(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記円筒部の前記内周面は、前記嵌合領域に前記軸線方向で隣接するとともに、前記ロータ本体よりも内径が大きい非嵌合領域を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機のロータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧縮率が比較的に高い圧縮機では、ロータを特に高速で回転させる必要がある。ロータを高速で回転させた場合、インペラには回転軸に対する径方向内側から外側に向かう遠心力が付加される。このような遠心力によって、インペラが回転軸の外周面から径方向外側に浮き上がってしまう場合がある。
さらに、インペラに対しては、回転軸に沿って高圧側から低圧側に向かうスラスト力も付加される。このようなスラスト力も、圧縮率の増大に比例して大きくなる。
インペラの浮き上がりを抑制しつつ、スラスト力にも抗するために、上記のような締り嵌めを行うに当たって締め代を大きくすることも考えられる。しかしながら、締め代が大きい場合、高い締付力によってロータにわずかな湾曲が生じ、運転中の振動を誘発する可能性がある。また、インペラの取付け、取外しにも大きな手間を要するため、製造コスト、メンテナンスコストの増大を招く可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、容易な組み立てが可能な遠心圧縮機のロータとその製造方法、及び比較的に高い圧縮率のもとで安定的に運転可能な遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に係る遠心圧縮機のロータは、軸線方向に延びるとともに、外周面に凹部が形成されたロータ本体と、前記軸線を中心として延びる円筒状をなし、前記ロータ本体の外周面にしまり嵌めされた嵌合領域を有する内周面が形成された円筒部、該円筒部から前記軸線の径方向外側に張り出す環状円盤、前記環状円盤の軸線方向一方側を向く面に周方向に間隔をあけて複数が設けられたブレードと、複数の前記ブレードを前記軸線方向一方側から覆うカバーを有するインペラと、前記凹部内に嵌め込まれており、一部が前記外周面よりも径方向外側に突出して前記円筒部に対して前記軸線方向から当接する当接部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、当接部材のうち、ロータ本体の外周面よりも径方向外側に突出する部分が、インペラの円筒部に対して軸線方向から当接する。すなわち、インペラに付加されるスラスト力を、当接部材によって受け止めることができる。さらに、当接部材を設けない場合に比べて、嵌合領域の大きさと、締め代の大きさとを小さく抑えることができる。これにより、遠心圧縮機に振動を生じる可能性を低減することができる。
【0008】
また、本発明の第二の態様によれば、上記第一の態様に係る遠心圧縮機のロータでは、前記円筒部は、前記軸線方向一方側に配置されている第一筒部と、前記第一筒部の前記軸線方向他方側に、該第一筒部に対して前記軸線方向に間隙をあけて配置されている第二筒部と、を有し、前記第一筒部の前記内周面のうち、前記軸線方向他方側の端部を含む領域には、前記径方向外側に凹む段差部が形成され、該段差部の前記軸線方向一方側の端面が、前記当接部材に前記軸線方向一方側から当接するとともに、前記第二筒部の軸線方向一方側の端面が、前記当接部材に前記軸線方向他方側から当接し、前記間隙の前記径方向内側の端部は、前記段差部の径方向内側の領域と連通されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、当接部材によってインペラに付加されるスラスト力を受け止めることができる。さらに、円筒部が第一筒部と第二筒部とに分割され、両者の間に間隙が形成されていることから、インペラの固有振動数を低く抑えることができる。
一方で、上記の間隙を設けない場合、インペラとしての固有振動数は、スプリットリングの固有振動数の影響を受けて大きくなる。これにより、ロータに振れ回り振動等を生じてしまう可能性がある。
しかしながら、上記の構成によれば、間隙を設けることで固有振動数の上昇を抑えられることから、振れ回り等が生じる可能性を低減することができる。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、上記第一の態様に係る遠心圧縮機のロータでは、前記当接部材は、前記円筒部の前記軸線方向一方側の端面に該軸線方向一方側から当接してもよい。
【0011】
この構成によれば、当接部材が円筒部に対して軸線方向一方側から当接する。これにより、円筒部に対して軸線方向他方側から一方側に向かってスラスト力が付加された場合であっても、十分に対抗することができる。さらに、当接部材を設けない場合に比べて、嵌合領域の大きさと、締め代の大きさとを小さく抑えることができる。これにより、遠心圧縮機に振動を生じる可能性を低減することができる。
【0012】
本発明の第四の態様によれば、上記第一から第三のいずれか一態様に係る遠心圧縮機のロータでは、前記円筒部の前記内周面は、前記嵌合領域に前記軸線方向で隣接するとともに、前記ロータ本体よりも内径が大きい非嵌合領域を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、円筒部の内周面には、嵌合領域、及び非嵌合領域が形成される。これにより、内周面全体に嵌合領域を設けた場合に比べて、締付力を小さくすることができる。したがって、インペラをロータ本体に対して容易に取り付け、取り外すことができる。
【0014】
本発明の第五の態様によれば、上記第一から第四のいずれか一態様に係る遠心圧縮機のロータでは、前記当接部材は、前記軸線に対する周方向に配列される複数の分割体を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、ロータ本体の凹溝に、複数の分割体を外周側から順次取り付けることで、容易に当接部材を構成することができる。
【0016】
本発明の第六の態様によれば、遠心圧縮機は、上記第一から第五のいずれか一態様に係る遠心圧縮機のロータと、前記ロータを外周側から覆うことで、内部に流路を形成するケーシングと、を備える。
【0017】
この構成によれば、高い圧縮率と容易な組立性とを備える遠心圧縮機を得ることができる。
【0018】
本発明の第七の態様によれば、遠心圧縮機のロータの製造方法は、上記第一から第五のいずれか一態様に係る遠心圧縮機のロータの製造方法であって、前記インペラの前記円筒部を前記軸線方向から前記ロータ本体に取り付けるとともに、前記嵌合領域を形成する工程と、前記当接部材を前記ロータ本体の前記凹部に取り付ける工程と、を含む。
【0019】
この構成によれば、高い圧縮率のもとで安定的に運転可能な遠心圧縮機のロータを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述の構成によれば、容易な組み立てが可能な遠心圧縮機のロータとその製造方法、及び高い圧縮率のもとで安定的に運転可能な遠心圧縮機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る遠心圧縮機100(回転機械)は、複数(6つ)のインペラ2を有するロータ1と、このロータ1を外周側から覆うことで流路3を形成するケーシング4と、を備えている。
【0023】
ケーシング4は、おおむね軸線Aに沿って延びる円筒状をなしている。ロータ1は、このケーシング4の内部を軸線Aに沿って貫通するように延びている。軸線A方向におけるケーシング4の両端部には、それぞれジャーナル軸受5及びスラスト軸受6が設けられている。ロータ1は、これらジャーナル軸受5とスラスト軸受6とによって軸線A回りに回転可能に支持されている。
【0024】
ケーシング4の軸線A方向一方側には、外部から流体を取り入れるための吸気口7が設けられている。さらに、ケーシング4の軸線A方向他方側には、ケーシング4内部で圧縮された流体が吐出される吐出口8が設けられている。すなわち、この遠心圧縮機100は、軸線A方向一方側から他方側に向かって流体が流通する方式(ストレート型)を採っている。
【0025】
ケーシング4の内側には、これら吸気口7と吐出口8とを連通し、縮径と拡径とを繰り返す内部空間が形成されている。この内部空間は、複数のインペラ2を収容するとともに、上記の流路3の一部をなしている。
【0026】
図2に示すように、ロータ1は、軸線A方向に延びる略棒状のロータ本体9と、ロータ本体9の外周面9A上で軸線A方向に間隔をあけて設けられた複数のインペラ2と、ロータ本体9及びインペラ2に当接するスプリットリング10(当接部材)と、を備えている。なお、本実施形態では、ロータ本体9に設けられる複数のインペラ2はいずれも同等の構成を有していることから、代表的に1つのインペラ2のみについて図示、説明をする。
【0027】
ロータ本体9の外周面9Aには、軸線Aに対する径方向外側から内側に向かって凹む角溝状の凹部11が形成されている。凹部11の径方向内側の面は、凹部底面111とされている。凹部11における軸線A方向一方側の面は、凹部底面111に対して略直交する方向(すなわち、軸線Aの径方向)に延びる凹部第一端面112とされている。凹部11における軸線A方向他方側の面は、凹部第一端面112と略平行に延びる凹部第二端面113とされている。
【0028】
この凹部11には、後述するスプリットリング10が取り付けられる。凹部11を挟んで軸線A方向両側では、ロータ本体9の外径は互いに略同一とされている。さらに、凹部11の径方向における寸法(深さ)は、スプリットリング10の径方向における寸法よりも小さい。これにより、スプリットリング10の径方向外側の部分は、凹部11から径方向外側に向かって突出している。
【0029】
インペラ2は、軸線Aを中心として延びる筒状の円筒部12と、円筒部12に一体に設けられて円筒部12から軸線Aの径方向外側に張り出す環状円盤13と、環状円盤13の軸線A方向一方側の面に設けられた複数のブレード14と、これらブレード14を軸線A方向一方側から覆うカバー15と、を備えている。
【0030】
円筒部12は、軸線A方向一方側に配置される第一筒部121と、この第一筒部121の軸線A方向他方側に間隔をあけて配置されている第二筒部122と、を有している。
【0031】
第一筒部121の内周面12Aは、軸線A方向から見て軸線Aを中心とする円形の断面を有している。さらに、内周面12Aのうち、軸線A方向一方側の端部を含む一部のみの領域は、ロータ本体9の外周面9Aに対して径方向外側から締り嵌めによって固定される嵌合領域16(第一嵌合領域161)とされている。すなわち、インペラ2がロータ本体9に取り付けられた状態では、第一嵌合領域161においてロータ本体9の外周面9Aと第一筒部121の内周面12Aとが隙間なく当接する。
【0032】
一例として、嵌合領域16は焼き嵌めによって形成される。すなわち、焼き嵌めを施す前の段階では、ロータ本体9の外径は、円筒部12の内径よりも大きく設定されている。このロータ本体9の外径と、円筒部12の内径との差分が焼き嵌めを施す際の締め代となる。本実施形態では、締め率は、0.5/1000以上、8.0/1000以下とされる。
【0033】
さらに望ましくは、締め率は、1.0/1000以上、5.0/1000以下とされる。最も望ましくは、締め率は、1.5/1000以上、3.0以下とされる。
【0034】
なお、ここで言う締め率とは、ロータ本体9の設計基準寸法に対する締め代の相対的な大きさを示す指標を表す。具体的には、ロータ本体9の外形の基準寸法を1000として、締め代の大きさをXとした場合、締め率は、X/1000と表現される。
【0035】
このような構成のもとで、インペラ2(円筒部12)を加熱して熱膨張させることで、円筒部12の内径が拡大して、ロータ本体9の外径よりも大きくなる。円筒部12の内径が拡大した状態で、ロータ本体9が円筒部12の内側に挿通される。その後、インペラ2に加えた熱を除去することでインペラ2は収縮して、初期の寸法に戻る。すなわち、上記の嵌合領域16では、円筒部12がロータ本体9に対して締り嵌めされている。
【0036】
第一筒部121の内周面12Aであって、嵌合領域16に隣接する軸線A方向他方側の領域は、上記のような締り嵌めが施されない非嵌合領域17(第一非嵌合領域171)とされている。すなわち、第一非嵌合領域171では、円筒部12の内径は、ロータ本体9の外径よりもわずかに大きい。これにより、インペラ2がロータ本体9に取り付けられた状態において、第一非嵌合領域171では、第一筒部121はロータ本体9に対して隙間嵌めされている。
【0037】
軸線Aを含む断面上で、第一筒部121の外周側の面は、軸線A方向一方側から他方側に向かうに従って次第に軸線Aの径方向内側から外側に向かって湾曲している。言い換えれば、第一筒部121の外周側の面は、おおむね円錐状に形成されている。この面は、上記の流路3の一部をなす流路形成面18とされている。
【0038】
第一筒部121の内周面12Aのうち、軸線A方向他方側の端部を含む領域には、軸線Aに対する径方向内側から外側に向かって凹む段差部19が形成されている。より具体的には、この段差部19は、軸線A方向一方側の壁面をなす第一端面191と、第一端面191に略直交するとともに、軸線Aの周方向の延びる環状の底面192と、によって形成されている。軸線Aを含む断面視で、第一端面191、及び第二端面は、軸線Aに対する径方向に延びている。底面192は、軸線Aに沿って延びている。
【0039】
第二筒部122は、上記の第一筒部121に対して軸線A方向他方側に間隔(クリアランスC)をあけて設けられている。この第二筒部122は、後述する環状円盤13と一体に形成されている。第二筒部122の内周面12Bは、上述したロータ本体9上の凹部11よりも軸線A方向他方側の領域で当該ロータ本体9の外周面9Aに径方向外側から当接している。第二筒部122の軸線A方向一方側の端面(第二筒部端面123)は、段差部19の内側に軸線A方向他方側から臨んでいる。
【0040】
第一筒部121の軸線A方向他方側の端面は、上述したクリアランスCを介して、環状円盤13に臨んでいる。すなわち、クリアランスCを介して、円筒部12の外周側と、段差部19の径方向内側の領域とが互いに連通されている。
【0041】
第二筒部122の内周面12Bは、軸線A方向から見て軸線Aを中心とする円形の断面を有している。さらに、第二筒部122の内周面12B上にも、上述の第一嵌合領域161、第一非嵌合領域171と同様に、ロータ本体9の外周面9Aに対してしまり嵌めされる第二嵌合領域162と、これに隣接する第二非嵌合領域172とが形成されている。具体的には、第二筒部122の内周面12Bのうち、軸線A方向他方側の端部を含む領域に、第二嵌合領域162が形成される。第二非嵌合領域172は、この第二嵌合領域162よりも軸線A方向一方側の領域とされている。第二非嵌合領域172も、第一非嵌合領域171と同様に、ロータ本体9の外周面9Aに対して隙間嵌めされている。
【0042】
環状円盤13は、上記の第二筒部122から軸線Aに対する径方向外側に向かって広がる円環状をなしている。環状円盤13の軸線A方向一方側を向く面(第一対向面13A)には、軸線Aに対する周方向に間隔をあけて、複数のブレード14が配列されている。ブレード14は、第一対向面13A上から軸線A方向一方側に向かって延びる翼状の部材である。
【0043】
詳しくは図示しないが、軸線A方向から見てブレード14は、径方向内側から外側に向かうにしたがって周方向の一方側から他方側に湾曲している。周方向で隣り合う一対のブレード14同士の間の空間は、流路3(インペラ流路21)の一部をなしている。
【0044】
これらブレード14の軸線A方向一方側の端縁には、カバー15が取り付けられている。カバー15は複数のブレード14を軸線A方向一方側から覆っている。具体的には、カバー15は軸線Aを中心とした円環状をなしている。カバー15の軸線A方向両面のうち、軸線A方向他方側を向く面(すなわち、ブレード14の軸線A方向一方側の端縁が接続される面)は、ブレード14同士の間の空間を挟んで上記の第一対向面13Aと軸線A方向に対向する第二対向面15Aとされている。
【0045】
カバー15の径方向内側には、軸線A方向一方側に向かって突出する突出部20が一体に設けられている。この突出部20の径方向内側の面は、第一筒部121の流路形成面18と軸線Aに対する径方向外側から対向するカバー対向面20Aとされている。
【0046】
上記の流路形成面18とカバー対向面20A、及び第一対向面13Aと第二対向面15Aにより、インペラ2の内側には流体が流通する空間が形成される。この空間は上述の流路3の一部であるインペラ流路21を形成している。
【0047】
インペラ2の軸線A方向一方側には、軸線Aを中心とする円筒状に形成されたスリーブ22が取り付けられている。このスリーブ22は、第一筒部121に対して軸線A方向一方側から当接している。本実施形態では、スリーブ22の内径、及び外径は、軸線A方向の全体にわたっておおむね一様とされている。さらに、スリーブ22の外周面と第一筒部121の外周面とは、軸線A方向に連続している。
【0048】
スプリットリング10は、ロータ本体9の外周面9Aに形成された凹部11、第一筒部121の内周面12Aに形成された段差部19、及び第二筒部122の軸線A方向一方側の端面によって囲まれる空間に配置される円環状の部材である。軸線Aを含む断面視で、スプリットリング10の断面形状は、略矩形状である。本実施形態に係るスプリットリング10は、
図3に示すように、軸線Aに対する周方向に複数(3つ)に分割されている。すなわち、スプリットリング10は、周方向に配列される3つの分割体によって形成される。
【0049】
より詳細には、分割体は周方向で互いに隣接する一対の第一分割体101と、これら一対の第一分割体101によって周方向両側から挟まれる第二分割体102と、を有している。第一分割体101と第二分割体102は、弾性変形可能な略円弧状の部材によって形成されている。さらに、第一分割体101、第二分割体102は、ロータ本体9に取り付ける前の状態では、いずれもロータ本体9の外周面9Aよりも大きな曲率を有している。
【0050】
第一分割体101の周方向一方側の端面101Bは、自身の中心軸に対する径方向に略平行に延びている。一方で、第一分割体101の周方向他方側の端面(第一傾斜面101A)は、自身の中心軸に対する径方向に対して傾斜して延びている。より具体的には、この第一傾斜面101Aは、径方向内側を臨むように斜めに切り欠かれている。すなわち、第一分割体101は、自身の中心軸に対する径方向を基準として周方向で非対称な形状を有している。
【0051】
第二分割体102は、第一分割体101とは異なり、周方向で対称な形状を有している。第二分割体102の周方向両側の端面(第二傾斜面102A)は、いずれも自身の中心軸に対する径方向に対して傾斜して延びている。より具体的には、これら第二傾斜面102Aは、径方向外側を臨むように斜めに切り欠かれている。第二傾斜面102Aは、上記の第一傾斜面101Aとおおむね同一の角度をもって径方向に対して傾斜している。言い換えれば、第一分割体101と第二分割体102とが組立てられた状態では、第一傾斜面101Aと第二傾斜面102Aとは互いに略平行をなして当接する。
【0052】
以上のような2つの第一分割体101と、1つの第二分割体102とが、ロータ本体9の凹部11に対して径方向外側から嵌め込まれる。凹部11に嵌め込まれた状態において、第一分割体101、第二分割体102は、いずれも曲率が小さくなる方向に弾性変形している。さらに、この状態においては、第一分割体101の第一傾斜面101Aと、第二分割体102の第二傾斜面102Aとが互いに隙間なく当接している。すなわち、おおむね径方向外側を向く第一傾斜面101Aに対して、おおむね径方向内側を向く第二傾斜面102Aが当接している。
【0053】
ここで、第二分割体102は、上記のように曲率が小さくなる方向に弾性変形しているため、第二分割体102には、自身の弾性復元力によって、曲率が大きくなる方向に戻ろうとする力が働いている。すなわち、スプリットリング10が組立てられた状態において、第二分割体102の第二傾斜面102Aは、第一分割体101の第一傾斜面101Aに対して、径方向外側から力を及ぼしている。この力により、2つの第一分割体101は曲率がそれぞれ小さくなる方向に弾性変形しながら、凹部11内に脱落不能に収容されている。
【0054】
上記のスプリットリング10が、ロータ本体9の凹部11と、インペラ2の段差部19とによって径方向両側から挟まれる。具体的には
図2に示すように、凹部11の凹部第一端面112、及び段差部19の第一端面191が、スプリットリング10の軸線A方向一方側の面に当接している。凹部11の凹部底面111は、スプリットリング10の径方向内側の面に当接している。段差部19の底面192は、スプリットリング10の径方向外側の面に当接している。凹部11の凹部第二端面113、及び第二筒部122の第二筒部端面123は、スプリットリング10の軸線A方向他方側の面に当接している。
【0055】
続いて、遠心圧縮機100のロータ1の製造方法について、
図4を参照して説明する。まず、上述のように構成されたインペラ2と、ロータ本体9と、を準備する(S1工程)。これら部材は、例えばステンレス等の比較的に硬度の高い金属材料によってそれぞれ一体に形成されることが望ましい。
【0056】
次いで、インペラ2をロータ本体9に取り付ける。インペラ2をロータ本体9に取り付けるに当たっては、一例としてはじめに第一筒部121を焼き嵌めによって取り付けることが望ましい。この工程により、上述の第一嵌合領域161と第一非嵌合領域171とが形成される(S2工程)。
【0057】
次いで、ロータ本体9の凹部11に、スプリットリング10(第一分割体101、第二分割体102)を取り付ける(S3工程)。スプリットリング10を取り付けた後、第二筒部122をロータ1の外周面9Aに取り付ける(S4工程)。この工程により、第二筒部122と、当該第二筒部122と一体に形成された環状円盤13とが、ロータ本体9に取り付けられる。具体的には、第二筒部122の軸線A方向一方側の面(すなわち、段差部19の第二端面)が、スプリットリング10の軸線A方向他方側の面に当接する。
【0058】
さらに、このとき、第一筒部121と第二筒部122との間には、軸線A方向にわたって上記のクリアランスCが形成される。また、この工程により、上述の第二嵌合領域162と第二非嵌合領域172とが形成される。次に、ロータ本体9にスリーブ22を取り付ける(S5工程)。以上により、本実施形態に係る遠心圧縮機100のロータ1の製造方法の各工程が完了する。
【0059】
次に、本実施形態に係る遠心圧縮機100の動作について説明する。遠心圧縮機100を稼働させるに当たっては、まず駆動源(不図示)によってロータ1を回転させる。ロータ1が不図示の駆動源によって軸線A回りに回転駆動されることで、ロータ1上に設けられた複数のインペラ2がロータ1と一体に回転する。インペラ2の回転に伴って、吸気口7から外部の流体がケーシング4内の流路3に取り込まれる。
【0060】
上記の流路3を通じて軸線A方向一方側から流入した流体は、インペラ流路21を経て圧縮される。より詳細には、流体はカバー対向面20Aと流路形成面18とによって形成される空間を通じて、軸線A方向一方側から他方側に向かって流れる。次いで、流体は、流路形成面18の湾曲形状に沿って向きを変えた後、第一対向面13A及び第二対向面15Aによって形成される空間内を径方向内側から外側に向かって流れる。同様に複数のインペラ流路21を経て流体は順次圧縮される。圧縮されて高圧状態となった流体は、吐出口8を通じて種々の外部装置(不図示)に供給される。
【0061】
ここで、遠心圧縮機100の運転中には、流路3内における軸線A方向一方側(吸気口7側)では比較的に低圧の流体が流通している一方で、軸線A方向他方側(吐出口8側)では比較的に高圧の流体が流通している。この圧力差により、インペラ2に対しては、軸線A方向他方側から一方側に向かう力(スラスト力)が付加される。
【0062】
加えて、圧縮率が高い圧縮機では、ロータ1を特に高速で回転させる必要があることから、インペラ2には回転軸に対する径方向内側から外側に向かう遠心力が付加される。このような遠心力によって、インペラ2がロータ本体9の外周面9Aから径方向外側に浮き上がってしまう場合がある。
【0063】
インペラ2の浮き上がりを抑制しつつ、スラスト力にも抗するために、上記のような締り嵌めを行うに当たって締め代を大きくすることも考えられる。しかしながら、締め代が大きい場合、高い締付力によってロータ1にわずかな湾曲が生じ、運転中の振動を誘発する可能性がある。また、インペラ2の取付け、取外しにも大きな手間を要するため、製造コスト、メンテナンスコストの増大を招く可能性がある。
【0064】
そこで、本実施形態に係る遠心圧縮機100では、スプリットリング10によってスラスト力の一部を受け止めることで、嵌合領域16の大きさと、締め代の大きさとを比較的小さく抑えている。より詳細には、スプリットリング10のうち、ロータ本体9の外周面9Aよりも径方向外側に突出する部分が、インペラ2の円筒部12に対して軸線A方向から当接している。具体的には、凹部11の凹部第一端面112、及び段差部19の第一端面191が、スプリットリング10の軸線A方向一方側の面に当接している。凹部11の凹部底面111は、スプリットリング10の径方向内側の面に当接している。段差部19の底面192は、スプリットリング10の径方向外側の面に当接している。凹部11の凹部第二端面113、及び第二筒部122の第二筒部端面123は、スプリットリング10の軸線A方向他方側の面に当接している。
【0065】
このように、スプリットリング10をロータ本体9の外周面9Aに設けて、インペラ2に当接させることによって、インペラ2に付加されるスラスト力を受け止めることができる。すなわち、スプリットリング10によって受け止められるスラスト力の分だけ嵌合領域16に付加される力を減少させることができる。これにより、スプリットリング10を設けない場合に比べて、嵌合領域16の大きさを小さく抑えることができる。言い換えると、ロータ本体9の外周面9A上に非嵌合領域17を形成することができる。さらに、嵌合領域16における締め代の大きさを小さく抑えることもできる。これにより、ロータ本体9の外周面9Aの全体にわたって締り嵌めを施した場合に比べて、遠心圧縮機100に振動を生じる可能性を低減することができるとともに、インペラ2をロータ本体9に対して容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。
【0066】
さらに、円筒部12が第一筒部121と第二筒部122とに分割され、両者の間にクリアランスCが形成されていることから、インペラ2の固有振動数を低く抑えることができる。
一方で、上記の間隙を設けない場合、インペラ2としての固有振動数は、スプリットリング10の固有振動数の影響を受けて大きくなる。これにより、ロータ1に振れ回り振動等を生じてしまう可能性がある。
しかしながら、上記の構成によれば、間隙を設けることで固有振動数の上昇を抑えられることから、振れ回り等が生じる可能性を低減することができる。
【0067】
加えて、上述の構成によれば、ロータ本体9の凹部11に、複数の分割体(第一分割体101、第二分割体102)を外周側から順次取り付けることで、容易にスプリットリング10を構成することができる。
【0068】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について
図5を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、インペラ202の円筒部212が一の部材によって一体に形成されている点で上記第一実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態では、円筒部212に上記のクリアランスCが形成されていない。
【0069】
さらに、この円筒部212の内周面212Aにおける軸線A方向一方側の端部を含む領域には、上記と同様の嵌合領域16がされている。嵌合領域16の軸線A方向他方側には、非嵌合領域17が形成されている。
【0070】
スプリットリング10は、上記のように形成された円筒部212の軸線A方向一方側の端面に当接している。スプリットリング10の径方向外側の部分は、第一実施形態と同様に、ロータ本体9の外周面9Aから径方向外側に突出している。スプリットリング10の外周面と、円筒部212の外周面(流路形成面218)との間には、径方向に段差が形成されている。
【0071】
スプリットリング10の軸線A方向一方側には、軸線Aを中心とする円筒状に形成されたスリーブ222が取り付けられている。スリーブ222の外周面は軸線A方向全域にわたっておおむね一様の外径を有している。一方で、スリーブ222の内周面のうち、軸線A方向他方側の端縁には、スプリットリング10を径方向外側から覆う拡径部223が形成されている。拡径部223は、スプリットリング10の外周面と流路形成面218との間の段差を埋めている。すなわち、スリーブ222、及びインペラ202がロータ本体9に取り付けられた状態において、スリーブ222の外周面と流路形成面218とは軸線A方向に連続している。
【0072】
この構成によれば、スプリットリング10が円筒部212の軸線A方向一方側の端面に対して軸線A方向一方側から当接する。これにより、円筒部212に対して軸線A方向他方側から一方側に向かってスラスト力が付加された場合であっても、十分に対抗することができる。さらに、スプリットリング10を設けない場合に比べて、嵌合領域16の大きさと、締め代の大きさとを小さく抑えることができる。これにより、遠心圧縮機100に振動を生じる可能性を低減することができる。
【0073】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について
図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係る遠心圧縮機300は、上記の各実施形態におけるストレート型の遠心圧縮機100とは異なり、いわゆるバックトゥバック型とされている。
【0074】
遠心圧縮機300は、軸線A2を中心として延びるロータ301と、ロータ301を軸線A2回りに回転可能に支持する一対の軸受部302と、これらを外周側から覆うケーシング303と、ケーシング303に取り付けられたバランスピストン304と、を備えている。
【0075】
ロータ301は、略棒状のロータ本体305と、このロータ本体305上で軸線A2方向に間隔をあけて設けられた複数のインペラ306と、ロータ本体305とインペラ306との間に介在するスプリットリング10(当接部材)と、を有している。
【0076】
本実施形態では、ロータ本体305には、6つのインペラ306が取り付けられている。これらインペラ306のうち、軸線A2方向一方側に位置する3つのインペラ306(第一インペラ群G1)では、ブレード307が軸線A2方向一方側に向かって延びている。一方で、軸線A2方向他方側に位置する3つのインペラ306(第二インペラ群G2)では、ブレード307が軸線A2方向他方側に向かって延びている。
【0077】
インペラ306はいずれもロータ本体305に対してしまり嵌めによって固定されている。すなわち、ロータ本体305の外周面305Aとインペラ306の円筒部312の内周面312Aとの間には、上記各実施形態と同様の嵌合領域316と非嵌合領域317とが形成されている。さらに、これらインペラ306とロータ本体305との間には、上記の各実施形態と同様のスプリットリング10がそれぞれ取り付けられている。
【0078】
ケーシング303には、流体をケーシング303の内部に取り込むための第一吸気口308、及び第二吸気口309が設けられている。さらに、ケーシング303には、圧縮された流体を吐出するための第一吐出口310、及び第二吐出口311が設けられている。
【0079】
第一吸気口308を通じてケーシング303内に取り込まれた流体は、回転する第一インペラ群G1によって圧縮されて高圧(中間圧力)となる。第一インペラ群G1によって圧縮された流体は、第一吐出口310から不図示の配管を経て、第二吸気口309によって再びケーシング303内に取り込まれる。第二吸気口309から取り込まれた中間圧力の流体は、第二インペラ群G2によって再び圧縮されてさらに高圧(目標圧力)となる。第二インペラ群G2によって圧縮された流体は、第二吐出口311を通じて外部に吐出される。
【0080】
ここで、第二インペラ群G2側では、第一インペラ群G1側よりも高い圧力の流体が流通している。これにより、第二インペラ群G2側から第一インペラ群G1側に向かって流体が漏出する可能性がある。バランスピストン304は、これら第一インペラ群G1と第二インペラ群G2との間における流体の往来をシールするために設けられる。
【0081】
以上のように構成された遠心圧縮機300では、上記の第一、第二実施形態における遠心圧縮機100と同様に、それぞれのインペラ306に対してスラスト力が付加される。より具体的には、第一インペラ群G1における3つのインペラ306には、軸線A2方向他方側から一方側に向かうスラスト力が付加される。第二インペラ群G2における3つのインペラ306には、軸線A2方向一方側から他方側に向かうスラスト力が付加される。しかしながら、上述のスプリットリング10を設けることによって、このようなスラスト力にも十分に対抗することができる。すなわち、遠心圧縮機300のようなバックトゥバック型の装置であっても、スプリットリング10を用いることで、嵌合領域316の大きさと、締め代の大きさとを抑えることができる。これにより、ロータ本体305の外周面305Aの全体にわたって締り嵌めを施した場合に比べて、遠心圧縮機300に振動を生じる可能性を低減することができるとともに、インペラ306をロータ本体305に対して容易に取り付け、取り外すことができる。
【0082】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して説明した。なお、上記の各構成はいずれも一例であって、これらに種々の改修や変更を加えることが可能である。
例えば、上記の各実施形態で示した遠心圧縮機100、及び遠心圧縮機300におけるインペラ2(インペラ306)の設けられる数は上記に限定されず、設計や仕様に応じて任意に決定されてよい。
【0083】
さらに、上記の各実施形態では、インペラ2として、カバー15を備える形式(クローズドインペラ)を採用した例について説明した。しかしながら、インペラ2の形式はこれに限定されず、カバー15を備えない形式(オープンインペラ)を採用することも可能である。
【0084】
加えて、上記の各実施形態では、1つのインペラ2に対応して、1つのスプリットリング10が設けられている例について説明した。しかしながら、1つのインペラ2に対して複数(2つ、または3つ以上)のスプリットリング10を設けることも可能である。このような構成によれば、インペラ2に付加されるスラスト力に対して、さらに十分に抗することができる。
【0085】
さらに加えて、上記の各実施形態では、当接部材として円環状のスプリットリング10を用いた例について説明した。しかしながら、当接部材の態様はスプリットリング10に限定されない。一例として、ロータ本体9の外周面9A上で、径方向外側に向かって突出する複数のピン状部材を周方向に間隔をあけて配列することで当接部材としてもよい。このような構成によっても、インペラ2に付加されるスラスト力に対して十分に抗することができる。