特許第6506988号(P6506988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6506988
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】ブラシ及び回転ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/04 20060101AFI20190415BHJP
【FI】
   A47L9/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-38832(P2015-38832)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-158778(P2016-158778A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大原 康之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 敏彰
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−042714(JP,A)
【文献】 特開2011−235131(JP,A)
【文献】 特開2014−124252(JP,A)
【文献】 特開2013−094391(JP,A)
【文献】 特開平10−086068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸と、前記複数の糸が延びる方向である第1方向と直交する方向である第2方向へ前記複数の糸を並列させた状態において前記複数の糸を連結する複数の保持糸とを有する毛羽体を備え、
前記毛羽体において、前記第1方向の最も一端側に配置された前記保持糸と最も他端側に配置された前記保持糸との間の領域である内側領域は、前記第1方向において前記内側領域を挟んだ2つの外側領域のそれぞれよりも広く、
前記内側領域には、複数の前記保持糸が前記第1方向において等間隔となるように配置され、
熱することによって溶融する熱溶融繊維で、複数の前記保持糸は固化され且つ前記内側領域全体が一体のシート様に形成されていることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記内側領域は、前記2つの外側領域の和よりも広いことを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
少なくとも1つの前記保持糸を覆うように前記毛羽体における前記第1方向の一方側を挟持した状態で接合される基材を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシ。
【請求項4】
回転体と、前記回転体に取着されるブラシとを備え、前記回転体を回転させながら前記ブラシを被接触部に接触させるようにして使用される回転ブラシにおいて、
前記ブラシは、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを特徴とする回転ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気掃除機などに用いられるブラシ及び当該ブラシを備えた回転ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機は、本体部と、当該本体部に接続パイプを介して接続されたヘッドとを備えている。このヘッドを絨毯、フローリング、畳等の床面上で移動させながらヘッドの底面に設けられた吸込口から空気を吸引することにより、本体部内に塵埃が吸い込まれるように構成されている。そして、近年では、例えば絨毯等のように空気の吸引だけでは塵埃を吸い込みにくい床面に対する集塵能力を向上させるため、ヘッド内に回転ブラシを設けた電気掃除機が数多く見られるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした回転ブラシは、回転体と、当該回転体の周面に取着された複数のブラシとを備えており、回転体を回転させることで、複数のブラシが床面上のごみを掻き取るようになっている。このブラシは、帯状の基材と、基材上に立設された多数の毛羽によって構成された毛羽部と、基材上における毛羽部内に立設されて基材及び毛羽部に超音波溶着された帯状のフィルム部材とを備えており、基材からのフィルム部材の高さが基材からの毛羽部の高さよりも若干低くなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−182874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなブラシは、フィルム部材を有しているため、床面上の髪の毛やペットの毛などのごみを掻き取る場合に、こうした毛が絡まり難いものの、製造時に基材及び毛羽部に対してフィルム部材を超音波溶着するという繁雑な作業が必要となるため、部品点数が増えて構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、簡単な構成で毛などが絡むことを抑制できるブラシ及び回転ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するブラシは、複数の糸と、前記複数の糸が延びる方向である第1方向と直交する方向である第2方向へ前記複数の糸を並列させた状態において前記複数の糸を連結する複数の保持糸とを有する毛羽体を備え、前記毛羽体において、前記第1方向の最も一端側に配置された前記保持糸と最も他端側に配置された前記保持糸との間の領域である内側領域は、前記第1方向において前記内側領域を挟んだ2つの外側領域のそれぞれよりも広く、前記内側領域には、複数の前記保持糸が前記第1方向において等間隔となるように配置され、加熱することによって溶融する熱溶融繊維で、複数の前記保持糸は固化され且つ前記内側領域全体が一体のシート様に形成されている。
【0008】
この構成によれば、内側領域が2つの外側領域のそれぞれよりも広いので、例えば毛羽体における第1方向の一端側を床面上に摺動させて床面上の毛などのごみを掻き取る場合に、こうした毛が保持糸によって毛羽体に深く進入することが抑制され、毛羽体に毛が絡まることを抑制できる。したがって、従来とは異なり、フィルム部材を用いることなく毛羽体に毛などが絡むことを抑制できるので、製造時にフィルム部材を超音波溶着するという繁雑な作業が不要となり、部品点数が増えることもない。よって、簡単な構成で毛などが絡むことを抑制できる。また、保持糸を加熱して熱溶融繊維を溶融させることで、複数の糸を保持糸によって強固に連結することができる。
【0009】
上記ブラシにおいて、前記内側領域は、前記2つの外側領域の和よりも広いことが好ましい。
この構成によれば、より一層内側領域が広くなるので、保持糸によって毛などが毛羽体に深く進入することを抑制できる。
【0012】
上記ブラシにおいて、少なくとも1つの前記保持糸を覆うように前記毛羽体における前記第1方向の一方側を挟持した状態で接合される基材を備えたことが好ましい。
この構成によれば、基材を被取付部に取り付け可能な形状にすることで、ブラシを被取付部に容易に取り付けることができる。
【0013】
上記課題を解決する回転ブラシは、回転体と、前記回転体に取着されるブラシとを備え、前記回転体を回転させながら前記ブラシを被接触部に接触させるようにして使用され、前記ブラシは、上記構成のブラシによって構成されている。
【0014】
この構成によれば、回転ブラシの使用によって被接触部上の毛などのごみがブラシに絡むことを抑制できる。したがって、簡単な構成で毛などが絡むことを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で毛などが絡むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の電気掃除機のヘッドを示す平断面模式図。
図2】電気掃除機のヘッドの使用状態を示す側断面模式図。
図3】電気掃除機の回転ブラシを示す模式斜視図。
図4図3の側面拡大図。
図5】回転ブラシに用いられるブラシの模式斜視図。
図6】ブラシの毛羽体の平面模式図。
図7】毛羽体の製造過程を示す平面模式図。
図8】毛羽体の製造過程を示す平面模式図。
図9】(a)〜(c)は、変更例のブラシにおける毛羽体の平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、回転ブラシの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、被接触部の一例としての床面F上の毛や塵埃などのごみを吸い込むための電気掃除機のヘッド11は、平面視略T字状のケース12を備えている。ケース12の後端部には接続パイプ13の一端側がケース12に対して回動可能に接続され、接続パイプ13の他端側は電気掃除機の本体部(図示略)に接続されている。ケース12の底壁における前端側の位置には左右方向に長い矩形状の吸込口14が当該底壁を貫通するように形成されている。
【0018】
ケース12の内底面上には矩形枠状をなす仕切板15が吸込口14を囲むように立設され、仕切板15を構成する後壁の中央部には当該後壁を貫通するようにエア吸引口16が形成されている。ケース12の左内側面にはモーター軸受17が設けられ、モーター軸受17はケース12内における仕切板15の後方に設けられたモーター18から延びるモーター軸19の先端を回転可能に支持している。
【0019】
仕切板15の左右両側壁にはそれぞれ回転支持体20が設けられ、両回転支持体20はケース12の左右両内側面に設けられたブラシ軸受21によってそれぞれ回転可能に支持されている。仕切板15の内側には回転軸線が左右方向に延びる回転ブラシ22が収容され、回転ブラシ22の両端部は両回転支持体20によってそれぞれ支持されている。
【0020】
左側の回転支持体20と、モーター軸19に取着されたプーリー19aとには、1つの無端状のベルト23が巻き掛けられている。そして、モーター18の駆動により、モーター18の回転駆動力が、モーター軸19、プーリー19a、ベルト23、及び左側の回転支持体20を介して回転ブラシ22に伝達される。
【0021】
次に、回転ブラシ22の構成について詳述する。
図3及び図4に示すように、回転ブラシ22は、断面視略X字状をなす略丸棒状の回転体31と、回転体31に取着された4つのクリーニング用のブラシ32とを備えている。回転体31は、4つの断面視略T字状をなす突条31aの基端部同士をこれらの突条31aが回転体31の周方向に沿って等間隔に配置されるように一体に連結し、さらにその全体にわたって周方向に約180度捻ったような形状をなしている。
【0022】
したがって、回転体31の周面には、回転体31の周方向に隣り合う突条31a同士の間に螺旋状をなす4本の凹溝33が形成される。これら4本の凹溝33は、回転体31の周方向に沿った等間隔の配置態様となるように回転体31の一方の端面から他方の端面にわたって延びている。そして、これらの凹溝33内にブラシ32が1つずつ着脱自在に装着される。なお、各凹溝33の開口部33aは、各突条31aの先端部に備えられた突片31bによって狭められている。
【0023】
次に、ブラシ32の構成について詳述する。
図5に示すように、ブラシ32は、長尺状の基材40と、基材40に接合された帯状の毛羽体41とを備えている。基材40は、熱可塑性の合成樹脂(本実施形態では、ポリアミド)を押出成形することによって形成される。基材40は、回転体31の凹溝33(図4参照)に挿入して係止するための矩形状をなす係止部42と、帯状の毛羽体41の幅方向(図5では上下方向)の一端部を挟持するために係止部42に設けられた挟持部43とを備えている。
【0024】
挟持部43は、係止部42上に係止部42の短手方向において対向するように立設された一対の矩形状をなす挟持片43aによって構成されている。一対の挟持片43aにおける先端側は、係止部42の短手方向において互いに離れるように、一対の挟持片43aにおける基端側に対して垂直に延びている。すなわち、一対の挟持片43aにおける先端側は、係止部42と平行に延びている。そして、両挟持片43aにおける基端側は、毛羽体41の幅方向の一端部(一方側)を挟持した状態で、1本の縫製糸44により毛羽体41に縫着(接合)されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、基材40の幅方向における係止部42の幅は、回転体31の凹溝33の開口部33aの幅よりも大きくなっている。そして、回転体31にブラシ32を取り付ける場合には、毛羽体41が凹溝33の開口部33aから外側へ突出するように、回転体31の端部から各凹溝33内に基材40の係止部42をスライド挿入する。すると、基材40(ブラシ32)は、適度な剛性と弾性とを有しているため、各凹溝33に沿って螺旋状に捻れた状態で回転体31に容易に装着される。
【0026】
次に、毛羽体41の構成について詳述する。
図6に示すように、毛羽体41は、複数のU字状をなす糸45と、複数の糸45が延びる方向である第1方向Aと直交する方向である第2方向Bへ複数の糸45を並列させた状態において複数の糸45を連結する複数の保持糸46とを備えている。各糸45には、モノフィラメントである極細の繊維45aが複数本集まって束ねられたマルチフィラメント糸が採用されている。
【0027】
繊維45aとしては、ポリアミド繊維、炭素繊維、ステンレス繊維等の金属繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維などを採用することができる。本実施形態における繊維45aには、ポリアミド繊維が採用されている。なお、各糸45は、第1方向Aの一端部に湾曲部45bを有している。
【0028】
複数(本実施形態では8本)の保持糸46は、第2方向Bへ並列された複数の糸45において、第1方向Aにおける両端部を除いた大半の領域を占めるように、複数位置(本実施形態では8位置)で各糸45に巻き付くように配置されている。複数の保持糸46は、第2方向Bに沿うように延びており、第1方向Aにおいて等間隔で互いに平行となるように配置されている。
【0029】
各保持糸46は、耐久性及び柔軟性が高い繊維により形成される。このような条件を満たす繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などが挙げられる。本実施形態における各保持糸46は、ポリエステル繊維によって構成され、一部に加熱することによって溶融する熱溶融繊維を含んでいる。
【0030】
毛羽体41において、第1方向Aの最も一端側に配置された保持糸46と最も他端側に配置された保持糸46との間の領域は、内側領域URとされている。したがって、本実施形態では、内側領域URに複数(6本)の保持糸46が第1方向Aにおいて等間隔で互いに平行となるように配置される。つまり、毛羽体41における内側領域URには、ほぼ全体にわたって各保持糸46が配置されている。
【0031】
また、毛羽体41において、内側領域URを第1方向Aにおいて挟んだ2つの領域は、それぞれ外側領域を構成する第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2とされている。この場合、第1外側領域SR1は毛羽体41における第1方向Aの湾曲部45b側の端部に位置し、第2外側領域SR2は毛羽体41における第1方向Aの湾曲部45b側とは反対側の端部に位置している。
【0032】
内側領域URは、第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2よりもそれぞれ広くなっている。すなわち、内側領域URは、第1外側領域SR1よりも広く、且つ第2外側領域SR2よりも広くなっている。本実施形態では、内側領域URは、第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2の和よりも広くなっている。
【0033】
さらに、本実施形態では、第1方向Aにおいて、内側領域URの幅が12mmに設定され、第1外側領域SR1の幅が1mmに設定され、第2外側領域SR2の幅が3mmに設定されている。すなわち、本実施形態では、内側領域URが毛羽体41全体の約75%を占めており、第1外側領域SR1が毛羽体41全体の約6%を占めており、第2外側領域SR2が毛羽体41全体の約19%を占めている。なお、毛羽体41における第2外側領域SR2では、各糸45が保持糸46によって連結されていないため、各糸45の各繊維45aが開いた状態となる。
【0034】
図7に示すように、毛羽体41を形成する場合には、まず、長尺の糸45を蛇行状に編み、両側の湾曲部45bよりも幅方向内側の複数位置を互いに平行に延びる複数(この場合は、16対)の保持糸46でそれぞれ編む。続いて、図8に示すように、熱プレス加工を行って保持糸46に含まれる熱溶融繊維を溶融させた後、自然冷却する。これにより、溶融していた熱溶融繊維が固化するので、各保持糸46と長尺の糸45とが強固に連結される。
【0035】
このとき、保持糸46間の第1方向Aにおける距離(ピッチ)は、保持糸46の幅よりも狭くなるように設定されているため、保持糸46に含まれる熱溶融繊維を溶融させた際に、その溶融した合成樹脂成分が保持糸46間の隙間にも浸透する。したがって、内側領域UR(図6参照)全体が一体のシート様に形成される。その後、幅方向の中央を切断する(図8中の矢印に沿って切断する)ことによって同時に2つの毛羽体41が形成される。
【0036】
また、図5に示すように、ブラシ32を形成する場合には、まず、基材40の両挟持片43a間に、毛羽体41の第1方向Aにおける湾曲部45b側の端部(第1方向Aの一方側である基端側)を挿入する。すると、毛羽体41の8本の保持糸46のうちの少なくとも1本(ここでは3本)の保持糸46が両挟持片43aによって覆われるように挟持される。このとき、毛羽体41における両挟持片43aによって挟持されている3本の保持糸46は両挟持片43aと対向する壁を作っているため、この3本の保持糸46と両挟持片43aとが安定して接触した状態となる。
【0037】
この状態で、工業用ミシン(図示略)を用いて、縫製糸44により、両挟持片43aと、3本の保持糸46及び各糸45の湾曲部45b側の端部(第1方向Aの一方側である基端側)とを縫着する。すなわち、両挟持片43a(挟持部43)は、縫製糸44により、保持糸46が位置する部分において毛羽体41に縫着(接合)される。これにより、図5に示すブラシ32が得られる。
【0038】
次に、回転ブラシ22の作用について説明する。
さて、電気掃除機を使用するときには、図2に示すように、まず、ヘッド11を床面F上に載せる。この状態で電気掃除機を稼動させると、モーター18が駆動されるとともに、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16を通り、接続パイプ13を介して電気掃除機の本体部(図示略)内に吸引される。
【0039】
このとき、モーター18の駆動に連動して回転ブラシ22が左側から見て反時計方向(図中の矢印で示す方向)に回転されながら、回転ブラシ22のブラシ32の毛羽体41における第2外側領域SR2が主に床面Fに摺接(接触)される。すると、床面F上の毛や塵埃などのごみが毛羽体41における第2外側領域SR2によって掻き取られてエアとともに電気掃除機の本体部(図示略)内に吸引される。
【0040】
このとき、毛羽体41における内側領域URにはほぼ全体にわたって各保持糸46が配置されている。このため、床面F上の毛(特に頭髪(毛髪)やペットの毛など)などは、毛羽体41における第2外側領域SR2に絡むことがあるが、各保持糸46によってブロックされるので、毛羽体41における内側領域URにまで深く絡むことが抑制される。
【0041】
この場合、特に毛羽体41における内側領域URは第2外側領域SR2よりも格段に広いため、毛羽体41の奥深くまで毛などが進入し難くなる。したがって、回転ブラシ22の使用によって毛羽体41(ブラシ32)に毛などが絡み難くなり、たとえ毛羽体41(ブラシ32)に毛などが絡みついたとしても容易に除去することができる。
【0042】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)回転ブラシ22における毛羽体41(ブラシ32)の内側領域URは、第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2よりもそれぞれ格段に広くなっている。このため、回転ブラシ22を回転させて毛羽体41の第2外側領域SR2で床面F上の毛などのごみを掻き取る場合に、こうした毛が各保持糸46によって毛羽体41に深く進入することを抑制できるので、毛羽体41に強く毛が絡まることを抑制できる。したがって、従来とは異なり、フィルム部材を用いることなく毛羽体41に毛などが絡むことを抑制できるので、製造時にフィルム部材を超音波溶着するという繁雑な作業が不要となり、部品点数が増えることもない。よって、簡単な構成で毛羽体41に毛などが絡むことを抑制できる。
【0043】
(2)毛羽体41(ブラシ32)の内側領域URは、第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2の和よりも広くなっている。このため、より一層内側領域URが広くなるので、各保持糸46によって毛などが毛羽体41に深く進入することを抑制できる。
【0044】
(3)毛羽体41(ブラシ32)の内側領域URには、複数の保持糸46が第1方向Aにおいて等間隔となるように配置されている。このため、各保持糸46によって毛などがバランスよく効果的にブロックされるので、毛羽体41の内側領域URに毛などが強く絡まることを抑制できる。
【0045】
(4)毛羽体41(ブラシ32)の各保持糸46は、加熱することによって溶融する熱溶融繊維を含んでいる。このため、各保持糸46を加熱して熱溶融繊維を溶融させることで、複数の糸45を各保持糸46によって強固に連結することができる。
【0046】
(5)毛羽体41(ブラシ32)は、保持糸46間の第1方向Aにおける距離(ピッチ)が保持糸46の幅よりも狭くなるように設定されている。このため、保持糸46に含まれる熱溶融繊維を溶融させた際に、その合成樹脂成分が保持糸46間の隙間にも浸透するので、内側領域UR全体を一体のシート様に形成することができる。
【0047】
(6)ブラシ32は、3つの保持糸46を覆うように毛羽体41における湾曲部45b側の端部を両挟持片43a(挟持部43)が挟持した状態で縫着される基材40を備えている。このため、回転体31の端部から各凹溝33内に基材40の係止部42をスライド挿入することで、ブラシ32を被取付部である回転体31に対して容易に装着することができる。
【0048】
(7)ブラシ32は、従来のようなフィルム部材を必要とすることなく、毛などを絡み難くすることができるので、従来に比べて、回転ブラシ22の一部として使用する際の回転抵抗(床面Fに対する摺動抵抗)を低減することができる。
【0049】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
図9(a)に示すように、毛羽体41(ブラシ32)の内側領域URには、必ずしも保持糸46を配置する必要はない。この場合、毛羽体41は、保持糸46を2本だけ備えることになる。
【0050】
図9(b)に示すように、毛羽体41(ブラシ32)の内側領域URには、第1方向Aの中央部に保持糸46を1本だけ配置するようにしてもよい。
図9(c)に示すように、毛羽体41(ブラシ32)には、複数(ここでは5本)の保持糸46を第1方向Aにおいて順次隣接するように配置してもよい。このようにすれば、内側領域UR全体が複数の保持糸46で覆われるので、毛などが絡みつくことを効果的に抑制できる。
【0051】
・ブラシ32において、各糸45に対して保持するべく巻き付ける保持糸46の本数は、上記実施形態及び上記図9(a)〜図9(c)における本数に限定されず、任意の本数を採用可能である。この場合、保持糸46の密度(保持糸46の本数や保持糸46同士の間隔)を適宜変更することで、毛羽体41(ブラシ32)の柔らかさを容易に調節することができる。
【0052】
・ブラシ32において、複数の保持糸46は、必ずしも第1方向Aにおいて等間隔となるように配置する必要はない。すなわち、複数の保持糸46同士の複数の間隔は異なっていてもよいし、隣り合う保持糸46同士を接触させて保持糸46同士の間隔を無くすようにしてもよい。
【0053】
・ブラシ32において、内側領域URが第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2よりもそれぞれ広くなっていれば、内側領域URの広さを任意に変更してもよい。
・ブラシ32において、内側領域URは、必ずしも第1外側領域SR1及び第2外側領域SR2の和よりも広くなっている必要はない。
【0054】
・ブラシ32において、基材40は省略してもよい。この場合、ブラシ32が毛羽体41によって構成されるので、回転体31の各凹溝33に毛羽体41が直接取り付けられる。
【0055】
・各保持糸46は、必ずしも熱溶融繊維を含んでいる必要はない。
・ブラシ32において、毛羽体41と基材40とは、必ずしも縫着によって接合する必要はなく、例えば、両面粘着テープによる粘着や接着剤による接着によって接合するようにしてもよい。
【0056】
・ブラシ32において、毛羽体41と基材40とを複数本の縫製糸44によって縫着するようにしてもよい。
・ブラシ32は、エアコンや換気扇などのフィルターを清掃したり、画像形成装置内の感光ドラムに付着したトナーを掻き取ったりするための用途に用いてもよい。この場合、ブラシ32は、必ずしも回転させて使用する必要はなく、対象物に摺接させた状態で直線的に移動させて使用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
22…回転ブラシ、31…回転体、32…ブラシ、40…基材、41…毛羽体、45…糸、46…保持糸、F…被接触部の一例としての床面、SR1…外側領域を構成する第1外側領域、SR2…外側領域を構成する第2外側領域、UR…内側領域、A…第1方向、B…第2方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9