(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507007
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】LEDモジュールおよびLEDモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20190415BHJP
【FI】
H01L33/60
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-66032(P2015-66032)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186975(P2016-186975A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅充
(72)【発明者】
【氏名】藤元 高佳
(72)【発明者】
【氏名】森 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕
【審査官】
島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−069539(JP,A)
【文献】
特開2011−204986(JP,A)
【文献】
特開2009−124060(JP,A)
【文献】
特開2003−234348(JP,A)
【文献】
特開昭62−085481(JP,A)
【文献】
特開2012−064713(JP,A)
【文献】
特開2009−021546(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0169181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置され、前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、前記パッケージ基板の電極、及び前記ワイヤーが封止樹脂で充填されたLEDモジュールであって、
前記封止樹脂と前記リフレクターとの境界、前記封止樹脂と前記LEDチップとの境界、及び前記封止樹脂と前記パッケージ基板の電極との境界に、同種の無機絶縁膜が一体的に成膜されており、
前記リフレクターはセラミックからなり、
前記無機絶縁膜は密着層と当該密着層よりも密度が高い浸入防止層とが積層された構造であり、前記リフレクターは前記密着層に接することを特徴とするLEDモジュール。
【請求項2】
前記無機絶縁膜は、前記密着層と前記浸入防止層とが交互に複数積層された構成であることを特徴とする請求項1に記載のLEDモジュール。
【請求項3】
前記密着層はSiCNからなり、前記浸入防止層はSiO2又はAl2O3からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDモジュール。
【請求項4】
パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置されたモジュールの前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に同種の無機絶縁膜を一体的に成膜する成膜工程と、
前記無機絶縁膜が成膜された前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に封止樹脂を充填して、前記LEDチップ、前記ワイヤー、及び前記リフレクターの内周面を前記封止樹脂で封止する封止工程を備え、
前記リフレクターはセラミックからなり、
前記無機絶縁膜は密着層と当該密着層よりも密度が高い浸入防止層とが積層された構造であり、前記リフレクターは前記密着層に接することを特徴とするLEDモジュールの製造方法。
【請求項5】
前記無機絶縁膜は、前記密着層と前記浸入防止層とが交互に複数積層された構成であることを特徴とする請求項4に記載のLEDモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記密着層はSiCNからなり、前記浸入防止層はSiO2又はAl2O3からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のLEDモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤー断線及び封止樹脂内への大気や水分の浸入を抑制したLEDモジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDチップを樹脂で封止したLEDモジュールが照明具として広く用いられている。LEDモジュールの一般的な構造は、
図2に示す断面図のようにパッケージ基板1の電極5上にLEDチップ2を搭載し、そのLEDチップ2の電極とパッケージ基板1の電極5とをワイヤー6で電気的に接続するととともに、LEDチップ2の周囲に光を反射させるリフレクター4を配置し、リフレクター4の内周面、ワイヤー6、及びLEDチップ2並びにパッケージ基板1の電極5からなる凹部空間にシリコーン樹脂からなる封止樹脂3を充填して大気から封止した構造となっている。
【0003】
LEDチップ2は、点灯、消灯により加熱、冷却を繰り返すことになるが、その際の熱膨張、収縮により、パッケージ基板1、リフレクター4、ワイヤー6、及びLEDチップ2等の各素材の線膨張係数の違いによる応力が発生し、接続が弱いLEDチップ2の電極又はパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接続部が断線してLEDチップ2が点灯しなくなるという問題があった。
【0004】
また、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3と、セラミック等からなるリフレクター4との密着性が弱く、LEDチップ2の点灯、消灯による膨張、収縮により、封止樹脂3の剥がれが発生して隙間が生じ、そこから大気や水分が浸入してLEDチップ2の電極やパッケージ基板1の電極5が腐食するという問題があった。
【0005】
特許文献1(特開2011−134786号公報)には、銀からなるリフレクターの腐食を防止するために基板の内周面に無機絶縁層を形成した構成が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、リフレクターには無機絶縁層が形成されているので腐食を防止できるが、LEDチップの電極やパッケージ基板の電極の表面に無機絶縁層が形成されていないため、LEDチップの電極やパッケージ基板の電極の腐食を防止することができない。また、LEDチップの電極又はパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:特開2011−134786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、LEDチップの電極及びパッケージ基板の電極の腐食を防止するとともに、LEDチップの電極とワイヤーとの接続部及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置され、前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、前記パッケージ基板の電極、及び前記ワイヤーが封止樹脂で充填されたLEDモジュールであって、
前記封止樹脂と前記リフレクターとの境界、前記封止樹脂と前記LEDチップとの境界、及び前記封止樹脂と前記パッケージ基板の電極との境界に、同種の無機絶縁膜が一体的に成膜されて
おり、
前記リフレクターはセラミックからなり、
前記無機絶縁膜は密着層と当該密着層よりも密度が高い浸入防止層とが積層された構造であり、前記リフレクターは前記密着層に接することを特徴とするLEDモジュールを提供するものである。
【0010】
この構成により、
密着層によりリフレクターとの密着性が確保され、封止樹脂とリフレクターとの間に隙間が生じることを防止
するとともに、浸入防止層により大気や水分が浸入することが防
ぐことができる。これにより、LEDチップの電極及びパッケージ基板の電極の腐食を防止することができ
る。また、LEDチップの電極とワイヤーとの接合部分及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接合部分とが無機絶縁膜で押さえられた構成となることにより、LEDチップの電極とワイヤーとの接続部及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することができるLEDモジュールを製造することができる。
【0011】
前記無機絶縁膜は、前記密着層と前記浸入防止層とが交互に複数積層された構成としてもよい。
【0012】
この構成により、
密着性と大気・水分の浸入防止性とをさらに高めることができる。
【0013】
前記密着層はSiCNからなり、前記浸入防止層はSiO2又はAl2O3からなる構成としてもよい。
【0014】
この構成により、浸入防止層をSiO2又はAl2O3で構成することにより大気や水分の浸入防止性に加えて、光を取り出す高い透明性を確保するとともに、密着層をSiCNで構成することにより密着性を確保することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために本発明は、パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置されたモジュールの前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に同種の無機絶縁膜を一体的に成膜する成膜工程と、
前記無機絶縁膜が成膜された前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に封止樹脂を充填して、前記LEDチップ、前記ワイヤー、及び前記リフレクターの内周面を前記封止樹脂で封止する封止工程を備え、
前記リフレクターはセラミックからなり、
前記無機絶縁膜は密着層と当該密着層よりも密度が高い浸入防止層とが積層された構造であり、前記リフレクターは前記密着層に接することを特徴とするLEDモジュールの製造方法を提供するものである。
【0016】
この製造方法により、
密着層によりリフレクターとの密着性が確保され、封止樹脂とリフレクターとの間に隙間が生じることを防止
するとともに、浸入防止層により大気や水分が浸入することが防
ぐことができる。これにより、LEDチップの電極及びパッケージ基板の電極の腐食を防止することができ
る。また、LEDチップの電極とワイヤーとの接合部分及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接合部分とが無機絶縁膜で押さえられた構成となることにより、LEDチップの電極とワイヤーとの接続部及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することができるLEDモジュールを製造することができる。
【0017】
前記無機絶縁膜は、前記密着層と前記浸入防止層とが交互に複数積層された構成としてもよい。
【0018】
この製造方法により、
密着性と大気・水分の浸入防止性とをさらに高めることができる。
【0019】
前記密着層はSiCNからなり、前記浸入防止層はSiO2又はAl2O3からなる構成としてもよい。
【0020】
この構成により、浸入防止層をSiO2又はAl2O3で構成することにより大気や水分の浸入防止性に加えて、光を取り出す高い透明性を確保するとともに、密着層をSiCNで構成することにより密着性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置され、前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、前記パッケージ基板の電極、及び前記ワイヤーが封止樹脂で封止されたLEDモジュールであって、前記封止樹脂と前記リフレクターとの境界、前記封止樹脂と前記LEDチップとの境界、及び前記封止樹脂と前記パッケージ基板の電極との境界に、同種の無機絶縁膜が一体的に成膜されていることを特徴とするLEDモジュールにより、LEDチップの電極及びパッケージ基板の電極の腐食を防止するとともに、LEDチップの電極とワイヤーとの接続部及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することができる。
【0022】
また、パッケージ基板の電極上にLEDチップが搭載され、前記LEDチップの電極と前記パッケージ基板の電極間がワイヤーで電気的に接続され、前記LEDチップの周囲にリフレクターが配置されたモジュールの前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に同種の無機絶縁膜を一体的に成膜する成膜工程と、前記無機絶縁膜が成膜された前記LEDチップ、前記リフレクターの内周面、及び前記パッケージ基板の電極に封止樹脂を充填して、前記LEDチップ、前記ワイヤー、前記リフレクターの内周面を前記封止樹脂で封止する封止工程を備えたことを特徴とするLEDモジュールの製造方法により、LEDチップの電極及びパッケージ基板の電極の腐食を防止するとともに、LEDチップの電極とワイヤーとの接続部及びパッケージ基板の電極とワイヤーとの接続部の断線を防止することができるLEDモジュールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
(LEDモジュール)
図1を用いて、本発明の実施例1について説明する。
図1は、LEDモジュールの断面を示す図である。パッケージ基板1の電極5上にLEDチップ2が搭載され、そのLEDチップ2の電極とパッケージ基板1の電極5とがワイヤー6で電気的に接続されている。また、LEDチップ2の周囲には、セラミック等からなるリフレクター4が配置されてLEDチップ2が発光した光の一部が反射して大気に向かうことにより、より多くの光がLEDモジュールから放出されるようにされている。
【0025】
そして、リフレクター4の内周面、LEDチップ2の表面、及びパッケージ基板1の電極5が同種の無機絶縁膜7で一体的に覆われている。また、ワイヤー6の一部又は全部にも無機絶縁膜7が形成されている。無機絶縁膜7は、バッファ層とも呼ばれ、SiCNを用いて成膜されている。SiCNからなる無機絶縁膜7を成膜することにより、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3との密着性が向上する。
【0026】
なお、無機絶縁膜7のSiCNには、製造工程で混入する可能性のある少ない原子%割合のOが含まれてもよい。具体的には、Oが含まれる割合は、10%以下である。
【0027】
但し、無機絶縁膜7としてSiO2を成膜する場合のように多くのOを含む場合は、パッケージ基板の電極5やLEDチップ2の電極を酸化させるおそれがある。
【0028】
ここで、一体的に覆われているとは、切れ目なく全体的に覆われていることであり、これにより、大気や水分が切れ目等から侵入することを防ぐことができる。
【0029】
無機絶縁膜7の厚さは、1μm程度であってよいが、これ以上の厚さであってもこれ以下の厚さであってもよい。
【0030】
無機絶縁膜7は、無機物からなるバッファ層である。なお、無機物とは、有機物を除く物質であり、具体的には炭素骨格を持たない物質である。つまり無機物には、合成/天然樹脂及び炭素骨格(炭化水素骨格を含む)を有するその他化合物は含まれない。
【0031】
そして、この無機絶縁膜7が成膜された凹部空間には、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3が充填されて、LEDチップ2、パッケージ基板1の電極5、ワイヤー6、及びリフレクター4の内周面が大気から封止されている。
【0032】
すなわち、封止樹脂3とリフレクター4との境界、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に、同種の無機絶縁膜7が一体的に成膜されている。
【0033】
封止樹脂3とリフレクター4との境界に無機絶縁膜7を成膜したことにより、封止樹脂3とリフレクター4との密着性がよくなり、封止樹脂3とリフレクター4との間に隙間が生じることを防止して大気や水分が浸入することが防げることにより、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5が腐食することを防止できる。
【0034】
また、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に無機絶縁膜7が成膜されたことにより、LEDチップ2の電極とワイヤー6の接合部分、及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接合部分とが無機絶縁膜7で押さえられた構成となり、LEDチップ2の電極とワイヤー6との接続部及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接続部の断線を防止することができる。
【0035】
また、封止樹脂3とリフレクター4との境界、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に、同種の無機絶縁膜7が一体的に成膜されていることにより、膜に切れ目が存在しないから隙間が生じることなく、大気や水分の浸入を防止でき、LEDチップ2の電極又はパッケージ基板1の電極5が腐食することを防止できる。
【0036】
(製造方法)
次に、本発明の実施例1におけるLEDモジュールの製造方法について説明する。
図1のようにリフレクター4を備えたパッケージ基板1の電極5上にLEDチップ2が搭載され、LEDチップ2の電極とパッケージ基板1の電極5とがワイヤー6で電気的に接続されたモジュールに対して、プラズマCVD装置によりこのモジュールの内周面の凹部空間に無機絶縁膜7を成膜する成膜工程を実施する。
【0037】
すなわち、リフレクター4の内周面、LEDチップ2の表面、及びパッケージ基板1の電極5を同種の無機絶縁膜7で一体的に成膜する。また、ワイヤー6の一部又は全部にも無機絶縁膜7が形成されてもよい。無機絶縁膜7は、SiCNを用いて成膜する。無機絶縁膜7の厚さは、1μm程度であってよいが、これ以上の厚さであってもこれ以下の厚さであってもよい。
【0038】
実施例1ではSiCNからなる無機絶縁膜7を成膜するために、プラズマCVD装置を用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、スパッタ装置や蒸着装置等を用いて成膜することができる。
【0039】
最後に、無機絶縁膜7が成膜されたモジュールの凹部空間内に、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3を充填する封止工程を実施して、LEDチップ2、パッケージ基板1の電極5、ワイヤー6、及びリフレクター4の内周面を大気から封止してLEDモジュールを完成する。
【0040】
この製造方法により、封止樹脂3とリフレクター4との間に隙間が生じることを防止して大気や水分が浸入することが防げることにより、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5の腐食を防止するとともに、LEDチップ2の電極とワイヤー6との接合部分及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接合部分とが無機絶縁膜7で押さえられた構成となり、LEDチップ2の電極とワイヤー6との接続部、及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接続部の断線を防止することができるLEDモジュールを製造することができる。
【0041】
また、封止樹脂3とリフレクター4との境界、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に、同種の無機絶縁膜7を一体的に成膜することにより、膜と膜との境界が存在しないから隙間が生じることなく、大気や水分の浸入を防止でき、LEDチップ2の電極又はパッケージ基板1の電極5が腐食することを完全に防止できる。
【実施例2】
【0042】
(LEDモジュール)
本発明の実施例2におけるLEDモジュールは、無機絶縁膜7が積層構造となっている点で実施例1と異なっている。すなわち、
図1に示すようにリフレクター4の内周面、LEDチップ2の表面、及びパッケージ基板1の電極5が同種の無機絶縁膜7で一体的に覆われている。そして、無機絶縁膜7は無機物からなるバッファ層と、さらにその表面に無機物からなるバリア層とからなる積層構造とされている。つまり、同種の無機物からなるバッファ層と同種の無機物からなるバリア層の2層により、無機絶縁膜7が構成されている。
【0043】
ここで、バリア層とは、上記のバッファ層よりも密度が高い層であり、その結果、密着性は、バッファ層より低いが、バリア性がバッファ層より向上する。無機物からなるバリア層は、具体的には、SiO2を用いて成膜しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、Al2O3を用いて成膜してもよい。
【0044】
なお、バリア層には、密着性、大気や水分の浸入防止性に加えて、光を取り出すために高い透明性が必要となるので透明性が高い酸化膜(SiO2、AL2O3)が好ましく、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3との密着性も考慮するとSiO2が最も好ましい。ただ、薄い膜で構成することで透光性への影響を少なくする場合は、窒化膜(SiN、SiON)であってもよい。
【0045】
バッファ層とは、上記バリア層よりもバリア性は低い代わりに密着性が上記バリア層よりも高い膜であり、封止樹脂3より線膨張係数の小さい材質からなる無機物である。具体的にバッファ層は、H、C、N及びSiを含むシリコン系膜であってよい。より具体的には、SiCN膜でよいが、これに必ずしも限定するものではなく、SiN膜、SiON膜であってもよい。
【0046】
なお、実施例2においては、無機物からなるバッファ層と無機物からなるバリア層とを1層ずつ成膜して2層の無機絶縁膜7としたが、これに限定されるものではなく、無機物からなるバッファ層と無機物からなるバリア層とを交互にそれぞれ複数積層成膜して一体的に覆われる無機絶縁膜7としてもよい。これにより、密着性とバリア性をさらに高めることができる。
【0047】
また、一体的に覆われているとは、切れ目なく全体的に覆われていることであり、これにより、大気や水分が切れ目等から侵入することを防ぐことができる。
【0048】
そして、積層構造である無機絶縁膜7の表面の凹部空間にシリコーン樹脂からなる封止樹脂3が充填されてLEDチップ等が大気から封止されている。
【0049】
封止樹脂3とリフレクター4との境界に、バッファ層に加えて無機物からなるバリア層を積層して無機絶縁膜7とすることにより、封止樹脂3とリフレクター4との密着性が向上して封止樹脂3とリフレクター4との間に隙間が生じることが防止できるとともに、大気や水分の浸入をさらに防げることにより、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5の腐食を防止することができる。
【0050】
また、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に積層構造の無機絶縁膜7が成膜されたことにより、LEDチップ2の電極とワイヤー6の接合部分、及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接合部分とが無機絶縁膜7で押さえられた構成となり、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接続部の断線をさらに防止することができる。
【0051】
また、封止樹脂3とリフレクター4との境界、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に、同種の無機絶縁膜7が一体的に成膜されていることにより、膜に切れ目が存在しないから隙間が生じることなく、大気や水分の浸入を防止でき、LEDチップ2の電極又はパッケージ基板1の電極5が腐食することを防止できる。
【0052】
(製造方法)
次に、本発明の実施例2におけるLEDモジュールの製造方法について説明する。
図1のようにリフレクター4を備えたパッケージ基板1の電極5上にLEDチップ2が搭載され、LEDチップ2の電極とパッケージ基板1の電極5とがワイヤー6で電気的に接続されたモジュールに対して、プラズマCVD装置によりこのモジュールの内周面の凹部空間に同種の無機物からなるバッファ層を成膜するバッファ層成膜工程を実施する。無機物からなるバッファ層は、具体的には、SiCNで成膜することができる。
【0053】
さらに、プラズマCVD装置により、同種の無機物からなるバッファ層の表面に、同種の無機物からなるバリア層を成膜するバリア層成膜工程を実施して、複層の無機絶縁膜7を形成する。無機物からなるバリア層は、具体的には、SiO2を用いて成膜することができるが、必ずしもこれに限定するものではなく、Al2O3を用いて成膜してもよい。
【0054】
なお上記したように、バリア層には、密着性、水分の浸入防止性に加えて、光を取り出すために高い透明性が必要となるので透明性が高い酸化膜(SiO2、AL2O3)が好ましく、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3との密着性も考慮するとSiO2が最も好ましい。ただ、薄い膜で構成することで透光性への影響を少なくする場合は、窒化膜(SiN、SiON)であってもよい。
【0055】
実施例2においては、バッファ層成膜工程とバリア層成膜工程とを実施することで、成膜工程が完了する。
【0056】
また、SiCNからなるバッファ層やSiO2からなるバリア層を成膜するために、プラズマCVDを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、スパッタ装置や蒸着装置等を用いて成膜することができる。
【0057】
最後に、バッファ層及びバリア層からなる無機絶縁膜7が成膜されたモジュールの空間内に、シリコーン樹脂からなる封止樹脂3充填して、LEDチップ2、パッケージ基板1の電極5、ワイヤー6、及びリフレクター4の内周面を大気から封止する封止工程を実施してLEDモジュールを完成させる。
【0058】
この製造方法により、封止樹脂3とリフレクター4との密着性が向上して、隙間が生じることが防止されて大気や水分が浸入することがさらに防げることにより、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5の腐食を防止することができるとともに、LEDチップ2の電極とワイヤー6との接合部分及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接合部分とが無機絶縁膜7で押さえられた構成とすることができ、LEDチップ2の電極とワイヤー6との接続部、及びパッケージ基板1の電極5とワイヤー6との接続部の断線を防止することができるLEDモジュールを製造することができる。
【0059】
また、封止樹脂3とリフレクター4との境界、封止樹脂3とLEDチップ2との境界、及び封止樹脂3とパッケージ基板1の電極5との境界に、同種の無機物からなるバッファ層及び同種の無機物からなる酸化膜からなる複層の無機絶縁膜7を一体的に成膜することにより、膜に切れ目が存在しないから隙間が生じることなく、大気や水分の浸入を防止でき、LEDチップ2の電極及びパッケージ基板1の電極5が腐食することがさらに防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、LEDモジュールおよびLEDモジュールの製造方法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 パッケージ基板
2 LEDチップ
3 封止樹脂
4 リフレクター
5 電極
6 ワイヤー
7 無機絶縁膜