特許第6507501号(P6507501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507501
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】クレーン車の障害物報知システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20190422BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20190422BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B66C23/88 D
   B66C13/00 D
   B60R1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-136337(P2014-136337)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-13887(P2016-13887A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】石川 巖
(72)【発明者】
【氏名】谷井 悟
(72)【発明者】
【氏名】谷住 和也
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−222254(JP,A)
【文献】 特開2005−001570(JP,A)
【文献】 特開2000−344465(JP,A)
【文献】 特開2013−144491(JP,A)
【文献】 特開2002−020074(JP,A)
【文献】 特開2008−074594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B60R 1/00
B66C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン車に取り付けられて監視が必要なクレーン車の一部とその周辺からなる監視領域を撮像して監視映像を取得するテレビカメラと、
前記監視映像をリアルタイムで表示する制御を行う表示制御部と、
前記クレーン車に設けられたキャビン内に配置されて前記表示制御部で制御されることにより前記監視映像をリアルタイムで表示するモニタと、
前記クレーン車の運転者に報知するための報知部と、
前記監視映像内の前記クレーン車の一部を含む前記クレーン車の領域を画像認識しないマスク領域とし、且つ、前記監視映像内の前記マスク領域以外の領域に入ってきた物体を画像認識して当該物体が障害物であるか否かを判断して当該物体が障害物であると判定することにより当該物体を検出するマスク処理部と、
前記マスク処理部が前記物体を検出したときに前記報知部を作動する報知制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記マスク領域に、前記物体を報知する視覚情報を表示することを特徴とするクレーン車の障害物報知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン車の障害物報知システムにおいて、
前記クレーン車は、車体上に設けられた旋回台上で車両進行方向に対して一方側に前記キャビンが配置されて車両進行方向に対して他方側にブームが配置されたものであり、前記撮像する監視領域となる前記クレーン車の一部は、前記ブームと前記クレーン車の前記他方前方から前記他方前側方とにより構成される部分であることを特徴とするクレーン車の障害物報知システム。
【請求項3】
請求項2に記載のクレーン車の障害物報知システムにおいて、
前記テレビカメラは、前記旋回台上に設けられて前記ブームを支持するブームサポートを覆うカバーの上部で前記ブームの前記他方側の部分に取り付けられて前記監視領域を撮像することを特徴とするクレーン車の障害物報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン車の障害物報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的なブームを備えるクレーン車は、車体上の左前側に設けられた左バックミラーと直視により、キャビンと反対側の領域(クレーン車の左前方から左前側方およびその周辺)を監視している。なお、一般的なブームとは、走行時等の非使用時において水平に配置されているブームのことである。
【0003】
また、スラントブームを備えるクレーン車は、上記の領域を監視するために車体上の左側にテレビカメラを配置してモニタにリアルタイムで表示している(例えば特許文献1参照)。なお、スラントブームとは、走行時等の非使用時において先端が下がって配置されているブームのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なブームを備えるクレーン車は、上記領域に左右側方や後方から障害物(人、車、バイク、自転車等)が入ってきた場合であっても認識することが可能であるが、この障害物をより良く認識することによりクレーン車の安全性を向上することが望まれる。そこで、ブームの種類に関係なく障害物をより良く認識してクレーン車の安全性を向上させることが要求されている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、クレーン車の安全性を向上させることができるクレーン車の障害物報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のようなクレーン車の障害物報知システムを採用した。
【0008】
本発明のクレーン車の障害物報知システムは、
クレーン車に取り付けられて監視が必要なクレーン車の一部とその周辺からなる監視領域を撮像して監視映像を取得するテレビカメラと、
前記監視映像をリアルタイムで表示する制御を行う表示制御部と、
前記クレーン車に設けられたキャビン内に配置されて前記表示制御部で制御されることにより前記監視映像をリアルタイムで表示するモニタと、
前記クレーン車の運転者に報知するための報知部と、
前記監視映像内の前記クレーン車の領域を画像認識しないマスク領域とし、且つ、前記監視映像内の前記マスク領域以外の領域に入ってきた物体を画像認識して当該物体が障害物であるか否かを判断して当該物体が障害物であると判定することにより当該物体を検出するマスク処理部と、
前記マスク処理部が前記物体を検出したときに前記報知部を作動する報知制御部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のクレーン車の障害物報知システムにおいて、前記クレーン車は、車体上に設けられた旋回台上で車両進行方向に対して一方側に前記キャビンが配置されて車両進行方向に対して他方側にブームが配置されたものであり、前記撮像する監視領域となる前記クレーン車の一部は、前記ブームと前記クレーン車の前記他方前方から前記他方前側方とにより構成される部分であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のクレーン車の障害物報知システムにおいて、前記テレビカメラは、前記旋回台上に設けられて前記ブームを支持するブームサポートを覆うカバーの上部で前記ブームの前記他方側の部分に取り付けられて前記監視領域を撮像することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクレーン車の障害物報知システムでは、監視領域に障害物が入ってきたときにモニタで表示するのと同時に報知することが可能になる。このため、運転者は、障害物に気づく機会を増すことができ、障害物をより良く認識することができる。よって、本発明のクレーン車の障害物報知システムは、クレーン車の安全性を向上させることができる。さらに、監視映像内の自車両以外の領域から障害物を検出するので、監視映像内に映り込んだ自車両を障害物として誤検出するのを防ぐとともに画像認識処理の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態のクレーン車の左側面図である。
図2】同実施の形態のクレーン車の上面図である。
図3】同実施の形態の障害物報知システムの構成を示すブロック図である。
図4】同実施の形態のモニタに監視映像が表示されている状態を示す図である。
図5図4の監視映像にマスク処理をした状態を示す図である。
図6図5の監視映像に障害物が入ってきた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態のクレーン車1(ラフテレーンクレーン)の左側面図である。図2は、クレーン車1の上面図である。最初にクレーン車1の全体的な構成を簡単に説明する。このクレーン車1は、走行機能を有する車両の本体部分(車体)となるキャリヤ2と、キャリヤ2の上部に水平旋回可能に取り付けられた旋回台3と、旋回台3に設けられたキャビン4とを備えている。
【0015】
キャリヤ2の前側と後側には、それぞれ左右一対のアウトリガ5,5(左側のみ図示)が設けられている。旋回台3の上側には、ブームサポート6が固定されている。このブームサポート6にはブーム7が取り付けられている。
【0016】
また、図2を用いてキャビン4とブーム7の配置関係について説明すると、旋回台3上で車両進行方向Aに対して右側にキャビン4が配置されており、車両進行方向Aに対して左側にブーム7が配置されている。
【0017】
ブーム7は、図1に示すように、走行時等の非使用時に先端が下がって配置されているスラントブームである。
【0018】
このブーム7は、その基端部がブーム根本支点ピン(図示せず)を介してブームサポート6に取り付けられ、このブーム根本支点ピンを中心にして起伏可能となっている。ブームサポート6とブーム7との間には、起伏用シリンダ(図示せず)が介装されている。ブーム7は、この起伏用シリンダが伸縮することにより起伏する。
【0019】
また、ブーム7は、図示しないが基端ブームと中間ブームと先端ブームとを有し、この順序で基端ブーム内に外側から内側へ入れ子式に組み合わされている。各ブームは、内部で伸縮シリンダ(図示せず)により連結され、各伸縮シリンダが伸縮することで伸縮する。
【0020】
キャビン4内には、操作部(図示せず)が設けられている。この操作部は、オペレータが旋回台3の旋回、ブーム7の起伏・伸縮、ブームサポート6に設けられたウインチの巻上・巻下、各アウトリガ5の張出・格納、エンジン始動・停止等の操作を行うものである。
【0021】
図3は、このクレーン車1に使用される障害物報知システム10の構成を示すブロック図である。この障害物報知システム10は、制御装置11と、制御装置11の入力側に接続されたテレビカメラ12と、制御装置11の出力側に接続されたモニタ13および報知部14とを備えている。
【0022】
制御装置11は、クレーン車1のキャビン4内に配置されている。この制御装置11は、表示制御部11aと、マスク処理部11bと、報知制御部11cとを備えている。
【0023】
テレビカメラ12は、クレーン車1に取り付けられ、監視が必要なクレーン車1の一部とその周辺からなる監視領域B(図1図2参照)を撮像して監視映像を取得するものである。
【0024】
テレビカメラ12の具体的な取り付け位置は、図1図2に示すように、ブームサポート6を覆うカバー8の上部においてブーム7の左側の部分である。
【0025】
また、テレビカメラ12が撮像する監視領域Bとなるクレーン車1の一部とは、ブーム7とクレーン車1の左前方から左前側方とにより構成される部分である。
【0026】
表示制御部11aは、入力側にテレビカメラ12が接続されており、出力側にモニタ13が接続されている。この表示制御部11aは、テレビカメラ12から監視映像の情報を受け取り、監視映像をリアルタイムで表示する制御を行うものである。
【0027】
モニタ13は、キャビン4内に配置されており、表示制御部11aで制御されることにより監視映像13a(図4参照)をリアルタイムで表示するものである。この監視映像13aは、上記で説明したように、監視領域Bとなるクレーン車1の一部(ブーム7とクレーン車1の左前方から左前側方とにより構成される部分)とその周辺の映像である。また、ブーム7はスラントブームであるため、監視映像13aには、ブーム7の先端部分の全てが表示される。
【0028】
マスク処理部11bは、入力側にテレビカメラ12が接続されており、出力側に報知制御部11cが接続されている。このマスク処理部11bは、図5に示すように、監視映像13a内のクレーン車1の領域を画像認識しないマスク領域M(斜線部分)とするものである。
【0029】
さらに、このマスク処理部11bは、図6に示すように、監視映像13a内のマスク領域M以外(斜線部分以外)の領域に入ってきた物体Xを画像認識して物体Xが障害物であるか否かを判断して当該物体が障害物であると判定することにより当該物体を検出するものである。
【0030】
物体Xが障害物であると判断する方法について具体的な一例を説明すると、マスク処理部11bは、監視映像13a内のマスク領域M以外の領域をモノクロ処理した後、輪郭線を抽出して、形として捉える。また、マスク処理部11bには予め障害物の形が記憶されている。マスク処理部11bは、検出した物体Xの形が、記憶している障害物の形に似ているか否かを一般的な画像処理の手法で演算し、記憶している障害物の形に似ていれば物体Xが障害物であると判断する。なお、障害物としては、人、自転車、車両、バイク、走行の妨げになる路上の固定障害物が挙げられる。
【0031】
報知制御部11cは、入力側にマスク処理部11bが接続されており、出力側に報知部14が接続されている。この報知制御部11cは、マスク処理部11bが物体X(障害物)を検出したときに、報知部14を作動するものである。
【0032】
報知部14は、クレーン車1の運転者に報知するためのものである。報知部14としては、聴覚情報や視覚情報を使用したものが挙げられる。聴覚情報を使用したものとしては、ブザーが挙げられる。このブザーは、警報音を鳴らして運転者に報知する。視覚情報を使用したものとしては、ランプが挙げられる。このランプは、点灯または点滅して運転者に報知する。
【0033】
以上説明したように本実施の形態の障害物報知システム10は、テレビカメラ12、モニタ13、表示制御部11a、マスク処理部11b、報知制御部11c、報知部14を備えている。これにより、障害物報知システム10は、走行時や作業時等において監視領域Bに障害物Xが入ってきたときに、モニタ13で障害物Xを表示するのと同時に報知部14を作動させて運転者に報知することが可能になる。
【0034】
このため、運転者は、障害物Xに気づく機会を増すことができ、障害物Xをより良く認識することができる。よって、本実施の形態の障害物報知システム10は、クレーン車1の安全性を向上させることができる。
【0035】
さらに、本実施の形態の障害物報知システム10は、監視映像13a内のクレーン車1の領域を画像認識しないマスク領域Mとし、監視映像13a内のマスク領域M以外の領域に入ってきた物体Xが障害物であるか否かを判断するようにした。つまり、本実施の形態の障害物報知システム10は、監視映像13a内の自車両(クレーン車1)以外の領域から障害物Xを検出するので、監視映像13a内に映り込んだ自車両を障害物として誤検出するのを防ぐとともに画像認識処理の負荷を低減することができる。また、ブーム7(スラントブーム)のブーム面(表面)に障害物が映り込んで、その障害物を誤検出してしまうことも防ぐことができる。
【0036】
また、本実施の形態の障害物報知システム10では、障害物報知システム10が設けられるクレーン車1が、旋回台3上で車両進行方向Aに対して右側にキャビン4が配置されて車両進行方向Aに対して左側にブーム7が配置されたものであり、撮像する監視領域Bとなるクレーン車1の一部は、ブーム7とクレーン車1の左前方から左前側方とにより構成される部分とした。
【0037】
これにより運転者は、発進時や交差点通過時の障害物をより良く認識することが可能になる。よって、本実施の形態の障害物報知システム10は、クレーン車1の安全性をさらに向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態の障害物報知システム10では、テレビカメラ12が、ブームサポート6を覆うカバー8の上部でブーム7の左側の部分に取り付けられて監視領域Bを撮像するようにした。
【0039】
これにより運転者は、クレーン車1の前方から側方にかけて広範囲の領域を監視することができる。また、テレビカメラ12の設置台数を1台にすることが可能になり、装置コストの低減化を図ることができる。
【0040】
以上、本発明に係る実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0041】
例えば、実施の形態では、スラントブームを備えるクレーン車1について本発明の障害物報知システム10を適用した場合について説明したが、スラントブームではない一般的なブーム(走行時等の非使用時において水平に配置されているブーム)を備えるクレーン車について本発明を適用しても良い。したがって、本発明の障害物報知システム10は、ブームの種類に関係なく、クレーン車の安全性を向上させることができる。
【0042】
また、実施の形態では、障害物報知システム10が設けられるクレーン車1として、旋回台3上で車両進行方向Aに対して右側にキャビン4が配置されて車両進行方向に対して左側にブーム7が配置されたものとした。しかし、クレーン車は、車両進行方向に対して左側にキャビンが配置されて右側にブームが配置されたものであっても障害物報知システムを設けることは可能である。
【0043】
この場合に、テレビカメラで撮像される監視領域となるクレーン車の一部は、ブームとクレーン車の右前方から右前側方とにより構成される部分となる。また、テレビカメラは、ブームサポートを覆うカバーの上部でブームの右側の部分に取り付けられることが好ましい。
【0044】
また、実施の形態の障害物報知システムは、ラフテレーンクレーンに適用した場合を説明したが、その他のクレーン車(トラッククレーン、オールテレーンクレーン等)に適用しても良いし、クレーン車に限らず、キャビンから直視が困難な範囲や、ミラーのみでは確認困難な範囲が存在する建設機械にも適用しても良い。
【0045】
また、マスク領域Mに、物体X(障害物)を報知する視覚情報(アイコン等)を表示しても良い。さらに、モニタ13外(監視領域B外)の障害物を報知しても良い。この場合には、カメラやセンサ等を用いて障害物を検出してモニタ13や報知部14を使用して報知する。
【符号の説明】
【0046】
1 クレーン車
2 キャリヤ(車体)
3 旋回台
4 キャビン
6 ブームサポート
7 ブーム
8 カバー
10 障害物報知システム
11a 表示制御部
11b マスク処理部
11c 報知制御部
12 テレビカメラ
13 モニタ
13a 監視映像
14 報知部
A 車両進行方向
B 監視領域
M マスク領域
X 物体(障害物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6