特許第6507722号(P6507722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507722
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】パワーモジュール用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20190422BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   H01L23/12 D
   H01L23/36 C
   H01L23/12 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-44063(P2015-44063)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-163035(P2016-163035A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】大井 宗太郎
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−147316(JP,A)
【文献】 特開2009−135392(JP,A)
【文献】 特開2012−059836(JP,A)
【文献】 特開2014−177031(JP,A)
【文献】 特開2001−135789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/34−23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化珪素からなるセラミックス基板の面に、アルミニウムシリコン系ろう材を介して、厚さ0.075mm以上0.4mm以下の純度99質量%以上の純アルミニウムからなる第1アルミニウム板をそれぞれ積層するとともに、これら第1アルミニウム板の前記セラミックス基板とは反対側の表面にアルミニウムシリコン系ろう材を介して厚さ0.1mm以上1.5mm以下の純度99質量%以上の純アルミニウムからなる第2アルミニウム板をそれぞれ積層し、これらの積層体を加圧加熱して接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2アルミニウム板は、アルミニウム純度が99.99質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用パワーモジュールには、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板の上に金属板が積層されたパワーモジュール用基板が用いられる。この金属板は、セラミックス基板の両面に積層され、その一方が回路層となり、他方が放熱層となる。回路層には銅板又はアルミニウム板が用いられ、放熱層にはアルミニウム板が用いられるのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、セラミックス基板の一方の面に銅板が接合され、他方の面にはアルミニウム板が接合されたパワーモジュール用基板が開示されている。
また、セラミックス基板には、窒化アルミニウムや窒化珪素などの窒化物、アルミナなどの酸化物が用いられるが、窒化珪素からなるセラミックス基板は、アルミニウムとの接合体に多用されている窒化アルミニウムに比べて、機械的強度が高いため、回路層に厚い銅を用いて高剛性のパワーモジュールとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−197826号公報
【特許文献2】特開2013‐229579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属層にアルミニウムを用いるパワーモジュール用基板においても、この窒化珪素基板を用いることにより剛性を高めることができ、薄肉化を図ることができると考えられる。しかしながら、窒化珪素の場合、窒化アルミニウムやアルミナに比べ、アルミニウムシリコン(Al−Si)箔を用いてアルミニウム板を接合すると、その接合界面にボイドが発生し易いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、窒化珪素からなるセラミックス基板に対するアルミニウム板の接合性を高めて、剛性の高いパワーモジュール用基板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、窒化珪素からなるセラミックス基板の面に、アルミニウムシリコン系ろう材を介して、厚さ0.075mm以上0.4mm以下の純度99質量%以上の純アルミニウムからなる第1アルミニウム板をそれぞれ積層するとともに、これら第1アルミニウム板の前記セラミックス基板とは反対側の表面にアルミニウムシリコン系ろう材を介して厚さ0.1mm以上1.5mm以下の純度99質量%以上の純アルミニウムからなる第2アルミニウム板をそれぞれ積層し、これらの積層体を加圧加熱して接合する。
【0008】
窒化珪素からなるセラミックス基板は柱状粒が重なり合った隙間の多い表面を有しており、表面には焼結助剤相とともに酸化珪素相が存在している。この窒化珪素からなるセラミックス基板とアルミニウム板とをアルミニウムシリコン系ろう材を介して加圧加熱するだけでは、ろう材中のシリコンがセラミックス基板とアルミニウム板との界面から短時間でアルミニウム板に拡散して、界面付近のアルミニウム板の一部を溶融し、この溶融アルミニウムが次式のようにセラミックス基板の酸化珪素(SiO)と反応して、一酸化珪素(SiO)のガスを生じさせ、これがボイドとなって接合を阻害する。
2Al+3SiO → Al+3SiO
【0009】
本発明では、セラミックス基板に接合される第1アルミニウム板にさらに第2アルミニウム板を積層して、その間にもアルミニウムシリコン系ろう材を介在させるので、これら両アルミニウム板の間に介在させたアルミニウムシリコン系ろう材が溶融して、そのシリコン成分が第1アルミニウム板中に拡散することにより、セラミックス基板と第1アルミニウム板との間のアルミニウムシリコン系ろう材中のシリコン成分の第1アルミニウム板中への拡散速度が抑えられる。このため、セラミックス基板と第1アルミニウム板との界面付近のシリコン濃度が高い状態に維持され、その結果、アルミニウム板の溶融が抑えられることから、ボイドの発生が防止されるとともに、ろう材の液相の範囲が十分に広がってセラミックス基板と第1アルミニウム板とを確実に接合することができる。
【0010】
第1アルミニウム板が薄すぎると、ろう材の液相中に第1アルミニウム板が溶融することにより大量の液相が発生することとなり、第2アルミニウム板の表面上に、周囲から液相が回り込むことにより、ろうシミとなるおそれがある。厚過ぎると、セラミックス基板と第1アルミニウム板との界面付近のシリコン濃度を高い状態に維持することができにくくなり、ボイドが発生するおそれがある。すなわち、第1アルミニウム板と第2アルミニウム板の間にアルミニウムシリコン系ろう材を介在させる効果が小さくなる。
このため、第1アルミニウム板の板厚は0.075mm以上0.4mm以下とされている。
【0011】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法において、前記第2アルミニウム板は、アルミニウム純度が99.99質量%以上であるとよい。
【0012】
アルミニウム板に不純物が多く含まれていると、その不純物成分とアルミニウムとの析出物(例えばアルミニウム鉄化合物)が粒界に析出し、その析出物にシリコンが反応してアルミニウムを部分的に溶融し、これが表面に達して、第1アルミニウム板が薄すぎる場合と同様にろうシミ発生の原因となり易い。アルミニウム板の純度を99.99質量%以上とすることにより、粒界の析出物を少なくしてろうシミ発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、窒化珪素からなるセラミックス基板に対するアルミニウム板の接合性を高めて、剛性の高いパワーモジュール用基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のパワーモジュール基板の一実施形態を示す断面図である。
図2】一実施形態のパワーモジュール用基板の製造途中の状態を示す断面図である。
図3】本発明の製造方法に用いる加圧装置の例を示す正面図である。
図4】実施例のアルミニウム板の断面におけるEPMA分析図である。
図5】比較例のアルミニウム板の断面におけるEPMA分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す一実施形態のパワーモジュール用基板10は、セラミックス基板20の一方の面に回路層30が接合され、他方の面に放熱層40が接合されている。そして、このパワーモジュール用基板10の回路層30の表面に半導体素子50が搭載され、放熱層40にはヒートシンク60が接合される。
【0018】
セラミックス基板20は、窒化珪素(Si)からなり、厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定される。
【0019】
回路層30及び放熱層40は、図2に製造途中の状態を示したように、それぞれ2枚のアルミニウム板31,32,41,42を接合してなるものである。それぞれ、セラミックス基板20側から第1アルミニウム板31,41、第2アルミニウム板32,42とする。いずれのアルミニウム板31,32,41,42とも、純度99.99質量%以上の純アルミニウム(JIS規格では1N99)からなり、その板厚は、第1アルミニウム板31,41が0.075mm以上0.4mm以下、第2アルミニウム板32,42が0.1mm以上1.5mm以下である。これらアルミニウム板31,32,41,42は、両者の間にシリコンアルミニウム系ろう材(以下、単にろう材という場合もある)70を介して一体に接合されて回路層30又は放熱層40を形成している。
【0020】
以下、各アルミニウム板31,32,41,42を区別する場合には、回路層30に用いられる2枚のアルミニウム板を回路層用第1アルミニウム板31、回路層用第2アルミニウム板32とし、放熱層40に用いられる2枚のアルミニウム板を放熱層用第1アルミニウム板41、放熱層用第2アルミニウム板42とする。
【0021】
次に、このような構成のパワーモジュール用基板10を製造する方法について説明する。
図2に示すように、セラミックス基板20の一方の面に、回路層用第1アルミニウム板31、回路層用第2アルミニウム板32をそれぞれアルミニウムシリコン系ろう材70を介して積層し、セラミックス基板20の他方の面に、放熱層用第1アルミニウム板41、放熱層用第2アルミニウム板42をそれぞれアルミニウムシリコン系ろう材70を介して積層し、積層体Sとする。アルミニウムシリコン系ろう材70は箔の形態で用いるとよい。
【0022】
この場合、セラミックス基板20と第1アルミニウム板31,41との間に設けられるろう材70と、第1アルミニウム板31,41と第2アルミニウム板32,42との間に設けられるろう材70とのシリコン含有量は同じでよく、5質量%以上12質量%以下とされる。また、ろう材70の厚みも同じでよく、5μm以上30μm以下とされる。これらアルミニウムシリコン系ろう材70は、この含有量及び厚みの範囲であれば、それぞれを異なるシリコン含有量、異なる厚さとしてもよい。
これらの積層体Sを図3に示す加圧装置110を用いて積層方向に加圧した状態とする。
【0023】
この加圧装置110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢手段115とを備えている。
【0024】
固定板113および押圧板114は、ベース板111に対して平行に配置されており、ベース板111と押圧板114との間に前述の積層体Sが配置される。積層体Sの両面には加圧を均一にするためにクッションシート116が配設される。クッションシート116は、カーボンシートとグラファイトシートの積層板で形成されている。
【0025】
この加圧装置110により積層体Sを加圧した状態で、加圧装置110ごと図示略の加熱炉内に設置し、真空雰囲気下で接合温度に加熱してセラミックス基板20に回路層用第1アルミニウム板31と放熱層用第1アルミニウム板41とをろう付け接合するとともに、これら第1アルミニウム板31,41にそれぞれ第2アルミニウム板32,42をろう付け接合する。この場合の加圧力としては例えば0.1MPa以上3.4MPa以下、接合温度としては610℃以上650℃以下、加熱時間としては1分以上60分以下とされる。
【0026】
このろう付け接合工程においては、セラミックス基板20と両第1アルミニウム板31,41との間、及び第1アルミニウム板31,41と第2アルミニウム板32,42との間に介在させたアルミニウムシリコン系ろう材70がまず溶融する。このアルミニウムシリコン系ろう材70中のシリコン成分は、各アルミニウム板31,32,41,42内に拡散するが、セラミックス基板20に接している第1アルミニウム板31,41においては、第2アルミニウム板32,42との間にもアルミニウムシリコン系ろう材70が配置されていることから、セラミックス基板20との界面からの拡散だけでなく、第2アルミニウム板32,42との界面からもシリコン成分の拡散が生じる。
【0027】
この第1アルミニウム板31,41は、その板厚が0.075mm以上0.4mm以下と小さいので、セラミックス基板20との界面側からの拡散と、第2アルミニウム板32,42との界面側からの拡散とが近接して生じることになり、このため、第1アルミニウム板31,41における両面からのシリコン拡散速度が相互に抑制される。
したがって、セラミックス基板20と第1アルミニウム板31,41との界面からのシリコン拡散速度が抑えられることから、セラミックス基板20との界面付近のシリコン濃度が高い状態に維持され、その結果、第1アルミニウム板21の溶融が抑えられ、セラミックス基板20の酸化珪素との反応によるボイドの発生が防止される。
【0028】
このようにして製造されたパワーモジュール用基板10は、両回路層30及び放熱層40とも2枚の回路層用アルミニウム板31,32、あるいは2枚の放熱層用アルミニウム板41,42が接合されて形成されるが、これらが同じアルミニウムからなるので、回路層用アルミニウム板31,32どうしの接合界面、及び放熱層用アルミニウム板41,42どうしの接合界面はほとんど認識できずに一体化している。また、これら回路層30及び放熱層40には、ろう材70中に含有されていたシリコンにより、シリコン濃度分布が生じており、そのシリコン濃度は、セラミックス基板20との接合界面において高く、回路層30及び放熱層40の表面(セラミックス基板20との接合界面とは反対面)において小さくなる。また、第1アルミニウム板31,41の両面にろう材70が介在していたことにより、第1アルミニウム板31,41であった部分のシリコン濃度は高い状態に維持され、セラミックス基板20との接合界面から0.1mm厚さの範囲におけるシリコン濃度が0.2質量%以上0.6質量%以下の高濃度範囲とされる。
【0029】
そして、このセラミックス基板20との接合界面付近のシリコン濃度が高い状態に維持できているので、接合工程中にろう材70の液相保持時間が長く、液相の範囲が十分に広がってセラミックス基板20と回路層30及び放熱層40(の第1アルミニウム板31,41)との接合を確実にすることができる。
【0030】
なお、本実施形態では各アルミニウム板31,32,41,42をいずれも純度99.99質量%以上のアルミニウムにより形成したので、不純物の粒界析出物が少なく、このため、その析出物とシリコンとの反応によるアルミニウムの部分的溶融が防止され、回路層30及び放熱層40表面へのいわゆるろうシミの発生が少なくなる。特に、回路層30には半導体素子がはんだ付けされるため、そのはんだ層の接合信頼性を高めることができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態において、アルミニウム板31,32,41,42とも、純度99.99質量%以上の純アルミニウム板を用いたが、これに限らず、純度99.9質量%以上の純アルミニウム板や純度99質量%以上の純アルミニウム板を用いることもできる。また、アルミニウム板31,32,41,42の材質がそれぞれ異なっていても良い。
【実施例】
【0032】
窒化珪素からなる厚さ0.32mmのセラミックス基板の片面に2枚のアルミニウム板をアルミニウムシリコン系ろう材を介してそれぞれ接合した。各アルミニウム板の材質、板厚、及びアルミニウムシリコンろう材のシリコン含有量と厚さは表1に示す通りとした。セラミックス基板側から第1アルミニウム板、第2アルミニウム板とした(表には第1Al板、第2Al板と表記している)。
なお、比較例1は第2アルミニウム板を用いなかった。
【0033】
接合は、セラミックス基板、アルミニウム板及びアルミニウムシリコン系ろう材の積層体を図3と同様の加圧装置により2MPa、630℃で30分、加圧加熱して、パワーモジュール用基板の試料を作製した。
【0034】
得られたパワーモジュール用基板の試料について、シリコン濃度、接合性、ろうシミについて評価した。
シリコン濃度は、アルミニウム層の厚さ方向の断面におけるシリコン濃度の分布をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって分析し、セラミックス基板との界面から0.1mmの範囲のシリコン濃度を10か所測定し、その平均値を求めた。
【0035】
接合性の評価としては、超音波探傷装置を用いて、セラミックス基板とアルミニウム板との界面のボイド率を測定した。ボイド率は、超音波探傷装置において白色部で示されることから、その白色部の面積(ボイド面積)と接合すべき面積(接合面積)との関係から、ボイド率(%)=(ボイド面積/接合面積)×100の式により求めた。ボイド率が3%未満を「◎」、3%以上5%未満を「○」、5%以上を「×」とした。
ろうシミは、300個の各試料に対し、接合後の第2アルミニウム板の表面にろうシミが発生しているか否かを目視により評価した。肉眼で把握できる幅1mm以上のシミをろうシミとしてカウントし、その発生率が0%であれば「◎」、発生率が1%未満(0%を除く)であれば「○」、発生率が1%を超えたものは「×」とした。
これらの結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す結果から、セラミックス基板に2枚のアルミニウム板をアルミニウムシリコンろう材を介して接合することにより、接合性が良好であり、セラミックス基板との界面から0.1mmの範囲のシリコン濃度が0.2質量%以上0.6質量%以下と高く維持されていることがわかる。その場合、第1アルミニウムの板厚は、0.1mm以上0.25mm以下であるのが好ましい。
また、第1アルミニウム板の板厚が0.075mm以上0.4mm以下であり、第2アルミニウム板が4Nアルミニウムの場合は、ろうシミの発生も認められなかった。
図4及び図5はEPMAによる断面分析結果を示しており、横軸がセラミックス基板との界面からの距離、縦軸がシリコン濃度を示している。図4が実施例1(測定位置を変えて2か所測定)、図5が比較例1(測定位置を変えて2か所測定)の分析結果である。Xで示す部分がセラミックス基板とアルミニウム板との界面、Yで示す部分が第1及び第2アルミニウム板の界面、Zで示す部分が第2アルミニウム板の表面である。この図4からもわかるように、比較例のものは、セラミックス基板との界面においてはシリコン濃度が高いが、その界面から離れるにしたがってシリコン濃度が小さくなっているのに対して、実施例のものは、セラミックス基板との界面だけでなく、その界面から第1アルミニウム板の厚さの範囲でシリコン濃度が高く維持されている。
【符号の説明】
【0038】
10 パワーモジュール用基板
20 セラミックス基板
30 回路層
31 第1アルミニウム板
32 第2アルミニウム板
40 放熱層
41 第1アルミニウム板
42 第2アルミニウム板
50 半導体素子
60 ヒートシンク
70 アルミニウムシリコンろう材
110 加圧装置
図1
図2
図3
図4
図5