(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態に係る車両用軸受の軌道輪は、軌道面を有する軌道部と、前記軌道部から前記軌道部の径方向外方に突出するフランジとを備える。前記軌道部は、金属で形成された金属軌道部と、炭素繊維強化樹脂で形成された第1樹脂部とを含む。前記フランジは、炭素繊維強化樹脂で形成された第2樹脂部を含む。前記金属軌道部は、前記軌道面を含む。前記第1樹脂部は、前記金属軌道部に対して固定され、前記軌道部の軸方向に延びて形成される。前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部から前記軌道部の径方向外側に延びて形成される。前記第1樹脂部と前記第2樹脂部は、少なくとも一部において連続している(第1の構成)。
【0011】
第1の構成によれば、フランジ及び軌道部が、炭素繊維強化樹脂を含む。このため、軌道輪を軽量化することができる。また、軌道部における炭素繊維強化樹脂である第1樹脂部と、フランジの炭素繊維強化樹脂である第2樹脂部とが、少なくとも一部において連続しているので、フランジが軌道部から外れにくい。すなわち、軌道部の一部を炭素繊維強化樹脂として、この炭素繊維強化樹脂をフランジと一体的に形成することにより、フランジの強度を向上させることができる。そのため、フランジのサイズの増加や、フランジを固定する固定部材の追加等によって強度を向上させる場合に比べて、強度向上のための構成要素の増加が少なくなる。その結果、軌道輪の構成要素の増加を抑えながらも、炭素繊維を含むフランジの強度を確保することができる。
【0012】
前記フランジにおける前記第2樹脂部は、前記フランジから前記軌道部の軸方向の一方側において前記第1樹脂部と連続している第1部分と、前記一方側と反対側において前記第1樹脂部と連続している第2部分とを含んでもよい(第2の構成)。
【0013】
第2の構成によれば、第2樹脂部は、フランジに対して、軌道部の軸方向の一方側及びその反対側、すなわち両側において、第1樹脂部と連続して形成される。これにより、フランジは、さらに軌道部から外れにくくなる。
【0014】
前記第2樹脂部は、前記第1部分と前記第2部分との間に、前記軌道部の径方向外方へ延びる第3部分を含む構成とすることができる(第3の構成)。
【0015】
第3の構成によれば、フランジの第3部分の分だけフランジの幅を大きくすることができる。そのため、フランジの強度を増すことができる。また、第3部分によりフランジのサイズを調整することが可能になる。
【0016】
前記第1樹脂部及び前記第2樹脂部は、炭素繊維を樹脂に含浸させて形成された層が積層して形成されてもよい。この場合、前記第1樹脂部では、前記炭素繊維が前記軌道部の径方向に対して垂直になるよう前記層が積層され、前記第2樹脂部では、前記炭素繊維が前記軌道部の軸方向に対して垂直となるよう前記層が積層される構成とすることができる。さらに、前記第1樹脂部に積層された層のうち少なくとも1つは、前記第2樹脂部に積層された層のいずれかにつながってもよい(第4の構成)。
【0017】
第4の構成によれば、フランジでは、炭素繊維が軌道部の軸方向に垂直になるよう炭素繊維の層が積層され、軌道部では、炭素繊維が軌道部の径方向に垂直になるよう炭素繊維の層が積層される。フランジの層と軌道部の層は、少なくとも1つの層においてつながってので、フランジの層と軌道部の層を、連続した1つの層で形成することができる。これにより、例えば、フランジに対して軌道部の軸方向にかかる荷重に対する強度をより強くすることができる。
【0018】
実施の形態に係る車両用軸受は、軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の外周に設けられ、軌道面を有する外輪と、前記内方部材の軌道面と前記外輪の軌道面との間に回転可能な状態で配置される転動体とを備える。前記内方部材又は前記外輪の少なくとも一方は、軌道面を有する軌道部と、前記軌道部から前記軌道部の径方向外方に突出するフランジとを備える。前記軌道部は、金属で形成された金属軌道部と、炭素繊維強化樹脂で形成された第1樹脂部とを含む。前記フランジは、炭素繊維強化樹脂で形成された第2樹脂部を含む。前記金属軌道部は、前記軌道面を含む。前記第1樹脂部は、前記金属軌道部に対して固定され、前記軌道部の軸方向に延びて形成される。前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部から前記軌道部の径方向外側に延びて形成される。前記第1樹脂部と前記第2樹脂部は、少なくとも一部において連続している。
【0019】
<実施形態>
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
【0020】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る車両用軸受10の軸中心線を通る平面における断面図である。
図1に示す軸受10において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。以後、軸受10において、車体により近い位置を軸方向の内方、車体からより遠い位置を軸方向の外方と称する場合がある。
【0021】
図1に示すように、軸受10は、外輪1と、内方部材2と、複数の転動体3,4とを備える。外輪1及び内方部材2は、軸受10の軌道輪である。
図1に示す例では、外輪1は、固定輪であり、内方部材2は、外輪の内周側に設けられる回転軸(回転輪)である。転動体3,4は、外輪1と内軸2との間に回転可能な状態で配置される。
【0022】
(外輪の構成例)
外輪1は、軌道部11と、フランジ12とを備える。軌道部11は、筒状をなす。フランジ12は、軌道部11の外周面から軌道部11の径方向外方に突出している。フランジ12には、懸架装置(図示略)が取り付けられる。
【0023】
軌道部11は、例えば鋼等の金属で形成された金属軌道部111と、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)で形成された第1樹脂部11a,11bを含む。第1樹脂部11a,11bは、金属軌道部111と接して軌道部11の軸方向に延びる。第1樹脂部11a,11bは、金属軌道部111に対して固定されている。第1樹脂部11a,11bは、軌道部11の径方向に垂直な面に沿って延びる炭素繊維を含む樹脂で形成される。
【0024】
第1樹脂部11a,11b及び金属軌道部111は、いずれも筒状をなす。第1樹脂部11a,11bは、金属軌道部111の外周面に設けられる。すなわち、第1樹脂部11a,11bの径方向内方には、金属軌道部111が配置される。第1樹脂部11a、11bに、金属軌道部111が挿入されている。第1樹脂部11a,11bの内周面の少なくとも一部は、金属軌道部111の外周面に接している。第1樹脂部11a,11bは、金属軌道部111と同軸に配置される。金属軌道部111の内周面には、転動体3,4と接する軌道面113,114が設けられる。
【0025】
フランジ12は、炭素繊維強化樹脂で形成され、軌道部11の径方向外側に延びる第2樹脂部12a,12bを含む。第2樹脂部12a,12bは、軌道部11の軸方向に垂直な面に沿って延びる炭素繊維を含む樹脂で形成される。第2樹脂部12a,12bと軌道部11の第1樹脂部11a,11bとは、少なくとも一部において連続した構成とすることができる。
【0026】
第1樹脂部と第2樹脂部とが連続している構成としては、例えば、第1樹脂部の炭素繊維の少なくとも一部が第2樹脂部の炭素繊維とつながっている構成とすることができる。或いは、第1樹脂部の少なくとも一部を構成する炭素繊維強化樹脂の層が、第2樹脂部の炭素繊維強化樹脂の層とつながっている構成とすることができる。具体的には、第1樹脂部と第2樹脂部の双方に渡って配置される炭素繊維強化樹脂のシートが少なくとも1つ存在するよう構成することができる。
【0027】
図1に示す例では、フランジ12は、軌道部11の軸方向の一方の側すなわち軸方向の外方に配置される第2樹脂部12a(第1部分の一例)と、軌道部11の軸方向の他方の側すなわち軸方向の内方に配置される第2樹脂部12b(第2部分の一例)とを含む。第1樹脂部は、軸方向においてフランジ12より外方に配置される第1樹脂部11aと、フランジ12より内方に配置される第1樹脂部11bとを含む。
【0028】
第2樹脂部12aは、フランジ12の軸方向の一方側において第1樹脂部11aと連続している。第2樹脂部12bは、フランジ12の軸方向の他方側において第1樹脂部11bと連続している。すなわち、フランジ12の一方の側において、第1樹脂部11aと第2樹脂部12aは、一体的に形成された炭素繊維強化樹脂で形成されている。フランジ12の他方の側においても、第1樹脂部11bと第2樹脂部12bは、一体的に形成された炭素繊維強化樹脂で形成されている。このように、フランジ12の軸方向における両側において、金属軌道部111に接して軌道部11の軸方向に延びる第1樹脂部11a,11bと、軌道部11の径方向に延びるフランジ12の第2樹脂部12a,12bが一体的に連続した構成とすることで、フランジ12の強度を向上させることができる。
【0029】
第1樹脂部11a、11bの軌道部11の軸方向における幅は、金属軌道部111の幅より大きくなっている。すなわち、第1樹脂部11a、11bは、金属軌道部111の軸方向における端部を覆っている。これにより、金属軌道部111と第1樹脂部11a、11bとが互いに外れにくくすることができる。
【0030】
具体的には、軌道部11の軸方向において、第1樹脂部11aの外方端は、金属軌道部111の外方端よりも外方に配置されている。よって、軌道部11の軸方向において、第1樹脂部11aの外方端部の内周面は、金属軌道部111の外方端部の外周面に接していない。ただし、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の外方端は、第1樹脂部11aの外方端と同じ位置、又は、第1樹脂部11aより外方に配置されていてもよい。
【0031】
軌道部11の軸方向において、第1樹脂部11bの内方端は、金属軌道部111の内方端よりも内方に配置されている。よって、軌道部11の軸方向において、第1樹脂部11bの内方端部の内周面は、金属軌道部111の内方端部の外周面に接していない。ただし、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の内方端は、第1樹脂部11bの内方端と同じ位置、又は、第1樹脂部11bより内方に配置されていてもよい。
【0032】
第1樹脂部11a,11b及び第2樹脂部12a,12bを形成する炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維によって樹脂を強化した複合材料である。母材となる樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ポリイミド等の熱硬化性樹脂又は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記炭素繊維強化樹脂は、例えば、炭素繊維プリプレグを用いて形成することができる。炭素繊維プリプレグは、炭素繊維に樹脂を含浸させてシート状に形成したものである。炭素繊維プリプレグは、例えば、炭素繊維を一方向に向くように平面状に配置したものを樹脂で結束したものとすることができる。又は、炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を平面状に網組して樹脂で結束したものであってもよい。炭素繊維プリプレグを用いた第1樹脂部11a,11b及び第2樹脂部12a,12bの形成方法については、後述する。
【0034】
図1においては図示していないが、フランジ12は、複数の締結孔を有してもよい。各締結孔には、懸架装置(図示略)等をフランジ12に取り付けるため、ボルト等の締結部材が挿入される。
【0035】
(内方部材の構成例)
内方部材2は、鋼等の金属で構成される。内方部材2は、ハブ輪21と内輪212と含む。ハブ輪21は、軌道面214を有する軌道部211と、フランジ22とを備える。フランジ22には、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等が取り付けられる。
【0036】
ハブ輪21は、外輪1に挿入されている。より具体的には、ハブ輪21は、外輪1の軌道部11の径方向内方に配置されている。ハブ輪21は、軌道部11と同軸に配置される。
【0037】
ハブ輪21の軌道部211は、筒状をなし、軸受10の軸方向に延びる。内輪212は、ハブ輪21の外周面に固定されている。内輪212は、ハブ輪21の軸方向の内方端部に配置される。内輪212は、軸受10の軸を中心とする環状をなす。内輪212は、部材本体211と同軸に配置される。
【0038】
ハブ輪21の軌道部211の外周面及び内輪212の外周面には、それぞれ、軌道面213,214が設けられている。軌道面213,214は、それぞれ、軸受10の軸を中心とする環状をなす。軌道面213は、軸受10の軸方向において、軌道面214よりも内方に配置される。軌道面213,214は、それぞれ、外輪1が有する軌道面113,114と対向する。
【0039】
フランジ22は、軌道部211の外周面から軌道部211の径方向外方に突出している。フランジ22は、軸受10の軸方向において、外輪1のフランジ12よりも外方に位置している。フランジ22は、複数の締結孔222を有する。各締結孔222には、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等をフランジ22に取り付けるため、ボルト等の締結部材が挿入される。
【0040】
複数の転動体3,4は、外輪1と内方部材2との間に配置される。より具体的には、複数の転動体3は、外輪1が有する軌道面113と、内輪212が有する軌道面213との間に配置される。複数の転動体4は、外輪1が有する軌道面114と、ハブ輪21の軌道部211が有する軌道面214との間に配置されている。
【0041】
(外輪の製造方法)
以下、外輪1の製造方法について説明する。まず、鋼等の金属製且つ筒状の金属軌道部111を準備する。次に、金属軌道部111の外周面上に、複数の炭素繊維プリプレグを積層する。各炭素繊維プリプレグは、炭素繊維を含む樹脂の層である。各炭素繊維プリプレグにおいて、炭素繊維は各層の面内方向に延びて形成される。
【0042】
金属軌道部111の外周面において、各炭素繊維プリプレグは、金属軌道部111の径方向に積層される。積層される複数の炭素繊維プリグレグの少なくとも一部は、フランジ12を形成する部分で折り曲げられ、折り曲げられた炭素繊維プリグレグの面が軌道部11の軸方向に垂直な面と平行になる状態で固定される。これにより、金属軌道部111の外周面上に積層される炭素繊維プリプレグの少なくとも一部の層は、フランジ12を形成する炭素繊維プリプレグと連続した構成とすることができる。
【0043】
このように、炭素繊維プリプレグを、金属軌道部111上で、径方向に垂直な面と軸方向に垂直な面を有する状態で固定したものを、複数、積層することができる。これにより、金属軌道部111の径方向に垂直な方向に積層される部分と、軸方向に垂直な方向に積層される部分が連続した状態で、炭素繊維プリプレグを積層することができる。金属軌道部111の径方向に垂直な方向に積層される部分は、第1樹脂部11a,11bを形成する。軸方向に垂直な方向に積層される部分は、第2樹脂部12a,12bを形成する。ただし、炭素繊維プリプレグの積層方向及び配置は特に限定されるものではない。
【0044】
次に、炭素繊維プリプレグが積層された金属軌道部111に所定の型及びバキュームバッグを装着し、真空引きを行う。その後、オートクレーブによって加熱及び加圧を施すことにより、
図1に示す外輪1を製造することができる。
【0045】
(実施形態の効果)
実施形態1に係る軸受10において、外輪1のフランジ12に含まれる第2樹脂部12a,12bは、炭素繊維強化樹脂で構成されている。よって、外輪1を軽量化することができる。
【0046】
外輪1において、軌道部11は、金属軌道部111と、第1樹脂部11a,11bとを含む。軌道部11の一部である第1樹脂部11a,11bは、炭素繊維強化樹脂で構成されている。このため、外輪1をさらに軽量化することができる。一方、軌道面113,114を有する金属軌道部111は金属で構成されている。このため、軌道面113,114に要求される耐高面圧及び耐摩耗性を確保することもできる。
【0047】
また、軌道部11の一部を形成する炭素繊維強化樹脂の層は、外輪1の軸方向における一方端から軸方向に沿って延び、途中で直角に折り曲げられ、軌道部11の軸方向に垂直な面と平行になるように固定されている。さらに、外輪の軸方向における他方端からも軌道部11の一部を形成する炭素繊維強化樹脂の層が伸び、途中で直角に折り曲げられて軌道部11の軸方向に垂直な面と平行になるように固定されている。この軸方向に垂直な面と平行に延びる炭素繊維強化樹脂が、フランジ12を形成している。外輪1の両端からそれぞれ延びてきた炭素繊維強化樹脂の層は、フランジ12の先端まで連続してつながっている。軌道部11とフランジ12に渡る連続的な炭素繊維強化樹脂の層により、フランジ12の強度を確保することができる。
【0048】
以上のとおり、本実施形態では、軌道輪に軽量材を用いることにより懸念される剛性の低下を、炭素繊維強化樹脂の配向により対策することができる。そのため、例えば、フランジの厚みの増加、又は、リブの追加等、構成要素の追加を抑えることができる。一例として、第1樹脂部11a,11bを設けずに、フランジ12の部分のみを炭素繊維強化樹脂で形成する場合、強度を確保するために構成要素の追加が必要となり得る。例えば、フランジの厚みの増加、フランジの炭素繊維強化樹脂を金属部材に固定するためのナット等固定部材の追加、又は、金属と炭素繊維強化樹脂との固着面のローレットセレーション加工等が必要になり得る。これに対して、本実施形態においては、強度確保のためのサイズ、重量又は工程の増加が略不要となる。
【0049】
次に、
図2〜
図4を用いて、実施形態1における外輪1の変形例を説明する。
図2〜
図4は、外輪1の軸中心線を通る平面における断面図である。
図2〜4に示す外輪1において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。以後、外輪1において、車体により近い位置を軸方向の内方、車体からより遠い位置を軸方向の外方と称する場合がある。
【0050】
(変形例1)
図2は、
図1に示す外輪1の変形例を示す断面図である。
図2に示す例では、軌道部11の軸方向における一方の端(外方端)から延びた第1樹脂部11aが、軌道部11の径方向に延びる第2樹脂部12aと連続してつながっている。軌道部11の他方の端(内方端)から延びた第1樹脂部11bは、第2樹脂部12aと連続していない。このように、フランジ12の軸方向の一方の側の第1樹脂部11aがフランジ12を形成する第2樹脂部12aと一体的に設けられる構成とすることができる。
【0051】
これにより、フランジ12の他方の側における構成の設計自由度を高めることができる。例えば、図示しないが、フランジ12の他方の側を、金属軌道部111の外周から径方向外方に延びる金属支持部により支持する構成にすることができる。
【0052】
図2に示す例では、第2樹脂部12aの全ては第1樹脂部11aと連続している。そのため、第1樹脂部11aの径方向における厚みは、第2樹脂部12aの軸方向における厚みとほぼ等しい。これに対して、例えば、第2樹脂部12aの一部が第1樹脂部11aと連続する構成とすることができる。この場合、第1樹脂部11aの径方向における厚みを。第2樹脂部12aの軸方向における厚みより小さくすることができる。
【0053】
(変形例2)
図3は、
図1に示す外輪1の他の変形例を示す断面図である。
図3に示す例では、フランジ12は、フランジ12から軌道部11の軸方向の一方側において第1樹脂部11aと連続している第2樹脂部12a(第1部分の一例)と、この一方側と反対側において第1樹脂部11bと連続している第2樹脂部12b(第2部分の一例)とを含む。さらに、フランジ12は、第2樹脂部12aと第2樹脂部12bとの間に、軌道部11の径方向外方へ延びる第2樹脂部12c(第3部分の一例)を含む。第2樹脂部12cは、第1樹脂部11a、11bと連続していない。
【0054】
第2樹脂部12a,12b,12cでは、炭素繊維が、軌道部11の軸方向に垂直になるように、複数の炭素繊維プリプレグが軸方向に積層される。第2樹脂部12a,12b,12cのうち、軸方向の両端の第2樹脂部12a,12bが、それぞれ、両側の第1樹脂部11a,11bと連続している。この構成により、第2樹脂部12cの分だけフランジ12の軸方向の幅を大きくすることができる。これにより、フランジ12の強度が増す。また、第2樹脂部12cの厚みを調整することによりフランジのサイズを調整することが可能になる。
【0055】
(変形例3)
図4は、
図1に示す外輪1の他の変形例を示す断面図である。
図4に示す例では、フランジ12の一部が、金属軌道部111の端部よりも外側に形成される。具体的には、フランジ12は、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の一方の端部より外方に位置する第2樹脂部12aと、この金属軌道部111の端部の内方に位置する第2樹脂部12bとを有する。
【0056】
第2樹脂部12aは、金属軌道部111の端部から外方へ軸方向に沿って延びる第1樹脂部11aと連続している。第2樹脂部12aの軸方向内方の面の一部は、金属軌道部111の端部により支持されている。第2樹脂部12bは、金属軌道部111の端部から内方へ軸方向に沿って延びる第1樹脂部11bと連続している。
【0057】
この例では、金属軌道部11の軸方向の端面が、第2樹脂部12aの軸方向内方の面の一部に対して、軸方向において対向している。これにより、フランジ12の軸方向の荷重に対する強度を向上させることができる。例えば、フランジ12に軸方向の外方から内方へ力がかかった場合、第2樹脂部12aは金属軌道部11の軸方向の端面によって内方へずれるのが止められる。このように、金属軌道部111の軸方向の面の一部に第2樹脂部12aを対向させる構成により、軸方向の荷重に対する強度を向上させることができる。
【0058】
図1に示す例では、フランジ12は、軌道部11の軸方向において、金属軌道部111の内側、すなわち金属軌道部111の内方端及び外方端の間に配置される。これに対して、例えば、
図4に示すように、フランジ12の少なくとも一部が、金属軌道部111の外側に配置されてもよい。なお、
図4に示す例では、金属軌道部11の軸方向外方の端より外方に第2樹脂部12aを配置する構成であるが、金属軌道部11の軸方向内方の端より内方に第2樹脂部12bを配置する構成とすることもできる。
【0059】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る車両用軸受20の軸中心線を通る平面における断面図である。
図5に示す軸受20において、Aは車両への取付状態において車体に近い方すなわち車幅方向内側の端、Bは車両への取付状態において車体から遠い方すなわち車幅方向外側の端である。以後、軸受20において、車体により近い位置を軸方向の内方、車体からより遠い位置を軸方向の外方と称する場合がある。
【0060】
図5に示すように、軸受20は、外輪1と、内方部材6と、複数の転動体3,4とを備える。外輪1及び内方部材6は、軸受20の軌道輪である。内方部材6は、軌道面213を有する内輪212と、軌道面214を有するハブ輪21とを含む。内輪212は、ハブ輪21の外周に設けられる。内輪212は、軸受20の軸を中心とする環状をなす。ハブ輪21は、軌道面214を有する軌道部211と、軌道部211の外周面から軌道部211の径方向外方に突出するフランジ22とを備える。軌道部211は、筒状をなす。
【0061】
図5に示す軸受20は、ハブ輪21の軌道部211が、金属で形成された金属軌道部216と、炭素繊維強化樹脂で形成された第1樹脂部215を含む点で実施形態1と異なっている。また、軸受20は、フランジ22が、炭素繊維強化樹脂で形成される第2樹脂部221を有する点でも、実施形態1と異なっている。これにより、軽量化を図ることができる。
【0062】
金属軌道部216の外周面には、転動体4と接する軌道面214が設けられる。また、金属軌道部216の外周面の一部は内輪212と接している。
【0063】
第1樹脂部215は、金属軌道部216の内周面に接して軌道部21の軸方向に延びる。第1樹脂部215は、金属軌道部216に対して固定されている。第1樹脂部215と連続して、軌道部21の径方向に延びる第2樹脂部221が設けられる。第2樹脂部221は径方向に延びてフランジ22を形成する。第1樹脂部215と第2樹脂部221は連続している。第1樹脂部215と第2樹脂部221とが連続する構成の具体例は、上記実施形態の第1樹脂部11a,11bと第2樹脂部12a,12bの構成と同様にすることができる。例えば、第1樹脂部215に含まれる炭素繊維と第2樹脂部221に含まれる炭素繊維は、少なくとも一部において連続している。
【0064】
内方部材6において、金属軌道部216の内周に形成される軸方向へ延びる炭素繊維強化樹脂は、軸方向の端部で直角に折れ曲がって径方向に延びてフランジ22の端部に達している。このように、金属軌道部216に接して軸方向に延びる第1樹脂部215と、径方向へ延びて、フランジ22を形成する第2樹脂部221とを一体的に形成することで、フランジ22の強度を確保することができる。
【0065】
図5に示す例では、第2樹脂部221には、軸方向外方へ突出する突出部218が設けられる。突出部218は、環状をなす。突出部218は、径方向に延びて形成される第2樹脂部221の一部が直角に折れ曲がって軸方向に延びた部分によって形成することができる。すなわち、突出部218の炭素繊維と、第2樹脂部221の炭素繊維の一部は連続している構成とすることができる。これにより、突出部218の強度を確保することができる。
【0066】
また、
図5に示す例では、フランジ22が炭素繊維強化樹脂で形成される。炭素繊維強化樹脂で形成されたフランジ22は、錆びない。そのため、錆びによりフランジ22とブレーキディスク又はディスクホイール等の装着物とが固着することを防止できる。フランジ22は、金属軌道部216の内周面に接して軸方向に延びる第1樹脂部215と連続する第2樹脂部221により形成される。そのため、フランジ22の強度を確保することができる。
【0067】
第1樹脂部215がない構成では、フランジ22の強度を確保するために、例えば、フランジ22を形成する炭素繊維強化樹脂の厚みを増加したり、炭素繊維強化樹脂を固定するためのナットを設けたりする必要が生じ得る。これに対して、
図5に示すように、第1樹脂部215及び第2樹脂部221を設けることで、構成要素を増加しなくても、強度を確保することができる。そのため、ハブユニットの軽量化及び小型化を図りつつ強度を確保することが可能になる。
【0068】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、実施形態1、2において、内軸2の部材本体211を中空の筒状に形成することもできる。
【0070】
また、例えば、上記実施形態2では、外輪1の軌道部11は、実施形態1と同様に金属軌道部111と、炭素繊維強化樹脂製の第1樹脂部11a,11bとを有している。しかしながら、当該外輪の軌道部の全体を金属によって構成してもよい。この場合、外輪1のフランジ12も金属することができる。
【0071】
上記実施形態2では、複数の軌道の軌道面213,214のうち、一方の軌道の軌道面214はハブ輪21に設けられ、他方の軌道の軌道面213は、内輪212に設けられる。これに対して、例えば、内輪212に、複数の軌道の軌道面213,214が設けられる構成とすることができる。この場合、内方部材6における金属軌道部216は、内輪212により構成されることになる。
【0072】
また、上記実施形態1、2において、炭素繊維強化樹脂の層が、第1樹脂部と第2樹脂部の境界で直角に折り曲げられて形成される。ここでの直角は、厳密に90度でなくてもよい。例えば、炭素繊維強化樹脂の層が折り曲げられる部分では、90度より小さい角度であっても、全体として、第1樹脂部の層と第2樹脂部の層が互いに垂直となる構成であってもよい。また、全体として第1樹脂部の層と第2樹脂部の層とのなす角度も厳密に90度でなくてもよい。例えば、実施形態1におけるフランジ12を形成する第2樹脂部12a又は第2樹脂部12bのいずれか一方の炭素繊維強化樹脂の層を、軌道部の軸の径方向に対して角度を有する方向に積層することもできる。
【0073】
また、上記実施形態1、2では、軸受の径方向外方に配置される外輪1が固定軌道輪であり、径方向内方に配置される内方部材2、6が回転軌道輪となっている。これに対して、外輪1を回転軌道輪とし、内方部材2、6を固定軌道輪とすることもできる。