(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定エリアにおける消費電力量が前記設定電力量を超えると予測される逼迫要求を外部から受ける受信部が備えられ、その受信部にて受ける逼迫要求に基づいて、前記第1運転切換条件が満たされるか否かが判別されている請求項1に記載の氷蓄熱システム。
【背景技術】
【0002】
上記のような氷蓄熱システムでは、例えば、冷熱源からの冷熱を有する不凍液(例えば、ブライン)を氷蓄熱槽の伝熱管に供給し、その伝熱管の外周に製氷することで、氷蓄熱槽に冷熱源からの冷熱を蓄熱している。そして、放熱部が放熱運転を行うことで、氷蓄熱槽に蓄熱されている冷熱を蓄熱槽から取り出して、放熱対象流体としての空調用流体に放熱させて冷房等の空調を行うようにしている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
上記特許文献1、2に記載のシステムでは、放熱部が、氷蓄熱槽の伝熱管の内部に不凍液を供給することで、氷を伝熱管の内側から融解させて不凍液にて冷熱を取り出し、その取り出した冷熱を放熱対象流体に放熱させる所謂内融式の放熱運転と、氷蓄熱槽の伝熱管の周囲に水等の熱媒体を供給することで、氷を外側から融解させてその融解水を含む熱媒体にて冷熱を取り出し、その取り出した冷熱を放熱対象流体に放熱させる所謂外融式の放熱運転とに切換自在に構成されている。また、放熱部とは別に、冷熱源からの冷熱を有する不凍液から放熱対象流体に放熱させる付加放熱運転を行う付加放熱部が備えられている。
【0004】
上記特許文献1に記載のシステムでは、放熱部にて外融式の放熱運転を行うとともに、付加放熱部による付加放熱運転を行っている場合に、空調負荷が小さくなると、付加放熱部による付加放熱運転を停止し、放熱部にて外融式と内融式の両方の放熱運転を行うようにしている。
【0005】
上記特許文献2に記載のシステムでは、放熱部による外融式の放熱運転のみ、或いは、その放熱部による外融式の放熱運転に加えて、付加放熱部による付加放熱運転を行っている場合に、例えば、一日の冷房時間帯の終わり等になると、製氷された氷の全てを融解するために、付加放熱部による付加放熱運転を行わずに、放熱部にて外融式と内融式の両方の放熱運転を行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような氷蓄熱システムでは、例えば、夜間等の電力需要の少ない期間に、電力を用いて氷蓄熱槽への蓄熱を行い、昼間等の電力需要の多い期間に、氷蓄熱槽に蓄熱された冷熱を用いて冷房等の空調を行うことで、電力需要の多い期間での需要側での消費電力の低減を図るようにしている。
【0008】
最近、電力会社等から供給する電力が不足しそうな時に、各需要家への消費電力の削減要求に応じて需要側が消費電力を調整するデマンドレスポンス(DR、需要応答)技術が注目されている。上記のような氷蓄熱システムは、例えば、複数の店舗を有する商業施設等の施設に備えられていることから、その施設を含めたエリアを対象とし、氷蓄熱システムにて何らかの対策を講じることで、そのエリアデマンドレスポンス対応を実現することが望まれている。しかしながら、上記特許文献1、2に記載のシステムでは、このようなエリアデマンドレスポンス対応については考慮されていなかった。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、この氷蓄熱システムを有する施設を含むエリアを対象とするデマンドレスポンス対応を実現可能な氷蓄熱システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、伝熱管の周囲に製氷して冷熱源からの冷熱を蓄熱する氷蓄熱槽と、
その氷蓄熱槽に蓄熱されている冷熱を放熱対象流体に放熱させる放熱運転を行う放熱部と、
前記冷熱源からの冷熱を前記放熱対象流体に放熱させる付加放熱運転を行う付加放熱部とが備えられ、
前記放熱部は、前記放熱運転として、
前記氷蓄熱槽における前記伝熱管の内部に第1熱搬送流体を供給してその伝熱管の内側から氷を融解させて取り出した冷熱を前記放熱対象流体に放熱させる第1運転モードと、
前記氷蓄熱槽における前記伝熱管の外側に第2熱搬送流体を供給して氷を外側から融解させて取り出した冷熱を前記放熱対象流体に放熱させる第2運転モードとの一方及び両方の運転モードを実行可能であり、
前記放熱部が前記第1運転モードと前記第2運転モードの一方の運転モードで放熱運転を実行中であり、且つ、前記付加放熱部が前記付加放熱運転を実行中である場合に、第1運転切換条件が満たされると、前記付加放熱部が運転停止され、前記放熱部が前記第1運転モードと前記第2運転モードの両方の運転モードで放熱運転させるように構成され、
前記第1運転切換条件は、この氷蓄熱システムを有する施設を含めた特定エリアにおける消費電力量が、その特定エリアを対象とするデマンドレスポンス対応として設定される設定電力量を超えることが予想されるタイミングとなる条件に設定され
、
前記第1熱搬送流体と前記氷蓄熱槽に供給される前の前記第2熱搬送流体とを熱交換させる第1熱交換部と、
前記第2熱搬送流体と前記放熱対象流体を熱交換させる第2熱交換部とが備えられ、
前記放熱部は、前記第1熱交換部での熱交換及び前記第2熱交換部での熱交換によって前記第1運転モードでの放熱運転を行い、前記第2熱交換部での熱交換によって前記第2運転モードでの放熱運転を行うように構成され、
前記付加放熱部は、前記第1熱交換部での熱交換及び前記第2熱交換部での熱交換によって前記付加放熱運転を行うように構成されている点にある。
【0011】
特定エリアにおける消費電力量が設定電力量を超えることが予想されるタイミングは、その特定エリアに対して、電力会社等から供給する電力が不足しそうなタイミングである。よって、特定エリアに対するエリアデマンドレスポンス対応としては、このようなタイミングにて特定エリアの消費電力を削減するのが望ましい。そこで、本特徴構成では、第1運転切換条件を、特定エリアにおける消費電力量が設定電力量を超えることが予想されるタイミングとなる条件に設定しており、放熱部が第1運転モードと第2運転モードの一方の運転モードで放熱運転を実行中であり、且つ、付加放熱部が付加放熱運転を実行中である場合に、この第1運転切換条件が満たされると、付加放熱部を運転停止させて、冷熱源を作動させるための消費電力等を削減し、特定エリアの消費電力の削減を図るようにしている。また、付加放熱部を運転停止させるだけでなく、放熱部が第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードで放熱運転させるので、付加放熱部を運転停止させる前における放熱対象流体に対する冷熱の放熱量を維持することができる。これにより、例えば、放熱対象流体を用いて冷房を行う場合でも、その空調負荷を十分に賄うことができる。したがって、放熱対象流体を用いた冷房を適切に行いながら、適切なタイミングで特定エリアの消費電力を削減して、その特定エリアに対するエリアデマンドレスポンス対応を実現することができる。
本特徴構成によれば、放熱部による第1運転モードでの放熱運転及び付加放熱部による付加放熱運転では、第1熱交換部及び第2熱交換部での2段階の熱交換を行っている。これにより、2つの熱交換部を備えるだけで、放熱部による第1運転モード及び第2運転モードでの放熱運転だけでなく、付加放熱部による付加放熱運転も行うことができ、簡易な回路構成を採用することができる。そして、第1熱交換部では、第1熱搬送流体と氷蓄熱槽に供給される前の第2熱搬送流体とを熱交換させるので、放熱部による第1運転モードでの放熱運転及び付加放熱部による付加放熱運転では、第1熱交換部にて第1熱搬送流体によって第2熱搬送流体を冷却させた後、その第2熱搬送流体を蓄熱槽に戻すことができ、氷蓄熱槽における氷の融解が早まるのを抑制できる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、前記特定エリアにおける消費電力量が前記設定電力量を超えると予測される逼迫要求を外部から受ける受信部が備えられ、その受信部にて受ける逼迫要求に基づいて、前記第1運転切換条件が満たされるか否かが判別されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、特定エリアにおける消費電力量が設定電力量を超えると予測される場合には、電力会社等の外部から氷蓄熱システムに逼迫要求が送信されるので、その逼迫要求を受信部にて受信し、その逼迫要求に基づいて第1運転切換条件が満たされるか否かを判別している。このような判別を行うことで、その特定エリアにおいて消費電力を削減すべきタイミングを的確に判別でき、エリアデマンドレスポンス対応としての電力削減を的確に行うことができる。
【0016】
本発明の第
3特徴構成は、前記冷熱源と前記氷蓄熱槽と前記第1熱交換部のうち、前記第1熱搬送流体を通流させる機器を選択自在で前記第1熱搬送流体を循環させる第1循環回路と、
前記氷蓄熱槽と前記第1熱交換部と前記第2熱交換部のうち、前記第2熱搬送流体を通流させる機器を選択自在で前記第2熱搬送流体を循環させる第2循環回路とが備えられ、 前記放熱部は、前記氷蓄熱槽と前記第1熱交換部の間で前記第1熱搬送流体を循環させる状態に前記第1循環回路を切り換え、且つ、前記氷蓄熱槽と前記第1熱交換部と前記第2熱交換部の間で前記第2熱搬送流体を循環させる状態に前記第2循環回路を切り換えて、前記第1運転モードでの放熱運転を行い、
前記氷蓄熱槽と前記第2熱交換部の間で前記第2熱搬送流体を循環させる状態に前記第2循環回路を切り換えて、前記第2運転モードでの放熱運転を行うように構成され、
前記付加放熱部は、前記冷熱源と前記第1熱交換部の間で前記第1熱搬送流体を循環させる状態に前記第1循環回路を切り換え、且つ、前記氷蓄熱槽と前記第1熱交換部と前記第2熱交換部の間で前記第2熱搬送流体を循環させる状態に前記第2循環回路を切り換えて、前記付加放熱運転を行うように構成されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、第1循環回路と第2循環回路の2つの循環回路において流体を通流させる機器を切り換えるだけで、放熱部による第1運転モード及び第2運転モードでの放熱運転だけでなく、付加放熱部による付加放熱運転も行うことができ、簡易な回路構成を採用することができる。しかも、放熱部における運転モードの切り換え、及び、付加放熱部における付加放熱運転の切り換えについても、流体を通流させる機器を切り換えるという簡易な動作によって行うことができ、この点からも回路構成の簡素化を図ることができる。
本発明の第4特徴構成は、商業施設に備えられ、
前記放熱部が前記第1運転モードと前記第2運転モードの一方の運転モードで放熱運転を実行し、且つ、前記付加放熱部が前記付加放熱運転を実行中である場合から、前記付加放熱部を運転停止させ、前記放熱部が前記第1運転モードと前記第2運転モードの両方の運転モードで放熱運転させる状態に運転切換を行うときに、周辺地域に対して前記商業施設への来店を促す来店促進情報を発信する点にある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る氷蓄熱システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図4は、いずれも、氷蓄熱システム100の概略構成を示すものであるが、流体が通流する部位が異なるものであり、流体が通流しない部位を細線にて示し、流体が通流する部位を太線にて示している。
【0020】
この氷蓄熱システム100は、
図1〜
図4に示すように、冷熱源1と、その冷熱源1からの冷熱を蓄熱する氷蓄熱槽2と、冷熱源1の冷熱を氷蓄熱槽2に蓄熱させる蓄熱運転を行う蓄熱部7(
図1参照)と、氷蓄熱槽2に蓄熱されている冷熱を放熱対象流体Hに放熱させる放熱運転を行う放熱部3(
図2参照)と、冷熱源1からの冷熱を放熱対象流体Hに放熱させる付加放熱運転を行う付加放熱部4(
図3参照)とが備えられている。放熱対象流体Hについては、例えば、空調用水等の各種の空調用流体を用いることができる。
【0021】
氷蓄熱システム100では、熱を搬送する流体として、放熱対象流体Hの他に、冷熱源1の冷熱を氷蓄熱槽2に搬送する第1熱搬送流体N1と、氷蓄熱槽2に蓄熱されている冷熱を放熱対象流体Hに搬送する第2熱搬送流体N2とを有している。詳細な図示は省略するが、氷蓄熱槽2は、第1熱搬送流体N1を通流させる伝熱管2aを備えており、その伝熱管2aに冷熱源1の冷熱を有する第1熱搬送流体N1を通流させることで、伝熱管2aの周囲に製氷して冷熱源1からの冷熱を蓄熱するようにしている。第1熱搬送流体N1は、例えば、ブライン等の不凍液を用いることができ、第2熱搬送流体N2は、例えば、氷蓄熱槽2において伝熱管2aの周囲を通流する水を用いることができる。図示は省略するが、伝熱管2aの外周部等に水を散水する散水部を備え、その散水部から散水された水をも含めて、伝熱管2aの周囲を通流する水を第2熱搬送流体N2とすることができる。
【0022】
第1熱搬送流体N1についての構成として、第1熱搬送流体N1と第2熱搬送流体N2を熱交換させる第1熱交換部5と、冷熱源1と氷蓄熱槽2と第1熱交換部5のうち、第1熱搬送流体N1を通流させる機器を選択自在で第1熱搬送流体N1を循環させる第1循環回路10とが備えられている。第1熱交換部5は、第1熱搬送流体N1と氷蓄熱槽2に供給される前の第2熱搬送流体N2を熱交換させるように配置されている。
【0023】
第1循環回路10は、冷熱源1、氷蓄熱槽2における伝熱管2aの内部、第1熱交換部5の順で第1熱搬送流体N1を循環自在な第1流路部位11と、第1熱搬送流体N1を循環通流させる第1循環ポンプ12とを備えている。第1流路部位11には、冷熱源1をバイパスさせる第1バイパス部位13と、氷蓄熱槽2をバイパスさせる第2バイパス部位14と、第1熱交換部5をバイパスさせる第3バイパス部位15との3つのバイパス部位の夫々が分岐合流接続されている。各バイパス部位13、14、15の分岐箇所には、図示は省略するが、三方弁等の切換弁が備えられており、この切換弁を切り換えることで、冷熱源1と氷蓄熱槽2と第1熱交換部5のうち、第1熱搬送流体N1を通流させる機器を選択できるようになっている。第1循環ポンプ12は、第1流路部位11において第2バイパス部位14の合流箇所と第1バイパス部位13の分岐箇所との間の部位に配置されている。
【0024】
第2熱搬送流体N2についての構成として、第2熱搬送流体N2と放熱対象流体Hを熱交換させる第2熱交換部6と、氷蓄熱槽2と第1熱交換部5と第2熱交換部6のうち、第2熱搬送流体N2を通流させる機器を選択自在で第2熱搬送流体N2を循環させる第2循環回路20とが備えられている。
【0025】
第2循環回路20は、氷蓄熱槽2における伝熱管2aの外部、第2熱交換部6、第1熱交換部5の順で第2熱搬送流体N2を循環自在な第2流路部位21と、第2熱搬送流体N2を循環通流させる第2循環ポンプ22とを備えている。第2流路部位21には、第1熱交換部5をバイパスさせる第4バイパス部位23が分岐合流接続されている。この第4バイパス部位23の分岐箇所には、図示は省略するが、三方弁等の切換弁が備えられており、この切換弁を切り換えることで、第1熱交換部5に第2熱搬送流体N2を通流させるか否かを選択できるようになっている。第2循環ポンプ22は、第2流路部位21において氷蓄熱槽2と第2熱交換部6の間の部位に配置されている。
【0026】
放熱対象流体Hについての構成として、第2熱交換部6を通過した放熱対象流体Hを空調装置31に供給する空調側回路30が備えられている。この空調側回路30は、図示は省略するが、例えば、第2熱交換部6を通過した放熱対象流体Hを複数の空調装置31に分配供給し、複数の空調装置31の夫々を通過した放熱対象流体Hを合流させて第2熱交換部6に供給する循環回路として構成することができる。空調装置31については、例えば、供給される放熱対象流体Hを通流させるコイルと、そのコイルに空調用空気を供給するファンとを有するファンコイルユニットを用いることができ、コイルにて空調された空調用空気を空調対象空間に供給するようにしている。
【0027】
図示のものでは、空調装置31からの戻り側の放熱対象流体Hをそのまま第2熱交換部6に供給するようにしているが、例えば、図示は省略するが、空調側回路30には、放熱対象流体Hの通流方向で第2熱交換部6よりも上流側に補助の冷熱源を備え、その補助の冷熱源にて第2熱交換部6に供給する前の放熱対象流体Hを冷却し、その冷却後の放熱対象流体Hを第2熱交換部6に供給することもできる。
【0028】
蓄熱部7は、第1循環回路10において第1熱搬送流体N1を通流させる機器を切り換えることで、蓄熱運転を行うように構成されている。
図1に示すように、蓄熱運転では、蓄熱部7が、冷熱源1と氷蓄熱槽2の間で第1熱搬送流体N1を循環させる状態に第1循環回路10を切り換えている。つまり、第1循環回路10では、第3バイパス部位15により第1熱交換部5をバイパスする状態で第1流路部位11にて冷熱源1と氷蓄熱槽2の間で第1熱搬送流体N1を循環させている。これにより、冷熱源1の冷熱を有する第1熱搬送流体N1を氷蓄熱槽2の伝熱管2aに供給して、その伝熱管2aの周囲に氷を製氷している。
【0029】
放熱部3の放熱運転としては、放熱部3が第1循環回路10及び第2循環回路20において熱搬送流体N1、N2を通流させる機器を切り換えることで、第1運転モードと第2運転モードの一方及び両方の運転モードを実行可能に構成されている。第1運転モードは、所謂内融式であり、
図4に示すように、氷蓄熱槽2における伝熱管2aの内部に第1熱搬送流体N1を供給してその伝熱管2aの内側から氷を融解させて取り出した冷熱を放熱対象流体Hに放熱させている。第2運転モードは、所謂外融式であり、
図2に示すように、氷蓄熱槽2における伝熱管2aの外側に第2熱搬送流体N2を供給して氷を外側から融解させて取り出した冷熱を放熱対象流体Hに放熱させている。
【0030】
第1運転モードでは、
図4に示すように、放熱部3が、氷蓄熱槽2と第1熱交換部5の間で第1熱搬送流体N1を循環させる状態に第1循環回路10を切り換え、且つ、氷蓄熱槽2と第1熱交換部5と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させる状態に第2循環回路20を切り換えている。つまり、第1循環回路10では、第1バイパス部位13により冷熱源1をバイパスする状態で第1流路部位11にて氷蓄熱槽2と第1熱交換部5の間で第1熱搬送流体N1を循環させている。第2循環回路20では、第4バイパス部位23に通流させずに第2流路部位21にて氷蓄熱槽2と第1熱交換部5と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させている。これにより、氷蓄熱槽2の冷熱を第1熱搬送流体N1にて取り出し、その第1熱搬送流体N1によって第1熱交換部5において第2熱搬送流体N2を冷却し、その冷却された第2熱搬送流体N2によって第2熱交換部6において放熱対象流体Hを冷却している。
【0031】
第2運転モードでは、
図2に示すように、放熱部3が、氷蓄熱槽2と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させる状態に第2循環回路20を切り換えている。つまり、第2循環回路20では、第4バイパス部位23により第1熱交換部5をバイパスする状態で第2流路部位21にて氷蓄熱槽2と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させている。これにより、第2運転モードでは、氷蓄熱槽2の冷熱を第2熱搬送流体N2にて取り出し、その第2熱搬送流体N2によって第2熱交換部6において放熱対象流体Hを冷却している。
【0032】
付加放熱部4の付加放熱運転においても、
図3に示すように、付加放熱部4が、冷熱源1と第1熱交換部5の間で第1熱搬送流体N1を循環させる状態に第1循環回路10を切り換え、且つ、氷蓄熱槽2と第1熱交換部5と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させる状態に第2循環回路20を切り換えている。つまり、第1循環回路10では、第2バイパス部位14により氷蓄熱槽2をバイパスする状態で第1流路部位11にて冷熱源1と第1熱交換部5の間で第1熱搬送流体N1を循環させている。第2循環回路20では、第4バイパス部位23に通流させずに第2流路部位21にて氷蓄熱槽2と第1熱交換部5と第2熱交換部6の間で第2熱搬送流体N2を循環させている。これにより、冷熱源1の冷熱を有する第1熱搬送流体N1によって第1熱交換部5において第2熱搬送流体N2を冷却し、その冷却された第2熱搬送流体N2によって第2熱交換部6において放熱対象流体Hを冷却している。
【0033】
このように、第1循環回路10及び第2循環回路20において熱搬送流体N1、N2を通流させる機器を切り換えるだけで、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの切り換えだけでなく、付加放熱部4による付加放熱運転、及び、蓄熱部7による蓄熱運転にも切り換えることができる。これにより、第1熱搬送流体N1を通流させる第1循環回路10、及び、第2熱搬送流体N2を通流させる第2循環回路20を備えるという回路構成として簡易な構成を採用しがら、蓄熱運転、放熱運転、及び、付加放熱運転の夫々を適切に行うことができる。
【0034】
氷蓄熱システム100には、蓄熱部7、放熱部3、及び、付加放熱部4の運転を制御する運転制御部40が備えられている。運転制御部40は、蓄熱用設定条件が満たされていると判別すると、
図1に示すように、蓄熱部7による蓄熱運転を行うようにしている。この蓄熱運転では、例えば、冷熱源1を通過した第1熱搬送流体N1の温度が蓄熱用設定温度(例えば、−3℃)になるように冷熱源1にて与える冷熱量を調整しており、その蓄熱用設定温度の第1熱搬送流体N1が伝熱管2aに供給されて、その伝熱管2aの周囲に製氷されている。蓄熱用設定条件をどのような条件に設定するかは適宜変更が可能であるが、例えば、夜間の時間帯となった場合に、その蓄熱用設定条件が満たされるように時間帯に応じて設定することができる。また、人為操作式のスイッチのON操作等、人為的な蓄熱運転の要求があった場合にも、蓄熱用設定条件が満たされるように設定することもできる。
【0035】
運転制御部40は、空調装置31が運転中であるか否かを監視しており、
図2に示すように、空調装置31の運転中には放熱部3による第2運転モードでの放熱運転を行うようにしている。この第2運転モードの放熱運転における流体の温度変化について説明すると、例えば、氷蓄熱槽2から取り出された第2熱搬送流体N2の温度が1℃となり、第2熱交換部6に供給される放熱対象流体Hの温度が12.5℃となっている。そして、第2熱交換部6での熱交換によって、第2熱交換部6を通過した第2熱搬送流体N2の温度が11.5℃に上昇し、第2熱交換部6を通過した放熱対象流体Hの温度が7℃に低下する。これにより、空調装置31には、十分に低温の7℃の放熱対象流体Hが供給され、冷房を適切に行うことができる。
【0036】
運転制御部40は、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転を行っている場合(
図2参照)に、付加用設定条件が満たされると、
図3に示すように、その放熱部3による第2運転モードでの放熱運転に加えて、付加放熱部4による付加放熱運転を行うようにしている。付加用設定条件は、空調装置31における空調負荷が設定負荷よりも大きくなると、その付加用設定条件が満たされるように設定されている。
【0037】
このようにして、運転制御部40は、空調装置31の運転に伴って放熱部3による第2運転モードでの放熱運転を行い、空調装置31における空調負荷が設定負荷よりも大きいか否かを判別している。そして、運転制御部40は、空調装置31における空調負荷が設定負荷以下であると、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転を行っている状態を継続し、空調装置31における空調負荷が設定負荷よりも大きくなると、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転に加えて、付加放熱部4による付加放熱運転を行う。
【0038】
第2運転モードの放熱運転と付加放熱運転の同時運転における流体の温度変化について説明する。例えば、氷蓄熱槽2から取り出された第2熱搬送流体N2の温度が1℃となり、第2熱交換部6に供給される放熱対象流体Hの温度が12.5℃となっている。そして、第2熱交換部6での熱交換によって、第2熱交換部6を通過した第2熱搬送流体N2の温度が11.5℃に上昇し、第2熱交換部6を通過した放熱対象流体Hの温度が7℃に低下する。これにより、空調装置31には、十分に低温の7℃の放熱対象流体Hが供給され、冷房を適切に行うことができる。また、11.5℃の第2熱搬送流体N2は、そのまま氷蓄熱槽2に戻されるのではなく、第1熱交換部5での熱交換によって、5℃の第1熱搬送流体N1にて6℃まで低下され、その6℃の第2熱搬送流体N2が氷蓄熱槽2に戻され、氷蓄熱槽2の氷の融解が早まるのを抑制できる。ここで、冷熱源1は、冷熱源1を通過した第1熱搬送流体N1の温度が蓄熱用設定温度(例えば、−3℃)よりも高温の付加設定温度(例えば、5℃)になるように冷熱源1にて与える冷熱量を調整している。
【0039】
運転制御部40は、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転に加えて、付加放熱部4による付加放熱運転を行っている場合(
図3参照)に、第1運転切換条件が満たされると、
図4に示すように、付加放熱部4による付加放熱運転を運転停止し、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行うようにしている。
【0040】
この両方の運転モードでの放熱運転における流体の温度変化について説明する。例えば、氷蓄熱槽2から取り出された第2熱搬送流体N2の温度が1℃となり、第2熱交換部6に供給される放熱対象流体Hの温度が12.5℃となっている。そして、第2熱交換部6での熱交換によって、第2熱交換部6を通過した第2熱搬送流体N2の温度が11.5℃に上昇し、第2熱交換部6を通過した放熱対象流体Hの温度が7℃に低下する。これにより、空調装置31には、十分に低温の7℃の放熱対象流体Hが供給され、冷房を適切に行うことができる。また、11.5℃の第2熱搬送流体N2は、そのまま氷蓄熱槽2に戻されるのではなく、第1熱交換部5での熱交換によって、5℃の第1熱搬送流体N1にて6℃まで低下され、その6℃の第2熱搬送流体N2が氷蓄熱槽2に戻され、氷蓄熱槽2の氷の融解が早まるのを抑制できる。
【0041】
第1運転切換条件について説明を加える。
図5に示すように、例えば、氷蓄熱システム100を有する施設200及びその施設200の周辺地域R1を含めたエリアを特定エリアR2としており、第1運転切換条件は、その特定エリアR2における消費電力量が設定電力量を超えることが予想されるタイミングとなる条件に設定されている。この実施形態では、例えば、複数の店舗を有する商業施設等の大型施設200に氷蓄熱システム100を備えており、その大型施設200とその大型施設200の周辺の住居や施設を含む周辺地域R1を1つの特定エリアR2としている。どれだけの広さの地域を特定エリアR2とするかについては、例えば、電力会社からどのようなエリアを1つの供給範囲として電力供給を行っているかに基づいて設定することができる。また、特定エリアR2については、施設200を含むエリアであればよく、施設200とその施設200とは離れたエリアとを特定エリアR2とすることもでき、施設200とその施設200に隣接するエリアに限るものではない。
【0042】
ここで、設定電力量は、特定エリアR2を対象とするデマンドレスポンス対応として、その特定エリアR2に対して供給可能な電力量を基準として設定することができる。また、特定エリアR2を対象とするデマンドレスポンス対応として、消費電力の目標削減量が設定されている場合には、現在の消費電力量から目標削減量だけ減算した電力量等、現在の消費電力量と目標削減量に基づいて設定することもできる。
【0043】
氷蓄熱システム100には、特定エリアR2における消費電力量が設定電力量を超えると予測される逼迫要求Tを電力会社等の外部Gから受ける受信部41が備えられており、その受信部41にて受ける逼迫要求Tに基づいて、第1運転切換条件が満たされるか否かが判別されている。
【0044】
特定エリアR2における消費電力量が設定電力量を超えると予測される場合には、電力会社等の外部Gから氷蓄熱システム100に逼迫要求Tが送信される。この逼迫要求Tには、例えば、特定エリアR2における消費電力量が設定電力量を超えると予測される逼迫時間帯と、その消費電力の削減目標量等の各種の情報が含まれている。氷蓄熱システム100では、その逼迫要求Tを受信部41にて受信すると、逼迫要求Tに含まれた逼迫時間帯になると第1運転切換条件が満たされたとして、付加放熱部4による付加放熱運転を運転停止し、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行うようにしている。そして、逼迫時間帯の間は、
図4に示すように、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行い、逼迫時間帯から外れると、
図3に示すように、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転と付加放熱部4による付加放熱運転を行う状態に運転を切り換えている。
【0045】
また、逼迫要求Tに逼迫時間帯が含まれていない場合でも、例えば、逼迫要求Tを受信部41にて受信した時点を基準として、その受信時点から設定時間の間を逼迫時間帯として設定することで、第1運転切換条件を満たしているか否かの判別を行うことができる。
【0046】
ここで、第1運転切換条件を満たしているか否かの判別、及び、それに伴う放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行う状態への運転切換については、例えば、受信部41にて逼迫要求Tを受信すると、運転制御部40が、自動的に、第1運転切換条件が満たされたか否かの判別を行い、それに伴う運転切換についても運転制御部40が自動的に行うことができる。これに加えて又はこれに代えて、受信部41にて逼迫要求Tを受信すると、氷蓄熱システム100の管理者等が、第1運転切換条件が満たされたか否かを判別し、それに伴う運転切換についても、管理者等が運転切換を行うための運転切換指令を運転制御部40に与えることができる。
【0047】
このようにして、氷蓄熱システム100では、電力会社等の外部Gからの逼迫要求Tに応じて、付加放熱部4による付加放熱運転を運転停止させ、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行う状態に運転切換を行うことで、空調装置31の空調負荷に対応した冷房を行いながら、消費電力の削減を図ることができる。外部Gからの逼迫要求Tは、特定エリアR2における消費電力量が設定電力量を超えると予測される場合に送信されることから、その特定エリアR2を対象とするエリアデマンドレスポンス対応として、最適なタイミングにて消費電力の削減を図ることができる。例えば、複数の店舗を有する商業施設等の大型施設200に氷蓄熱システム100を備えている場合には、特定エリアR2全体での消費電力に対して、この氷蓄熱システム100の消費電力が占める割合が大きいことから、氷蓄熱システム100の消費電力を適切なタイミングで削減することで、特定エリアR2を対象とするエリアデマンドレスポンス対応を効果的に実現することができる。
【0048】
また、氷蓄熱システム100では、電力会社等の外部Gからの逼迫要求Tに応じて、付加放熱部4による付加放熱運転を運転停止させ、放熱部3による第1運転モードと第2運転モードの両方の運転モードでの放熱運転を行う状態に運転切換を行うときに、周辺地域R1に対して施設200への来店を促す来店促進情報を発信することができる。このような発信を行い、周辺地域R1の居住者が施設200に来店することで、周辺地域R1の住居や施設における消費電力の削減も図ることができ、エリアデマンドレスポンス対応の実現に有用なものとなる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第1熱交換部5が、第2循環回路20において第2熱搬送流体の通流方向で氷蓄熱槽2の手前に配置されて、第1熱搬送流体と氷蓄熱槽2に供給される前の第2熱搬送流体を熱交換させている。これに代えて、
図6に示すように、第1熱交換部5を、空調側回路30において放熱対象流体Hの通流方向で第2熱交換部6の手前に配置し、第1熱搬送流体と第2熱交換部6に供給される前の第2熱搬送流体を熱交換させることもできる。
【0050】
(2)上記実施形態では、第1運転切換条件が満たされているか否かを判別するに当たり、付加放熱部4による付加放熱運転に加えて、放熱部3による第2運転モードでの放熱運転を行っているが、この放熱部3による放熱運転は、第2運転モードに限るものではなく、第1運転モードでもよい。つまり、第1運転切換条件が満たされているか否かを判別するに当たり、付加放熱部4による付加放熱運転に加えて、第1運転モードと第2運転モードの一方の運転モードにて放熱部3を放熱運転させているものであればよい。