特許第6507718号(P6507718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6507718案内システム、案内方法、及び案内プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507718
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】案内システム、案内方法、及び案内プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20190422BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20190422BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20190422BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20190422BHJP
【FI】
   G08G1/01 A
   G08G1/13
   G01C21/26 A
   G06Q50/10
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-40452(P2015-40452)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-162202(P2016-162202A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 直和
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−246270(JP,A)
【文献】 特開平11−238194(JP,A)
【文献】 特開平08−263783(JP,A)
【文献】 特開平09−190422(JP,A)
【文献】 特開2009−288106(JP,A)
【文献】 特開2012−185668(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0038363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G06Q 10/00 − 50/20
G06Q 50/26 − 99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、
前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、を備え
前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する、
案内システム。
【請求項2】
前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、前記案内手段にて前記変化時間を案内する対象となるユーザを特定する対象ユーザ特定手段と、を備え、
前記案内手段は、前記対象ユーザ特定手段にて特定されたユーザに対して前記変化時間を案内する、
請求項1に記載の案内システム。
【請求項3】
イベント属性を特定するためのイベント属性特定情報と、前記イベント属性に応じた時間であって、前記イベント属性における現在のイベントが変化するまでに要する実績の時間である実績時間を示す実績時間情報と、を格納する格納手段を備え、
前記推定手段は、前記イベント状況情報に基づいて前記イベント属性を特定し、当該特定したイベント属性に応じて前記格納手段に格納された前記実績時間情報に基づいて、前記変化時間を推定する、
請求項1又は2に記載の案内システム。
【請求項4】
前記推定手段は、前記取得手段によって現在から所定時間以内に取得された前記イベント状況情報に基づいて、前記変化時間を推定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項5】
取得手段が、ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得ステップと、
推定手段が、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定ステップと、
案内手段が、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内ステップと、を含み
前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する、
案内方法。
【請求項6】
コンピュータを、
ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、
前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、として機能させ
前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する、
案内プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内システム、案内方法、及び案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地から目的地までの旅行時間を予測するシステムが提案されている。しかし、このようなシステムを用いても、事故や災害等のような突発事象(以下、イベント)が発生した場合には、このようなイベントに起因する渋滞によって、当該予測した旅行時間が実際の旅行時間と乖離してしまう可能性があった。そこで、イベントの発生後の道路の旅行時間を、交通状況の情報に基づいて推定する旅行時間予測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1では、イベントが発生すると、イベントが発生したリンクを含む予測対象区間のブロックを特定し、当該ブロックを伝わる交通量や各ブロックの交通密度等といった交通状況の情報を取得し、先の時刻における各ブロックの交通密度を算出し、算出された各ブロックの交通密度に基づいて各ブロックの速度を求め、旅行時間を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−219633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような旅行時間予測装置では、交通量や交通密度といった交通状況の情報に基づいて画一的に旅行時間を推定するに過ぎなかった。したがって、例えば渋滞の原因となる事故の規模や、事故の処理の段階等といった、イベントに関する実情を考慮して旅行時間を推定することはできず、当然、現在のイベントが変化するまでに要する時間(例えば、事故が終焉するまでの時間)を推定する事もできなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、イベントの実情に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間(例えば、事故が終焉するまでの時間)を推定する事が可能な案内システム、案内方法、及び案内プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る案内システムは、ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、を備え、前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する。
【0007】
また、本発明に係る案内方法は、取得手段が、ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得ステップと、推定手段が、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定ステップと、案内手段が、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内ステップと、を含み、前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する。
【0008】
また、本発明に係る案内プログラムは、コンピュータを、ユーザから音声にて入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、として機能させ、前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に含まれているキーワードを検出し、検出した当該キーワードに基づいて事故の段階を特定し、特定した当該事故の段階に基づいて前記変化時間を推定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る案内システム、案内方法、及び案内プログラムによれば、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定して案内するので、イベントの周囲のユーザの入力による実情に即した情報に基づいて変化時間を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る案内システムを例示するブロック図である。
図2】実績時間DBに格納された情報を示すブロック図である。
図3】キーワードプールを示す図である。
図4】本発明の実施の形態における事故現場の周辺を示す概略図である。
図5】送信処理のフローチャートである。
図6】センター処理のフローチャートである。
図7】推定処理のフローチャートである。
図8】案内処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る案内システム、案内方法、及び案内プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
〔実施の形態の基本的概念〕
まず、実施の形態の基本的概念を説明する。この実施の形態は、概略的に、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を案内する案内システムに関する。
【0013】
ここで、「イベント」とは、ユーザの周囲で発生した様々な事象を示し、例えば「事故」、「桜の開花」、「店舗の行列」等を含む。また、「イベント状況情報」とは、上記の各種イベントの状況に関する情報であって、ユーザがイベントを視認したり聴取したりすることにより知得した情報であり、例えば、事故の規模や段階に関する情報、桜の開花具合に関する情報、及び店舗の行列の人数に関する情報などを含む。ただし、本実施の形態では、イベント状況情報は、事故の規模や段階に関する情報であるものとして説明する。また、ユーザがイベント状況情報を入力する方法は任意で、例えば運転者や同乗者は、車載装置のマイクから音声入力しても良いし、車載装置やその他の装置(例えばスマートフォン)のタッチパネル等から文字入力しても良い。ただし、本実施の形態では、音声入力を適用するものとして説明する。
【0014】
なお、当該案内システムは、ユーザの入力に基づいて制御可能な様々な機器に適用できるが、本実施の形態では、車両に搭載された車載用ナビゲーション装置(以下、車載装置)、及び車載装置から送信されたイベント状況情報を取得するセンター装置に適用されるものとして説明する。ただし、例えば、スマートフォン、携帯用ナビゲーション装置、空調機器、映像機器、又は音響機器のような車載装置とは一切異なる分野の機器に対しても同様の案内システムを好適に適用する事ができる。
【0015】
〔実施の形態の具体的内容〕
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。本実施の形態は、概略的に、複数のユーザから入力されたイベント状況情報をセンター装置に集積し、センター装置にて現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定し、当該変化時間を、上述した複数のユーザ以外のユーザに対して送信することにより、イベントの状況の共有を図るシステムに関する。
【0016】
(構成)
最初に、本実施の形態に係る案内システムの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る案内システムを例示するブロック図である。この図1に示すように、本実施の形態では、複数の車載装置1とセンター装置10とが相互に無線通信可能に接続されている。
【0017】
ここで、本実施の形態では、車載装置1に案内プログラムをインストールすることにより、車載装置1が案内システムとして機能する場合について説明する。なお、上述したように、この他にも、例えば、スマートフォン、携帯用ナビゲーション装置、空調機器、映像機器、又は音響機器を含む任意の装置に案内プログラムをインストールすることによって案内システムを構成してもよい。また、案内システムにおける車載装置1としての機能については、公知の車載装置1と同様の構成により得ることができるので、その説明は省略することとし、以下では、特に変化時間の案内を達成するための構成について説明する。
【0018】
ここで、本実施の形態に係る車載装置1は、複数の車両に対してそれぞれ搭載されており、各車載装置1はセンター装置10と通信可能に構成されているが、本実施の形態では特記しない限り、このうち一つの車両に搭載された車載装置1について説明する。なお、以下では、この車載装置1を搭載した特定の車両を単に「車両」と称して説明する。なお、「車両」には、自動四輪車、自動二輪車、及び自転車が含まれるが、以下では、車両が自動四輪車である場合について説明する。また、本実施の形態では、各車載装置1が搭載された車両の運転者や、運転者以外の搭乗者を「ユーザ」と称して説明する。
【0019】
(構成−車載装置)
まず、車載装置1の構成を説明する。ここで、複数の車載装置1はいずれも相互に同様に構成できるため、本実施の形態においてはこのうち一つの車載装置1を例に挙げて説明する。図1に示すように、車載装置1は、概略的に、スピーカ2、マイク3、タッチパネル4、ディスプレイ5、現在位置取得部6、通信部7、制御部8、及びデータ記録部9を備えている。
【0020】
(構成−車載装置−スピーカ)
スピーカ2は、制御部8の制御に基づいて情報を音声にて出力する音声出力手段である。このスピーカ2から出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0021】
(構成−車載装置−マイク)
マイク3は、各種の入力を受け付ける複数の入力手段のうちの1つであって、音声の入力を受け付ける音声入力受付手段である。このマイク3としては、公知のマイクロフォンを用いることができる。
【0022】
(構成−車載装置−タッチパネル)
タッチパネル4は、ユーザの指等で押圧されることにより、当該ユーザから各種手動入力を受け付けるものである。このタッチパネル4は、透明又は半透明状に形成され、ディスプレイ5の前面において当該ディスプレイ5の表示面と重畳するように設けられている。このタッチパネル4としては、例えば、抵抗膜方式や静電容量方式等による操作位置検出手段を備えた公知のタッチパネルを使用することができる。
【0023】
(構成−車載装置−ディスプレイ)
ディスプレイ5は、各種画像を表示する表示手段であり、特に、後述する地図DB9aに格納された地図情報に基づいて地図を表示する表示手段である。このディスプレイ5の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0024】
(構成−車載装置−現在位置取得部)
現在位置取得部6は、車両の現在位置を取得する現在位置取得手段である。例えば、現在位置取得部6は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つにより検出した現在の車載装置1の位置(座標)及び方位等を、公知の方法にて取得する。
【0025】
(構成−車載装置−通信部)
通信部7は、後述するセンター装置10との間でネットワークを介した通信を行う通信手段である。この通信手段の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の移動体無線通信手段や、FM多重放送やビーコンを介した公知のVICS(登録商標)システム用の無線通信手段を用いることができる。
【0026】
(構成−車載装置−制御部)
制御部8は、車載装置1を制御する制御手段である。具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る案内プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して車載装置1にインストールされることで、制御部8の各部を実質的に構成する。
【0027】
この制御部8は、機能概念的に、案内部8aを備えて構成されている。案内部8aは、後述する推定部12bにて推定された変化時間を案内する案内手段である。なお、この制御部8により行われる具体的な処理については後述する。
【0028】
(構成−車載装置−データ記録部)
データ記録部9は、車載装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。このデータ記録部9は、地図データベース(以下、データベースを「DB」と称する)9aを備えている。
【0029】
図DB9aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。ここで、「地図情報」とは、道路、道路構造物、施設等を含む各種の位置の特定に必要な情報であり、例えば、道路上に設定された各ノードに関するノードデータ(ノード番号、座標)や、道路上に設定された各リンクに関するリンクデータ(リンクID、リンク名、始点側接続ノード番号、終点側接続ノード番号、道路座標、道路種別(例えば、有料道路、一般道路等)、道路情報、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、施設等)、及び地形データ等を含んで構成されている。
【0030】
(構成−センター装置)
次に、センター装置10の構成について説明する。センター装置10は、図1に示すように、概略的に、通信部11、制御部12、及びデータ記録部13を備えて構成されている。
【0031】
(構成−センター装置−通信部)
通信部11は、車載装置1との間でネットワークを介した通信を行う通信手段である。この通信手段の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の移動体無線通信手段や、FM多重放送やビーコンを介した公知のVICS(登録商標)システム用の無線通信手段を用いることができる。
【0032】
(構成−センター装置−制御部)
制御部12は、センター装置10を制御する制御手段である。具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る案内プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介してセンター装置10にインストールされることで、制御部12の各部を実質的に構成する。
【0033】
ここで、センター装置10の制御部12は、機能概念的に、取得部12a、推定部12b、及び対象ユーザ特定部12cを備えて構成されている。取得部12aは、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段である。また、推定部12bは、取得手段によって取得されたイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段である。また、対象ユーザ特定部12cは、取得部12aによって取得されたイベント状況情報に基づいて、案内部8aにて変化時間を案内する対象となるユーザを特定する対象ユーザ特定手段である。なお、このセンター装置10の制御部12により行われる具体的な処理については後述する。
【0034】
(構成−センター装置−データ記録部)
データ記録部13は、センター装置10の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。このデータ記録部13は、地図DB13a、実績時間DB13b、及びキーワードプール13cを備えて構成されている。なお、センター装置10の地図DB13aについては、車載装置1の地図DB9aと同様に構成できるため、詳細な説明を省略する。
【0035】
実績時間DB13bは、イベント属性を特定するためのイベント属性特定情報と、前記イベント属性に応じた時間であって、前記イベント属性における現在のイベントが変化するまでに要する実績の時間である実績時間を示す実績時間情報と、を格納する格納手段である。図2は、実績時間DB13bに格納された情報を例示する図である。なお、実績時間DB13bには、図2に示す事故に関する実績時間の表以外にも、他のイベント(「桜の開花」や「店舗の行列」等)に関する実績時間の表が格納されているが、図2においては他のイベントの表の図示を省略している。
【0036】
ここで、「イベント属性」とは、ユーザの周囲のイベントの詳細を示す情報であって、例えば事故の規模や段階、桜の開花状況、店舗の入店待ちの行列の人数等を含む概念である。なお、本実施の形態のイベント属性は、事故の規模の詳細、及び事故の段階の詳細を示す情報である。また、「実績時間」とは、現在のイベントが変化するまでに要する時間として、過去の実績等に基づいて経験的又は統計的に求められる時間である。ここで、「現在のイベントが変化するまでに要する時間」とは、現在のイベントの状況が他の状況に変化するまでに要する時間であり、本実施の形態においては、現在発生している事故が終焉するまでに要する時間であるものとして説明する。具体的には、本実施の形態の実績時間は、30分、90分、180分等を含んで構成されている。ただし、このようにイベントが終焉するまでに要する時間に限らず、イベントが開始するまでに要する時間であっても構わず、例えば桜が開花するまでに要する時間であっても構わない。
【0037】
ここで、本実施の形態においては、実績時間DB13bには、イベント属性特定情報として、列の項目「規模」及び行の項目「段階」が格納されており、実績時間情報として、行列の各項目の小項目の組み合わせに対応する時間の情報(30分、90分、180分等)が格納されている。そして、項目「規模」は、小項目「小」、「中」、及び「大」を備えており、「小」は事故の規模が小さい事を示し、「中」は事故の規模が中程度である事を示し、「大」は事故の規模が大きい事を示す。また、項目「段階」は、小項目「初期」、「中期」、及び「後期」を備えており、「初期」は事故の段階が初期である事を示し、「中期」は事故の段階が中期である事を示し、「後期」は事故の段階が後期である事を示す。例えば、事故の段階が初期であり規模が大きい場合には、対応する実績時間は180分となり、事故の段階が後期であり規模が小さい場合には、対応する実績時間は10分となる。このように、本実施の形態では、センター装置10の推定部12bが、当該実績時間DB13bを参照することで、事故の規模及び段階に基づいて、当該事故が終焉するまでに要する時間を推定する。なお、このような推定の詳細については後述する。
【0038】
なお、本実施の形態においては、説明の簡略化のために図を3行3列の簡略なものとしたが、これに限らず、イベント属性をより細かく分けても構わないし、その他の外部情報(例えば、気温や天気等)に基づいて実績時間を変化させても構わない。例えば、事故現場の天気が雨である場合には、晴れである場合よりも、事故が終焉するまでにより多くの時間を要するものとし、図2に示す実績時間を長くしても良い。または、事故現場の道路種別(一般道路、又は高速道路)に基づいて変化時間を異ならせても良い。例えば、一般道路に関する実績時間の表と、高速道路に関する実績時間の表とをそれぞれ別個に実績時間DB13bに格納し、事故現場の道路種別に応じてこれらを使い分けても良い。
【0039】
図1に戻り、キーワードプール13cは、イベント毎に関連するキーワードの音声情報を格納するキーワード格納手段である。図3は、キーワードプール13cを示す図である。具体的には、例えば「事故」、「桜の開花」、「店舗の行列」等のイベント毎のキーワードプール13cが設けられており、各キーワードプール13cにはそれぞれのイベントに関連するキーワードの音声情報(例えばWAV情報)が格納されている。例えば、「事故」のキーワードプール13cには、「パトカー」、「警察」、及び「玉突き」等が格納されており、「桜の開花」のキーワードプール13cには、「つぼみ」、「五分咲き」、及び「満開」等が格納されており、「店舗の行列」のキーワードプール13cには、「10人待ち」、「まだまだ」、及び「整理券」等が格納されている。したがって、センター装置10の制御部12は、ユーザから取得したイベント状況情報(すなわち、ユーザの発話の音声情報)を解析し、このキーワードプール13cに格納された音声情報と比較することにより、イベントの詳細について把握する事が可能となる。なお、このようなキーワード解析については後述する推定処理において詳細に説明する。
【0040】
(処理)
次に、このように構成される車載装置1やセンター装置10によって実行される処理について説明する。本実施の形態に係る処理は、概略的に、複数のユーザから入力された事故に関するイベント状況情報をセンター装置10に集積し、センター装置10にて事故が終焉するまでに要する時間である変化時間を推定し、当該変化時間を、上述した複数のユーザ以外のユーザに対して送信することにより、イベントの状況の共有を図る処理である。なお、本実施の形態においては、道路の途中でトラックTが横転する事故が発生した場合を例に挙げて説明する。図4は、本実施の形態における事故現場の周辺を示す概略図である。この図4に示すように、事故現場ではトラックTが横転しており、トラックTの付近には既にレッカー車Wが到着しているものとする。そして、事故現場と同一車線における事故現場付近に車両A、事故現場の進行方向後方に車両B、事故現場の進行方向前方に車両Cが走行しており、事故現場の対向車線に車両Dが走行しているものとする。
【0041】
まずは、送信処理について説明する。図5は、送信処理のフローチャートである。この送信処理は、概略的に、ユーザが入力したイベント状況情報を、センター装置10に対して送信する処理であって、各車両に搭載された車載装置1によって実行される処理である。なお、この送信処理を実行するタイミングは任意であり、例えば車載装置1の電源がオンとなった場合に自動的に実行するものとして説明する。
【0042】
まず、SA1において車載装置1の制御部8は、各種情報を取得する取得タイミングが到来したか否かを判定する。この判定の具体的な方法は任意で、本実施の形態においては、ユーザがディスプレイ5に表示された録音開始アイコン(図示省略)をタッチパネル4で押圧した際に当該取得タイミングが到来したと判定するが、これに限らず、例えば車両の搭乗者によって所定以上の音量の発話がなされた際に当該取得タイミングが到来したと判定しても良い。そして、取得タイミングが到来していない場合(SA1、No)、取得すべき情報が無いものとし、SA1を繰り返す事により、所定タイミングが到来するまで待機する。また、所定タイミングが到来している場合(SA1、Yes)、取得すべき情報が在るものとし、SA2に移行する。
【0043】
次に、SA2において車載装置1の制御部8は、イベント状況情報を取得する。具体的には、車両のユーザの発話内容を録音してこれをイベント状況情報として取得する。例えば本実施の形態では、車両Aの車載装置1にて、事故現場を目撃したユーザによる「事故だ!トラックが横転している!」という音声を取得し、車両Dの車載装置1にて、事故現場を目撃したユーザによる「事故だ!レッカー車が来ている!」という音声を取得したものとする。なお、車両Cのユーザは、事故現場を目撃しているものの発話しなかったものとし、車両Bのユーザは未だ事故現場に到達しておらず、事故現場に関する発話をしていないものとする。
【0044】
次に、SA3において車載装置1の制御部8は、個別情報を取得する。この個別情報は、イベントの詳細を特定するために用いられる情報であって、ユーザ毎に個別の情報であり、例えば車載装置1を一意に特定するID、ユーザの現在位置、移動方向、移動速度等を含む情報である。なお、この個別情報を取得する具体的な方法は公知であり、例えば車載装置1の制御部8は、車載装置1の現在位置取得部6にて取得された車載装置1のGPS位置座標に基づいて現在位置を特定し、当該GPS位置座標の経時変化に基づいて移動方向及び移動速度を特定する。
【0045】
次に、SA4において車載装置1の制御部8は、外部情報を取得する。この外部情報は、イベントの詳細を特定するために用いられる情報であって、ユーザに個別の情報ではなく、例えば天気や気温を含む情報である。この外部情報を取得する具体的な方法は公知であり、例えば車載装置1の制御部8は、ワイパーの稼働状況に基づいて天気を特定して取得し、車両に設けられた温度計(図示省略)により気温を特定して取得しても良い。または、車載装置1以外の装置から外部情報を取得してもよく、例えば、気象庁や民間の気象情報提供会社のDB等から、天気や気温を含む外部情報を取得しても良い。
【0046】
次に、SA5において車載装置1の制御部8は、SA2において取得したイベント状況情報、SA3において取得した個別情報、及びSA4において取得した外部情報(以下、これらを総称して「ユーザ取得情報」と称する。)を、車載装置1の通信部7を介してセンター装置10に送信する。なお、このような送信方法は公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
(処理−センター処理)
次に、センター装置10により実行されるセンター処理について説明する。図6は、センター処理のフローチャートである。このセンター処理は、概略的に、車載装置1から取得したイベント状況情報に基づいて変化時間を推定し、推定した変化時間を含む情報(以下、推定情報)をユーザに対して送信する処理である。このセンター処理を実行するタイミングは任意であり、例えばセンター装置10の電源がオンとなった場合に自動的に実行するものとして説明する。
【0048】
初めに、SB1において取得部12aは、ユーザ取得情報の取得を行う。具体的には、取得部12aは、センター装置10の通信部11にて、複数の車載装置1から送信されたユーザ取得情報を取得する。例えば本実施の形態では、車両A及び車両Dからユーザ取得情報を取得する。
【0049】
次に、SB2において推定部12bは、推定タイミングが到来したか否かを判定する。この判定の具体的な手段については任意で、例えば本実施の形態では、所定時刻間隔(例えば、1分毎)に推定タイミングが到来したものと判定するが、これに限らず、合計で所定数(例えば、10)以上のユーザ取得情報を上述したSB1の処理にて取得した場合に推定タイミングが到来したものと判定しても構わない。
【0050】
そして、推定タイミングが到来していない場合(SB2、No)、変化時間の推定が必要無いものとし、SB1及びSB2を繰り返す事により、推定タイミングが到来するまで待機する。また、推定タイミングが到来している場合(SB2、Yes)、変化時間の推定が必要在るものとし、SB3に移行する。
【0051】
(処理−センター処理−推定処理)
次に、SB3において推定部12bは、推定処理を行う。図7は、推定処理のフローチャートである。この図7に示すように、まずSC1において推定部12bは、キーワード検出を行う。具体的には、推定部12bは、最新の情報に基づいてユーザに案内を行うために、図6に示すセンター処理のSB1の処理にて取得したイベント状況情報のうち、現在から所定時間(例えば、1分)以内に取得されたイベント状況情報を抽出する。そして、抽出したイベント状況情報に含まれるユーザの音声情報と、センター装置10のキーワードプール13cの音声情報とを比較し、ユーザの音声情報にキーワードプール13cの音声情報が含まれているか否かを判定する。そして、含まれている場合、当該キーワードをセンター装置10のデータ記録部13等に一時的に記録する。例えば、車両Aのユーザの音声情報である「事故だ!トラックが横転している!」という音声情報には、事故のキーワードプール13cの「トラック」、及び「横転」というキーワードが含まれるため、当該キーワードを記録する。また、車両Dのユーザの音声情報である「事故だ!レッカー車が来ている!」という音声情報には、事故のキーワードプール13cの「レッカー車」というキーワードが含まれるため、当該キーワードを記録する。このように、推定部12bは、複数のユーザから送信されたイベント状況情報からキーワードを検出してデータ記録部13に集積していく。なお、このようにイベント状況情報からキーワードを検出する具体的な方法は公知であり、例えばイベント状況情報のWAV情報とキーワードのWAV情報とが略一致するかを判定する事により検出する事ができる。
【0052】
次に、SC2において推定部12bは、イベントの詳細の特定を行う。具体的には、推定部12bは、SC1において検出したキーワードのうち少なくとも一つのキーワードに基づいて、ユーザの周囲のイベントがどのようなイベントであるかの詳細について特定する。例えば、本実施の形態においては、イベントの内容、規模、及び段階という3つの観点からイベントの詳細を特定する。
【0053】
初めに、推定部12bは、SC1において検出されたキーワードに基づいてイベントの内容を特定する。この特定方法は任意であるが、本実施の形態においては、一致するキーワードの数が所定数(例えば3つ)以上であるキーワードプール13cを特定し、当該特定したキーワードプール13cに対応するイベントを特定する。例えば、上記のように特定した「トラック」、「横転」、「レッカー車」という3つのキーワードが、「事故」のキーワードプール13cに含まれており、所定数以上であるため、イベントは「事故」であると判定する。
【0054】
次に、推定部12bは、SC1において検出されたキーワードに基づいて事故の規模を特定する。この特定方法は任意であるが、例えば本実施の形態では、キーワードプール13cの各キーワードに、規模を特定するための実績時間DB13bの小項目「小」、「中」、「大」が対応付けられている。なお、規模を特定するためのキーワードではないキーワードには、「該当なし」が対応付けられている。そして、SC1において検出されたキーワードに、それぞれどの小項目に対応付けられているかを特定し、最も多く対応付けられた小項目の規模を、事故の規模として特定する。例えば、「トラック」には小項目「中」が対応付けられており、「横転」、及び「レッカー車」には小項目「大」が対応付けられている場合、最も多い小項目は「大」であるため、事故の規模が「大」であると判定する。
【0055】
なお、規模を特定する方法はこのような方法に限らず、例えば、各キーワードに対して事故の規模に応じた点数を定めておき、SC1において検出されたキーワードの点数を足し合わせて、合計の点数が第1の基準値未満であれば「小」、第1の基準値以上かつ第2の基準値未満であれば「中」、第2の基準値以上であれば「大」であると判定しても構わない。
【0056】
最後に、推定部12bは、SC1において検出されたキーワードに基づいて事故の段階を特定する。この特定方法は任意であるが、例えば本実施の形態では、キーワードプール13cの各キーワードに、段階を特定するための実績時間DB13bの小項目「初期」、「中期」、「後期」が対応付けられている。なお、段階を特定するためのキーワードではないキーワードには、「該当なし」が対応付けられている。そして、SC1において検出されたキーワードに、それぞれどの小項目に対応付けられているかを特定し、最も多く対応付けられた小項目の規模を、事故の段階として特定する。例えば、「トラック」及び「横転」には「該当なし」が対応付けられており、「レッカー車」には小項目「後期」が対応付けられている場合、最も多い小項目は「後期」であるため、事故の段階が「後期」であると判定する。
【0057】
なお、この段階を特定する方法はこのような方法に限らず、例えば、各キーワードに対して段階に応じた点数を定めておき、SC1において検出されたキーワードの点数を足し合わせて、合計の点数が第1の基準値未満であれば「初期」、第1の基準値以上かつ第2の基準値未満であれば「中期」、第2の基準値以上であれば「後期」であると判定しても構わない。
【0058】
次に、SC3において推定部12bは、変化時間の推定を行う。この推定の具体的な方法は任意で、例えば本実施の形態では、SC2において特定したイベントの詳細と、センター装置10のデータ記録部13に格納された実績時間DB13bに格納された情報に基づいて変化時間の推定を行う。具体的には、推定部12bは、図2に示す実績時間DB13bにおける、SC2において特定したイベントの表を参照し、SC2において特定した規模及び段階の事故の実績時間を特定する。例えば、上述したように規模が「大」で、段階が「後期」である場合には、対応する要素に示された実績時間は60分である。したがって、当該事故が終焉するまでに要する時間は60分であるものとし、この60分を変化時間として推定する。以上により推定処理を終了し、図6のセンター処理に戻る。
【0059】
次に、SB4にて対象ユーザ特定部12cは、変化時間を送信する対象となる対象ユーザを特定する。ここで、対象ユーザを特定する手段は任意であるが、本実施の形態では、車載装置1を一意に識別するIDを特定することにより、当該車載装置1が搭載された車両のユーザを特定する。すなわち、センター装置10のデータ記録部13には、各車両に搭載された車載装置1のIDが格納されており、このIDの中から送信する対象となる対象ユーザの車載装置1のIDを選定することによりユーザを特定できる。
【0060】
また、このように対象ユーザを特定する具体的な基準は任意であるが、本実施の形態においては、車両から取得した取得情報、車両の現在位置、及び車両の進行方向に基づいて特定するものとして説明する。具体的には、事故現場から所定距離以上離れた位置にいる車両や、事故現場の進行方向前方にいる車両(例えば車両C)や、事故現場の反対車線にいる車両(例えば車両D)や、当該事故に関するイベント状況情報を送信している車両(例えば車両A)に対しては、当該変化時間を送信する必要はなく、また、送信すると却って煩わしいものとし、当該変化時間を送信しない。
【0061】
例えば、まず対象ユーザ特定部12cは、事故現場から所定距離以内(例えば10km以内)の位置、かつ事故現場と同一車線、かつ事故現場の進行方向後方の位置にいる車両の車載装置1のIDを特定する。この特定方法は任意で、例えば、まず対象ユーザ特定部12cは、車両から取得した個別情報に含まれる位置座標に基づいて事故現場の位置座標を特定する。次に、車両から取得した個別情報に含まれる車速情報に基づいて道路の渋滞状況を特定し、この渋滞状況に基づいて事故が発生した車線を特定する。なお、事故が発生した車線を特定する方法はこれに限らず、例えばユーザから取得したイベント状況情報を抽出し、事故が当該ユーザと同一車線で発生していることを特定するキーワード(例えば、「この車線」、「前で」等)の数と、及び事故が当該ユーザの反対車線で発生していることを特定するキーワード(例えば、「対向車線」、「反対車線」等)の数とを比較する事により特定しても構わない。
【0062】
次に、対象ユーザ特定部12cは、全ての車両に搭載された車載装置1が、所定の時刻間隔(例えば1分)でセンター装置10に対して送信する信号であって、自己のIDと、現在位置取得部6にて取得した現在位置情報と、進行方向とを含む信号を解析することで、各車両の現在位置と進行方向を特定する。最後に、対象ユーザ特定部12cは、上記のように特定した事故現場の位置座標、及び各車両の現在位置及び進行方向に基づいて、事故現場から所定距離以内(例えば10km以内)の位置、かつ事故現場と同一車線、かつ事故現場の進行方向後方の位置にいる車両の車載装置1のID(以下、第1特定ID)を特定する。例えば、図4における車両Aと車両Bの車載装置1のIDを特定する。
【0063】
ただし、対象ユーザの特定はこのような基準に限定されず、例えば、イベントの内容毎に、全員を対象ユーザとしたり、一部の者のみを対象ユーザとしりしても構わない。具体的には、イベントの内容毎に全員を対象とする情報であるか、又は一部の者のみを対象とする情報であるかを対応付けておき、発生したイベントが全員を対象とするイベント(例えば、「事故」)である場合、全員を対象ユーザとし、一部の者を対象とするイベント(例えば、「桜の開花」)である場合、一部の者のみを対象ユーザとしても良い。
【0064】
また、一部の者のみを対象ユーザとする場合には、ユーザにより取得されたイベント状況情報に基づいて各ユーザの嗜好を特定し、イベントの内容が嗜好に適合するユーザに対してのみ推定情報を送信しても構わない。例えば、イベントの内容が「桜の開花」である場合において、ユーザが「桜の開花」に関する発話を所定回数以上(例えば、3回以上)に行っている場合には、当該ユーザは「桜の開花」のイベントに対して興味のあるユーザであるものとし、当該ユーザを対象ユーザに含めてもよい。
【0065】
また、取得情報を考慮せず、イベントの内容に基づいて対象ユーザを特定しても良い。例えば、イベントの内容が「事故」である場合には、全員に関心が高い情報であるものとし、事故現場から所定距離以内にいるすべてのユーザを対象ユーザとしても良い。また、イベントの内容が「店舗の行列」である場合には、一部の者にのみ関心が高い情報であるものとし、店舗の行列に関心のあるユーザのみを対象ユーザに含めても良い。
【0066】
次に、対象ユーザ特定部12cは、図5のSA2にて取得されたイベント状況情報やSA3にて取得された個別情報(特に、車載装置1のID、及び車両の現在位置)に基づいて、事故現場付近で事故に関連するイベント状況情報を取得した車載装置1のID(以下、第2特定ID)を特定する。例えば、図4における車両Aの車載装置1のIDを特定する。そして、上記のように特定した第1特定ID(車両AのID及び車両BのID)から第2特定ID(車両AのID)を除外し、残ったID(車両BのID)を対象ユーザの車載装置1のIDであるものと特定する。
【0067】
次に、SB5においてセンター装置10の制御部12は、SB4において特定した対象ユーザに対して、推定情報を送信する。この推定情報とは、少なくともSB3の推定処理にて推定した変化時間を含む情報であって、例えば、対象ユーザに対して変化時間を音声にて報知するための音声情報や、対象ユーザに対して変化時間を文字にて報知するための文字情報を含む。なお、本実施の形態では、推定情報として、イベントの発生場所及び変化時間を含む音声情報(例えば、「3km先の○○○付近で事故が発生しました。事故の終焉までおよそ60分です」といった音声情報)を送信するものとする。このような音声情報を生成する具体的な方法は任意で、例えばセンター装置10のデータ記録部13に予め格納された電子音声を複数組み合わせる事により生成できる。なお、対象ユーザに対してのみ送信するために、当該推定情報には、SB4にて特定した対象ユーザの車載装置1のIDを含める。以上にて、センター装置10にて実行されるセンター処理の説明を終了する。
【0068】
(処理−案内処理)
次に、車載装置1により実行される案内処理について説明する。図8は、案内処理のフローチャートである。この案内処理は、概略的に、センター装置10から送信された変化時間を車載装置1がユーザに対して案内する処理である。この案内処理を実行するタイミングは任意であり、例えば車載装置1の電源がオンとなった場合に自動的に実行するものとして説明する。
【0069】
まず、SD1において案内部8aは、推定情報を取得したか否かの判定を行う。具体的には、車載装置1の通信部7を介して、センター装置10の通信部11から送信された推定情報を取得したか否かの判定を行う。そして、取得していない場合(SD1、No)、取得するまでSD1の処理を繰り返すことにより、推定情報を取得するまで待機する。また、取得した場合(SD1、Yes)、SD2に移行する。
【0070】
次に、SD2において案内部8aは、変化時間の案内が必要であるか否かの判定を行う。具体的には、取得した推定情報に含まれるIDに、自己の車載装置1のIDが含まれているかを判定し、含まれていない場合(SD2、No)、変化時間の案内が必要ないものとして案内処理を終了し、含まれている場合(SD2、Yes)、変化時間の案内が必要あるものとし、SD3に移行する。
【0071】
次に、SD3において案内部8aは、推定情報の案内を行う。この案内の方法は任意で、例えば推定情報が本実施の形態のように音声情報である場合には、車載装置1のスピーカ2から音声情報を出力してユーザに聴取させることにより案内を行っても構わないし、推定情報が文字情報である場合には、ディスプレイ5に文字情報を表示して案内を行っても構わない。以上にて、車載装置1にて実行される案内処理の説明を終了する。
【0072】
(実施の形態の効果)
このように、本実施の形態に係る案内システムによれば、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定して案内するので、イベントの実情に基づいて、変化時間を推定することが可能となる。
【0073】
また、イベント状況情報に基づいて、変化時間を案内する対象となるユーザを特定するので、例えば取得されたイベント状況情報に基づいて各ユーザの嗜好を特定した上で変化時間を案内できるので、ユーザ毎に所望の変化時間を案内する事が可能となる。
【0074】
また、実績時間DB13bに予め格納された実績時間に基づいて変化時間を推定するので、イベント属性毎の実績に応じた時間を案内する事が可能となる。
【0075】
また、推定部12bは、現在から所定時間以内に取得されたイベント状況情報に基づいて、変化時間を推定するので、最新のイベント状況情報のみを考慮して変化時間を推定でき、より実情に則した変化時間を案内する事が可能となる。
【0076】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0077】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、音声入力によって、ユーザの所望の制御を容易に行う事が出来ない場合であっても、従来と異なる技術によりユーザの所望の制御を行う事が出来ている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0078】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。例えば、車載装置1やセンター装置10を、相互に通信可能に構成された複数の装置に分散して構成してもよい。
【0079】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0080】
(イベントについて)
本実施の形態では、イベントとして具体的には「事故」、「桜の開花」、及び「店舗の行列」を挙げたが、イベントの内容はこれらに限定されない。例えばイベントとして「動物の死骸」を含めて、動物の死骸が道路から撤去されるまでに要する時間を変化時間としてユーザに案内しても良い。また、イベントとして「高速道路への人の進入」を含めて、人が高速道路から退去されるまでに要する時間を変化時間としてユーザに案内しても良い。
【0081】
(変化時間について)
本実施の形態では、実績時間に基づいて変化時間を推定したが、これに限らず、他の外部情報等を付加して推定を行っても良い。具体的には、事故現場の道路種別(一般道路、又は高速道路)に基づいて変化時間を異ならせても良く、例えば、一般道路に関する実績時間の表と、高速道路に関する実績時間の表とをそれぞれ別個に実績時間DB13bに格納し、外部情報に基づいて特定した事故現場の道路種別に対応する実績時間の表を参照し、変化時間を特定しても構わない。同様に事故が発生した時間帯(朝、昼、又は夜)や、事故が発生した季節ごとに別個に実績時間の表を実績時間DB13bに格納し、事故が発生した時間帯や季節に対応する実績時間の表を参照し、変化時間を特定しても構わない。また、変化時間を特定する上で、規模、段階、又は外部情報等の一部又は全部を考慮することなく特定しても構わない。
【0082】
(キーワードの抽出について)
本実施の形態では、音声をセンター装置10に送信し、センター装置10が音声からキーワードを抽出しているが、車両側でキーワードを抽出し、当該キーワードをセンター装置10に送信するようにしてもよい。
【0083】
〔実施の形態の特徴と効果の一部〕
最後に、これまでに説明した実施の形態の特徴と効果の一部を、以下に例示する。ただし、実施の形態の特徴と効果は、以下の内容に限定されず、以下の特徴の一部のみを具備することによって以下の効果の一部のみを奏する場合や、以下の特徴以外の他の特徴を具備することによって以下の効果以外の他の効果を奏する場合がある。
【0084】
実施の形態の1つの側面1に係る案内システムは、ユーザから入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、を備える。
【0085】
上記側面1に係る案内システムによれば、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定して案内するので、イベントの実情に基づいて、変化時間を推定することが可能となる。
【0086】
実施の形態の他の側面2に係る案内システムは、上記側面1に係る案内システムにおいて、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、前記案内手段にて前記変化時間を案内する対象となるユーザを特定する対象ユーザ特定手段と、を備え、前記案内手段は、前記対象ユーザ特定手段にて特定されたユーザに対して前記変化時間を案内する。
【0087】
上記側面2に係る案内システムによれば、イベント状況情報に基づいて、変化時間を案内する対象となるユーザを特定するので、例えば取得されたイベント状況情報に基づいて各ユーザの嗜好を特定した上で変化時間を案内できるので、ユーザ毎に所望の変化時間を案内する事が可能となる。
【0088】
実施の形態の他の側面3に係る案内システムは、上記側面1又は側面2に係る案内システムにおいて、イベント属性を特定するためのイベント属性特定情報と、前記イベント属性に応じた時間であって、前記イベント属性における現在のイベントが変化するまでに要する実績の時間である実績時間を示す実績時間情報と、を格納する格納手段を備え、前記推定手段は、前記イベント状況情報に基づいて前記イベント属性を特定し、当該特定したイベント属性に応じて前記格納手段に格納された前記実績時間情報に基づいて、前記変化時間を推定する。
【0089】
上記側面3に係る案内システムによれば、実績時間DB13bに予め格納された実績時間に基づいて変化時間を推定するので、イベント属性毎の実績に応じた時間を案内する事が可能となる。
【0090】
実施の形態の他の側面4に係る案内システムは、上記側面1から側面3のいずれかに係る案内システムにおいて、前記推定手段は、前記取得手段によって現在から所定時間以内に取得された前記イベント状況情報に基づいて、前記変化時間を推定する。
【0091】
上記側面4に係る案内システムによれば、推定部12bは、現在から所定時間以内に取得されたイベント状況情報に基づいて、変化時間を推定するので、最新のイベント状況情報のみを考慮して変化時間を推定でき、より実情に則した変化時間を案内する事が可能となる。
【0092】
実施の形態の他の側面5に係る案内方法は、取得手段が、ユーザから入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得ステップと、推定手段が、前記取得工程によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定ステップと、案内手段が、前記推定工程にて推定された前記変化時間を案内する案内ステップと、を含む。
【0093】
上記側面5に係る案内方法によれば、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定して案内するので、イベントの実情に基づいて、変化時間を推定することが可能となる。
【0094】
実施の形態の他の側面6に係る案内プログラムは、コンピュータを、ユーザから入力された前記ユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記イベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定する推定手段と、前記推定手段にて推定された前記変化時間を案内する案内手段と、として機能させる。
【0095】
上記側面6に係る案内プログラムによれば、ユーザから入力されたユーザの周囲のイベントを示すイベント状況情報に基づいて、現在のイベントが変化するまでに要する時間である変化時間を推定して案内するので、イベントの実情に基づいて、変化時間を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 車載装置
2 スピーカ
3 マイク
4 タッチパネル
5 ディスプレイ
6 現在位置取得部
7 通信部
8 制御部
8a 案内部
9 データ記録部
9a 地図DB
10 センター装置
11 通信部
12 制御部
12a 取得部
12b 推定部
12c 対象ユーザ特定部
13 データ記録部
13a 地図DB
13b 実績時間DB
13c キーワードプール
A、B、C、D 車両
T トラック
W レッカー車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8