【実施例】
【0035】
以下に、本発明の吸音材について実施した各試験の方法、およびその結果を示す。
【0036】
[燃焼性試験および通気量測定]
燃焼性試験および通気量測定に使用した基材、表皮材、および難燃化材の仕様は以下の通りである。各実施例および比較例の吸音材には、下記仕様の基材および表皮材のみを積層したもの、およびその間に難燃化材を重ねたものを用いた。尚、本実施例および比較例で用いた難燃化材は熱融着性シートとしての機能も備えており、各実施例および比較例のうち、難燃化材を有する吸音材の基材および表皮材は難燃化材により接着されている。一方、難燃化材を有さない吸音材の基材および表皮材は、ニードルパンチにより一体化されている。
〔基材〕
繊維材料:ポリエステル繊維と低融点ポリエステル繊維との混合繊維
繊維径:φ14μm
目付:300g/m
2または500g/m
2
厚み:10mm
製法:ニードルパンチ
〔表皮材〕
繊維材料:オレフィン繊維
繊維径:φ9μm
目付:50g/m
2
厚み:1mm
製法:スパンボンド
〔難燃化材〕
繊維材料:ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、またはポリアミド繊維
目付:30g/m
2
厚み:0.1〜1mm
【0037】
各実施例および比較例に用いた吸音材の具体的な積層構造および仕様を以下に示す。尚、難燃化材の括弧内は難燃化材の繊維材料および厚みを意味し、基材の括弧内は基材の目付を意味している。
実施例1:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.2mm)/基材(300g/m
2)
実施例2:表皮材/難燃化材(ポリオレフィン繊維;0.2mm)/基材(300g/m
2)
実施例3:表皮材/難燃化材(ポリアミド繊維;0.2mm)/基材(300g/m
2)
実施例4:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.2mm)/基材(500g/m
2)
実施例5:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.5mm)/基材(300g/m
2)
比較例1:表皮材/基材(300g/m
2)
比較例2:表皮材/基材(500g/m
2)
比較例3:表皮材/基材(300g/m
2)/表皮材/基材(300g/m
2)
比較例4:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;1mm)/基材(300g/m
2)
比較例5:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.1mm)/基材(300g/m
2)
【0038】
燃焼性試験は、JIS D 1201「自動車,及び農林用のトラクタ・機械装置−内装材料の燃焼性試験方法」の試験方法に準拠して行った。燃焼速度は以下の(2)式により算出し、単位をmm/minとした。試験の結果、燃焼速度が50mm/min以下であった吸音材を「○」と、それよりも大きな値となったものを「×」と評価した。
B=(s/t)×60・・・(2)
B:燃焼速度(mm/min)
s:燃焼距離(mm)
t:燃焼時間(秒)
【0039】
通気量の測定は、JIS L 1096のフラジール形法通気性試験方法で行った。尚、測定には各実施例および比較例の吸音材を二枚重ねたものを使用した。上記各試験の結果を表1に示す。尚、比較例5の燃焼速度は測定点まで達しなかったため「0」とした。
【表1】
【0040】
[吸音性能試験]
吸音材の通気量に応じた吸音性能を評価するため、以下の試験体を用いて残響室法吸音率の測定を行った。表2と
図4にその測定結果を示す。
〔試験体〕
積層構造:表皮材/難燃化材/基材/表皮材/難燃化材/基材
通気量:5、27、50、2、および58cm
3/cm
2・s
【0041】
吸音率の試験はJIS A 1409「残響室法吸音率の測定方法」に準拠して行い、下記の(3)式に示す算出式により吸音率を求めた。試験は、
図5に示すように、パーソナルコンピュータ90にオーディオインターフェイス91を介して、パワーアンプ92を通して接続されたスピーカ93と、マイクロホンアンプ94を介して接続されたマイクロホン95が、所定の位置に配置されている残響室96を用いた。測定は、まず、残響室96内に試料97(各試験体)を配置しない状態で、スピーカ93から電気的なノイズ音を放射し、音を止め、音の減衰過程をマイクロホン95で測定した。次いで、測定された減衰曲線から音が−5〜−35dBの範囲で減衰する時間を残響時間Τ1として求めた。測定は中心周波数400Hzから5000Hzの1/3オクターブ帯域毎に行った。次いで、1m
2の試料97を残響室96の床面に配置し、上記と同様に残響時間Τ2を求め、下記(3)式により吸音率(αS)を算出した。尚、吸音率の値は、大きい程音を良く吸収することを意味する。
【0042】
αS(吸音率)=A/S・・・(3)
S:試料の面積(m
2)
A:等価吸音面積(m
2)であり、下記の(4)式により求めた。
A=55.3V/c・[1/Τ2−1/Τ1]・・・(4)
V:試料を入れない状態における残響室の容積(m
3)
c:空気中の音速(m/s)
Τ1:試料を入れない状態における残響室の残響時間(s)
Τ2:試料を入れた状態における残響室の残響時間(s)
【表2】
【0043】
[試験結果]
表2および
図5の吸音性能試験の結果から、吸音材は通気量が5〜50cm
3/cm
2・sのときに(試験体1〜3)、低周波から高周波までの広い音域にわたって高い吸音性能を示すことが確認された。また、通気量が5cm
3/cm
2・s未満になると(試験体4)、高周波域における吸音性能が低下し、通気量が50cm
3/cm
2・sを超えると(試験体5)、低周波域の吸音性能が低下することが確認された。これらの結果から、吸音材の吸音性能を最適化するためには、通気量5〜50cm
3/cm
2・sを目安として調整することがより望ましいと考えられる。
【0044】
次に、表1の燃焼性試験の結果を見ると、基材と表皮材の間にこれら基材および表皮材よりも密度の高い難燃化材が重ねられた吸音材(実施例1〜6)は、基材と表皮材のみを積層したもの(比較例1〜3)と比べて燃焼速度が半分以下に低下しており、難燃性の向上効果が認められた。表皮材よりも密度の低い難燃化材が用いられた吸音材(比較例4)でも難燃性の向上効果はある程度認められたが、本発明で要求される程度(燃焼速度:50mm/min以下)にまでは達していなかった。
【0045】
密度以外の条件を同じくする実施例1、5、および6の吸音材のうち、実施例1(燃焼速度:5mm/min)と実施例5(燃焼速度:30mm/min)とでは燃焼速度に25mm/minの開きがある。このことから、密度が少なくとも0.1g/cm
3程度になるまでは難燃性が比較的大きく向上することが推測される。よって、難燃化材の密度は0.1g/cm
3以上とすることがより望ましいと考えられる。
【0046】
一方、密度0.3g/cm
3の難燃化材を備える実施例6は、実施例1の吸音材よりもさらに燃焼速度が低下していることから、ポリエステル繊維以外を用いたもの(実施例2、3)も含め、難燃化材の密度を高めることでさらに燃焼速度を低下し得ることが予測される。ただし、実施例6の吸音材は通気量が3cm
3/cm
2・sであることから、上述する通気量の好適な範囲(5〜50cm3/cm2・s)からわずかに外れている。よって、難燃化材の密度は0.3g/cm
3未満であることがより望ましいと考えられる。
【0047】
以上、本発明の実施形態、実施例、および比較例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態等に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。