特許第6506960号(P6506960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506960
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】パウダー容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20190415BHJP
   A45D 33/02 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   A45D33/00 615F
   A45D33/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-252165(P2014-252165)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-112124(P2016-112124A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 久雄
(72)【発明者】
【氏名】真部 信也
(72)【発明者】
【氏名】高島 優介
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 裕美
(72)【発明者】
【氏名】押田 梨枝子
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3051335(JP,U)
【文献】 特開2010−253244(JP,A)
【文献】 実開昭63−091214(JP,U)
【文献】 特開2011−212320(JP,A)
【文献】 特開2009−011801(JP,A)
【文献】 米国特許第7503331(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
A45D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウダーが収容されるパウダー収容用凹部と、上記凹部開口を覆うよう取り付けられパウダー通過孔が設けられた中蓋とを有する容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備えたパウダー容器であって、上記容器本体のパウダー収容用凹部内に、下記の攪拌パーツAが入れられており、容器本体を振ることにより下記の攪拌パーツAを動かして、パウダーを攪拌しながらパウダーを中蓋のパウダー通過孔から振り出すようになっていることを特徴とするパウダー容器。
(A)上記パウダー収容用凹部内を上下方向に部分的に仕切り、凹部内を上下左右に自由に動きうる略板状体であって、上記パウダー収容用凹部内を上下方向に部分的に仕切る板状部と、上記板状部から上方向に突出する複数の突出部と、上記板状部から下方向に突出する複数の突出部とを備え、少なくとも上方向に突出する各突出部は上記中蓋のパウダー通過孔に入り込まない大きさに設定されている攪拌パーツ。
【請求項2】
上記容器本体において、パウダー収容用凹部の上段に、パウダー塗布具が収容される第2の凹部が設けられており、上記パウダー収容用凹部と第2の凹部の境界に設けられた中蓋が、上記第2の凹部の底面を兼ねている請求項1記載のパウダー容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダー状の内容物を収容し、これを振り出して使用することのできるパウダー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末状や顆粒状といったパウダー状の内容物を収容し、これを振り出して使用するパウダー容器としては、例えば、ルースパウダー(粉白粉)等のパウダー状化粧料を収容した容器が知られている(特許文献1等を参照)。このようなパウダー容器の一例を図10(a)に示す。この容器は、広口の容器本体1と、その口部1aに取り付けられる凹状の中蓋2と、その上から、容器本体1の開口にねじ係合される蓋体3とを備えている。
【0003】
そして、上記中蓋2には、中身であるルースパウダーを振り出すための孔4が多数、分布形成されており、その上に、ルースパウダーを肌に塗布するためのパフ5が、孔4を塞ぐシール6を介して保持されている。なお、上記シール6は、運搬時や陳列動作時等にルースパウダーがパフ5や蓋体3の内側を汚さないよう中蓋2に貼付されるもので、使用開始時には剥がされて除去されるものである。
【0004】
このパウダー容器を使用する際には、蓋体3をあけてパフ5を取り出し、シール6を剥がしてから、再度パフ5を中蓋2に当て、図10(b)に示すように、全体を上下逆にして数回上下左右(前後方向や斜め方向も含む、以下同じ)に振ることによって、孔4内からパフ5上にルースパウダーを振り出して付着させた後、このパフ5を利用して肌にルースパウダーを塗布する。これによって化粧を施すことができる。
【0005】
しかしながら、このようなパウダー容器では、充填時当初はさらさらしていたパウダーが、振動等によって徐々に緻密な充填状態となりやすく、また容器内に湿気が入ると、パウダー同士が凝集して孔4から均等に振り出しにくくなるという問題がある。また、残り少なくなったパウダーが容器本体1の底面や側面に張り付いて振り出すことができなくなることもあり、問題となっている。さらに、バインダーが含まれるパウダー状化粧料にあっては、パウダー同士が凝集しやすいため、湿気の有無等に関わらず、均等に振り出しにくいという問題がある。
【0006】
そこで、このようなパウダー容器において、例えば、図11に示すように、容器本体1の内側に、蛇腹状の側壁が設けられた化粧料収納用ドラム7を設けてパウダー状の化粧料を収納し、このドラム7の開口を覆うようにメッシュ部材8を取り付けたものが提案されている(特許文献2を参照)。この容器によれば、前述のように、上記メッシュ部材8の上面にパフ5[図10(b)を参照]を押し当てると、ドラム7の蛇腹状の側壁が変形して内側の化粧料をほぐすので、メッシュ部材8から化粧料を振り出しやすいというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−253227号公報
【特許文献2】特許第3853952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図11に示す構成のものは、構造が複雑でコストがかかるという問題や、メッシュ部材8への力のかけ方によってはドラム7の変形に偏りが生じてパウダーの出方が偏ったものとなるという問題がある。また、図10図11の構成に限らず、従来のパウダー容器は、パウダーをほぐすために大きめの空間が必要なため、全体が嵩高くならざるを得ず、携帯に便利なコンパクトな形状にしたり、1、2回分の使用量を入れた化粧料のサンプル容器として提供したりすることが困難で、容器のバリエーションに乏しいことから、その改善が強く求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、容器内からパウダー状の内容物(以下、各種パウダー状の内容物を総称して「パウダー」という)を均一に振り出しやすく、しかも構成が簡単で嵩張らない、優れたパウダー容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、パウダーが収容されるパウダー収容用凹部と、上記凹部開口を覆うよう取り付けられパウダー通過孔が設けられた中蓋とを有する容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備えたパウダー容器であって、上記容器本体のパウダー収容用凹部内に、下記の攪拌パーツAが入れられており、容器本体を振ることにより下記の攪拌パーツAを動かして、パウダーを攪拌しながらパウダーを中蓋のパウダー通過孔から振り出すようになっているパウダー容器を第1の要旨とする。
(A)上記パウダー収容用凹部内を上下方向に部分的に仕切り、凹部内を上下左右に自由に動きうる略板状体であって、上記パウダー収容用凹部内を上下方向に部分的に仕切る板状部と、上記板状部から上方向に突出する複数の突出部と、上記板状部から下方向に突出する複数の突出部とを備え、少なくとも上方向に突出する各突出部は上記中蓋のパウダー通過孔に入り込まない大きさに設定されている攪拌パーツ。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記容器本体において、パウダー収容用凹部の上段に、パウダー塗布具が収容される第2の凹部が設けられており、上記パウダー収容用凹部と第2の凹部の境界に設けられた中蓋が、上記第2の凹部の底面を兼ねているパウダー容器を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明のパウダー容器は、容器内の空間を利用してパウダーを混ぜるのではなく、パウダー収容用凹部内に、特殊な構成の攪拌パーツAを入れ、この攪拌パーツAによって、パウダーを効果的に攪拌して、パウダー通過孔から均一に振り出すことができるようにしたものである。この構成によれば、従来のように、パウダーをほぐすための大きな空間が不要となるため、全体をコンパクトな設計にすることができ、携帯に便利な容器や、サンプル容器として広く用いることができる。また、バインダーが含まれるパウダーであっても、容器から容易に均等に振り出すことができ、使い勝手がよい。
【0013】
そして、本発明のパウダー容器のなかでも、特に、上記容器本体において、パウダー収容用凹部の上段に、パウダー塗布具が収容される第2の凹部が設けられており、上記パウダー収容用凹部と第2の凹部の境界に設けられた中蓋が、上記第2の凹部の底面を兼ねているものは、内容物がルースパウダー等のパウダー状化粧料等である場合に、スポンジやパフ等の塗布具を、中蓋の上に載置した状態でコンパクトに収容することができ、使い勝手がよいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の一実施の形態を示す斜視図、(b)はその拡大縦断面図である。
図2】上記実施の形態の分解斜視図である。
図3】(a)〜(d)は、いずれも上記実施の形態の製造工程の説明図である。
図4】上記実施の形態の、使用時の動作説明図である。
図5】上記実施の形態における攪拌パーツの詳細な説明図である。
図6】(a)〜(h)は、いずれも上記実施の形態における攪拌パーツの変形例の説明図である。
図7】(a)、(b)は、ともに上記実施の形態における攪拌パーツの他の変形例の説明図である。
図8】(a)、(b)は、ともに上記実施の形態における容器本体の変形例の説明図である。
図9】(a)は上記実施の形態における容器本体の他の変形例の説明図、(b)はその部分的な縦断面図、(c)は上記実施の形態における容器本体のさらに他の変形例の説明図、(d)はその部分的な縦断面図、(e)は上記実施の形態における容器本体の他の変形例の説明図、(f)はその部分的な縦断面図である。
図10】(a)は従来のパウダー容器の一例を示す部分的な縦断面図、(b)はその使用時の動作説明図である。
図11】従来のパウダー容器の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1(a)は、本発明のパウダー容器の一実施の形態を示す斜視図、図1(b)は、その拡大縦断面図、図2はその分解斜視図である。このパウダー容器は、フェイスカラー等の粉末状化粧料からなるルースパウダーのサンプルを配布するためのもので、一般的なパウダー容器に比べて厚みの薄い、略円板状の容器である。なお、容器の主要な寸法は図示のとおりである。
【0017】
より詳しく説明すると、このパウダー容器は、厚み0.4mmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)製のシートを真空成形することによって賦形された浅皿状の容器本体10と、同様の材料を用いて同様に賦形された蓋体11と、その間に挟持されるパフ12とを備えている。
【0018】
上記容器本体10は、全体が略円環状でその一個所が側方に突出してアールの付いた角部13になっているフランジ部14と、このフランジ部14の内周縁から略垂直に立ち上がる環状の側壁部15と、この側壁部15の上端部から内側に延設されるパフ収容用凹部16およびパウダー収容用凹部17とを有している。
【0019】
上記パウダー収容用凹部17は、パフ収容用凹部16よりも縮径されており、その凹部底面に、パウダー充填用の貫通穴17aが形成され、その貫通穴17aが、裏面側から円形のシール50によって塞がれている。また、上記パフ収容用凹部16とパウダー収容用凹部17との間の段差部18を利用して、パウダー収容用凹部17の上面開口を覆う中蓋20が取り付けられている。この中蓋20の、段差部18と接しない中央側の部分には、多数のパウダー通過孔21が規則的に分布形成されており、パウダー収容用凹部17内のパウダーを、このパウダー通過孔21から振り出すことができるようになっている。ただし、未使用の段階では、このパウダー通過孔21からパウダーが不用意に漏れて未使用のパフ12や容器内を汚さないよう、中蓋20の上面に、パウダー通過孔21を塞ぐ粘着性のシール22が貼付されている(図2を参照)。
【0020】
上記パウダー収容用凹部17内には、以下に述べる特殊な形状の攪拌パーツAが、パウダーと混じった状態で入れられており、この攪拌パーツAが、パウダー収容用凹部17内を自由に動くことによって、パウダーが経時的に固まって振り出しにくくなることを防止する作用を果たすようになっている。これが、本発明の大きな特徴である。
【0021】
すなわち、上記攪拌パーツAは、厚み0.3mmのPET製のシートを真空成形によって賦形したもので、図2に示すように、平面視輪郭形状が略正八角形の略板状体(より厳密には、略正八角形の板状部と、この板状部から上方向および下方向に突出する突出部とを備えた略板状体)である。そして、その中央には大きな貫通穴25が形成され、その貫通穴25から外縁部に至る1本のスリット26が形成されている。また、攪拌パーツAにおいて、上記板状部の上面と下面のそれぞれに、半球状の突出部27が複数個ずつ、互いに上下に重ならない配置で設けられている。そして、全体が、パウダー収容用凹部17において、上下左右に自由に動きうる大きさに設定されている(以下、より厳密には「攪拌パーツAの板状部」とすべきところ、「攪拌パーツA」と略して述べている部分があるが、図から判断できるためその注記を省略する)
【0022】
なお、上記容器本体10の側壁部15(図2を参照)には、側壁上端から下端まで上下に延びる凹部31が3個、周方向に互いに等間隔となる配置で形成されており、各凹部31の、向かって左側の一個所からさらに周方向左側に所定長だけ延びる、幅の狭い凹条32がそれぞれ形成されている。そして、各凹条32の途中に、その凹んだ底面から手前に突出して凹条32を左右に仕切る小突起部33がそれぞれ設けられている。なお、図2では、これらの凹凸形状は、正面の一個所でしか見えない。
【0023】
上記特殊な凹凸形状は、以下に述べる蓋体11の側壁部40に設けられた横長凹部42と、この凹条32とを係合させて、蓋体11を容器本体10に係止するためのものである。
【0024】
すなわち、上記容器本体10に被せられる蓋体11は、容器本体10の側壁部15の上からパフ12を挟んだ状態で被せることができるようになっており、平面視円形の天井部39と、この天井部39の周縁部から垂下する側壁部40と、側壁部40の下端縁から側方に延設される、平面視円環状のフランジ部41とを備えている。
【0025】
そして、上記側壁部40には、周方向に所定長だけ延びる幅の狭い横長凹部42が3個、周方向に互いに等間隔となる配置で形成されており、各横長凹部42を、容器本体10の側壁部15に設けられた3個の凹部31に沿わせるようにして蓋体11を被せ、その蓋体11を周方向に回動させることにより、各横長凹部42を、凹条32内の小突起部33を乗り越えて凹条32の奥側に入り込ませることができるようになっている。これにより、上記各横長凹部42と凹条32とが係合し、容器本体10と蓋体11の係止がなされるようになっている。
【0026】
なお、容器本体10において、そのフランジ部14の一個所から側方に突出する角部13は、蓋体11の開閉時に、容器本体10と蓋体11との位置を周方向にずらして、上記横長凹部42と凹条32の係合と解除とを行う動作をしやすくするために設けられている。
【0027】
上記パウダー容器は、例えばつぎのようにして得ることができる。なお、以下の図では、容器本体10の側壁部15に設けられた凹部31、凹条32、小突起部33と、蓋体11の側壁部40に設けられた横長凹部42の図示を省略している。
【0028】
まず、真空成形によって材料となる樹脂シートを賦形することにより、目的とする形状の容器本体10、蓋体11、攪拌パーツAを準備する。そして、図3(a)に示すように、容器本体10のパウダー収容用凹部17内に、攪拌パーツAを配置し、パウダー収容用凹部17とパフ収容用凹部16との境界の段差部18を利用して中蓋20を取り付けて固定する。固定は嵌合や接着等、どのような手段であっても差し支えない。そして、この中蓋20の上に粘着性のシール22を貼付して、パウダー収容用凹部17の開口を密封する[図3(b)を参照]。
【0029】
つぎに、図3(c)に示すように、容器本体10を上下逆にして、パウダー収容用凹部17の底面(図では上になっている)に設けられた貫通穴17aからパウダー収容用凹部17内に、例えば充填ノズル60を介して、中身となるパウダーを充填する。なお、実際には、充填ノズル60の先端は貫通穴17aの開口縁に当接されるか開口内に挿入された状態で充填作業が行われる。
【0030】
そして、図3(d)に示すように、上記貫通穴17aをシール50で塞いだ後、これを元の姿勢に戻し、上から蓋体11(図示せず)を被せて互いの側壁部15、40に設けられた凹凸を係合させることによって、目的とするパウダー容器(図1を参照)を得ることができる。
【0031】
上記パウダー容器を使用する際には、まず、蓋体11を開き、パフ12を一旦取り出して中蓋20の上に貼付されているシール22を剥がす。そして、図4に示すように、中蓋20に直接パフ12を重ねて上下逆にして、全体を上下左右に数回振る。この動作によって、パウダー収容用凹部17内で、パウダーが攪拌パーツAに攪拌されながら振り出されて、パフ12の表面に付着する。
【0032】
この動きをより詳しく説明すると、容器および攪拌パーツAの左右方向の動きに合わせて、攪拌パーツAの上下の突出部27の間で、主として横方向にパウダーが動き、容器および攪拌パーツAの上下方向の動きに合わせて、攪拌パーツAの外周縁部とスリット26と中央の貫通穴25(図2を参照)を通って、主として上下方向にパウダーが動いて、全体としてパウダーが細かく揺り動かされながら、中蓋20のパウダー通過孔21から均等に振り出されて、パフ12に偏りなく付着する。
【0033】
なお、上記攪拌パーツAに設けられた上下の突出部27は、図5に示すように、中蓋20のパウダー通過孔21に入り込んで動かなくなることのないよう、パウダー通過孔21の開口に対して充分に大きい形状に設定される。また、その突出高さは、パウダーに対する攪拌スペースの確保と、パウダー収容用凹部17のコンパクト化とを考慮して設定される。この例では、パウダー通過孔21の開口径が1.5mmであるのに対し、攪拌パーツAの突出部27は、直径L=3mm、高さH=1.5mmの部分球形状に賦形されている。
【0034】
このように、上記パウダー容器は、上記攪拌パーツAによって、パウダー収容用凹部17内のパウダーを効果的に攪拌して、パウダー通過孔21から均一に振り出すことができるようになっている。したがって、パウダーを収容する容器本体10には、パウダーを収容する容積に、略板状の攪拌パーツAが上下左右に自由に動きうるだけの余裕分としての容積を加えた、最小限のスペースがあればよく、従来のように、パウダーを振りほぐすための大きな空間が不要となる。このため、容器全体を、比較的薄いコンパクトな設計にすることができ、携帯に便利な容器や、サンプル容器として広く用いることができる。また、バインダーが含まれるパウダーであっても、容器から容易に均等に振り出すことができ、使い勝手がよい。
【0035】
なお、本発明に用いられる攪拌パーツAは、上記の例に限るものではなく、その平面視輪郭形状が、例えば図6(a)に示すような膨らみのある略三角形状のものや、図6(b)に示すような凹凸のある星型形状のもの、図6(c)に示すような略四角形状のもの、
図6(d)に示すような略円形状で放射状に延びる細長い突出部27を有するもの等、各種の形状のものをあげることができる。そして、攪拌パーツAの周縁部と、容器本体10のパウダー収容用凹部17の内周壁との間に隙間が充分確保される場合は、図6(a)のもののように、貫通穴25やスリット26を設ける必要はないが、形状によっては、図6(b)等に示すように、中央に貫通穴25を設けたり、貫通穴25から延びるスリット26を設けたりすることが好ましい。これらの攪拌パーツAは、いずれも、上記の例と同様、真空成形等によって簡単に得ることができ、安価に提供することができる。
【0036】
また、攪拌パーツAの突出部27は、真空成形等による場合、上下で互いに重ならないよう配置することが前提となるが、それらの配置は、必ずしも上下互い違いになっていなくてもよい。例えば、図6(e)〜(h)に示すように、射出成形等によって、上下に同じ配置で突出部27′を形成するようにしてもよい。これらの突出部27′は、パウダーを突出部27′の壁に沿って動かすことで攪拌する効果が得られるよう、フィンのように規則性のある列状の配置で設けることが好適である。これらの例においても、中央に貫通穴25を設けたり、スリット26′を設けたりすることができる。
【0037】
さらに、攪拌パーツAとして、例えば図7(a)、(b)に示すように、波板状のシート体であって、その波形状によって表裏に突出部27″が形成されたものを用いてもよい。上記攪拌パーツAによれば、予め波板状に形成されたシート材を、所定形状に裁断するだけで簡単に攪拌パーツAが得られ、製造効率がよい。もちろん、その中央に貫通穴を設けたり、周縁部に切欠きやスリットを設けたりしても差し支えない。
【0038】
なお、上記の例のように、容器本体10と蓋体11とを、真空成形等により薄肉の成形品とし、互いの側壁部15、40に設けた凹凸を係合させることによって係止する場合は、容器本体10を動かないように片手で持ち、もう一方の手で蓋体11を周方向にずらせるような形状にすることが望ましく、上記の例では、容器本体10のフランジ部14に、手をかけるための角部13を1個設けている。
【0039】
また、その変形例として、例えば、図8(a)に示すように、上記フランジ部14の角部13を、対角線となる配置で2個設けたり、図8(b)に示すように、フランジ部14の平面視形状を矩形とし、4個の角部13を設けたりすることができる。
【0040】
さらに、図9(a)およびその部分縦断面図である図9(b)に示すように、蓋体11のフランジ部41よりも、容器本体10のフランジ部14の幅を大きくすることによって、容器本体10のフランジ部14をつまんで容器本体10の動きを制止し、蓋体11のみを周方向にずらせるようにしてもよい。
【0041】
さらに、図9(c)およびその部分縦断面図である図9(d)に示すように、上記と同様、蓋体11のフランジ部41よりも容器本体10のフランジ部14の幅を大きくするとともに、そのフランジ部14に、均等な配置で複数(図では3個)の切欠き部51を設け、その切欠き部51に手をかけて容器本体10の動きを制止できるようにしてもよい。
【0042】
あるいは、図9(e)およびその部分縦断面図である図9(f)に示すように、容器本体11のフランジ部14の周縁端から下向きに筒状の延設部52を設け、この延設部52に手をかけて容器本体10の動きを制止できるようにしてもよい。
【0043】
また、パウダー収容用凹部17の凹部形状は、図1図3に示すように、その大部分が緩やかにアールのついた曲面で形成されていてもよいし、例えば図9(b)等の部分縦断面図に示したように、底部のアールが小さく側壁の大部分が垂直に形成されたものであってもよい。ただし、攪拌パーツAやパウダーの動きやすさを考慮すれば、アールが大きく側壁から底面にかけての大部分が曲面になっている方が好ましい。
【0044】
さらに、上記パウダー収容用凹部17の内側に垂直な仕切り壁を設け、パウダー収容用凹部17内を複数の空間に分けて、各空間に、色や材質の異なるパウダーをそれぞれ収容するようにしてもよい。その場合、仕切られたそれぞれの空間内に、その空間内で自由に動く攪拌パーツAを入れておくことが望ましい。
【0045】
なお、本発明において、パウダー容器に用いられる容器形状は、内側にパウダーを収容し、これを均一に振り出すための中蓋20が、そのパウダー収容用凹部17の開口に取り付けられているものであれば、どのようなものであってもよい。したがって、上記の例のように、パウダー収容用凹部17の上段にパフ収容用凹部16が設けられ、中蓋20の上にパフ12が載置された構成のものである必要はなく、パフ12は、このパウダー容器とは別に用意されるものであっても差し支えない。
【0046】
また、パウダー容器が、上記の例のように、振り出したパウダーを、塗布具を用いて塗布するものである場合、その塗布具の種類は特に限定されず、例えば、起毛布等を用いたパフや、毛羽の長い略球状の塗布具等、各種の塗布具を用いることができる。
【0047】
そして、本発明のパウダー容器におけるパウダーは、必ずしも振り出した後、肌等に塗布するものでなくてもよく、均一に振り出すことが求められるものであれば、どのようなものであってもよい。その場合、パフ12等の塗布具を収容したり別途用意したりする必要はない。例えば、ココアパウダーやシュガーパウダー、各種香辛料等のように、調理の途中や料理の仕上げに、調理材料や料理の上に均一に振りかける粉末食品や、染料、顔料といった工業用、工芸用等の各種粉末材料を収容する容器として用いることもできる。
【0048】
さらに、上記の例では、パウダー容器がサンプル容器であり、簡易で安価に提供できる構成にするために、容器本体10、蓋体11を、ともに真空成形による薄肉成形品としたが、販売商品として提供する場合は、容器本体10、蓋体11として、射出成形による厚肉の樹脂成形品を用いることができる。そして、容器本体10と蓋体11の係止構造も、ヒンジを用いた開閉機構や、ねじ係合による開閉機構等、どのような構造であっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、パウダーを収容し、これを振り出して使用するパウダー容器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 容器本体
11 蓋体
17 パウダー収容用凹部
20 中蓋
21 パウダー通過孔
A 攪拌パーツ
図1
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