(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前後方向に延在して乗物用のシートの側部を支持し、当該シートを乗物のフロアよりも高い位置に配置するライザー部材に、当該ライザー部材を外方から覆うカバー部材を取り付けるための乗物用シートのカバー部材取付構造であって、
前記ライザー部材が、前後方向に延在し、前記シートを支持する支持部材と、前記支持部材の前部及び後部の少なくとも一方を支持する脚部材とを有し、
前記支持部材が、前後方向に延在する1対の立壁と、1対の前記立壁の上端を連結する上壁と、1対の前記立壁の少なくとも一方の前記脚部材が設けられた側の端縁にて前記ライザー部材の外側に向けて折曲された突片とを有し、
前記カバー部材は、カバー本体と、前記カバー本体の内面側に一体形成され、前記ライザー部材に取り付けられた状態において前記突片の背面側に位置して前記突片に係合する係合突起とを有することを特徴とする乗物用シートのカバー部材取付構造。
前記カバー部材は、前記カバー本体の内面側に一体形成され、前記ライザー部材に取り付けられた状態において前記突片の正面に対向する端面を有する押さえリブを更に有することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シートのカバー部材取付構造。
前記押さえリブは、前記突片延出部に対向する端面を有するリブ基部と、前記リブ基部から前記端壁と相反する側へ延出し、前記突片延出部の前記立壁側の端縁に対向する端面を有するリブ延出部とを有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シートのカバー部材取付構造。
前記リブ延出部の前記突片延出部に対向する端面が、先端側ほど前記リブ延出部の幅を狭くする向きに傾斜していることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シートのカバー部材取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の取付構造では、カバー部材に別体からなる差込連結片を取り付けなければならないため、部品点数が多くなる上、取り付け作業が煩雑である。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑み、部品点数の増大を抑制でき、且つ容易に取り付けできる乗物用シートのカバー部材取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明のある態様は、前後方向に延在して乗物用のシート(S)の側部を支持し、当該シートを乗物のフロア(F)よりも高い位置に配置するライザー部材(40)に、当該ライザー部材を外方から覆うカバー部材(70)を取り付けるための乗物用シートのカバー部材取付構造であって、前記ライザー部材が、前後方向に延在し、前記シートを支持する支持部材(44)と、前記支持部材の前部及び後部の少なくとも一方を支持する脚部材(46)とを有し、前記支持部材が、前後方向に延在する1対の立壁(58)と、1対の前記立壁の上端を連結する上壁(56)と、1対の前記立壁の少なくとも一方の前記脚部材が設けられた側の端縁にて前記ライザー部材の外側に向けて折曲された突片(66)とを有し、前記カバー部材は、カバー本体(80)と、前記カバー本体の内面側に一体形成され、前記ライザー部材に取り付けられた状態において前記突片の背面側に位置して前記突片に係合する係合突起(100)とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、カバー部材に一体形成された係合突起を、支持部材の立壁に成形された突片に係合させることで、カバー部材をライザー部材に取り付けることができるため、部品点数の増大が抑制されるうえ、取り付け作業が容易である。
【0008】
また、上記構成において、前記突片(66)は、1対の前記立壁(58)のうち前記シート(S)の幅方向の内側に配置された側に形成され、前記カバー本体(80)は、前記脚部材(46)の正面側に配置された端壁(72)と、前記端壁と一体に形成され、前記脚部材の内側面側に配置された内側壁(74)とを少なくとも有し、前記係合突起(100)は、前記内側壁の内面側に形成されており、前記端壁に向く係合面(102A)と、前記係合面と相反する側に形成され、前記内側壁から離間するにつれて前記係合面に近付くように傾斜する傾斜面(104A)とを有するとよい。
【0009】
この構成によれば、突片を内側壁の内面に沿わせてカバー部材を脚部材の正面側から押し込むことにより、突片が係合突起の傾斜面を乗り越えて係合面に係合するため、カバー部材の取り付け作業が容易である。
【0010】
また、上記構成において、前記カバー部材(70)は、前記カバー本体(80)の内面側に一体形成され、前記ライザー部材(40)に取り付けられた状態において前記突片(66)の正面に対向する端面を有する押さえリブ(88B)を更に有するとよい。
【0011】
この構成によれば、突片が、背面側に位置する係合突起と正面に対峙する押さえリブとによって挟まれるため、カバー部材のがたつきが抑制される。
【0012】
また、上記構成において、前記カバー本体(80)は、前記端壁(72)の上部と前記内側壁(74)の上部とを連結する上連結壁(78)を更に有し、前記突片(66)は、前記立壁(58)から側方へ向けて延出する突片基部(66A)と、前記突片基部から上方へ向けて延出する突片延出部(66B)とを有し、前記押さえリブ(88B)は、概ね水平に延在して前記突片延出部に対峙し、前記端壁及び前記内側壁を連結する横リブであり、前記係合突起(100)は、前記押さえリブよりも下方に配置されて前記突片基部に係合するとよい。
【0013】
この構成によれば、カバー本体が端壁と内側壁とを連結する上連結壁を有するため、カバー本体の剛性が増す。一方、係合突起が押さえリブよりも低い位置に配置され、内側壁の撓みによって係合突起がシートの内側に移動し易いため、カバー部材の取り付け時に小さな力で突片が係合突起の傾斜面を乗り越えられ、取り付け作業が容易である。
【0014】
また、上記構成において、前記押さえリブ(88B)は、前記突片延出部(66B)に対向する端面(92A)を有するリブ基部(92)と、前記リブ基部(92)から前記端壁(72)と相反する側へ延出し、前記突片延出部の前記立壁(58)側の端面に対向する端面(94A)を有するリブ延出部(94)とを有するとよい。
【0015】
この構成によれば、リブ延出部が突片延出部によって立壁側と相反する側から押さえられるため、カバー部材の左右方向のがたつきが抑制される。
【0016】
また、上記構成において、前記リブ延出部(94)の前記突片延出部(66B)に対向する端面(94A)が、先端側ほど前記リブ延出部の幅を狭くする向きに傾斜しているとよい。
【0017】
この構成によれば、突片に係合突起の傾斜面を乗り越えさせる際に突片がリブ延出部の延出端に当接して引っ掛かることが抑制され、カバー部材の取り付け作業性が向上する。
【0018】
また、突片が突片基部と突片延出部とを有する構成において、前記突片延出部(66B)は、前記突片基部(66A)の上縁における前記立壁(58)から離間した位置にて上方へ向けて延出しており、前記カバー部材(70)は、前記端壁(72)の内面側に上下・前後方向に延在して前記押さえリブ(88B)に交差するように一体形成され、前記突片基部の上縁に対向する端面(90A)を有する縦リブ(90)を更に有するとよい。
【0019】
この構成によれば、縦リブが突片の突片基部によって下方から押さえられるため、カバー部材の上下方向のがたつきが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、カバー部材に一体形成された係合突起を、支持部材の立壁に成形された突片に係合させることで、カバー部材をライザー部材に取り付けることができるため、部品点数の増大を抑制でき、且つ容易に取り付けできる乗物用シートのカバー部材取付構造を提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、内側壁の内面側に形成された係合突起が端壁に向く係合面と傾斜面とを有することにより、突片を内側壁の内面に沿わせてカバー部材を脚部材の正面側から押し込むことで、突片が係合突起の傾斜面を乗り越えて係合面に係合するため、カバー部材の取り付け作業が容易である。
【0022】
また、本発明によれば、カバー部材が押さえリブを更に有することにより、突片が、背面側に位置する係合突起と正面に対峙する押さえリブとによって挟まれるため、カバー部材のがたつきが抑制される。
【0023】
また、本発明によれば、カバー本体が端壁と内側壁とを連結する上連結壁を有するため、カバー本体の剛性が増す。一方、係合突起が押さえリブよりも低い位置に配置され、内側壁の撓みによって係合突起がシートの内側に移動し易いため、カバー部材の取り付け時に小さな力で突片が係合突起の傾斜面を乗り越えられ、取り付け作業が容易である。
【0024】
また、本発明によれば、押さえリブがリブ基部とリブ延出部とを有することにより、リブ延出部が突片延出部によって立壁側と相反する側から押さえられるため、カバー部材の左右方向のがたつきが抑制される。
【0025】
また、本発明によれば、リブ延出部の端面が先端側ほどリブ延出部の幅を狭くする向きに傾斜していることにより、突片に係合突起の傾斜面を乗り越えさせる際に突片がリブ延出部の延出端に当接して引っ掛かることが抑制され、カバー部材の取り付け作業性が向上する。
【0026】
また、本発明によれば、カバー部材が、突片基部の上縁に対向する端面を有する縦リブを更に有することにより、縦リブが突片の突片基部によって下方から押さえられるため、カバー部材の上下方向のがたつきが抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係るカバー部材取付構造を自動車に搭載される車両用のシートSに適用した実施形態について説明する。以下の説明では、シートSに着座した乗員を基準にして左右を定める。左右に1対設けられる同一構成については、共通の番号を付し、説明を省略する。
【0029】
図1は、実施形態に係るシートSのフレームを左前方から見た斜視図である。
図1に示されるように、シートSは、座面を形成するシートクッションS1と、リクライニング機構10によって支持軸12を中心としてシートクッションS1に傾倒可能に連結されて背凭れ面を形成するシートバックS2とを有し、スライドレール14によって自動車のフロアF上に前後方向にスライド可能に取り付けられている。
【0030】
シートクッションS1は、鋼材製のシートクッションフレーム16を有し、シートクッションフレーム16に不図示のパッド及び表皮を被せられることによって構成される。シートバックS2は、鋼材製のシートバックフレーム18を有し、シートバックフレーム18に不図示のパッド及び表皮を被せられることによって構成される。パッドはポリウレタンフォーム等の弾力性を有するクッション材によって形成され、表皮は、本皮や合成皮革、布地等によって形成される。
【0031】
スライドレール14は、上方開口の溝形断面形状のロアレール20と、ロアレール20に当該ロアレール20の延在方向に移動可能に係合したアッパレール22とを有し、これらはシートクッションフレーム16の左右両側にあって各々前後方向に延在している。
【0032】
シートクッションフレーム16は、左右一対のサイドメンバ24と、左右のサイドメンバ24の前端を互いに連結するフロントメンバ26とを含み、各サイドメンバ24を前側リンク28と後側リンク30とを含む平行リンク機構(
図2を併せて参照)からなるリフト機構32によって対応する側のアッパレール22に上下方向に変位可能に連結されている。これにより、シートクッションS1は、前後位置及び座面高さを調整可能である。なお、リフト機構32には任意の座面高さにおいてシートクッションS1をアッパレール22に選択的に固定する機構が設けられるが、この機構は周知の構造のものであるので、それの図示及び説明を省略する。
【0033】
左右のロアレール20とアッパレール22との間には、各々、アッパレール22を任意のスライド位置(前後位置)において対応する側のロアレール20に選択的に固定するロック機構が設けられている。左右のロック機構は、ロック解除操作部材36によって互いに連結されている。ロック解除操作部材36は、パイプ材の折曲成形品であり、シートクッションフレーム16の前方を左右方向に水平に延在するフロント部36Aと、フロント部36Aの左右の端部から後方に延在し、スライドレール14内に進入するサイド部36Bとを有している。
【0034】
各ロアレール20には、対応するアッパレール22の前後移動を規制する前後のストッパが設けられており、両ストッパによってアッパレール22のスライド範囲が所定の範囲に規定されている。
【0035】
図2は、スライド範囲の最後方にあるシートSの下部を左方から見た側面図である。
図2に示されるように、シートSがスライド範囲の最後方にある時には、アッパレール22の後部がロアレール20の後端から後方に延出しており、アッパレール22の後側リンク30との連結点がロアレール20の後端よりも後方に位置している。図示省略するが、シートSがスライド範囲の前方にある時には、アッパレール22の前部がロアレール20の前端から前方に延出し、アッパレール22の前側リンク28との連結点がロアレール20の前端よりも前方に位置する。
【0036】
次に、シートSの支持構造、即ちスライドレール14のフロアFへの取付構造を詳細に説明する。
【0037】
左右のスライドレール14は、左右のライザー部材40、42によってフロアFよりも高い同一高さに配置されている。フロアFは、左側(車体内側)のライザー部材40が取り付けられる部分において、右側(車体外側)のライザー部材40が取り付けられる部分に対して上方に膨出する形状をしている。従って、左側のライザー部材40の高さ寸法は右側のライザー部材40の高さ寸法よりも小さくなっている。
【0038】
左側のライザー部材40は、前後方向に延在し、左側のスライドレール14を支持する支持部材44と、支持部材44の前部及び後部を支持する前脚部材46及び後脚部材48とを有している。右側のライザー部材42は、前後方向に延在し、右側のスライドレール14を支持する支持部材50と、支持部材50の前部及び後部を支持する前脚部材52及び後脚部材54とを有している。左右の支持部材44、50は、鋼板を比較的深い略溝形断面形状に形成された直線形状のプレス成形品であり、後部が前部よりも低くなるように傾斜して前後方向に延在している。左右の前脚部材46、52及び左右の後脚部材48、54は、鋼板を比較的浅い略溝形断面形状に且つ長手方向において屈曲するように形成された屈曲形状のプレス成形品である。
【0039】
左右のライザー部材40、42の各々には、それらを少なくとも外方から覆う樹脂製のカバーが取り付けられる。各カバーは、複数に分割されて構成されており、対応するライザー部材40、42に取り付けられた状態において、隣接する分割体同士が係合して一体となる。各分割体の連結構造は公知の構成であってよい。
図2には、車体内側に位置する左側のライザー部材40の前部に取り付けられる前部カバー部材70のみが想像線で示されている。
【0040】
次に、左側のライザー部材40の前部に取り付けられる前部カバー部材70の取付構造について説明する。
【0041】
図3は、
図1に示される左側のライザー部材40の前部を右前方から見た拡大斜視図である。
図3においても、前部カバー部材70が想像線で示されている。
図3に示されるように、支持部材44は、ロアレール20の下面に当接してロアレール20を支持する上壁56と、上壁56の左右の両側縁から垂下した左右の立壁58と、各立壁58の下縁からそれぞれ支持部材44の内方に向けて延出する左右の内フランジ60とを有する。上壁56は、左右の立壁58の上端を連結している。左の内フランジ60(
図2参照)は、シートSの幅方向の内側であるシート内方(即ち、車体外方である右方)に向けて延出し、右の内フランジ60は、シートSの幅方向の外側であるシート外方(即ち、車体内方である左方)に向けて延出している。
【0042】
上壁56は、幅方向(左右方向)において水平に延在している。左右の立壁58は、上壁56に対して下方へ略90度折曲されており、左右対称の形状とされている。従って、左右の立壁58は略鉛直方向に延在し、左右の内フランジ60は同じ高さに配置されている。左右の内フランジ60は、対応する立壁58に対して内側方へ略90度折曲されており、左右対称の形状とされている。従って、左右の内フランジ60は略水平に延在し、ライザー部材40は左右対称のリップ溝形状(C形チャンネル形状)の断面を有している。内フランジ60は、立壁58の前後方向長さに比べて短い前後方向長さを有しており、立壁58の後部側の中間部に形成されている。
【0043】
図2及び
図3に示されるように、前脚部材46は、上部が後方に倒れる向きに傾斜して上下方向に延在し、後方開口の溝形断面を有する柱部46Aを有している。柱部46Aの下端には、前方斜め下方に向けて延出し、ボルトBによってフロアFに固定される下側固定部46Bが一体に設けられている。下側固定部46Bでは、溝の底壁部分がフロアFに当接するように、溝の左右の側壁部分が潰されて上方へ突出するビード形状になっている。柱部46Aの上端には、後方に向かって延出して支持部材44の前端部に重なり、ボルト・ナットによって上壁56及びロアレール20の底壁に固定された、下方開口の溝形断面を有する上側固定部46Cが一体に設けられている。前脚部材46は、上側固定部46Cの底壁部分が支持部材44の上壁56に当接し、上側固定部46C及び柱部46Aの左右の側壁部分が支持部材44の左右の立壁58に当接又は近接するように1対の立壁58の内部に上部を受容され、左右の立壁58に適所で溶接されている。柱部46Aの前面側が前脚部材46の正面である。
【0044】
立壁58の前部における内フランジ60が形成されていない部分には、左右の支持部材44、50を連結するパイプ鋼材からなる前部連結部材62が、左右の立壁58を貫通するように設けられて溶接により左右の立壁58に固定されている。立壁58の後部には、左右の支持部材44、50を連結するパイプ鋼材からなる後部連結部材64(
図2参照)が、シート内方の立壁58を貫通するように設けられて溶接により立壁58に固定されている。左右のライザー部材40、42は、前部連結部材62及び後部連結部材64によって前部及び後部を連結されることによって矩形になっており、これにより、横方向の荷重に対する剛性が高められている。
【0045】
図3に示されるように、シート内方に位置する右側の立壁58の前端には、立壁58の前端縁から支持部材44の外方(即ち、シート内方)に向けて延出する突片66が一体に形成されている。突片66は、概ね鉛直方向に延在する立壁58の前端縁にて立壁58に対して右方へ略90度折曲されており、上下及び左右方向に延在している。突片66の一方の主面をなす前面は突片66の正面であり、他方の主面をなす後面は突片66の背面である。
【0046】
突片66は、右側の立壁58の前端部の高さよりも小さい高さをもって立壁58から右方へ向けて延出する突片基部66Aと、突片基部66Aの右側部分から上方へ向けて延出する突片延出部66Bとを有している。突片延出部66Bは、正面視において立壁58に対して右方に離間した位置に形成されている。
【0047】
前部カバー部材70は、ライザー部材40の前部を、前方、シート外方(左方)及びシート内方(右方)から覆うようにライザー部材40に取り付けられる。
【0048】
図4は、
図3に示される前部カバー部材70を左後方斜め下から見た斜視図であり、
図5は、
図4中のV−V断面図である。
図4及び
図5には、前部カバー部材70がライザー部材40に取り付けられた状態の突片66が想像線で示されている。
図4及び
図5に示されるように、前部カバー部材70は、前脚部材46の正面側に配置された前端壁72と、前端壁72の右側縁から後方に向けて延出し、前脚部材46の内側面側である右方に配置された覆う内側壁74と、前端壁72の左側縁から後方に向けて延出し、前脚部材46の外側面側である左方に配置された外側壁76と、前端壁72の上部と内側壁74の上部とを連結する上連結壁78とを一体に有するカバー本体80を主要素として有する樹脂の射出成形品である。前端壁72の下部には、他の分割体と連結するための係合片82が前方へ延出するように一体形成されている。
【0049】
前端壁72の上縁には、アッパレール22(
図2)の前部カバー部材70よりも前方へのスライドを可能にする切欠72Aが形成されている。前端壁72の内面には、切欠72Aの下縁に沿って延在し、後方へ向けて延出する第1横リブ84と、第1横リブ84の左右の側部から下方へ延びるように後方へ向けて延出する2本の第1縦リブ86とが一体形成されている。2本の第1縦リブ86の延出端面である後端面86Aは、前脚部材46の柱部46Aの前面に対向する。
【0050】
また、前端壁72の内面には、切欠72Aの右方にて概ね水平に延在して内側壁74に至り、後方へ延出する複数(本実施形態では4本)の第2横リブ88(88A、88B)と、切欠72Aの右方にて上下方向に延在し、4本の第2横リブ88と交差すると共に上連結壁78に至る1本の第2縦リブ90とが一体形成されている。各第2横リブ88は、前端壁72と内側壁74とを連結しており、第2縦リブ90は、前端壁72と上連結壁78とを連結している。以下、上側の2本の第2横リブ88を上リブ88Aと言い、下側の2本の第2横リブ88を下リブ88Bと言う。
【0051】
2本の上リブ88Aは略同一形状をしており、2本の下リブ88Bは、前端壁72から後方への突出量が上リブ88Aよりも大きな略同一形状をしている。各下リブ88Bは、切欠72A側において内側壁74側よりも大きな後方への突出量を有する2段形状をしている。言い換えれば、各下リブ88Bは、前端壁72からの突出量が内側壁74側の値までの部分であるリブ基部92と、リブ基部92の後縁から後方へ延出するリブ延出部94とを有している。リブ基部92の前端壁72からの突出量は、上リブ88Aの突出量よりも大きく設定されている。各リブ基部92は、突片延出部66Bに前方から対峙し、リブ基部92の延出端面である後端面92Aを突片延出部66Bの前面に対向させる押さえリブをなす。各リブ延出部94は、延出端側ほど幅が狭くなるテーパ形状をしており、その右端面94Aは、突片延出部66Bの左端縁に対向する。
【0052】
第2縦リブ90は、各第2横リブ88に対してリブ延出部94が形成された部分で交差しており、前端壁72からの突出量が第2横リブ88の交差する部分の突出量と同一になるように下側において上側よりも大きく後方へ突出する2段形状をしている。第2縦リブ90の下端面90Aは、突片基部66Aの上縁に対向する。
【0053】
図6は、
図5中のVI−VI断面図であり、
図7は、
図3に示される前部カバー部材70を後方斜め下から見た図である。
図6及び
図7にも、前部カバー部材70がライザー部材40に取り付けられた状態の突片66が想像線で示されている。
図6及び
図7に併せて示されるように、各リブ延出部94の右端面94Aは、内側壁74に対し、後方側ほど内側壁74から離間する向きに傾斜している。内側壁74の内面には、リブ基部92の後方、よく詳しくはリブ基部92の後端面92Aに対して突片66の厚さと同程度後方、且つリブ延出部94に前後方向に重なる位置に、突片66に背面側から係合する係合突起100が一体形成されている。係合突起100は、
図5に示されるように、4本の第2横リブ88及び第2縦リブ90よりも下方に形成されている。
【0054】
係合突起100は、上面視(
図6)で三角形の突起上壁102及び突起下壁104、並びに、突起上壁102と突起下壁104の前縁同士を連結し、後面視(
図5)で矩形の突起前壁106とを有している。係合突起100の外輪郭は、後面視(
図5)で矩形をなし、上面視(
図6)で前縁が内側壁74に略直交する直角三角形のテーパ形状をなしている。突起前壁106は鉛直方向に対して前傾している。即ち、突起上壁102の前端面は突起下壁104の前端面よりも前方に位置している。突起上壁102の後面(内端面)も、突起下壁104の後面(内端面)よりも後方位置している。突起上壁102の前端面(即ち、下向きに傾斜する突起前壁106の前面上部)は、前端壁72に向く係合面102Aをなす。突起下壁104の後面は、突片66にガイドされるべく、内側壁74から離間するにつれて突起前壁106に近付く(即ち、係合面102Aに近付く)ように傾斜する傾斜面104Aとなっている。
【0055】
前部カバー部材70は、次のようにしてライザー部材40に取り付けられる。
【0056】
即ち、前部カバー部材70は、ライザー部材40の前方に配置され、
図3に白抜き矢印で示されるように後方に向けて押し付けられることでライザー部材40に取り付けられる。この際、外側壁76をロアレール20に沿わせることで前部カバー部材70の概ねの位置合わせが可能である。前部カバー部材70が後方へ押し込まれるにつれて、支持部材44の突片66が内側壁74及び上連結壁78によりシート内方及び上方から覆われる。
【0057】
突片66を内側壁74の内面に沿わせて前部カバー部材70が更に後方へ押し込まれると、
図4及び
図6に示されるように、突起下壁104の傾斜面104Aが、突片基部66Aのシート内方に位置する外縁部に摺接してガイドされ、前部カバー部材70が左右方向について正確に位置合わせされる。傾斜面104Aが突片66によりガイドされた状態で前部カバー部材70が更に後方へ押し込まれると、次に、リブ延出部94の右端面94Aが、突片延出部66Bの内縁部に摺接してガイドされる。
【0058】
力を加えられて前部カバー部材70が更に後方へ押し込まれると、内側壁74が撓んで係合突起100がシート内方に移動することにより、突片基部66Aが係合突起100を乗り越え、係合突起100の係合面102Aが突片基部66Aに背面側から係合する。これにより、前部カバー部材70がライザー部材40に取り付けられる。
【0059】
次に、以上のように構成されたカバー部材取付構造の効果について説明する。
【0060】
図3に示されるように、立壁58の前端縁に突片66が折り曲げて形成され、
図4に示されるように、カバー本体80の内面側に、ライザー部材40に取り付けられた状態において突片66の背面側に位置する係合突起100が一体形成されている。これにより、係合突起100を突片66に係合させることで、前部カバー部材70をライザー部材40に取り付けることができる。前部カバー部材70を取り付けるために別体の連結片等が必要ないため、部品点数の増大が抑制されるうえ、取り付け作業が容易である。
【0061】
突片66は、シート内方に位置する右側の立壁58にシート内方に向けて形成され、内側壁74の内面側に形成された係合突起100は、前端壁72に向く係合面102Aと、係合面102Aと相反する側に形成された傾斜面104Aとを有している。これにより、突片66を内側壁74の内面に沿わせて前部カバー部材70を前脚部材46の正面側から押し込むことにより、突片66が係合突起100の傾斜面104Aを乗り越えて係合面102Aに係合するため、前部カバー部材70の取り付け作業が容易である。
【0062】
カバー本体80の内面側には、ライザー部材40に取り付けられた状態において突片66の正面に対向する後端面92Aを有する下リブ88Bが一体形成されていることから、突片66が係合突起100と下リブ88Bとによって挟まれ、下リブ88Bが押さえリブとして機能する。これにより、前部カバー部材70のがたつきが抑制される。
【0063】
カバー本体80は、前端壁72と内側壁74とが第2横リブ88によって連結され、前端壁72の上部と内側壁74の上部とが上連結壁78によって連結されていることにより、剛性が高められている。一方、カバー本体80の剛性が高められると、突片66に係合突起100の傾斜面104Aを乗り越えさせるために大きな力が必要になる。本実施形態では、下リブ88Bは突片延出部66Bに対峙し、係合突起100は、下リブ88Bよりも下方に配置されて突片基部66Aに係合する。このように、係合突起100が下リブ88Bよりも低い位置に配置されることにより、内側壁74の撓みによって係合突起100がシートSの内側に移動し易くなり、小さな力でも突片66が係合突起100の傾斜面104Aを乗り越えられるため、取り付け作業が容易である。
【0064】
下リブ88Bは、リブ基部92から前端壁72と相反する側へ延出し、突片延出部66Bの立壁58側の端縁に対向する右端面94Aを有するリブ延出部94を有する。これにより、リブ延出部94が突片延出部66Bによって立壁58側と相反する側から押さえられるため、前部カバー部材70の左右方向のがたつきが抑制される。
【0065】
リブ延出部94の突片延出部66Bに対向する右端面94Aは、先端側ほどリブ延出部94の幅を狭くする向きに傾斜している。そのため、突片66に係合突起100の傾斜面104Aを乗り越えさせる際に突片66がリブ延出部94の延出端に当接して引っ掛かることが抑制され、前部カバー部材70の取り付け作業性が向上する。
【0066】
突片延出部66Bは、立壁58から離間した位置にて突片基部66Aから上方へ向けて延出しており、前端壁72の内面側には、上下・前後方向に延在して下リブ88Bに交差する第2縦リブ90が一体形成され、第2縦リブ90の下端面90Aが突片基部66Aの上縁に対向する。このように、第2縦リブ90が突片基部66Aによって下方から押さえられるため、前部カバー部材70の上下方向のがたつきが抑制される。
【0067】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、本発明を、一例として車両用のシートSに適用したが、鉄道車両や航空機などにも広く適用することができる。また、上記実施形態では、ライザー部材40の前部を覆う前部カバー部材70の取付構造として説明したが、ライザー部材40の後部を覆うカバー部材や、右側のライザー部材42の前部又は後部を覆うカバー部材にも適用できる。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、素材等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。