特許第6506979号(P6506979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506979
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20190415BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   B41J2/01 307
   B41J2/17 103
   B41J2/01 305
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-15093(P2015-15093)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-137672(P2016-137672A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】寺門 亮
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0199447(US,A1)
【文献】 特開2010−030230(JP,A)
【文献】 特開2010−264752(JP,A)
【文献】 特開2009−096057(JP,A)
【文献】 特開2012−101542(JP,A)
【文献】 特開2011−212945(JP,A)
【文献】 特開2014−221541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドが隙間を介して取り付けられる取付開口部を有し、前記インクジェットヘッドを保持する函体のヘッドホルダと、
印刷媒体の搬送方向における上流側から下流側へ流れる冷却風を前記ヘッドホルダ内に発生させて前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部とを備え、
前記インクジェットヘッドによるインク吐出により発生するインクミストが、前記搬送部による印刷媒体の搬送によって生じる気流、および前記冷却風が前記隙間から漏れた気流により前記搬送部の下流側へ誘導されることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記搬送方向における前記ヘッドホルダの上流側から前記ヘッドホルダ内の前記インクジェットヘッドへ空気を吹き付ける吹付部と、
前記搬送方向における前記ヘッドホルダの下流側で前記ヘッドホルダから空気を吸引する吸引部とを有し、
前記吹付部による吹付風が、前記吸引部による吸引風より強いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドが隙間を介して取り付けられる取付開口部を有し、前記インクジェットヘッドを保持する函体のヘッドホルダと、
印刷媒体の搬送方向における上流側から下流側へ流れる冷却風を前記ヘッドホルダ内に発生させて前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、
前記搬送方向における前記ヘッドホルダの上流側から前記ヘッドホルダ内の前記インクジェットヘッドへ空気を吹き付ける吹付部と、
前記搬送方向における前記ヘッドホルダの下流側で前記ヘッドホルダから空気を吸引する吸引部とを有し、
前記吹付部による吹付風が、前記吸引部による吸引風より強いことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記搬送方向における前記搬送部の下流側に配置され、インクミストを回収するインクミスト回収部をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送しつつ、固定のインクジェットヘッドから用紙へインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
ライン型のインクジェット印刷装置では、印刷速度が速くなるほど、インクジェットヘッドの駆動周波数が増加し、インクジェットヘッドの発熱量が増大する。また、ピエゾ素子が高密度で配置された、印刷解像度が大きいインクジェットヘッドを用いた場合も、インクジェットヘッドの発熱量が増大する。これに対し、ヘッドドライバICを定格温度以下で使用するためには、インクジェットヘッドを冷却して温度上昇を抑える必要がある。
【0004】
そこで、ファンにより冷却風を送ってインクジェットヘッドを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−264752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したファンによりインクジェットヘッドを冷却する技術では、ファンによる気流が、インクジェットヘッドが取り付けられているヘッドホルダの開口部とインクジェットヘッドとの隙間から、ヘッドホルダの下方の空間へ漏れる。
【0007】
ヘッドホルダの下方では、用紙搬送による気流(搬送気流)が生じている。この搬送気流と、上述したヘッドホルダの開口部とインクジェットヘッドとの隙間から漏れた気流との衝突により、乱流が発生することがある。この乱流は、インクジェットヘッドからのインク吐出により発生するインクミストを、さまざまな方向に飛散させる。さまざまな方向に飛散したインクミストは、装置内のさまざまな場所や用紙に付着し、装置内の汚れや印刷物の汚れの要因となる。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、装置内の汚れおよび印刷物の汚れを軽減できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、印刷媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドが隙間を介して取り付けられる取付開口部を有し、前記インクジェットヘッドを保持する函体のヘッドホルダと、印刷媒体の搬送方向における上流側から下流側へ流れる冷却風を前記ヘッドホルダ内に発生させて前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部とを備えることにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記搬送方向における前記搬送部の下流側に配置され、インクミストを回収するインクミスト回収部をさらに備えることにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記冷却部は、前記搬送方向における前記ヘッドホルダの上流側から前記ヘッドホルダ内の前記インクジェットヘッドへ空気を吹き付ける吹付部と、前記搬送方向における前記ヘッドホルダの下流側で前記ヘッドホルダから空気を吸引する吸引部とを有し、前記吹付部による吹付風が、前記吸引部による吸引風より強いことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、冷却部による冷却風が、印刷媒体の搬送方向における上流側から下流側へ流れる。これにより、冷却風が取付開口部とインクジェットヘッドとの間の隙間から下方に漏れることにより生じる冷却漏れ気流は、搬送部による印刷媒体の搬送によって生じる搬送気流と同じ方向に流れる。このため、これらの気流どうしの衝突による乱流の発生を抑え、乱流によるインクミストの拡散を抑えることができる。この結果、装置内の汚れや印刷物の汚れを軽減できる。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、搬送気流および冷却漏れ気流により搬送部の下流側へ誘導されたインクミストを、インクミスト回収部により回収する。これにより、インクミストを誘導するための機構を設けることなく、効率的にインクミストを回収できる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、吹付部による吹付風が吸引部による吸引風より強いので、冷却漏れ気流が強くなり、インクミストをより強く印刷媒体の搬送方向に沿って誘導できる。この結果、インクミストの回収効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部、印刷部、およびインクミスト回収部の概略構成図である。
図3図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の平面図である。
図4図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の分解斜視図である。
図5図3のA−A線に沿った断面図である。
図6】ヘッドホルダ内の冷却風を示す図である。
図7】ヘッドホルダと搬送ベルトとの間の空間における気流の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0017】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部、印刷部、およびインクミスト回収部の概略構成図である。図3は、印刷部の平面図である。図4は、印刷部の分解斜視図である。図5は、図3のA−A線に沿った断面図である。
【0019】
以下の説明において、図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。図2において、左から右へ向かう方向が印刷媒体である用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3と、インクミスト回収部4と、制御部5とを備える。
【0021】
搬送部2は、用紙Pを搬送する。図1図2に示すように、搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13,14,15と、ベルトモータ16と、用紙吸着ファン17とを備える。
【0022】
搬送ベルト11は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12および従動ローラ13〜15に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11には、複数のベルト穴11a(図7参照)が形成されている。搬送ベルト11は、用紙吸着ファン17の駆動によりベルト穴11aに発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト11は、図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0023】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を図2における時計回り方向に回転させる。
【0024】
従動ローラ13〜15は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13〜15は、搬送ベルト11を介して駆動ローラ12に従動する。従動ローラ13は、駆動ローラ12と同じ高さで、駆動ローラ12の左方に配置されている。従動ローラ14,15は、駆動ローラ12および従動ローラ13の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0025】
ベルトモータ16は、駆動ローラ12を回転駆動させる。
【0026】
用紙吸着ファン17は、下方向への気流を生じさせる。これにより、用紙吸着ファン17は、搬送ベルト11のベルト穴11aを介して空気を吸引してベルト穴11aに負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト11上に吸着させる。用紙吸着ファン17は、環状の搬送ベルト11に囲まれた領域に配置されている。
【0027】
印刷部3は、搬送部2により搬送される用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、搬送部2の上方に配置されている。図1図4に示すように、印刷部3は、ヘッドユニット21と、冷却部22とを備える。
【0028】
ヘッドユニット21は、搬送部2により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット21は、複数のインクジェットヘッド31と、ヘッドホルダ32とを備える。
【0029】
インクジェットヘッド31は、インク吐出面31aを有する。インク吐出面31aは、搬送ベルト11に対向するインクジェットヘッド31の下面である。インク吐出面31aには、前後方向(主走査方向)に沿って配置された複数のノズル(図示せず)が開口している。インクジェットヘッド31は、インク供給経路(図示せず)を介して供給されるインクをノズルから吐出する。
【0030】
インクジェットヘッド31は、図3図4に示すように、千鳥状に配置されている。具体的には、それぞれ前後方向(主走査方向)に沿って等間隔で配置された3つのインクジェットヘッド31からなる4列のヘッド列が、左右方向に沿って並列して配置されている。そして、各ヘッド列の各インクジェットヘッド31は、隣接するヘッド列間で前後方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。
【0031】
ヘッドホルダ32は、インクジェットヘッド31を保持する。ヘッドホルダ32は、中空状の直方体形状に形成された函体からなる。図4図5に示すように、ヘッドホルダ32は、底板41と、側板42〜45と、天板46とを有する。
【0032】
底板41は、インクジェットヘッド31を保持して固定する。底板41は、矩形状に形成されている。底板41には、インクジェットヘッド31を取り付けるための取付開口部41aが形成されている。取付開口部41aは、インクジェットヘッド31と同じ数だけ形成されている。取付開口部41aにインク吐出面31aが底板41から下方に突出するようにインクジェットヘッド31が挿入され、固定される。
【0033】
取付開口部41aは、インクジェットヘッド31の水平面に沿った断面より大きい貫通穴からなる。これにより、インクジェットヘッド31の取り付け位置および角度が調整可能になっている。取付開口部41aがこのように形成されているため、図5に示すように、取付開口部41aには、インクジェットヘッド31が隙間を介して取り付けられる。
【0034】
側板42,43,44,45は、それぞれヘッドホルダ32の前側、左側、後側、右側の側壁を形成する。側板42〜45は、一体に形成され、底板41の周囲に立設されている。
【0035】
左側の側板43には、複数の通風穴43aが形成されている。通風穴43aは、後述する吹付部51により空気がインクジェットヘッド31へ吹き付けられる際のヘッドホルダ32内への空気の流入口である。複数の通風穴43aは、前後方向に沿って配置されている。
【0036】
右側の側板45には、複数の通風穴45aが形成されている。通風穴45aは、後述する吸引部52によりヘッドホルダ32から空気が吸引される際の空気の流出口である。複数の通風穴45aは、それぞれ左側の側板43の複数の通風穴43aに対向する位置に配置されている。
【0037】
天板46は、側板42〜45からなる側壁の上端の開口部を塞ぐ蓋である。天板46は、矩形状に形成されている。
【0038】
冷却部22は、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側(左から右)へ流れる冷却風をヘッドホルダ32内に発生させてインクジェットヘッド31を冷却する。冷却部22は、吹付部51と、吸引部52とを備える。
【0039】
吹付部51は、ヘッドホルダ32内のインクジェットヘッド31に空気を吹き付ける。吹付部51は、ヘッドホルダ32の左側に配置されている。すなわち、吹付部51は、用紙Pの搬送方向におけるヘッドホルダ32の上流側から、ヘッドホルダ32内のインクジェットヘッド31に空気を吹き付ける。吹付部51は、吹付チャンバ61と、吹付ファン62とを備える。
【0040】
吹付チャンバ61は、吹付ファン62とヘッドホルダ32との間の空気の流路を形成する。吹付チャンバ61は、用紙Pの搬送方向に直交する方向である前後方向に細長い形状で中空状に形成されている。吹付チャンバ61は、ヘッドホルダ32の左側の側板43上に配置されている。吹付チャンバ61には、複数の吹付穴61aが形成されている。
【0041】
吹付穴61aは、インクジェットヘッド31へ空気を吹き付ける際の吹付チャンバ61からの空気の流出口である。吹付穴61aは、側板43の通風穴43aに対応する位置に配置されている。これにより、吹付チャンバ61内の空間とヘッドホルダ32内の空間とが、吹付穴61aおよび通風穴43aを介して連通されている。
【0042】
吹付ファン62は、吹付チャンバ61の一端から吹付チャンバ61内へ送風する。これにより、吹付ファン62は、吹付チャンバ61の吹付穴61aおよび側板43の通風穴43aを介してヘッドホルダ32内のインクジェットヘッド31へ空気を吹き付ける。
【0043】
吸引部52は、ヘッドホルダ32から空気を吸引する。吸引部52は、ヘッドホルダ32を挟んだ吹付部51の反対側である、ヘッドホルダ32の右側に配置されている。すなわち、吸引部52は、用紙Pの搬送方向におけるヘッドホルダ32の下流側で、ヘッドホルダ32から空気を吸引する。吸引部52は、吸引チャンバ66と、吸引ファン67とを備える。
【0044】
吸引チャンバ66は、ヘッドホルダ32と吸引ファン67との間の空気の流路を形成する。吸引チャンバ66は、前後方向に細長い形状で中空状に形成されている。吸引チャンバ66は、ヘッドホルダ32の右側の側板45上に配置されている。吸引チャンバ66には、複数の吸引穴66aが形成されている。
【0045】
吸引穴66aは、ヘッドホルダ32から空気を吸引する際の吸引チャンバ66への空気の流入口である。吸引穴66aは、側板45の通風穴45aに対応する位置に配置されている。これにより、吸引チャンバ66内の空間とヘッドホルダ32内の空間とが、吸引穴66aおよび通風穴45aを介して連通されている。
【0046】
吸引ファン67は、吸引チャンバ66の一端から空気を吸引する。これにより、吸引ファン67は、吸引チャンバ66の吸引穴66aおよび側板45の通風穴45aを介してヘッドホルダ32から空気を吸引する。
【0047】
インクミスト回収部4は、インクミストを回収する。インクミスト回収部4は、搬送部2の下流側に配置されている。インクミスト回収部4は、インクミスト吸引ファン71と、フィルタ72とを備える。
【0048】
インクミスト吸引ファン71は、搬送部2の下流側において、搬送部2から流れてくるインクミストを含む空気を吸引する。
【0049】
フィルタ72は、インクミスト吸引ファン71の手前でインクミストを吸収する。フィルタ72は、スポンジ等からなる。
【0050】
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0051】
具体的には、制御部5は、印刷時において、搬送部2により用紙Pを搬送させつつ、インクジェットヘッド31からインクを吐出させるとともに、冷却部22によりインクジェットヘッド31を冷却するよう制御する。
【0052】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0053】
印刷ジョブが入力されると、制御部5は、ベルトモータ16により駆動ローラ12を起動させる。これにより、搬送ベルト11の周回駆動が開始される。
【0054】
また、制御部5は、用紙吸着ファン17を起動させる。これにより、用紙吸着ファン17により搬送ベルト11のベルト穴11aを介して空気が吸引され、ベルト穴11aに負圧が発生する。また、制御部5は、インクミスト吸引ファン71を起動させる。
【0055】
また、制御部5は、吹付ファン62および吸引ファン67を起動させる。吹付ファン62の駆動により、吹付チャンバ61の吹付穴61aおよびヘッドホルダ32の側板43の通風穴43aを介してインクジェットヘッド31へ空気が吹き付けられる。また、吸引ファン67の駆動により、吸引チャンバ66の吸引穴66aおよびヘッドホルダ32の側板45の通風穴45aを介してヘッドホルダ32から空気が吸引される。
【0056】
これにより、図6に示すように、ヘッドホルダ32内に冷却風Wcが生じる。冷却風Wcは、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側(左から右)へ流れる。ここで、冷却風Wcの一部は、取付開口部41aとインクジェットヘッド31との間の隙間から下方の空間へ漏れる。
【0057】
図示しない給紙部から搬送部2へ用紙Pが給紙されると、用紙Pは、搬送ベルト11に吸着保持されつつ搬送される。制御部5は、ヘッドユニット21の下方を搬送される用紙Pに対し、インクジェットヘッド31からインクを吐出させて画像を印刷させる。指定印刷枚数が複数枚の場合、制御部5は、順次給紙されて搬送ベルト11上を搬送される各用紙Pに対して、インクジェットヘッド31からインクを吐出させて画像を印刷させる。
【0058】
インクジェットヘッド31が駆動されると、インクジェットヘッド31は発熱する。これに対し、インクジェット印刷装置1では、冷却風Wcによりインクジェットヘッド31が冷却され、温度上昇が抑えられる。これにより、インクジェットヘッド31の温度をヘッドドライバICの定格温度以下に抑えることが可能となっている。
【0059】
ヘッドホルダ32と搬送ベルト11との間の空間には、図7に示すように、搬送気流Wtと、ベルト吸引気流Wsと、冷却漏れ気流Wlとが発生する。
【0060】
搬送気流Wtは、搬送ベルト11による用紙搬送によって生じる気流である。搬送気流Wtは、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側(左から右)へ流れる。
【0061】
ベルト吸引気流Wsは、用紙吸着ファン17がベルト穴11aを介して空気を吸引することにより生じる気流である。
【0062】
冷却漏れ気流Wlは、ヘッドホルダ32内の冷却風Wcが、取付開口部41aとインクジェットヘッド31との間の隙間から漏れたものである。冷却漏れ気流Wlは、冷却風Wcと同じ方向(左から右)に流れる。すなわち、冷却漏れ気流Wlは、搬送気流Wtと同じ方向に流れる。
【0063】
インクジェットヘッド31からインクが吐出されると、インクミストMが発生する。インクミストMは、図7に示すように、搬送気流Wtおよび冷却漏れ気流Wlにのって、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側(左から右)へ流れる。この際、インクミストMの一部は、ベルト吸引気流Wsにより、ベルト穴11aを通って用紙吸着ファン17に回収される。用紙吸着ファン17に回収されず、搬送気流Wtおよび冷却漏れ気流Wlにより搬送部2の下流側へ流されたインクミストは、インクミスト回収部4により回収される。
【0064】
印刷された用紙Pは、搬送部2を抜けると、図示しない排紙部へ搬送されて排紙される。最後の用紙Pが排紙されると、制御部5は、駆動ローラ12を停止させるとともに、用紙吸着ファン17を停止させる。また、制御部5は、吹付ファン62、吸引ファン67、およびインクミスト吸引ファン71を停止させる。これにより、印刷動作が終了する。
【0065】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、冷却部22は、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側へ流れる冷却風Wcをヘッドホルダ32内に発生させる。このため、冷却風Wcが取付開口部41aとインクジェットヘッド31との間の隙間から下方に漏れることにより生じる冷却漏れ気流Wlは、用紙Pの搬送方向に沿って流れる。すなわち、冷却漏れ気流Wlが搬送気流Wtと同じ方向に流れる。
【0066】
ここで、本実施の形態とは異なり、例えば、ヘッドホルダ32内の冷却風が前後方向に沿って流れる場合、冷却漏れ気流が前後方向に沿って流れる。すなわち、冷却漏れ気流と搬送気流Wtとが直交する。このため、これらの気流どうしの衝突による乱流が発生する。この乱流は、インクミストをさまざまな方向に飛散させる。さまざまな方向に飛散したインクミストは、装置内のさまざまな場所や用紙Pに付着し、装置内の汚れや印刷物の汚れの要因となる。
【0067】
これに対し、本実施の形態のインクジェット印刷装置1では、冷却漏れ気流Wlと搬送気流Wtとが同じ方向に流れるため、気流どうしの衝突による乱流の発生が抑えられる。このため、乱流によるインクミストの拡散を抑えることができる。この結果、装置内の汚れや印刷物の汚れを軽減できる。
【0068】
また、インクジェット印刷装置1では、搬送部2の下流側にインクミスト回収部4を配置している。そして、搬送気流Wtおよび冷却漏れ気流Wlにより搬送部2の下流側へ誘導されたインクミストを、インクミスト回収部4により回収する。これにより、インクミストを誘導するためのファン等の機構を設けることなく、効率的にインクミストを回収できる。
【0069】
なお、制御部5は、吹付部51による吹付風が吸引部52による吸引風より強くなるように、吹付ファン62および吸引ファン67を制御することが好ましい。これにより、冷却漏れ気流Wlを強くして、インクミストをより強く用紙Pの搬送方向に沿って誘導できる。この結果、インクミストの回収効率を向上できる。
【0070】
また、冷却部22は、吹付部51または吸引部52を省略し、吹付部51および吸引部52の一方により、用紙Pの搬送方向における上流側から下流側へ流れる冷却風をヘッドホルダ32内に発生させる構成でもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態では、エア吸引方式の搬送部2を示したが、用紙搬送機構はこの方式に限らない。例えば、静電吸着方式でもよい。
【0072】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3 印刷部
4 インクミスト回収部
5 制御部
11 搬送ベルト
12 駆動ローラ
13〜15 従動ローラ
16 ベルトモータ
17 用紙吸着ファン
21 ヘッドユニット
22 冷却部
31 インクジェットヘッド
32 ヘッドホルダ
41 底板
41a 取付開口部
42〜45 側板
42a,44a 通風穴
46 天板
51 吹付部
52 吸引部
61 吹付チャンバ
61a 吹付穴
62 吹付ファン
66 吸引チャンバ
66a 吸引穴
67 吸引ファン
71 インクミスト吸引ファン
72 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7