【実施例】
【0038】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0039】
<評価用器具の作製>
ヘパリン添加羊血液(株式会社日本バイオテスト研究所製)と、イオン交換水にて濃度1質量%に調整した硫酸プロタミン(ナカライテスク株式会社製)溶液とを、ヘパリン添加羊血液:硫酸プロタミン溶液=10:1(体積比)となるように混合し、模擬蛋白質汚染液を調製した。
【0040】
図1に示すように、スライドグラス(縦76mm×横25mm×厚さ1.3mm)11の表面に、一方の端部から5mmの隙間をあけて模擬蛋白質汚染液X50μLを25mm×25mmになるようにして塗布し、室温で24時間乾燥して擬似蛋白質汚染物が固着したスライドグラスを得た。
ついで、
図2に示すように、スライドグラス11の模擬蛋白質汚染液Xが塗布された側の表面かつ他方の端部側にステンレス板(縦5mm×横25mm×厚さ1mm)12を置き、その上から擬似蛋白質汚染液を塗布していないスライドグラス13を載せた後、スライドグラス11、13の両端をクリップ14で挟んで固定し、評価用器具10を得た。
なお、BCA法にて測定したところ、擬似蛋白質汚染液50μL中には8350μgの蛋白質が含まれていた。
【0041】
<BCA法用の検量線の作成>
牛血清アルブミン溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)をイオン交換水で適宜希釈し各蛋白質濃度(0、0.25、0.5、1、5、50、100、150、200μg/mL)の希釈液を得た。
表1に示す試薬A溶液50mLと、表2に示す試薬B溶液1mLとを混合した蛋白質検出液2mLに、先に調製した各希釈液1mLを添加して攪拌した後、60℃で30分間反応させ、15℃で5分間放置して各接触液を得た。得られた各接触液の562nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン製、「Lambda650S」)にて測定し、各希釈液中の蛋白質濃度に対する各吸光度をプロットし、BCA法用の検量線を作成した。なお、蛋白質濃度0.25、0.5、1、5、50、100、150、200μg/mLの吸光度は直線状に得られた。
【0042】
<CBB法用の検量線の作成>
牛血清アルブミン溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)をイオン交換水で適宜希釈し各蛋白質濃度(0、0.25、0.5、1、2.5、5、25μg/mL)の希釈液を得た。
Coomassie Protein Assay Reagent(CBB試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製))3mLに、先に調製した各希釈液1mLを添加して攪拌した後、25℃で20分間放置して各接触液を得た。得られた各接触液の595nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン製、「Lambda650S」)にて測定し、各希釈液中の蛋白質濃度に対する各吸光度をプロットし、CBB法用の検量線を作成した。なお、蛋白質濃度0、0.25、0.5、1、2.5、5、25μg/mLの吸光度は直線状に得られた。
【0043】
「実施例1」
イオン交換水にドデシル硫酸ナトリウムを濃度が0.1質量%になるように溶解させ、抽出液を調製した。
別途、表1に示す試薬A溶液50mLと、表2に示す試薬B溶液1mLとを混合し、蛋白質検出液を調製した。
【0044】
200mLビーカーに抽出液を100mL入れ、そこに評価用器具を浸漬させ、超音波洗浄機(アズワン株式会社製、「ASU−10」)にて温度50℃で10分間超音波照射を行い、評価用器具に固着した擬似蛋白質汚染物を抽出して蛋白質抽出液を得た。
得られた蛋白質抽出液1mL(蛋白質抽出液に含まれる蛋白質量が200μg/mL以上の場合はイオン交換水で200μg/mL以下となるよう希釈した。)に蛋白質検出液2mLを加えて攪拌した後、60℃で30分間反応させ、更に15℃で5分間放置して接触液を得た。
得られた接触液の562nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン製、「Lambda650S」)にて測定し、BCA法用の検量線の数式に代入して抽出蛋白質量を算出した。また、下記式より抽出率を求めた。これらの結果を表3に示す。
抽出率(%)=100−[8350(μg)−抽出蛋白質量(μg)]×100/8350(μg)
【0045】
「実施例2〜12、比較例1〜3」
表3〜5に示す組成の抽出液を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表3〜5に示す。
【0046】
「比較例4〜8」
表6に示す組成の抽出液を用い、該抽出液100mLが入った200mLビーカーに評価用器具を浸漬し、温度50℃で10分間放置し、評価用器具に固着した擬似蛋白質汚染物を抽出して蛋白質抽出液を得た。
得られた蛋白質抽出液の蛋白質検出は実施例1と同様の処理を行った。結果を表6に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表3〜6中におけるイオン交換水の「残部」とは、抽出液の総量を100質量%とするのに必要とした量のことである。
また、表3〜6中の略号は以下の通りである。
・活性剤1:ポリオキシエチレン(6モル)ポリオキシプロピレン(2.5モル)モノアルキル(C12−13)エーテル
・活性剤2:ポリオキシエチレン(8.5モル)ポリオキシプロピレン(2.5モル)モノアルキル(C12−13)エーテル
・活性剤3:ポリオキシエチレン(14モル)ポリオキシプロピレン(2.5モル)モノアルキル(C12−13)エーテル
・活性剤4:ポリオキシアルキレン(9モル)アルキル(C10−16モル)エーテル
・活性剤5:ポリオキシエチレン(11モル)牛脂硬化アルキルアミン
・活性剤6:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノラウレート
・活性剤7:ポリオキシエチレン(10モル)オクチルフェニルエーテル
・活性剤8:3―[(3―コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]―1―プロパンスルホナート
・活性剤9:ドデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒロドキシド分子内塩
【0052】
表3〜6から明らかなように、界面活性剤を含む抽出液を用い、超音波照射して蛋白質を抽出した各実施例の場合、抽出効率が高く抽出率はすべて98%以上であった。
一方、抽出液としてイオン交換水又は水酸化ナトリウム水溶液を用い、超音波照射して蛋白質を抽出した比較例1〜3の場合、各実施例に比べて蛋白質の抽出率が低く、95%以下であった。
界面活性剤を含む抽出液を用いたものの、超音波照射せずに浸漬だけで蛋白質を抽出した比較例4〜8の場合は、極端に抽出効率が低下し、抽出率は80%未満であった。
これらの結果より、界面活性剤を用いて超音波照射することが蛋白質の抽出に極めて効果的であることが確認できた。
【0053】
「実施例13〜19」
イオン交換水にドデシル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるように溶解させ、抽出液を調製した。
得られた抽出液を用い、表7に示す温度で10分間超音波照射を行った以外は、実施例1と同様の処理を行った。結果を表7に示す。また、実施例2の結果も表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
表7から明らかなように、各実施例では、評価用器具に付着している蛋白質を十分に抽出でき、抽出した蛋白質を簡便かつ正確に検出定量できた。特に、物理的刺激操作を施す際の抽出液の温度が20〜70℃である場合、蛋白質の抽出率が95%以上であり、抽出温度としてより効果的であることが確認できた。
【0056】
「実施例20」
表8に示す組成に従い、疑似蛋白質抽出液(1)〜(9)を調製した。
別途、表1に示す試薬A溶液50mLと、表2に示す試薬B溶液1mLとを混合し、蛋白質検出液を調製した。
各疑似蛋白質抽出液1mLに蛋白質検出液2mLを加えて攪拌した後、60℃で30分間反応させ、更に15℃で5分間放置して接触液を得た。
得られた接触液の562nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン製、「Lambda650S」)にて測定し、BCA法用の検量線の数式に代入して蛋白質量を算出した。結果を表11に示す。
【0057】
「実施例21」
表9に示す組成の疑似蛋白質抽出液(10)〜(18)を用いた以外は、実施例20と同様の処理を行った。結果を表11に示す。
【0058】
「実施例22」
表10に示す組成の疑似蛋白質抽出液(19)〜(27)を用いた以外は、実施例20と同様の処理を行った。結果を表11に示す。
【0059】
「比較例9」
表8に示す組成に従い、疑似蛋白質抽出液(1)〜(9)を調製した。
各疑似蛋白質抽出液1mLに、蛋白質検出液としてCoomassie Protein Assay Reagent〔CBB試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)〕3mLを加えて攪拌した後、25℃で20分間放置して接触液を得た。
得られた接触液の595nmにおける吸光度を分光光度計(株式会社パーキンエルマージャパン製、「Lambda650S」)にて測定し、CBB法用の検量線の数式に代入して蛋白質量を算出した。結果を表12に示す。
なお、疑似蛋白質抽出液中に含まれるアルカリ化合物、又は界面活性剤の影響を受けて測定値が高く出た場合は、疑似蛋白質抽出液をイオン交換水にて希釈したものを用いて接触液を得て、吸光度を測定した。
【0060】
「比較例10」
表9に示す組成の疑似蛋白質抽出液(10)〜(18)を用いた以外は、比較例9と同様の処理を行った。結果を表12に示す。
【0061】
「比較例11」
表10に示す組成の疑似蛋白質抽出液(19)〜(27)を用いた以外は、比較例9と同様の処理を行った。結果を表12に示す。
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
【表12】
【0067】
表8〜10中におけるイオン交換水の「残部」とは、疑似蛋白質抽出液の総量を100質量%とするのに必要とした量のことである。
また、 表8〜12中の略号は以下の通りである。
・活性剤2:ポリオキシエチレン(8.5モル)ポリオキシプロピレン(2.5モル)モノアルキル(C12−13)エーテル
・活性剤5:ポリオキシエチレン(11モル)牛脂硬化アルキルアミン
【0068】
表11、12から明らかなように、BCA法による蛋白質の定量はアルカリ、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の影響を受けにくく、蛋白質仕込み量とほぼ同等の蛋白質量が検出されることが確認できた(実施例20〜22)。
一方、CBB法による蛋白質の定量はアルカリ、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の影響を受け、蛋白質仕込み量と異なる蛋白質量が検出された(比較例9〜11)。
これらの結果より、検査対象物の洗浄剤に界面活性剤を使用した場合、すすぎ不足等で界面活性剤が被抽出物に付着している懸念があっても、BCA法を使用すれば、正確な測定が可能であり、また抽出剤として抽出効率が高い界面活性剤を用いることも可能であることが確認できた。対して、CBB法を用いた場合は、すすぎ不足等で界面活性剤が被抽出物に付着している懸念がある場合、正確な測定が困難であり、また抽出剤として抽出効率が高い界面活性剤を用いることも困難である。