特許第6507002号(P6507002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507002
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20190415BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20190415BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190415BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20190415BHJP
   C08K 5/5445 20060101ALI20190415BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08K7/14
   C08L75/04
   C08L33/06
   C08K5/5445
   C08J5/00CFG
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-62604(P2015-62604)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-180084(P2016-180084A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岡元 章人
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−026797(JP,A)
【文献】 特開2014−231452(JP,A)
【文献】 特開2010−270325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00−77/12
C08L 33/00−33/12
C08L 75/00−75/04
C08K 7/00− 7/28
C08J 5/00− 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂と、ガラス繊維と、ガラス繊維の集束剤を含み、
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来し、
前記ガラス繊維の集束剤が、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種20〜60質量%、アクリル酸メチル20〜75質量%、ならびに、メタクリル酸メチル5〜20質量%が共重合してなり、重量平均分子量が10000〜60000である共重合化合物と、アミノシランと、ポリウレタン樹脂とを含有する、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度が70〜120μ当量/gである、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度が、末端アミノ基濃度よりも高い、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が炭素数4〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジカルボン酸がアジピン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記ガラス繊維の配合量がポリアミド樹脂組成物の30質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物および、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
【0002】
従来から、ポリアミド樹脂にガラス繊維を配合して、ポリアミド樹脂成形品の機械的強度を向上させることが検討されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、特許文献3には、不飽和ジカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物20〜60質量%、アクリル酸メチル20〜75質量%、及びメタクリル酸メチル5〜20質量%が共重合してなる共重合化合物と、アミノシランと、ポリウレタン樹脂とを含有するガラス繊維集束剤であって、重量平均分子量が10000〜60000であることを特徴とするガラス繊維集束剤が開示されている。また、特許文献3には、所定の集束剤で集束されたガラス繊維を、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド612、ポリアミドMXD10、ポリアミド410に配合できることが記載されている。さらに、特許文献3では、ガラス繊維集束剤を表面に有するガラス繊維をポリアミド66に配合して良好な引張強度が得られた実験例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−100412号公報
【特許文献2】特開2010−189467号公報
【特許文献3】特開2014−231452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献3について、本発明者が検討を行ったところ、特許文献3に記載されているような集束剤を表面に有するガラス繊維をポリアミド66に配合すると、十分な機械的強度が得られないことが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、所定の集束剤で集束されたガラス繊維を配合したポリアミド樹脂組成物であって、高い機械的強度を有するポリアミド樹脂組成物および成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、特定の集束剤で集束したガラス繊維を、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂に配合することにより、高い機械的強度を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<7>により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂と、ガラス繊維と、ガラス繊維の集束剤を含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来し、前記ガラス繊維の集束剤が、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種20〜60質量%、アクリル酸メチル20〜75質量%、ならびに、メタクリル酸メチル5〜20質量%が共重合してなり、重量平均分子量が10000〜60000である共重合化合物と、アミノシランと、ポリウレタン樹脂とを含有する、ポリアミド樹脂組成物。
<2>前記ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度が70〜120μ当量/gである、<1>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<3>前記ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度が、末端アミノ基濃度よりも高い、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>前記ジカルボン酸が炭素数4〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>前記ジカルボン酸がアジピン酸である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<6>前記ガラス繊維の配合量がポリアミド樹脂組成物の30質量%以上である、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<7><1>〜<6>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い機械的強度を有するポリアミド樹脂組成物および成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と、ガラス繊維と、ガラス繊維の集束剤を含み、ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来し、ガラス繊維の集束剤が、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種20〜60質量%、アクリル酸メチル20〜75質量%、ならびに、メタクリル酸メチル5〜20質量%が共重合してなり、重量平均分子量が10000〜60000である共重合化合物と、アミノシランと、ポリウレタン樹脂とを含有する、ことを特徴とする。このような構成とすることにより、高い機械的強度、特に、高い曲げ応力を達成可能になる。
【0010】
<ポリアミド樹脂>
本発明で必須成分として用いられるポリアミド樹脂(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来する。このようなポリアミド樹脂と、所定の集束剤で集束したガラス繊維を併用することにより、高い機械的強度を達成可能できる。
ここで、「ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され」とは、特定ポリアミド樹脂を構成するアミド結合がジカルボン酸とジアミンの結合によって形成されていることをいう。また、特定ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位以外に、末端基等の他の部位を含む。さらに、ジカルボン酸とジアミンの結合に由来しないアミド結合を有する繰り返し単位や微量の不純物等が含まれる場合もあるであろう。本発明では、好ましくは、特定ポリアミド樹脂の90質量%以上が、ジアミン由来の構成単位またはジカルボン酸由来の構成単位である。
【0011】
特定ポリアミド樹脂では、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンであっても、メタキシリレンジアミンであっても、その混合物であってもよい。本発明では、キシリレンジアミンとして、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、キリリレンジアミンの30モル%以上がメタキシリレンジアミンであることが好ましい。
キシリレンジアミン以外のジアミンとしては、芳香族ジアミンでも、脂肪族ジアミンでもよく、芳香族ジアミンおよび脂環式ジアミンの少なくとも1種が好ましく、芳香族ジアミンがより好ましい。
芳香族ジアミンとしては、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレンが例示される。
脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンが例示される。
【0012】
特定ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸に由来し、好ましくは51モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、一層好ましくは80モル%以上であり、より一層好ましくは90モル%以上である。
炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数4〜9の直鎖脂肪族ジカルボン酸であっても、炭素数4〜9の環状構造を含む脂肪族ジカルボン酸であってもよく、炭素数4〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数4〜9のα,ω−直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸およびスベリン酸がさらに好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、6または8が好ましく、6がさらにより好ましい。
炭素数4〜9の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸が例示される。
【0013】
特定ポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリメタ/パラ混合キシリレンアジパミド(ポリアミドMP6)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)等が挙げられる。
本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0014】
特定ポリアミド樹脂のガラス転移点は、40〜180℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の数平均分子量は、5000〜45000であることが好ましく、10000〜25000であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の融点は、200℃以上であることが好ましく、220〜350℃であることがより好ましく、230〜300℃であることがさらに好ましい。
【0015】
特定ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度は70〜120μ当量/gであることが好ましい。このような範囲とすることにより、上記所定の集束剤との相溶性が向上し、顕著に高い機械的強度を達成可能になる。特定ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度は、70〜110μ当量/gがより好ましく、80〜100μ当量/gがさらに好ましい。特定ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、30〜60μ当量/gがより好ましく、35〜50μ当量/gがさらに好ましく、35〜45μ当量/gがさらに好ましい。
本発明では、また、特定ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基濃度が、末端アミノ基濃度よりも高いことが好ましく、40〜70μ当量/g高いことがより好ましく、40〜60μ当量/g高いことがさらに好ましい。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシ基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物における、特定ポリアミド樹脂の配合量は、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上とすることもできる。このような構成とすることにより、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。本発明のポリアミド樹脂組成物は、特定ポリアミド樹脂を、1種類のみ含んでいても良いし、2種類以上含んでいても良い。2種類以上含む場合、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0017】
<他のポリアミド樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、1種類または2種類以上の特定ポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂を含んでいても良い。
他のポリアミド樹脂の例としては、ラクタムの重縮合物、ジアミンと炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合物、ジアミンと、芳香族ジカルボン酸との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、または、これらの共重合ポリアミド樹脂が例示される。
【0018】
ポリアミド樹脂の重縮合の原料であるラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、特定のポリアミド樹脂で述べたジアミンが例示される。
炭素数9以上の脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸等が例示される。
本発明のポリアミド樹脂組成物に、他のポリアミド樹脂を配合する場合、その配合量は、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂全量の10〜50質量%が好ましく、10〜20質量%が好ましい。
一方、本発明のポリアミド樹脂組成物は、他のポリアミド樹脂を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂全量の5質量%以下とすることもできる。
【0019】
<他の樹脂成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、1種類または2種類以上のポリアミド樹脂以外の樹脂成分を含んでいても良い。
ポリアミド樹脂以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート及び変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を配合する場合、その配合量は、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂全量の1〜25量%が好ましく、10〜20質量%が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、ポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5質量%以下とすることもできる。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分(特定ポリアミド樹脂、他のポリアミド樹脂および他の樹脂成分)の合計量の下限値は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上とすることもできる。本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分の合計量の上限値は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
<ガラス繊維>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含む。ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Dガラス、Eガラス、Sガラス、Tガラス、Mガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)がポリアミド樹脂に悪影響を及ぼさないので好ましい。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
本発明におけるガラス繊維の長さは、重量平均繊維長をいう。本明細書においてガラス繊維の重量平均繊維長とは、ガラス繊維のうち任意の400本の長さを測定し、算出した平均値である。具体的には、ガラス繊維の一本一本の長さを、それぞれL1、L2、・・・、L400としたとき、重量平均繊維長は下記数式(1)により算出される。重量平均繊維長=Σ(Li2)/ΣLi (1)
(「i」は、1〜400までの整数)
【0023】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、更には2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明で用いるガラス繊維の断面の平均直径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
【0024】
ガラス繊維の断面の平均直径は、長さ1000mのガラス繊維の質量の計測からガラス繊維の直径値を算出した値とする。また、異形断面を有するガラス繊維の場合は、同じ質量のガラス繊維であって、断面が円形であるガラス繊維の直径をもって、ガラス繊維の平均直径とする。
【0025】
本発明のポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維の配合量は、ポリアミド樹脂組成物の25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが一層好ましく、45質量%以上であることがより一層好ましい。上限値については、特に定めるものでは無いが、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0026】
<ガラス繊維の集束剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維の集束剤を含む。ガラス繊維の集束剤は、通常、ガラス繊維の表面に位置する。本発明で必須成分として用いられるガラス繊維の集束剤(以下、「特定集束剤」ということがある)は、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種20〜60質量%、アクリル酸メチル20〜75質量%、ならびに、メタクリル酸メチル5〜20質量%が共重合してなり、重量平均分子量が10000〜60000である共重合化合物と、アミノシランと、ポリウレタン樹脂とを含有する。
【0027】
特定集束剤において、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種、アクリル酸メチル、ならびに、メタクリル酸メチルが共重合した共重合化合物は、ポリアミド樹脂と化学的(分子間力、イオン結合等)および/または物理的(分子鎖どうしの絡み合い等)に結合しやすくする作用を有すると推定され、アミノシランは、ガラス繊維の表面と共重合化合物とを結合しやすくする作用を有すると推定され、ポリウレタン樹脂は、ガラス繊維とポリアミド樹脂とが結合しやすくする作用を有すると推定される。そのため、この特定集束剤を用いたガラス繊維をポリアミド樹脂の補強材として用いた場合に、機械的強度の高いポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
特定集束剤は、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが共重合した共重合化合物を含む。共重合は、ラジカル重合、イオン重合などによって行うことができる。
【0029】
不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種の、共重合化合物における割合は、20〜60質量%である。不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種の共重合化合物の割合を20質量%以上とすることにより、ポリアミド樹脂との化学的な結合がより向上し、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度を向上させることができる。一方、不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種の、共重合化合物における割合を60質量%以下とすることにより、化学的な結合を十分なものとし、共重合を進行しやすくし、共重合化合物の重量平均分子量を大きくできる。そのことで、ポリアミド樹脂との絡み合いが多くなり、物理的な結合は向上する。また、共重合化合物の重量平均分子量を大きくすると、ポリアミド樹脂と共重合化合物との絡み合いが向上し、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度が向上する。好ましい不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種の、共重合化合物における割合は、25〜55質量%である。
【0030】
不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水クロレンディック酸等の無水ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、特に無水マレイン酸は、共重合時における立体障害が少なく、化合物の極性が小さいため好ましく、無水マレイン酸のみを共重合させることがさらに好ましい。
【0031】
アクリル酸メチルの共重合化合物における割合は、20〜75質量%である。アクリル酸メチルの共重合化合物における割合を20質量%以上とすると、共重合が進行しやすく、共重合化合物の重量平均分子量を大きくできる。そのことで、ポリアミド樹脂との絡み合いが多くなり、物理的な結合が向上する。一方、アクリル酸メチルの共重合化合物における割合を75質量%以下とすることにより、共重合している不飽和ジカルボン酸およびカルボン酸無水物の少なくとも1種の割合が多くなり、ポリアミド樹脂との化学的な結合が向上し、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度が向上する。好ましいアクリル酸メチルの共重合化合物における割合は、30〜65質量%である。
【0032】
メタクリル酸メチルの共重合化合物における割合は、5〜20質量%である。メタクリル酸メチルの共重合化合物における割合を5質量%以上とすることにより、共重合が進行しやすくなり、共重合化合物の重量平均分子量が大きくなり、ポリアミド樹脂との絡み合いが多くなり、物理的な結合は向上する。一方、メタクリル酸メチルの共重合化合物における割合を20質量%以下とすることにより、共重合している不飽和ジカルボン酸またはカルボン酸無水物の割合が多くなり、ポリアミド樹脂との化学的な結合が向上し、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度が向上する。好ましいメタクリル酸メチルの共重合化合物における割合は、7〜17質量%である。
【0033】
また、本発明で用いる共重合化合物は、スチレン、エチレン、アセチレン等の他の成分も共重合させても良い。共重合化合物における、他の成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0034】
共重合化合物の重量平均分子量は、10000〜60000である。共重合化合物の重量平均分子量を10000以上とすることにより、ポリアミド樹脂との絡み合いが良好となり、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度が低下する。一方、共重合化合物の重量平均分子量を60000以下とすることにより、ガラス繊維のポリアミド樹脂中での分散性を向上させる。好ましい共重合化合物の重量平均分子量は、20000〜50000である。なお、共重合化合物の重量平均分子量は、ガスパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量である。
【0035】
特定集束剤中における共重合化合物の含有量は、0.5〜10.0質量%であることが好ましい。共重合化合物の含有量を0.5質量%以上とすることにより、ポリアミド樹脂と化学的な結合をする成分が十分な量となり、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度が向上する傾向にある。一方、共重合化合物の含有量を10.0質量%以下とすることにより、ガラス繊維のポリアミド樹脂中での分散性が向上する傾向にある。より好ましい特定集束剤中における共重合化合物の含有量は、1.0〜8.0質量%であり、2.0〜5.0質量%がより好ましい。
【0036】
アミノシランはアルコキシ基とアルキル基を有し、アルコキシ基は加水分解されることによりシラノール基となり、一部はガラス繊維の表面と結合し、残りは互いに結合することによりガラス繊維の表面で網目構造をとると推定される。これに加えてシラノール結合やアルキル基は、ガラス繊維の表面を傷や侵食から保護すると推定される。このような構成とすることにより、アミノシランは、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度を向上させることに寄与すると推定される。
【0037】
アミノシランとしては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらは単独で使用、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
特定集束剤中におけるアミノシランの含有量は、0.3〜2.0質量%であることが好ましい。アミノシランの含有量を、2.0質量%以下とすることにより、ガラス繊維とポリアミド樹脂とを混合させる際に、ガラス繊維の分散性が向上し、機械的強度も向上する傾向にあり好ましい。より好ましい、アミノシランの含有量は、特定集束剤中の、0.4〜1.0質量%である。
【0039】
ポリウレタン樹脂は、アミノシラン及びポリアミド樹脂との化学結合性が良好であり、ポリウレタン樹脂を特定集束剤に含有させることにより、ポリアミド樹脂が、ポリウレタン樹脂を介して、アミノシランのアルキル基末端の官能基等と結合することができ、その結果、機械的強度が向上すると推定される。
【0040】
ポリウレタンは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをウレタン反応させることにより得られるものであり、ウレタン原料のうち、ポリエステルポリオール(縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等)、ポリエーテルポリオールなどが用いられる。
【0041】
このうち縮合系ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその低級アルキルエステルと、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレングリコール等の側鎖を有しない脂肪族ジオールや、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の側鎖を有する脂肪族ジオールとを反応させたものなどが挙げられる。
【0042】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させたものなどが挙げられる。
【0043】
ポリカーボネートポリオールとしては、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート又はエチレンカーボネートからエステル交換反応によって得られたものが使用される。例えば、ポリ−1,6−ヘキサメチレンカーボネート、ポリ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネートなどが工業的に生産されており入手しやすい。ポリカーボネートポリオールを得る別の方法としては、いわゆるホスゲン法(又は溶剤法)によることができる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。上記のほか、各種のポリウレタン用ポリオールを使用することもできる。
【0045】
ウレタン原料のうちポリイソシアネートとしては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートや、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、多価アルコールとポリイソシアネートとのアダクトなどが挙げられる。
【0046】
ウレタン反応に際しては、多価アルコール、多価アミン等の鎖延長剤を使用することもできる。
【0047】
特定集束剤中におけるポリウレタン樹脂の含有量は、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の含有量を、5.0質量%以下とすることにより、押出し成形時に分解ガスを効果的に抑制できる。より好ましい特定集束剤中におけるポリウレタン樹脂の含有量は、1.0〜4.0質量%である。
【0048】
また、特定集束剤中には、上記成分以外に、潤滑剤、ノニオン系の界面活性剤、帯電防止剤等の各成分を含むことができ、それぞれの成分の配合比は、必要に応じて決定すればよい。潤滑剤としては、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩などが使用できる。また、ノニオン系の界面活性剤としては、合成アルコール系、天然アルコール系、脂肪酸エステル系などが使用できる。また、水やアルコール等の有機溶媒に上記の成分を溶解させても良い。
さらに、特開2014−231452号公報に記載のガラス繊維集束剤の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
これらの集束剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
集束剤の合計量は、ガラス繊維の0.01〜4.0質量%が好ましく、0.1〜2.0質量%がより好ましい。
また、特定集束剤を表面に有するガラス繊維の強熱減量が0.1〜1.5質量%であることが好ましい。より好ましい強熱減量は、0.4〜1.2質量%である。強熱減量は、JIS R 3420(2006)7.3.2 に従い測定した値である。
【0050】
<離型剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0051】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が例示される。
【0052】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0053】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0054】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0055】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂の100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0057】
<他の成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいても良い。このような添加剤としては、ガラス繊維以外のフィラー、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの成分は、配合量する場合、それぞれ、0.001〜5質量%の間で調整されることが好ましい。
【0058】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、ポリアミド樹脂と各種添加剤をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。ガラス繊維を配合する場合には、二段階練込法として、予め、ガラス繊維以外の成分を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
【0059】
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0060】
溶融混練に際しての加熱温度は、180〜360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0061】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる。成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
本発明の成形品は、各種電子機器部品の筐体、車輌部材その他、各種樹脂成形品に好ましく用いられる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1
<ポリアミド樹脂(MP6)の合成>
特開2003−026797号公報の段落0018の記載に従い、メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重縮合してなり、末端カルボキシ基濃度([COOH])が90μ当量/g、末端アミノ基濃度([NH2])が40μ当量/gであるポリアミド樹脂を合成した。
【0064】
<集束剤Aの製造>
無水マレイン酸40質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させ、重量平均分子量が20000である共重合化合物を得た。
得られた共重合化合物に、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学工業製)およびポリウレタン樹脂(Y65−55、ADEKA製)を配合し、さらに、脱イオン水を配合して、集束剤Aを得た。集束剤A中の共重合化合物の量は、3質量%、γ-アミノプロピルトリエトキシシランの量は0.5質量%、ポリウレタン樹脂の量は2質量%とした。
【0065】
<集束剤Aを表面に有するガラス繊維の製造>
Eガラスのガラス組成となるように秤量、調合した各種のガラス原料を加熱溶融し、溶融ガラスを、白金製のブッシングに形成された多数の耐熱性ノズルから引き出して平均直径が10.5μmのガラス繊維モノフィラメントを作製し、上記集束剤Aを、強熱減量が1.0質量%となるようにアプリケーターで塗布し、6000本のガラス繊維モノフィラメントを1本に集束させることで、集束剤Aを表面に有するガラス繊維を得た。得られた集束剤を表面に有するガラス繊維は3mmの長さに切断し、乾燥した。
【0066】
<コンパウンド>
上記MP6を、二軸押出機(東芝機械製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ製、CE−W−1−MP)を用いて投入した。また、集束剤Aを表面に有するガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。MP6と集束剤Aを表面に有するガラス繊維の比率は、質量比で50:50とした。
【0067】
<曲げ応力>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業製、SG125−MIIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型の表面温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、4mm厚さのISO引張り試験片を成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ応力(単位:MPa)を測定した。
【0068】
<シャルピー衝撃値>
上記で得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有りシャルピー衝撃値(単位:kJ/m2)を測定した。
【0069】
比較例1
実施例1において、MP6を、ポリアミド66(以下、「PA66」という、ZYTEL101L、E. I. du Pont de Nemours and Company製)に変更し、押出機の温度設定は、280℃とし、射出成形機のシリンダー温度は280℃とし、金型の表面温度は、80℃とした他は同様に行った。
【0070】
比較例2
実施例1において、集束剤Aを表面に有するガラス繊維を、集束剤Bを表面に有するガラス繊維(T756H、日本電気硝子製)に変更し、他は同様に行った。集束剤Bは、一般的なガラス繊維の集束剤であって、ウレタン系集束剤であり、上記特定集束剤には該当しないものである。
【0071】
比較例3
<ポリアミド樹脂(MP10)の合成>
特開2015−030555号公報の段落0093の記載に習い、セバシン酸とメタキシリレンジアミンからなり、末端カルボキシ基濃度([COOH])が90μ当量/g、末端アミノ基濃度([NH2])が25μ当量/gであるポリアミド樹脂を合成した。
【0072】
実施例1において、MP6を、上記MP10に変更し、押出機の温度設定は、280℃とし、射出成形機のシリンダー温度は280℃とし、金型温度は、100℃とした他は同様に行った。
【0073】
結果を下記表に示す。
【表1】
【0074】
上記結果から明らかなとおり、MP6に、集束剤Aを表面に有するガラス繊維を配合すると、高い機械的強度が達成されることが分かった(実施例1)。これに対し、PA66やMP10に、集束剤Aを表面に有するガラス繊維を配合しても、高い機械的強度が達成されないことが分かった(比較例1および3)。また、MP6に一般的な集束剤Bを表面に有するガラス繊維を配合しても、集束剤Aを配合したような高い機械的強度は達成されなかった。
特に、MP6とMP10は、ジカルボン酸成分が、アジピン酸であるか、セバシン酸であるかの違いしかないにも関わらず、このように大きな差があることが確認された。