(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1の実施の形態〉
図1〜
図5は、第1の実施の形態に係る半導体センサ装置を例示する図である。なお、
図1(a)は正面図、
図1(b)は斜視図、
図2(a)は平面図、
図2(b)は底面図、
図3(a)は
図2のA−A線に沿う断面図、
図3(b)は
図3(a)のC部の拡大図、
図4は
図2のB−B線に沿う断面図、
図5は基板のみを示す平面図である。又、
図6は、半導体センサ素子実装部近傍の詳細図である。
【0013】
まず、
図1〜
図5を参照しながら第1の実施の形態に係る半導体センサ装置1の全体の構造について説明し、その後、
図6を参照しながら半導体センサ素子20の実装部近傍の詳細な構造について説明する。
【0014】
[第1の実施の形態に係る半導体センサ装置の全体の構造]
図1〜
図5に示すように、半導体センサ装置1は、大略すると、基板10と、シリンダ70と、ノズル80と、外部端子90とを有する。シリンダ70とノズル80とは基板10を挟んだ状態で接合されている。
【0015】
なお、本実施の形態では、便宜上、半導体センサ装置1のシリンダ70側を上側又は一方の側、ノズル80側を下側又は他方の側とする。又、各部位のシリンダ70側の面を上面又は一方の面、ノズル80側の面を下面又は他方の面とする。但し、半導体センサ装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基板10の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基板10の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0016】
半導体センサ装置1において、基板10の平面形状は、例えば、略矩形状とすることができるが、略矩形状以外の任意の形状として構わない。又、必要に応じ、基板10の外縁部に切り欠き等を設けても構わない。基板10としては、所謂ガラスエポキシ基板やセラミック基板、シリコン基板等を用いることができる。
【0017】
基板10には、素子搭載領域11、ボンディングパッド12、部品実装用パッド13、外部端子実装用パッド14、ソルダーレジスト15、スルーホール16、圧力媒体導入孔10x、位置決め孔10y、外部端子挿入孔10z等が形成されている。素子搭載領域11には、例えば、銅(Cu)が露出している。又、ボンディングパッド12、部品実装用パッド13、外部端子実装用パッド14には、例えば、銅(Cu)の上面に形成された金(Au)めっきが露出している。
【0018】
基板10の部品実装用パッド13には、実装部品40が実装されている。実装部品40は、IC、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、インダクタの一部又は全部、或いは他の任意の部品を含んでよい。
【0019】
ソルダーレジスト15は、素子搭載領域11、ボンディングパッド12、部品実装用パッド13、外部端子実装用パッド14等を露出するように、基板10の上面及び下面に設けられている。ソルダーレジスト15は、素子搭載領域11内に選択的に形成された凸部であるレジストスペーサ15a及び15bを有している。レジストスペーサ15aは、半導体センサ素子20を実装する領域に選択的に設けられた、半導体センサ素子20を搭載するための台座である。又、レジストスペーサ15bは、制御IC30を実装する領域に選択的に設けられた、制御IC30を搭載するための台座である。
【0020】
素子搭載領域11のレジストスペーサ15a上には半導体センサ素子20が配置され、接着樹脂51により固定されている。レジストスペーサ15b上には制御IC30が配置され、接着樹脂52により固定されている。なお、基板10の上面には半導体センサ素子20等を保護する保護部材であるシリンダ70が接着樹脂53により固定されており、半導体センサ素子20及び制御IC30はシリンダ70の略中央部に設けられた開口部70x内に配されている。
【0021】
半導体センサ素子20は、圧力媒体の圧力を検出するセンサであり、ダイヤフラムを有している。ダイヤフラムは、半導体センサ素子20の上面であるセンサ面を構成する部位であり、圧力により発生した応力を、電気信号に変換して検出する機能を有する。半導体センサ素子20は、ダイヤフラムの歪みを抵抗値の変化として検出する半導体歪みゲージ方式の素子でもよいし、ダイヤフラムの変位を静電容量の変化として検出する静電容量方式の素子でもよいし、他の検出方式で圧力を検出する素子でもよい。
【0022】
制御IC30は、半導体センサ素子20を制御するICである。制御IC30には、例えば、温度センサが内蔵されており、制御IC30は半導体センサ素子20の特性の温度補償を行う。半導体センサ素子20の特性の温度補償の確度を高めるため、制御IC30は半導体センサ素子20の近傍に実装されている。
【0023】
半導体センサ素子20の上面及び制御IC30の上面には、デバイス保護ゲル58が設けられている。又、シリンダ70の開口部70xの内壁面の下面側に形成された段差部70z内において、半導体センサ素子20及び制御IC30の周辺部の基板10の上面を被覆するように、基板保護ゲル59が設けられている。デバイス保護ゲル58としては、例えば、広い温度範囲で粘弾性の変化が小さいシリコーンゲルを用いることができる。基板保護ゲル59としては、例えば、高信頼性のフッ素ゲルを用いることができる。但し、デバイス保護ゲル58及び基板保護ゲル59は、同じ材料を用いても構わない。
【0024】
ノズル80は半導体センサ素子20に圧力媒体を導入する圧力媒体導入部材であり、略中央部に筒状の圧力媒体導入孔81が設けられている。ノズル80の圧力媒体導入孔81(貫通孔)は基板10の圧力媒体導入孔10x(貫通孔)に連通しており、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体(例えば、プロパンガスや都市ガス等のガス)は、圧力媒体導入孔10xを介して、半導体センサ素子20のダイヤフラムに達する。
【0025】
半導体センサ素子20のダイヤフラムの歪み(又は、変位)は、ノズル80の圧力媒体導入孔81から導入される圧力媒体の圧力と、シリンダ70の開口部70xから導入される大気圧との差に応じて変化する。そのため、ダイヤフラムの歪み量(又は、変位量)を抵抗値(又は、静電容量値)の変化量として検出することによって、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体の圧力を検出できる。
【0026】
このように、半導体センサ素子20のダイヤフラムの下面側で圧力媒体を受ける構造とすることにより、半導体センサ素子20のダイヤフラムの上面側に形成された抵抗や配線等に腐食が生じることを防止できる。又、この構造では、基板10と圧力媒体が接触する面積が少なくなるため、圧力媒体が基板10へ与える影響を最小限にすることができ、信頼性の向上が可能となる。
【0027】
なお、
図3(b)に示したように、圧力媒体導入孔81の基板10側には圧力媒体の流量を制限する流量制限部82が設けられ、流量制限部82の更に基板10側に流量制限部82より断面積の大きいバッファ部83が設けられている。なお、流量制限部82の断面積は、バッファ部83側に近づくにつれて徐々に小さくなる形状とされている。
【0028】
言い換えれば、圧力媒体導入孔81は、基板10と遠い方から近い方にかけて、第1の断面積を備えた第1の部分(流量制限部82及びバッファ部83を除く部分)と、第1の断面積よりも小さい第2の断面積を備えた第2の部分(流量制限部82)と、第2の断面積よりも大きい第3の断面積を備えた第3の部分(バッファ部83)とを有している。
【0029】
第1〜第3の部分の各断面(横断面)は、例えば、円形とすることができる。その場合、流量制限部82及びバッファ部83を除く部分の圧力媒体導入孔81の直径は、例えば、2mm程度とすることができる。流量制限部82のバッファ部83から遠い側の直径は、例えば、0.8mm程度、バッファ部83に近い側の直径は、例えば、0.3mm程度とすることができる。バッファ部83の直径は、例えば、1.1mm程度とすることができる。
【0030】
このように、流量制限部82により圧力媒体の流量を制限すると共に、流量制限部82の基板10側に流量制限部82より断面積の大きいバッファ部83を設けることで、圧力伝播に対してバッファ部83が形成する空間が緩衝器の役割を果たす。その結果、突発的な圧力印加に対して半導体センサ素子20を保護することができる。
【0031】
又、ノズル80の上面には、柱状の位置決め部89(例えば、4カ所)が設けられている。ノズル80の各位置決め部89は、連通する基板10の位置決め孔10y及びシリンダ70の位置決め孔70yに挿入され、先端がシリンダ70の上面から突出している。位置決め部89のシリンダ70の上面から突出している部分は、熱溶着により外縁部がシリンダ70の上面の位置決め孔70yの周囲に環状に広がり、シリンダ70の上面と接合されている。
【0032】
なお、基板10とシリンダ70とは接着樹脂53により接着され、基板10とノズル80とはシール用接着樹脂54とノズル接着樹脂55により接着されている。これにより、基板10とシリンダ70及びノズル80とは密着するため、ノズル80の圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体が漏れることを防止できる。そして、更に、基板10を挟むようにシリンダ70とノズル80とが熱溶着により接合されている。これにより、接着樹脂53、54、55による接着と熱溶着による固定を併用することで、基板10とシリンダ70及びノズル80との機械的強度を高めることができる。すなわち、圧力媒体をシールする部分の信頼性を向上することができる。
【0033】
なお、半導体センサ装置1では、半導体センサ素子20をシリンダ70やノズル80等の外装部分に直接接続せずに、基板10に実装しているため、半導体センサ装置1を取り付け対象物に取り付ける際に、外装部分から半導体センサ素子20に応力が伝わることを防止できる。
【0034】
又、従来のようにガラス台座を使用しない代わりに、半導体センサ素子20の厚みを厚くし、低弾性樹脂である接着樹脂51を介して基板10に実装している。接着樹脂51として低弾性樹脂を使用することで、外部応力による影響を低減し、ガラス台座を有している場合と同等に外部応力を緩和することができる。更に、この構造では、ガラス台座を実装しないため、製造コストが低減できる。
【0035】
なお、シリンダ70やノズル80は樹脂成型により作製できるため、形状の変更が容易である。そのため、適宜な形状に変更することで、様々な用途に向けた半導体センサ装置を実現できる。
【0036】
[半導体センサ素子の実装部近傍の詳細な構造]
次に、
図6を参照しながら、半導体センサ素子20の実装部近傍の詳細な構造について説明する。
図6は、第1の実施の形態に係る半導体センサ素子20の実装部近傍を例示する図であり、
図6(b)は平面図、
図6(a)は
図6(b)のC−C線に沿う断面図である。但し、
図6(b)では一部の構成要素の図示が省略されている。
【0037】
図6(b)における四角の破線と丸の破線とで囲まれた領域20aは、素子搭載領域11中の半導体センサ素子20の底面が配される部分である。領域20aにはレジストスペーサ15aが形成されており、金めっき膜190が形成される領域11aを除く領域20aの一部又は全部に接着樹脂51が塗布される。
【0038】
図6に示すように、基板10は、基材17を備え、基材17の所定領域には銅膜19が形成されている。銅膜19の厚さは、例えば、20〜40μm程度とすることができる。銅膜19は、基材17の全体にわたって形成しても構わないが、少なくとも圧力媒体の経路となる部分(圧力媒体と接する可能性のある部分)の全てに形成されている。
【0039】
具体的には、銅膜19は、基材17の上面において、少なくとも、素子搭載領域11中の半導体センサ素子20と平面視で重複する領域に形成されている。又、銅膜19は、少なくとも、基材17の下面において、ノズル80から圧力媒体が導入される経路となる部分(基材17の下面の圧力媒体導入孔81内に露出する領域11b)に形成されている。更に、銅膜19は、少なくとも、圧力媒体導入孔10xの内壁面に形成されている。
【0040】
これらの領域に、連続的に銅膜19を形成することにより、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体が半導体センサ素子20に至る経路に、基材17が全く露出しない構造とすることができる。
【0041】
本実施の形態では、更に、半導体センサ素子20と平面視で重複する領域中の接着樹脂51を塗布する領域の内側である領域11aにおいて、銅膜19の表面が金めっき膜190で被覆されている。又、圧力媒体導入孔81と接する領域11bにおいて、銅膜19の表面が金めっき膜190で被覆されている。更に、圧力媒体導入孔10xの内壁面において、銅膜19の表面が金めっき膜190で被覆されている。金めっき膜190の厚さは、例えば、0.3μm以上とすることができる。金めっき膜190の周縁部が領域20aにはみ出してもよい。
【0042】
なお、銅膜19や金めっき膜190は、無電解めっき法や電解めっき法等の一般的な基板製造工程により形成できるため、経済性に優れている。
【0043】
このように、半導体センサ装置1では、基板10において、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体の経路となる部分(圧力媒体と接する可能性のある部分)が、圧力媒体に対する透過性の低い金属膜で全て被覆されている。これにより、圧力媒体が基材17を介して外部に漏れ出すことを防止できる。又、基材17を透過してきた水分や基材17を構成する成分が気化した気体が、半導体センサ素子20や接着樹脂51に達することを防止できる。その結果、半導体センサ装置1の長期的な信頼性を確保できる。
【0044】
ここで、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体と接する可能性のある部分に銅膜19のみを形成しても半導体センサ装置1の信頼性を向上できるが、銅膜19の表面を更に金めっき膜190で被覆することにより耐腐食性が良好となり、半導体センサ装置1の信頼性をいっそう向上できる。金めっき膜190に代えて錫合金めっき膜(錫銅合金等)を用いても耐腐食性を向上できる。錫合金めっき膜は、金めっき膜190よりも安価な点で好適である。
【0045】
なお、金めっき膜190は接着樹脂51との接着性が良くないため、接着樹脂51を塗布する領域には金めっき膜190を形成せずに銅膜19を露出させている。これにより、半導体センサ素子20を基板10に接着する際の接着樹脂51の硬化不良や未接着を防ぎ、半導体センサ素子20の実装信頼性を向上できる。すなわち、半導体センサ素子20の接着状態を安定化できる。
【0046】
又、半導体センサ素子20の接着状態が安定化することで、金属線60のワイヤボンダビリティを向上できる。更に、半導体センサ素子20の接着状態が安定化することで、半導体センサ素子20のダイヤフラムに不要な応力が印加されることを防止可能となる。これにより、半導体センサ素子20の出力のシフトを低減できると共に、半導体センサ素子20の破壊耐圧や耐久性を向上できる。
【0047】
なお、接着樹脂51を塗布する領域に露出する銅膜19の表面を粗化すると、銅膜19と接着樹脂51との接着性をいっそう向上できる点で好適である。粗化後の銅膜19の表面の粗度は、例えば、Ra3〜5μm程度とすることができる(粗化前の銅膜19の表面の粗度はRa1μm以下程度)。粗化は、例えば、有機溶剤等を用いて行うことができる。
【0048】
〈第1の実施の形態の変形例〉
第1の実施の形態の変形例では、半導体センサ素子の実装部近傍の構造の他の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0049】
図7は、半導体センサ素子20の実装部近傍を例示する図(その2)であり、
図6(a)に対応する断面を示している。
図7の構造では、銅膜19の表面に金めっき膜190を形成していない点が
図6の構造と相違する。
【0050】
このように、金めっき膜190を形成しない場合でも、基板10において、圧力媒体導入孔81から導入された圧力媒体と接する可能性のある部分は、圧力媒体に対する透過性の低い金属膜(銅膜19)で全て被覆されている。これにより、圧力媒体が基材17を介して外部に漏れ出すことを防止できる。又、基材17を透過してきた水分や基材17を構成する成分が気化した気体が、半導体センサ素子20や接着樹脂51に達することを防止できる。その結果、半導体センサ装置1の信頼性を確保できる。
【0051】
但し、前述のように、特に耐腐食性を問題とする場合には、銅膜19を被覆するように金めっき膜190や錫合金めっき膜を形成することが好ましい。
【0052】
図8は、半導体センサ素子20の実装部近傍を例示する図(その3)であり、
図6(a)に対応する断面を示している。
図8の構造では、基材17の端面が銅膜19で被覆されている点が
図6の構造と相違する。これにより、基材17の端面から水分等が入り込むことを防止できる。その他の効果については、第1の実施の形態と同様である。
【0053】
なお、
図7や
図8の構造において、必要に応じ、銅膜19の表面に、圧力媒体に対する透過性の低い樹脂をコーティングしてもよい。例えば、銅膜19に微細なピンポールが存在する場合に、ピンポールを樹脂で埋めることにより、信頼性を確保できる。又、
図6の構造において、金めっき膜190の表面に、圧力媒体に対する透過性の低い樹脂をコーティングしてもよい。例えば、金めっき膜190に微細なピンポールが存在する場合に、ピンポールを樹脂で埋めることにより、信頼性を確保できる。
【0054】
以上、好ましい実施の形態及び変形例について詳説したが、上述した実施の形態及び変形例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び変形例に種々の変形及び置換を加えることができる。