた放熱器,すなわち,第一の放熱器50,第二の放熱器51,第三の放熱器52,及び結露抑制器53を順番に接続するように三方弁48を制御し,第一のキャピラリチューブ67の上流側に設けた第一のドライヤ100に冷媒が流れるので,冷蔵庫運転開始時に冷凍サイクル中に混入している不純物(水分等)を,第一のドライヤ100によって除去することができる。バイパスパイプ92は,機械室39内に設けた三方弁48のc側と第二のドライヤ101と接続するパイプの距離が短いので,冷媒に含まれる不純物(主に水分)は結露抑制器53に比べて少ない。従って,冷凍サイクル中に混入した不純物は,主に冷蔵庫運転開始時に設定した冷媒流路において取り除かれるので,第二のドライヤ101は第一のドライヤ100よりも吸湿性能が低くても良い。すなわち,
図6に示すように第二のドライヤ101の体積を,第一のドライヤ100よりも小さくすることができるので,機械室39に実装し易くなり,またコスト低減が可能である。
【0038】
また,庫内の熱負荷が大きい冷蔵庫運転開始時に,第一のドライヤ100に接続する第一のキャピラリチューブ67に冷媒を流すので,第二のキャピラリチューブ73よりも第一のキャピラリチューブ67の流路抵抗を小さくすると冷却能力が更に高められ,同時に冷凍サイクル中の水分を第一のドライヤ100で確実に取り除くことができる。
【0039】
以上のように,第二のドライヤ101の体積は第一のドライヤ100よりも小さくし,吸湿能力を低くすることができる。例えば,第二のドライヤ101の全長を短くして,ドライヤ内部の吸湿剤の充填量を減らしている。従って,第二のドライヤ101の体積は第一のドライヤ100よりも小さくできるので,機械室39に実装し易くなり,また,同じ吸湿能力のドライヤを2個使用するよりも,コスト低減を図ることができる。
【0040】
また,
図11では,冷凍室センサ42で検知された温度がT0からT1に変化するまでの制御について示しているが,第一のキャピラリチューブ67と第一のドライヤ100で構成される冷媒流路で実施される冷却運転は,冷蔵室センサ41で検知される冷蔵室温度や,予め決められた時間で制御しても良い。
<実施例2>
図12は本発明の実施例2に係る冷凍サイクル構成の概略図である。
図5に示した実施例1の冷凍サイクルに対して,第一のキャピラリチューブ67の上流側だけに第一のドライヤ100を設けたことを特徴としている。また,
図11で説明したように,外気とほぼ同じT0から冷却運転を開始し,所定の温度T1に到達するまでの運転を,第一の放熱器50,第二の放熱器51,第三の放熱器52,及び結露抑制器53を順番に接続するように三方弁48を制御し,第一のキャピラリチューブ67の上流側に設けた第一のドライヤ100に冷媒が流れるように制御すれば,冷蔵庫運転開始時に冷凍サイクル中に混入している不純物(主に水分)を,第一のドライヤ100によって除去することができるので,第二のキャピラリチューブ73の上流側にドライヤを設けなくても良い。
【0041】
従って,第一のキャピラリチューブ67と第二のキャピラリチューブ73で構成される冷凍サイクルにおいて,2本分のドライヤ設置スペースを設ける必要がなくなるので,機械室39に実装し易くなり,コスト低減を図ることができる。
【0042】
<実施例3>
図13は本発明の実施例3に係る冷凍サイクル構成の概略図である。本実施例の冷凍サイクルは,減圧部の第一のキャピラリチューブ67と第二のキャピラリチューブ73の切り替えと,結露抑制器53に冷媒を流す場合と結露抑制器53に冷媒を流さずにバイパスさせる制御を,流路切替え弁47で選択することが可能で,省エネルギー性能を更に高めた運転が行える。
【0043】
庫内の熱負荷が小さい場合,例えばドア2〜6の開閉が少ない場合は,圧縮機24を低速運転し,それに応じて流路抵抗が大きい第二のキャピラリチューブ73(キャピラリチューブ内径が小さい,またはキャピラリチューブが長い)を選択すると,省エネルギー性能が向上する。一方,庫内の熱負荷が大きい場合,例えば冷蔵庫1に保存する食品を一度にたくさん入れた場合は,圧縮機24を高速運転し,流路抵抗が小さい第一のキャピラリチューブ67(キャピラリチューブ内径が小さい,またはキャピラリチューブが短い)を選択して,高い冷却性能を発揮させるとよい。
【0044】
第三の放熱器52に接続したパイプ56の他端は,流路切替え弁47の入口側の開口82に接続している。流路切替え弁47の内部には,弁座90と弁体89を備えている。弁座90にはパイプ56,57,58,91,92と対応して接続している開口82,83,85,84,86をそれぞれ設けてある。流路切替え弁47は,パイプ56,57,58,91,92を接続する5つの開口82〜86を有する五方弁である。
【0045】
第二のドライヤ101の体積は第一のドライヤ100よりも小さくしているので,機械室39に実装し易くなり,コスト低減を図ることができる。更に庫内の熱負荷に応じて,第一のキャピラリチューブ73と第二のキャピラリチューブ67を切替えて運転できるので,省エネルギー性能が高くなる。
【0046】
図14は冷凍サイクルの各切換状態を示す構成図である。
図14−1の(a),(b),(c)はそれぞれ,流路抵抗が小さい第一のキャピラリチューブ67を選択した上で,結露抑制器53に流す第一状態,結露抑制器53をバイパスさせる第二状態,結露抑制器53に冷媒を流す第三状態である。第一状態と第三状態では,結露抑制器53に流す冷媒の向きが互いに反対である。これらをまとめて弱状態と呼ぶ。
【0047】
図14−2の(d)は流路切替え弁47が閉状態である。例えば,圧縮機24が停止中に,パイプ91,92が封止されるように弁体89を回転させると,第一の放熱器50,第二の放熱器51,第三の放熱器52,及び結露抑制器53からの高温高圧冷媒が冷却器14に流入しないので,庫内の熱負荷増加が抑制されて省エネルギー性能が高まる。
【0048】
図14−3の(e),(f),(g)はそれぞれ,流路抵抗が大きい第二のキャピラリチューブ73を選択した上で,結露抑制器53に流す第一状態,結露抑制器53をバイパスさせる第二状態,結露抑制器53に冷媒を流す第三状態である。第一状態と第三状態では,結露抑制器53に流す冷媒の向きが互いに反対である。これらをまとめて強状態と呼ぶ。
【0049】
流路切替え弁47の弁体89は,ステッピングモータ(図示なし)によって回転させることが可能で,
図14 の(a)〜(g)に示した順番に弁体89の位置が変わる。弁体89の位置決めをするために,弁体つき当て部(図示なし)を設けてあり,つき当て部の片方は
図14−1の (a),もう片方は
図14−3の(g)の弁体位置の近くに設けてある。すなわち,例えば,正転方向を
図14の(a)から(g),逆転方向を
図14の(g)から(a)とすると,弁体89が正転方向,または逆転方向に回転しても,1回転以上しないようになっている。
【0050】
図14−1の(a)弱/第一状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口83を通過して流路切替え弁47からパイプ57に流出する。パイプ57に接続した結露抑制器53に冷媒が流れた後,結露抑制器53の他端に接続したパイプ58を通過し,パイプ58の他端に接続している開口85から再び流路切替え弁47の内部に冷媒が流入する。流路切替え弁47の内部に流入した冷媒は,溝87よって開口85と開口86が連通されることになり,開口86に接続されたパイプ92から流出する。パイプ92の他端には第一のドライヤ100が接続されており,前記第一のドライヤ100の他端には,第一のキャピラリチューブ67,パイプ68,冷却器14を順に接続してある。
【0051】
図14−1の(b)弱/第二状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口86を通過して流路切替え弁47からパイプ92に流出するので,結露抑制器53をバイパスさせることができる。
【0052】
図14−1の(c)弱/第二状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口85を通過して流路切替え弁47からパイプ58に流出する。パイプ58に接続した結露抑制器53に冷媒が流れた後,結露抑制器53の他端に接続したパイプ57を通過し,パイプ57の他端に接続している開口83から再び流路切替え弁47の内部に冷媒が流入する。流路切替え弁47の内部に流入した冷媒は,溝88よって開口83と開口86が連通されることになり,開口86に接続されたパイプ92から流出する。パイプ92の他端には第一のドライヤ100が接続されており,前記第一のドライヤ100の他端には,第一のキャピラリチューブ67,パイプ68,冷却器14を順に接続してある。
【0053】
図14−3の(e)強/第一状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口85を通過して流路切替え弁47からパイプ58に流出する。パイプ58に接続した結露抑制器53に冷媒が流れた後,結露抑制器53の他端に接続したパイプ57を通過し,パイプ57の他端に接続している開口83から再び流路切替え弁47の内部に冷媒が流入する。流路切替え弁47の内部に流入した冷媒は,溝88よって開口83と開口84が連通されることになり,開口84に接続されたパイプ91から流出する。パイプ91の他端には第二のドライヤ101を接続し,前記第二のドライヤ101の他端には,第二のキャピラリチューブ101,パイプ68,冷却器14を順に接続されている。
【0054】
図14−3の(f)強/第二状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口84を通過して流路切替え弁47からパイプ91に流出するので,結露抑制器53をバイパスさせることができる。
【0055】
図14−3の(g)強/第三状態では,パイプ56を通過した冷媒は開口82から流路切替え弁47の内部に流入し,開口83を通過して流路切替え弁47からパイプ57に流出する。パイプ57に接続した結露抑制器53に冷媒が流れた後,結露抑制器53の他端に接続したパイプ58を通過し,パイプ58の他端に接続している開口85から再び流路切替え弁47の内部に冷媒が流入する。流路切替え弁47の内部に流入した冷媒は,溝87よって開口85と開口84が連通されることになり,開口84に接続されたパイプ91から流出する。パイプ91の他端には第二のドライヤ101を接続し,前記第二のドライヤ101の他端には,第二のキャピラリチューブ101,パイプ68,冷却器14を順に接続されている。
【0056】
庫内の熱負荷が大きい場合でも,流路抵抗が小さい第一のキャピラリチューブ67に冷媒を流す
図14−1の(a)〜(c)によって,冷却性能を高くした運転が可能となる。一方,庫内の熱負荷が小さい場合には,流路抵抗が大きい第二のキャピラリチューブ73に冷媒を流す
図14−3の(e)〜(g)によって,省エネルギー性能を向上した運転が可能となる。
【0057】
例えば,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42に連動する圧縮機回転数によって第一のキャピラリチューブ67と,第二のキャピラリチューブ73の切り替えを行う。また,弱状態,及び強状態において,結露抑制器53の加熱制御(
図10)は,実施例1で説明した場合と同様にできる。
図14−1の(a)と(c),及び
図14−3の(e)と(g)は,いずれも結露抑制器53に冷媒を流す場合であり,結露抑制器53を構成する放熱パイプに反対向きに冷媒を流すこともできる。例えば,
図14−1の(a)に示した弱/第一状態を,
図3で説明したように,機械室39側から野菜室6下方の断熱仕切り壁46(仕切りカバー36d)に向かって流れ,冷凍室7の断熱仕切り壁29,40,28(仕切りカバー36c,36b,36a)の順に流れた後に,冷凍室7及び野菜室6側方から機械室39側へ向かって流れる場合とすると,
図14−1の(c)の弱/第三状態における結露抑制器53の冷媒の流れはこれの逆向きとなる。結露抑制器53内を流れる冷媒は,気液二相域から液相域に状態が変化し,結露抑制器53の下流側は液相域になるので冷媒温度が低下し,仕切りカバー36を加熱し難くなる。そこで冷媒の流れる向きを反対にすることで,結露抑制器53の下流側で温度低下した部分に温度が高い気液二相域の冷媒が流れるので,下流側の仕切りカバー36の温度を上げることができ,加熱不足を補うことができる。
【0058】
冷蔵庫購入後の初めての運転や,冷蔵庫を長時間停止させた後の運転では,庫内温度が高いので圧縮機を高速回転で運転し,放熱性能を高めるために結露抑制器53に冷媒を流し,結露抑制器53側に接続されている第一のキャピラリチューブ67とその上流側に設けた第一のドライヤ100に冷媒が流れるように制御している。従って,冷蔵庫運転開始時に設定した冷媒流路中に混入している不純物(主に水分)を,第一のドライヤ100によって除去することができるので,第二のドライヤ101の体積を第一のドライヤ100よりも小さくして,第二のドライヤ101の吸湿能力を低くすることが可能となる。流路切替え弁47の位置決め(イニシャライズ)を実施すると,弁体89の少なくとも一方のつき当て位置付近で,結露抑制器53に冷媒を流し,第一のドライヤ100と第一のキャピラリチューブ67を流す弱/第一状態(
図14−1の(a))になるようにしている。
【0059】
また,庫内の熱負荷が大きい冷蔵庫運転開始時に,第一のドライヤ100に接続する第一のキャピラリチューブ67に冷媒を流すので,第二のキャピラリチューブ73よりも第一のキャピラリチューブ67の流路抵抗を小さくすると冷却能力が更に高められ,同時に冷凍サイクル中の水分を第一のドライヤ100で確実に取り除くことができる。
【0060】
以上より,庫内の熱負荷が大きい場合の3通りの運転と,庫内の熱負荷が小さい場合の3通りの運転によって,更に効率よく冷却運転が実施できる。第二のドライヤ101の体積を第一のドライヤ100よりも小さくすることで機械室39に実装し易くなり,コスト低減もできる。