特許第6506711号(P6506711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506711
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】ピモベンダンの改善された医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/501 20060101AFI20190415BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20190415BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190415BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190415BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20190415BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20190415BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20190415BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20190415BHJP
   A61K 31/585 20060101ALI20190415BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20190415BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   A61K31/501
   A61K47/14
   A61K45/00
   A61P43/00 111
   A61P9/04
   A61P9/08
   A61P9/12
   A61K31/55
   A61K31/585
   A61K31/341
   A61K9/20
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-54145(P2016-54145)
(22)【出願日】2016年3月17日
(62)【分割の表示】特願2015-554220(P2015-554220)の分割
【原出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-108346(P2016-108346A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】P1300702
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ラクツァイ ペーテル
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−526738(JP,A)
【文献】 特開平04−210919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0115301(US,A1)
【文献】 特開2011−157390(JP,A)
【文献】 特表2008−504308(JP,A)
【文献】 特表2012−533595(JP,A)
【文献】 特表2013−503113(JP,A)
【文献】 特開2013−006798(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/170317(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/501
A61K 47/14
A61K 45/00
A61P 43/00 111
A61P 9/04
A61P 9/08
A61P 9/12
A61K 31/55
A61K 31/585
A61K 31/341
A61P 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体マトリックスによりコーティングされている粒子形態のピモベンダンを含む組成物であって、担体マトリックスがポリグリコール化グリセリドからなる、組成物。
【請求項2】
担体マトリックスによるコーティングが、pH条件に関わらず、ピモベンダンの迅速かつ実質的な量の溶出を確実にするよう働く、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ステアロイルマクロゴール−32グリセリドが、組成物の担体マトリックス成分の10質量%〜75質量%を占める量で存在している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
担体マトリックスによりコーティングされている粒子形態のピモベンダンのメジアン粒径分布値(D50値)が、500μm未満である、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
コーティング粒子中のピモベンダン含有量が、1質量%〜80質量%の範囲である、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(a)溶融担体マトリックス中に粒子状ピモベンダンを分散させるステップと、
(b)ステップ(a)において得られた分散液を霧化するステップと、
(c)コーティング粒子を冷却して収集するステップと
を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
【請求項7】
(a)高せん断ミキサーを使用することにより、ピモベンダン粒子を、溶融担体マトリックス中に分散させて、分散液を得るステップと、
(b)ロータリーアトマイザー、加圧式ノズルもしくは空気圧縮式ノズルおよび/またはソニックノズルを使用することにより、1〜10barの霧化ガス圧を使用して、ステップ(a)において得られた分散液を霧化するステップと、
(c)冷却空気または不活性ガスの気流を噴霧装置に適用して、コーティング粒子を冷却および収集するステップと
を含む、請求項に記載の組成物の調製方法。
【請求項8】
温血動物への経口投与用医薬組成物であって、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物の獣医学的有効量と、1種または複数の生理学的に許容される賦形剤とを含み、さらに任意にアンジオテンシン酵素(ACE)阻害薬、アルドステロン拮抗薬および/またはループ利尿薬から選択される、1または複数のさらなる活性成分の獣医学的有効量を含んでもよい医薬組成物。
【請求項9】
アンジオテンシン酵素(ACE)阻害薬、アルドステロン拮抗薬および/またはループ利尿薬からなる群から選択される、任意選択の1つまたは複数のさらなる活性成分が、互いに独立して、遊離形態または生理学的に許容される塩の形態のベナゼプリル、スピロノラクトン、フロセミドおよび/またはそれらの誘導体である請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
錠剤の形態の、請求項またはに記載の医薬組成物。
【請求項11】
ピモベンダンを、全医薬組成物の質量に対して0.01質量%〜10質量%の範囲で含む、請求項から1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
任意選択の1または複数のさらなる活性成分が、それぞれ、全医薬組成物の質量に対して0.01質量%〜50質量%の範囲で組成物中に存在している、請求項から11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野、特に獣医学的医薬の分野に関する。本発明は、弁閉鎖不全症または拡張型心筋症に由来するうっ血性心不全の処置に使用するホスホジエステラーゼ阻害薬であるピモベンダンの経口用製剤の改善、および該製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピモベンダン(4,5−ジヒドロ−6−(2−(4−メトキシフェニル)−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−5−メチル−3(2H))−ピリダジノン)は、強心活性、降圧活性および抗血栓活性を有する物質として、欧州特許第0008391号において記載されている、ベンゾイミダゾール−ピリダゾン誘導体である。
欧州特許第0439030号は、高いpH依存性を依然として特徴とする、水性環境におけるピモベンダンの低い溶解度を開示している。使用される緩衝液系に応じて、pH1〜3の間において約100〜300mg/リットルが水に溶解するが、pH5では、わずか約1mg/リットルしか溶解しない。この現象により、ヒトでは、血中濃度が大きく変動し、多くの場合レベルが低すぎる結果となった。こうした不十分な吸収特性は、ピモベンダンの水性媒体への溶解度の高いpH依存性、および試験対象の胃腸管における変動するpH条件により説明された。この特許によれば、ピモベンダンの低溶解度および溶解度の高いpH依存性は、粉末ピモベンダンと粉末クエン酸との均質な乾燥混合物を使用することによって克服することができ、この場合、前記混合物は、クエン酸約5質量部以上あたりピモベンダンを最大約1質量部、および薬学的に活性な担体であり、経口投与向けに、カプセル剤に充填されるかまたは圧縮して錠剤にされる。大きく変動する血中濃度は、ピモベンダン粒子の周囲に形成される酸のマイクロスフィアによって防止され、これは、クエン酸の溶解速度により引き起こされると言われている。前記マイクロスフィアは、常に酸性であり、信頼性高く、事実上、pH依存性のピモベンダンの溶出および吸収を確実にしている。
【0003】
国際公開第2005/084647号は、クエン酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸またはその無水物、および香味物質からなる群から選択される、多価酸中に均一に分散しているピモベンダンを含む、新規固形製剤に関する。前記刊行物によれば、クエン酸および酸性味覚品の量が多いのは、ほとんどの動物によって容易に許容されるものではない。したがって、こうした製剤は、動物に強制的に食べさせるか、または施用前に食物と混合しなければならない。国際公開第2005/084647号によれば、これらの難題は、この新規製剤を、好ましくは錠剤の形態で使用することにより克服することができる。最も好ましいのは、錠剤が1.25mg、2.5mg、5mgまたは10mgのピモベンダンを含んでおり、かつ好ましくは固形製剤の50mg/gの量のクエン酸、人工ビーフフレーバー、および薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする錠剤である。
国際公開第2010/055119号は、ピモベンダンおよび有機カルボン酸を含む、新規製剤であって、有機カルボン酸がコハク酸だけであり、コハク酸とピモベンダンとの質量比が、少なくとも11:1である、新規製剤を開示している。
国際公開第2010/010257号は、粉末の食欲増進物質、結合剤、および溶媒を含む、フィルムコーティング法によって、ピモベンダンから作製される固形の獣医学的医薬組成物に適用するための、コーティング組成物の使用に関する。
欧州特許第2338493号は、ピモベンダンの新規結晶形態を提供しており、この結晶形態は、十分な再吸収を確実にするために有機酸またはその無水物の添加を必要としないような溶解性を有している。
その生物製剤学的特性に関しては、ピモベンダンは、生物薬剤学分類システム(BSC)においてクラスIVに分類され得る。このことは、ピモベンダンが、低溶解度および低透過性などの難題となる分子特性を示すことを意味しており、これらの特性のどちらも、吸収の律速段階と見なされる。しかし、ピモベンダンの不満足な吸収特性は、水性媒体へのその溶解度の高いpH依存性により、および処置される標的動物の胃腸管の、変動するpH条件により主に説明することができる。胃液のpHでさえも、食物の存在に依存して、比較的幅広い範囲、主に1〜5の間で変動し得ることが知られている。イヌにおける空腹の胃のpHは、0.9〜2.5の間で変動することが見いだされている一方、最初の食事の後の時間では、2〜3のpH単位の上昇を示すことがある。さらに、腸液も3〜7.5の範囲の、変動するpH条件を特徴とする。
【0004】
技術の現状によれば、溶解度の高いpH依存性による、ピモベンダンの不満足な吸収は、製剤中に多量の有機酸を同時に投与することにより、または該物質の異なる結晶形態(多形)を使用することにより防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の基礎をなす目的は、従来技術の課題を克服する、改善されたピモベンダン製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本発明者は、有機カルボン酸を使用することなく、または脂質埋込み(脂質コーティング)手法を適用することによる物質の結晶形態を改変することなく、胃腸管においてかなりのpH変動がある場合でさえも、ピモベンダンの溶解度の高いpH依存性を克服すること、および胃腸管において示されるすべてのpH条件において非常に満足する溶出率、したがって十分な吸収を確実にすることに成功した。ピモベンダンの脂質埋込み粒子は、例えば、米国特許第4865851号において記載されている通り、スプレー凝結技法を使用することにより製造される。スプレー凝結法(スプレー冷却としても知られている)は、マイクロ粒子、より詳細にはマイクロスフィアを製造するために使用される方法の1つである。これらはマイクロメートルの範囲のサイズを有する、概ね球状の固形粒子であり、薬物が、該粒子の容積全体の内部に均一に分散している。埋込み粒子は、標的動物の胃腸管に相当する各pHにおいて、経口用製剤からピモベンダンが迅速かつ相当な量で溶出すること示し、かなり様々なpH条件とは無関係に、薬物の適度な吸収を確実にする。脂質埋込み粒子を製造するために開発されたスプレー凝結技法は、迅速で、容易にスケールアップでき、安価である。この技法は、製剤化および製造過程に溶媒を必要としないので、環境的に優しい。脂質埋込み粒子を使用すると、いかなる酸性化合物を含ませることなく、胃腸管の環境に相当するすべてのpH条件において、迅速かつ多量に溶解する、口当たりのよい経口用ピモベンダン製剤を製剤化することが可能であった。
一態様では、本発明の目的は、担体マトリックスによりコーティングされている粒子形態のピモベンダンを含む組成物であって、担体マトリックスが、以下の群、
(a)ポリグリコール化グリセリド、
(b)ポリエチレングリコール(PEG)
から選択される1または複数の薬学的に許容される担体から本質的になる、組成物を提供することにより、驚くべきことに解決された。
別の態様では、本発明の目的は、担体マトリックスによりコーティングされている粒子形態のピモベンダンを含む組成物であって、担体マトリックスが、以下の群、
(a)ポリグリコール化グリセリド、
(b)ポリエチレングリコール(PEG)
から選択される1または複数の薬学的に許容される担体から本質的になり、担体マトリックスによるコーティングが、pH条件に関わらず、ピモベンダンの迅速かつ実質的な量の溶出を確実にするよう働く組成物を提供することにより、驚くべきことに解決された。
【0007】
さらに別の態様では、本発明の目的は、本明細書において開示されている組成物を調製する方法であって、
(a)溶融担体マトリックス中に粒子状ピモベンダンを分散させるステップと、
(b)ステップ(a)において得られた分散液を霧化するステップと、
(c)コーティング粒子を冷却して収集するステップと
を含む方法を提供することによって、驚くべきことに解決された。
さらに別の態様では、本発明の目的は、本明細書において開示されている組成物を調製する方法によって得ることができる、担体マトリックスによりコーティングされている粒子形態のピモベンダンを含む組成物を提供することによって、驚くべきことに解決された。
さらに別の態様では、本発明の目的は、温血動物、好ましくはコンパニオンアニマル、特にイヌへの経口投与用の医薬組成物であって、本明細書に記載されている獣医学的有効量の組成物と、1または複数の生理学的に許容される賦形剤とを含み、アンジオテンシン酵素(ACE)阻害薬、アルドステロン拮抗薬および/またはループ利尿薬からなる群から選択される、1または複数のさらなる活性成分の獣医学的有効量を含んでもよい医薬組成物を提供することによって、驚くべきことに解決された。
【発明の効果】
【0008】
本発明による医薬組成物を適用することにより、動物の胃腸管の環境に相当する各pHにおいて、活性化合物の迅速かつ多量に溶出することにより実証される通り、ピモベンダンの低溶解度および溶解度の高いpH依存性が、多量の有機酸を同時に投与することなく、または物質の異なる結晶形態(多形)を使用することなく、克服することができる。実質的にpH依存性溶出は、処置される対象のpH条件が変動する場合でさえも、満足する吸収が確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】高い酸性pH領域(pH1.2)における、それぞれ、本発明の例3に従い調製したピモベンダン5mgを含有している錠剤製剤、およびそしゃく錠剤として市販のものの溶出プロファイルの比較を示すグラフである。試験条件:V=1000ml、回転速度=100rpm、クロマトグラフィー条件:Agilent Infinity1290UHPLC、RP18、50×3.0mm、カラム1.7μm、移動相として27:73v/v%のアセトニトリル:リン酸緩衝液、流速0.4ml/分、検出波長290nm。
図2】中程度の酸性pH領域(pH4.5)における、それぞれ、本発明の例3に従い調製したピモベンダン5mgを含有している錠剤製剤、およびそしゃく錠剤として市販のものの溶出プロファイルの比較を示すグラフである。試験条件は、図1に関するものと同一である。
図3】中性酸性(neutral acidic)pH領域(pH7,5)における、それぞれ、本発明の例3に従い調製したピモベンダン5mgを含有している錠剤製剤、およびそしゃく錠剤として市販のものの溶出プロファイルの比較を示すグラフである。試験条件は、図1に関するものと同一である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態をさらに詳細に記載する前に、本明細書で使用する場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、および「the」には、特に文脈が明確に示さない限り、複数の参照物が含まれる。
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。所与の範囲および値はすべて、特に示さない限り、または当業者により特に公知でない限り、1〜5%の変動があってもよく、したがって、用語「約」は、本説明および特許請求の範囲から通常、省略した。本明細書に記載されているものと類似または等価な、いかなる方法および物質も、本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは、好ましい方法、装置、および物質を記載している。本発明に関連して使用され得る刊行物に報告されている、物質、賦形剤、担体および方法を説明ならびに開示する目的で、本明細書において明記されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれている。先願発明のために、こうした開示よりも本発明が先行しているという権利を有していないことを承認するものと解釈されるものは、本明細書ではなにもない。
【0011】
一態様では、本発明の目的は、本明細書において開示されている組成物を調製する方法であって、
(a)従来の分散技法、例えば高せん断ミキサーを使用することにより、好ましくは20μm未満の平均粒径を有するピモベンダン粒子を、溶融担体マトリックス、例えば、ポリグリコール化グリセリド、好ましくはステアロイルマクロゴール−32グリセリド、より好ましくはGelucire50/13、および/または好ましくは平均分子量が1,500〜20,000g/mol、より好ましくは平均分子量が4,000〜6,000g/molのポリエチレングリコール、最も好ましくはPEG6000中に分散させて、分散液、好ましくは均質懸濁液を得るステップであって、担体マトリックスが、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜70℃の融点を有する、ステップと、
(b)好ましくは標準的スプレー凝結/冷却装置に装備されている従来のアトマイザー、例えば、ロータリーアトマイザー、加圧式ノズルもしくは空気圧縮式ノズル、および/またはソニックノズルを使用することにより、より好ましくは標準的スプレー凝結/冷却装置に装備されている二流体加圧式ノズルまたは空気加圧式ノズル霧化システムを使用することにより、1〜10bar、好ましくは2〜8bar、より好ましくは3〜6barの霧化ガス圧を使用して、ステップ(a)において得られた分散液を霧化するステップと、
(c)従来の冷却技術および収集技術、例えば、好ましくは0〜30℃の温度、より好ましくは3〜15℃の温度、さらにより好ましくは5〜15℃の温度、最も好ましくは4〜8℃の温度において乾燥窒素などの冷却空気または不活性ガスの気流を噴霧装置に適用して、好ましくはサイクロン分離器またはフィルターバッグに粒子を収集することにより、コーティング粒子を冷却および収集するステップと
を含む方法を提供することにより、驚くべきことに解決された。
【0012】
さらなる態様によれば、本発明の目的は、担体マトリックスの一体コーティングを有するピモベンダンの粒子を含む組成物であって、担体マトリックスが、ポリグリコール化グリセリドおよびポリエチレングリコールからなる群からの1または複数の薬学的に許容される担体から本質的になり、ピモベンダンが、標的動物の胃腸管の環境に相当するすべてのpH条件において組成物または関連薬物形態から迅速かつ多量(急速かつ相当な量)に溶出することを示す、組成物を提供することによって、驚くべきことに解決された。
さらなる態様によれば、本発明は、コンパニオンアニマル、特にイヌに経口投与するための医薬組成物であって、適切なビヒクル中にピモベンダンの脂質埋込み粒子を含む、医薬組成物を提供する。
またさらなる態様によれば、本発明は、標的動物の胃腸管に相当する各pH条件において、ピモベンダンの信頼性の高い、迅速かつ相当な量の溶出を確実にする方法であって、適切な担体によりピモベンダンをコーティングするステップと、埋込み粒子を経口用製剤、例えば錠剤に組み込むステップとを含む、方法を提供する。
【0013】
ピモベンダンの溶解度の高いpH依存性を効果的に克服するため、およびイヌの胃腸管に相当するすべてのpH条件において迅速かつ相当な量の溶出を示すコーティング粒子を提供するため、コーティングされているピモベンダン粒子の平均直径は、好ましくは50μm未満とすべきである。
担体の融点は、口腔内でコーティング粒子が融解するのを防止するのに十分高くあるべきであるが、ピモベンダン自体が融解する、および/またはコーティング過程中に化学的に分解するほど高くあるべきではない。したがって、本発明において担体マトリックスとして使用される、担体または担体の混合物は、40〜80℃、好ましくは50〜70℃の融点を有する。
ピモベンダンのコーティングに適した担体は、ポリグリコール化グリセリドおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される。
ポリグリコール化グリセリドは、脂肪酸グリセリド、およびポリオキシエチレンと脂肪酸とのエステルの混合物である。これらの混合物では、脂肪酸は飽和または不飽和であり、グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、またはそれらの任意の割合の混合物である。適切なポリグリコール化グリセリドの例には、以下に限定されないがラウリルマクロゴールグリセリドまたはステアロイルマクロゴールグリセリドが含まれる。
【0014】
組成物の具体的な群では、担体マトリックス中に含有されているポリグリコール化グリセリドは、10より大きい親水性−対−親油性バランス値(HLB)を有する。組成物のさらなる具体的な群では、担体マトリックス中に含有されているポリグリコール化グリセリドは、水中に分散可能である。組成物のさらなる具体的な群では、ポリグリコール化グリセリドは、ステアロイルマクロゴールグリセリドである。組成物のまたさらなる具体的な群では、ポリグリコール化グリセリドは、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド(例えば、Gelucire50/13)である。ステアロイルマクロゴール−32グリセリドは、融点50℃を有する、室温で半固体/固体である。
【0015】
ポリエチレングリコール(米国薬局方)(PEG)(あるいはマクロゴールとして知られている)は、オキシエチレンの親水性ポリマーである。900g/molを超える平均分子量を有するPEGは、周囲温度において、一般に半固体または固体である。本発明におけるPEGの適切な平均分子量範囲は、1,500〜20,000g/molである。適切な市販製品には、以下に限定されないが、PEG1500、PEG4000およびPEG6000が含まれる。組成物の具体的な群には、担体マトリックス中に存在しているPEGは、4,000〜6,000g/molの間の範囲の平均分子量を有する。本実施形態の製剤のさらなる具体的な群では、このPEGは、およそ6,000g/molの平均分子量を有する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、ピモベンダンのコーティングに使用される担体マトリックスは、ポリグリコール化グリセリドおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される、1または複数の薬学的に許容される担体からなる。
本発明のさらなる実施形態では、担体マトリックスは、ポリグリコール化グリセリドである。ポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴールグリセリドまたはステアロイルマクロゴールグリセリド、具体的にはステアロイルマクロゴール−32グリセリドであるのが、好都合である。
本発明のまたさらなる実施形態では、担体マトリックスは、ポリエチレングリコール、具体的にはPEG6000である。
本発明のさらなる実施形態では、担体マトリックスは、少なくとも1種のポリグリコール化グリセリドと少なくとも1種のポリエチレングリコールとの混合物を含む。本実施形態に存在しているポリグリコール化グリセリドは、ステアロイルマクロゴール−32グリセリドであるのが好都合であり、ステアロイルマクロゴール−32グリセリドは、組成物の担体マトリックス成分の10〜100質量%を占める量で存在するのが好適であり、組成物の担体マトリックス成分の20〜50質量%となるのが好ましい。本実施形態に存在しているポリエチレングリコールは、4,000〜6,000g/molの間の平均分子量を有しているのが好都合であり、PEGは、好適には、組成物の担体マトリックス成分の10〜100質量%、好ましくは組成物の担体マトリックス成分の30〜80質量%を占める量で存在する。好ましくは、本実施形態では、たった1種のポリグリコール化グリセリドおよび1種のポリエチレングリコールだけが存在している。
【0017】
本実施形態の製剤の具体的な群では、このポリグリコール化グリセリドはステアロイルマクロゴール−32グリセリドに属し、PEGは、6,000g/molの平均分子量を有する。好ましくは、ステアロイルマクロゴール−32グリセリドおよびポリエチレングリコール6000は、互いに独立して、組成物の担体マトリックス成分の10質量%〜100質量%、好ましくは組成物の担体マトリックス成分の20質量%〜75質量%、より好ましくは組成物の担体マトリックス成分の20質量%〜50質量%を占める量で存在している。
本発明による脂質コーティング粒子は、質量/質量(w/w)基準で、1〜80%、好ましくは5〜30%、より好ましくは10〜20%のピモベンダンを含有する。
本発明の脂質コーティング粒子は、一般に500μm未満、好ましくは300μm未満、より好ましくは250μm未満、さらにより好ましくは200μm未満の粒径分布のメジアン(D50)値を特徴とする。粒径の制御は、その後に製剤化された製品からのピモベンダンの溶出が、標的動物の胃腸管に相当するすべてのpH条件において、迅速かつかなりの量になるのを確実とするために必要である。この点で、200μm未満のD50値を有するコーティング粒子が好ましい。D50値とは、所与の粒径分布におけるメジアン粒径、すなわち、すべての粒子の50%が、それよりも小さくなる粒径値を表す。例えば、200μmのD50値とは、全粒子の50%が、200μmよりも小さい粒径を有することを意味する。
【0018】
本発明の脂質コーティング粒子は、溶融担体マトリックス中のピモベンダンの分散液を霧化して、これにより得られた粒子を冷却することにより調製することができ、こうした方法は、本発明のさらなる特徴を構成する。この分散液は、ピモベンダン粒子を溶融担体または担体の混合物に添加するか、あるいは、固体状態で分散液の成分を一緒に混合して、担体マトリックスを溶融することにより調製することができる。ピモベンダン粒子は、従来の技法、例えば高せん断ミキサーを使用して、溶融担体マトリックス中に分散させることができる。一般に、溶融担体マトリックスの温度は、その融点よりも20〜40℃高くあるべきである。一般に、ピモベンダン粒子のコーティングに使用するための担体または担体の混合物は、40〜80℃、好ましくは50〜70℃の範囲内の融点を有するべきであり、溶融担体マトリックスの温度は、その融点より20〜40℃高い。適用することができる霧化技法には、従来のアトマイザー、ロータリーアトマイザー、加圧式ノズルおよびソニックノズルの使用が含まれる。標準的スプレー凝結/冷却装置に装備した二流体ノズルアトマイザーの使用が、特に便利である。
【0019】
霧化方法では、溶融分散液は、一般に、70〜100℃、好ましくは75℃〜95℃、より好ましくは75oC〜90oCの範囲の温度でアトマイザーヘッドに供給され、正確な温度は、使用される具体的な担体マトリックスに依存する。ノズルに供給される霧化用ガスは、空気、または窒素などの不活性ガスとすることができる。霧化用ガスの圧力は、ある。霧化圧力は、望ましくは、好ましいサイズの粒子を製造するために、制御される。
コーティング粒子は、固化することがあり、従来の技法により収集することができる。コーティング粒子は、好都合なことに、0℃〜30℃、好ましくは3℃〜15℃、より好ましくは5℃〜15℃、最も好ましくは4〜8℃の間の温度の噴霧室に、冷却空気または乾燥窒素の気流を施すことにより、固化し得る。脂質コーティング粒子は、サイクロン分離器またはフィルターバッグのどちらかを使用して、易流動性粉末として収集される。コーティング粒子は、形状が球状をしており、500μm未満、好ましくは300μm未満、より好ましくは250μm未満、さらにより好ましくは200μm未満のD50値を有する。
本発明の脂質コーティング粒子は、さらなる薬理学的活性成分、および/または生理学的に許容される担体、および/または賦形剤を使用して、経口投与用医薬組成物に組み込むことができる。
本発明による組成物は、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、懸濁液剤、経口用ペースト剤、およびゲル剤を含むことができる。チュアブル錠剤を含む錠剤が、特に好ましい剤形である。
【0020】
したがって、本発明は、一実施形態では、
−活性物質として、脂質コーティング粒子形態の獣医学的有効量のピモベンダンと、
−生理学的に許容される賦形剤と
を含む経口用ピモベンダン製剤、好ましくは錠剤に関する。
経口用製剤中のピモベンダンの量は、全製剤に対して、好ましくは、0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.5質量%〜1.0質量%の範囲にある。
本発明の経口用ピモベンダン製剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アルドステロン拮抗薬および/またはループ利尿薬から選択することができる、獣医学的有効量のさらなる活性成分も含み得る。本発明による脂質コーティングピモベンダン粒子と組み合わせて使用することができる、活性物の非限定例は、ベナゼプリル(CAS番号、86541−75−5)、スピロノラクトン(CAS番号、52−01−7)、および/またはフロセミド(CAS番号、54−31−9)であり、すべて、および互いに独立して、遊離形態または生理学的に許容される塩の形態にあり、これらは、好ましくは、(脂質)担体マトリックスに埋め込まれる。すなわち、さらなる活性物質は、スプレー凝結技法を使用することにより製造される脂質埋込み粒子、すなわち(脂質)担体マトリックスによりコーティングされている粒子の形態の経口用ピモベンダン製剤に加えることもできる。好ましくは、本発明の経口用ピモベンダン製剤はまた、遊離形態または生理学的に許容される塩の形態の獣医学的有効量のベナゼプリルも含んでおり、好ましくは、担体マトリックスに埋め込まれている。さらなる活性物質は、本発明の経口用製剤中に、製剤/組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%の範囲で存在し得る。
【0021】
経口用ピモベンダン組成物は、慣用的な薬学的に許容される賦形剤を使用して製剤化することができる。すなわち、例えば、錠剤は、結合剤(例えば、アルファ化デンプン、ポリビニルピロリジンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはコロイド状シリカ)、崩壊剤(例えば、デンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を使用することによって調製することができる。本発明の錠剤製剤は、さらに、1または複数の生理学的に許容される、誘引性の天然または合成香味剤を含有する。好ましい香味剤は、人工ビーフフレーバー、肝臓粉末、および醸造酵母である。香味剤は、本発明の錠剤製剤中に、製剤/組成物の総質量に対して、1.0質量%〜60質量%、より好ましくは5.0〜30質量%の範囲で存在することが好ましい。
【0022】
本発明の経口用ペースト剤またはゲル製剤は、薬理学的に許容される賦形剤、例えば増粘剤(例えば、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、カルボポールなどのポリアクリレート(polyacrilate)、コーンデンプン、微結晶セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、二酸化ケイ素、またはそれらの組合せ)、保湿剤(例えば、グリセロール)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、安息香酸、ベンゾエートまたはp−ヒドロキシベンゾエート(hydroxibenzoate))、pH調節剤(塩基または酸)、結合剤、充填剤、表面活性剤、または分散化剤を含有することができる。前記薬理学的に許容される賦形剤は、獣医学的製剤技法の当業者に公知である。本発明の経口用ペースト剤およびゲル製剤はまた、獣医学的に許容される誘引性の香味剤も含有する。本発明の組成物内に適した香味剤は、例えば、人工ビーフフレーバー、乾燥肝臓または麦芽抽出物などの食品抽出物、および蜂蜜フレーバーである。
本発明の医薬組成物は、医薬品産業において周知の従来の技法に従って調製することができる。すなわち、例えば、錠剤は、脂質コーティングピモベンダン粒子と賦形剤、およびさらなる活性物質を含んでもよい混合物の直接圧縮、または湿式造粒により調製することができる。経口用ペースト剤またはゲル製剤は、適切なビヒクル中、さらなる活性成分を含んでもよいピモベンダンの脂質コーティング粒子を分散させることにより得ることができる。
本発明により使用するための組成物は、所望の場合、パック中で、または1または複数の単位用量を含有し得る分注器具で提供することができる。このパックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属製またはプラスチック製ホイルを含むことができる。
本発明の製剤は、コンパニオンアニマル、特にイヌにおいて、弁閉鎖不全症または拡張型心筋症に由来するうっ血性心不全の処置に適切である。
【0023】
効力は、満足する溶出、およびその後の活性物質の吸収に基づいている。本発明による錠剤製剤から得られる溶出プロファイルおよび市販の錠剤に由来する溶出プロファイル(それらの両方が5mgのピモベンダンを含有している)を、pH1.2、4.5および7.5の緩衝液、すなわち、コンパニオンアニマルの胃腸管の様々な部分/環境に相当するpH条件において、比較した。ピモベンダンの溶解濃度は、バリデーション済みUHPLC法により決定した。
本発明による経口用製剤は、温血動物、例えばコンパニオンアニマルにより、特にイヌにより、自発的に製剤を受け入れるかまたは摂取することを意味する、嗜好性が高いことを示す。本発明による脂質コーティングピモベンダン粒子および適切なさらなる成分を含有する、経口用製剤の受け入れを、イヌについて試験した。
【実施例】
【0024】
以下の例は、本発明をさらに例示するのに役立つが、本明細書において開示されている本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
(例1)
ピモベンダンの脂質コーティング
Gelucire50/13(18.0kg)をステンレス鋼製容器中で溶融し、温度を85℃まで昇温した。この溶融脂質に、平均粒径が20μm未満のピモベンダン(2.0kg)を加えた。高せん断ミキサーにより、この溶融分散液を混合すると、均一な懸濁液が得られ、スプレー凝結装置にポンプ注入した。霧化ガス圧3〜6barで二流体ノズル霧化システムを使用し、この混合物を霧化した。霧化液滴は、温度5〜10℃の噴霧室に供給された空気を使用して冷やし、固体粒子をサイクロン分離器中に収集した。脂質コーティングピモベンダンは、平均粒径が90μmの球状粒子を含んだ。
【0025】
(例2)
ピモベンダンの脂質コーティング
温度を90℃まで昇温しながら、Gelucire50/13(4.5kg)およびPEG6000(13.5kg)をステンレス鋼製容器中で溶融した。ここに、粒径が20μm未満のピモベンダン(2kg)を加えた。この溶融分散液に高せん断混合を施して均一な懸濁液を得て、この混合物を例1に記載されている通り、スプレーして冷やすと、類似した粒径および形状を有する、脂質コーティング生成物が得られた。例えば、3種の異なる回分を、それぞれ、D50値118μm、136μmおよび166μmで製造した。
【0026】
(例3)
錠剤製剤
Gelucire50/13およびPEG6000を含む、担体マトリックスに埋め込まれているピモベンダンを、回転式ブレンダー中で、ブタ肝臓フレーバー、酵母粉末およびさらなる賦形剤とブレンドした。適切な錠剤プレス器および適切な型抜き器を用いて、得られた混合物を錠剤に圧縮した。
【0027】
【表1】
【0028】
(例4)
錠剤製剤
Gelucire50/13、フロセミドおよび賦形剤によりコーティングしたピモベンダンを、回転式ミキサー中でブレンドし、次に、適切な錠剤プレス器および適切な型抜き器を用いて、ブレンドを錠剤に圧縮した。
【0029】
【表2】
【0030】
(例5)
錠剤製剤
回転式ブレンダー中で、例2に従って調製したピモベンダンの脂質埋込み粒子を脂質コーティングベナゼプリル(この粒子は、二ステアリン酸グリセロール、酵母粉末、合成肝臓アロマ、およびさらなる賦形剤を含む担体マトリックスに埋め込んだ)とブレンドし、次に、適切な錠剤プレス器を使用して、得られた混合物を錠剤に圧縮した。
【0031】
【表3】
【0032】
(例6)
インビトロ溶出
ピモベンダンの吸収は、胃腸管に相当する様々なpH条件において、活性物質の溶出率にかなり依存する。胃腸管に相当する様々なpH条件において、両方が5mgの活性物質を含有している、本発明の例3に従って調製した錠剤および市販のチュアブル錠剤からのピモベンダンの溶出プロファイルを比較した。結果は図1〜3に示されている。これらのデータから分かる通り、本発明に従って調製した、錠剤製剤からのピモベンダンの溶出率は、試験した各pHにおいて、迅速かつ高いものであった。pH1.2では、本発明による製剤および市販のチュアブル錠剤からの溶出速度および溶出率は、実質的に同じであった。しかし、pH4.5および7.5では、活性物質の溶出は、参照製品からよりも、本発明による錠剤製剤からの方が、急速かつ多量であった。これらの結果は、本発明により調製される錠剤製剤は、胃腸管中でかなりpHが変動する場合でさえも、市販製品中に多量に存在している有機カルボン酸をなんら含ませることなく、胃腸管に相当するすべての条件において、非常に満足するピモベンダンの溶出を確実にすることを明確に実証している。
【0033】
【表4】
【0034】
(例7)
インビトロ溶出
pH1.2、4.5および7.5の緩衝液中で、例5に従って調製した、ピモベンダン2.5mgおよびベナゼプリル5mgを含有する、錠剤からのピモベンダンおよびベナゼプリルの溶出プロファイルを市販のチュアブル錠剤製剤と比較した。本検討から得られた結果は、脂質埋込み形態中に両方の活性物質を含有している製剤からのピモベンダンおよびベナゼプリルの溶出は、活性物質の1つ、すなわちピモベンダンかベナゼプリルの一方しか含有していない対応する市販製剤からよりも遅く、45分間の溶出において、両方の活性化合物の溶出率は、イヌの胃腸管に相当する各pH条件において、市販の単一製剤(mono formulation)からよりも組合せ物からの方が高いことを実証している。
【0035】
【表5】
【0036】
(例8)
嗜好性(受け入れ)試験
様々な品種および年齢の30匹の雄および雌のイヌを、シェルター環境で試験した。試験者が、本発明の例3に従い調製した錠剤製剤の、動物の体量に適合させた単回1日用量を、3日間、各イヌに与えた。本発明の錠剤製剤の場合、最初の例では、錠剤は30秒間、手により与えた。イヌがその製剤を摂取しない場合、空のボウルに入れてそのイヌに与えた。イヌは製剤を摂取するために、再度30秒間を与えられた。上記の1つで与えると、イヌが喜んでその錠剤を食べる場合、これは、受け入れられている、または自発的に錠剤を摂取したものとして評価した。イヌがその錠剤を吐き出した場合、受け入れられないと報告した。自発的摂取は、90回の可能機会(すなわち、30匹の動物に3日間与えた場合)のうち、82回で観察された。これは、91.1%受け入れられたことと同等である。
【0037】
参照文献
1.欧州特許第0008391号
2.欧州特許第0439030号
3.欧州特許第2338493号
4.国際公開第2005/084647号
5.国際公開第2010/010257号
6.国際公開第2010/055119号
図1
図2
図3