【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名、開催場所 「堺市ものづくり新事業チャレンジ支援補助金」、堺市産業振興局商工労働部ものづくり支援課、大阪府堺市堺区南瓦町3番1号 開催日 平成26年5月30日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、田畑に植えられた作物、山林に植えられた果物、タケノコなどの食用作物が、侵入してきたシカやイノシシによって食害される問題が拡大してきている。また、高速道路や国道の両側は法面となっていたり、田畑の周囲の道や山道では、道の側面が斜面になっており、これらの法面や斜面を維持するために植物が植生されていたりするケースが多いが、植生されている植物もシカやイノシシによって食害される問題が拡大している。植物が食害されて地面が露出すると、雨などによって地盤が浸食されて法面や斜面が崩れることもある。したがって、シカやイノシシのような害獣の侵入を防止する手段が求められている。
【0003】
田畑、山林、法面や斜面への害獣の侵入を防止する手段としては、目的の土地の周囲に防止柵を設けることが一般的である。様々な種類の防止柵が国や地方公共団体からもマニュアルが提案されている。しかしながら、防止柵は、設置が比較的容易であるものの、害獣のうち、シカやイノシシのような大型の動物が防止柵に接触すると防止柵が変形したり、破損したりする可能性がある。また、法面や斜面のような場所では、防止柵を設けても、法面や斜面の上側から飛び越えて侵入する可能性もある。
【0004】
そこで、獣害防止効果の大きい獣害防御具として、棒状且つ円弧状に形成した複数個の枠部材と、この枠部材の両端を地面に突き刺して前記枠部材を地面に立設した上に展設するネットと、このネットの縁部を地面に固定する複数個の止め具とよりなる獣害防御具が提案されている(特許文献1)。この獣害防御具では、ネットを曲面状または斜面状に展設することにより、ネットを忌避する獣の性質を利用して獣害を防御しており、また、獣がネットを乗り越えようとした場合には、ネットが足に絡みつき乗り越えを困難にしている(特許文献1の段落[0007]参照。)。
しかしながら、前記害獣防御具は、ネットが枠部材の表面に固定されておらず、複数の枠部材どうしもそれぞれ独立して立設されているため、枠部材間のネットに獣が強く接触すると、ネットが獣に絡みつくことで獣害防御具が破損し、この破損した箇所から別の獣が侵入して獣害が発生する可能性がある。この場合、補修は可能であるものの、獣害防御具が破損していないかを定期的に見回ることが必要となるなど、メンテナンスにも注力する必要がある。
【0005】
また、特許文献2の
図3に記載のような防獣ネット柵1も提案されている。この防獣ネット柵1は、特許文献1と同様に、ネット編地2が一部において地面4より浮いた状態にあるので、害獣の脚足を確実に拘束でき、防獣機能が優れているとされている(特許文献2の段落[0020]参照。)。
しかしながら、前記防獣ネット柵1は、地面4に対して水平な支柱11の外面にネット編地2が張られてはいが、固定はされておらず、ネット編地2が張られている立設した支柱11どうしも固定されていないため、水平な支柱11に獣が強く接触すると、ネットが絡みつくことで防獣ネット柵が破損し、この破損した箇所から別の獣が侵入して獣害が発生する可能性がある。この場合、補修は可能であるものの、防獣ネット柵1が破損していないかを定期的な見回りが必要となるなど、メンテナンスにも注力する必要がある。
【0006】
害獣は1匹でも侵入すると、侵入した地域に深刻な被害を発生させることが知られている。一方で、もともと、田畑、山林、法面、斜面などは、市街地の家屋とは異なり、侵入を防ぐ必要がある面積が極めて大きく、地盤が水平となっていないケースが大半で、コスト等の面から、塀や壁などのように獣の侵入を確実に防止できる手段を採用し難いという問題がある。したがって、田畑、山林、法面、斜面などにおいても、設置が可能で、かつ害獣の侵入をより効率的に防ぐための新たな手段が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的は、田畑、山林、法面、斜面などに設置でき、かつこれらの土地へのシカやイノシシなどの大型の害獣の侵入を長期間防止できる害獣侵入防止用構造体および前記害獣侵入防止用構造体を用いた害獣侵入防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕骨組体及び該骨組体に張り付けて固定された金網からなり、
前記骨組体が、地盤上に並列状に立設される複数個の支柱枠杆及び該複数個の支柱枠杆間に横架される単又は複数個の横架杆を備えることを特徴とする害獣侵入防止用構造体。
〔2〕前記骨組体が、複数個の前記支柱枠杆の上部どうしを前記横架杆で連結して構成されている前記〔1〕に記載の害獣侵入防止用構造体。
〔3〕前記骨組体が、複数個の前記支柱枠杆の脚部どうしを前記横架杆で連結して構成されている前記〔1〕または〔2〕に記載の害獣侵入防止用構造体。
〔4〕前記支柱枠杆の上部の少なくとも外側となる側を中央に向かって徐々に高くなる傾斜形状にした前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体。
〔5〕前記支柱枠杆の前後の脚部どうしを連結する補強杆をさらに備える前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体。
〔6〕平面状の柵部より構成され、前記金網上に前記横架杆に対して平行に立設される柵体をさらに組み合わせてなる前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体。
〔7〕さらに忍び返しを前記金網上または横架杆に設けた前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体。
〔8〕前記害獣がシカまたはイノシシである前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体。
〔9〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の害獣侵入防止用構造体を、害獣の侵入を防止する土地の周囲に設置することを特徴とする害獣侵入防止方法。
〔10〕前記害獣侵入防止用構造体の内部に害獣の侵入を防止できる忌避植物を植生する前記〔9〕に記載の害獣侵入防止方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の害獣侵入防止用構造体は、骨組体及び該骨組体に張り付けて固定された金網からなり、前記骨組体が、地盤上に並列状に立設される複数個の支柱枠杆及び該複数個の支柱枠杆間に横架される単又は複数個の横架杆を設けていることで、高さと幅のある構造体となっているため、公知の害獣防止柵と比べると、例えば、シカのように跳躍して侵入を図る害獣や、イノシシのように地面を掘り起して侵入を図る害獣に対しても、侵入を困難にしている。また、前記のような骨組体を採用していることで、法面や斜面のような傾斜地でも、長期間、強度を維持しながら設置することができる。また、前記骨組体の表面に金網を張り付けていることで、例えば、シカやイノシシなどが害獣侵入防止用構造体に接触した場合でも、構造体の形状が維持でき破損しにくくなっている。
【0011】
前記骨組体は、複数個の前記支柱枠杆の上部どうしを前記横架杆で連結して構成されていることで、金網が張りやすく、支柱枠杆どうしの立設状態を安定に維持しやすい。
【0012】
前記骨組体は、複数個の前記支柱枠杆の脚部どうしを前記横架杆で連結して構成されていることで、害獣が接触し易い害獣侵入防止用構造体の側面の強度を高めることができる。
【0013】
前記支柱枠杆の上部の少なくとも外側となる側を中央に向かって徐々に高くなる傾斜形状にすることで、害獣が害獣侵入防止用構造体を外側から見た場合に、支柱枠杆の脚部による高さに加えて、支柱枠杆の上部の傾斜形状により害獣侵入防止用構造体の高さに奥行きがあることをより強調することができるために、シカのように跳躍力に優れた害獣であっても飛び越える衝動をより強く抑える効果が期待できる。
【0014】
前記支柱枠杆の前後の脚部どうしを連結する補強杆をさらに備えることで、支柱枠杆の立設した状態をより強く保持することができる。
【0015】
また、平面状の柵部より構成され、前記金網上に前記横架杆に対して平行に立設される柵体をさらに組み合わせることで、害獣が害獣侵入防止用構造体を跳躍して乗り越えることを防止することができる。
【0016】
前記金網上または横架杆に忍び返しを設けることで、害獣が前記害獣侵入防止用構造体を飛び越える衝動をより強く抑える効果をより高めることができる。
【0017】
本発明の害獣侵入防止用構造体は、シカまたはイノシシの大型の害獣に対して特に有効である。
【0018】
以上のように本発明の害獣侵入防止用構造体を、田畑、山林、法面、斜面などの周囲、特に法面や斜面などのように平地に比べて施工に労力を必要とする場所に設置することで、害獣の侵入を効率よく防止することができ、しかも前記害獣侵入防止用構造体は従来のネット柵に比べて強度が高いため、長期間の害獣の侵入を防止でき、また、害獣が接触しても形状が維持でき破損しにくくなっているため、害獣侵入防止用構造体を設置した現場を定期的に見回る労力も顕著に軽減することができる。
また、前記害獣侵入防止用構造体の内部に害獣の侵入を防止できる忌避植物を植生することで、害獣の侵入をより防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明の害獣侵入防止用構造体1は、
図1に示すように、骨組体2及び該骨組体2に張り付けて固定された金網3からなる。このように骨組体2と金網3とが固定されていることで、害獣侵入防止用構造体1の強度を向上することができる。また、一般の防止柵では、例えば、前記特許文献1、2のように樹脂製のネットが使用されているが、このネットにシカなどの大型害獣が接触するとネットに害獣の手足が絡まり、その状態で害獣が暴れると防止柵自体が破損してしまう。そして別の害獣が破損部分から侵入する場合がある。これに対して、本発明の害獣侵入防止用構造体1では、金網3が前記骨組体2に張り付けて固定されていることで、シカやイノシシなどの大型の害獣が金網3に接触しても害獣が金網3への絡みつくことがなく、また強度が高くなるため、害獣侵入防止用構造体1の破損を防止することができる。
【0022】
前記骨組体2は、
図2に示すように、地盤G上に並列状に立設される複数個の支柱枠杆4(4’、4’’)及び該複数個の支柱枠杆4(4’、4’’)間に横架される単又は複数個の横架杆5を備える。このように、支柱枠杆4に横架杆5を組み合わせることで、例えば、立設されている支柱枠杆4の転倒を防止することができる。
【0023】
前記支柱枠杆4は、
図2、3に示すように、地盤G上に立設される脚部4aおよび前記脚部4aの上端部に接続される上部4bから構成されている。
このように地盤G上に立設した脚部4aおよび上部4bの高さにより、害獣が害獣侵入防止用構造体1の外側から内側へ飛び越えて侵入することを防止する効果がある。なお、前記脚部4aおよび上部4bとは一体の部材から構成されていてもよいし、別の部材から構成されて組立可能に接続されていてもよい。
【0024】
前記支柱枠杆4の形状としては、前記地盤G上に立設可能な形状ものであればよく、特に限定はない。例えば、前記脚部4aの上端部どうしが線状の上部4bで連結されていてもよい。
中でも、前記支柱枠杆4の上部4bの少なくとも外側となる側を中央に向かって徐々に高くなる傾斜形状にしていることが好ましい。ここで、外側となる側とは、害獣侵入防止用構造体1を設置した場合に、害獣が存在する側の土地の方をいう。また、中央とは、前記支柱枠杆4の2本の脚部4aで挟まれた間の中央をいう。このように外側となる側から中央に向かって前記支柱枠杆4の上部4bを傾斜形状にすることで、害獣の侵入をより効率的に抑えることができる。すなわち害獣は、障害物がある場合、障害物の付近まで接近してその高さを観察し、その後、跳躍などを行うことが知られている。これに対して、前記のような傾斜形状を有する支柱枠杆4を用いていると、本発明の害獣侵入防止用構造体1の外側から見た場合、脚部4aによる高さに加えて、上部4aの傾斜形状により害獣侵入防止用構造体1の高さに奥行きがあることをより強調することができるために、シカのように跳躍力に優れた害獣であっても飛び越える衝動をより強く抑える効果が期待できる。
前記傾斜形状としては、例えば、
図1〜3に示すように、前記上部4bの全体の形状が略山形状になっていることが挙げられる。前記略山形状の頂点部分は
図1〜3に示すように直線状であってもよいし、凸形状であってもよいし、アール形状でもよい。
【0025】
前記支柱枠杆4の脚部4aは地盤Gに対して垂直に立設されていてもよいし、支柱枠杆4の中央に向かって傾斜して立設されていてもよい。前記脚部4aが傾斜して立設されている場合、設置角度については、立設状態での強度が低下しなければよく、特に限定はない。前記脚部4aの下端部は、地盤Gの表面が略平面状であれば地盤Gの表面に接触していればよいが、地盤Gに埋め込むことで斜面や法面のような場所でも所望の位置への設置を容易にできる。また、鋼線、木製杭などの打ち込み部材を脚部4a近傍の地盤Gに打ち込み、その打ち込み部材と脚部4aとを固定してもよい。
【0026】
前記支柱枠杆4の材質としては、鉄、炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼など)などの鋼材が挙げられ、耐候性の観点から、ステンレス鋼が好ましい。
また、前記支柱枠杆4の形状としては、板状、管状、線状などが挙げられ、強度が高く、設置もしやすい観点から、管状であることが好ましい。
【0027】
本発明の害獣侵入防止用構造体1では、
図3に示すように、地盤G上に立設されている害獣侵入防止用構造体1の最大の高さH(地盤Gの表面から金網3表面までの最大の高さ)が、害獣の侵入を防止する効果が高い観点から、0.7m以上、好ましくは0.9m以上、より好ましくは1m以上に調整されていることが望ましく、また、設置がしやすく、コストも抑えることができる観点から、4m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下に調整されていることが望ましい。
【0028】
また、本発明の害獣侵入防止用構造体1では、
図3に示すように、地盤G上に立設されている支柱枠杆4の脚部4aどうしの間の最大の長さW(脚部4aの外側どうしの長さ)が、害獣の侵入を防止する効果が高い観点から、0.7m以上、好ましくは0.9m以上、より好ましくは1m以上に調整されていることが望ましく、また、設置がしやすく、コストも抑えることができる観点から、4m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下に調整されていることが望ましい。
【0029】
前記複数個の前記支柱枠杆4どうしは、単又は複数個の横架杆5で固定される。このように前記支柱枠杆4どうしが横架杆5で固定されることで、本発明の害獣侵入防止用構造体1の強度を高くすることができ、例えば、害獣が支柱枠杆4側や横架杆5側から接触した場合でも、害獣侵入防止用構造体1が破損することを防ぐことができる。これに対して、一般的な害獣用の侵入防止柵では高さがあるものの、害獣が接触すると柵を支える柵自体の強度は高くないために破損しやすい。
【0030】
前記横架杆5の材質としては、鉄、炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼など)などの鋼材が挙げられ、耐候性の観点から、ステンレス鋼が好ましい。
また、前記横架杆5の形状としては、板状、管状、線状などが挙げられ、強度が高く、設置もしやすい観点から、管状であることが好ましい。
【0031】
前記支柱枠杆4に横架杆5を固定する手段としては、特に限定はなく、ワイヤーや鋼線で結索してもよいが、害獣侵入防止用構造体1を設置し易く、その強度を保ち易い観点から、固定具8を用いることが好ましい。固定具8としては、ボルト、ナット、ビスなどのネジが挙げられるが特に限定はない。
【0032】
前記支柱枠杆4どうしを固定する横架杆5の数としては、数が多いほど害獣侵入防止用構造体1の強度を増加することができるが、特に限定はなく、1個でもよいし、複数個でもよい。また、支柱枠杆4どうしを固定する横架杆5の数は、
図2に示すように、立設する支柱枠杆4、4’、4’’が順番に立設している場合、これらの支柱枠杆どうしの間で一定であってもよいし、例えば、支柱枠杆4、4’の間を固定する横架杆5が1本、支柱枠杆4’、4’’の間を固定する横架杆5が3本のように数を変更していてもよい。
【0033】
また、前記支柱枠杆4どうしを固定する横架杆5の固定位置としては、特に限定はないが、金網3が張りやすく、支柱枠杆4どうしの立設状態を安定に維持しやすい観点から、複数個の前記支柱枠杆4の上部4bどうしを前記横架杆5で連結していることが好ましい。例えば、
図2に示す骨組体2では、支柱枠杆4の上部4bどうしが3本の横架杆5で固定されている。
【0034】
また、害獣が接触した場合にも害獣侵入防止用構造体1が破損しにくくなる観点から、複数個の前記支柱枠杆4の脚部4aどうしを前記横架杆5で連結することが好ましい。前記横架杆5を連結する脚部4aの位置としては、例えば、
図2に示すように下側部でもよいし、
図6に示すように上側部でもよいし、下側部と上側部の両方でもよい。
【0035】
中でも、前記支柱枠杆4の下部に固定された横架杆5は、地盤G近くに配置することで、設置時に支柱枠杆4を立設する作業が行い易く、また、前記横架杆5を地面に別の固定具で固定することで、斜面や法面でも支柱枠杆を倒さずに立設することができる。
【0036】
また、前記支柱枠杆4には、
図3、4に示すように、下部に接続される横架杆5の接続位置を調節可能な調節部6が設けられていてもよい。本発明の害獣侵入防止用構造体1を設置する地盤Gの表面には凹凸があることが一般的であるが、地盤Gの凹凸が大きな場合、横架杆5を支柱枠杆4の脚部4aの下方に接続する位置が予め固定されていると、横架杆5が地盤Gの表面に接触し、支柱枠杆4の脚部4aの下端面が地盤Gから浮いてしまって害獣侵入防止用構造体1を地盤G上に適切に設置できないことがある。これに対して、前記調節部6を設けることにより、地盤Gの表面の凹凸に関わらずに地盤G上に立設した前記支柱枠杆4どうしを前記横架杆5で固定することができる。
【0037】
前記調節部6は、例えば、前記支柱枠杆4の下部に高さ方向に間隔をあけて設けられる複数の孔7と、前記孔7を用いて横架杆5を固定する固定具8とよりなる。このような構成とすることで、孔7の位置応じて横架杆5の固定位置を変えることができ、かつ孔7と固定具8とを用いることで確りと前記支柱枠杆4と横架杆5とを固定することができる。前記固定具8としては、ボルト、ナット、ビスなどのネジが挙げられるが特に限定はない。
【0038】
また、前記支柱枠杆4の左右の脚部4aどうしを連結する補強杆9をさらに備えてもよい。このような補強杆9を備えることで、支柱枠杆4の立設した状態をより強く保持することができる。
前記補強杆9を連結する脚部4aの位置としては、特に限定はない。また、その連結手段としては、支柱枠杆4の脚部4aに補強稈9を溶接してもよいし、固定具を用いて固定してもよい。
前記補強杆9の材質としては、鉄、炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼など)などの鋼材が挙げられ、耐候性の観点から、ステンレス鋼が好ましい。
また、前記補強杆9の形状としては、板状、管状、線状が挙げられ、強度が高く、軽量で組立や設置がしやすい観点から、管状であることが好ましい。
【0039】
前記骨組体2の表面には金網3が張り付けて固定される。
前記金網3は、金属の線材を編み込んだ網状の金属製品であればよい。金網3を構成する金属の材質、線材の直径、網目の大きさ、網の形状については特に限定はない。
【0040】
前記金網3を前記骨組体2の表面に張り付けて固定する方法としては、例えば、骨組体2の表面に金網3を張り付け、所望の位置で骨組体2を構成する支柱枠杆4および横架杆5と金網3とを、ワイヤー、紐、または固定具を用いて固定する方法が挙げられるが、特に限定されない。前記骨組体2と前記金網3とを固定する箇所についても特に限定はない。
【0041】
前記金網3の端部は、
図1に示すように、骨組体2から地盤G表面上にまで延ばして設置することが好ましい。このように地盤G表面上にも金網3をかけておくことで、イノシシのように掘り起しを行う害獣に対して顕著な侵入防止効果を発揮することができる。
【0042】
また、地盤G表面付近にある前記金網3の端部は、U字型の鋼線やペグなどの固定部材を用いて、地盤Gの表面に固定してもよい。
【0043】
本発明の害獣侵入防止用構造体の他の態様としては、
図5に示すように、地盤G付近の前記横架杆5をワイヤー10に替えた害獣侵入防止用構造体1aが挙げられる。ワイヤー10を用いた場合には、横架杆5に比べて、複雑な起伏の表面を有する地盤G上に立設された支柱枠杆4の下部どうしを固定することができる。なお、ワイヤー10を用いる場合、前記支柱枠杆4の脚部4aの所望の位置に貫通孔11を設け、この貫通孔11に前記ワイヤーを通すことが好ましい。
また、前記支柱枠杆4の脚部4aの貫通孔11を通したワイヤー10は、U字型の鋼線やペグなどの固定具12により地盤G表面に固定することで、法面や斜面などの傾斜地の地盤G表面でも害獣侵入防止用構造体1aを安定に設置することができる。
【0044】
なお、ワイヤー10の両端部は、貫通孔11付近で前記支柱枠杆4の脚部4aと固定したり、別の固定部材を用いて地盤Gに固定したりすればよく、特に限定はない。
【0045】
また、
図6に示す前記害獣侵入防止用構造体1aの骨組体2では、支柱枠杆4と横架杆5とは軸どうしが垂直に交わるように固定しているため、固定強度がより高くなる。この固定方法としては、軸中心にネジ穴13が設けられた横架杆5を用い、支柱枠杆4にの所定の位置に設けた貫通孔14に前記横架杆5のネジ穴13を揃えて、その反対側からネジ15を挿入し、回転して固定する方法が挙げられる。また、前記の固定方法を採用することで、
図8に示すように、骨組体2を構成する支柱枠杆4や横架杆5の表面に隙間を空けずに金網3を張り付けることができるため、張り付け作業が行い易く、また、金網3と骨組体2との固定もより確実に行うことができる。
前記ネジ穴13としては、市販のパイプ用インサートナットを用いればよい。
【0046】
なお、
図5〜8に示す害獣侵入防止用構造体1aの構成は、前記の構成以外は、
図1〜3に示す害獣侵入防止用構造体1と同じであればよい。
【0047】
また、本発明の害獣侵入防止用構造体の他の態様としては、
図9に示すように、前記骨組体2を構成する前記金網3上に配される柵体16をさらに組み合わせた害獣侵入防止用構造体1bが挙げられる。害獣侵入防止用構造体1bは、設置する面積が小さくした場合に使用される小型のサイズの構造体を示す一例であり、前記柵体16を組み合わせて害獣侵入防止用構造体1bの設置高さを補うことで、害獣侵入防止用構造体1を害獣が跳躍して乗り越えることを防止することができる。
【0048】
前記柵体16は、平面状の柵部17から構成され、前記金網3上で、前記横架杆5に対して平行に立設されている。
前記柵部17としては、例えば、
図9に示すように、害獣侵入防止用構造体1bの骨組体2を構成する支柱枠杆4の中央付近に支柱18を地盤G上に立設し、金網3から上方向に突き出ている支柱18どうしの間に金網や樹脂製網を設置することが挙げられる。また、
図9に示すように、前記支柱18の上端部どうしを別の支柱で固定して支柱の強度を高めるようにしてもよい。
【0049】
前記柵部17の下方端部は、
図9に示すように、金網3と接触していてもよいし、隙間を設けてもよい。
前記柵部11を構成する金網や樹脂製網の大きさ等については特に限定はない。
【0050】
なお、
図9に示す害獣侵入防止用構造体1bの構成は、前記の構成以外は、
図5〜8に示す害獣侵入防止用構造体1aと同じであればよい。
【0051】
また、本発明の害獣侵入防止用構造体の他の態様としては、
図10に示すように、前記金網3上に忍び返し19を設けた害獣侵入防止用構造体1cが挙げられる。害獣侵入防止用構造体1cは、前記害獣侵入防止用構造体1bと同様に設置する面積を小さくした場合に使用される小型のサイズの構造体を示す一例であり、前記柵体16のかわりに忍び返し19を組み合わせることで、害獣侵入防止用構造体1bの設置高さを補い、害獣侵入防止用構造体1cを害獣が跳躍して乗り越えることを防止することができる。
【0052】
前記忍び返し19は、前記支柱18の上端部どうしを接続する軸部材20の軸に取り付けられていればよい。前記忍び返し19は、前記軸部材20に固定されていても、軸部材20の軸を中心として回転可能に取り付けられていてもよく、特に限定はない。
【0053】
前記忍び返し19の形状としては、
図10に示すように、所定の長さの線材の一方端を前記軸部材20に固定して、前記線材の他方端が前記線材の軸方向に放射線状に配置されている形状などが挙げられるが、特に限定はない。
【0054】
なお、
図10に示す害獣侵入防止用構造体1cの構成は、前記の構成以外は、
図5〜8に示す害獣侵入防止用構造体1aと同じであればよい。
【0055】
また、本発明の害獣侵入防止用構造体の他の態様としては、
図11に示すように、前記支柱枠杆4の上部に接続された横架杆5に忍び返し19を設けた害獣侵入防止用構造体1dが挙げられる。害獣侵入防止用構造体1dでは、支柱枠杆4よりも上部に忍び返し19の端部が出ていることで、害獣侵入防止用構造体1dの設置高さを補い、害獣侵入防止用構造体1dを害獣が跳躍して乗り越えることを防止することができる。
【0056】
前記忍び返し19は、前記横架杆5に固定されていても、横架杆5の軸を中心として回転可能に取り付けられていてもよく、特に限定はない。
【0057】
前記忍び返し19の形状としては、
図11に示すように、所定の長さの線材の一方端を前記横架杆5に固定して、前記線材の他方端が前記横架杆5の軸方向に放射線状に配置されている形状などが挙げられるが、特に限定はない。
【0058】
また、前記忍び返し19を回転可能にするためには、
図11に示すように、支柱枠杆4の上部に金網3を張り付けず、前記忍び返し19が回転しても金網3に接触しないだけの空間を設けておけばよい。
【0059】
なお、
図11に示す害獣侵入防止用構造体1dの構成は、前記の構成以外は、
図5〜8に示す害獣侵入防止用構造体1aと同じであればよい。
【0060】
また、本発明の害獣侵入防止用構造体には、メンテナンスを行うためにヒトが外側から内部に入れるための出入口を設けてもよい。例えば、
図12に示すように、害獣侵入防止用構造体1eでは、害獣がいる外側(図中、左側)にある支柱枠杆4どうしの間の金網3を取り除き、扉21aを設けることが挙げられる。前記扉21aは、外開きになるように構成しておくことが好ましい。この場合、害獣が扉21aに接触しても開かないのに対して、ヒトが入る場合には、前記扉21aを外側に開くことで、害獣侵入防止用構造体1eの内部に入ることができる。
【0061】
また、
図12に示すように、害獣侵入防止用構造体1eの内側に入るための出入口として扉21bを設けてもよい。前記扉21bは、内開きになるように構成しておくことが好ましい。この場合、ヒトが入る場合には、前記扉21bを内側に開くことで、害獣侵入防止用構造体1eから害獣の侵入を防止している内側の土地に入ることができる。
【0062】
以上のような構成を有する本発明の害獣侵入防止用構造体は、野生の害獣の侵入を防止することができる。本発明において害獣としては、特に限定はないが、イタチ、キツネ、アライグマのような小型の野生動物だけでなく、シカまたはイノシシのように大型の野生動物であってもその侵入を防ぐことが可能である。
【0063】
本発明の害獣侵入防止用構造体は、害獣の侵入を防止する土地、例えば、田畑、山林、法面、斜面などの周囲に設置することで、害獣侵入を防止することができる。
前記設置手段としては、例えば、高速道路の法面、一般道や里道の側面にある斜面などのように害獣の侵入を防止する目的の土地に人が入る必要がない場合には、前記土地の全周囲に本発明の害獣侵入防止用構造体を設置すればよい。
また、田畑、山林などのように、害獣の侵入を防止する土地に人が入る必要がある場合、前記土地の周囲に本発明の害獣侵入防止用構造体を設置しながら、周囲の一部を空けておき、その部分に出入口を設ければよい。前記出入口の構造としては、特に限定はない。
【0064】
また、前記害獣侵入防止用構造体の内部に害獣の侵入を防止できる忌避植物を植生してもよい。
前記忌避植物としては、サンザシ属、ミカン属、バラ、イラクサなどの棘のある植物が挙げられる。また、トウガラシ、ハーブのように独特の臭いを有する植物を植生することよって害獣の接近を抑えてもよい。また、シカ、イノシシなどのエサになり難い針葉樹でもよい。
【0065】
高さが低い忌避植物を植生した場合、害獣侵入防止用構造体の内部で植生するだけで、忌避植物が生長すれば忌避効果が発揮される。
また、例えば、
図5に示す害獣侵入防止用構造体1aの内部に高木となる忌避植物22を植生する場合、支柱枠杆4どうしの間に忌避植物22の苗木を植生し、前記忌避植物22の生長にあわせて支柱枠杆4の上部の金網3を取り除くことで、支柱枠杆4の上部の空間から上方向に前記忌避植物22が伸長しても前記害獣侵入防止用構造体1aが破損されず、しかも前記忌避植物22による忌避効果も発揮することができる。
【実施例】
【0066】
平成26年5月に、下地処理を施した広島県の備北南部地区2−1工区の法面において、縦5.2m、横4.2mの土地の全周囲に
図1に示す害獣侵入防止用構造体1を設置した。まず、枠幅1mの支柱枠杆4を地盤表面に設置高さが1mとなるように立設し、2つの支柱枠杆4どうしを横架杆5で固定して、
図2に示す骨組体2を作製した。その後、骨組体2の表面に金網3を張り付けて、骨組体2を構成する支柱枠杆4および横架杆5と、金網3とを複数個所で固定して害獣侵入防止用構造体1を
図14に示すように設置した。
【0067】
なお、前記下地処理としては、予め生えているバミューダグラスなどの植物を刈り取り、同時にシカの踏み荒らしによる基盤の浮いた部分を剥ぎ取り、そのうえで、十分な散水をして、種子の散布を行った。前記種子配合についてはトールフェスクを含むシカの好む種子を配合とした。
【0068】
また、前記害獣侵入防止用構造体1の構成は以下のとおりとした。
金網2(亜鉛メッキ鉄線製、φ2.3、網目100×100mm)
支柱枠杆4(一般構造用炭素鋼鋼管製、直径約2cmのパイプ、枠幅1m)
脚部4aの長さ約0.6m,支柱枠杆の上部4bの形状:略山形形状
横架杆5(一般構造用炭素鋼鋼管製、直径約2cmのパイプ)
脚部4aに固定されている横架杆5と地盤表面との高さを8〜20cmになるように調整した。
補強杆9(一般構造用炭素鋼鋼管製、直径約2cmのパイプ)
【0069】
害獣侵入防止用構造体1を設置してから約2か月後、設置現場を観察したところ、
図15に示すように、害獣侵入防止用構造体1の外側周囲にある地盤表面の草は全てシカなどの害獣によって食い荒らされて地面が露出していたのに対し、害獣侵入防止用構造体1で囲まれた土地には害獣は侵入した形跡がなく、地盤表面の草は順調に生育していた。また、害獣侵入防止用構造体1には破損個所はなかった。
なお、設置から観察までの間、設置現場において除草などの作業や、害獣駆除作業のように人が接近する作業は全く行わなかった。
以上のことから、本発明の害獣侵入防止用構造体1は、傾斜のある法面でも設置することができ、強度も強く、かつ頻繁に見回りなどしなくとも、長期間にわたって害獣の侵入を防止する効果に優れることがわかる。