(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
橋脚と橋桁との間に、それぞれブラケットを介在して粘性体を用いたダンパーの両端部を連結してなる3次元ブラケット付き落橋防止装置において、前記ブラケットは、回転可能であり、この回転可能なブラケットは、前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板の空間に厚さ方向を嵌合し、前記橋脚に設けた2枚のリブ板の空間に幅方向を嵌合したブラケット本体と、このブラケット本体の厚さ方向と前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板を貫通する第1軸孔に回転自在に嵌合した1本の第1軸体と、前記橋脚に設けた2枚のリブ板から前記ブラケット本体の幅方向であって前記第1軸孔と直交し前記橋脚のブラケットの両側部途中まで穿設した第2軸孔に回転自在に嵌合した2本の第2軸体とからなり、この第2軸体は、前記橋脚に設けたリブ板の第2軸孔に嵌合する大径部と、前記ブラケット本体の第2軸孔に嵌合する中径部との段を有する軸からなり、前記ダンパーの他端部と前記橋桁の連結部における回転可能なブラケットも同様に構成してなり、
前記ダンパーは、前記橋脚側のブラケットに固着した部材と、前記橋桁側のブラケットに固着した部材とが前記ダンパーにおける設定した引張力のストローク限界に達したとき互いに係止して落橋防止部材として機能するように構成したことを特徴とする3次元ブラケット付き落橋防止装置。
前記ダンパーは、シリンダの内部に粘性体を充填すると共に、ピストンとピストンロッドを有し、前記橋脚側のブラケットと前記橋桁側のブラケットのいずれか一方に固着した部材は、前記ピストンロッドからなり、いずれか他方に固着した部材は、前記シリンダからなり、前記ダンパーにおける設定した伸縮量のストローク限界に達したとき前記ピストンロッドのピストンが前記シリンダのシリンダ内壁端部に係止して落橋防止部材として機能するように構成したことを特徴とする請求項1記載の3次元ブラケット付き落橋防止装置。
【背景技術】
【0002】
地震動時、車両通行時、洪水発生時等による落橋を防止するために、
図12(c)に示すように、橋脚11の下部ブラケット50と橋桁10上部ブラケット51との間に、たるみを持たせたケーブル52で連結した落橋防止装置を取り付けておくことにより、ケーブル52のたるみが直線になる分だけの変位量でとどめて橋桁10の落橋を防止していた。
単なる落橋防止だけでなく、衝撃や位置ずれを吸収するために
図12(a)(b)に示すようなダンパー12を取り付けていた(特許文献1)。
この特許文献1によれば、
図12(a)又は(b)に示すように、橋脚11の上に支承シュー(図示せず)を介在して橋桁10を取り付けた場合において、橋脚11と橋桁10との間には、種々の振動に伴う衝撃を吸収して事故、破壊等を可能な限り減少させるために、ダンパー12が橋脚11と橋桁10との間にそれぞれブラケット50と51を介して取り付けられる。
【0003】
振動や衝撃は、垂直方向、水平方向、斜め方向、回転方向、これらの複合した方向など、あらゆる方向に発生する。特に、地震動では、変動量も引張荷重も想定外に大きくなる。そのため、これらのあらゆる方向に速やかに応答可能な制振装置が望まれるとともに、ダンパー12の許容限界を超えるような場合には、ダンパー12を保護しつつ、落橋を防止する装置が望まれる。
図12(a)に示すものは、ダンパー12を橋脚11側と橋桁10との間に下部ブラケット50と上部ブラケット51で取り付ける場合において、上部ブラケット51は、橋桁10側のベースプレート13aに2個のリブプレート14aを所定間隔で一体に取り付け、これらのリブプレート14aの間に第1支持軸15aを垂直に取り付け、また、ダンパー12の一端部に固定的に設けたガセットプレート16aに球面軸受17aを取り付け、この球面軸受17aに前記第1支持軸15aを嵌合する。同様に、橋脚11側の下部ブラケット50は、ベースプレート13bに2個のリブプレート14bを所定間隔で一体に取り付け、前記リブプレート14bの間に第1支持軸15bを垂直に取り付け、また、ダンパー12の一端部に固定的に設けたガセットプレート16bに球面軸受17bを取り付け、この球面軸受17bに前記第1支持軸15bを嵌合する。
このような構成により、上下の第1支持軸15aと15bに直交する面内だけでなく、球面軸受17aと17bの球面による許容調心角度の範囲内で全方向に対応できる。
【0004】
図12(b)に示すものは、
図12(a)に示す球面軸受17aと17bに代えて、上下の第1支持軸15aと15bと、これらから離れた位置で直交する第2支持軸18aと18bを設けた例を示している。さらに詳しくは、リブプレート14aの間に第1支持軸15aを垂直に取り付け、この第1支持軸15aに嵌合した軸受19aにガセットプレート20aの上端部を固着して垂下し、このガセットプレート20aの下端部と、ダンパー12の一端部のガセットプレート16aとを、前記第1支持軸15aと第2支持軸18aを互いに離れた位置で、かつ直交して連結したものである。橋脚11側も同様の構成である。
このような構成により、第1支持軸15aと15bに直交する面内と、第2支持軸18aと18bに直交する面内が複合して全方向に対応できる。
【0005】
また、特許文献2には、橋脚と橋桁との間にダンパーを取り付ける場合において、ダンパーを取り付けるためのボルトに、想定外の外力が作用したときに破壊するノックオフボルトを使用することにより、ダンパーの機能を失わせることが記載されている。この特許文献2には、ダンパーの機能を失わせたときのために、ケーブル、チェーン等で構成された落橋防止を併用することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12(a)に示す第1支持軸15と球面軸受17を使用したものは、特に、球面軸受17が精密な構造であるため、巨大な衝撃を受けると破壊の恐れがあり、また、球面軸受17は、許容調心角度が5〜6度程度に設定されているため、大きな位置ずれには対応できない。ピン径が大きくなると、10度程度のものもあるが、ピン径を大きくして回転角を大きくすると、球面軸受17もそれだけ大きくなり、それを受けるブラケット等が大きくなり、特に、橋脚と橋桁との間のような取り付け隙間に制限のある場合には、使用することができない。
また、許容調心角度が小さく、大きな位置ずれには対応できないため、ダンパー12を設置するだけでは、落橋防止効果が得られない。ダンパーだけで落橋防止も行うためには、耐震強度の大きなものが必要となり、極めて高価なものとなる。
【0008】
図12(b)に示す第1支持軸15と第2支持軸18が距離を持って取り付けられる例では、ダンパー12の一端部のブラケットからダンパー12の他端部のブラケットまでの長さが長くなり、構造的に大型になるため、橋脚11と橋桁10との間隔の大きなものにしか使用することができない。さらに、第1支持軸15を支点とする負荷と、第2支持軸18を支点とする負荷が距離を置いてかかるので、ダンパー12の円滑な制振作用が行われないなどの問題があった。
【0009】
特許文献2に示す例では、橋脚と橋桁との間に設けられたダンパーの他に、このダンパーと別体の落橋防止装置を取り付けなければならず、橋脚と橋桁の間の狭い隙間への落橋防止装置の取り付けが制限されるとともに、ダンパーは、一方向のみに対応するものであるから、どの方向に発生するか予測のできない地震動に対応できる機能を有しておらず、落橋防止作用が不十分であった。例え、文献1の技術と文献2の技術を組み合わせたとしても、ダンパーの両端部にも、また、落橋防止装置の両端にもそれぞれユニバーサルジョイントの機能を設けなければならず、構造が複雑になり、橋脚と橋桁の間の狭い隙間に複数台を設置する場合には、取り付けが制限されるという問題があった。
【0010】
本発明は、全方向で大きな角度の変化に追随でき、かつ、コンパクトな構造で、大きな負荷にも耐えることができ、もし、ダンパーの許容限度を超えるようなときは、ダンパーを保護しつつ落橋を防止することのできる3次元ブラケット付き落橋防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の3次元ブラケット付き落橋防止装置は、橋脚と橋桁との間に、それぞれブラケットを介在して粘性体を用いたダンパーの両端部を連結してなる3次元ブラケット付き落橋防止装置において、前記ブラケットは、回転可能であり、この回転可能なブラケットは、前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板の空間に厚さ方向を嵌合し、前記橋脚に設けた2枚のリブ板の空間に幅方向を嵌合したブラケット本体と、このブラケット本体の厚さ方向と前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板を貫通する第1軸孔に回転自在に嵌合した1本の第1軸体と、前記橋脚に設けた2枚のリブ板から前記ブラケット本体の幅方向であって前記第1軸孔と直交し前記橋脚のブラケットの両側部途中まで穿設した第2軸孔に回転自在に嵌合した2本の第2軸体とからなり、この第2軸体は、前記橋脚に設けたリブ板の第2軸孔に嵌合する大径部と、前記ブラケット本体の第2軸孔に嵌合する中径部との段を有する軸からなり、前記ダンパーの他端部と前記橋桁の連結部における回転可能なブラケットも同様に構成してなり、
前記ダンパーは、前記橋脚側のブラケットに固着した部材と、前記橋桁側のブラケットに固着した部材とが前記ダンパーにおける設定した引張力のストローク限界に達したとき互いに係止して落橋防止部材として機能するように構成したことを特徴とする。
【0012】
前記ダンパーは、シリンダの内部に粘性体を充填すると共に、ピストンとピストンロッドを有し、前記橋脚側のブラケットと前記橋桁側のブラケットのいずれか一方に固着した部材は、前記ピストンロッドからなり、いずれか他方に固着した部材は、前記シリンダからなり、前記ダンパーにおける設定した伸縮量のストローク限界に達したとき前記ピストンロッドのピストンが前記シリンダのシリンダ内壁端部に係止して落橋防止部材として機能するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、橋脚と橋桁との間に、それぞれブラケットを介在して粘性体を用いたダンパーの両端部を連結してなる3次元ブラケット付き落橋防止装置において、前記ブラケットは、回転可能であり、この回転可能なブラケットは、前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板の空間に厚さ方向を嵌合し、前記橋脚に設けた2枚のリブ板の空間に幅方向を嵌合したブラケット本体と、このブラケット本体の厚さ方向と前記ダンパーの端部に設けた2枚のリブ板を貫通する第1軸孔に回転自在に嵌合した1本の第1軸体と、前記橋脚に設けた2枚のリブ板から前記ブラケット本体の幅方向であって前記第1軸孔と直交し前記橋脚のブラケットの両側部途中まで穿設した第2軸孔に回転自在に嵌合した2本の第2軸体とからなり、この第2軸体は、前記橋脚に設けたリブ板の第2軸孔に嵌合する大径部と、前記ブラケット本体の第2軸孔に嵌合する中径部との段を有する軸からなり、前記ダンパーの他端部と前記橋桁の連結部における回転可能なブラケットも同様に構成してなり、
前記ダンパーは、前記橋脚側のブラケットに固着した部材と、前記橋桁側のブラケットに固着した部材とが前記ダンパーにおける設定した引張力のストローク限界に達したとき互いに係止して落橋防止部材として機能するように構成したので、ダンパーの設定した引張力のストローク限界を超えると、前記橋脚側のブラケットに固着した部材と、前記橋桁側のブラケットに固着した部材とが互いに係止して落橋防止部材として機能する。したがって、衝撃がダンパーの許容限度を超えるようなときは、ダンパーを保護しつつ落橋をも防止することができる。また、ブラケットは、回転可能であるから大きな角度の変化に追随でき、さらに、落橋防止機能を備えたダンパーであるから、コンパクトな構造であり、橋脚と橋桁の間の狭い隙間に複数基を設置することができ、取り付け基数に制限されることがない。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記ダンパーは、シリンダの内部に粘性体を充填すると共に、ピストンとピストンロッドを有し、前記橋脚側のブラケットと前記橋桁側のブラケットのいずれか一方に固着した部材は、前記ピストンロッドからなり、いずれか他方に固着した部材は、前記シリンダからなり、前記ダンパーにおける設定した伸縮量のストローク限界に達したとき前記ピストンロッドのピストンが前記シリンダのシリンダ内壁端部に係止して落橋防止部材として機能するように構成したので、ピストンロッドとシリンダに落橋防止の耐力を持たせることでダンパーと落橋防止を同時に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例1を示すもので、(a)は、落橋防止として機能する前の断面図、(b)は、落橋防止として機能したときの一部の断面図である。
【
図2】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例2を示すもので、(a)は、落橋防止として機能する前の断面図、(b)は、A−A線断面図である。
【
図3】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例3を示すもので、(a)は、落橋防止として機能する前の断面図、(b)は、B−B線断面図である。
【
図4】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例4を示す一部の断面図である。
【
図5】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例5を示すもので、(a)は、落橋防止として機能する前の断面図、(b)は、C−C線断面図である。
【
図6】本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置の実施例6を示すもので、(a)は、落橋防止として機能する前の(c)のG−G線断面図、(b)は、C−C線断面図、(c)は、E−E線断面図、(d)は、F−F線断面図である。
【
図7】制振装置に使用したブラケットの平面から見た断面図である。
【
図8】制振装置に使用したブラケットの正面から見た正面断面図である。
【
図9】制振装置に使用したブラケットの原理を説明する斜視図である。
【
図10】制振装置に使用したブラケットのA点からB点に変位した状態を示す正面図である。
【
図11】
図8においてA点からC点に変位した状態を示す平面図である。
【
図12】(a)及び(b)は、それぞれ従来の落橋防止装置の異なる例を示した断面図、(c)は、従来の落橋防止装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、橋脚11と橋桁10との間に、それぞれブラケット22を介在して粘性体を用いたダンパー55の両端部を連結してなる3次元ブラケット付き落橋防止装置において、前記ブラケット22は、回転可能であり、この回転可能なブラケット22は、前記ダンパー55の端部に設けた2枚のリブ板35の空間に厚さ方向を嵌合し、前記橋脚11に設けた2枚のリブ板32の空間に幅方向を嵌合したブラケット本体23と、このブラケット本体23の厚さ方向と前記ダンパー55の端部に設けた2枚のリブ板35を貫通する第1軸孔27に回転自在に嵌合した1本の第1軸体24と、前記橋脚11に設けた2枚のリブ板32から前記ブラケット本体23の幅方向であって前記第1軸孔27と直交し前記橋脚11のブラケット22の両側部途中まで穿設した第2軸孔25に回転自在に嵌合した2本の第2軸体25とからなり、この第2軸体25は、前記橋脚11に設けたリブ板32の第2軸孔28に嵌合する大径部25aと、前記ブラケット本体23の第2軸孔28aに嵌合する中径部25bとの段を有する軸からなり、前記ダンパー55の他端部と前記橋桁10の連結部における回転可能なブラケット22も同様に構成してなり、
前記ブラケット22は、ユニバーサルクレビスのように、2次元又は3次元方向に回転可能であり、前記ダンパー55は、前記橋脚11側のブラケット22に固着した部材と、前記橋桁10側に固着した部材とが前記ダンパー55における設定した引張力が作用するストローク限界に達したとき互いに接触して落橋防止部材63として機能するように構成する。
【0017】
前記ダンパー55は、シリンダ56の内部に粘性体60を充填すると共に、ピストン57とピストンロッド58を有し、前記橋脚11側のブラケット22と前記橋桁10側のブラケット22のいずれか一方に固着した部材は、前記ピストンロッド58からなり、いずれか他方に固着した部材は、前記シリンダ56からなり、前記ダンパー55における設定した伸縮量のストローク限界に達したとき前記ピストンロッド58のピストン57が前記シリンダ56のシリンダ内壁端部69に係止して落橋防止部材63として機能するように構成する。
【実施例1】
【0018】
図12(c)に示すように、橋脚(橋台)11の上には、支承シューを介在して橋桁10が載せられている。
本発明の実施例1による3次元ブラケット付き落橋防止装置は、
図1(a)(b)に示され、ダンパー55の本体に落橋防止機能を持たせる設計荷重とした例を示している。
前記橋脚11と橋桁10との間には、
図1(a)に示すように、ダンパー55を主体とする本発明による3次元ブラケット付き落橋防止装置が両端にそれぞれブラケット22を介在して連結されている。前記ダンパー55は、オイル等の粘性体を充填したシリンダ型を例示しており、シリンダ56の内部に粘性体60が充填されるとともに、ピストン57が進退自在に設けられ、このピストン57に連結されたピストンロッド58の一方端は、シリンダ56の一方側から突出し、一方のブラケット22におけるベース板34にねじ込みなどにより固定的に連結されている。前記ピストンロッド58の他方端は、シリンダ56の他方側から突出し、シリンダ56と一体の又はねじ込みなどで固定された保護筒部74の内部にて進退自在に設けられている。前記シリンダ56に外カバー61が進退自在に嵌合され、この外カバー61は、前記ベース板34のねじ部34aに固定的に取り付けられている。前記シリンダ56と一体の又はねじ込み等で固定された保護筒部74は、他方のベース板34のねじ部34aに固定的に取り付けられている。
【0019】
このようなダンパー55において、ピストン57のピストン端部68と、シリンダ56のシリンダ内壁端部69が対峙しており、これらのピストン端部68とシリンダ内壁端部69が密着係止したとき、ダンパー55は、それ以上伸びないので、このダンパー55と両端のブラケット22が落橋防止部材63として機能する。そのため、ダンパー55を構成する部材と両端のブラケット22を構成する部材は、橋脚11と橋桁10との間に発生する引張力に耐えて落橋を防止するだけの機械的強度を持たせることが必要である。
また、ダンパー55と両端のブラケット22からなる3次元ブラケット付き落橋防止装置は、橋脚11と橋桁10との間に、規模に応じて1〜複数基設置される。
更に詳しくは、ダンパー55は、引張りと圧縮に機能させるときには、
図1(a)に示すように、ピストン57は、シリンダ56の略中心に位置させるが、引張力のみに機能させる場合には、図中左側のストロークsを右側より十分に大きくなるように位置させる。また、例えば、ダンパー55のダンパーとしての設計上の抵抗力が100kN(安全率s=2.5とすると、実際の耐力は250kN)であり、また、実際の落橋防止の耐力は、1300kNとすると、落橋防止の設計上の耐力は、520(=1300/2.5)kNの仕様となる。このことは、ダンパー55を構成する部材の設計上の落橋防止耐力は、ダンパーとしての設計上の抵抗力が520kN以上、例えば600kNであることが望まれる。
【0020】
前記ダンパー55の両端のブラケット22の詳細を
図7ないし
図9に基き説明する。このブラケット22は、3次元方向に回転可能で、コンパクトで、しかも堅牢に構成されている。例えば、ダンパー55の設計上の耐力が100kNとし、落橋防止の耐力が1300kNとすると、ブラケット22の耐力は、1300kNとすることが望ましい。
前記ダンパー55の一端部に固定的に設けられたベース板34には、2枚のリブ板35がブラケット本体23の厚さ分の空間36を持って平行に固着されている。また、橋脚11側に複数本のボルト等で固定的に設けられたベース板31には、2枚のリブ板32がブラケット本体23の縦方向に嵌め込み可能な空間33を持って固着されている。前記リブ板32は、補強板37で補強されている。
【0021】
前記ブラケット本体23は、肉厚の8角等の柱体をなし、このブラケット本体23の上下面の中心部を貫通して第1軸孔27が穿設され、また、前記リブ板35にも前記第1軸孔27と同軸の第1軸孔27aが穿設されている。
前記ブラケット本体23の上下端面には、前記第1軸孔27と直交した位置に向かって途中まで第2軸体25の取り付け用の第2軸孔28aが穿設され、この第2軸孔28aと同軸に、前記リブ板32には、第2軸孔28が穿設されている。
【0022】
前記ブラケット本体23の第1軸孔27には、回転を円滑に行うために外周にすべり軸受26を介在して第1軸体24を嵌合し、この第1軸体24の両端突出部は両側のリブ板35に嵌合し、それぞれの第1軸体24の両端面をリブ板35の外側面と一致させ、これらの端面に押え板29をあてがいボルト30で抜け止め固定する。
前記両側の第2軸孔28に嵌合される第2軸体25は、それぞれ大径部25aと中径部25bと小径部25cとの3段の軸からなり、大径部25aは、前記リブ板32に穿設された第2軸孔28にすべり軸受26を介して嵌合され、中径部25bは、ブラケット本体23の第2軸孔28aに嵌合され、小径部25cは、ブラケット本体23の内部でねじ込み固定される。これらの大径部25aの両端面をリブ板32の外側面と一致させ、この端面に押え板29をあてがいボルト30で抜け止め固定する。
【0023】
前記第1軸孔27と第2軸孔28の内周に、すべり軸受け26を介在して第1軸体24と第2軸体25を嵌合するが、前記すべり軸受け26は、高荷重(例えば、137MPa)で使用できる無潤滑すべり軸受けで、広い温度範囲(−200℃〜+260℃)に使用でき、板圧が薄い(1.0〜2.5mm)ためコンパクトになり、摩擦係数(μ=0.04〜0.20)か小さく、摩耗が少なく長時間の運転ができるものが使用される。
このすべり軸受けを介在することにより、低摩擦となり変位に対する応答が円滑になり、何時発生するか予測できない地震動に確実に応答できる。
【0024】
以上のように構成されたブラケット22は、
図9に示すように、第1軸体24は、x軸の2次元方向に回転自在で、第2軸体25は、y軸の2次元方向に回転自在であるから、全体として3次元の方向に回転可能である。
【0025】
図1に示すように、ダンパー55の一端部側のブラケット22を橋脚11に固定的に取り付け、ダンパー55の他端側のブラケット22を橋桁10に固定的に取り付ける。
この状態で、地震動により橋脚11と橋桁10との間に伸縮作用が働いたものとすると、シリンダ56内の粘性体60がシリンダ56の一方の部屋から隙間59を介して他方の部屋に無理に移動させられ、その時の抵抗によりダンパーとして機能し、衝撃を吸収する。
【0026】
ここで、
図10に示すように、橋脚11と橋桁10の相互の位置がA点からB点に垂直方向に変位したものとすると、ブラケット22が第1軸体24を中心とした回転により角度αの範囲内で追随する。この角度αは、ダンパー55側のリブ板35と橋脚11(又は橋桁10)側のリブ板32が接触する位置で決まり、この例では、±15度である。この角度αは、ブラケット22の機械的強度を勘案すればさらに大きくすることも可能である。
【0027】
図11に示すように、橋脚11と橋桁10の相互の位置がA点からC点に水平方向に移動したものとすると、ブラケット22が第2軸体25を中心とした回転により角度βの範囲内で追随する。この角度βは、ダンパー55が橋脚11のベース板31やリブ板32に接触する位置で決まり、この例では、±90度である。
【0028】
橋脚11と橋桁10の変位は、
図10では鉛直方向とし、
図11では水平方向としたが、実際は、鉛直方向と水平方向が同時に変位するので、3次元の変位に追随することができる。なお、
図10を水平方向とし、
図11を鉛直方向としてもよい。
このブラケット22は、3次元方向に回転するものに限られず、使用目的によっては2次元方向に回転するものであってもよい。
橋脚11と橋桁10との間に相対変位が発生し、その変位量は、ダンパー55のダンパーとしての許容限度内であれば、ピストン57のストロークsの範囲内で停止する。しかし、想定外の巨大地震動が発生したような場合には、ピストン57のピストン端部68がシリンダ56のシリンダ内壁端部69に圧接して係止する。ピストンロッド58の端部が橋脚11側のブラケット22に固定され、シリンダ56の端部が橋桁10側のブラケット22に固定されているので、ダンパー55の構成部材を落橋防止の耐力以上に構成することにより、落橋防止部材63として機能し、橋桁10が橋脚11から落橋することを防止する。また、両端のブラケット22間に連結されたダンパー55が落橋防止部材63として機能するので、従来のような落橋防止用のケーブルやチェーンを使用する必要がなく、コンパクトな構成にでき、1対の橋脚11と橋桁10との間に複数基の3次元ブラケット付き落橋防止装置を並べて設置することができる。
【実施例2】
【0029】
実施例1では、ダンパー55の構成部材に落橋防止の耐力を持たせ、ピストン端部68とシリンダ内壁端部69が係止した状態でダンパー55が落橋防止部材63として機能するようにした。
これに対し、実施例2では、
図2に示すように、一方のベース板34のねじ部34aにねじ込み固定された円筒形の外カバー61の長さを他方のブラケット22の近くまで伸ばし、シリンダ56と保護筒部74の連結部に形成されるカバー内方突部70に臨ませて前記外カバー61の端部内側にリング状のシリンダ内壁端部69を固定的に取付けて落橋防止の耐力を十分有する構成にして落橋防止部材63として機能させる。このとき、カバー内方突部70とシリンダ内壁端部69との間隔dは、
図1において、ダンパー55に負荷(引張力)がかかっていないときのピストン端部68とシリンダ内壁端部69の間隔sより小さくなるように設定する。
【0030】
このような構成において、橋脚11と橋桁10との間に相対変位が発生し、その変位量は、ダンパー55のダンパーとしての許容限度内であれば、ピストン57が間隔dの範囲内で停止する。しかし、想定外の巨大地震動が発生したような場合には、ピストン57のピストン端部68がシリンダ56のシリンダ内壁端部69に係止する前に外カバー61のシリンダ内壁端部69がカバー内方突部70に係止し、一方のベース板34に連結された外カバー61と、他方のベース板34に連結されたシリンダ56と保護筒部74が落橋防止部材63として機能し、橋桁10が橋脚11から落橋することを防止する。このとき、ピストン57は、無負荷となり、ダンパー55のダンパーとしての機能が保護される。
実施例1と同様に、両端のブラケット22間に連結された外カバー61と、シリンダ56と保護筒部74が落橋防止部材63として機能することにより、従来のような落橋防止用のケーブルやチェーンを使用する必要がなく、コンパクトな構成にできる。
【実施例3】
【0031】
実施例1及び実施例2では、ダンパー55の構成部材を落橋防止部材63として利用して構成した。
これに対し、実施例3では、
図3に示すように、ダンパー55の外周に複数本の鋼棒64を用いて構成した例を示している。
この
図3において、一方のベース板34のねじ部34aに固定リング65を固定的に取り付け、また、シリンダ56と保護筒部74の段部の位置にストッパリング66をねじ込みなどで固定的に取り付ける。これらの固定リング65とストッパリング66の間に、等間隔例えば60度の間隔で6本の鋼棒64を挿通する。前記固定リング65側には、鋼棒64の一端部を2個のナット67で固定的に取り付け、ストッパリング66側には貫通孔73に進退自在に遊嵌し、鋼棒64の他端部にナット等のストッパ67を螺合する。そして、ダンパー55に負荷(引張力)がかかっていないときのストッパリング66とストッパ67の間隔dが前記間隔ストロークsよりやや短くなるように設定する。
【0032】
このような構成において、橋脚11と橋桁10との間に相対変位が発生し、その変位量は、ダンパー55の許容限度内であれば、ピストン57が間隔dの範囲内で停止する。しかし、想定外の巨大地震動が発生したような場合には、ピストン57のピストン端部68がシリンダ56のシリンダ内壁端部69に係止する前に鋼棒64のストッパ67がストッパリング66に係止し、一方のベース板34に連結された固定リング65と、他方のベース板34側に連結されたストッパリング66との間の鋼棒64が落橋防止部材63として機能し、橋桁10が橋脚11から落橋することを防止する。このとき、ピストン57は、無負荷となり、ダンパー55のダンパーとしての機能が保護される。
実施例1及び2と同様に、両端のブラケット22間に連結されたダンパー55と一体の鋼棒64が落橋防止部材63として機能することにより、従来のような落橋防止用のケーブルやチェーンを使用する必要がなく、コンパクトな構成にできる。
【実施例4】
【0033】
前記実施例1,2及び3では、ダンパー55の構成部材に直接負荷がかかるようにした例を示している。
これに対し、実施例4では、
図4に示すように、一方のベース板34に取り付けられた外カバー61と、他方のベース板34に取り付けられた内カバー62との間に負荷がかかり、ダンパー55を構成するシリンダ56やピストンロッド58等の構成部材に落橋防止時の負荷がかからない例を示している。より具体的には、前記内カバー62は、他方のベース板34のねじ部34bにねじ込み固定し、この内カバー62の先端部の外側にシリンダ外方段部71を設ける。また、前記内カバー62に被せる大きさの外カバー61は、一方のベース板34のねじ部34aにねじ込み固定し、この外カバー61の先端部の内側にシリンダ内壁端部69を設ける。そして互いに進退自在に嵌合する。ダンパー55に負荷(引張力)がかかっていないときのシリンダ内壁端部69とシリンダ外方段部71の間隔dが前記間隔ストロークsよりやや短くなるように設定する。
【0034】
このような構成において、橋脚11と橋桁10との間に相対変位が発生し、その変位量は、ダンパー55の許容限度内であれば、ピストン57が間隔dの範囲内で停止する。しかし、想定外の巨大地震動が発生したような場合には、ピストン57のピストン端部68がシリンダ56のシリンダ内壁端部69に係止する前に外カバー61のシリンダ内壁端部69が内カバー62のシリンダ外方段部71に係止し、一方のベース板34に連結された外カバー61と、他方のベース板34に連結された内カバー62が落橋防止部材63として機能し、橋桁10が橋脚11から落橋することを防止する。このとき、ピストン57は、無負荷となり、ダンパー55のダンパーとしての機能が保護される。
実施例1、2及び3と同様に、両端のブラケット22間に連結されたダンパー55と一体の外カバー61と内カバー62が落橋防止部材63として機能することにより、従来のような落橋防止用のケーブルやチェーンを使用する必要がなく、コンパクトな構成にできる。
【0035】
前記実施例1,2、3及び4では、ダンパー55は、シリンダ56、ピストン57、ピストンロッド58を主体とし、シリンダ56の内部に粘性体50を充填したものを例示したが、特に、実施例3及び4は、橋脚側のブラケットに固着した部材と、橋桁側のブラケットに固着した部材とが、ダンパー55における設定した引張力のストローク限界に達したとき互いに係止して落橋防止部材として機能するものであれば、シリンダ型に限定されるものではない。また、粘性体としては、オイルの他、コロイド状の液体、ゴム系粘性体、流動体などを用いることができる。
【実施例5】
【0036】
図3に示す実施例3では、落橋防止部材63としてダンパー55の外周に複数本の鋼棒64を用いて構成した例を示しているが、これに限られるものではなく、実施例5では、
図5に示すように、鋼棒64に代えてPCケーブル79を用いて構成することもできる。PCケーブル79を用いた場合には、一端は、圧着グリップ75を固着し、他端は、2つ割又は3つ割した円錐形楔体77をグリップ筒体76で圧着固定し、このグリップ筒体76とストッパリング66の間には、PCケーブル79の弛み防止用にばね78で付勢しておくことが望ましい。
ダンパー55に負荷(引張力)がかかっていないときのストッパリング66とグリップ筒体76の間隔dがピストンストロークsよりやや短くなるように設定する。
【実施例6】
【0037】
図3及び
図5に示す実施例では、落橋防止時に、ストッパリング66に、ナット67又はグリップ筒体76が密接して鋼棒64又はPCケーブル79に負荷かがかかったとき、シリンダ56の図中左半分側には負荷がかからない。しかし、シリンダ56の図中右半分側には負荷がかかる。そこで、
図6に示すように、ダンパー55の左端の固定リング65aの他に、ダンパー55の右端のシリンダ55に固定リング65bをねじ込みなどで固着する。そして、左端の固定リング65aと中央のストッパリング66の間にPCケーブル79aを取り付けるとともに、右端の固定リング65bと中央のストッパリング66の間にもPCケーブル79bを取り付ける。
このような構成とすることにより、落橋防止時に、ストッパリング66に、一方のグリップ筒体76aが密接して図中左側のPCケーブル79aに負荷がかかったとき、ストッパリング66に、同時に他方のグリップ筒体76bが密接して図中右側のPCケーブル79bに負荷がかかり、シリンダ56の図中左端から右端までに直接負荷がかからない。したがって、ダンパー55の破壊を防止することができる。
前記実施例では、図中左側のPCケーブル79aと右側のPCケーブル79bは、4本ずつ交互に等間隔に配置したが、これに限られるものではない。
なお、
図6において、図中左側のPCケーブル79aと右側のPCケーブル79bは、それぞれを鋼棒とするか、いずれか一方を鋼棒とすることができる。鋼棒とした場合には、弛み防止用ばね78を省くことができる。