(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ねじ送り機構は、前記ガイドブッシュの円筒部の外周に形成された固定ねじ部と前記弁軸ホルダの円筒部の内周に形成された可動ねじ部とからなり、前記下部ストッパは、前記ガイドブッシュの前記固定ねじ部に螺着されて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
前記ガイドブッシュを前記弁本体に取付固定する工程において、前記ガイドブッシュと前記弁本体との間に設けられたねじ送りによって前記ガイドブッシュを前記弁本体に対して回転させながら上昇させることを特徴とする請求項4に記載の電動弁の組立方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した如くの従来の閉弁レスタイプの電動弁では、最終的に、弁軸に連結固定されたロータをスライダが原点位置にセットされるまで閉弁方向に回転させて、弁体と弁シート部との間に前記所定の大きさの間隙を形成する。そのため、原点位置における弁体と弁シート部との間の前記間隙の寸法精度が、弁体や弁本体の弁シート部といった複雑形状を有する構成部品の部品精度に依存することとなり、概して前記間隙の寸法ばらつきが大きくなる可能性があった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成でもって、原点位置における弁体と弁シート部との間に形成される間隙の寸法ばらつきを抑えることのできる電動弁、及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記する課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、下端部に弁体が設けられた弁軸と、該弁軸が軸線方向に相対移動可能及び相対回転可能な状態で内挿される円筒部を有するガイドブッシュと、前記弁体が接離する弁シート部を有すると共に前記ガイドブッシュが取付固定された弁本体と、前記弁軸が内挿される円筒部を有すると共に、前記弁軸と連結固定される弁軸ホルダと、前記弁体を閉弁方向に付勢すべく前記弁軸と前記弁軸ホルダとの間に介装された付勢部材と、前記弁軸ホルダを前記ガイドブッシュに対して回転させるためのロータ及びステータを有するモータと、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁軸の前記弁体を前記弁本体の前記弁シート部に対して昇降させるための、前記ガイドブッシュの円筒部と前記弁軸ホルダの円筒部との間に設けられたねじ送り機構と、前記弁軸ホルダの回転下動規制を行うべく、前記ガイドブッシュに付設された下部ストッパに設けられた固定ストッパ体と、前記弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体とからなる下部ストッパ機構と、を備え、前記弁体が最下降位置にあるときに、前記弁体と前記弁シート部との間に間隙が形成される電動弁であって、
前記ガイドブッシュが前記弁本体に対して所定位置に配置され、前記下部ストッパ機構により前記弁軸ホルダが最下動位置にあるときに、前記弁体が前記弁シート部に当接する着座状態と、前記所定位置にある前記ガイドブッシュを前記弁本体に対して軸線方向で前記間隙の寸法だけ上昇させた位置で該弁本体に取付固定すると、前記下部ストッパ機構により前記弁軸ホルダが最下動位置にあるときに、前記弁体と前記弁シート部との間に前記間隙が形成される離間状態とをとり得るように、各部の寸法形状が設計されており、前記所定位置は、前記ガイドブッシュと前記弁本体とが軸線方向で離れた位置であり、前記離間状態において、前記ガイドブッシュが、前記弁本体に対し、軸線方向で前記間隙の寸法以上の間隔をあけて取付固定されていることを特徴としている。
【0012】
別の好ましい形態では、前記ガイドブッシュが前記弁本体に螺合されて固定される。
【0013】
他の好ましい態様では、前記ねじ送り機構は、前記ガイドブッシュの円筒部の外周に形成された固定ねじ部と前記弁軸ホルダの円筒部の内周に形成された可動ねじ部とからなり、前記下部ストッパは、前記ガイドブッシュの前記固定ねじ部に螺着されて固定される。
【0014】
本発明に係る電動弁の組立方法は、下端部に弁体が設けられた弁軸と、該弁軸が軸線方向に相対移動可能及び相対回転可能な状態で内挿される円筒部を有するガイドブッシュと、前記弁体が接離する弁シート部を有すると共に前記ガイドブッシュが取付固定された弁本体と、前記弁軸が内挿される円筒部を有すると共に、前記弁軸と連結固定される弁軸ホルダと、前記弁体を閉弁方向に付勢すべく前記弁軸と前記弁軸ホルダとの間に介装された付勢部材と、前記弁軸ホルダを前記ガイドブッシュに対して回転させるためのロータ及びステータを有するモータと、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁軸の前記弁体を前記弁本体の前記弁シート部に対して昇降させるための、前記ガイドブッシュの円筒部と前記弁軸ホルダの円筒部との間に設けられたねじ送り機構と、前記弁軸ホルダの回転下動規制を行うべく、前記ガイドブッシュに付設された下部ストッパに設けられた固定ストッパ体と、前記弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体とからなる下部ストッパ機構と、を備え、前記弁体が最下降位置にあるときに、前記弁体と前記弁シート部との間に間隙が形成される電動弁の組立方法であって、前記弁軸と前記弁軸ホルダとを連結固定していない状態で、前記ガイドブッシュを前記弁本体に対して所定位置に配置し、前記下部ストッパ機構により前記弁軸ホルダが最下動位置にあるときに、前記弁体を前記弁シート部に当接させる工程と、前記弁軸と前記弁軸ホルダとを連結固定する工程と、前記所定位置にある前記ガイドブッシュを前記弁本体に対して軸線方向で前記間隙の寸法だけ上昇させた位置で該弁本体に取付固定する工程とを含
み、前記所定位置は、前記ガイドブッシュと前記弁本体とが軸線方向で離れた位置であることを特徴としている。
【0017】
別の好ましい形態では、前記ガイドブッシュを前記弁本体に取付固定する工程において、前記ガイドブッシュと前記弁本体との間に設けられたねじ送りによって前記ガイドブッシュを前記弁本体に対して回転させながら上昇させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガイドブッシュが、弁本体に対し、弁体が最下降位置にあるときに弁体と弁シート部との間に形成される間隙の寸法以上の間隔をあけて取付固定されている、より具体的には、弁本体に対して所定位置にあるガイドブッシュが弁本体に対して軸線方向で前記間隙の寸法だけ上昇された後に当該弁本体に取付固定されることにより、弁体の最下降位置、言い換えれば弁体が最下降位置にあるときの弁体と弁シート部との間の間隙が規定される。すなわち、原点位置における弁体と弁シート部との間の間隙の寸法精度が、基本的に弁本体とガイドブッシュとの取付部分の寸法精度に依存することとなるため、例えば弁体や弁本体の弁シート部といった複雑形状を有する構成部品の部品精度により前記間隙の寸法精度が決められる従来の電動弁と比較して、前記間隙の寸法ばらつきを抑えることができ、もって、低流量域における流体(冷媒)流量の制御性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電動弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右等の位置、方向を表わす記述は、
図1及び
図4の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る電動弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
【0022】
図示実施形態の電動弁1は、主に、弁軸10と、ガイドブッシュ20と、弁軸ホルダ30と、弁本体40と、キャン55と、ロータ51とステータ52とからなるステッピングモータ50と、圧縮コイルばね(付勢部材)60と、抜け止め係止部材70と、ねじ送り機構28と、下部ストッパ機構29とを備える。
【0023】
前記弁軸10は、上側から、上部小径部11と、中間大径部12と、下部小径部13とを有し、その下部小径部13の下端部に、段付き逆円錐状の弁体14が一体的に形成されている。
【0024】
前記ガイドブッシュ20は、前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で内挿される円筒部21と、該円筒部21の上端部から上方に延びており、該円筒部21よりも内径が大きく、前記弁軸10の中間大径部12の上端側と上部小径部11の下端側とが内挿される延設部22とを有している。前記ガイドブッシュ20の円筒部21の外周には、ロータ51の回転駆動に応じて前記弁軸10の弁体14を弁本体40の弁シート部46aに対して昇降させるねじ送り機構28の一方を構成する固定ねじ部(雄ねじ部)23が形成されている。また、前記円筒部21の下部(固定ねじ部23より下側の部分)は、大径とされ、弁本体40の(上面に形成された)嵌合穴44への嵌合部27とされる。前記固定ねじ部23(における弁軸ホルダ30より下側)には、下部ストッパ25が、嵌合部27の上面27aと当設するようにして螺着されており、その下部ストッパ25の外周には、弁軸ホルダ30の回転下動規制を行う下部ストッパ機構29の一方を構成する固定ストッパ体24が一体的に突設されている。
【0025】
前記弁軸ホルダ30は、前記ガイドブッシュ20が内挿される円筒部31と前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部が挿通される挿通穴32aが貫設された天井部32とを有している。前記弁軸ホルダ30の円筒部31の内周には、前記ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と螺合して前記ねじ送り機構28を構成する可動ねじ部(雌ねじ部)33が形成されると共に、その円筒部31の外周下端には、前記下部ストッパ機構29の他方を構成する可動ストッパ体34が一体的に突設されている。
【0026】
また、前記弁軸10の上部小径部11と中間大径部12との間に形成された段丘面と前記弁軸ホルダ30の天井部32の下面との間には、弁軸10の上部小径部11に外挿されるように、前記弁軸10と前記弁軸ホルダ30とが昇降方向(軸線O方向)で離れる方向に付勢する、言い換えれば前記弁軸10(弁体14)を常時下方(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)60が縮装されている。
【0027】
前記弁本体40は、例えば真鍮やSUS等の金属製円筒体から構成されている。この弁本体40は、内部に弁室40aを有し、該弁室40aの側部に設けられた横向きの第1開口41に第1導管41aがろう付け等により連結固定され、該弁室40aの天井部に前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で挿通される挿通穴43及び前記ガイドブッシュ20の下部(嵌合部27)が嵌挿されて取付固定される嵌合穴44が形成され、該弁室40aの下部に設けられた縦向きの第2開口42に第2導管42aがろう付け等により連結固定されると共に、前記弁室40aと前記第2開口42との間の底部壁45に前記弁体14が接離する弁シート部46aを有する弁口オリフィス46が形成されている。
【0028】
前記弁本体40の上端部には鍔状板47がかしめ等により固着されると共に、該鍔状板47の外周に設けられた段差部に、天井付き円筒状のキャン55の下端部が突き合わせ溶接されている。
【0029】
前記キャン55の内側かつ前記ガイドブッシュ20及び前記弁軸ホルダ30の外側には、ロータ51が回転自在に配在され、前記キャン55の外側に、前記ロータ51を回転駆動すべく、ヨーク52a、ボビン52b、ステータコイル52c、及び樹脂モールドカバー52d等からなるステータ52が配置されている。ステータコイル52cには、複数のリード端子52eが接続され、これらのリード端子52eには、基板52fを介して複数のリード線52gが接続され、ステータコイル52cへの通電励磁によってキャン55内に配在されたロータ51が軸線O回りで回転するようになっている。
【0030】
キャン55内に配在された前記ロータ51は、前記弁軸ホルダ30に係合支持されており、当該弁軸ホルダ30は前記ロータ51とともに(一体に)回転するようになっている。
【0031】
詳細には、前記ロータ51は、内筒51a、外筒51b、及び内筒51aと外筒51bとを軸線O回りの所定の角度位置で接続する接続部51cからなる二重管構成とされ、内筒51aの内周に、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)軸線O方向(上下方向)に延びる縦溝51dが形成されている。
【0032】
一方、前記弁軸ホルダ30の外周(の上半部分)には、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)上下方向に延びる突条30aが突設され、その突条30aの下部両側には、前記ロータ51を支持する上向きの係止面(不図示)が形成されている。
【0033】
ロータ51の内筒51aの縦溝51dと弁軸ホルダ30の突条30aとが係合し、かつロータ51の内筒51aの下面と弁軸ホルダ30の係止面とが当接することにより、ロータ51が弁軸ホルダ30に対して位置合わせされた状態で支持固定され、前記弁軸ホルダ30は、前記ロータ51を前記キャン55内で支持しながら当該ロータ51と共に回転される。
【0034】
前記ロータ51及び弁軸ホルダ30の上側には、弁軸ホルダ30とロータ51との昇降方向における相対移動を防止する(言い換えれば、弁軸ホルダ30に対してロータ51を下方に押し付ける)と共に弁軸10と弁軸ホルダ30とを連結すべく、前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部に圧入・溶接等により外嵌固定されたプッシュナット71と、該プッシュナット71とロータ51との間に介在され、弁軸10の上端部が挿通される挿通穴72aが中央に形成された円板状部材からなるロータ押さえ72とから構成される抜け止め係止部材70が配在されている。すなわち、前記ロータ51は、圧縮コイルばね60の付勢力により上方に付勢される弁軸ホルダ30と前記ロータ押さえ72との間で挟持されている。なお、弁軸ホルダ30の上端から係止面までの(上下方向の)高さは、ロータ51の内筒51aの(上下方向の)高さと同じであり、弁軸ホルダ30(の天井部32)の上面は、前記ロータ押さえ72の下面(平坦面)と当接している。
【0035】
また、前記弁軸10の上端部に固定された前記プッシュナット71には、動作時にガイドブッシュ20に対して弁軸ホルダ30が上方に移動し過ぎて、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33との螺合が外れるのを防止すべく、弁軸ホルダ30をガイドブッシュ20側に付勢するコイルばねからなる復帰ばね75が外装されている。
【0036】
そして、当該電動弁1では、例えば弁シート部46aへの弁体14の喰いつきを防止すると共に、低流量域での制御性を確保すべく、弁体14が最下降位置(原点位置)にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成されるようになっており、ガイドブッシュ20は、弁本体40に対し、昇降方向(軸線O方向)で前記間隙の寸法Hに相当する間隔をあけて、言い換えれば、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面との間隔が前記間隙の寸法Hとなるように取付固定されている。
【0037】
この電動弁1の組立工程、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程を、
図2を参照しながら詳説すると、まず、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、弁本体40等を組み付ける。このとき、ガイドブッシュ20と弁本体40とは、軸線O方向で当接するように、すなわち、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面とを当接させるように、かつ、昇降方向で相対移動(摺動)可能に配置する。次いで、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁シート部46aに当接(着座)し、圧縮コイルばね60が若干圧縮され、かつ、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接するまで、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28を利用して、前記弁軸ホルダ30、ロータ51、及び弁軸10を回転させながら下降させる。そして、このように弁軸ホルダ30が最下降位置に配置された状態で、弁軸10の上端部に、ロータ押さえ72を嵌め込むと共にプッシュナット71を圧入・溶接等により外嵌固定する(着座状態、
図2(A)参照)。
【0038】
次に、上記着座状態から、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、抜け止め係止部材70(プッシュナット71とロータ押さえ72)等が一体とされた組立体を、弁本体40の嵌合穴44内でガイドブッシュ20の嵌合部27を摺動させながら所定寸法Hだけ上昇させた後、その組立体のガイドブッシュ20を弁本体40に溶接・溶着・接着・かしめ等により相対移動不能に固定する。これにより、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁本体40に設けられた弁シート部46aに対して持ち上げられるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成される(離間状態、
図2(B)参照)。
【0039】
なお、着座状態において、弁本体40に対するガイドブッシュ20の位置決めを簡素化すべく、ガイドブッシュ20と弁本体40とを軸線O方向で当接させる、すなわち、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面とを当接させた後に、前記組立体を弁本体40に対して所定寸法Hだけ上昇させ、前記組立体のガイドブッシュ20を弁本体40に溶接・溶着・接着・かしめ等により相対移動不能に固定するものとして説明したが、前記着座状態において、弁本体40に対するガイドブッシュ20の位置決めができれば、必ずしもガイドブッシュ20と弁本体40とを軸線O方向で当接させる必要はない。すなわち、着座状態において、ガイドブッシュ20と弁本体40とを軸線O方向で離れた位置に配置した後に(このときに、上記と同様に、弁体14を弁シート部46aに当接させる)、弁軸10の上端部にロータ押さえ72を嵌め込むと共にプッシュナット71を圧入・溶接等により外嵌固定して弁軸10と弁軸ホルダ30とを連結固定し、前記組立体を弁本体40に対して所定寸法Hだけ上昇させ、前記組立体のガイドブッシュ20を弁本体40に溶接・溶着・接着・かしめ等により相対移動不能に固定してもよい。この場合には、前記した離間状態において、ガイドブッシュ20は、弁本体40に対し、軸線O方向で前記間隙の寸法Hより大きい間隔をあけて取付固定されることとなる。
【0040】
また、図示実施形態では、上記着座状態から、前記組立体を、弁本体40の嵌合穴44内でガイドブッシュ20の嵌合部27を摺動させながら上昇させるものとして説明したが、例えば、弁本体40の嵌合穴44の内周に雌ねじ部を形成し、ガイドブッシュ20の嵌合部27の外周に雄ねじ部を形成し、弁本体40の嵌合穴44にガイドブッシュ20の嵌合部27を螺合させ、その雌ねじ部と雄ねじ部とのねじ送りによって前記組立体を前記弁本体40に対して回転させながら上昇させてもよい。
【0041】
かかる構成の電動弁1では、ステータ52(のステータコイル52c)への通電励磁によってロータ51が回転せしめられると、それと一体に弁軸ホルダ30及び弁軸10が回転せしめられる。このとき、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28により、弁軸10が弁体14を伴って昇降せしめられ、これによって、弁体14と弁シート部46aとの間の間隙(リフト量)が増減されて、冷媒等の流体の通過流量が調整される。また、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34とガイドブッシュ20に固定された下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、弁体14が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に間隙(閉弁時要求リフト量)が形成されるため、所定量の通過流量が確保される(
図3参照)。
【0042】
このように、本第1実施形態の電動弁1においては、ガイドブッシュ20が、弁本体40に対し、弁体14が最下降位置にあるときに弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の寸法Hに相当する間隔(もしくは、その寸法Hより大きい間隔)をあけて取付固定されている、具体的には、ガイドブッシュ20が弁本体40に対して所定位置(軸線O方向で当接する位置)に配置され、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置にあるときに、弁体14が弁シート部46aに当接する着座状態と、前記所定位置にあるガイドブッシュ20を弁本体40に対して軸線O方向で前記間隙の寸法Hだけ上昇させた位置で該弁本体40に取付固定すると、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に前記間隙が形成される離間状態とをとり得るように、各部が設計されている。そして、弁本体40に対して所定位置にあるガイドブッシュ20が軸線O方向で前記間隙の寸法Hだけ上昇された後に当該弁本体40に取付固定されることにより、弁体14の最下降位置、言い換えれば弁体14が最下降位置にあるときの弁体14と弁シート部46aとの間の間隙が規定される。すなわち、原点位置における弁体14と弁シート部46aとの間の間隙の寸法精度が、基本的に弁本体40とガイドブッシュ20との取付部分の寸法精度に依存することとなるため、前記間隙の寸法ばらつきを抑えることができ、もって、低流量域における流体(冷媒)流量の制御性を向上させることができる。
【0043】
[第2実施形態]
図4は、本発明に係る電動弁の第2実施形態を示す縦断面図である。
【0044】
上記第1実施形態の電動弁1では、ガイドブッシュ20が弁本体40に対して軸線O方向で前記間隙の寸法Hに相当する間隔(隙間)をあけて取付固定されている、言い換えれば、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面との間に前記間隙の寸法Hに相当する隙間が設けられているが、本第2実施形態の電動弁2では、ガイドブッシュ20と弁本体40との間に前記間隙の寸法Hに相当する厚さの板状部材49が介在されており、その他の構成は、上記第1実施形態の電動弁1とほぼ同じである。そのため、以下では、板状部材49に関する構成についてのみ詳細に説明し、
図1等に示した電動弁1と同じ構成については、同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、本第2実施形態の電動弁2の動作も上記第1実施形態における電動弁1と同様である。
【0045】
本実施形態の電動弁2では、上記離間状態において、弁本体40に対するガイドブッシュ20の位置決めを簡素化すべく、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面との間に、前記間隙の寸法Hに相当する厚さの、例えば円環状もしくは平面視C字状の板状部材49が介装されている。
【0046】
この電動弁2の組立工程、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程を、
図5を参照しながら詳説すると、まず、上記第1実施形態の電動弁1と同様の行程を経て着座状態を取らせる(
図5(A)参照)。次に、その着座状態から、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、抜け止め係止部材70等が一体とされた組立体を弁本体40から取り外した後、弁本体40の嵌合穴44の底面上に板状部材49を載置し、(ガイドブッシュ20の嵌合部27の下端面が板状部材49の上面に当接するまで)ガイドブッシュ20の嵌合部27を弁本体40の嵌合穴44内に嵌挿させるようにして前記組立体を再び前記弁本体40に取り付け、前記組立体のガイドブッシュ20を弁本体40に溶接・溶着・接着・かしめ等により相対移動不能に固定する。これにより、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁本体40に設けられた弁シート部46aに対して持ち上げられるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成され、上記第1実施形態と同様の離間状態が形成される(
図5(B)参照)。
【0047】
なお、図示実施形態では、ガイドブッシュ20(の嵌合部27)の下端面と弁本体40の嵌合穴44の底面との間に板状部材49を介在させるものとして説明したが、例えば、
図6に示すように、ガイドブッシュ20の嵌合部27のうち弁本体40の嵌合穴44から露出する部分に外側延在部27'を形成し、その外側延在部27'と弁本体40の上面との間に、前記間隙の寸法Hに相当する厚さの板状部材49'を介装してもよい。この場合には、上記着座状態から離間状態を形成する際、前記組立体を弁本体40から完全に取り外す必要はない。
【0048】
このように、本第2実施形態の電動弁2においては、ガイドブッシュ20と弁本体40との間に前記間隙の寸法Hに相当する厚さを有する板状部材49を介在させることにより、ガイドブッシュ20を弁本体40に対して精緻に位置決めできるため、前記間隙の寸法ばらつきをより効果的に抑えることができる。
【0049】
なお、上記第1及び第2実施形態では、ロータ51の回転駆動に応じて弁軸10の弁体14を弁本体40の弁シート部46aに対して昇降させるためのねじ送り機構28として、ガイドブッシュ20の円筒部21の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)23と弁軸ホルダ30の円筒部31の内周に形成された可動ねじ部(雌ねじ部)33とからなるものを採用したが、前記ねじ送り機構28としては、例えば、ガイドブッシュ20の円筒部21を弁軸ホルダ30の円筒部31に外挿し、ガイドブッシュ20の円筒部21の内周に雌ねじ部(固定ねじ部)を形成し、弁軸ホルダ30の円筒部31の外周に雄ねじ部(可動ねじ部)を形成して構成してもよいことは勿論である。また、上記第1及び第2実施形態では、弁軸ホルダ30の回転下動規制を行う下部ストッパ機構29を構成する固定ストッパ体24を有する下部ストッパ25として、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23に螺着される雌ねじ部を持つものを採用したが、前記下部ストッパ25としては、適宜の手段によりガイドブッシュ20に固着されたものや、ガイドブッシュ20に一体的に設けられたもの等を採用し得ることは言うまでも無い。