(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、弾性部材の収縮力によって表面側に起立する膨出手段を、トップシートと吸収体との間に介在させることによって、トップシートと吸収体との間に空洞を作り、トップシートだけ身体に密着させる構造としているが、夜用ナプキンなどのように長時間装着する吸収性物品の場合、表面材だけ表面側に持ち上げて身体に密着させようとしても、表面材が身体の動きに耐えられず引っ張られたり押し潰されたりして、表面材にヨレやシワが生じ、これが吸収性物品全体のヨレに進展して、身体との密着性が低下して漏れが生じるおそれがあった。
【0007】
また、このような膨出手段を有さない一般的な吸収性物品では、夜用ナプキンなどのように長時間装着している間に複数回繰り返して体液を排出した場合、吸収体が繰り返し体液を吸収することによって、吸収体にヘタリが生じて吸収体の厚みが減少し、肌面との間に隙間が生じる結果、体液が漏れやすくなるという問題が指摘されていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、表面材のヨレやシワを生じにくくし、且つ繰り返しの体液吸収によって吸収体にヘタリが生じた場合でも肌面との密着性を低下させず、体液の漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体と透液性表面シートとの間に、糸状弾性伸縮部材によって蛇腹状に収縮させ
ることにより前記弾性伸縮部材の配設方向に直交する方向に、折り目が肌側に突出する山折りと折り目が非肌側に突出する谷折りとが交互に繰り返し形成された多数の襞を備えた高復元性シート部材が介在されているとともに、前記高復元性シート部材は、不織布又はメッシュシートからなる上層シート材と下層シート材との間に複数本の前記糸状弾性伸縮部材を所定の方向に間隔をあけて伸長状態で接合することによって構成され、
前記高復元性シート部材は、前記糸状弾性伸縮部材を吸収性物品の長手方向に沿って配設することにより、
前記襞の折り目が吸収性物品の幅方向に沿って形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、吸収体と透液性表面シートとの間に、糸状弾性伸縮部材による収縮力によって
前記弾性伸縮部材の配設方向に直交する方向に、折り目が肌側に突出する山折りと折り目が非肌側に突出する谷折りとが交互に繰り返し形成された多数の襞を備えた高復元性シート部材を介在させてあるため、蛇腹状に収縮させた前記高復元性シート部材の復元力を利用して、吸収体と透液性表面シートとの間にクッション性を持たせ、表面材を肌面に密着させようとしている。したがって、従来の吸収性物品のように透液性表面シートのみを肌側に膨出させるのではないので、夜用ナプキンなどのように長時間装着する中で激しい身体の動きを伴う場合であっても、表面材と吸収体との一体性が損なわれず、表面材のヨレやシワが生じにくくなる。
【0011】
また、繰り返しの体液吸収によって吸収体にヘタリが生じても、前記高復元性シート部材のクッション性によって吸収体と透液性表面シートとの間に隙間が生じるのが防止できるとともに、透液性表面シートが肌面に密着した状態が保持されるので、体液が吸収体に素早く吸収される結果、体液の漏れが防止できるようになる。
【0012】
前記高復元性シート部材は、不織布又はメッシュシートからなる上層シート材と下層シート材との間に複数本の前記糸状弾性伸縮部材を所定の方向に間隔をあけて伸長状態で接合することにより、前記糸状弾性伸縮部材による収縮力によって蛇腹状に収縮させて構成されている。
【0013】
そして、前記高復元性シート部材は、前記糸状弾性伸縮部材を吸収性物品の長手方向に沿って配設することにより、
前記襞の折り目が吸収性物品の幅方向に沿って形成されてい
るため、吸収性物品の表面が身体のラインに沿いやすくなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記高復元性シート部材は、体液排出部位に対応する領域を含む範囲に配設されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記高復元性シート部材を配設する範囲について規定してあり、吸収体にヘタリが生じた場合でも表面と肌面との密着性を高めるため、少なくとも体液排出部位に対応する領域を含む範囲に配設するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、表面材のヨレやシワが生じにくくなり、且つ繰り返しの体液吸収によって吸収体にヘタリが生じても肌面との密着性が低下せず、体液の漏れが防止できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置された親水性のセカンドシート6と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部Hを含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW
B、W
Bが形成されている。
【0020】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0021】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0022】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0023】
前記吸収体4は、基材用吸収体4Aと、少なくとも着用者の排血口部Hに対応する部分を含む領域に配設され、前記基材用吸収体4Aより肌側に隆起する中央中高部4Bと、必要に応じて生理用ナプキン1の後端部に配設され、前記基材用吸収体4Aより肌側に隆起する後方中高部4Cとから構成するのが好ましい。前記中央中高部4Bは、着用者の排血口部H及びその周辺を十分に覆う大きさで形成され、後方が臀部溝に対応する領域まで延びている。前記中央中高部4Bは、排血口部に対応する領域のみに形成してもよいが、後方が会陰部や臀部溝まで延在して形成するのが好ましい。前記後方中高部4Cは、臀部溝より後方に位置し、万一臀部溝を伝って後側に漏れる体液があった場合にそれを捕捉するためのものである。
【0024】
本生理用ナプキン1では、前記中央中高部4Bを囲むように、透液性表面シート3の外面側から生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対の中央圧搾溝16を形成するのが好ましい。前記中央圧搾溝16は、少なくとも幅方向中心線CLの両側に生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右にそれぞれ形成される部分を有するものであればよく、図示例では、この左右の前端部及び後端部がそれぞれ接続され、全体としてナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉合する形状で形成されている。かかる中央圧搾溝16は、前記中央中高部4Bを囲うように、前記中央中高部4Bの外縁外側に設けられている。
【0025】
また、前記中央圧搾溝16より前側に離間して、平面視略Ω形状の前側圧搾溝16aが形成されるとともに、前記中央圧搾溝16より後側に離間するとともに、前記後方中高部4Cを囲うように、平面視略逆Ω形状の後側圧搾溝16bが形成されている。前記前側搾溝16a及び後側圧搾溝16bは、それぞれ生理用ナプキン1の表面を前側及び後側に伝う体液を確実に捕捉し、体液の伝い漏れを防止するためのものである。
【0026】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性のセカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。
【0027】
一方、前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2及び
図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0028】
前記サイド不織布7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW
B、W
Bを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0029】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材14が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材14の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材15、15が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。また、吸収体4からの立ち上がり基端部に1本又は複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、前記糸状弾性伸縮部材14配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0030】
〔高復元性シート部材20〕
本生理用ナプキン1では、前記吸収体4と透液性表面シート3との間に、弾性伸縮部材23によって蛇腹状に収縮させた高復元性シート部材20が介在されている。前記蛇腹状とは、前記弾性伸縮部材23の配設方向にほぼ直交する方向に、折り目が肌側に突出する山折りと折り目が非肌側に突出する谷折りとが交互に繰り返し形成された状態のものであり、換言すると、前記弾性伸縮部材23の配設方向に対する断面視で肌側及び非肌側に突出する多数の襞が設けられた波状に形成された状態のものである。この蛇腹状に収縮することにより多数の折り目が形成された状態は、少なくとも前記弾性伸縮部材23の配設方向に対する両側縁に形成されていればよく、この両側縁に形成された山折り部及び谷折り部が、高復元性シート部材20の幅方向(弾性伸縮部材23の配設方向に直交する方向)に連続して形成される必要はない。すなわち、一方側の側縁から弾性伸縮部材23の配設方向とほぼ直交する方向に延びる折り目(山折り部又は谷折り部)は、途中で隣り合う折り目に吸収されたり、或いは分岐したりして、幅方向に不連続に形成されている場合がある。
【0031】
前記高復元性シート部材20は、
図5に示されるように、不織布又は多数の孔を形成したプラスチック製のメッシュシートからなる上層シート材21と、不織布又は多数の孔を形成したプラスチック製のメッシュシートからなる下層シート材22との間に、前記弾性伸縮部材23を伸長状態で長手方向の全長又は適宜の位置がホットメルト接着剤などによって接合されて構成されている。この高復元性シート部材20は、前記弾性伸縮部材23による収縮力によって蛇腹状に収縮した状態で、前記吸収体4と透液性表面シート3との間に介在させてある。前記上層シート材21及び下層シート材22の材質及び目付は同じでも良いし、異なっていても良い。
【0032】
前記弾性伸縮部材23としては、糸状弾性伸縮部材を用いるのが好ましく、
図5に示されるように、シート材21、22に対し所定の方向に間隔をあけて複数本、図示例では7本配設するのが好ましい。前記糸状弾性伸縮部材に代えて、テープ状の弾性伸縮部材や伸縮性を有するシート材を伸長状態で接合するようにしてもよい。
【0033】
前記弾性伸縮部材23の伸長率は、伸長させない自然状態を0倍としたとき、0.5倍〜5倍、好ましくは1倍〜3.5倍とするのがよい。ただし、適切な伸長率は、上層シート材21や下層シート材22の目付や材質によっても異なるものである。前記弾性伸縮部材23の伸長率は全ての弾性伸縮部材23で同じとし、上層シート材21及び下層シート材22の全面にほぼ均等な収縮力が作用するようにするのが好ましい。
【0034】
前記弾性伸縮部材23を複数本配置する際の間隔は、3mm〜7mm、好ましくは5mm程度とするのがよい。この間隔は、全ての弾性伸縮部材23、23間で同じとし、上層シート材21及び下層シート材22の全面にほぼ均等な収縮力が作用するようにするのが好ましい。
【0035】
前記高復元性シート部材20を製造するには、
図5(A)に示されるように、所定の間隔で所定のテンションをかけて繰り出した複数本の弾性伸縮部材23、23…の周面にそれぞれホットメルト接着剤などの接着剤を塗布した後、前記弾性伸縮部材23、23…の上下面にそれぞれ、前記上層シート材21及び下層シート材22を接合する。その後、弾性伸縮部材23のテンションを解除することによって、同
図5(B)に示されるように、蛇腹状に収縮した高復元性シート部材20を得ることができる。
【0036】
前記高復元性シート部材20は、
図1に示されるように、排血口部Hに対応する領域を含む範囲に配設されている。図示例では、排血口部Hに対応する領域を含む範囲から会陰部に対応する領域にかけて配設されている。前記高復元性シート部材20は、
図1に示されるように、少なくとも排血口部Hに対応する領域の両側に形成される前記中央圧搾溝16で囲まれた領域に配設するのが好ましい。
【0037】
前記高復元性シート部材20は、蛇腹状に収縮させた状態で、上層シート材21の外面及び下層シート材22の外面の両方又は一方にスパイラル塗布などで塗布されたホットメルト接着剤によって各面を固定するのが好ましい。
【0038】
前記高復元性シート部材20は、
図1に示されるように、弾性伸縮部材23によって蛇腹状に収縮させた状態で平面視略長方形状に形成されている。
【0039】
この高復元性シート部材20の平面寸法は、前記弾性伸縮部材23による収縮力によって蛇腹状に収縮させた状態(
図5(B)に示される状態)で、ナプキン幅方向の寸法Aが20mm〜50mm、好ましくは35mm〜45mmとするのがよい。また、ナプキン長手方向の寸法Bが50mm〜420mmとするのがよく、少なくとも排血口部Hに対応する領域に70mm〜150mmの長さで設けるのが好ましい。
【0040】
また、前記高復元性シート部材20の弾性伸縮部材23による収縮によって蛇腹状に収縮させた状態での見かけの厚みは、前記上層シート材21及び下層シート材22の材質や目付によっても異なるが、2mm〜10mm、好ましくは4mm〜8mmとするのがよい。
【0041】
前記高復元性シート部材20は、
図2及び
図4に示されるように、吸収体4(吸収体4を被包シート5で囲繞した場合には吸収体4の肌側面を覆う被包シート5)と透液性表面シート3との間に介在されている。また、本例のように透液性表面シート3と吸収体4との間にセカンドシート6を介在させた場合には、吸収体4とセカンドシート6との間に配設するのが好ましいが、セカンドシート6と透液性表面シート3との間に配設してもよい。
【0042】
以上の構成からなる本生理用ナプキン1では、吸収体4と透液性表面シート3との間に、前記弾性伸縮部材23による収縮力によって蛇腹状に変形させた高復元性シート部材20を介在させることによって、蛇腹状に収縮させた高復元性シート部材20の復元力を利用して、吸収体4と透液性表面シート3との間にクッション性を持たせ、表面材を肌面に密着させようとしている。したがって、従来の吸収性物品のように、透液性表面シートのみを肌側に膨出させる構造ではないので、夜用ナプキンなどのように長時間装着する中で激しい身体の動きを伴う場合であっても、透液性表面シート3と吸収体4との一体性が損なわれず、透液性表面シート3にヨレやシワが生じにくくなるという効果を奏する。
【0043】
また、
図6に示されるように、吸収体4が繰り返し体液を吸収することによって、排血口部Hやその近傍の吸収体4の肌側が窪むヘタリが生じた場合でも、前記高復元性シート部材20のクッション性によって吸収体4と透液性表面シート3との間に隙間が発生するのが防止できるとともに、透液性表面シート3が肌面に密着した状態が保持されるので、体液が前記透液性表面シート3及び高復元性シート部材20を伝って吸収体4に素早く吸収されるため、体液の漏れが防止できるようになる。
【0044】
前記高復元性シート部材20のクッション性をより効果的に発揮するため、前記中央圧搾溝16を施す際の透液性表面シート3に作用する張力によって、高復元性シート部材20が厚み方向に若干圧縮された状態になるようにするのが好ましい。これにより、吸収体4が繰り返し体液を吸収することによってヘタリが生じた場合でも、高復元性シート部材20が圧縮された状態から厚み方向に復元するので、この高復元性シート部材20が吸収体4のヘタリによる窪み部分を埋め、透液性表面シート3が窪むのが抑えられ、肌面との密着性が高められる。前記中央圧搾溝16を施すことによる高復元性シート部材20の圧縮率(見かけ厚みの減少率)は、3%〜50%、好ましくは5%〜20%程度とするのがよい。
【0045】
ところで、前記高復元性シート部材20は、
図1に示されるように、弾性伸縮部材23をナプキン長手方向に沿って配設することにより、ナプキン長手方向に凹凸を繰り返す蛇腹状に形成してもよいし、
図7に示されるように、弾性伸縮部材23をナプキン幅方向に沿って配設することにより、ナプキン幅方向に凹凸を繰り返す蛇腹状に形成してもよい。前者のナプキン長手方向に沿って弾性伸縮部材23を配設した場合は、蛇腹状の折り目がナプキン幅方向に沿って形成されるため、身体の前後方向の丸みに沿いやすくなる。後者のナプキン幅方向に沿って弾性伸縮部材23を配設した場合は、蛇腹状の折り目がナプキン長手方向に沿って形成されるため、ナプキン幅方向への体液拡散を抑える効果が高くなる。ただし、高復元性シート部材20の復元力は、弾性伸縮部材23をナプキン長手方向に配設した場合とナプキン幅方向に配設した場合とで変化はないので、吸収体のヘタリに対する隙間充填性に変化はない。
【0046】
前記上層シート材21と弾性伸縮部材23との間や下層シート材22と弾性伸縮部材23との間に、ポリマー層やパルプ層を別途設けるようにしてもよい。これにより、高復元性シート部材20での吸収性能も向上できるようになる。
【実施例】
【0047】
本生理用ナプキン1の効果を確認するため、以下に示す試験を行った。
【表1】
【表2】
【0048】
表1において、中間層の欄の「糸ゴム」の後の「倍」は、弾性伸縮部材(糸ゴム)を伸長させない自然状態を0倍としたときの伸長割合である。
【0049】
吸収速度5回目の試験方法は、37℃の人工経血(粘度8)3ccを3分間隔で同一位置に吸収させたとき、5回目の滴下開始時から、表面の人工経血が完全に吸収されたと目視で確認された時点までの時間(秒)をストップウォッチで測定する。
【0050】
逆戻り量の試験方法は、37℃の人工経血(粘度8)3ccを3分間隔で同一位置に吸収させてから1分後に、滴下位置にろ紙4枚と荷重5g/cm
2(底面の大きさ100mm×40mm、高さ40mm、重さ200gの重り)を5分間載置したとき、ろ紙に吸収された人工経血の重量を測定する。
【0051】
シート部材の見かけ厚みの試験方法は、尾崎製作所製、ピーコック、定圧厚み測定器デジタルタイプFFD−7を用いて、各シート部材の厚みを測定する。
【0052】
シート部材の密度の試験方法は、〔シート部材の重量(g)/(厚み(cm)×面積(cm
2))〕から求めたものである。なお、表1及び表2中、記号「−」が付されたものは、測定を行わなかったものである。
【0053】
表面ヘタリ率の試験方法は、前記吸収速度5回目の試験及び逆戻り量の試験を行った後の製品厚み(mm)と試験前の製品厚み(mm)とを測定し、次の計算式より算出した値である。なお、表面ヘタリ率の数値が小さいほど、吸収体が体液を吸収することによる表面のヘタリが小さいことを表している。
前記吸収速度5回目の試験及び逆戻り量の試験を行った後の製品厚み(mm)/試験前の製品厚み(mm)×100(%)
ダミー吸収量の試験方法は、(1)生理用ナプキンをダミー人形に装着して、仰向き姿勢の状態で5ccの人工経血を注入後、仰向きで5分間→右横向きで5分間静置する。(2)ダミー人形を仰向き姿勢に戻して再び人工経血5ccを注入後、仰向きで5分間→左横向きで5分間静置する。上記(1)、(2)の手順を漏れが発生するまで繰り返し、吸収量を測定する。なお、表1及び表2中、記号「−」が付されたものは、測定を行わなかったものである。
【0054】
前記人工経血の成分は、グリセリン12.30重量%、イオン交換水85.18重量%、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)0.45重量%、NaCl(塩化ナトリウム)0.97重量%、Na
2CO
3(炭酸ナトリウム)1.04重量%、青粉0.06重量%からなるものである。
【0055】
比較例1と実施例1〜7とを対比すると、前記高復元性シート部材20を配設した本生理用ナプキン1は、吸収速度が1.56秒〜5.44秒速くなるとともに、表面ヘタリ率が1%〜17%改善できるようになる。また、糸ゴムのテンションを0倍(伸長させない自然状態)で配置した比較例2は、実施例1〜3と比較して吸収速度が2.06秒〜2.79秒遅く、何も配設しない比較例1と比較して表面ヘタリ率も改善できていない。これにより、弾性伸縮部材23による収縮力によって蛇腹状に形成した高復元性シート部材20を配設することにより、吸収速度及び表面ヘタリ率が改善できることが確認できた。
【0056】
実施例1〜3を比較すると、糸ゴム(弾性伸縮部材23)のテンション(伸長率)を高くすると、蛇腹状の襞が細かく形成され、上層シート材21及び下層シート材22の単位面積当たりの表面積が大きくなるため、吸収速度が速くなり、表面がへたりにくくなる。しかしながら、糸ゴムのテンションが3.5倍(実施例2)、4.5倍(実施例3)になると、高復元性シート部材20の蛇腹状の襞が細かくなり、この襞の凹部に経血が溜まって、逆戻り量が多くなる。したがって、糸ゴムのテンションは、上層シート材21及び下層シート材22の材質や目付にもよるが、エアスルー(25gsm)の場合、1〜3.5倍が好ましいと言える。
【0057】
次に、上層シート材21及び下層シート材22の資材による比較を行う。実施例2と実施例6とは、上層シート材21及び下層シート材22をエアスルー(25gsm)からSMMS(10gsm)に変更したものであるが、上層シート材21及び下層シート材22の厚みを薄くすると、高復元性シート部材20の蛇腹状の襞の間隙が小さく密になるため、実施例6の方が吸収速度が3.44秒遅くなるとともに、SMMS自体が人工経血を吸収して保持してしまうため、実施例6の方が逆戻り量が0.025g多くなる結果となった。
【0058】
一方、上層シート材21をエアスルー不織布、下層シート材22をSMMSとした実施例5では、繊維間の空隙が少ないSMMSがエアスルーに吸収された人工経血を引き込む吸引力が作用するため、実施例2と比較して吸収速度がほぼ同等で、逆戻り量が0.147g改善できる結果が得られた。したがって、上層シート材21としてエアスルー不織布を用い、下層シート材22としてSMMSを用いるのが好ましい。
【0059】
比較例3は、高復元性シート部材20に代えて、実施例1の見かけ厚みとほぼ同等の厚みで形成したパルプ及びポリマーからなる吸収体を配置したものであるが、この場合には表面ヘタリ率が高くなり、体液を繰り返し吸収することにより表面材と肌面との間に隙間が生じて、体液漏れが生じるようになる。
【0060】
また、比較例4は、高復元性シート部材20に代えて、高目付のエアスルー不織布を配置したものであるが、この場合には実施例1〜3と比較して吸収速度が約1.8秒〜2.5秒遅く、表面ヘタリ率も5〜11%悪くなる。