特許第6507003号(P6507003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507003
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】抗菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/12 20060101AFI20190415BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20190415BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20190415BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   A01N37/12
   A01N25/00 101
   A01N25/10
   A01P3/00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-63197(P2015-63197)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-183116(P2016-183116A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中之庄 正弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 真美
【審査官】 吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−515235(JP,A)
【文献】 特表2004−523563(JP,A)
【文献】 特表2003−506383(JP,A)
【文献】 特開2001−278716(JP,A)
【文献】 特開平11−322515(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/124784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性基含有ポリマーを含む抗菌剤組成物であって、
該抗菌剤組成物は、更に疎水変性ポリアルキレングリコール化合物を含み、
該カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の総量に対する
該カチオン性基含有ポリマーの割合が15〜85質量%、及び、
該疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の割合が15〜85質量%であり、
該カチオン性基含有ポリマーは、下記式(7−1)又は(7−2);
【化1】
(式(7−1)及び(7−2)中、R〜R10は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基を表す。R11〜R13は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。)で表されるカチオン性基含有単量体由来の構造単位を全構造単位100質量%に対して50〜100質量%の割合で有し、該疎水変性ポリアルキレングリコール化合物は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜30であり、非イオン性の化合物であることを特徴とする抗菌剤組成物。
【請求項2】
前記カチオン性基含有ポリマーは、第3級アミノ基を有することを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記疎水変性ポリアルキレングリコール化合物は、疎水性基として炭素数1〜50の炭化水素基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤組成物に関する。より詳しくは、洗浄剤、化粧料、塗料、樹脂、木材防腐剤、セメント混和剤、水処理剤、工業用水等に有用な抗菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の清潔志向及び衛生上の観点から、抗菌加工が施された種々のものが市販されている。抗菌加工品に使用される抗菌剤についても種々のものが開発され、カチオン系の抗菌剤として、塩化ベンザルコニウム等が古くから知られている。また、抗菌剤としては、抗菌性とともに安全性の高いものが求められ、揮発性が低く、溶出しにくいポリマー型の抗菌剤が検討されている。
このようなポリマー型の抗菌剤として、カチオン性基を有するポリマーを含む組成物が開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−508604号公報
【特許文献2】特開2003−40719号公報
【特許文献3】特表2008−523184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、カチオン性基を有するポリマーを含む種々の組成物が開示されているが、従来の組成物は、抗菌性能が充分でなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の組成物よりも抗菌性能に優れた抗菌剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、抗菌剤組成物について種々検討したところ、カチオン性基を有するポリマー(以下、カチオン性基含有ポリマーともいう)に、ポリアルキレングリコール末端を疎水性基により変性させた疎水変性ポリアルキレングリコール化合物を特定の割合で混合することにより、抗菌性能が向上することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、カチオン性基含有ポリマーを含む抗菌剤組成物であって、上記抗菌剤組成物は、更に疎水変性ポリアルキレングリコール化合物を含み、上記カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の総量に対するカチオン性基含有ポリマーの割合が15〜85質量%、及び、疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の割合が15〜85質量%である抗菌剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0008】
本発明における抗菌剤組成物とは抗菌性能を有する剤を含む組成物のことをいう。抗菌性能とは、殺菌(微生物を殺す)性能、静菌(微生物の繁殖を抑える)性能のいずれかの性能を有することをいい、対象となる微生物は、細菌、真菌である。
【0009】
上記細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌が挙げられる。上記真菌としてはロドトルラ酵母、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。特に、グラム陰性菌は細胞膜に外膜と内膜を有しており、抗菌性能が発揮され難く、グラム陰性菌に効果のある抗菌剤組成物が好ましい。
【0010】
本発明の抗菌剤組成物は、カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物とを上記特定の割合で含むことにより、疎水変性ポリアルキレングリコール化合物を含まないものよりも抗菌性が向上する。カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物は疎水性残基を持っていることから、水溶液中では互いに近傍に位置していると考えられる。これらが協奏的に作用することによって、それぞれ単独で使用するよりも抗菌性能が向上する。
このようなカチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物を含む抗菌剤組成物を、微生物に作用させると、組成物中のカチオン性基含有ポリマーのカチオン性基がマイナスの電荷を有する微生物の表面に吸着し、細胞膜の流動性を増加させ、さらに疎水変性ポリアルキレングリコール化合物が細胞膜を構成する脂質等の間の相互作用を破壊することにより、微生物の細胞の破壊が進行することが推定される。したがって、本発明の抗菌剤組成物は、カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物との相乗効果により、抗菌性能が向上すると考えられる。
【0011】
本発明の抗菌剤組成物は、カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の総量に対するカチオン性基含有ポリマーの割合が15〜85質量%、及び、疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の割合が15〜85質量%である。
上記カチオン性基含有ポリマーの割合が30〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60質量%である。
上記疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の割合が30〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60質量%である。
本発明の抗菌剤組成物におけるカチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物との含有割合が上記好ましい範囲であれば、組成物の抗菌性能がより向上する傾向にある。
【0012】
本発明の抗菌剤組成物に含まれる疎水変性ポリアルキレングリコール化合物(以下、疎水変性PAGともいう)は、ポリアルキレングリコール鎖と、ポリアルキレングリコール鎖の少なくとも1つの末端の疎水性基との少なくとも2つの構造部位を有するものであれば、その他の構造部位を含んでいてもよい。また、これらの構造部位を2つ以上含む場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。このような構造を有する本発明の疎水変性PAGは、親水性と疎水性のバランスが良いため、細胞膜内への浸透性が高くなり、抗菌性能が高くなる。
【0013】
上記ポリアルキレングリコール鎖の末端に結合した疎水性基とは、ポリアルキレングリコール鎖の末端に直接結合していても、他の構造を介して結合していてもよい。上記他の構造は、特に制限されないが、後述する2価の連結基等が挙げられる。
【0014】
上記ポリアルキレングリコール鎖の少なくとも1つの末端に疎水性基が結合しているとは、ポリアルキレングリコール鎖の片末端のみに疎水性基が結合していても、両末端に疎水性基が結合していてもよいことを意味する。好ましくは、ポリアルキレングリコール鎖の両末端に疎水性基が結合していることである。
【0015】
上記疎水性基は、ポリアルキレングリコール鎖の親水性を低下することができる基を意味する。
上記疎水性基として具体的には、例えば、炭素数1〜50の炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
上記疎水性基は、直鎖型又は分岐型のいずれであってもよい。
また、上記炭化水素基の炭素数としては、1〜50が好ましく、より好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜20、特に好ましくは8〜18である。
本発明の疎水性基が上記好ましい基であれば、疎水性PAGにおける親水性と疎水性のバランスがより良好なものとなり、細胞膜への浸透性がより向上し、抗菌性能が高くなる。
【0016】
上記疎水変性PAGにおける2以上のポリアルキレングリコール末端に疎水性基を有する場合、少なくとも1つの末端に上記好ましい疎水性基を有していることが好ましい。
【0017】
上記疎水変性PAGは、下記式(1);
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は1価の基を表す。但し、R及びRの少なくともいずれか一方は、1価の疎水性基である。X及びXは、同一又は異なって、直接結合又は2価の連結基を表す。AOは、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜100の数である。)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
上記式(1)中、AOは、「同一又は異なって、」オキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記2価の連結基としては、特に制限されず、エーテル基、エステル基等が挙げられる。また、疎水変性PAGを後述する疎水変性PAGの製造方法により製造する場合には、ポリアルキレングリコール化合物の末端の基と疎水性基含有化合物の反応基との反応により2価の連結基が形成されることとなる。
【0021】
本発明の疎水変性PAGが有するポリアルキレングリコール鎖は、2種以上のアルキレンオキシドを有するものであってもよい。
本発明の疎水変性PAGが有するポリアルキレングリコール鎖は、炭素数2〜18のオキシアルキレン基から構成される高分子鎖(ポリアルキレンオキシド)であることが好ましい。オキシアルキレン基の炭素数は、より好ましくは、2〜8であり、更に好ましくは、2〜4である。
【0022】
上記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
【0023】
上記ポリアルキレングリコール鎖は、親水性と疎水性のバランスの観点からは、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましい。全アルキレンオキシド100モル%中のオキシエチレン基は、より好ましくは、60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0024】
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数は、1〜100であることが好ましく、より好ましくは1〜60であり、更に好ましくは1〜40であり、特に好ましくは1〜30であり、最も好ましくは5〜20である。上記好ましい範囲であれば、上記疎水変性PAGにおける親水性基と疎水性基とのバランスがより良好なものとなる。
【0025】
上記ポリアルキレングリコール鎖が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合は、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
【0026】
本発明の疎水変性PAGは、非イオン性の化合物であることが好ましい。疎水変性PAGにカチオン性基が含まれる場合、本発明の抗菌剤組成物に含まれるカチオン性基含有ポリマーとの静電反発作用が生じ、共同的な抗菌作用が発現されないおそれがある。また、同様にアニオン性基が含まれる場合、本発明の抗菌剤組成物に含まれるカチオン性基含有ポリマーとの静電相互作用が発生し、カチオン性基の効果を低減させてしまうため、抗菌作用が発現されないおそれがあるが、疎水変性PAGが非イオン性の化合物であれば、このような不具合をより充分に抑制することができる。
【0027】
本発明の疎水変性PAGは、市販品を用いてもよく、ポリアルキレングリコール含有化合物と疎水性基含有化合物とを反応する工程を含む製造方法により製造してもよい。
上記疎水変性PAGの市販品としては、上記式(1)においてRがアルキル基、Xがエーテル基、Xが直接結合、Rが水素原子である化合物等が挙げられる。このような化合物として、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。上記ポリエチレングリコールアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数が12であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が8である、エマルゲン108(花王株式会社製)及びアルキル基の炭素数が18であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が12である、エマルゲン320P(花王株式会社製)は、本発明における好適な疎水変性PAGの1つである。
【0028】
本発明の疎水変性PAGを上記方法により製造する場合、ポリアルキレングリコール含有化合物は、ポリアルキレングリコール鎖を少なくとも1つ有する限り特に制限されないが、下記式(2);
【0029】
【化2】
【0030】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は反応性の官能基を表す。但し、R、Rのうち、少なくとも一方は、水素原子又は反応性の官能基である。X、Xは、同一又は異なって、直接結合又は2価の連結基を表す。但し、Rが、炭化水素基以外である場合には、Xは、直接結合であり、Rが、炭化水素基以外である場合には、Xは、直接結合である。AO及びnは、上記(1)におけるAO及びnと同様である。)で表される構造の化合物が好ましい。
上記R、Rのいずれかが炭化水素基である場合、炭化水素基としては、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基であることが好ましい。
上記R、Rのいずれかが反応性の官能基である場合、反応性の官能基としてはアミノ基、エポキシ基、カルボン酸(塩)基、硫酸(塩)基、リン酸(塩)基等が挙げられる。好ましくはエポキシ基、である。
上記R、Rのうち少なくとも一方は、水素原子であることが好ましい。
【0031】
上記2価の連結基としては、特に制限されないが、例えばエステル基、エーテル基等が挙げられる。
上記R又はRが、炭素数3〜4のアルケニル基である場合、X又はXは、エステル基又はエーテル基であることが好ましい。
【0032】
上記ポリアルキレングリコール含有化合物としては、例えば、不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が挙げられる。上記ポリアルキレングリコール含有化合物として好ましくは、不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物である。
【0033】
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、例えば、ビニルアルコールポリアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールポリアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物、3−メチル−3−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールポリアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物が挙げられる。好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールポリアルキレンオキシド付加物である。
【0034】
上記不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物としては、ポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸とのエステル化物が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記疎水性基含有化合物は、疎水性基を有する限り特に制限されず、疎水性基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
上記疎水性基含有化合物は、ポリアルキレングリコール含有化合物のポリアルキレングリコール鎖末端の水素原子又は反応性官能基と反応することができる官能基を有していることが好ましい。
上記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸(塩)基、硫酸(塩)基、リン酸(塩)基等が挙げられる。好ましくはエポキシ基である。上記疎水性基含有化合物がエポキシ基を有する化合物である場合、これらの中でも、グリシジルエーテル基を有する化合物が好ましい。
上記疎水性基含有化合物がグリシジルエーテル基を有する化合物である場合、下記式(3);
【0036】
【化3】
【0037】
(式中、Rは、疎水性基を表す。)で表される構造の化合物であることが好ましい。
上記疎水性基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
【0038】
上記ポリアルキレングリコール含有化合物と疎水性基含有化合物とを反応する工程において、ポリアルキレングリコール含有化合物のポリアルキレングリコール鎖末端の水酸基と疎水性基含有化合物としてグリシジルエーテル基を有する化合物とを反応させた場合には、下記式(4);
【0039】
【化4】
【0040】
で表される構造の連結基を介してポリアルキレングリコール鎖と疎水性基とが結合することとなる。
【0041】
上記反応工程において、ポリアルキレングリコール含有化合物100モル%に対する疎水性基含有化合物の量は、1〜300モル%であることが好ましい。より好ましくは、1〜200モル%であり、更に好ましくは、1〜100モル%である。
【0042】
上記反応工程の反応温度は、70〜140℃であることが好ましい。より好ましくは、80〜130℃である。
また反応時間は、1〜48時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜24時間である。
上記反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性雰囲気とするのがよい。例えば、反応開始前に系内を窒素などの不活性ガスで置換し、窒素気流化において反応を行うことが好ましい。
上記反応工程では、触媒を用いることが好ましい。上記触媒としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化カリウムである。
【0043】
本発明の抗菌剤組成物に含まれるカチオン性基含有ポリマーは、少なくとも1つのカチオン性基を有していれば、特に制限されない。ここでカチオン性基とは、カチオンを有する基又はカチオンを発生させる基であり、例えば、第1〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基等が挙げられる。第1〜3級アミノ基としては、下記式(5);
【0044】
【化5】
【0045】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R及びRのうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましく、R及びRの両方が炭素数1〜5の炭化水素基であることがより好ましい。すなわち、カチオン性基としては、第1〜3級アミノ基の中でも、第3級アミノ基が好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記炭化水素基の炭素数としては、1〜4が好ましく、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1〜2である。
【0046】
上記第4級アンモニウム塩基としては、下記式(6);
【0047】
【化6】
【0048】
(式中、R〜R10は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。炭素数1〜5の炭化水素基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
上記R〜R10のうち少なくともいずれか1つは、炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましく、R〜R10のすべてが炭素数1〜5の炭化水素基であることがより好ましい。
上記式(6)におけるR及びR10は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基であることが更に好ましい。
上記式(6)におけるRは、炭素数2〜5のアルケニル基であることが更に好ましい。
【0049】
上記カチオン性基としては、第1〜3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基の中でも、第3級アミノ基が好ましく、第3級アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基がより好ましい。
【0050】
本発明のカチオン性基含有ポリマーは、カチオン性基を有する単量体(以下、カチオン性基含有単量体ともいう。)を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。
【0051】
上記カチオン性基含有単量体は、カチオン性基とエチレン性不飽和基を有している限り特に制限されないが、下記式(7−1)又は(7−2);
【0052】
【化7】
【0053】
(式(7−1)及び(7−2)中、R11〜R13は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(7−1)中、R、Rは、上記式(5)におけるR、Rと同様である。式(7−2)中、R〜R10は、上記式(6)におけるR〜R10と同様である。)で表される構造であることが好ましい。
【0054】
上記R11は、メチル基であることが好ましい。上記R11がメチル基である場合、カチオン性基含有ポリマーの抗菌性能がより向上する。
上記R12、R13は、水素原子であることが好ましい。
上記式(7−1)における2価の連結基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(8);
【0055】
【化8】
【0056】
(式中、mは、0〜5の整数を表す。)で表される構造が挙げられる。
【0057】
上記式(7−2)における2価の連結基としては、炭素数1〜5のアルキレン基であることが好ましい。
上記式(7−2)におけるR及びR10は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
上記式(7−2)におけるRは、炭素数2〜5のアルケニル基であることが好ましい。
【0058】
上記カチオン性基含有単量体として、具体的には、メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ジエチルアミノエチル、アクリル酸−2−ジエチルアミノエチル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
上記カチオン性基含有単量体として、好ましくは、メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ジエチルアミノエチル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、より好ましくはメタクリル酸−2−ジメチルアミノエチルである。
【0059】
本発明のカチオン性基含有ポリマーは、上記カチオン性基含有単量体以外のその他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体としては、カチオン性基含有単量体と共重合できるものである限り特に制限されないが、例えば、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等の(メタ)アクリル酸以外のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体、およびそれらの塩;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、およびそれらの塩;3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸等の共役ジエンスルホン酸等のスルホン酸系単量体、およびそれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン等の(メタ)アリルオキシプロパン系化合物、および、それらの化合物1モルに対してエチレンオキサイドを1モル〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等);(メタ)アリルアルコール、及び、(メタ)アリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを1モル〜100モル付加させた化合物等のアリルエーテル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;イソプレノール、および、イソプレノール1モルに対してエチレンオキサイドを1モル〜100モル付加させた化合物等のイソプレン系単量体;等が挙げられる。
【0060】
上記全単量体成分100質量%に対するカチオン性基含有単量体の含有割合は、1〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、50〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
【0061】
上記全単量体成分100質量%に対するその他の単量体の含有割合は、0〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは0〜20質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0062】
上記カチオン性基含有ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましい。より好ましくは1,000〜100,000であり、更に好ましくは、1,000〜80,000であり、特に好ましくは1,500〜50,000であり、最も好ましくは2,000〜30,000である。
重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0063】
本発明のカチオン性基含有ポリマーは、上記単量体成分を重合して製造することが好ましい。重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合方法が好適である。この際、使用できる溶媒としては、有機溶剤、溶媒総量100質量%中に水を50質量%以上含む混合溶媒、又は、水単独溶媒が挙げられる。有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類が挙げられ、好ましくはイソプロピルアルコールである。カチオン性基含有ポリマーの製造に使用する溶媒として好ましくは、水である。
【0064】
本発明のカチオン性基含有ポリマーは、上記単量体成分を重合開始剤の存在下で重合する方法により製造することが好ましい。重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、アゾ系化合物が好ましく、溶媒として水又は混合溶媒を用いて重合を行う場合、より好ましくは2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩であり、溶媒として上記有機溶剤を用いて重合を行う場合、より好ましくは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)である。
【0065】
重合開始剤の使用量は、上記単量体成分の重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、通常25g以下であり、好ましくは1〜20g、より好ましくは1〜16gであることが好ましい。
【0066】
上記重合方法において、カチオン性基含有単量体として、例えばメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(以下、DAMと称する場合もある)を用いた場合、水溶媒に滴下すると、アルカリ性となるため、加水分解の恐れがある。それを抑制するため、酸性物質を同時に滴下する方法を用いてもよい。酸性物質としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられるが、反応装置の耐食性を考慮すると、酢酸が好ましい。
【0067】
上記重合方法において、酸性物質を使用する場合、酸性物質の使用量は特に制限されないが、反応系中が中性もしくは弱酸性であればよい。
【0068】
上記製造方法ではまた、重合開始剤に加えて、連鎖移動剤の存在下で重合を行ってもよい。
連鎖移動剤としては、通常用いられる連鎖移動剤が使用できる。具体的には、例えば、チオール系連鎖移動剤;ハロゲン化物;第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等;亜硫酸塩、重亜硫酸塩等の、低級酸化物等が挙げられ、これらの具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記連鎖移動剤の中でも、次亜リン酸(塩)及び/又は重亜硫酸塩を使用することが好ましい。より好ましくは次亜リン酸(塩)であり、更に好ましくは次亜リン酸ナトリウム(ホスフィン酸ナトリウム)である。
上記連鎖移動剤を用いる場合、添加量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、1〜20gであることが好ましい。より好ましくは2〜15gである。
【0069】
本発明の抗菌剤組成物は、カチオン性基含有ポリマー及び疎水変性ポリアルキレングリコール化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、組成物の抗菌性能を阻害するものでない限り特に制限されないが、例えば、アルカリ調整剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0070】
上記その他の成分の含有量は、組成物の抗菌性能を阻害しなければ、特に制限されないが、上記カチオン性基含有ポリマーと疎水変性ポリアルキレングリコール化合物の総量に対して、1〜30質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0071】
本発明の抗菌剤組成物は、上述の構成よりなり、従来の組成物よりも抗菌性能に優れるため、洗濯洗浄剤、柔軟剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧品、制汗剤等の化粧料用途;塗料、木材防腐剤、セメント混和剤、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用途等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0073】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
カチオン性基含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:東ソー製 EcoSEC HLC−8320GPC
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー製 TSKgel α−M、α−2500
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/min
注入量:20μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:東ソー製 EcoSEC−WS
溶離液:0.1Mホウ酸バッファー(pH9.2)/アセトニトリル=4/1(重量比)
【0074】
<グリシジルエーテルの転化率>
グリシジルエーテルの転化率は、反応液中に残存するグリシジルエーテルの量を検出器にFIDを備えるガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製;GC−2010)を用いて、内部標準法で定量することにより算出した。
【0075】
<最小発育阻止濃度(MIC)>
抗菌剤組成物を含む水溶液をミューラーヒントン培地中で2倍ずつ順次希釈していき、抗菌剤含有培地の希釈系列を調製した。その後、各濃度の抗菌剤を含有する培地をポリスチレン製96穴プレートに50μLずつ添加した。次に、18時間ミューラーヒントン寒天培地上で生育させた大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC−12732)のコロニーをバターフィールド緩衝液に懸濁し、10×10個/mL程度の菌液を調製した。調製した菌液をミューラーヒントン培地中で10×10個/mL程度まで希釈し、上記で調製した希釈系列に対して50μLずつ添加した。35℃にて20時間静置後、菌が生育していない培地中の最小の抗菌剤濃度(ppm)を最小発育阻止濃度(MIC)として決定した。菌の生育の有無は、目視にて濁度が上昇しているかによって判断した。
【0076】
<製造例1>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水59.0gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(和光純薬工業(株)製、以下、DAMともいう)62.9g、10%2,2’−アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩(和光純薬工業(株)製、以下、V−50ともいう)水溶液64.1g、酢酸(和光純薬工業(株)製)22.8g、をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V‐50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体1の重量平均分子量は5600であった。
【0077】
<製造例2>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水53.0gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM50.3g、10%V−50水溶液51.3g、酢酸18.3g、をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V‐50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体2の重量平均分子量は8500であった。
【0078】
<製造例3>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水75.0gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM50.3g、10%V−50水溶液19.2g、酢酸18.3g、5%ホスフィン酸ナトリウム一水和物(和光純薬工業(株)製、以下SHPともいう)の水溶液12.8gをそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V‐50水溶液を150分間、酢酸を120分間、SHP水溶液を165分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体3の重量平均分子量は11000であった。
【0079】
<製造例4>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水89.5gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM50.3g、V−50水溶液19.2g、酢酸18.3gをそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V‐50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体4の重量平均分子量は14000であった。
【0080】
<製造例5>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水70.5gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM50.3g、3%V−50水溶液32.0g、酢酸18.3g、をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V−50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体5の重量平均分子量は22000であった。
【0081】
<製造例6>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水89.5gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。
次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中にDAM50.3g、3%V−50水溶液10.7g、酢酸18.3g、をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、DAMを120分間、V−50水溶液を150分間、酢酸を120分間とした。また、滴下開始時間に関して、各滴下液はすべて同時に滴下を開始した。
滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結させた。得られた重合体6の重量平均分子量は75000であった。
【0082】
<製造例7>
温度計、冷却器を備えた300mlの4つ口フラスコに、粉状の水酸化カリウムを2.85g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数10モル、以下、IPN−10ともいう)を105.2g仕込み、窒素気流下120℃に昇温し、冷却器から生成する水を除去した。1時間反応後、90℃まで降温し、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製 デナコールEX−121)37.3gを滴下ロートで2時間かけて滴下した。その後2時間熟成し、IPN−10の2−エチルヘキシルグリシジルエーテル付加物(疎水変性PAG1)を得た。GCで2−エチルヘキシルグリシジルエーテルの転化率を分析したところ、99%であった。
【0083】
<製造例8>
温度計、冷却器を備えた300mlの4つ口フラスコに、粉状の水酸化カリウムを3.10g、IPN−10を105.2g仕込み、窒素気流下120℃に昇温し、冷却器から生成する水を除去した。1時間反応後、100℃まで降温し、ラウリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製 デナコールEX−192)50.0gを滴下ロートで2時間かけて滴下した。その後20時間熟成し、IPN−10のラウリルグリシジルエーテル付加物(疎水変性PAG2)を得た。GCでラウリルグリシジルエーテルの転化率を分析したところ、99%であった。
【0084】
<実施例1〜35、比較例1〜8>
得られた重合体1〜6と、疎水変性PAG1〜2又はエマルゲン108(花王株式会社製)、エマルゲン320P(花王株式会社製)とをそれぞれ80/20、50/50、15/85質量%の割合で混合し、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。また比較例として、重合体1〜6若しくはアルコキシ基の炭素数が12、エチレンオキシドの平均付加モル数が10のアルコキシポリエチレングリコールメタクリレートである、アントックスLMA−10(日本乳化剤社製)のみのもの、又は、重合体4とエチレンオキシドの平均付加モル数が9のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、エマール270J(花王株式会社製)とを6/94質量%の割合で混合したものについてもMICを測定した。結果を表1に示した。
【0085】
【表1】