特許第6507223号(P6507223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社金陽社の特許一覧

<>
  • 特許6507223-フィルム用金属表面ゴムロール 図000003
  • 特許6507223-フィルム用金属表面ゴムロール 図000004
  • 特許6507223-フィルム用金属表面ゴムロール 図000005
  • 特許6507223-フィルム用金属表面ゴムロール 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6507223
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】フィルム用金属表面ゴムロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 27/00 20060101AFI20190415BHJP
   B65H 18/16 20060101ALI20190415BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   B65H27/00 A
   B65H18/16
   F16C13/00 B
   F16C13/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-251225(P2017-251225)
(22)【出願日】2017年12月27日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142436
【氏名又は名称】株式会社金陽社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 定行
(72)【発明者】
【氏名】高柳 佳晃
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−195249(JP,A)
【文献】 特開平06−285894(JP,A)
【文献】 実開昭63−116421(JP,U)
【文献】 特開平11−277624(JP,A)
【文献】 実開昭56−124319(JP,U)
【文献】 特開2004−307160(JP,A)
【文献】 特開平10−315303(JP,A)
【文献】 特開2004−323228(JP,A)
【文献】 特開2006−93416(JP,A)
【文献】 特開2013−173888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00 − 23/16、
23/24 − 23/34、27/00
B65H 5/02、5/06、5/22、
29/12 − 29/24、29/32
F16C 13/00 − 15/00
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に配置された発泡体からなる弾性層と、
前記弾性層上に接着剤で固定して最外層として配置された金属スリーブとを備え、
前記弾性層のポアソン比は0.2以下であること、及び
前記金属スリーブの厚さが0.05mm〜0.3mmであることを特徴とするフィルム用金属表面ゴムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム用金属表面ゴムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムは、高分子化合物を主原料として薄膜状に形成されたものであり、包装用、光学用、写真用、及び映画用のフィルム、特定の機能性を有するフィルム等が様々な用途に広く使用されている。
【0003】
一般的なフィルムの製造方法には、例えば、延伸法、カレンダー法、溶解押出成型法、溶液流涎法等がある。必要に応じて、製造したフィルムに対して、二次加工、表面処理、多層加工等の加工をさらに行なう場合がある。このようなフィルムの製造や加工において、フィルムを取り扱うための多くのゴムロールが使用されている。
【0004】
特許文献1は、フィルム自動巻取装置を開示する。当該フィルム自動巻取装置により、巻芯へのフィルムの巻取りと、それに伴う作業、例えば、巻芯の巻取軸への取付け、巻付け、巻取り後のフィルムの切断、巻取軸からの取出し等の付帯作業とが、自動的又は半自動的に行われる。特許文献1では、例えば、発泡したゴム材料をフィルム接触面として備えるフィルム搬送ローラが記載されている。
【0005】
一方、フィルムの製造又は加工ラインでは、ラインスピードの向上やフィルムの薄膜化に伴って、ゴムロールの回転速度とフィルムの送り速度とが同期せず、フィルムがスリップして、フィルムに傷をつける事象が散見されている。特に軟質薄膜フィルムの場合、張力を小さくするとスリップが生じ、張力を大きくするとフィルムが伸びるというジレンマがある。
【0006】
また、前述のようにフィルムの巻取りに使用されるゴムロールにおいて、巻取り時にフィルム間に空気を巻き込む問題も発生する虞がある。空気の巻き込みを無くすためには、フィルムを巻取る際にフィルムとの間で広いニップ幅を形成するゴムロールが有効である。広いニップ幅を形成するには、ゴムロールの線圧を高くする必要がある。しかしながら、ゴムロールの線圧を高くするとフィルムの張力も大きくなってフィルムが伸びる問題が生じ、線圧を低くすると、空気の巻き込みが発生するというジレンマも生じる。
【0007】
さらに、ゴムロールを長期に亘って使用すると、フィルムと接するゴムロール表面が摩耗する虞がある。ゴムロール表面の摩耗は、ゴム粉を発生し、当該ゴム粉がフィルム表面に付着してフィルム製品の品質を低下させる。また、表面が摩耗したロールは、そのまま継続して使用することができない。このため、ロールの再研磨やゴム層の巻き替え等の作業が必要になり、生産効率を低下させる。
【0008】
特許文献2では、ゴムロール表面に微小中空体を用いて凹凸を形成し、フィルムに対して安定したグリップ力を付与することで、フィルム送り速度の安定性を向上させることが記載されている。しかしながら、このゴムロールは、ロール表面の耐摩耗性を解決したものではない。
【0009】
前述したゴムロールの問題点は、フィルムの巻取りに適用した場合に限らず、フィルムの貼り合せや搬送に適用した場合にも起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/047546号
【特許文献2】特開2015−93759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、フィルムに対する耐摩耗性に優れるとともに、低い線圧で使用してもフィルムとの間で広いニップ幅を形成することが可能なフィルム用金属表面ゴムロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールは、支持体と、前記支持体上に配置された発泡体からなる弾性層と、前記弾性層上に接着剤で固定して最外層として配置された金属スリーブとを備え、前記弾性層のポアソン比は0.4以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルム用金属表面ゴムロールによれば、フィルムに対する耐摩耗性に優れ、低い線圧で使用してもフィルムとの間で広いニップ幅を形成でき、フィルム間への空気の巻き込み、及びフィルムの伸びを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールの概略斜視図。
図2】フィルム巻取装置によりフィルムをロール状に巻き取る工程を示す略図。
図3】フィルムに対する摩耗性の測定方法を示す図。
図4】ニップ幅と線圧との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。実施形態を通して同一の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態の理解を促すための模式図であり、その形状や寸法は実際と異なる個所がある。
【0016】
図1は、実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロール10の概略斜視図である。フィルム用金属表面ゴムロール10は、支持体11と、支持体11上に配置された発泡体からなる弾性層12と、弾性層12上に接着剤13で固定して最外層として配置された金属スリーブ14とを備えている。
【0017】
支持体11は、丸棒でも、中空パイプでもよいが、軽量化の点から中空パイプが好ましい。支持体11は、両端部からそれぞれ延出した2つの軸部11a、11bを備える。軸部11a、11bは、一般的にジャーナルとも呼ばれる。軸部11a、11bは、支持体11の両端を軸支する、及び/又は駆動部品と嵌合するために利用され、そのために選択された径と長さを有する。軸部11a、11bは、所望に応じてその端部がさらに加工されていてもよい。
【0018】
支持体11と軸部11a、11bは、一体形成してもよく、支持体11と軸部11a、11bとをそれぞれ別部品として形成し、組み合せることにより形成してもよい。支持体11が中空パイプである場合、支持体11と軸部11a、11bとを摩擦圧接により組み合わせてもよい。
【0019】
支持体11と軸部11a、11bは、例えば、鉄、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属、又は炭素繊維強化プラスチック等のFRPのような高剛性材料から形成される。
【0020】
弾性層12は、発泡体からなり、0.4以下のポアソン比を有する。弾性層12は、好ましくは0.2以下のポアソン比を有する。
【0021】
弾性層12のポアソン比は、例えば1辺30mm、厚さ10mmの直方体に加工した弾性層サンプルを使用して測定する。具体的には、圧縮試験機(インストロン社製 5582型)により弾性層サンプルの一面と当該一面と対向する他面とを挟持し、当該弾性層サンプルを圧縮させる。次に、二軸ビデオ伸び計(インストロン社製)により、圧縮させた弾性層サンプルの縦方向のひずみ(圧縮方向におけるひずみ)と横方向のひずみ(圧縮方向に対して直角方向におけるひずみ)を計測する。各方向のひずみは、(圧縮前の長さから圧縮後の長さの差)/(圧縮前の長さ)で示される。次に、横方向のひずみを縦方向のひずみで除し、−1を掛けた数値をポアソン比とする。なお、当該測定において弾性層サンプルに体積変化が見られない場合、その弾性層サンプルのポアソン比は、理論上は0.5となる。
【0022】
弾性層12は、例えば原料ゴムからなる発泡体が用いられる。原料ゴムは、例えばアクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、若しくはウレタンゴム、又はこれらの何れか2種類以上の組み合わせ等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
発泡体は、原料ゴムに例えば加硫剤、加硫促進剤、充填剤、軟化剤、発泡剤等の添加物を所望の配合比で混合して弾性層材料とし、当該弾性層材料を加熱することによって得ることができる。発泡剤は、例えば、加熱することにより気化する物質であればよく、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノンアン、デカン、ウンデカン、ドデカン及び/又はトリデカン等の炭素数4〜20の直鎖状、分岐状、脂環状の液体炭化水素を用いることができる。また、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機系発泡剤も用いることができる。
【0024】
弾性層12の厚さ(外径と内径との差)は、例えば3mm〜15mmであることが好ましい。後述するフィルム用金属表面ゴムロールの製造において、弾性層を被覆した支持体(以下、ゴムロールと称す)の外径を収縮させ、収縮させたゴムロールを金属スリーブに挿入する工程が採用される。この工程において、弾性層の厚さを3mm未満にすると、金属スリーブにゴムロールを挿入する際、弾性層の外径収縮が十分に得られず、金属スリーブへのゴムロールの挿入が困難となる。一方、弾性層の厚さが15mmを超えると、当該弾性層の厚さ方向の発泡状態にばらつきが生じやすくなり、円筒体面において不均一な圧力分布を生じる虞がある。
【0025】
弾性層12と支持体11との間には、中間層(図示せず)を設けてもよい。中間層は、例えば支持体11の周面上に成型し、成型した中間層表面にポアソン比が0.4以下の発泡体からなる弾性層12を成型することによって、支持体11と弾性層12との接着性を向上させることができる。
【0026】
中間層は、例えば、エボナイト、FRP、ゴム、樹脂、又はこれらを組み合わせた材料から形成されることが好ましい。
【0027】
接着剤13は、弾性層12と金属スリーブ14とを固定している。接着剤13は、例えばシリコーン系接着剤である。接着剤13を用いずに製造したフィルム用金属表面ゴムロールは、使用時に金属スリーブがロールの長手方向にずれる虞がある。
【0028】
接着剤13は、後述するフィルム用金属表面ゴムロールの製造において、収縮させたゴムロールを金属スリーブに挿入する前に、弾性層12の表面に塗布して用いられる。接着剤は、弾性層と金属スリーブとの固定の他に、支持体と弾性層とを固定するために用いてもよい。
【0029】
金属スリーブ14の厚さ(外径と内径との差)は、例えば0.05mm〜0.3mmであることが好ましい。金属スリーブの厚さを0.05mm未満にすると、当該金属スリーブにゴムロールを挿入する際のハンドリング性が低くなり、ゴムロールを金属スリーブに挿入できない虞がある。また、金属スリーブの厚さが0.3mmを超えると、金属表面ゴムロールの使用時に金属スリーブが変形し難くなって、フィルムとの間で充分なニップ幅を形成できない虞がある。
【0030】
金属スリーブ14は、JIS B 0601:2013による最大高さ粗さ(Rz)が0.6μm以下であることが好ましい。より好ましいRzは0.2μm以下である。上述した範囲の表面粗さを有するフィルム用金属表面ゴムロール10は、フィルムと接触してもフィルムに傷をつけず、フィルムの表面平滑性を損なわない。
【0031】
金属スリーブ14の材質は特に限定されるものではなく、フィルムの製造又は加工における貼り合せ、搬送、巻取り等の様々な使用条件における十分な耐摩耗性が得られればよい。金属スリーブ14の材質としては、例えばニッケル、ステンレス鋼、クロム等が挙げられ、これらを単独若しくは2種類以上を積層させてもよい。また、金属スリーブ14の表面には、当該表面を硬化させるためにDLC処理(ダイアモンドライクカーボン)のような硬質化処理を施してもよい。
【0032】
金属スリーブ14は、例えば電気鋳造法、又は金属薄板を溶接で貼り合せることによって製造することができる。電気鋳造法を用いて製造した金属スリーブは、継ぎ目なく形成することができ、より高い表面平滑性を維持できるため好ましい。
【0033】
実施形態のフィルム用金属表面ゴムロールに適用されるフィルムは、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。上述したフィルムの厚さは、例えば0.1mm〜0.25mmである。
【0034】
また、実施形態のフィルム用金属表面ゴムロールに適用される軟質薄膜フィルムは、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。上述した軟質薄膜フィルムの厚さは、例えば0.01mm〜0.1mmである。
【0035】
実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールは、例えば次のようにして製造される。
【0036】

最初に、所望に応じた軸部を有し、かつ所望の長さ及び径の支持体を用意する。次に、支持体の表面をブラスト処理する。別途、所望の配合比で所望の材料からなる原料ゴムと添加物とを混練し、弾性層材料を調製する。支持体のブラスト処理された部分に接着剤を塗布し、そこに弾性層材料を巻き付け、成形する。
【0037】
調製した弾性層材料は、シート状に分出しして支持体表面上に巻いたり、押出し成型により円筒形状に成型した弾性層材料を支持体表面上に配置したり、或いは液状の弾性層材料であれば注型を用いて支持体表面上に円筒状に成型したり、することによって、支持体表面上に配置してもよい。
【0038】
次いで、当該弾性層材料を加熱して加硫、発泡させ、支持体の周面上に弾性層を形成する。支持体の周面上に形成された弾性層の表面を、回転砥石を用いて研磨し、弾性層を所定の外径寸法及び長さにして、弾性層を被覆した支持体を得る。
【0039】
次いで、弾性層の表面に接着剤を塗布する。接着剤を塗布した後に弾性層を被覆した支持体を、圧縮空気により加圧して弾性層の外径を収縮させる。弾性層の外径を収縮させた支持体を金属スリーブ内に挿入する。挿入後に圧縮空気による加圧を解除することによって弾性層の外径が膨張し、弾性層と金属スリーブとを接着剤により固定して、フィルム用金属表面ゴムロールを製造する。
【0040】
実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールは、例えば次のように使用される。
【0041】
図2を参照しながら、フィルム用金属表面ゴムロールの使用例について説明する。図2は、センタードライブ式のフィルム巻取装置によりフィルムをロール状に巻き取る工程を示す略図である。フィルム巻取装置20は、ガイドロール21と、コンタクトロール22と、巻取軸23とを備える。巻取軸23の外側に円筒形状の巻芯25を嵌め込んだ後に、巻芯25の外周にフィルム24を巻き取っていく。ガイドロール21は、捩れ、シワができないようにフィルムを支え、かつ送るべき方向及び/又は角度で下流から上流へとフィルムを送るためのロールである。コンタクトロール22は、実施形態のフィルム用金属表面ゴムロールであり、巻芯25の上方に設置され、フィルム24を巻芯25の外周に巻き取る際に形成されるフィルムロール26の最外面に常時接触する。このようなコンタクトロール22は、巻芯25に巻き取られるフィルムロール26の最外面に位置する、フィルム24のシワ、捩れの発生、又はフィルム24とフィルムロール26の最外面との間への空気の巻き込みを防止する。
【0042】
実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールは、このようなセンタードライブ式フィルム巻取装置におけるコンタクトロールに適用する場合に限らず、ガイドロール、又は巻芯として使用してもよい。フィルム用金属表面ゴムロールは、サーフェースドライブ式巻取機等のそれ自身公知の何れかの他のフィルム巻取装置において使用される何れかのロールに適用してもよい。また、フィルムを扱うための何れかの装置において、フィルムと接触して処理するためのロールとして使用してもよい。すなわち、実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロールは、フィルムの製造又は加工における貼り合せ、搬送、巻取り等の工程に用いることができる。
【0043】
このような実施形態に従うフィルム用金属表面ゴムロール10は、以下のような効果を有する。
【0044】
フィルム用金属表面ゴムロール10は、発泡体からなり、0.4以下のポアソン比を有する弾性層12を備えるため、低い線圧で使用してもフィルムとの間で広いニップ幅を形成することができ、フィルム間への空気の巻き込み、及びフィルムの伸びを防止できる。
【0045】
また、フィルム用金属表面ゴムロール10は、最外層として金属スリーブ14を備えるため、最外層に弾性層を備える、つまり最外層に金属スリーブが存在しない、ゴムロールと比較してロール表面の耐摩耗性を著しく向上できる。それ故、フィルム用金属表面ゴムロール10は、最外層に弾性層を備えるゴムロールのように表面の再研磨や弾性層の巻き替えの作業、それに伴うロール交換を含むメンテナンスの頻度が低減し、生産効率を著しく向上できる。特に、金属スリーブ14の厚さを0.05mm〜0.3mmにすることによって、フィルム用金属表面ゴムロール10の組立て性を向上し、かつ最外層として金属スリーブ14を備えてもフィルムとの間で広いニップ幅を形成することができる。
【0046】
発明の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【0047】
<例>
本発明の効果を確認するために、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールと、比較例1〜3のロールとを製造し、それらを比較した。
【0048】
(1)実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロール、比較例1〜3のロールの製造
・実施例1
弾性層材料、接着剤、支持体、及び金属スリーブを用意した。弾性層材料として原料ゴムであるシリコーンゴム100重量部、加硫剤0.4重量部、及び発泡剤5重量部を用意し、それらをオープンロールで混練りして調製した。調製した弾性層材料より得られたシリコーンスポンジは硬度40(タイプE)であった。
【0049】
ここで、シリコーンスポンジの硬度は、JIS K6253規格に対応した高分子計器株式会社製のタイプE硬度測定器によって測定した。
【0050】
接着剤としてシリコーン系接着剤を使用した。
【0051】
支持体は、外径70mm、厚さ5mm、長さ800mmの鉄製の中空パイプの両端に鉄製の軸部を焼き嵌めして形成した。支持体の中空パイプの周面をブラスト処理した。
【0052】
金属スリーブは、内径90mm、厚さ0.1mm、長さ800mmの円筒形状のニッケルスリーブを使用した。
【0053】
支持体のブラスト処理した中空パイプの周面上に、シリコーン系接着剤を塗布した。つづいて、当該支持体の中空パイプの周面上に、押出し機を用いて予め調製した弾性層材料を円筒状に押し出して成型した。円筒状に成型した弾性層材料を加熱して発泡及び加硫して弾性層を形成した。次に、弾性層表面を回転砥石で研磨して、外径90.1mmのゴムロールを作製した。
【0054】
得られたゴムロールの弾性層表面にシリコーン系接着剤を塗布した。接着剤を塗布したゴムロールを、圧縮空気により加圧してゴムロールの弾性層の外径を収縮させた。外径を収縮させたゴムロールを金属スリーブ内に挿入した。挿入後に圧縮空気による加圧を解除し、弾性層の外径を膨張させ、弾性層と金属スリーブとを弾性層の膨張力及び接着剤により固定して、フィルム用金属表面ゴムロールを製造した。
【0055】
・実施例2
シリコーンゴム100重量部、加硫剤0.4重量部、及び発泡剤1.5重量部を用いて調製した硬度65(タイプE)のシリコーンスポンジを用いた以外、実施例1と同様の材料及び配合で同様の方法によりフィルム用金属表面ゴムロールを製造した。
【0056】
・比較例1
最初に、シリコーンゴム100重量部、及び加硫剤0.4重量部を用いて調製した硬度20(タイプA)の非発泡性のシリコーンゴムを用い、かつゴムロールの外径を90.03mmとした以外、実施例1と同様の材料及び配合で同様の方法によりゴムロールを製造した。
【0057】
得られたゴムロールの弾性層表面にシリコーン系接着剤を塗布した。接着剤を塗布したゴムロールを、液体窒素を用いて−25℃まで冷却し外径を収縮させた。外径を収縮させたゴムロールを金属スリーブ内に挿入した。このとき、ゴムロールを約600mm挿入したところで挿入不能となった。このため、金属スリーブの未挿入部分を切除し、約600mmの長さのフィルム用金属表面ゴムロールを製造した。
【0058】
・比較例2
実施例1と同様の材料及び配合で同様の方法によりゴムロールを製造し、これをフィルム用ゴムロールとした。
【0059】
・比較例3
ゴムロールの弾性層表面にシリコーン系接着剤を塗布せずに、金属スリーブに挿入、固定した以外、実施例1と同様の材料及び配合で同様の方法によりフィルム用金属表面ゴムロールを製造した。
【0060】
[弾性層のポアソン比]
実施例1で用いた弾性層材料を1辺30mm、厚さ10mmの直方体に加工して弾性層サンプルを作製した。次に、圧縮試験機(インストロン社製 5582型)を用いて、弾性層サンプルの一面と当該一面と対向する他面とを挟持し、当該弾性層サンプルを圧縮し、二軸ビデオ伸び計(インストロン社製)で弾性層サンプルの縦方向のひずみと横方向のひずみを計測した。計測された横方向のひずみを縦方向のひずみで除し、−1を掛けた数値をポアソン比とした。
【0061】
実施例2、比較例1〜3の弾性層も同様な方法でポアソン比を測定した。
【0062】
[摩耗性]
図3に示すように、実施例1のフィルム用金属表面ゴムロール(ロール31と称す)を旋盤に取り付け、その表面に厚さ125μm、幅50mmのフィルム32(PETフィルム)をロール31の表面に対して抱き角90度で接触させた。フィルム32の一端を固定し、フィルム32の他端に100gの荷重を掛け、ロール31を200rpmの回転数で60分間回転させた。回転停止後、ロール31表面の摩耗性を評価した。摩耗性評価は、ロール表面を目視で観察し、ロール表面に異常が見られなかった場合は「A」とし、ロール表面が摩耗していた場合は「B」とした。
【0063】
実施例2のフィルム用金属表面ゴムロール、比較例1〜3のロールも同様な方法で摩耗性の評価を行った。
【0064】
[ニップ幅の測定]
実施例1のフィルム用金属表面ゴムロール、長さ1000mm、外径175mmの金属ロール、及び幅100mm、長さ1000mmの感圧フィルム(富士フィルム社製のプレスケール微圧用感圧フィルム:型番4LW)を用意した。フィルム用金属表面ゴムロールと金属ロールとを軸方向が互いに平行になるように対向配置し、これらロールの間に感圧フィルムをそのフィルム長さが各ロールの軸と直交するように挟んだ。金属ロールをフィルム用金属表面ゴムロールに向けて線圧1N/mmで押し当てた。その後、感圧フィルムを2つのロールから取出し、感圧フィルムを観察した結果、金属表面ゴムロールにより転写された転写跡が形成されていた。当該転写跡は、感圧フィルムの幅方向に略帯状をなす。当該転写跡の中央部、感圧フィルムの長さ方向に沿う両端から50mm内側に位置する2つの部分の合計3箇所における金属表面ゴムロールの周方向に沿う長さを、ノギスを用いて測定した。測定した3つの長さの平均値を算出することによりニップ幅を求めた。
【0065】
実施例2のフィルム用金属表面ゴムロール、比較例1、3のロールを用いて同様な方法によりニップ幅を求めた。
【0066】
さらに、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロール、比較例1のロールを用いて、金属ローラへ押し当てる線圧を変えた以外、同様な方法により線圧の変化に対するニップ幅を求めた。この結果は、図4に示す。
【0067】
[接着性]
実施例1のフィルム用金属表面ゴムロールに金属ロールを線圧3N/mmの条件で押し当てた。この状態で金属ロールを30m/minの周速で回転させた。このとき、実施例1のフィルム用金属表面ゴムロールは従動で回転する。金属ロールを24時間回転させた後に、フィルム用金属表面ゴムロールの金属スリーブの状態を確認した。
【0068】
接着性の評価は、金属スリーブに異常が見られない場合は「A」とし、金属スリーブがずれた場合は「B」とした。なお、ロールの製造の際に、金属スリーブへ挿入不可能となった場合は「C」とした。
【0069】
実施例2のフィルム用金属表面ゴムロール、比較例1、3のロールも同様な方法により金属スリーブの接着性を評価した。
【0070】
前記評価結果を下記表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
前記表1から明らかなように、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールは、発泡体からなり、0.4以下のポアソン比を有する弾性層を備えるため、低い線圧で使用してもフィルムとの間で広いニップ幅を形成することができた。
【0073】
また、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールは、最外層として金属スリーブを備えるため、最外層に弾性層を備える、つまり最外層に金属スリーブが存在しない、比較例2のゴムロールと比較してロール表面の耐摩耗性を著しく向上できた。
【0074】
さらに、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールは、接着剤により弾性層と金属スリーブとを固定しているため、接着剤を用いずに製造した比較例3のフィルム用金属表面ゴムロールと比較して、使用時に金属スリーブがロールの長手方向にずれることを防止できた。
【0075】
次いで、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールを用いて使用試験を行なった。
【0076】
実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールを巻取・巻出装置のガイドロールとして組み込み、40μmの厚さのポリプロピレンフィルム(PPフィルム)を張力30N/m及びライン速度300m/minで巻き取った。装置の稼働中のフィルムの接触と移動に伴って金属表面ゴムロールは自由に回転できる。試験では、各金属表面ゴムロールの回転速度を測定すると共に、フィルムの滑り、金属表面ゴムロールの回転の状態等を観察した。10分間稼働し、3000mの長さのPPフィルムを巻芯に巻き取り、装置を停止した。
【0077】
使用中においてスリーブのずれもなく、使用後のロール表面に摩耗も見られなかった。また、巻き取り後のPPフィルムを確認したところ、空気の巻き込みも無く、良好に使用できることが分かった。すなわち、実施例1、2のフィルム用金属表面ゴムロールは、フィルム間への空気の巻き込み、及びフィルムの伸びを防止できた。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]支持体と、前記支持体上に配置された発泡体からなる弾性層と、前記弾性層上に接着剤で固定して最外層として配置された金属スリーブとを備え、前記弾性層のポアソン比は0.4以下であることを特徴とするフィルム用金属表面ゴムロール。
[2]前記金属スリーブの厚さが0.05mm〜0.3mmであることを特徴とする[1]記載のフィルム用金属表面ゴムロール。
【符号の説明】
【0078】
10…フィルム用金属表面ゴムロール 11…支持体 11a、11b…軸部 12…弾性層 13…接着剤 14…金属スリーブ 20…フィルム巻取装置 21…ガイドロール 22…コンタクトロール 23…巻取軸 24、32…フィルム 25…巻芯 26…フィルムロール 31…ロール
【要約】      (修正有)
【課題】フィルムに対する耐摩耗性に優れるとともに、低い線圧で使用してもフィルムとの間で広いニップ幅を形成することが可能なフィルム用金属表面ゴムロールを提供する。
【解決手段】フィルム用金属表面ゴムロール10は、支持体11と、前記支持体上に配置された発泡体からなる弾性層12と、前記弾性層上に接着剤13で固定して最外層として配置された金属スリーブ14とを備え、前記弾性層のポアソン比は0.4以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4