特許第6507681号(P6507681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6507681吸音材および吸音材付きワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507681
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】吸音材および吸音材付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20190422BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20190422BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20190422BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20190422BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20190422BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20190422BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20190422BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20190422BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20190422BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   G10K11/16 120
   G10K11/162
   B32B5/26
   B60R13/08
   B60R16/02 620Z
   D04H1/4374
   H01B7/00 301
   H01B7/295
   H01B7/42
   H02G3/04 012
   H02G3/04 037
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-16940(P2015-16940)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-142830(P2016-142830A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224648(JP,A)
【文献】 特開2005−263118(JP,A)
【文献】 特開2006−160197(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/174696(WO,A1)
【文献】 特開2002−069823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B60R 13/01−13/04
B60R 13/08
B60R 16/00−17/02
D04H 1/4374
G10K 11/00−13/00
H01B 7/00
H01B 7/295
H01B 7/42
H02G 3/00−3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材と、該基材よりも厚みの小さい不織布からなる表皮材と、が積層された吸音材であって、
前記基材と前記表皮材との間には、前記基材および前記表皮材よりも密度が高い不織布からなる難燃化材が配置されており、
前記基材、前記表皮材、および前記難燃化材の積層体の通気量は5〜50cm/cm・sであることを特徴とする吸音材。
【請求項2】
前記難燃化材は、可燃性繊維を主繊維とすることを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記難燃化材の繊維材料には、オレフィン系、ポリエステル系、またはポリアミド系の樹脂が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記難燃化材の密度は0.3g/cm未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項5】
複数枚の前記基材の間に、少なくとも1枚の前記表皮材が積層されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項6】
ワイヤーハーネスの軸方向の少なくとも一部が請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の吸音材に覆われることにより、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスとが一体化されていることを特徴とする吸音材付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を用いた吸音材、および該吸音材とワイヤーハーネスとが一体化された吸音材付きワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車室内の静粛性を高めることを目的として、車両内の騒音を発生させる装置の近傍には、グラスウール、ロックウール、多孔性セラミック、ウレタンフォーム、または屑綿などからなる遮音材や吸音材が設けられていた。しかし、遮音材や吸音材の施工性、人体への影響、リサイクル性、環境負荷、および軽量化等の観点から、現在ではこれら遮音材や吸音材には不織布が広く用いられるようになっている。下記特許文献1には、極細繊維を一部に含む不織布積層体からなる吸音材が開示されている。
【0003】
また、近年、自動車や電化製品等を中心に、高性能、高機能化が急速に進められている。これら自動車や電化製品が備える種々のエレクトロニクス装置を制御するためには、内部に多数の電線が配索される必要がある。これらの電線は一般にワイヤーハーネスの形態で使用される。ワイヤーハーネスとは、複数の電線を予め配線に必要な形態に組み上げておくもので、必要な分岐、端末へのコネクタ付け等を施した上で、テープ状、チューブ状またはシート状等、種々の保護材を電線束の外周に巻回することにより形成される。
【0004】
車両内に配索されたワイヤーハーネスは、走行時の振動などにより車体や車両内の他の部材等と接触して騒音を発生させることがある。そのため、ワイヤーハーネスの外周には、他の部材等との接触による騒音を抑制するための緩衝材が備えられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−161465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今の自動車市場におけるEV(Electric Vehicle)技術の普及に伴い、車室内の静粛性に対するニーズが高まっている。車室内の静粛性を向上させるためには、ガソリン車からの課題であったロードノイズや風切り音といった、低周波から高周波に及ぶ騒音や、モーターから発生する5000Hz以上の高周波域における騒音について対策を施す必要がある。そのような対策の一環として、騒音の低減が考慮された車両設計や、低周波から高周波までの広い音域の騒音を吸収する吸音材、金属部品と同等の遮音性能を有する樹脂部材など、様々な手法が考案されている。
【0007】
車両内には、エンジンなど高熱を発する装置も搭載される。このような装置の近傍には、不燃性または十分な難燃性を備える材料からなる吸音材が配設される。しかし、例えばエンジンルーム内において通常は高温にならない部位であっても、ラジエータの故障などにより、一時的に異常な高温にさらされる事態も想定されるべきである。特に不織布からなる吸音材は、その空隙を多く含む繊維構造により吸音特性を得ていることから、万が一着火した場合に燃え広がりやすいという欠点を有する。そのため、車両内に搭載される吸音材は、高熱を発する装置の近傍に配置されるものに限らず、そのコストや吸音性能とともに難燃性についても考慮されている必要がある。通常、可燃性の繊維からなる吸音材を用いる場合には、吸音材を構成する不織布に難燃性繊維を配合したり、表面に難燃剤を塗布するなどして難燃性を付与するが、かかる加工により吸音材の吸音性能が低下することがある。このように可燃性繊維からなる吸音材は、その吸音性能の維持と難燃性の付与との両立が困難であるという問題がある。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、不織布が積層されてなる吸音材について、かかる不織布が可燃性繊維からなる場合であっても、その吸音性能の維持と難燃性の付与との両立が可能な構造を備える吸音材、およびその吸音材をワイヤーハーネスと一体化した吸音材付きワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸音材は、不織布からなる基材と、該基材よりも厚みの小さい不織布からなる表皮材と、が積層された吸音材であって、前記基材と前記表皮材との間には、前記基材および前記表皮材よりも密度が高い不織布からなる難燃化材が配置されることを要旨とする。
【0010】
前記吸音材において、前記基材、前記表皮材、および前記難燃化材の積層体の通気量は5〜50cm/cm・sであることが好ましい。
【0011】
前記吸音材において、前記難燃化材の密度は0.3g/cm未満であることが好ましい
【0012】
前記吸音材において、複数枚の前記基材の間に、少なくとも1枚の前記表皮材が積層される構成としても良い。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸音材付きワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスの軸方向の少なくとも一部が前記吸音材に覆われることにより、前記吸音材と前記ワイヤーハーネスとが一体化されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る吸音材および吸音材付きワイヤーハーネスによれば、不織布が積層されてなる吸音材について、かかる不織布が可燃性繊維からなる場合であっても、その吸音性能の維持と難燃性の付与との両立が可能な構造を備える吸音材、およびその吸音材をワイヤーハーネスと一体化した吸音材付きワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】吸音材の外観斜視図および断面図である。
図2】吸音材の他の実施形態の外観斜視図である。
図3】吸音材付きワイヤーハーネスの外観斜視図である。
図4】残響室法吸音率試験の測定装置の説明図である。
図5】残響室法吸音率試験の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1(a)は本発明における吸音材の一例を示す外観斜視図であり、図1(b)は、図1(a)における吸音材1のA−A断面図である。本発明の吸音材および吸音材付きワイヤーハーネスは自動車等の車両用吸音材として好適に用いることができ、自動車のダッシュボードやドアの内部空間に配設されることにより、自動車のエンジンルームや車外などから車室へと侵入する騒音を遮断する。
【0017】
本実施形態における吸音材1は、いずれも不織布からなる基材21、表皮材22、および難燃化材3により構成される不織布積層体である。基材21および表皮材22は厚み方向に重ねられ、難燃化材3はその間に重ねられる。表皮材22は基材21よりも目付および厚みの小さい不織布からなり、難燃化材3は表皮材22および基材21よりも密度の高い不織布からなる。尚、図1に示される吸音材1は、各層を判別しやすくするため、表皮材22および難燃化材3が実際よりもやや厚く描かれている。図2図3についても同様である。
【0018】
発明者が行った試験の結果から、基材21および表皮材22の間に、それらよりも構成繊維の密度が高い難燃化材3が配置されることにより、基材21または表皮材22に着火した場合でも、その延焼が難燃化材3の層で遅滞し、吸音材1全体としての難燃性が向上する効果が認められた。尚、本発明でいう「難燃性」とは、遅燃性や自己消火性を含む火炎の伝ぱを妨げる性質を総称した、延焼のしにくさを意味している。
【0019】
吸音材1は、その吸音性能を最適化するため、通気量が5〜50cm/cm・sの範囲内となるように調整されている。尚、本発明における「通気量」とは、JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」の8.26.1Aの「フラジール形法通気性試験」方法で測定した値をいう。フラジール形法通気性試験は、市販のフラジール形試験機を用いて測定することができる。
【0020】
吸音材1は、基材21および表皮材22の間に、さらに難燃化材3を配置することにより難燃性を向上させる構造となっていることから、基材21および表皮材22に可燃性の繊維が用いられた場合であっても、別途吸音材1に難燃性を付与することが可能とされている。また、かかる構造により、基材21や表皮材22自体に対する難燃性の要求が軽減され、基材21や表皮材22に用いることのできる繊維の自由度が高くなることから、吸音性能の要求を満足させることが容易となる。さらに、吸音材1の表面に難燃剤を塗布する必要もないことから、難燃剤により吸音材1の吸音性能が損なわれるおそれもない。
【0021】
難燃化材3は0.2mmの薄膜状の不織布であり、それ自体が熱融着性シートとしての機能を備えている。基材21および表皮材22は熱融着性シートである難燃化材3に接着されることにより、吸音材1として一体化されている。尚、難燃化材3は必ずしも熱融着性シートである必要はなく、これら基材21、表皮材22、および難燃化材3は、ニードルパンチやステープラなど、他の手段により一体化されても良い。また、本実施形態では難燃化材3に熱融着性シートとしての機能を持たせる便宜上、難燃化材3を薄膜状の不織布としているが、上記通気性の要件を満たす範囲内であれば難燃化材3に厚みを持たせることもできる。
【0022】
基材21は、目付が100〜1000g/m、厚みが1.0〜50.0mmの範囲内であることが望ましい。目付が大きくなると全周波数帯の吸音率が高くなり、小さくなると全周波数帯の吸音率が低くなる傾向がある。また、厚みが大きくなると低周波数帯の吸音性能が高くなり、小さくなると高周波数帯の吸音特性が高くなる傾向がある。基材21の厚みは、吸音しようとする周波数帯に応じて適宜調整することができる。
【0023】
表皮材22は、目付が10〜400g/m、厚みが0.1〜4.0mmの範囲内であることが望ましい。表皮材22の厚みを基材21よりも小さくすることにより、表皮材22は基材21よりも高周波域の吸音特性が高くなり、幅広い周波数帯の騒音を吸音することができるようになる。ただし、目付および厚みが上記範囲よりも小さくなると、表皮材22の吸音材としての吸音効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。
【0024】
難燃化材3の目付および厚みは以下の(1)式により算出される密度ρが、基材21および表皮材22の密度よりも大きく、かつ、0.3g/cm未満となるように成形されている。尚、本発明における「密度」とは、かかる(1)式により算出される密度ρのことをいう。
ρ=(W/100)×(10/T)・・・(1)
ρ:密度(g/cm
W:JIS L 1913に準じて測定した単位面積当たりの質量(目付)(g/m
T:0.1kPaの荷重下での不織布の厚さ(mm)
【0025】
上記はあくまで吸音材1の好適な構成であり、表皮材22および基材21の間にこれら不織布よりも密度の高い難燃化材3が配置されていれば吸音材1の難燃性の向上効果は認められる。また、吸音材1は必ずしも表皮材22および基材21を一枚ずつ重ねた構成で用いられる必要はなく、図2に示されるように、二枚の基材21の間に表皮材22を積層させた構成で用いても良い。また、表皮材22の積層位置も、必ずしも最外層(表皮)である必要はない。
【0026】
基材21および表皮材22に使用可能な繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ等が挙げられる。
【0027】
難燃化材3の繊維材料としては、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系の繊維を用いることが望ましい。高い難燃性を備える繊維材料を難燃化材3に用いることにより、吸音材1全体としての難燃性を効果的に向上させることができる。
【0028】
基材21の繊維径は4〜100μmの範囲内であることが望ましく、表皮材22の繊維径は1〜50μmの範囲内であることが望ましい。繊維径が細い方が不織布としての吸音性能は高くなるが、細くなりすぎると不織布が脆くなるおそれがある。
【0029】
また、基材21および表皮材22の製法としては、スパンボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、メルトブローン法等を用いることができる。
【0030】
難燃化材3の繊維径や製法は特に限定されないが、基材21および表皮材22の吸音性能を阻害しない繊維構成とすべきである。
【0031】
基材21、表皮材22、および難燃化材3の繊維の断面形状は特に限定されず、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドバイサイド型や、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用しても良い。
【0032】
図3は吸音材付きワイヤーハーネスを示す外観斜視図である。図3(a)の吸音材付きワイヤーハーネス5は、ワイヤーハーネス4の軸方向の一部が二枚の吸音材1により挟まれた状態で一体化されたものであり、図4(b)の吸音材付きワイヤーハーネス6は、ワイヤーハーネス4の軸方向の一部が一枚の吸音材1に巻装されることにより一体化されたものである。これら吸音材1は端部が厚み方向に重ねられ、該重ねられた部分がステープラ、接着剤、またはタグピンなどで連結されることによりワイヤーハーネス4に固定されている。
【0033】
ワイヤーハーネス4としては、例えば、芯線の周囲を絶縁体で被覆した電線を複数本束ねたものや、一本の電線のみで構成されたもの等が挙げられる。
【0034】
吸音材1は、ワイヤーハーネス4の一部を挟んで覆うことにより、吸音材としての役割のみならず、ワイヤーハーネス4の緩衝材としての機能も果たしている。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の吸音材について実施した各試験の方法、およびその結果を示す。
【0036】
[燃焼性試験および通気量測定]
燃焼性試験および通気量測定に使用した基材、表皮材、および難燃化材の仕様は以下の通りである。各実施例および比較例の吸音材には、下記仕様の基材および表皮材のみを積層したもの、およびその間に難燃化材を重ねたものを用いた。尚、本実施例および比較例で用いた難燃化材は熱融着性シートとしての機能も備えており、各実施例および比較例のうち、難燃化材を有する吸音材の基材および表皮材は難燃化材により接着されている。一方、難燃化材を有さない吸音材の基材および表皮材は、ニードルパンチにより一体化されている。
〔基材〕
繊維材料:ポリエステル繊維と低融点ポリエステル繊維との混合繊維
繊維径:φ14μm
目付:300g/mまたは500g/m
厚み:10mm
製法:ニードルパンチ
〔表皮材〕
繊維材料:オレフィン繊維
繊維径:φ9μm
目付:50g/m
厚み:1mm
製法:スパンボンド
〔難燃化材〕
繊維材料:ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、またはポリアミド繊維
目付:30g/m
厚み:0.1〜1mm
【0037】
各実施例および比較例に用いた吸音材の具体的な積層構造および仕様を以下に示す。尚、難燃化材の括弧内は難燃化材の繊維材料および厚みを意味し、基材の括弧内は基材の目付を意味している。
実施例1:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.2mm)/基材(300g/m
実施例2:表皮材/難燃化材(ポリオレフィン繊維;0.2mm)/基材(300g/m
実施例3:表皮材/難燃化材(ポリアミド繊維;0.2mm)/基材(300g/m
実施例4:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.2mm)/基材(500g/m
実施例5:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.5mm)/基材(300g/m
比較例1:表皮材/基材(300g/m
比較例2:表皮材/基材(500g/m
比較例3:表皮材/基材(300g/m)/表皮材/基材(300g/m
比較例4:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;1mm)/基材(300g/m
比較例5:表皮材/難燃化材(ポリエステル繊維;0.1mm)/基材(300g/m
【0038】
燃焼性試験は、JIS D 1201「自動車,及び農林用のトラクタ・機械装置−内装材料の燃焼性試験方法」の試験方法に準拠して行った。燃焼速度は以下の(2)式により算出し、単位をmm/minとした。試験の結果、燃焼速度が50mm/min以下であった吸音材を「○」と、それよりも大きな値となったものを「×」と評価した。
B=(s/t)×60・・・(2)
B:燃焼速度(mm/min)
s:燃焼距離(mm)
t:燃焼時間(秒)
【0039】
通気量の測定は、JIS L 1096のフラジール形法通気性試験方法で行った。尚、測定には各実施例および比較例の吸音材を二枚重ねたものを使用した。上記各試験の結果を表1に示す。尚、比較例5の燃焼速度は測定点まで達しなかったため「0」とした。
【表1】
【0040】
[吸音性能試験]
吸音材の通気量に応じた吸音性能を評価するため、以下の試験体を用いて残響室法吸音率の測定を行った。表2と図4にその測定結果を示す。
〔試験体〕
積層構造:表皮材/難燃化材/基材/表皮材/難燃化材/基材
通気量:5、27、50、2、および58cm/cm・s
【0041】
吸音率の試験はJIS A 1409「残響室法吸音率の測定方法」に準拠して行い、下記の(3)式に示す算出式により吸音率を求めた。試験は、図5に示すように、パーソナルコンピュータ90にオーディオインターフェイス91を介して、パワーアンプ92を通して接続されたスピーカ93と、マイクロホンアンプ94を介して接続されたマイクロホン95が、所定の位置に配置されている残響室96を用いた。測定は、まず、残響室96内に試料97(各試験体)を配置しない状態で、スピーカ93から電気的なノイズ音を放射し、音を止め、音の減衰過程をマイクロホン95で測定した。次いで、測定された減衰曲線から音が−5〜−35dBの範囲で減衰する時間を残響時間Τ1として求めた。測定は中心周波数400Hzから5000Hzの1/3オクターブ帯域毎に行った。次いで、1mの試料97を残響室96の床面に配置し、上記と同様に残響時間Τ2を求め、下記(3)式により吸音率(αS)を算出した。尚、吸音率の値は、大きい程音を良く吸収することを意味する。
【0042】
αS(吸音率)=A/S・・・(3)
S:試料の面積(m
A:等価吸音面積(m)であり、下記の(4)式により求めた。
A=55.3V/c・[1/Τ2−1/Τ1]・・・(4)
V:試料を入れない状態における残響室の容積(m
c:空気中の音速(m/s)
Τ1:試料を入れない状態における残響室の残響時間(s)
Τ2:試料を入れた状態における残響室の残響時間(s)
【表2】
【0043】
[試験結果]
表2および図5の吸音性能試験の結果から、吸音材は通気量が5〜50cm/cm・sのときに(試験体1〜3)、低周波から高周波までの広い音域にわたって高い吸音性能を示すことが確認された。また、通気量が5cm/cm・s未満になると(試験体4)、高周波域における吸音性能が低下し、通気量が50cm/cm・sを超えると(試験体5)、低周波域の吸音性能が低下することが確認された。これらの結果から、吸音材の吸音性能を最適化するためには、通気量5〜50cm/cm・sを目安として調整することがより望ましいと考えられる。
【0044】
次に、表1の燃焼性試験の結果を見ると、基材と表皮材の間にこれら基材および表皮材よりも密度の高い難燃化材が重ねられた吸音材(実施例1〜6)は、基材と表皮材のみを積層したもの(比較例1〜3)と比べて燃焼速度が半分以下に低下しており、難燃性の向上効果が認められた。表皮材よりも密度の低い難燃化材が用いられた吸音材(比較例4)でも難燃性の向上効果はある程度認められたが、本発明で要求される程度(燃焼速度:50mm/min以下)にまでは達していなかった。
【0045】
密度以外の条件を同じくする実施例1、5、および6の吸音材のうち、実施例1(燃焼速度:5mm/min)と実施例5(燃焼速度:30mm/min)とでは燃焼速度に25mm/minの開きがある。このことから、密度が少なくとも0.1g/cm程度になるまでは難燃性が比較的大きく向上することが推測される。よって、難燃化材の密度は0.1g/cm以上とすることがより望ましいと考えられる。
【0046】
一方、密度0.3g/cmの難燃化材を備える実施例6は、実施例1の吸音材よりもさらに燃焼速度が低下していることから、ポリエステル繊維以外を用いたもの(実施例2、3)も含め、難燃化材の密度を高めることでさらに燃焼速度を低下し得ることが予測される。ただし、実施例6の吸音材は通気量が3cm/cm・sであることから、上述する通気量の好適な範囲(5〜50cm3/cm2・s)からわずかに外れている。よって、難燃化材の密度は0.3g/cm未満であることがより望ましいと考えられる。
【0047】
以上、本発明の実施形態、実施例、および比較例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態等に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 吸音材
21 基材
22 表皮材
3 難燃化材
4 ワイヤーハーネス

図1
図2
図3
図4
図5