(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体ケーシングと、前記本体ケーシングに収容され管の外周の少なくとも一部に沿うように配置可能なアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた検査機器と、を備えている管検査装置であって、
前記アーム部材が管の外周に沿う検査姿勢と管の外周から離隔する非検査姿勢との間で前記アーム部材を揺動可能に前記本体ケーシングに軸支する揺動軸と、
前記アーム部材を非検査姿勢となるように付勢する弾性部材と、
管の外周部で押圧されることにより、前記弾性部材による付勢力に抗して前記アーム部材を前記検査姿勢に揺動する揺動付勢部材と、
を備えている管検査装置。
前記揺動付勢部材が前記アーム部材で構成され、前記アーム部材の一端側が管の外周部で押圧されることにより前記アーム部材の他端側が管に近接して前記検査姿勢に姿勢変化するように構成されている請求項1記載の管検査装置。
前記本体ケーシングの一組の対向面に管の進入を許容する凹部が形成され、管の呼び径に対応して各凹部のサイズを調整するアタッチメントが各対向面にそれぞれ取り付けられ、一方のアタッチメントに前記揺動軸が取り付けられている請求項1または2記載の管検査装置。
前記アーム部材が管を挟むように対向配置されるとともに前記アタッチメントが管を挟んで分割され、分割アタッチメントのそれぞれに前記アーム部材が取り付けられている請求項3または4記載の管検査装置。
前記揺動付勢部材が前記アーム部材で構成され、前記アーム部材の一端側に管の外周部で押圧されることにより前記アーム部材の他端側が管に近接して前記検査姿勢に姿勢変化するスペーサ部材を有する請求項1から5の何れかに記載の管検査装置。
挿口側の管の外周面と前記検査機器との相対距離及び受口側の管端面と前記検査機器との相対距離を規定する位置決め部材がさらに設けられている請求項1から6の何れかに記載の管検査装置。
前記管は、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入することにより互いに接合される管であり、前記検査機器により管の接合状態が検査される請求項1から9の何れかに記載の管検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示すように、このようなプッシュオンタイプの継手構造の鉄管は、一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具100を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具101を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト102,103を装着して手動操作で巻き上げるような作業を経て接合される。
【0007】
そして、接合作業の後に、上述した薄板ゲージや接合チェッカ等の機械式の計測機器を操作してゴム輪が適正に位置決めされているか否かを確認し、その結果を施工管理情報の一部として竣工図等に記録していた。
【0008】
しかし、ゴム輪が適正に位置決めされているか否かを確認するために、管の接合部の周囲に沿って複数個所で計測して、後に竣工図等に記録するためにその場でメモ用紙に仮記録する必要があり、この計測作業や記録作業が非常に煩雑であるという問題があった。特に管布設溝の底部に相対する部位を計測する際には、身体を屈めて作業を行なう必要があるため、多大な労力が必要であった。
【0009】
そして、上記鉄管以外でも、様々なタイプの管は一般的にパイプスペースなどの狭い場所に配置されることが多く、管の外周に沿って施工状態や損傷状態等を検査する必要がある様々な管の検査作業も同様の問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、作業者が窮屈な姿勢で計測作業を行なう必要が無く、さらには一度の計測作業で複数の情報を取得可能な管検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による管検査装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、本体ケーシングと、前記本体ケーシングに収容され管の外周の少なくとも一部に沿うように配置可能なアーム部材と、前記アーム部材に取り付けられた検査機器と、を備えている管検査装置であって、前記アーム部材が管の外周に沿う検査姿勢と管の外周から離隔する非検査姿勢との間で前記アーム部材を揺動可能に前記本体ケーシングに軸支する揺動軸と、前記アーム部材を非検査姿勢となるように付勢する弾性部材と、管の外周部で押圧されることにより、前記弾性部材による付勢力に抗して前記アーム部材を前記検査姿勢に揺動する揺動付勢部材と、を備えている点にある。
【0012】
アーム部材が揺動軸周りに揺動することにより、管の外周に沿う検査姿勢と管の外周から離隔する非検査姿勢との間でアーム部材の姿勢が変化する。弾性部材によって非検査姿勢になるように付勢された状態のアーム部材は、管の外周部で押圧された揺動付勢部材によって揺動軸周りに揺動付勢されて検査姿勢に姿勢が切り替わり、その状態で検査機器による管の検査が可能になる。つまり、管の外周部に近接するように管検査装置を移動させることにより、アーム部材が管の外周に沿う検査姿勢に姿勢変更される。このような管検査装置を用いることで、例えば作業者が身体を屈めて狭い領域で管を計測するような作業から開放されるようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記揺動付勢部材が前記アーム部材で構成され、前記アーム部材の一端側が管の外周部で押圧されることにより前記アーム部材の他端側が管に近接して前記検査姿勢に姿勢変化するように構成されている点にある。
【0014】
管検査装置を管の外周部に接近するように相対移動させると、管の外周部によってアーム部材の一端側が押圧され、そのときに生じる揺動軸周りのモーメントによってアーム部材の他端側が管に近接して検査姿勢に姿勢変化する。アーム部材によって揺動付勢部材が構成されるので、当該アーム部材を揺動させるための別途の部品を用いて揺動付勢部材を構成する必要がない。従って部品点数の減少と組立工程の簡素化によるコスト低減を図ることができる。
【0015】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記本体ケーシングの一組の対向面に管の進入を許容する凹部が形成され、管の呼び径に対応して各凹部のサイズを調整するアタッチメントが各対向面にそれぞれ取り付けられ、一方のアタッチメントに前記揺動軸が取り付けられている点にある。
【0016】
管検査装置を管の外周部に近接するように相対移動させると、本体ケーシングの一組の対向面に形成された凹部に管の外周が進入し、管の外周部によって揺動付勢部材が押圧され、アーム部材が管の外周に沿う検査姿勢に姿勢変化する。管の呼び径に応じて凹部のサイズを調整する必要がある場合に、個々のサイズに対応した本体ケーシングを準備しなくても、本体ケーシングの一部であるアタッチメントの取付け位置を調整することにより本体ケーシングを汎用化することができる。そして、検査姿勢に移行したときにアーム部材と管の外周部との相対位置を調整する必要がある場合、換言すると検査機器と管の外周部との相対位置を管の呼び径に応じて調整する必要がある場合でも、揺動軸が取り付けられたアタッチメントの本体ケーシングに対する取付け位置を調整することにより上述の相対位置が自動調整されるようになる。
【0017】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三の特徴構成に加えて、前記アタッチメントに前記弾性部材が取り付けられている点にある。
【0018】
アタッチメントに弾性部材が取り付けられているので、管の呼び径に応じてアタッチメントの本体ケーシングに対する取付け位置が変更される場合でも、アーム部材を非検査姿勢に付勢する弾性部材の付勢力が変動することがなく安定した付勢力を維持できる。
【0019】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第三または第四の特徴構成に加えて、前記アーム部材が管を挟むように対向配置されるとともに前記アタッチメントが管を挟んで分割され、分割アタッチメントのそれぞれに前記アーム部材が取り付けられている点にある。
【0020】
一対のアーム部材が検査姿勢に姿勢変更されると、一対のアーム部材によって管が抱き込まれるようになり、管の外周に沿って複数方向から同時に検査機器で検査されるようになる。管の呼び径に応じて凹部のサイズを調整する必要がある場合に、分割アタッチメントの取付け位置を個別に調整することにより、アーム部材と管の外周部との相対位置、換言すると検査機器と管の外周部との相対位置を管の呼び径に応じて適正に調整できるようになる。
【0021】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記揺動付勢部材が前記アーム部材で構成され、前記アーム部材の一端側に管の外周部で押圧されることにより前記アーム部材の他端側が管に近接して前記検査姿勢に姿勢変化するスペーサ部材を有する点にある。
【0022】
管検査装置を管の外周部に接近するように相対移動させると、管の外周部によってアーム部材の一端側が押圧され、そのときに生じる揺動軸周りのモーメントによってアーム部材の他端側が管に近接して検査姿勢に姿勢変化する。管の呼び径によってアーム部材の揺動角度が不足するような場合であっても、スペーサ部材を介装することにより必要な揺動角度を確保することができるようになる。逆にスペーサ部材が無くても必要な揺動角度を確保することができる場合にはスペーサ部材を離脱させればよい。このようにスペーサ部材が着脱可能に配置されているので呼び径が異なる管であってもアーム部材を共用できるようになる。
【0023】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、挿口側の管の外周面と前記検査機器との相対距離及び受口側の管端面と前記検査機器との相対距離を規定する位置決め部材がさらに設けられている点にある。
【0024】
本体ケーシングを管の外周から接近させたときに、位置決め部材が挿口側の管の外周面に当接して管の外周面と前記検査機器との相対距離が定まり、その状態で本体ケーシングを受口側に移動させたときに、位置決め部材が受口側の管端面に当接して当該管端面と検査機器との相対距離が定まる。
【0025】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記検査機器は、前記アーム部材の周方向に分散して複数配置されている点にある。
【0026】
管の外周に沿って同時に複数個所を検査することができるようになる。
【0027】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第八の特徴構成に加えて、前記検査機器は撮像装置で構成されている点にある。
【0028】
管の状態が適正な状態であるか否かが検査機器となる撮像装置で撮影された画像に基づいて確認することができるようになる。
【0029】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記管は、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入することにより互いに接合される管であり、前記検査機器により管の接合状態が検査される点にある。
【0030】
挿口側の管が受口に適正に挿入された接合状態が適正な状態であるか否かが検査機器に基づいて確認することができるようになる。例えば、挿口側と受口側の管がシール部材を介して接合されるような構成で、検査機器として撮像装置を用いる場合には、シール部材が適正な状態であるか否かを撮影画像に基づいて容易に判別できるようになり、適切に施工されたか否かを証明する記録として保存することもできるようになる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、作業者が窮屈な姿勢で計測作業を行なう必要が無く、さらには一度の計測作業で複数の情報を取得可能な管検査装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、ダクタイル鋳鉄管を用いた上水道管の管接合部を検査する場合を例に、本発明による管検査装置を説明する。
【0034】
図1に示すように、鉄管を接合する際には、一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具100を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具101を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト102,103を装着して手動操作で巻き上げる、という接合作業が行なわれる。
【0035】
図2(a)には、配管の接合部に用いられるゴム製のシール部材4が示されている。当該シール部材4は、受口の内周に形成された溝に嵌込み固定されるヒール部4aと、受口側の管内壁と挿口側の管外壁との間で圧接されるバルブ部4bを備えて構成され、ヒール部4aのうち受口側の管端側を臨む立上り面に着色マーカ部材4cが設けられている。
【0036】
図2(b),(c)には、管2,3の接合部の要部断面が示されている。一方の管2の端部に形成された受口2Aの内部に他方の管3の端部に形成された挿口3Aが挿入され、受口2Aの内周面と挿口3Aの外周面との間でシール部材4が圧縮されるように介装され、ロックリング5aと挿口3Aに形成された突部3aが係合して抜止めされる。図中、符号5bはロックリング心出し用部材であり、符号24は検査機器としての撮像装置である。
【0037】
図2(b)はシール部材4が適正に装着された例であり、受口2A内周部に形成されたシール部材収容凹部2Bにヒール部4aが嵌め込まれ、シール部材収容凹部2Bに連接されたシール部材圧縮凸部2Cと挿口側の管3の外周面との間でバルブ部4bが圧縮されている。
【0038】
図2(c)はシール部材4が不適正に装着された例であり、バルブ部4bが管3によって奥側に引き込まれ、ヒール部4aがシール部材収容凹部2Bから離脱した状態が示されている。このような不適切な接合状態ではシール機能が損なわれるため、再度接合作業を行なう必要がある。
【0039】
図3(a)には、管2の受口2Aに管3の挿口が挿入された接合部6が示されている。図中、符号3C,3Dは、挿口側の管3に塗装された環状の白線で、受口に対する挿口の挿入量を視認するためのものであると共に、接接合部6で受口側の管2の軸心と管3の軸心の傾きの程度を検査するためのマーカでもある。
【0040】
図3(b)には接合部6に装着された管検査装置10が示されている。管検査装置6は、本体ケーシング11と、本体ケーシング11の内部に収容されたアーム部材20、位置決め部材30、検査機器40,50等を備えて構成されている。
【0041】
管検査装置10は、接合部6のシール部材4(
図2(a)参照)の装着状態が適正であるか否かを検査する装置で、管2,3の接合部6の上方から管2,3の外周を覆うように装着される。
【0042】
図4(a),(b)に示すように、管検査装置10は、略直方体形状の本体ケーシング11を備えている。本体ケーシング11は、ケーシング11内部への管2,3の進入を許容する凹部12A,12Bがそれぞれ形成された一対の対向壁である前壁11A及び後壁11Bと、左右の側壁11Cと、天板11Dと、一対の底板11Eを備えている。
【0043】
天板11Dには、検査機器40,50と外部機器とを接続する電気信号線用のコネクタCN1,CN2、コネクタCN1用のコネクタカバーCV、支持用の竿部材(図示せず)を取り付けるための取付け金具15が取り付けられている。コネクタCN2は検査機器40,50(
図3参照)の増設時に用いる予備のコネクタである。
【0044】
ケーシング11のうち前壁11A及び後壁11Bには、第1の呼び径(本実施形態では、呼び径100)に対応した管の外周に沿うアーチ形の凹部12A,12Bが形成されている。前壁11Aに形成された凹部12Aは挿口側の管3(
図3(a)参照)の外周に沿うような形状及びサイズに形成され、後壁11Bに形成された凹部12Bは受口側の管2(
図3(a)参照)の受口部2Aの外周に沿うような形状及びサイズに形成されている。また、一対の底板11E間の空隙は挿口側の管3(
図3(a)参照)の外径より若干大きなサイズに設定されている。
【0045】
さらに、
図4(a),(b)及び
図7(a),(b)に示すように、前壁11A及び後壁11Bには、第1の呼び径より小さい第2の呼び径(本実施形態で、は呼び径75)に対応した管の外周に沿う形状及びサイズのアタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cがビス止めされている。各アタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cを含めてアルミニウム製のケーシング11が構成されている。
【0046】
第1の呼び径に対応した管を計測する場合には、アタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cが
図4(a),(b)の位置に取り付けられる。つまり、前壁11A及び後壁11Bに形成された凹部12A,12Bが管と対向するように凹部12A,12Bから後退した位置に取り付けられる。
【0047】
第2の呼び径に対応した管を計測する場合には、アタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cが
図7(a),(b)の位置に取り付けられる。つまり、前壁11A及び後壁11Bに形成された凹部12A,12Bの内縁よりもアタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cの内縁が内側に張り出すように凹部12A,12Bから進出した位置に取り付けられる。
【0048】
図7(a)の後壁11Bに示すビス孔H1は、アタッチメント14A,14B,14Cを第1の呼び径の管に対応した
図4(a)に示す位置に取り付けるための孔である。前壁11Aにも同様のビス孔が形成されている。
【0049】
図5(a),(b),(c)、
図6(a),(b)及び
図7(a),(b)に示すように、前壁11A側のアタッチメント13A,13Bのそれぞれに、管の外周の少なくとも一部に沿うように揺動軸23を介してアーム部材20が揺動可能に取り付けられている。
【0050】
一対のアーム部材20の上下方向中央部からやや上部に揺動軸23が設けられ、揺動軸23周りに各アーム部材20の下方が広がるように、アーム部材20の下部に備えたバネ支持部21とアタッチメント13A,13Bに備えたバネ支持部22との間に弾性部材25である引張バネが架け渡されている(
図5(c)参照)。
【0051】
アーム部材20は、断面矩形のアルミニウム製の角筒状部材を正面視C字状になるように溶接して構成され、両端側に検査機器40となる撮像装置(カメラ)が収容されている。
【0052】
図8(a)に示すように、通常は、弾性部材25による引張力で一対のアーム部材20の下端が左右に開放された姿勢に維持された状態、つまりアーム部材20が管3の外周から離隔した非検査姿勢に維持されている。
【0053】
図8(b)に示すように、本体ケーシング11を管3の外周に向けて押しつけると、管3の外周と当接してアーム部材20の下端が左右に少し押し広げられた後に、管3が一対のアーム部材20の間に進入する。
【0054】
図8(c)に示すように、本体ケーシング11をさらに管3に押し付けると、アーム部材20の上端側下壁に管3の外周部が当接して、アーム部材20の上端側を上方に押し上げるような反力が作用し、揺動軸23周りに管3を抱き込む方向にトルクが発生する。
【0055】
図8(c)に示すように、その結果、アーム部材20が管3の外周に沿う検査姿勢に移行する。この状態で4台の検査機器(撮像装置)40は、管30の軸心に対して周方向に90°の間隔で分散して配置される。
【0056】
図2(d),(e)には、このようにして4台の検査機器(撮像装置)4で撮影された管の接合部6の画像が示されている。
【0057】
その後、管3から本体ケーシング11を離隔すると、弾性部材25である引張バネによる復元力によってアーム部材20が
図8(a)に示した非検査姿勢に復帰する。
【0058】
図6(a),(b)に示すように、挿口(
図3(a)参照)3側の管の外周面と検査機器40との相対距離及び受口(
図3(a)参照)2側の管端面2Dと検査機器40との相対距離を規定する位置決め部材30がさらに設けられている。
【0059】
位置決め部材30は、断面矩形の角柱部材で構成され、本体ケーシング11Bの凹部12Bの上部にブラケット35を介してネジ止め固定されている。角柱部材の下面及び本体ケーシング11B側の側面で位置決め作用が発揮される。
【0060】
図9(a)に示すように、本体ケーシング11を、接合部6を構成する管2,3の外周上部から接近させたときに、位置決め部材30の下端面が挿口3側の管の外周面に当接して管3の外周面と検査機器40との相対距離が定まる。
【0061】
図9(b)に示すように、その状態で本体ケーシング11を受口3側に移動させたときに、位置決め部材30の本体ケーシング11B側の側面が受口3側の管端面3Dに当接して当該管端面3Dと検査機器40との相対距離が定まるのである。
【0062】
位置決め部材30の下端面が挿口3側の管の外周面に当接することによって、本体ケーシング11に対する管のそれ以上の進入が制限され、このとき同時にアーム部材20が管3の外周に沿う検査姿勢に移行するようになるように、アーム部材20に対する位置決め部材30の下端面の位置が設定されている。
【0063】
図7(b)及び
図8(a)に示すように、アーム部材20の一端側つまり上端側に管の外周部で押圧されることによりアーム部材20の他端側つまり下端側が管に近接して検査姿勢に姿勢変化するスペーサ部材27が着脱可能に配置されている。
【0064】
既に説明した通り、管検査装置10を管の外周部に接近するように相対移動させると、管の外周部によってアーム部材20の一端側が押圧され、そのときに生じる揺動軸23周りのモーメントによってアーム部材20の他端側が管に近接して検査姿勢に姿勢変化する。このとき、管の呼び径によってはアーム部材20の揺動角度が不足するような場合も生じる。例えば第2の呼び径でアーム部材20の揺動角度が不足するような場合が生じる。
【0065】
そのような場合であっても、アーム部材20の一部としてスペーサ部材27を介装することにより必要な揺動角度を確保することができるようになる。逆にスペーサ部材27が無くても必要な揺動角度を確保することができる場合、つまり第1の呼び径に対する場合にはスペーサ部材27をアーム部材20から離脱させればよい。このようにスペーサ部材27が着脱可能に配置されているので呼び径が異なる管であってもアーム部材を共用できるようになる。
【0066】
図10(a),(b)に示すように、スペーサ部材27をアーム部材20から離脱させる場合には、左右のアーム部材20それぞれにスペーサ部材27を取り付けているビスを外して、右側のスペーサ部材27Bを矢印の方向に回転させて左側のアーム部材20の先端側に同じネジ孔に同じビスで固定し、左側のスペーサ部材27Aを矢印の方向に回転させて右側のアーム部材20の先端側に、同じネジ孔に同じビスで固定するように構成されている。従って、スペーサ27が不要な場合でもアーム部材20に取り付けておくことができるので、スペーサ27が紛失することがない。
【0067】
図5(b),(c)に示すように、本体ケーシング11には、位置決め部材30を挟んで左右に一対の撮像装置でなる第2の検査機器50を備えている。当該検査機器50は、接合部6を左右斜め上方から撮影した画像に基づいて、挿口側の管3に塗装された環状の白線3C,3D(
図3(a)参照)と、受口3側の端面3Dとの傾斜角度を求め、傾斜角度から接合部6の直線性を評価するために設置されている。
【0068】
以上説明したように、管検査装置10は、アーム部材20が管の外周に沿う検査姿勢と管の外周から離隔する非検査姿勢との間でアーム部材を揺動可能に本体ケーシング11に軸支する揺動軸23と、アーム部材20を非検査姿勢となるように付勢する弾性部材25と、管の外周部で押圧されることにより、弾性部材25による付勢力に抗してアーム部材を検査姿勢に揺動する揺動付勢部材20とを備えている。
【0069】
揺動付勢部材がアーム部材20で構成され、アーム部材20の一端側が管の外周部で押圧されることによりアーム部材20の他端側が管に近接して検査姿勢に姿勢変化するように構成されているため、アーム部材20を揺動させるための別途の部品を用いて揺動付勢部材を構成する必要がなく、部品点数の減少と組立工程の簡素化によるコスト低減が図られている。
【0070】
尚、本発明において管検査装置10のアーム部材20が管の外周に沿うとは、部材20の一部が管の外周に接触している状態でも良く、また、接触せずに近接している状態でも良く、何れの状態をも含む概念である。
【0071】
また、本発明においてアーム部材20は単一の部材で構成されていても良く、一部にスペーサを有していても良く、その他、複数の部材を組合せて一体として用いるものであっても良い。
【0072】
尚、上記の実施形態では、本体ケーシング11を管3の外周に向けて押しつけると、管3の外周と当接してアーム部材20の下端が左右に少し押し広げられた後に、管3が一対のアーム部材20の間に進入する場合を記載したが、それに限られるものではなく、管3の外周とアーム部材20の下端は当接せずに管3がアーム部材20の間に進入するものでも良い。
【0073】
尚、アーム部材20とは別途の部材を用いて揺動付勢部材を構成することも可能である。例えば、本体ケーシング11を管に押し付けることによって、管の外周部と当接してその反力を受けてアーム部材20の上端側を上方に押し上げるようなリンク部材を別途設けてもよい。
【0074】
更に、本体ケーシング11の一組の対向面11A,11Bに管の進入を許容する凹部12A,12Bが形成され、管3の呼び径に対応して各凹部12A,12Bのサイズを調整するアタッチメント13A,13B,13C,14A,14B,14Cが各対向面11A,11Bにそれぞれ取り付けられ、一方のアタッチメント13A,13Bに揺動軸が取り付けられているので、管の呼び径に応じて凹部のサイズを調整する必要がある場合に、個々のサイズに対応した本体ケーシングを準備しなくても、本体ケーシングの一部であるアタッチメントの取付け位置を調整することにより本体ケーシングを汎用化することができる。
【0075】
そして、検査姿勢に移行したときにアーム部材20と管の外周部との相対位置を調整する必要がある場合、換言すると検査機器40と管の外周部との相対位置を管の呼び径に応じて調整する必要がある場合でも、揺動軸23が取り付けられたアタッチメント13A,13Bの本体ケーシング11Aに対する取付け位置を調整することにより上述の相対位置が自動調整されるようになる。
【0076】
また、アタッチメント13A,13Bに弾性部材25が取り付けられているので、管の呼び径に応じてアタッチメントアタッチメント13A,13Bの本体ケーシング11Aに対する取付け位置が変更される場合でも、アーム部材20を非検査姿勢に付勢する弾性部材25の付勢力が変動することがなく安定した付勢力を維持できる。
【0077】
アーム部材20が管を挟むように対向配置されるとともに一方のアタッチメント13A,13Bが管を挟んで分割され、分割アタッチメントのそれぞれにアーム部材が取り付けられているので、管の呼び径に応じて凹部12A,12Bのサイズを調整する必要がある場合に、アタッチメントの取付け位置を個別に調整することにより、検査機器40が管に対して適切な位置に配置することができるようになる。
【0078】
検査機器40が、アーム部材20の周方向に分散して複数配置されているので、管の外周に沿って同時に複数個所を検査することができるようになる。
【0079】
検査機器40が撮像装置で構成されているので、
図2(d),(e)に示したように、撮影された画像によって接合部の接合状態の良否判定(シール部材が適正な状態であるか否かの判定)が容易になり、また電子データで記録することも可能になる。
【0080】
尚、検査機器40は、撮像装置に限定されるものではなく検査対象に応じて適宜選択すればよい。例えば、管の腐食等を非接触で検査する場合には、検査機器として超音波探傷装置を設置すればよい。
【0081】
上述した実施形態では、アーム部材20の下部に備えたバネ支持部21とアタッチメント13A,13Bに備えたバネ支持部22との間に弾性部材25である引張バネが架け渡されている例を説明したが、一対のアーム部材20の上端同士を弾性部材25で結合してもよい。
【0082】
上述した実施形態では、作業者が管2,3を工具を用いて手動で接合し、さらに管検査装置10を手動操作してその接合部近傍の管の外周囲に抱き込ませて検査する例を説明したが、例えば取付け金具15に支持用の竿部材を装着し、管を自動的に接合する接合装置に本発明の管検査装置10を取り付けて、管の接合とともに接合部近傍の管の外周囲に抱き込ませて自動検査するように構成してもよい。
【0083】
尚、本発明による管検査装置は、上水道管以外に下水管に対する配管施工等にも広く適用可能である。また、鉄管以外に樹脂製の管の接合部の検査等にも使用することができる。さらには、石油化学プラントの配管の検査等にも使用することができる。
【0084】
以上説明した管検査装置は本発明の一具体例に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、管検査装置の各部の具体的な形状、サイズ、材料等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。