【実施例1】
【0016】
図1から
図4を用いて本発明の実施例1に係るサイレン
サを備える消音装置及びこれを備えるガスタービンについて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例においてガスタービン1は、吸気した空気を圧縮する空気圧縮機10と、燃料を燃焼して排ガスを排出する燃焼器20と、燃焼器20から排出された排ガスによって駆動されるタービン30とを備えている。
空気圧縮機10の入口には、吸気ダクト40が接続されており、この吸気ダクト40の内部に吸気音を低減するための吸気サイレンサ(消音装置)100が設けられている。
【0018】
図2に示すように、吸気サイレンサ100は、矩形状の外枠101内に、筒状に形成された複数個のサイレンサ102を配設して構成されている。より具体的には、サイレンサ102は、その軸方向をガス流れ方向に向けた状態で、軸方向とは直交する方向に複数個(
図2では、横に7列、縦に4段)重ね合わされている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、サイレンサ102は、耐熱性がある鋼板(例えば、SUS)に多数の孔部121aを穿設した多孔板からなる正八角柱状の外筒121と、同じく耐熱性がある鋼板に多数の孔部122aを穿設した多孔板からなり外筒121よりも外径が小さく形成されて外筒121に挿通された正八角柱状の内筒122と、同じく耐熱性がある鋼板に多数の孔部123aを穿設した多孔板からなり外筒121及び内筒122の軸方向両端に配設されて外筒121と内筒122との間の空間を閉塞する環状の蓋体(蓋部材)123と、外筒121、内筒122及び蓋体123によって形成された閉空間内に収納された吸音材124とから構成されている。
【0020】
外筒121及び内筒122は、それぞれ一枚又は複数枚の多孔板を板金により曲げ加工し、これを溶接により筒状に固定して形成されている。また、外筒121と蓋体123、内筒122と蓋体123も溶接により固定されている。溶接加工は多孔板の孔の開いていない箇所にて行うものとする。
また、吸音材124はグラスウールやセラミック粒子を焼結形成したか或いは押し固めて形成したセラミック板などとする。
【0021】
以下に、上述した吸気サイレンサ100の組み立て方法について説明する。本実施例に係る吸気サイレンサ100は、予め外枠101とサイレンサ102とを組み立てた状態で吸気ダクト40に設置するのではなく、吸気ダクト40内で、バラバラの状態で運びこまれた複数個のサイレンサ102を縦横に配設し、固定する。ここで、外枠101とサイレンサ102とは溶接によって固定されている。また、隣接するサイレンサ102同士は、面接触するように配列され、
図2に示すようにコ字状の固定用ブロック103によって連結されている。
【0022】
固定用ブロック103はサイレンサ102の形状に合わせて形成され、少なくともサイレンサ102のガス流入口とガス流出口とにそれぞれ設けられて隣接するサイレンサ102同士を連結している。換言すると、隣接するサイレンサ102同士はガスの流れ方向に対して連続的に固定されているのではなく、部分的に連結された状態となっている。これは、吸気ダクト40内ではガスの流速が小さいことからサイレンサ102をガスの流れ方向に完全に固定する必要が無いためである。
【0023】
このように構成されるガスタービン1において、吸気ダクト40から取り込まれた空気は、吸気サイレンサ100を通って吸気音が低減され、空気圧縮機10に導かれる。空気圧縮機10に導かれた空気は空気圧縮機10で圧縮され高温・高圧の空気(以下、圧縮空気という)となる。そして燃焼器20で圧縮空気に対して燃料が供給されて生成された高温・高圧の燃焼ガスによりタービン30が駆動され、このタービンに連結された図示しない発電機が駆動される。
【0024】
このとき、本実施例では、吸気サイレンサ100を筒状に形成された複数のサイレンサ102を重ねる構造としたことにより、サイレンサ102を構成する多孔板の剛性が
図8及び
図9に示し上述した従来の構造に比較して10倍以上高くなる。このようにサイレンサ102の剛性が向上したことにより、吸気ダクト40に流入する空気の流速によってサイレンサ102を構成する多孔板が振動した場合であっても、従来に比較して振動音を低減することが可能となる。
また、本実施例によれば、サイレンサ102を円筒状ではなく多角柱状の筒体としたことにより、複数のサイレンサ102を重ね合わせる際に隣接するサイレンサ102同士を面接触させることができるため、組み立てが容易になるという利点も有する。
【0025】
なお、本実施例においてはサイレンサ102の形状を正八角柱状の筒体とする例を示したが、サイレンサ102の形状は正八角柱状に限らず、多角柱状であればよい。ただし、外周形状を偶数角柱状の筒体とすれば、奇数角柱状の筒体とするよりも隣接するサイレンサ102同士を面接触させやすく、組み立てやすいため好適である。また、例えばサイレンサの形状を六角柱状の筒体とし、当該サイレンサを軸方向に直交する方向に格子状に重ね合わせる場合など、屈折部同士を突き合わせて固定する必要がある場合は、隣接するサイレンサの外周面同士をL字状の固定用ブロックにより固定すればよい。この場合、L字状の固定用ブロックは、サイレンサの形状に合わせて形成し、ガスの流れ方向に対して複数個取り付ければよい。
【0026】
また、多孔板の孔121a,122a,123aの形状は円形に限らず多角形でもよく、多孔板の孔121a,122a,123aの分布は全ての面で同一の開口率でもよく、異なる開口率でもよい。
【0027】
また、本実施例においてはサイレンサ102を全て同一形状とする例を示したが、必ずしも同一形状とする必要はなく、隣接するサイレンサ同士を固定用ブロックにより固定することができれば、異なる形状であっても構わない。ただし、同一形状とすれば製造過程が簡素になるという利点がある。
【0028】
また、本実施例においてはサイレンサ102を縦横に等間隔で配置する例を示したが、サイレンサ102の配置は等間隔とする必要はなく、間隔が異なってもよい。
また、本実施例ではサイレンサ102を外枠101内に配置する例を示したが、サイレンサ102を吸気ダクト40内に直接配置してもよいことは言うまでもない。
【実施例2】
【0029】
以下、
図5から
図7を用いて本発明の実施例2に係るサイレン
サを備える消音装置及びこれを備えるガスタービンについて説明する。本実施例は、上述した実施例1とは吸気サイレンサ100の構造が異なるものである。その他の構造については
図1に示し上述した構造と同様であり、以下、
図1に示し上述した部材と同様の作用を奏する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0030】
図5に示すように、本実施例において吸気サイレンサ100は、矩形状の外枠101内に、筒状に形成された複数個のサイレンサ104を配設して構成されている。より具体的には、サイレンサ104は、その軸方向をガス流れ方向に向けた状態で、軸方向とは直交する方向に複数個(
図2では、横に5列、縦に3段)重ね合わされている。
【0031】
図6及び
図7に示すように、サイレンサ104は、耐熱性がある鋼板(例えば、SUS)に多数の孔部141aを穿設した多孔板からなる断面視十字状の筒体141と、同じく耐熱性がある鋼板に多数の孔部142aを穿設した多孔板からなり筒体141の軸方向両端の開口部を覆う蓋体142と、筒体141及び蓋体142によって形成された閉空間内に収納された吸音材143とからなる。換言すると、サイレンサ104は、中空部が十字状となっており、この中空部に吸音材143が収納され、蓋体142によって閉塞されている。
【0032】
筒体141は、一枚又は複数枚の多孔板を板金により曲げ加工し、これを溶接により筒状に固定して形成されている。また、筒体141と蓋体142も溶接により固定されている。溶接加工は多孔板の孔の開いていない箇所にて行うものとする。
吸音材143はグラスウールやセラミック粒子を焼結形成したか或いは押し固めて形成したセラミック板などとする。
【0033】
以下に、上述した吸気サイレンサ100の組み立て方法について説明する。本実施例に係る吸気サイレンサ100は、予め外枠101とサイレンサ104とを組み立てた状態で吸気ダクト40に設置するのではなく、吸気ダクト40内で、バラバラの状態で運びこまれた複数個のサイレンサ104を外枠101内に縦横に配設し、固定することにより設置する。
外枠101とサイレンサ104とは溶接によって固定されている。また、隣接するサイレンサ104同士は、面接触するように配列され、
図5に示すようにコ字状の固定用ブロック105によって連結されている。
【0034】
固定用ブロック105はサイレンサ104の形状に合わせて形成され、少なくともサイレンサ104のガス流入口とガス流出口とにそれぞれ設けられて隣接するサイレンサ104同士を連結している。換言すると、隣接するサイレンサ104同士はガスの流れ方向に対して連続的に固定されているのではなく、一部のみが連結された状態となっている。これは、吸気ダクト40内ではガスの流速が小さいことからサイレンサ104をガスの流れ方向に完全に固定する必要が無いためである。
【0035】
上述した本実施例に係る吸気サイレンサ100においても、上述した実施例1と同様、筒状に形成された複数のサイレンサ104を重ねる構造としたことにより、サイレンサ104を構成する多孔板の剛性を、
図8及び
図9に示し上述した従来の構造に比較して10倍以上高くすることが可能となる。そして、サイレンサ104の剛性が向上したことにより、吸気ダクト40に流入する空気の流速によって多孔板が振動した場合であっても、従来に比較して振動音を大幅に低減することが可能となる。さらに、サイレンサ104を円筒状ではなく十字状の筒体としたことにより、複数のサイレンサ104を重ね合わせる際に隣接するサイレンサ104同士を面接触させることができるため、組み立てが容易になる。
【0036】
なお、多孔板の孔141a,142aの形状は円形に限らず多角形でもよく、多孔板の孔141a,142aの分布は全ての面で同一の開口率でもよく、異なる開口率でもよい。
【0037】
また、本実施例においてはサイレンサ104を縦横に等間隔で配置する例を示したが、サイレンサ104の配置は等間隔とする必要はなく、間隔が異なってもよい。
また、本実施例ではサイレンサ104を外枠101内に配置する例を示したが、サイレンサ104を吸気ダクト40内に直接配置してもよいことは言うまでもない。