特許第6507600号(P6507600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507600
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】脆性材料基板の分断方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/023 20060101AFI20190422BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20190422BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   C03B33/023
   C03B33/033
   B28D5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-243746(P2014-243746)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-108158(P2016-108158A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】木山 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
(72)【発明者】
【氏名】秀島 護
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234874(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129943(WO,A1)
【文献】 特開2012−030992(JP,A)
【文献】 特開平08−268728(JP,A)
【文献】 特開2005−247599(JP,A)
【文献】 特開2007−039302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B23/00−35/26
C03B40/00−40/04
B28D1/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分断予定ラインに沿って脆性材料基板を分断する方法であって、
カッターを所定の荷重で脆性材料基板表面に押し付けながら移動し、分断予定ラインに沿って分断用の交差する溝を形成する第1ステップと、
前記第1ステップで形成された分断用の溝に分断力を加えて脆性材料基板を分断する第2ステップと、
を含み、
前記第1ステップにおけるカッターの脆性材料基板への押し付け荷重は、第1ステップでの溝形成時にはリブマークが発生せず、かつ溝の直下に垂直クラックが形成される大きさの荷重である、
脆性材料基板の分断方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、10N以下1N以上の荷重でカッターを脆性材料基板に押し付ける、請求項1に記載の脆性材料基板の分断方法。
【請求項3】
前記第1ステップでは、6N以下1N以上の荷重でカッターを脆性材料基板に押し付ける、請求項2に記載の脆性材料基板の分断方法。
【請求項4】
前記第1ステップでは、厚みが0.1mm以上1.0mm以下の脆性材料基板に対して、表面からの深さが基板厚みの3%以上15%以下の塑性変形領域を含む溝を形成する、請求項1から3のいずれかに記載の脆性材料基板の分断方法。
【請求項5】
前記第2ステップでは、前記第1ステップで形成された分断用の溝を下方にして、脆性材料基板表面の前記溝の両側を支持し、又は、脆性材料基板表面全体を弾性体で支持し、前記溝が形成された部分の脆性材料基板裏面を上方から押圧して分断する、請求項1から4のいずれかに記載の脆性材料基板分断方法。
【請求項6】
脆性材料基板は、ガラスである、請求項1から5のいずれかに記載の脆性材料基板分断方法。
【請求項7】
分断予定ラインに沿って脆性材料基板の表面に分断用の交差する溝及び垂直クラックを形成する脆性材料基板の加工装置であって、
脆性材料基板が載置されるテーブルと、
前記テーブルの上方に昇降自在に配置された脆性材料分断用のカッターと、
前記カッターを所定の荷重で脆性材料基板表面に押し付けるカッター押圧機構と、
分断予定ラインに沿って前記カッター及び前記テーブルを相対的に移動させて、脆性材料基板に分断用の溝を形成する移動機構と、
を備え、
前記カッター押圧機構は、分断用の溝にリブマークが発生せず、かつ溝の直下に垂直クラックが形成される大きさの荷重で前記カッターを脆性材料基板に押し付ける、
脆性材料基板の加工装置。
【請求項8】
前記カッターは、回転軸を共有する2つの円錐台の底部が交わって円周稜線が形成された外周縁部を有するスクライビングホイールであり、前記スクライビングホイールは前記円周稜線に沿って円周方向に交互に形成された複数の切欠き及び突起を有する、請求項7に記載の脆性材料基板の加工装置。
【請求項9】
前記スクライビングホイールの切欠きは、前記円周稜線の全周に10μm以上50μm以下のピッチで形成され、その深さが0.5μm以上5.0μm以下である、請求項8に記載の脆性材料基板の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板の分断方法、特に、分断予定ラインに沿って脆性材料基板を分断する分断方法に関する。また、本発明は脆性材料基板の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用パネルの製造過程においては、マザー基板に交差するスクライブラインを形成し、その後、マザー基板に分断力を加えて、スクライブラインに沿って複数の単位基板に分断するようにしている。
【0003】
マザー基板にスクライブラインを形成する際には、例えば特許文献1及び特許文献2に示されるような方法が用いられる。これらの文献に示された方法は、まず、スクライビングホイールを用いてガラス基板の表面にスクライブラインが形成される。その後、ガラス基板に分断力が加えられ、これによりスクライブラインに沿って分断される。
【0004】
特に特許文献2では、スクライブライン(分断用の溝)にはリブマークが存在するように加工される。一般に、溝の直下にリブマークが形成され、リブマークの先端から基板の厚み方向に垂直クラックが伸展する。スクライブラインにリブマークが形成されることによって、比較的小さい力でマザー基板を分断することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−6780号公報
【特許文献2】特開2008−308380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示されるように、ガラス基板を分断する場合には、分断用の溝を形成する際に、リブマークが形成されるように、比較的大きい押し付け荷重でスクライビングホイールがガラス基板に押し付けられる。これにより、ガラス基板の厚み方向に深いクラックが形成され、分断時に横方向クラックが生じることなく良好にガラス基板を分断することが可能になる。
【0007】
しかし、近年においては、マザー基板から非常に小さい単位基板を分断することが求められている。この場合は、狭いピッチで複数のスクライブラインを形成することや、狭いピッチでクロススクライブをする必要がある。このような状況下では、先に形成されたスクライブラインに生じた応力が、後に形成されるスクライブラインに悪影響を与えることがある。具体的には、スクライブラインが交差する部分の表面に品質劣化(水平クラック、チッピング、剥離、ソゲ等)が生じる、あるいは分断端面が垂直にならない、など、加工品質が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、特に狭いピッチで複数のスクライブラインを形成したり、クロススクライブを形成したりすることによって、ガラス基板等の脆性材料基板を分断する場合に、加工品質が低下するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る脆性材料基板の分断方法は、分断予定ラインに沿って脆性材料基板を分断する方法であって、第1ステップと、第2ステップと、を含んでいる。第1ステップは、カッターを所定の荷重で脆性材料基板表面に押し付けながら移動し、分断予定ラインに沿って分断用の交差する溝を形成する。第2ステップは、第1ステップで形成された分断用の溝に分断力を加えて脆性材料基板を分断する。そして、第1ステップにおけるカッターの脆性材料基板への押し付け荷重は、第1ステップでの溝形成時にはリブマークが発生せず、かつ溝の直下に垂直クラックが形成される大きさの荷重である。
【0010】
ここでは、脆性材料基板へのカッターの押し付け荷重が比較的小さく設定され、このカッターを移動させることによって脆性材料基板表面の分断予定ラインに沿って分断用の溝が形成される。このようにして分断用の溝が形成されることによって、溝に沿った脆性材料基板の内部に応力が溜まりにくい。したがって、先に形成された分断用の溝に近接して別の溝を形成したり、あるいは交差する溝を形成したりする際に、チッピングが生じにくい。また、同様の理由により、分断された脆性材料基板の端面の垂直性が良好になる。
【0011】
なお、本発明における「リブマーク」とは、カッターを基板表面に押し付けて移動することによって形成された塑性変形領域の下方において、基板の端面(切断面)において基板の厚み方向に延びる多数の曲線状(肋骨状)の筋が分断方向に連続的に観察される基板の厚み方向に形成されたクラックである。リブマークの先端(基板の内部側の端部)からは曲線状の筋が観察されない垂直クラックが基板の厚み方向に形成される。
【0012】
本発明の別の側面に係る脆性材料基板の分断方法は、第1ステップでは、10N以下1N以上の荷重でカッターを脆性材料基板に押し付ける。
【0013】
このような小さい押し付け荷重でカッターを脆性材料基板に押し付けて加工することによって、脆性材料基板の内部にリブマークを発生させることなく、分断に必要な溝及び垂直クラックを形成することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面に係る脆性材料基板の分断方法は、第1ステップでは、6N以下1N以上の荷重でカッターを脆性材料基板に押し付ける。
【0015】
ここでは、より確実に、脆性材料基板の内部にリブマークを発生させることなく、分断に必要な溝及び垂直クラックを形成することができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面に係る脆性材料基板の分断方法は、第1ステップでは、厚みが0.1mm以上1mm以下のガラス基板に対して、表面からの深さが基板厚みの3%以上15%以下の塑性変形領域を含む溝を形成する。
【0017】
ここでは、従来の加工方法に比較して、第1ステップで形成される塑性変形領域の深さが浅い。このため、第1ステップでの加工時に脆性材料基板の内部に溜まる応力を小さくすることができ、加工品質の低下を抑えることができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面に係る脆性材料基板の分断方法は、第2ステップでは、第1ステップで形成された分断用の溝を下方にして、脆性材料基板表面の溝の両側を支持し、又は、脆性材料基板表面全体を弾性体(例えば、金属やセラミックス等の硬質材料で構成されたテーブル上に布設されたゴムシート等の弾性シート)で支持し、溝が形成された部分の脆性材料基板裏面を上方から押圧して分断する。
【0019】
このような分断方法によって、分断された脆性材料基板の分断端面の垂直性を良好にすることができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面に係る脆性材料基板の分断方法は、脆性材料基板は、ガラスである。
【0021】
本発明の一側面に係る脆性材料基板の加工装置は、分断予定ラインに沿って脆性材料基板の表面に分断用の溝及び垂直クラックを形成する装置である。この装置は、脆性材料基板が載置されるテーブルと、脆性材料基板分断用のカッターと、カッター押圧機構と、移動機構と、を備えている。カッターはテーブルの上方に昇降自在に配置されている。カッター押圧機構は、カッターを所定の荷重で脆性材料基板表面に押し付ける。移動機構は、分断予定ラインに沿ってカッター及びテーブルを相対的に移動させて、脆性材料基板に分断用の溝を形成する。そして、カッター押圧機構は、分断用の溝にリブマークが発生せず、かつ溝の直下(基板の内部側)に垂直クラックが形成される大きさの荷重でカッターを脆性材料基板に押し付ける。
【0022】
本発明の別の側面に係る脆性材料基板の加工装置では、カッターは、回転軸を共有する2つの円錐台の底部が交わって円周稜線が形成された外周縁部を有するスクライビングホイールである。このスクライビングホイールは円周稜線に沿って円周方向に交互に形成された複数の切欠き及び突起を有する。
【0023】
本発明のさらに別の側面に係る脆性材料基板の加工装置では、スクライビングホイールの切欠きは、円周稜線の全周に10μm以上50μm以下(好ましくは10μm以上40μm以下)のピッチで形成されている。そして、切欠きの深さが0.5μm以上5.0μm以下(好ましくは1.0μm以上3.0μm以下)である。
【0024】
なお、切欠きの円周方向の長さが突起の円周方向長さよりも短いタイプと、長いタイプとがあり、切欠きの円周方向の長さが突起の円周方向の長さよりも相対的に短いタイプのスクライビングホイールでは相対的に垂直クラックが深く形成される傾向があり、切欠きの円周方向の長さが突起の円周方向の長さよりも想定的に長いタイプのスクライビングホイールでは相対的に分断後の基板の端面強度が高くなる傾向がある。
【発明の効果】
【0025】
以上のような本発明では、脆性材料基板の分断時に、特に狭いピッチで複数の分断用の溝(スクライブライン)を形成する場合や、交差する溝(スクライブライン)を形成する場合(クロススクライブ)に、加工品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による加工装置の概略構成図。
図2】本発明の一実施形態によるスクライビングホイールの側面図。
図3】スクライビングホイールの正面図。
図4図3の拡大部分図。
図5】分断工程を示す概略図。
図6】本発明の一実施形態による分断方法と従来の分断方法とを比較して示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[スクライブ装置]
図1に、ガラス基板(脆性材料基板の一例)に分断用の溝を形成するための装置を示している。スクライブ装置1は、テーブル2と、スクライビングホイール3と、押圧機構4と、移動機構5と、を備えている。
【0028】
テーブル2は、ガラス基板Gが載置され、載置されたガラス基板Gを真空吸着手段によって固定する。テーブル2は水平回転が可能である。
【0029】
スクライビングホイール3はスクライブヘッド10に装着される。スクライビングホイール3は、ガラス基板Gに押し付けた状態で転動させ、ガラス基板Gに分断用の溝及び垂直クラックを形成するものである。図2及び図3に示すように、スクライビングホイール3は、回転軸Rを共有する2つの円錐台Cの底部が交わって円周稜線3aが形成された外周縁部3bと、円周稜線3aに沿って円周方向に形成された複数の切欠き3c及び突起3dを有する。また、スクライビングホイール3の中央部には、貫通する孔3eが形成されている。
【0030】
図4に拡大して示すように、スクライビングホイール3の切欠き3cは、円周稜線3aの全周に10μm以上50μm以下(好ましくは10μm以上40μm以下)のピッチPで形成されている。切欠き3cの深さhは0.5μm以上5.0μm以下(特には1.0μm以上3.0μm以下)が好ましい。また、図4に示すスクライビングホイールでは、切欠き3cの円周方向の長さaは、突起3dの円周方向長さbよりも短くなるように形成されている。
【0031】
押圧機構4は、例えばエアシリンダや油圧シリンダによって構成されており、スクライブヘッド10に設けられている。この押圧機構4によって、スクライビングホイール3のガラス基板Gに対する押し付け荷重を調整することが可能である。押圧機構4としては、サーボモータを使用することもできる。
【0032】
移動機構5は、テーブル2及びスクライブヘッド10を相対的にX方向及びY方向に移動させるための機構である。なお、X方向は図1の左右方向であり、Y方向はX方向に直交する図1の紙面垂直方向である。
【0033】
移動機構5は、1対の案内レール15と、ボールねじ16と、ガイドバー17と、モータ18と、を有している。1対の案内レール15は、Y方向に延びて互いに平行に配置されており、テーブル2をY方向に移動可能に支持する。ボールねじ16は1対の案内レール15に沿ってテーブル2を移動させる。ガイドバー17はX方向に沿ってテーブル2の上方に架設されている。このガイドバー17にスクライブヘッド10がX方向に摺動可能に設けられている。モータ18はスクライブヘッド10をガイドバー17に沿って摺動させる。なお、ガイドバー17の上方には、テーブル2上のガラス基板Gに形成されたアライメントマークを認識する1対のCCDカメラ19が配置されている。
【0034】
[ガラス基板の分断方法]
ここでは、一例として、マザー基板にX及びY方向に交差する分断用の溝を形成し、この分断用の溝に沿ってマザー基板を分断し、複数の単位基板を得る方法について説明する。
【0035】
まず、マザー基板となるガラス基板Gをテーブル2上に載置する。テーブル2上におけるガラス基板Gの位置は、ガラス基板Gに形成されたアライメントマークをCCDカメラ19によって観察し、調整する。
【0036】
次に、移動機構5によってスクライブヘッド10をスクライブ開始位置に移動させ、さらに押圧機構4によってスクライビングホイール3をガラス基板Gの表面に所定の荷重で押し付ける。このときの押し付け荷重は、分断用の溝が形成される際にガラス基板Gの内部にリブマークが形成されない程度で、かつ溝の直下に垂直クラックが形成される荷重に設定する。なお、この例では、スクライブ開始位置は、ガラス基板Gの端縁から内部に入り込んだ位置である。
【0037】
次に、移動機構5を駆動して、例えばX方向の複数の分断予定ラインに沿ってガラス基板G又はテーブル2を移動させる。X方向の複数の分断予定ラインに沿って溝の形成が終了すると、次にY方向の複数の分断予定ラインにおいても同様に溝を形成する。なお、この例では、各スクライブ終了位置は、開始位置と同様に、ガラス基板Gの端縁から内部に入り込んだ位置である。
【0038】
以上のようにしてすべての分断予定ラインに沿って分断用の溝を形成した後、図5に示すように、ガラス基板の分断用の溝Lが形成された側の面を下方にし、分断用のテーブル22上に載置する。そして、上方、すなわち分断用の溝Lが形成された面と逆側の面に、所定の分断力Fを作用させる。これにより、分断用の溝Lに沿ってガラス基板Gが分断される。
【0039】
[実験例]
図6に、本発明の一実施形態による方法と従来の方法とによる実験例を示している。図6における「低浸透スクライブ」は本発明の一実施形態による方法を示し、「通常スクライブ」は従来の方法を示している。
【0040】
<条件>
実験条件は以下の通りである。
(1)ガラス基板
低浸透スクライブ及び通常スクライブともに以下のとおり。
材質:無アルカリガラス
厚み:0.5mm
(2)スクライビングホイール押し付け荷重
低浸透スクライブ:3N
通常スクライブ:16N
(3)スクライブラインのピッチ(クロススクライブ)
低浸透スクライブ及び通常スクライブともに3mm
以上の条件によって加工を行った結果は、以下の通りである。
【0041】
<分断用溝の形成工程の結果>
低浸透スクライブでは、スクライビングホイール3によって形成された塑性変形領域(溝)の深さは、10μmであり、この塑性変形領域の下方には直下に垂直クラックが形成され、リブマークは観察されなかった。垂直クラックは基板の表面から25μmの深さまで伸展していた。
【0042】
通常スクライブでは、スクライビングホイール3によって形成された溝の下方にリブマークが観察された。また、リブマークからさらに下方に深く垂直クラックが伸展していた。表面及び交点部分の拡大を観察すると、低浸透スクライブでは交点部分に特にチッピング等の欠陥は現れていないが、通常スクライブでは交点部分にチッピングが現れた。
【0043】
<分断工程の結果>
分断端面の「分離垂直性」を観察すると、低浸透スクライブではほぼ垂直に分断されているが、通常スクライブでは上面に近い部分が斜めにカットされており、垂直に分断されていないことがわかる。
【0044】
[まとめ]
以上の実験結果から、分断の加工品質の劣化を抑えるためには、以下の条件が好ましいことがわかった。
【0045】
(1)スクライビングホイールの押し付け荷重は、10N以下1N以上が好ましいが、さらに好ましい範囲は、6N以下1N以上である。
【0046】
(2)厚みが0.1mm以上1.0mm以下のガラス基板に対して、ガラス基板表面からの深さが基板の厚みの3%以上15%以下の塑性変形領域が形成される程度の押し付け荷重が好ましい。この場合は、リブマークは発生せず、しかも塑性変形領域の直下に垂直クラックが形成され、分断工程において容易に分断が可能である。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0048】
前記実施形態では、スクライブ用のカッターとしてスクライビングホイールを使用したが、他のカッターを用いてもよい。また、スクライビングホイールの諸元については、前記実施形態に限定されない。
【0049】
脆性材料基板としてガラス基板を例にとって説明したが、本発明の対象とする脆性材料基板はガラス基板に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1 スクライブ装置
2 テーブル
3スクライビングホイール
4 押圧機構
5 移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6