特許第6506952号(P6506952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506952
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20190415BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20190415BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20190415BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20190415BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K7/14
   C08K5/053
   C08K5/13
   C08K3/22
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-239768(P2014-239768)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-105378(P2015-105378A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】13194835.8
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・インメル
(72)【発明者】
【氏名】ヨヒェン・エントナー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−011307(JP,A)
【文献】 特表2013−523958(JP,A)
【文献】 特開昭61−064751(JP,A)
【文献】 特表2006−522842(JP,A)
【文献】 特表2013−501094(JP,A)
【文献】 特開2012−031393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)15重量%〜90重量%のナイロン−6,6と、
b)3重量%〜30重量%のナイロン−4,6であって、成分a)および成分b)の合計を基準とする成分b)の割合が、5重量%〜40重量%である量のナイロン−4,6と、
c)5重量%から70重量%のガラス繊維と、
d)0.01重量%〜3重量%の少なくとも1つの熱安定剤と、
f)1重量%〜55重量%の少なくとも1つの難燃剤と
を含み、重量百分率すべての合計が常に100である組成物であって、
熱安定剤が、立体障害のあるフェノールの群から選択され、前記立体障害のあるフェノールが、フェノール構造を有し、少なくとも1つの立体的に嵩高い基を前記フェノール環上に有し、前記立体的に嵩高い基が、第三ブチル基、イソプロピル基または置換トリアゾール基であり、かつ、
難燃剤が、メラミンポリホスフェートおよびホウ酸亜鉛と組み合わせたアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)である、組成物。
【請求項2】
成分a)、b)、c)、d)およびf)に加えて、e)0.01重量%〜5重量%のジペンタエリスリトールおよび/またはトリペンタエリスリトールを含み、その場合にその他の成分の量が、重量百分率すべての合計が常に100となるように減らされることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分a)〜f)に加えてまたは成分e)の代わりに、g)0.01重量%〜10重量%の1分子当たり2つのエポキシ基を有する少なくとも1つの添加剤を含み、その場合にその他の成分の量が、重量百分率すべての合計が常に100となるように減らされることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
成分a)〜g)に加えてまたは成分e)および/もしくはg)の代わりに、h)0.01重量%〜20重量%の成分c)〜g)以外の少なくとも1つの添加剤を含み、その場合にその他の成分の量が、重量百分率すべての合計が常に100となるように減らされることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
使用される熱安定剤が、置換ベンゼンカルボン酸から、または置換ベンゼンプロピオン酸から誘導される立体障害のあるフェノールであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
使用される熱安定剤が、式(III):
【化2】
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、それら自体置換されていてもよいC〜Cアルキル基であり(これらの少なくとも1つは第三ブチル基、イソプロピル基または置換トリアゾール基である)、Rは、主鎖中にC−O結合をまた有してもよい、1〜10個の炭素原子を有する二価脂肪族基である)
の化合物であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱安定剤が、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オク−4−ルメチル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリルチオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミンの群から選択されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記熱安定剤が、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、およびN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミドの群から選択されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
二酸化チタン顔料が添加剤として使用されることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物を含む成形組成物の押出または射出成形によって得られる製品。
【請求項11】
電気または電子産業用の短期間の耐熱変形性を有する製品であることを特徴とする、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物の、電気または電子産業用の製品の製造のための使用。
【請求項13】
前記組成物の前記使用が、前記製品の短期間の耐熱変形性を増加させるのに役立つことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記製品が、電気または電子産業用の製品であることを特徴とする、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物が成形組成物を得るために加工され、その組成物が射出成形または押出操作にかけられることを特徴とする、短期間の耐熱変形性を有する製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドブレンドおよび添加剤をベースとする組成物、短期間の耐熱変形性を有する製品の製造のための成形組成物でのこれらの組成物の使用、ならびに、とりわけ電気または電子用途向けの、短期間の耐熱変形性を有するポリアミドベース製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子および電気アセンブリおよび部品には、熱的敏感な電気および/または電子製品、特に熱に敏感な集積回路、振動子結晶、光電子製品が挙げられる。そのようなアセンブリの設置の過程で、製品上に提供される電気接点は、回路基板上の導体トラックにおよび/または他の製品上の電気接点に信頼できる処理方法で接続されなければならない。この設置は頻繁に、はんだ付け方法を用いて達成され、その方法では製品上に提供されるはんだ接続部は回路基板にはんだ付けされる。各製品に関して、はんだ時間およびはんだ温度について安全な範囲があり、その範囲で良好なはんだ接続部を生み出すことができる。良好なはんだ結果を達成するために、製品は、長期にわたってはんだ付け中に高温に曝されなければならない。たとえば、ウェーブはんだ付けの過程で、回路基板中へ挿入される製品は先ず、約100℃まで徐々に加熱される。これに、約260℃〜285℃の範囲で典型的には達成され少なくとも5秒を要する、実際のはんだ付けが続き、製品が数分にわたって徐々に冷える固化段階が続く。
【0003】
(非特許文献1)によれば、フローはんだ付けとも言われるウェーブはんだ付けは、電子アセンブリ(回路基板、フラットアセンブリ)が取り付け後に半自動的にまたは完全自動的にはんだ付けされるはんだ付け方法である。回路基板のはんだ側が先ず、フラクサーにおいてフラックスで濡らされる。その後、回路基板は、対流加熱(熱の渦巻き、その結果として、同じ温度が実質的にどこでも、上側上でさえも存在する)、コイル加熱または赤外線ラジエーターを用いて予熱される。これは第一に、フラックスの溶媒中身を蒸発させるために(さもなければ気泡がはんだ付け操作中に形成されるだろう)、使用される活性化剤の化学的有効性を高めるために、そしてその後のはんだ付けの過程での過度に急な温度上昇の結果としてのアセンブリの熱反りおよび部品への損傷を回避するために行われる。
【0004】
正確なデータが、温度プロフィールによって理解される。これは、検体回路基板上の関連ポイントに温度センダーを取り付けること、および測定機器で記録することを含む。これにより、選択された部品に関して回路基板の上側および下側について温度曲線が得られる。その後、アセンブリは、1つまたは2つのはんだウェーブを上が適用される。はんだウェーブは、オリフィスを通して液体はんだをポンプ送液することによって生み出される。はんだ温度は、鉛含有はんだの場合には約250℃であり、鉛含有蒸気の回避のために好ましくは使用されるべきである鉛フリーはんだの場合にはそれよりも約10℃〜35℃高い、すなわち、260℃〜285℃である。
【0005】
はんだ時間は、加熱が回路基板も熱に敏感な部品も損傷しないように選択されるべきである。はんだ時間は、部位による液体はんだとの接触時間である。片側上に積層された回路基板についてのガイドライン時間は1秒未満、両側上に積層された回路基板については2秒以下である。多回路基板の場合には、6秒以下の個々のはんだ時間が適用される。1998年、DIN EN 61760−1によれば、1ウェーブあるいは2ウェーブ一緒にしての最大期間は10秒である。より具体的な詳細は、上述の参考文献から引き出すことができる。はんだ付けの後に、アセンブリの冷却が、再び熱応力を迅速に低減するために推奨される。この冷却は、はんだ付け領域の直ぐ下流の冷却ユニット(温度調節器システム)を用いて、かつ/あるいは、シンクステーションでの従来型換気装置もしくはリターンベルト上の冷却トンネルを用いて直接冷却によって成し遂げられる。
【0006】
その結果、短期間の耐熱変形性の観点からの高い要求が、とりわけ、高い溶融範囲を有し、環境上の理由でさらにより頻繁に使用されつつある鉛フリーはんだ向けに使用される材料に対して課されている。加えて、この種の材料は、使用中に発生する温度下で非常に良好な耐老化性を有していなければならない。
【0007】
ナイロン−6(PA6)およびナイロン−6,6(PA66)などの熱可塑性ポリアミドは、それらの良好な加工性、高い機械的耐久性、および多くのプロセス化学薬品に対する耐性のために、しかしとりわけまたそれらの高い加水分解安定性のために、電気および電子用途向けに特に好適である。このことは、屋外部門での用途にとりわけ当てはまる。しかし、PA6およびPA66などの純脂肪族のポリアミドは、約220℃および260℃のそれらのそれぞれの溶融範囲のために、これらのポリアミドの融点よりも上の温度を有するプロセス工程が電気または電子製品の製造プロセスに存在するときに−たとえば、鉛フリーはんだではんだ付けする場合に−それらの限界に急速に直面する。
【0008】
(特許文献1)には、PA66、PA6T/12、ガラス繊維および熱安定剤(CuI/KI)の混合物を含む溶接可能な(振動溶接)組成物が記載されている。
【0009】
(特許文献2)には、ガラス繊維とベーマイトおよびホウ酸亜鉛などの熱安定剤とを含む、PA66、PA6T/66および任意選択的にPA6I/6Tをベースとする組成物であって、高温かつ高湿の条件下で良好な表面外観、許容される難燃特性、および高い光沢保持率を有する組成物が記載されている。
【0010】
(特許文献3)は、PA66、PA66/6Tおよび任意選択的にPA6、さらにガラス繊維および銅ベース熱安定剤を含む組成物の例を示している。これらは、オーブン老化後に高い引張強度を示す。
【0011】
(特許文献4)は、電気または電子産業用のガラス繊維強化、熱安定化、難燃性ポリアミド成形品、たとえば、鉛フリーはんだ材料で表面取り付け法によってプリント回路基板上に取り付けられる部品の製造を記載している。この目的のために、PA6T/66、難燃剤(アルミニウムジメチルホスフィネート)、ガラス繊維、熱安定剤(Irganox(登録商標)1098)および滑剤(ステアリン酸カルシウム)からなる組成物が提案されている。
【0012】
(特許文献5)は、とりわけ、少なくとも280℃の融点を有するポリアミド、230℃未満の融点を有する熱可塑性樹脂、ハロゲン化有機化合物および無機強化剤をベースとする、エレクトロニクス用途向けの高融点ポリアミド組成物を開示している。
【0013】
(特許文献6)は、半結晶性の半芳香族ポリアミドと、半結晶性の脂肪族ポリアミドと、ハロゲンを含まない難燃剤とをベースとする難燃性ポリマー組成物を記載している。実施例には、PA46とPA4T/66との組み合わせおよびPA66とPA4T/66との組み合わせがある。
【0014】
最後に、(非特許文献2)が参照される。この文献において、Zytel(登録商標)はPA66を表し、HTNはPA6Tを表す。
【0015】
先行技術が考慮される場合、電子製品の製造目的でのはんだ付けプロセスで生じる高い短期間温度向けに、脂肪族ポリアミドの中で、約290℃の溶融範囲を有するナイロン−4,6(PA46)に切り替えることが可能であろう。しかし、PA46に推奨される加工温度、理想的には310〜320℃では、好適な添加剤の選択が非常に限定される。このことは、たとえば、特に、赤リン、メラミンポリホスフェートまたはアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)などの、熱的に敏感であるがPA66に効率的に依然として使用することができる難燃剤についてとりわけ当てはまる。これらの難燃剤をPA46に使用すると、高い加工温度に起因して、これらの添加剤が破壊するリスクが増大し、それ故に、たとえば、プラスチック−金属ハイブリッド製品を加工する際にたとえば、金属腐食または沈着物形成の傾向が増大する。PA46を使用することのさらなる困難は、PA6およびPA66と比べて吸水性が高まることであり、それはさらに、PA46から製造された製品の寸法のより著しい変化をもたらす。
【0016】
PA46の代替案として、半結晶性の半芳香族ポリアミドへの切り替えが、たとえば、ポリアミド構造へのテレフタル酸の組み込みによって得られるものと考えられる。これらの例は、PA6T/6、PA6T/66またはPA6T/6I/66(ここで、「T」はテレフタル酸を表し、「I」はイソフタル酸を表し、「/」はコポリマーを表す)である。これらの材料は、より低い吸水性というPA46よりも優れた利点を提供する。300℃よりも上の溶融範囲を達成することも可能である。しかし、熱的敏感な接着剤に関してPA46について上述した制限と同様の制限に加えて、明らかにより高い溶融粘度および低下した結晶化速度に起因する制限も、半芳香族ポリアミドの場合に考慮されなければならない((非特許文献3))。
【0017】
それ故、本発明の目的は、熱可塑性ポリアミドをベースとする組成物であって、一方で、PA66と比べて改善された短期間の耐熱変形性を有するが、他方で、PA66にとって慣習的な低い温度で加工でき、結果として、熱的敏感な添加剤、とりわけ難燃剤の選択における制限がより少なく、かつ、良好な機械的特性を有し、はんだ付けプロセスで組成物から製造される製品の場合に高い短期間の耐熱変形性を有する組成物を提供することであった。
【0018】
本発明との関連で、PA66ベース製品についての規定された温度での短期間の耐熱変形性は、直角のコーナーおよびエッジを有する寸法20・13・1.5mmの試験片が、上に規定された温度で15分間ガラス板上で形状のいかなる変化も受けず、さらにガラス板へのいかなる粘着も示さないときである。この試験では、ガラス板上に平らに置かれている試験片が、ターゲット温度に予熱された従来型ホットエアオーブン中へ15分間導入され、次に、23℃±2℃の温度を有する周囲空気によって冷却されて室温[23℃±2℃]に戻される。加熱貯蔵後の試験片のコーナーおよびエッジが0.8mmの半径よりも上のいかなる丸み帯びも持たないとき、本発明との関連での形状の変化はまったく存在しない、すなわち短期間の耐熱変形性が存在する。この半径は、虚円が丸み帯びを表すように試験片のコーナーまたはエッジ中へこのように置くことができる虚円のサイズを表し、これによってコーナーまたはエッジの丸み帯びの程度が示される。この半径が大きければ大きいほど、コーナーまたはエッジはより丸い。試験片が90°だけ水平から垂直に傾けられた後にそれがガラス板から落ちないときに、粘着は本発明との関連でまったく存在しない。
【0019】
この関連で、(非特許文献4)をまた参照されたい。
【0020】
本発明との関連で、製造される製品についての良好な特性は、曲げ強度および曲げ弾性率での高い機械的値、最高耐熱変形性(HDT A値)、および、難燃性に関する高いGWIT値によってとりわけ特徴づけられる。本発明との関連で高いGWIT値は、750℃以上の値である。曲げ強度に関して高い値は228MPa以上である。耐熱変形性に関して高い値は227℃以上である。
【0021】
技術的力学における曲げ強度は、曲げ応力下の部品においてその曲げ強度を超過したときに、部品の破砕の結果として破損が引き起こされる強度の値である。この値は、その屈曲または破砕に対してワークピースが提供する耐性を示す。ISO 178による短期曲げ試験では、好ましくは寸法80mm・10mm・4mmを有する、棒形の検体が、それらのエンドで2つの支持体上に置かれ、中央で屈曲ラムをロードさせられる((非特許文献5))。
【0022】
「(非特許文献6)」によれば、曲げ弾性率は、試験片を2つの架台上に置き、そしてそれに中央で試験ラムをロードすることによる、3点曲げ試験で測定される。これはたぶん、曲げ試験の最も一般に用いられる形態である。曲げ弾性率は次に、平らな試料の場合には次の通り:
E=l(X−X)/4Dba
(式中、E=kN/mm単位での曲げ弾性率であり;I=mm単位での支持体幅であり;X=kN単位での曲げ弾性率測定のエンドであり;X=kN単位での曲げ弾性率測定のスタートであり;D=XとXとの間のmm単位でのたわみであり;b=mm単位での試料幅であり;a=mm単位での試料厚さである)
計算される。
【0023】
耐熱変形性は、プラスチックの熱耐久性の尺度である。それらは粘弾性材料特性を有するので、プラスチックについて厳密に規定された上方使用温度はまったくなく;その代わりに、代わりのパラメータが規定の荷重下に測定される。一方法は、DIN EN ISO 75−1、−2、−3(前駆体:DIN 53461)による耐熱変形性の試験であり、それによれば、耐熱変形性温度は、好ましくはその平らなエッジで、一定の荷重下に3点曲げにかけられる、長方形断面の標準試験片を使用することによって測定される。試験片高さに応じて、1.80N/mmのエッジ繊維応力σ(方法A)は、力:
F=2σbh/3L
(式中、b=検体幅であり、h=検体高さであり、L=架台間の距離である)
を加えるための重りまたは/およびスプリングを用いることによって達成される。(非特許文献7)を参照されたい。
【0024】
その後、応力を受けた試料は、120K/h(または50K/h)の一定の加熱速度で加熱にかけられる。試料のたわみが0.2%のエッジ繊維伸びに達する時点に相当する温度が耐熱変形性温度HDT(熱たわみ温度または熱変形温度)である。
【0025】
GWIT値は、IEC 60695−2−13により最終製品および材料に関するグローワイヤ試験によって確定される。(非特許文献8)は、セクション30に、「Resistance against Fire and Heat」、EN/IEC 606952−10〜13に記載されている試験を用いて実行されなければならない特有の安全性要件を含有し、IEC 60695−2−13は、材料の着火性(GWIT)についてのグローワイヤ試験に関する。EN 60335−1、セクション30によれば、0.2A超の非監視屋内電気器具について、IEC 60695−2−13要件は、材料の着火性(GWIT)について775℃で5秒未満のものである。
【0026】
GWIT試験での試験手順は次の通りである:試料は、500から900℃まで50℃ステップでおよび960℃で30秒間グローワイヤに曝される。試料は、それが5秒超燃える場合に着火したとして分類される。材料が3つの試みで着火しない温度(例:750℃+25K)がGWIT(775℃)とされる。
【0027】
5秒着火性要件は非常に厳しく、UL94 V−0分類を達成するいくつかの難燃性プラスチックは、それらが5秒直後まで消えないために不合格となる。気相で役割を果たす難燃性を有するプラスチックがここでは特に影響を受ける。
【0028】
GWIT試験を改善するために、共同試験が、業界およびVDE(Verband der Elektrotechnik Elektronik Informationstechnik e.V.,German Association for Electrical,Electronic and Information Technologies)を含めて、2007年に行われた。結果は、その一目的がGWIT試験方法を改善することであった、国際IEC/TC 89共同試験の一部と考えられた。共同試験は、試験環境、試験室、グローワイヤおよび温度測定が的確に定義されておらず、変わりやすい結果をもたらし得ることを示した。もはや火炎と考えられないコロナ現象を除いて、得られた結果がGWIT標準の改訂版に大きな変化をもたらす可能性は極めて低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 997 496 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/126794 A2号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2013/188488 A2号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/090036 A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第99/45070 A1号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2013/014144 A1号パンフレット
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】http://de.wikipedia.org/wiki/Wellen%C3%B6ten
【非特許文献2】G.Lau,Material Selection of Electronic Components−Zytel(登録商標) High Temperature Nylon HTN and Zenite(登録商標) LCP,Power Electronics Systems and Applications,2006,ICPESA ’06、2nd International Conference on November 1,2006
【非特許文献3】Ludwig Bottenbruch,Rudolf Binsack(編):Technische Thermoplaste[Industrial Thermoplastics]Part 4,Polyamide[Polyamides],Hanser Verlag Munich,p.803−809
【非特許文献4】「Aendern des Eckenradius von abgerundeten Rechtecken」[Changing the Corner Radius of Rounded Rectangles]:http://help.adobe.com/de_DE/framemaker/using/WSd817046a44e105e21e63e3d11ab7f7960b−7f38.html
【非特許文献5】Bodo Carlowitz:Tabellarische Uebersicht ueber die Pruefung von Kunststoffen[Tabular Overview of the Testing of Plastics],6th edition,Giesel−Verlag fuer Publizitaet,1992,p.16−17
【非特許文献6】http://de.wikipedia.org/wiki/Biegeversuch
【非特許文献7】http://de.wikipedia.org/wiki/W%C3%A4rmeformbest%C3%A4ndigkeit
【非特許文献8】欧州標準EN 60335−1「Household and similar electrical appliances−Safety−Part 1:General requirements」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
課題の解決法および本発明の主題は、
成分の重量百分率すべての合計が常に100である、
a)15重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%の、ナイロン−6,6と、
b)3重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の、ナイロン−4,6および/またはモノマー単位としてテレフタル酸を含有する、そして270℃〜330℃の範囲の融点を有する半芳香族コポリアミドの群からの少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドであって、組成物中に存在する熱可塑性ポリマーすべての合計を基準とする、成分b)または複数成分b)の割合が、5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜30重量%、より好ましくは15重量%〜25重量%である熱可塑性ポリアミドと、
c)5重量%〜70重量%、好ましくは10重量%〜45重量%、より好ましくは15重量%〜35重量%の、ガラス繊維と、
d)0.01重量%〜3重量%、好ましくは0.05重量%〜1.5重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.8重量%の、少なくとも1つの熱安定剤と
を含む、組成物である。
【0032】
課題の解決法および本発明の主題はまた、
成分の重量百分率すべての合計が100である、
a)15重量%〜91.99重量%、好ましくは20重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%の、ナイロン−6,6と、
b)3重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の、ナイロン−4,6と、
c)5重量%〜70重量%、好ましくは10重量%〜45重量%、より好ましくは15重量%〜35重量%の、ガラス繊維と、
d)0.01重量%〜3重量%、好ましくは0.05重量%〜1.5重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.8重量%の、少なくとも1つの熱安定剤と
を含む組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
明確にするために、本発明の範囲は、任意の所望の組み合わせで、一般用語でまたは好ましさの領域内で明記される本明細書で以下に述べられる定義およびパラメータをすべて包含することが指摘されるべきである。特に明記しない限り、すべての数字は、室温(RT)=23±2℃におよび標準圧力=1バールに基づくものである。
【0034】
さらに、明確にするために、組成物は、好ましい実施形態では、成分a)、b)、c)およびd)の混合物であってよく、加工操作を用いて、好ましくは少なくとも1つの混合または混練装置を用いてこれらの混合物から製造することができる熱可塑性成形組成物であってよく、これらから次にとりわけ押出または射出成形によって製造することができる製品であってもよいことが指摘されるべきである。
【0035】
本発明の組成物は、少なくとも1つの混合装置で反応剤としてさらに利用するために、成分a)、b)、c)およびd)を混合することによって配合される。これは、中間体としての、本発明の組成物をベースとする成形組成物を与える。これらの成形組成物−熱可塑性成形組成物とも言われる−は、成分a)、b)、c)およびd)のみからなっているか、あるいは成分a)、b)、c)およびd)に加えてさらなる成分を含有するかのどちらかである。後者の場合、成分a)、b)、c)およびd)の少なくとも1つの量は、重量百分率すべての合計が常に100であるように明記された範囲の領域内で変わるべきである。
【0036】
熱可塑性成形組成物およびそれらから製造することができる製品の場合、その中の本発明の組成物の割合は好ましくは、50重量%〜100重量%の範囲、好ましくは90重量%から100重量%の範囲にあり、さらなる成分または他の構成要素は、製品のその後の用途に従って当業者によって、好ましくは本明細書で以下に定義される成分e)〜h)の少なくとも1つから選択される添加剤である。
【0037】
特に明記しない限り、本明細書で述べる半結晶性熱可塑性樹脂について与えるすべての融点の値は、ISO 3146に従った毛細管および偏光顕微鏡法に、または走査示差熱量測定(DSC)よる測定に基づくものであり、記述する代替法の1つが実行される必要がある。DSCによる融点の測定はこの場合には、Mettler DSC822e機器で達成される。20℃/分の加熱速度で、融点は、一次加熱操作のピークとして読み取られ、この機器は、それが25℃〜360℃の温度範囲をざっと調べるようにプログラムされる。当業者は、記述した方法を承知しており;ここでは、とりわけ、http://amozeshi.aliexirs.ir/Kunststoff−Lexikon.htmlを参照する。
【0038】
成分a)
成分a)として使用される、PA66[CAS No.32131−17−2]は、半結晶性ポリアミドであり、ヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸とから製造される。それは、水の脱離がある重縮合によって形成され、260℃の融点を有する。本発明との関連でのポリアミドの命名は、国際標準に一致し、最初の数は、出発ジアミン中の炭素原子の数を、最後の数は、ジカルボン酸中の炭素原子の数を示す。たった1つの数が述べられる場合には、これは、出発原料がα,ω−アミノカルボン酸かまたはそれから誘導されるラクタムであったことを意味する;さらなる情報については、H.Domininghaus,Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften[The Polymers and Their Properties],pages 272ff.(以下のページ),VDI−Verlag,1976について言及される。独国特許出願公開第10 2011 084 519 A1号明細書によれば、結晶性ポリアミドは、二次加熱操作および溶融ピークの積分でISO 11357によるDSC法によって測定される、25J/g超の融解エンタルピーを有する。これはそれらを、二次加熱操作および溶融ピークの積分でISO 11357によるDSC法によって測定される、4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを有する半結晶性ポリアミドと、および二次加熱操作および溶融ピークの積分でISO 11357によるDSC法によって測定される、4J/g未満の融解エンタルピーを有する非晶質ポリアミドと区別する。本発明に従って成分a)として使用するための半結晶性PA66は、たとえば、Lanxess Deutschland GmbH,Cologne,GermanyからDurethan(登録商標)A30名称で入手することができる。明確にするために、本発明に従って使用するためのPA66は、PA66とは異なるモノマー成分を有するコポリマーではないことが指摘されるべきである。
【0039】
成分b)
成分b)として、テトラメチレンジアミンとアジピン酸とから得ることができる、ナイロン−4,6(PA46)が使用される[CAS No.50327−22−5]。PA46は、とりわけ、Stanyl(登録商標)名称で、DSM Engineering Plastics,Sittard,the Netherlandsから入手することができる。明確にするために、本発明に従って使用するためのPA46は、PA46とは異なるモノマー成分を有するコポリマーではないことが指摘されるべきである。
【0040】
好ましい半芳香族コポリアミドは、トリアミン含有量が0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満であるもの(欧州特許出願公開第A号明細書を参照されたい)、とりわけPA 6T/6およびPA 6T/66であることが分かった。高い熱安定性のさらなるポリアミドは、欧州特許出願公開第A 19 94 075号明細書から公知である。低いトリアミン含有量を有する好ましい半芳香族コポリアミドは、欧州特許出願公開第A 129 195号明細書および欧州特許出願公開第A 129 196号明細書に記載されている方法によって製造することができる。本発明に従って特に好ましくは使用することができる270℃〜330℃の範囲の融点を有するテレフタル酸とのコポリアミドはPA 6T/6であり、それは、たとえば、BASF SE,Ludwigshafen,GermanyからUltramid(登録商標)T名称で入手可能である(BASF SEからのUltramid(登録商標)(PA)主パンフレット、2013年8月をまた参照されたい)。PA 6T/6は、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸およびカプロラクタムから製造され、295℃の融点を有する。さらに、PA6T/66、PA6T/6IまたはPA6T/6I/66を特に好ましくは使用することができる。
【0041】
成分c)
本発明に従って成分c)として使用するためのガラス繊維は、好ましくは7〜18μmの範囲、より好ましくは9〜15μmの範囲の繊維径を有し、連続繊維の形態で、あるいは刻まれたもしくは細砕されたガラス繊維の形態で添加される。本繊維は好ましくは、好適なスリップシステムおよび、より好ましくはシランをベースとする、接着促進剤または接着促進剤システムで改質される。
【0042】
前処理用の、非常に特に好ましいシランベース接着促進剤は、一般式(I):
(X−(CH−Si−(O−C2r+14−k (I)
(式中、置換基は次の通り定義される:
X:NH−、HO−、
【化1】
q:2〜10、好ましくは3〜4の整数、
r:1〜5、好ましくは1〜2の整数、
k:1〜3、好ましくは1の整数)
のシラン化合物である。
【0043】
とりわけ好ましい接着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、およびX置換基としてグリシジル基を含有する相当するシランの群からのシラン化合物である。
【0044】
ガラス繊維の改質のために、シラン化合物は、表面コーティング向けガラス繊維を基準として、好ましくは0.05重量%〜2重量%、より好ましくは0.25重量%〜1.5重量%、とりわけ0.5重量%〜1重量%の量で使用される。
【0045】
ガラス繊維は、成形組成物またはそれから製造される製品を与えるための加工の結果として、元々使用されたガラス繊維よりも低いd97またはd50値を成形組成物でまたは製品で有する。ガラス繊維は、成形組成物を与えるためのまたは成形体を与えるための加工の結果として、元々使用されたよりも短い長さ分布を成形組成物でまたは成形体で有する。
【0046】
成分d)
成分d)として、少なくとも1つの熱安定剤が使用される。好ましくは選択することができる熱安定剤は、フェノール構造を有し、かつ、少なくとも1つ立体的に嵩高い基をフェノール環上に有する化合物である、立体障害のあるフェノールの群から選択される。本発明との関連で立体的に嵩高い基は好ましくは、第三ブチル基、イソプロピル基、および立体的に嵩高い基で置換されたアリール基である。本発明との関連で立体的に嵩高い基は、とりわけ第三ブチル基である。特に好ましい熱安定剤は、式(II):
【化2】
(式中、RおよびRはそれぞれ、アルキル基、置換アルキル基または置換トリアゾール基であり、ここで、RおよびR基は同じまたは異なるものであってもよく、Rは、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基または置換アミノ基である)
の少なくとも1つの構造を含有する立体障害のあるフェノールである。式(II)の非常に特に好ましい熱安定剤は、その内容が本出願によって完全に包含される、たとえば、独国特許出願公開第A 27 02 661号明細書(米国特許第4,360,617号明細書)に、酸化防止剤として記載されている。好ましい立体障害のあるフェノールのさらなる群は、置換ベンゼンカルボン酸から、とりわけ置換ベンセンプロピオン酸から誘導される。このクラスからの特に好ましい化合物は、式(III):
【化3】
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、それら自体置換されていてもよいC〜Cアルキル基であり、これらの少なくとも1つは立体的に嵩高い基であり、Rは、主鎖中にC−O結合をまた有してもよい、1〜10個の炭素原子を有する二価脂肪族基である)
の化合物である。式(III)の化合物の例は、式(IV)、(V)および(VI)の化合物である。
【化4】
(IV)(BASF SE製のIrganox(登録商標)245)
【化5】
(V)(BASF SE製のIrganox(登録商標)259)
【化6】
(VI)(BASF SE製のIrganox(登録商標)1098)
【0047】
非常に特に好ましい熱安定剤は、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オク−4−チルメチル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリルチオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミンの群から選択される。
【0048】
とりわけ好ましい熱安定剤は、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox(登録商標)1098)、ならびにBASF SE,Ludwigshafen,Germany製の上記Irganox(登録商標)245の群から選択される。
【0049】
BASF SE,Ludwigshafen,GermanyからIrganox(登録商標)1098として入手可能な、N,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド[CAS No.23128−74−7]を熱安定剤として使用することが本発明に従って非常に特に好ましい。
【0050】
成分e)
好ましい実施形態では、本発明は、成分a)、b)、c)およびd)に加えて、
e)0.01重量〜5重量%、好ましくは0.5重量〜3重量%、より好ましくは1重量〜2重量%の、ジペンタエリスリトール[CAS No.126−58−9]および/またはトリペンタエリスリトール[CAS No.78−24−0]
を含み、その場合に成分a)、b)、c)およびd)の少なくとも1つの量は、重量百分率すべての合計が100であるような程度まで減らされる組成物に関する。
【0051】
成分f)
好ましい実施形態では、本発明は、成分a)〜e)に加えてまたは成分e)の代わりに、
f)1重量〜55重量%、好ましくは2重量〜30重量%、より好ましくは5重量〜20重量%の、少なくとも1つの難燃剤
を含み、その場合に成分a)、b)、c)およびd)、ならびに適切な場合e)の少なくとも1つの量は、重量百分率すべての合計が常に100であるような程度まで減らされる組成物に関する。
【0052】
好ましい難燃剤は、個別にまたは互いに混合物で使用される、相乗剤ありの市販の有機ハロゲン化合物、または市販の有機窒素化合物もしくは有機/無機リン化合物である。水酸化マグネシウムまたは炭酸カルシウムマグネシウム水和物などの鉱物難燃性添加剤を使用することも可能である(たとえば独国特許出願公開第A 4 236 122号明細書)。ハロゲン化、とりわけ臭素化および塩素化化合物には好ましくは、エチレン−1,2−ビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリスチレンおよび臭素化ポリフェニレンエーテルが挙げられる。好適なリン化合物には、国際公開第A 98/17720号パンフレット(=米国特許第6,538,024号明細書)によるリン化合物、好ましくは赤リン、金属ホスフィネート、とりわけホスフィン酸アルミニウムもしくはホスフィン酸亜鉛、金属ホスホネート、とりわけホスホン酸アルミニウム、ホスホン酸カルシウムもしくはホスホン酸亜鉛、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン 10−オキシドの誘導体(DOPO誘導体)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オリゴマーを含む、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、およびオリゴマーを含むビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、そしてまた亜鉛ビス(ジエチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンポリ(アルミニウムホスフェート)、メラミンポリ(亜鉛ホスフェート)またはフェノキシホスファゼンオリゴマーならびにそれらの混合物が挙げられる。有用な窒素化合物にはとりわけ、メラミンまたはメラミンシアヌレート、CAS No.1078142−02−5のようなトリクロロトリアジン、ピペラジンおよびモルホリンの反応生成物(たとえばMCA Technologies GmbH,Biel−Benken,Switzerland製のMCA PPM Triazine HF)が挙げられる。好適な相乗剤は好ましくは、アンチモン化合物、とりわけ三酸化アンチモンもしくは五酸化アンチモン、亜鉛化合物、スズ化合物、とりわけスズ酸亜鉛、またはホウ酸塩、とりわけホウ酸亜鉛である。
【0053】
カーボンフォーマーと呼ばれるものおよびテトラフルオロエチレンポリマーを難燃剤に添加することもまた可能である。
【0054】
ハロゲン化難燃剤のうち、とりわけ好ましくは、相乗剤としての三酸化アンチモンおよび/またはスズ酸亜鉛と組み合わせて、臭素化ポリスチレン、たとえばFiremaster(登録商標)PBS64(Great Lakes,West Lafayette,USA)または臭素化フェニレンエーテルを使用することが特に好ましい。ハロゲンを含まない難燃剤のうち、メラミンポリホスフェート(たとえばBASF SE,Ludwigshafen,Germany製のMelapur(登録商標)200/70)と組み合わせたアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)、および、ホスホン酸アルミニウムおよび/もしくはホスホン酸アルミニウム水和物と組み合わせたホウ酸亜鉛(たとえばRioTinto Minerals,Greenwood Village,USA製のFirebrake(登録商標)500もしくはFirebrake(登録商標)ZB)またはアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)を使用することが特に好ましい。
【0055】
難燃剤として、メラミンポリホスフェート(Melapur(登録商標)200/70)[CAS No.218768−84−4]および/またはホウ酸亜鉛(Firebrake(登録商標)500)[CAS No.1332−07−6]と組み合わせたアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)(たとえばClariant International Ltd.,Muttenz,Switzerland製のExolit(登録商標)OP1230)(CAS No.225789−38−8)を使用することが非常にとりわけ特に好ましい。
【0056】
成分g)
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、成分a)〜f)に加えてまたは成分e)および/もしくはf)の代わりに、
g)0.01重量〜10重量%、好ましくは0.1重量〜7重量%、より好ましくは0.5重量〜5重量%の、ビスフェノールジグリシジルエーテル、エポキシ−クレゾールノボラックまたはエポキシ−フェノールノボラックの群からの少なくとも1つの鎖延長添加剤
を含み、その場合に成分a)、b)、c)、d)および、適切な場合、e)および/もしくはf)の少なくとも1つの量は、重量百分率すべての合計が100であるような程度まで減らされる。
【0057】
エポキシ−フェノールノボラックまたはエポキシ−クレゾールノボラックは、それぞれ、フェノールおよびクレゾールとホルムアルデヒドとの縮合生成物およびその後のエピクロロヒドリンとの反応生成物として得ることができる。一例は、Huntsman,Everberg,Belgium製のAraldite(登録商標)ECN 1280−1である。
【0058】
ビスフェノールジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。これらは、ビスフェノール誘導体とエピクロロヒドリンとの反応によって得ることができる。好ましいビスフェノール成分は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)およびビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン(ビスフェノールF)であり、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0059】
60℃よりも上の軟化点を有する固体ビスフェノールAジグリシジルエーテル[CAS No.1675−54−3]、たとえば、Huntsman,Everberg,Belgium製のAraldite(登録商標)GT7071が非常に特に好ましい。
【0060】
成分h)
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、成分a)〜g)に加えてまたは成分e)および/もしくはf)および/もしくはg)の代わりに、
h)0.01重量〜20重量%、好ましくは0.01重量〜10重量%、より好ましくは0.01重量〜5重量%の、成分c)〜g)以外の少なくとも1つの添加剤
を含み、その場合に成分a)、b)、c)、d)および、適切な場合、e)および/もしくはf)および/もしくはg)の少なくとも1つの量は、重量百分率すべての合計が100であるような程度まで減らされる。
【0061】
成分h)のための慣習的な添加剤は好ましくは、
成分d)以外の安定剤、離型剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、帯電防止剤、流動助剤、難燃剤、エラストマー改質剤、防災添加剤、乳化剤、核形成剤、酸捕捉剤、可塑剤、滑剤、染料または顔料である。これらのおよびさらなる好適な添加剤は、たとえばGaechter,Mueller,Kunststoff−Additive[Plastics Additives],3rd edition,Hanser−Verlag,Munich,Vienna,1989に、およびthe Plastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser−Verlag,Munich,2001に記載されている。添加剤は、単独でもしくは混合物で、またはマスターバッチの形態で使用することができる。
【0062】
使用される安定剤は好ましくは、立体障害のあるフェノール、ヒドロキノン類、ジフェニルアミン類などの芳香族第二級アミン、置換レゾルシノール、サリチレート類、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノン類、ならびにまたこれらの群の様々に置換された代表物またはそれらの混合物である。
【0063】
好ましい離型剤は、エステルワックス、ペンタエリスリチルテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のアミド誘導体またはモンタンワックス、および低分子量ポリエチレンもしくはポリプロピレンワックスまたはエチレンホモポリマーワックスの群から選択される。
【0064】
好ましい長鎖脂肪酸は、ステアリン酸またはベヘン酸である。好ましい長鎖脂肪酸の塩は、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛である。好ましい長鎖脂肪酸のアミド誘導体は、エチレンビスステアリルアミド[CAS No.110−30−5]である。好ましいモンタンワックスは、28〜32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖の飽和カルボン酸の混合物である。
【0065】
使用される顔料または染料は好ましくは、硫化亜鉛、二酸化チタン、群青、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン類、キナクリドン類、ペリレン類、ニグロシンおよびアントラキノン類であってもよい。顔料として好ましくは使用することができる、二酸化チタンは好ましくは、90nm〜2000nmの範囲の中央粒径を有する。本発明に従って好ましい顔料として使用するための二酸化チタン用の有用な二酸化チタン顔料には、そのベース構造がサルフェート(SP)またはクロリド(CP)法によって製造することができ、そしてアナターゼおよび/またはルチル構造、好ましくはルチル構造を有するものが挙げられる。ベース構造は、安定化される必要がないが、特有の安定化:CPベース構造の場合には、0.3重量%〜3.0重量%(Alとして計算される)のAlドーピングおよび少なくとも2%の二酸化チタンへの四塩化チタンの酸化で気相中に過剰の酸素による;SPベース構造の場合には、たとえばAl、Sb、NbまたはZnでの、ドーピングによる安定化が好ましい。より好ましくは、本発明の組成物から製造される製品の十分に高い輝度を得るために、Al、またはより高い量のAlドーパントの場合にはアンチモンでの埋め合わせでの「光」安定化が好ましい。ペイントおよびコーティング、プラスチックなどでの白色顔料としての二酸化チタンの使用の場合に、UV吸収によって引き起こされる望ましくない光触媒反応が顔料入り材料の破壊をもたらすことが知られている。これは、非常に反応性が高いフリー基を二酸化チタン表面上に生成する、電子−正孔ペアを形成する、二酸化チタン顔料による近紫外範囲の光の吸収を含む。形成されたフリー基は、有機媒体でのバインダー劣化をもたらす。本発明に従って、より好ましくはSiおよび/もしくはAlの酸化物での、その無機後処理によって、ならびに/またはSn化合物の使用によって二酸化チタンの光活性を低下させることが好ましい。
【0066】
好ましくは、顔料の二酸化チタンの表面は、化合物SiOおよび/またはAlおよび/または酸化ジルコニウムの非晶質の沈澱酸化物水和物で覆われる。Alシェルは、ポリマーマトリックスでの顔料分散を容易にし;SiOシェルは、電荷が顔料表面で交換されることを困難にし、それ故にポリマー劣化を防止する。
【0067】
本発明によれば、二酸化チタンは好ましくは、親水性および/または疎水性有機コーティングを、とりわけシロキサンまたはポリアルコールを提供されている。
【0068】
本発明に従って成分h)として特に好ましくは顔料として使用することができる二酸化チタン[CAS No.13463−67−7]は好ましくは、90nm〜2000nmの範囲の、好ましくは200nm〜800nmの範囲の中央粒径を有する。
【0069】
商業的に入手可能な製品は、たとえば、Kronos,Dallas,USA製のKronos(登録商標)2230、Kronos(登録商標)2225およびKronos(登録商標)vlp7000である。
【0070】
使用される核形成剤は好ましくは、タルク、フェニルホスフィン酸ナトリウムもしくはフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素であり、タルク[CAS No.14807−96−6]、とりわけ微結晶タルクが特に好ましい。タルクは、多形体によれば、三斜晶系結晶系でタルク−1Aとしてまたは単斜晶系結晶系でタルク−2Mとして結晶化している、化学組成Mg[Si10(OH)]を有する層状シリケートである(http://de.wikipedia.org/wiki/Talkum)。本発明に従って使用するためのタルクは、たとえば、Imerys Talc Group,Toulouse,France(Rio Tinto Group)からMistron(登録商標)R10として購入することができる。
【0071】
使用される酸捕捉剤は好ましくは、ハイドロタルサイト、チョーク、ベーマイトまたはスズ酸亜鉛である。
【0072】
使用される可塑剤は好ましくは、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素オイルまたはN−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0073】
エラストマー改質剤として使用される添加剤は好ましくは、
E.1 5重量%〜95重量%、好ましくは30重量%〜90重量%の、少なくとも1つのビニルモノマー
E.2 95重量%〜5重量%、好ましくは70重量%〜10重量%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−20℃未満のガラス遷移温度を有する1つ以上のグラフトベース
の1つ以上のグラフトポリマーEである。
【0074】
グラフトベースE.2は一般に、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜1μmの中央粒径(d50)を有する。
【0075】
モノマーE.1は好ましくは、
E.1.1 50重量%〜99重量%のビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(たとえばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(C〜C)アルキルメタクリレート(たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)ならびに
E.1.2 1重量%〜50重量%のビニルシアニド(アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル)および/または(C〜C)アルキル(メタ)アクリレート(たとえばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(酸無水物およびイミドなどの)(たとえば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)
の混合物である。
【0076】
好ましいモノマーE.1.1は、モノマー類スチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択され;好ましいモノマーE.1.2は、モノマー類アセトニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
【0077】
特に好ましいモノマーは、E.1.1 スチレンおよびE.1.2 アクリロニトリルである。
【0078】
エラストマー改質剤での使用のためのグラフトポリマーに好適なグラフトベースE.2は、たとえば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレンをベースとするもの、ならびに任意選択的にジエン、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/酢酸ビニルゴムである。
【0079】
好ましいグラフトベースE.2は、ジエンゴム(たとえばブタジエン、イソプレンなどをベースとする)もしくはジエンゴムの混合物またはジエンゴムのコポリマーもしくはそれとさらなる共重合性モノマー(たとえばE.1.1およびE.1.2の通り)との混合物である、ただし、成分E.2のガラス遷移温度は10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−10℃未満よりも下である。
【0080】
特に好ましいグラフトベースE.2は、純ポリブタジエンゴムである。
【0081】
特に好ましいポリマーEは、たとえば、独国特許出願公開第A 2 035 390号明細書(=米国特許第3,644,574号明細書)にもしくは独国特許出願公開第A 2 248 242号明細書(=英国特許出願公開第A 1 409 275号明細書)にまたはUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie[Encyclopedia of Industrial Chemistry],vol.19(1980),p.280以下のページに記載されているような、ABSポリマー(乳化、バルクおよび懸濁ABS)である。グラフトベースE.2のゲル含有量は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%である(トルエン中で測定される)。ABSは、CAS No.9003−56−9のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーを意味し、3つの異なるモノマータイプ アクリロニトリル、1,3−ブタジエンおよびスチレンから形成される合成ターポリマーである。それは、非晶質の熱可塑性樹脂の1つである。その比率は、15〜35%アクリロニトリル、5〜30%ブタジエンおよび40〜60%スチレンで変動してもよい。
【0082】
エラストマー改質剤またはグラフトコポリマーEは、フリー基重合によって、たとえば、乳化、懸濁、溶液またはバルク重合によって、好ましくは乳化またはバルク重合によって製造される。
【0083】
特に好適なグラフトゴムはまた、米国特許第4,937,285号明細書による有機ヒドロペルオキシドおよびアスコルビン酸からなる開始剤システムでのレドックス開始によって製造される、ABSポリマーである。
【0084】
周知であるように、グラフトモノマーは、グラフト反応でグラフトベース上へ必ずしも完全にはグラフトされないので、本発明によれば、グラフトポリマーEは、グラフトベースの存在下でのグラフトモノマーの(共)重合によって得られる、そして同様にワークアップで生じるそれらの生成物を意味するとまた理解される。
【0085】
好適なアクリレートゴムは、E.2を基準として、任意選択的に40重量%以下の、他の重合性の、エチレン系不飽和モノマー入りの、好ましくはアルキルアクリレートのポリマーである、グラフトベースE.2をベースとしている。好ましい重合性アクリルエステルには、C〜Cアルキルエステル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜Cアルキルエステル、とりわけ好ましくはクロロエチルアクリレート、ならびにこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0086】
架橋するために、2つ以上の重合性の二重結合を有するモノマーを共重合させることが可能である。架橋モノマーの好ましい例は、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と3〜12個の炭素原子を有する不飽和の一価アルコールとの、または2〜4つのOH基を有する、そして2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、たとえばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;ポリ不飽和複素環化合物、たとえばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;ジ−およびトリビニルベンゼンなどの、多官能性ビニル化合物、しかしまたトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0087】
好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン系不飽和基を有する複素環化合物である。
【0088】
特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマー類トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋したモノマーの量は、グラフトベースE.2を基準として、好ましくは0.02重量%〜5重量%、とりわけ0.05重量%〜2重量%である。
【0089】
少なくとも3つのエチレン系不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合には、その量をグラフトベースE.2の1重量%よりも下に制限することが有利である。
【0090】
アクリルエステルと一緒に、グラフトベースE.2の製造のために任意選択的に役に立ち得る好ましい「他の」重合性の、エチレン系不飽和モノマーは、たとえば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜Cアルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベースE.2としての好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含有量を有する乳化ポリマーである。
【0091】
E.2によるさらなる好適なグラフトベースは、独国特許出願公開第A 3 704 657号明細書(=米国特許第4,859,740号明細書)、独国特許出願公開第A 3 704 655号明細書(=米国特許第4,861,831号明細書)、独国特許出願公開第A 3 631 540号明細書(=米国特許第4,806,593号明細書)および独国特許出願公開第A 3 631 539号明細書(=米国特許第4,812,515号明細書)に記載されているように、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムである。
【0092】
成分c)に関係なく、追加の充填剤および/または強化剤が、本発明の組成物中に添加剤として存在してもよい。
【0093】
とりわけタルク、雲母、シリケート、石英、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズをベースとする2つ以上の異なる充填剤および/もしくは強化剤、ならびに/または炭素繊維をベースとする繊維状充填剤および/もしくは強化剤の混合物を使用することもまた好ましい。雲母、シリケート、石英、ウォラストナイト、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石または硫酸バリウムをベースとする鉱物粒状充填剤を使用することが好ましい。ウォラストナイトまたはカオリンをベースとする鉱物粒状充填剤を使用することが本発明に従って特に好ましい。
【0094】
針状鉱物充填剤を添加剤として使用することもまたさらに特に好ましい。針状鉱物充填剤は、高度に顕著な針状性の鉱物充填剤を意味すると本発明に従って理解される。一例は針状ウォラストナイトである。この鉱物は、好ましくは2:1〜35:1の、より好ましくは3:1〜19:1の、最も好ましくは4:1〜12:1の長さ:直径比を有する。本発明の針状鉱物の中央粒径は、CILAS GRANULOMETERで測定される、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、とりわけ好ましくは10μm未満である。
【0095】
成分c)について上に既に記載されたように、好ましい使用形態では、充填剤および/または強化剤は、とりわけ好ましくはシランをベースとする、接着促進剤または接着促進剤システムでより好ましくは、表面改質されていてもよい。しかし、この前処理は絶対に必要であるわけではない。
【0096】
添加剤として使用するための充填剤の改質のために、シラン化合物は一般に、表面コーティング向け鉱物充填剤を基準として、0.05重量%〜2重量%、好ましくは0.25重量%〜1.5重量%、とりわけ0.5重量%〜1重量%の量で使用される。
【0097】
添加剤h)として追加使用するための粒状充填剤は、成形組成物または成形体を与えるための加工の結果として、元々使用されたよりも低いd97またはd50値を成形組成物でまたは成形体で有することもまた可能である。
【0098】
好ましい実施形態では、本発明は、PA66およびPA46、ならびにまたガラス繊維および式(II):
【化7】
(式中、RおよびRはそれぞれ、アルキル基、置換アルキル基または置換トリアゾール基であり、ここで、RおよびR基は同じまたは異なるものであってもよく、Rは、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基または置換アミノ基である)
の立体障害のあるフェノールの群から選択される少なくとも1つの熱安定剤、好ましくは2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オク−4−チルメチル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリルチオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミンの群から選択される少なくとも1つの熱安定剤、より好ましくは2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox(登録商標)1098)の群、とりわけN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミドから選択される少なくとも1つの熱安定剤を含む組成物に関する。
【0099】
好ましい実施形態では、本発明は、PA66およびPA6T/6、ならびにまたガラス繊維および式(II):
【化8】
(式中、RおよびRはそれぞれ、アルキル基、置換アルキル基または置換トリアゾール基であり、ここで、RおよびR基は同じまたは異なるものであってもよく、Rは、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基または置換アミノ基である)
の立体障害のあるフェノールの群から選択される少なくとも1つの熱安定剤、好ましくは2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オク−4−チルメチル 3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリルチオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミンの群から選択される少なくとも1つの熱安定剤、より好ましくは2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox(登録商標)1098)の群、とりわけN,N’−ヘキサメチレンビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミドから選択される少なくとも1つの熱安定剤を含む組成物に関する。
【0100】
使用
本発明はまた、短期間熱変形に耐性がある製品、好ましくは電気および電子アセンブリおよび部品、とりわけ好ましくは光電子製品の製造のための、成形組成物の形態での本発明の組成物の使用に関する。
【0101】
プロセス
射出成形用にまたは押出用に本発明に従って使用するための成形組成物は、本発明の組成物の個々の成分を混合し、それらを排出させて押出物を形成し、押出物をそれがペレット化できるまで冷却し、そしてそれをペレット化することによって得られる。
【0102】
メルトで260℃〜295℃の範囲の温度で混合することが好ましい。とりわけ好ましくは、二軸押出機がこの目的のために用いられる。
【0103】
好ましい実施形態では、本発明の組成物を含むペレットは、製品を製造するという目的のための射出成形操作または押出プロセスにかけられる前に、約2〜6時間ドライエア乾燥機または真空乾燥キャビネット中で80℃で乾燥させられる。
【0104】
本発明はまた、マトリックス材料が、射出成形または押出によって、好ましくは射出成形によって本発明の組成物を含む成形組成物として得られる、電気または電子産業用の、製品、好ましくは短期間熱変形に耐性がある製品、より好ましくは電子または電気アセンブリおよび部品の製造方法に関する。
【0105】
本発明はまた、成形組成物の形態での発明組成物が射出成形または押出によって加工されることを特徴とする、ポリアミドベース製品の短期間の耐熱変形性の改善方法に関する。
【0106】
熱可塑性成形組成物の射出成形および押出のプロセスは当業者に公知である。
【0107】
押出または射出成形によって製品を製造するための発明方法は、260℃〜330℃の範囲の、好ましくは265℃〜300℃の範囲の、より好ましくは275℃〜295℃の範囲の溶融温度で、および任意選択的に2500バール以下の圧力で、好ましくは2000バール以下の圧力で、より好ましくは1500バール以下の圧力で、最も好ましくは750バール以下の圧力で作動する。
【0108】
連続共押出は、2つの異なる材料を交互の順番に引き続いて吐出することを含む。このようにして、押出方向に区分ごとに異なる材料組成を有するプレフォームが形成される。たとえばソフトエンドおよびハード中間区分または統合ソフト蛇腹領域を持った物品向けに、適切な材料選択によって特異的に必要な特性を特定の物品区分に提供することが可能である(Thielen,Hartwig,Gust,「Blasformen von Kunststoffhohlkoerpern」[Blow−Moulding of Hollow Plastics Bodies],Carl Hanser Verlag,Munich 2006,pages 127−129)。
【0109】
射出成形のプロセスは、加熱された円筒空洞中での、好ましくはペレット形態での、原材料の溶融(可塑化)、および温度調節された空洞中への圧力下での射出成形材料としてのその射出を特色とする。材料の冷却(固化)後に、射出成形物は離型される。
【0110】
次の段階に分類される。
1.可塑化/溶融
2.射出段階(充填操作)
3.保持圧力段階(結晶化の過程での熱収縮のせいで)
4.離型。
【0111】
射出成形機は、クロージャユニット、射出ユニット、駆動および制御システムからなる。クロージャユニットは、金型用の固定盤および可動盤、エンド圧盤、ならびにタイバーおよび可動定盤用の駆動部を含む(トグルジョイントまたは油圧式クロージャユニット)。
【0112】
射出ユニットは、電気加熱可能なバレル、スクリュー用の駆動部(モーター、ギアボックス)ならびにスクリューおよび射出ユニットを動かすための油圧部を含む。射出ユニットの役割は、粉末またはペレットを溶融させること、それらを計量供給すること、それらを射出することおよび保持圧力を維持すること(収縮のせいで)である。メルトがスクリュー内で逆流する(漏れ流れ)という問題は、逆止め弁によって解決される。
【0113】
射出金型において、入ってくるメルトは次に分離され、冷却され、それ故に製造されるべき製品が製造される。金型の2つの半分は常にこの目的のために必要とされる。射出成形では、次の機能システムに分類される。
− ランナーシステム
− 成形インサート
− ガス抜き
− 機械ケーシングおよびフォース吸収装置
− 離型システムおよび移動伝送
− 温度調節。
【0114】
射出成形とは対照的に、押出は、連続成形ポリマー押出物、ここではポリアミドを押出機で使用し、押出機は成形された熱可塑性樹脂を製造するための機械である。単軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機、ならびにまた従来型単軸スクリュー押出機のそれぞれのサブグループ、搬送単軸スクリュー押出機、逆回転二軸スクリュー押出機および共回転二軸スクリュー押出機が区別される。
【0115】
押出システムは、押出機、金型、下流装置、押出ブロー金型からなる。異形材の製造用の押出システムは、押出機、異形材金型、キャリブレーション、冷却域、キャタピラー引き取りおよびロール引き取り、分離デバイスならびに角度調節可能な傾斜台からなる。
【0116】
本発明はその結果としてまた、製品に、とりわけ、本発明の組成物から得られる成形組成物の押出、好ましくは異形材押出、または射出成形によって得られる、短期間熱変形に耐性がある製品に関する。
【0117】
本発明はまた、PA66が、射出成形操作でまたは押出を用いて、ナイロン−4,6のまたは270℃〜330℃の範囲の融点を有するテレフタル酸との半芳香族コポリアミドの群からの少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドを含む組成物と組み合わせて成形組成物を与えるために加工されることを特徴とする、短期間熱変形に耐性がある製品の製造方法に関する。
【0118】
本発明はまた、ナイロン−4,6と組み合わせてPA66を含む組成物が、射出成形操作でまたは押出を用いてかけられる成形配合物になるために加工されることを特徴とする、短期間熱変形に耐性がある製品の製造方法に関する。
【0119】
本発明は好ましくは、
重量百分率すべての合計が常に100である、
a)15重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%の、ナイロン−6,6と、
b)3重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の、ナイロン−4,6および/またはモノマー単位としてテレフタル酸を含有する、そして270℃〜330℃の範囲の融点を有する半芳香族コポリアミドの群からの少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドであって、組成物中に存在する熱可塑性ポリマーすべての合計を基準とする、成分b)または複数成分b)の割合が、5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜30重量%、より好ましくは15重量%〜25重量%である熱可塑性ポリアミドと、
c)5重量%〜70重量%、好ましくは10重量%〜45重量%、より好ましくは15重量%〜35重量%の、ガラス繊維と、
d)0.01重量%〜3重量%、好ましくは0.05重量%〜1.5重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.8重量%の、少なくとも1つの熱安定剤と
を含む組成物が成形組成物を与えるために加工され、これらが射出成形操作にまたは押出操作にかけられることを特徴とする、短期間熱変形に耐性がある製品の製造方法に関する。
【0120】
本発明は好ましくは、
重量百分率すべての合計が常に100である、
a)15重量%〜91.99重量%、好ましくは20重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%の、ナイロン−6,6と、
b)3重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の、ナイロン−4,6と、
c)5重量%〜70重量%、好ましくは10重量%〜45重量%、より好ましくは15重量%〜35重量%の、ガラス繊維と、
d)0.01重量%〜3重量%、好ましくは0.05重量%〜1.5重量%、より好ましくは0.1重量%〜0.8重量%の、少なくとも1つの熱安定剤と
を含む組成物が成形組成物を与えるために加工され、これらが射出成形操作にまたは押出操作にかけられることを特徴とする、短期間熱変形に耐性がある製品の製造方法に関する。
【0121】
述べられた方法によって得られる製品は意外にも、とりわけはんだ付け操作で、優れた短期間の耐熱変形性と、機械的特性の最適化特性とを示す。射出成形および押出用の本発明の組成物から製造することができる成形組成物はさらに、先行技術と比べて良好な加工性を特色とする。
【0122】
本発明はまた、製品の、好ましくは電気または電子産業向け製品の、とりわけ光電子製品の短期間の耐熱変形性を高めるための本発明の組成物の使用に関する。
【0123】
このようにして製造される製品はそれ故、電気または電子製品、とりわけ、回路基板に適用される電子部品、たとえば巻型用のハウジング、トランジスタ、スイッチおよびプラグコネクタへの、しかしまた光電子製品、とりわけLEDまたはOLEDへの優れた適合性のものである。発光ダイオード(ルミネセンスダイオードとも呼ばれる、LED)は、電子半導体部品である。電流が順方向にダイオードを通って流れる場合に、それは、光、赤外放射線(赤外発光ダイオードの形態で)あるいは半導体材料およびドーピングに依存した波長の紫外放射線を発する。有機発光ダイオード(OLED)は、電流密度および輝度がより低く、そして単結晶材料が必要とされないという点において無機発光ダイオード(LED)とは異なる、有機半導体材料からなる薄膜発光部品である。従来型(無機)発光ダイオードと比べて、有機発光ダイオードはそれ故、製造するために費用がよりかからないが、それらの寿命は現在のところ、従来型発光ダイオードよりも短い。
【実施例】
【0124】
本発明に従って記載される組成物を製造するために、個々の成分を、溶融状態で275℃〜295℃の温度で二軸押出機(Coperion Werner&Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製のZSK 26 Mega Compounder)で混合し、押出物として排出させ、この押出物をペレット化できるまで冷却し、ペレット化した。さらなる工程の前に、ペレット化した材料を、約2〜6時間真空乾燥キャビネット中で80℃で乾燥させた。
【0125】
表1にリストした研究用のシートおよび試験片を、280℃〜290℃の溶融温度および80〜120℃の金型温度で、従来型射出成形機で射出成形した。
【0126】
曲げ強度、曲げ弾性率およびグローワイヤ着火温度
曲げ強度(単位:MPa)についてのおよび曲げ弾性率(単位:MPa)についての試験は、ISO 178と同様に行った。グローワイヤ着火温度(GWIT)の測定は、度摂氏で報告される、IEC 60695−2−13と同様に行った。
【0127】
耐熱変形性
耐熱変形性(熱たわみ温度、HDT)(単位:℃)の試験は、1.8N/mmの曲げ応力でISO 75と同様に行った(方法A)。
【0128】
短期間の耐熱変形性
短期間の耐熱変形性または耐はんだ槽性を測定するための試験は、次の通りウェーブはんだ付けの条件をシミュレートしている。
【0129】
寸法20・13・1.5mm(長さ・幅・高さ)の試験片を、本発明の組成物をベースとする成形組成物から製造されたシートから切り取った。これらを、15分間表1に明記される温度で加熱される従来型ホットエアオーブン中へガラス板上で導入した。室温に冷却した後、試験片の形状保持を、元のサイズ比の保持率およびガラス板への粘着の程度に関して評価した。
【0130】
結果および試験結果を表1に示す。この表で:
「+」は、形状のいかなる変化もない、すなわち、より具体的には試験片のエッジおよびコーナーのいかなる丸み帯びもまったくない、そしてガラス板を90°だけ水平から垂直に傾けたときにガラス板からの試験片の脱離なしの、すなわち、試験片の粘着がまったくない試料を意味する。
【0131】
「o」は、ガラス板を90°だけ水平から垂直に傾けたときに試験片の検出できる粘着が依然としてまったくないが、わずかに丸みを帯びたエッジおよびコーナーで明示される、形状がわずかに変化した、すなわち、0.8mm以下のエッジ半径の試料を意味する。
【0132】
「−」は、試験片の高度に変形した表面ジオメトリー、より具体的には、試験片のエッジおよびコーナーの完全な、すなわち、0.8mm超のエッジ半径の丸み帯び、および/またはガラス板を90°だけ水平から垂直に傾けた後にガラス板への試験片の粘着を意味する。
【0133】
原料
成分a):PA66(Durethan(登録商標)A30 000000,Lanxess Deutschland GmbH,Cologne,Germany)
成分b):PA46(DSM Engineering Plastics,Sittard,the Netherlands製のStanyl(登録商標)TE300)
成分c):シラン化合物を含有するスリップでコートされた、10μmの直径を有するガラス繊維(CS 7967,Lanxess N.V.,Antwerp,Belgium製の市販製品)
成分d):BASF SE,Ludwigshafen,Germany製のIrganox(登録商標)1098
成分f):75%のClariant International Ltd.,Muttenz,Switzerland製のExolit(登録商標)OP1230と、20%のBASF SE,Ludwigshafen,Germany製のMelapur(登録商標)200/70と、5%のFirebrake 500(RioTinto Minerals、Greenwood Village、USA製)とからなる難燃剤組み合わせ
成分h):ポリアミドに一般に使用されるさらなる添加剤、とりわけ二酸化チタン、離型剤、とりわけエチレンビスアミドテトラステアレート、核形成剤、とりわけタルクをベースとする核形成剤。成分h)としてまとめて言われる添加剤の種類および量は、種類および量の観点で実施例および比較例について一致している。
【0134】
表1は、成分f)などの熱的敏感な難燃剤システムについて、本発明のポリアミドブレンドの場合にのみ、良好な加工性および高められた短期間の耐熱変形性の両方が成分a)の融点よりも上の温度で見いだされることを示す。これは、たとえば電子部品のように、最高285℃までのはんだ槽温度にちょっとの間曝され得る用途にとって重要な要件である。他の結果は、本発明の組成物およびそれらから製造できる製品を使用する場合の、グローワイヤ着火性の上昇およびより有利な機械的特性である。
【0135】
【表1】