(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
変調方式に応じて光変調器の変調率を100%より小さい値に設定することが要求される場合の例として、以下の例が挙げられる。
(1)ナイキストパルス変調時は駆動波形のオーバーシュートが大きくなるため、波形のピーク値を変調率100%より小さくするために平均変調率を100%未満に下げる。
(2)ナイキストパルス変調または多値直交位相変調(16QAM等)時には、光変調器の電圧対位相の関係が線形であることが望ましい。しかし、半導体光変調器では一般に電圧対位相の関係が非線形であるため、線形性を確保するために変調率を下げる。
【0016】
実施形態では、マッハツェンダ型光変調器の2つの光導波路の一方を透過する光波の変調率を所望の値に固定し、他方の光導波路を透過する光波の変調率を、前記一方の光導波路を透過する光波の変調率に一致させることで、変調器の光出力を最大にしつつ任意の変調率を実現する。この構成は、一方の光導波路に対する光源波長に応じたフィードフォワード制御と、他方の光導波路に対するフィードバック制御とを組み合わせたものである。2つの光導波路間で変調率を一致させる制御は、後述するように、光導波路に印加される基板バイアスや駆動信号の振幅を制御することで実現できる。
【0017】
図1は、マッハツェンダ型光変調器の2つの光導波路の光波の変調率を同じにする制御の原理を説明する図である。
図1(A)に示すように、2つの光導波路(導波路Aと導波路B)で光波の変調率が異なる場合(たとえば導波路Aの変調率が70%、導波路Bの変調率が80%)、光導波路A側の光ベクトルと光導波路B側の光ベクトルの合成ベクトルが一直線上になく、マッハツェンダ型光変調器の0-π位相変調効率が低下する。
【0018】
これに対し、
図1(B)に示すように2つの光導波路で光波の変調率が同じ場合(たとえば双方で変調率が60%)、2つの光導波路の合成光ベクトルが一直線上に並び、0ラジアンとπラジアンの位相変調が実現される。
【0019】
以下で、具体的な実施形態に基づいて任意の変調率に設定可能な光通信装置の構成を説明する。
<第1実施形態>
図2は、光通信装置の一形態として光送信機1Aの概略構成を示す。第1実施形態では、マッハツェンダ型光変調器を構成する2つの光導波路に印加される基板バイアスを制御することで、最適な光出力で変調率を任意の値に制御する。
【0020】
光送信機1Aは、光源11と、マッハツェンダ型光変調器12(以下、適宜「光変調器12」と略称する)と、光変調器12を駆動する駆動回路13a、13bを有する。光源11は、たとえば半導体レーザであり、波長分割多重(WDM)伝送システムに対応できるように波長可変機能を有する。光変調器12は、電圧に対する光波の位相変化量が基板バイアス電圧により変化する一対の光導波路12a、12bで構成される。
【0021】
光源11から出力された光は光変調器12に導かれ、光導波路12aと12bに分岐される。駆動回路13a及び13bは、入力される電気信号を増幅し、高速駆動信号(たとえば、32Gb/s)で光導波路12a、12bを伝搬する光波を変調する。
図2の例では、駆動信号の振幅は固定値に設定されている。光導波路12aと光導波路12bでそれぞれ変調された光波は合波され、干渉光が光変調器12から出力される。光変調器12の光導波路A(12a)と光導波路B(12b)に対応して、基板バイアス制御回路A(17a)と基板バイアス制御回路B(17b)が配置される。基板バイアス制御回路17aと基板バイアス制御回路17bよって、光導波路12aに印加される基板バイアスと光導波路12bに印加される基板バイアスとが個別に制御される。なお、
図2では、高速駆動信号や直流の基板バイアスが印加される電極の図示は省略している。
【0022】
基板バイアス制御回路17aは、メモリ19から固定の基板バイアス値を読み出して、光導波路12aに印加する基板バイアスを制御する。メモリ19は、光源11の各波長ごとに変調率と基板バイアスとの対応関係を記述したテーブルまたは算出式を記憶する。
【0023】
基板バイアス制御回路17bは、光導波路12bに印加する基板バイアスをフィードバック制御して、光導波路12bを透過する光波の変調率を光導波路12aの光波の変調率に一致させる。具体的には、後述するように低周波重畳回路18により重畳された低周波信号を含む基板バイアスを光導波路12bに印加し、光変調器12の出力をモニタし、モニタ出力に含まれる低周波成分が最小になるように基板バイアスの制御を行う。低周波重畳回路18により生成される低周波信号は駆動信号と比較して十分に低い周波数(たとえば、数kHz)の信号である。
【0024】
ここで、基板バイアスとは、光変調器12の動作点(変調器駆動信号の中心電位)を決めるバイアス電圧であるが、半導体光変調器では、基板バイアスを変えることで、位相変調効率を変化させて位相変調率を変えることができる。これについては、
図3を参照して後述する。
【0025】
光変調器12の合波出力の一部がモニタ回路15でモニタされ、光電気変換されて基板バイアス制御回路17bに供給される。基板バイアス制御回路17bは、低周波重畳回路18で生成される低周波信号の位相と、モニタ信号に含まれる低周波成分の位相を比較して、モニタ信号中の低周波成分の大きさがゼロに近づく方向に基板バイアスを制御する。
【0026】
モニタ回路15の出力は、位相バイアス制御回路16にも供給される。位相バイアス制御回路16は、モニタ信号に含まれる低周波成分がゼロに近づくように、光導波路12aと12bに印加される位相バイアスを制御する。位相バイアスは、光導波路12a及び12bで変調される光波の静的な位相差を決める電圧である。光位相変調方式では、駆動信号の振幅中心が光変調器12の電圧対光強度特性(変調曲線)の光強度の最小点に近づくように、位相バイアス電圧が制御される。モニタされる低周波成分が最小になるように制御することで、駆動信号の振幅中心と、変調曲線の最小点を一致させることができる。
【0027】
ここで、変調率の制御について説明する。電界吸収に伴う位相変化を利用して光波位相を変調する変調器では、基板バイアスを高くするにつれて変調効率は向上するが、吸収損失も大きくなる。実施形態では、以下の制御により変調率を所望の値に設定し、かつ吸収損失が最小になる制御を実現する。
【0028】
まず、光変調器12の電圧対位相(吸収)特性から、所望の変調率で光変調器12の光出力電力が最大となる基板バイアスを決める。この決定した基板バイアスを、一方の光導波路12aに設定する。
【0029】
次に、他方の光導波路12bに与える基板バイアスを、光変調器12の光出力電力が最大になるようにフィードバック制御する。すなわち、一方の光導波路12aで固定的に設定された変調率と同じ変調率が他方の光導波路12bに設定されるように、他方の光導波路12bの基板バイアスを制御する。光導波路12bの変調率が光導波路12aの変調率より小さい場合は、同じ場合に比べて合成光電界の振幅が小さいため、光変調器12の光出力電力が小さくなる。一方、光導波路12bの変調率を大きくするために光導波路12bの基板バイアスを高くして光導波路12aの変調率より高くすると吸収が増加するため、同一変調率の場合に比べて光電力が低くなる。したがって、光変調器12の光出力電力が最大になるということは、2つの光導波路12a、12b間で変調率が同じになっていることを意味する。
【0030】
光変調器12の出力電力を最大にするために、上述のように光導波路12bに印加される基板バイアスを低周波信号で微小変調し、光変調器12の出力(平均光電力)に含まれる低周波成分をモニタし、低周波成分が最小になるように制御する。光出力のパワースペクトルを取得して光出力電力が最大になるように制御してもよい。
【0031】
図3は、第1実施形態における低周波重畳による変調率の制御、すなわち基板バイアス制御の仕組みを説明する図である。第1実施形態では、光変調器12の光出力が最大となるように制御する。半導体光変調器は、基板バイアスを変化させることで変調特性(印加電圧に対する位相変化量)を変えることができる。2相位相変調方式または4相位相変調方式では、ひとつのマッハツェンダ型光変調器12で、0とπの二値位相変調をかける。位相を0ラジアンとπラジアンの間で変化させるのに必要な電圧をVπ電圧と呼ぶ。
【0032】
図3(A)の左上の図に示すように、基板バイアス電圧が最適値のときに光出力は最大となり、基板バイアスに印加された低周波成分は折り返されて
図3(A)の右図に示すように低周波信号の2倍の周波数成分が検出される。したがって、重畳された低周波成分自体は検出されず、モニタ信号中の低周波成分が最小(ゼロ)になる。光導波路Bの位相変調振幅が光導波路Aの位相変調率よりも大きい場合は、光出力電力が最適バイアスからプラス側にずれて重畳される低周波と逆相の低周波成分が検出される。光導波路Bの位相変調振幅が光導波路Aの位相変調率よりも小さい場合は、光出力電力が最適バイアスからマイナス側にずれて重畳される低周波と同相の低周波成分が検出される。
【0033】
光導波路Bの基板バイアスを低周波成分が最小(ゼロ)になるように制御することで、光出力を最大にして、光導波路Bを透過する光波の位相変調率を、光導波路Aの光波と同じ位相変調率に制御することができる。光導波路Bの電圧対位相特性が経時変化した場合でも、このフィードバック制御により、光導波路Aと光導波路Bの位相変調率が常に同じになるように制御される。
【0034】
固定的に制御される光導波路Aの電圧対位相特性が経時変化したときも、上述のフィードバック制御により光導波路Aと光導波路Bの間では常に同じ変調率に制御される。この場合、光変調器12の位相変調率は光導波路Aの経時変化分だけ変化するが、2つの光導波路A、B間の位相変調率が同じに維持されるため、位相の非対称変調に伴う位相歪を回避することができる。
【0035】
このようにして光変調器12の変調率を任意の値に設定することができる。また、2つの光導波路A,B間の電圧対位相特性がばらつく場合や、2つの光導波路A,Bの電圧対位相特性が異なる経時変化を生じる場合でも、最適な変調条件を実現できる。この構成を用いると、Nyquist-WDMや、多値直交変調(16QAM、64QAM等)を小型の半導体光変調器で安定して実現することができる。
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の光通信装置の一形態として光送信機1Bの概略構成を示す。第2実施形態では、光変調器を構成する一方の光導波路の基板バイアスを所望の変調率を与える固定の電圧値に設定し、他方の光導波路の基板バイアスを、光出力に含まれる交流成分が最小になるようにフィードバック制御する。
【0036】
光送信機1Bは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)に適用され、波形の同相成分に対するI(In-phase)変調系列と、直交成分に対するQ(Quadrature)変調系列を有する。光源11からの光は分岐されて、光変調部3の2つのマッハツェンダ型光変調器12I及び12Q(以下、適宜「I変調器12I」、「Q変調器12Q」と称する)にそれぞれ入力される。I変調器12IとQ変調器12Qの各々で、入力光が2つに分岐され、光導波路Aと光導波路Bに入力される。I変調器12Iの出力とQ変調器12Qの出力はそれぞれ位相シフタ22I、22Qで位相調整を受け、I変調器12Iからの光波とQ変調器12Qからの光波の間にπ/2ラジアン(90度)の位相差が付加されてから合波され、出力される。
【0037】
I(同相)成分とQ(直交)成分の合波後の出力光の一部がモニタ回路25でモニタされる。モニタ結果はπ/2シフト制御回路21と、位相バイアス制御回路16I、16Qと基板バイアス制御回路17I、17Qに供給される。
【0038】
I変調器12Iの2つの光導波路12Iaと12Ibに、駆動回路13Iaと13Ibからそれぞれ高速駆動信号が印加されて、光波を高速変調する。I変調器12IとQ変調器12Qは、ともに半導体変調器(InP変調器等)であり、印加電圧により半導体の吸収端波長が変化し、Kramers-Kronigの関係により吸収に伴う位相変化を利用して光波の位相を変調する。I変調器12Iの出力とQ変調器12Qの出力にπ/2の位相差が付加された後に合波された光は、直交位相変調された光波となる。
【0039】
第1実施形態と同様に、I変調系列とQ変調系列の各々で、一方の光導波路Aの基板バイアスが、基板バイアス制御回路A(17Ia,17Qa)により所望の変調率を与える固定値に制御される。
図4の例では、I基板バイアス制御回路A(17Ia)とQ基板バイアス制御回路A(17Qa)のそれぞれに対応してメモリ19I,19Qが配置されているが、単一のメモリ19に格納された単一の固定を共用してもよい。他方の光導波路Bの基板バイアスは、基板バイアス制御回路B(17Ib,17Qb)によってフィードバック制御される。フィードバック制御の仕方は第1実施形態と異なり、低周波重畳によりIQ合成出力に含まれる交流成分が最小になるように制御する。
【0040】
低周波重畳回路18IからI基板バイアス制御回路B(17Ib)とI位相バイアス制御回路16Iに低周波信号が供給される。I基板バイアス制御回路B(17Ib)は、光導波路B(12Ib)の基板バイアスを低周波で微小変調する。同様に、低周波重畳回路18QからQ基板バイアス制御回路B(17Qb)とQ位相バイアス制御回路16Qに低周波信号が供給される。Q基板バイアス制御回路B(17Qb)は、光導波路B(12Qb)基板バイアスを低周波で微小変調する。単一の低周波重畳回路18を用いて、I変調系列とQ変調系列で共用してもよい。
【0041】
I変調光とQ変調光の合波後の光信号の一部は、モニタ光としてモニタ回路25に入力されて電流に変換された後に交流成分の電力(モニタ信号)に変換される。電力値はたとえば交流電流の二乗値である。基板バイアス制御回路17Ibと17Qbの各々で、モニタ信号に含まれる低周波成分が同期検波される。2つの光導波路A,B間で変調率が合致している場合は光出力の交流成分電力が最小となって、検波される低周波成分はゼロになるが、変調率にずれがある場合は交流成分電力が増大し、低周波成分が検出される。光導波路Aに対する光導波路Bの変調率のずれの方向によって、検出される低周波成分の極性(位相)が逆転する。したがって、基板バイアスを制御する方向と大きさがわかる。
【0042】
位相バイアス制御回路16Iと16Qの各々で、低周波成分の検出に基づく位相バイアスの制御を行う。位相バイアスを低周波で微小変調し、モニタ信号に含まれる低周波成分がゼロに近づくように位相バイアスを制御して、マッハツェンダ型光変調器の2つの光導波路間の光波の位相差を調整する。
【0043】
なお、結線の図示を省略するが、低周波重畳回路18Iまたは18Qから低周波信号をπ/2シフト制御回路21に供給して、π/2シフトバイアスを低周波で微小変調し、モニタ信号の交流成分に含まれる低周波成分がゼロになるようにπ/2シフトバイアスを制御してもよい。基板バイアス、位相バイアス、π/2シフトバイアスの制御はそれぞれ独立の回路を設けて並列に制御してもよいし、CPUを用いた時分割制御としてもよい。
【0044】
図5は、
図4の光送信機1Bにおける変調率制御の原理を説明する図である。
図5(A)に示すように、光導波路Aと光導波路Bを透過する光波の変調率が異なると、I出力光で0とπの位相関係がずれ、Q出力光でπ/2と3π/2の位相関係がずれる。I出力光とQ出力光の合成出力において、4位相の信号点から外れ光強度がそれぞればらつく。この状態は、IQ合波に含まれる交流成分が多い場合に相当する。
【0045】
これに対し、
図5(B)のように、一方の光導波路Aを透過する光波の変調率と他方の光導波路Bを透過する光波の変調率が同じ場合、I出力光とQ出力光の直交性が維持され、合成出力において4位相の光強度が同じになる。この場合、IQ合波中の交流成分が最小となる。
【0046】
図6は交流成分を最小にする制御を説明する図である。
図6(A)の左上の図に示すように、基板バイアス電圧が最適なときに交流成分電力は最小となり、基板バイアスに印加された低周波成分は折り返されて
図6(A)の右図に示すように重畳された低周波信号の2倍の周波数の成分が検出される。したがって、
図6(B)に示すように、モニタ信号中の低周波成分が最小(ゼロ)になる。交流成分電力が最適バイアスからプラス側にずれて増大すると、重畳される低周波と同相の低周波成分が検出される。交流成分電力が最適バイアスからマイナス側にずれて増大すると重畳される低周波と逆相の低周波成分が検出される。
【0047】
したがって、I出力光とQ出力光の合成出力中の交流成分電力をモニタし、交流成分電力が最小になるように基板バイアス(すなわち変調効率)を制御することで、任意の変調率で最大の光出力を得ることができる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の光通信装置の一形態として光送信機1Cの概略構成を示す。第3実施形態では、基板バイアスに替えて一対の光導波路に印加される駆動信号の振幅を制御することで、最適な光出力で変調率を任意の値に制御する。一方の光導波路の駆動振幅を任意の変調率を与える駆動振幅に設定し、他方の光導波路の駆動振幅を、光出力の交流成分電力が最小になるようにフィードバック制御することで2つの光導波路間の変調率を一致させる。
【0048】
光送信機1Cの構成は、第1実施形態の光送信機1Aまたは第2実施形態の光送信機1Bの構成と類似するので、相違点を説明する。
【0049】
光変調器12を構成する一対の光導波路12a、12bの各々に対して駆動回路13a、13bが設けられ、駆動回路13a、13bの各々に対して駆動振幅制御回路37a、37bが配置される。駆動振幅制御回路37aと37bは、駆動回路13aと13bをそれぞれ個別に制御する。
【0050】
駆動振幅制御回路37aは、メモリ39から所望の変調率を与える駆動振幅値を読み出して、駆動回路13aの駆動振幅値を設定する。メモリ39には、変調率と駆動振幅との対応関係を記述するテーブルまたは演算式が記憶されている。他方、駆動振幅制御回路37bは、光変調器12の出力光のモニタ結果に基づいて、光導波路12bを透過する光波の変調率が光導波路12aを透過する光波の変調率に一致するように、駆動回路13bの駆動振幅値をフィードバック制御する。
【0051】
光導波路12aと12bのそれぞれに対して、基板バイアス制御回路17aと基板バイアス制御回路17bが設けられる。基板バイアス制御回路17aと17bは、メモリ29から波長に応じた基板バイアス値を読み取って、光導波路12aと12bに固定の基板バイアス電圧を印加する。低周波重畳回路18は、基板バイアス制御回路17bに低周波信号を供給する。したがって、光導波路12bに印加される基板バイアス電圧には、低周波成分が含まれている。なお、メモリ29と39は必ずしも別個に設ける必要はなく、1つのメモリを共用してもよい。また、低周波信号の重畳先は必ずしも基板バイアス制御回路17bに限らず、基板バイアス制御回路17aであっても、駆動振幅制御回路37aまたは37bであってもよい。あるいは、基板バイアス制御回路17aと17bにそれぞれ逆相の低周波信号を重畳してもよいし、駆動振幅制御回路37aと37bにそれぞれ逆相の低周波信号を重畳してもよい。
【0052】
モニタ回路45は、光変調器12の出力をモニタする。第2実施形態のようにQPSKの場合は、2つのマッハツェンダ型光変調器からのI変調光とQ変調光の合波出力をモニタする。モニタ回路45の出力は、駆動振幅制御回路37bに供給される。駆動振幅制御回路37bは、モニタ回路45の出力に含まれる交流成分電力が最小(ゼロ)に近づくように、光導波路12bに印加される駆動信号の振幅を制御する。
【0053】
光導波路12bを透過する光波に対する変調率と光導波路12aを透過する光波に対する変調率が同じ場合は、モニタ信号に含まれる低周波成分は最小になり、光出力の交流成分電力は最小となる。駆動振幅制御回路Bは、低周波重畳回路18で生成された低周波成分とモニタ回路45の出力の位相を比較し、検出される低周波成分の大きさが最小になるように駆動回路13bの駆動振幅を制御する。光導波路12bに印加される駆動信号の振幅が大きい場合は、モニタ信号中に同相の交流成分が含まれ、駆動振幅制御回路Bは、駆動信号の振幅を小さくする方向に駆動回路13bを制御する。光導波路12bに印加される駆動信号の振幅が小さい場合は、モニタ信号中に逆相の交流成分が含まれ、駆動振幅制御回路Bは、駆動信号の振幅を大きくする方向に駆動回路13bを制御する。
【0054】
この構成によっても、光変調器12の光出力を最適に維持して、所望の変調率を実現することができる。なお、低周波重畳回路18で生成される低周波信号を位相バイアス制御回路16に供給して、モニタ回路45の出力に含まれる低周波成分を最小にするように、2つの光導波路12aと12bの間の位相差を制御してもよい。
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の光通信装置の一形態として光送信機1Dの概略構成を示す。第4実施形態では、マッハツェンダ型光変調器の2つの光導波路間の変調率制御を偏波多重変調(DP−QPSK)に適用する。以下の説明では、第1実施形態のように光出力(平均光強度)を最大にするように基板バイアスを制御するが、第2実施形態のように光出力の交流成分電力を最小にするように基板バイアスを制御してもよいし、第3実施形態のように、光出力の交流成分電力を最小にするように駆動振幅を制御してもよい。
【0055】
光源11からの光は分岐されて、X偏波系列とY偏波系列に入力される。各偏波系列で光波は2つに分岐されて、マッハツェンダ型光変調器12I及び12Qに入力される(以下、適宜「I変調器12I」、「Q変調器12Q」と称する)。X偏波系列の光変調部3XとY偏波系列の光変調部3Yの構成は、
図4のQPSK方式の変調部3の構成と同じであり、重複する説明を省略する。X偏波系列とY偏波系列のそれぞれにモニタ回路25X、25Yが設けられ、低周波成分を用いて基板バイアス、位相バイアス、π/2シフトバイアスをフィードバック制御する。各偏波成分に対する基板バイアス、位相バイアス、π/2シフトバイアスの制御は、第2実施形態で説明したのと同様である。
【0056】
X偏波信号とY偏波信号は偏波多重回路49で合波され、送信光信号として出力される。各偏波系列ごとにモニタ回路25Xと25Yを設ける代わりに、偏波多重回路49の出力の一部をモニタ光として検出してもよい。
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態の光送信機1Eの概略構成図である。光送信機1Eは、光源としてのレーザダイオード51と、光変調モジュール50と、変調器ドライバ53を有する。光送信機1Eでは、モニタ部55を含む半導体光変調器52と、位相バイアス制御回路56、基板バイアス制御回路57、低周波重畳回路58、及びメモリ59が一つの光変調モジュール50に内蔵されている。基板バイアス制御回路57は、マッハツェンダ型の光変調器の構成する2つの光導波路のそれぞれに対応する基板バイアス制御回路57aと57bを含む。モニタ部55はたとえば光検出器であり、検出した光信号を電流に変換して、位相バイアス制御回路56と基板バイアス制御回路57bに供給する。基板バイアス制御回路57aは、メモリから固定の基板バイアス値を読み出して、半導体光変調器52の一方の光導波路に印加される基板バイアスの電圧値を所望の変調率を与える電圧値に設定する。基板バイアス制御回路57bは、モニタ部55からの出力に基づいて、2つの光導波路間での変調率が同じになるように、他方の光導波路に印加される基板バイアスの電圧値を制御する。
【0057】
この例では、
図2の構成に基づいて光変調モジュール50を構成しているが、
図4のQPSK方式の光変調部3の構成要素を光変調モジュール50に内蔵してもよい(駆動回路13Ia,13Ib,13Qa,13Qbはモジュール50の外部に配置される)。あるいは、
図8のDP−QPSK方式の光変調部3X、3Yと、偏波多重回路49とを光変調モジュール50に内蔵してもよい。いずれの場合も、一方の光導波路を透過する光波に対して所望の変調率を与える固定の基板バイアスを設定し、他方の光導波路に印加する基板バイアスを2つの光導波路間の変調率が同じになるようにフィードバック制御することで、最適な光出力で所望の変調率を実現する光送信機1Eを小型のモジュールで実現することができる。
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態の光送信機1Fの概略構成図である。光送信機1Fは、光変調モジュール60と、変調器ドライバ63を有する。
【0058】
光送信機1Fでは、モニタ部65を含む光変調器62と、位相バイアス制御回路66、基板バイアス制御回路67、低周波重畳回路68に、光源(LD)61と光源(LD)制御回路64が一つのモジュール60に内蔵されている。これにより、光源一体型の光変調モジュール60が提供される。
【0059】
この例では、
図2の構成に基づいて光変調モジュール60を構成しているが、
図4のQPSK方式の光変調部3の構成要素を光変調モジュール60に内蔵してもよいし(駆動回路13Ia,13Ib,13Qa,13Qbはモジュール60の外部に配置される)、
図8のDP−QPSK方式の光変調部3X、3Yと、偏波多重回路49とを光変調モジュール60に内蔵してもよい。
<第7実施形態>
図11は、光通信装置の一例として、第7実施形態の光送受信機2の概略構成を示す。光送受信機2は、送信系列と受信系列がひとつの光送受信モジュール70に搭載されている。送信系列では、モニタ部75を含む半導体変調器72、変調器ドライバ73、光源ユニット、及びバイアス制御系が搭載されている。光源ユニットは光源(LD)71と光源制御回路74を含む。バイアス制御系は位相バイアス制御回路76、基板バイアス制御回路77を含む。基板バイアス制御回路77は、
図9及び
図10のように、2つの個別の基板バイアス制御回路と、一方の基板バイアス制御回路に接続されるメモリと、他方の基板バイアス制御回路に接続される低周波重畳回路を含んでもよい。
【0060】
受信系列は、光受信器81と光受信器制御回路82を含む。LD71から出力される光波の一部が分岐され、局発光として光受信器81に入力される。光受信器81は、受信した光信号を局発光と混合して光コヒーレント検波を行い、光電気変換および電流電圧変換を行って、電気信号を出力する。これにより、送受信フロントエンドモジュールが提供される。
【0061】
この例では、第1実施形態の構成に基づいて光送受信モジュール70の送信系を構成しているが、
図4のQPSK方式の光送信機の構成要素を光送受信モジュール70に内蔵してもよいし、
図8のDP−QPSK方式の光送信機の構成要素を光送受信モジュール70に内蔵してもよい。
【0062】
また、第3実施形態(
図7)のように、変調器ドライバ73の2つの駆動回路を個別に制御する駆動振幅制御回路Aと駆動振幅制御回路Bを設けて、モニタ部75の出力を駆動振幅制御回路Bに接続する構成としてもよい。
【0063】
第1〜第7実施形態を通して、他方の光導波路Bに対するフィードバック制御は、モニタ出力に含まれる低周波成分が最小となるように、またはモニタ出力の平均光強度が最大となるように、または交流成分電力が最小となるように、基板バイアスや駆動振幅を制御する構成にしてもよい。