特許第6507741号(P6507741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507741
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】車両のロアアームの結合構造
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20190422BHJP
   B62D 21/11 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B60G7/00
   B62D21/11
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-50469(P2015-50469)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-168947(P2016-168947A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】時實 亮
(72)【発明者】
【氏名】外山 崇道
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−240586(JP,A)
【文献】 独国特許発明第03728880(DE,C1)
【文献】 特開2013−209014(JP,A)
【文献】 実開昭62−074011(JP,U)
【文献】 特開2007−186055(JP,A)
【文献】 特開平05−278422(JP,A)
【文献】 実開昭55−087867(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0159349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端がブッシュを介してアクスルアッシーに結合され、前記アクスルアッシーの車幅方向の両端を支持する一対のロアアームと、
一対のサイドフレームに設けられ、車幅方向に対向しつつ前記各サイドフレームから下方に延在する一対の支持片と、を備え、
前記一対のロアアームの前端が、前記一対の支持片の間に支軸を介して揺動可能に結合され、前記一対のロアアームが互いに車両前方に至るにつれて次第に車幅方向の外側または内側の何れか一方に変位する前開きまたは前閉じの姿勢とされた車両のリンク式サスペンションであって、
前記一対の支持片のうち車幅方向の外側または内側の何れか他方側の支持片の下端は、前記支軸を支持する前記支持片の支軸支持部に対して車幅方向に偏位した箇所に位置し、
前記支軸支持部の下方の前記支持片の箇所と前記下端との間に、下方に至るにつれて車幅方向において前記支軸支持部から次第に離れる傾斜部が設けられており、
前記傾斜部は、前記一対のロアアームを前記サイドフレームに取り付ける際に、前記一対のロアアームが前記前開きの姿勢または前記前閉じの姿勢となるように前記一対のロアアームの前端を車幅方向の外側または内側へ案内する
ことを特徴とする車両のロアアームの結合構造。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記サイドフレームに取り付ける前の状態において、前記ロアアームの前端に設けられた前部ブッシュの外筒の車幅方向の外側または内側の何れか前記他方側の端部と車両上下方向で対向するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両のロアアームの結合構造。
【請求項3】
前記傾斜部の下端は、前記支持片の下端で構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のロアアームの結合構造。
【請求項4】
前記一対の支持片のうちの車幅方向の外側または内側の何れか前記一方側の支持片の下端は、車幅方向において前記支軸支持部と同じ箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の車両のロアアームの結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のロアアームの結合構造に関し、より詳細には車両のリンク式サスペンションにおけるロアアームの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリンク式サスペンションとして、車体に連結された一対のアッパーアームおよび一対のロアアームによりアクスルアッシーを支持すると共に、車体とアクスルアッシーとをラテラルロッドで連結するラテラルロッド付き4リンク式サスペンションが知られている(特許文献1、2参照)。
また、リンク式サスペンションとして、一対のロアアームによりアクスルアッシーを支持すると共に、車体とアクスルアッシーとをラテラルロッドで連結する3リンク式サスペンションも知られている。
このようなリンク式サスペンションでは、一対のロアアームの前端は一対のサイドフレームに、車幅方向に対向しつつ各サイドフレームから下方に延在する一対の支持片の間に支軸を介して揺動可能に結合されている。
また、一対のロアアームの後端は、弾性部材が組み込まれたブッシュを介してアクスルアッシーに結合され、アクスルアッシーはロアアームの後端に対して、ブッシュの弾性部材がたわむ範囲内で上下方向や車幅方向に変位可能となっている。
サスペンションの組み立て手順は以下の通りである。
まず、一対のロアアームの後端をブッシュを介してアクスルアッシーに組み付ける。
次いで、一対のロアアームおよびアクスルアッシーを一対のサイドフレームの下方から上方に移動させ、一対のロアアームの前端を一対の支持片の間に挿入して支軸を介して一対の支持片に結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4677954号公報
【特許文献2】特開2007−320532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一対のロアアームは、車両前方に至るにつれて次第に車幅方向外側に変位する前開きの姿勢で一対のサイドフレームに取り付けられる場合、あるいは、車両前方に至るにつれて次第に車幅方向内側に変位する前閉じの姿勢で一対のサイドフレームに取り付けられる場合がある。
この場合、一対のロアアームの後端はブッシュを介してアクスルアッシーに結合されていることから、ブッシュの弾性部材の弾性力に抗して一対のロアアームを前開きの姿勢に保持した状態で、あるいは、前閉じの姿勢に保持した状態で、一対のロアアームを一対のサイドフレームへ取り付ける作業を行なう必要がある。
すなわち、一対のロアアームを一対のサイドフレームへ取り付ける作業は、ブッシュの弾性部材の弾性力に抗して一対のロアアームを前開きの姿勢に保持する作業、あるいは、前閉じの姿勢に保持する作業が必要であることから、手間暇のかかる煩雑な作業となっている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、一対のロアアームの前端をサイドフレームへ取り付ける作業の効率化を図る上で有利な車両のロアアームの結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、発明は、後端がブッシュを介してアクスルアッシーに結合され、前記アクスルアッシーの車幅方向の両端を支持する一対のロアアームと、一対のサイドフレームに設けられ、車幅方向に対向しつつ前記各サイドフレームから下方に延在する一対の支持片と、を備え、前記一対のロアアームの前端が、前記一対の支持片の間に支軸を介して揺動可能に結合され、前記一対のロアアームが互いに車両前方に至るにつれて次第に車幅方向の外側または内側の何れか一方に変位する前開きまたは前閉じの姿勢とされた車両のリンク式サスペンションであって、前記一対の支持片のうち車幅方向の外側または内側の何れか他方側の支持片の下端は、前記支軸を支持する前記支持片の支軸支持部に対して車幅方向に偏位した箇所に位置し、前記支軸支持部の下方の前記支持片の箇所と前記下端との間に、下方に至るにつれて車幅方向において前記支軸支持部から次第に離れる傾斜部が設けられており、前記傾斜部は、前記一対のロアアームを前記サイドフレームに取り付ける際に、前記一対のロアアームが前記前開きの姿勢または前記前閉じの姿勢となるように前記一対のロアアームの前端を車幅方向の外側または内側へ案内することを特徴とする。
また、本発明は、前記傾斜部は、前記サイドフレームに取り付ける前の状態において、前記ロアアームの前端に設けられた前部ブッシュの外筒の車幅方向の外側または内側の何れか前記他方側の端部と車両上下方向で対向するように形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記傾斜部の下端は、前記支持片の下端で構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記一対の支持片のうちの車幅方向の外側または内側の何れか前記一方側の支持片の下端は、車幅方向において前記支軸支持部と同じ箇所に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
発明によれば、一対のロアアームの前端を一対の支持片の間に挿入して下方から上方に移動させることにより、一対のロアアームの前端が傾斜部によって車幅方向外側あるいは内側に案内されるので、従来のようにブッシュの弾性部材の弾性力に抗して一対のロアアームを前開きの姿勢に保持する作業、あるいは、前閉じの姿勢に保持する作業が軽減され、より簡単にかつより確実に一対のロアアームの前端を一対の支持片の間に挿入できる。したがって、前開き姿勢あるいは前閉じ姿勢の一対のロアアームの前端をサイドフレームへ取り付ける作業の効率化を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、支軸支持部の下方の支持片部分が全て傾斜部で形成されているので、傾斜部による一対のロアアームの前端の案内を容易に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、他方の支持片については支軸支持部の下方の箇所に何ら加工を施していないため、最小限の加工により一対のロアアームの前端をサイドフレームへ取り付ける作業の効率化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の車両のロアアームの結合構造の側面図である。
図2】実施の形態の車両のロアアームの結合構造を下方から見た図である。
図3】ロアアームの前端のサイドフレームへの組み付け前の状態を示す側面図である。
図4】(A)はロアアームの前端のサイドフレームへの組み付け前の状態を示す説明図、(B)はロアアームの前端をサイドフレームに組み付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1図2に示すように、本発明が適用される車両は、一対のサイドフレーム10と、複数のクロスメンバ12とを備え、後輪駆動用のアクスルアッシー14は、一対のロアアーム16、ラテラルロッド18を含んだ3リンク式サスペンション2で懸架されている。
なお、図中、符号FRは車両前方を示し、符号TOPは車両上方を示し、符号LHは車幅方向を示し、符号LH(OUT)は車幅方向外方を示す。
一対のサイドフレーム10は、車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在している。
複数のクロスメンバ12は、車幅前後方向に間隔をおいて車幅方向に延在し一対のサイドフレーム10を連結しており、複数のクロスメンバ12のうち2つのクロスメンバ12は、平面視、アクスルアッシー14を前後に挟んで配置されている。
【0009】
アクスルアッシー14は、プロペラシャフトからエンジンの動力が入力される不図示のディファレンシャルギアと、ディファレンシャルギアの出力を左右の後輪に伝達する不図示のドライブシャフトと、それらを収容するアクスルハウジング1402とを含んで構成されている。
3リンク式サスペンション2は、一対のロアアーム16とラテラルロッド18に加え、一対のスプリング20と、一対のショックアブソーバ22と、スタビライザー24を含んで構成されている。
一対のロアアーム16は、アクスルアッシー14の車幅方向の両端を支持するものであり、車両の前後方向に延在し、前端16Aが一対のサイドフレーム10に連結され、後端16Bがアクスルアッシー14の車幅方向の両端に連結されている。
【0010】
ラテラルロッド18は、一対のサイドフレーム10のうちの一方のサイドフレーム10と、一対のサイドフレーム10のうちの他方のサイドフレーム10側のアクスルアッシー14の車幅方向の端部とを連結している。
すなわち、ラテラルロッド18の一端は、一対のサイドフレーム10のうちの一方のサイドフレーム10に設けられたブラケット26に、軸心を車両前後方向に向けた支軸を介して上下方向に揺動可能に連結されている。
ラテラルロッド18の他端は、一対のサイドフレーム10のうちの他方のサイドフレーム10寄りのアクスルアッシー14に設けられた不図示のブラケットに、軸心を車両前後方向に向けた支軸を介して上下方向に揺動可能に連結されている。
【0011】
一対のスプリング20は、アクスルアッシー14を支えるものである。
図2に示すように、アクスルアッシー14の上方に位置する2つのクロスメンバ12の車幅方向の端部間にブラケット28がそれぞれ架け渡され、一対のスプリング20は、それらブラケットとアクスルアッシー14の両端寄りの箇所との間に設けられている。
一対のショックアブソーバ22は、スプリング20の動きを制限するものである。
一対のショックアブソーバ22は、アクスルアッシー14の両端寄りの箇所と、それら箇所に対応する一対のサイドフレーム10の箇所との間に設けられている。
スタビライザー24は、車体のローリングを抑制するもので、一対のサイドフレーム10とアクスルアッシー14との間に設けられている。
なお、図1において符号30はホイールハブを示している。
【0012】
次にロアアーム16の結合構造についてさらに詳細に説明する。
一対のロアアーム16の後端16Bに不図示のブッシュが取着されている。ブッシュは、ロアアーム16の後端16Bで支持された外筒と、外筒の内周面に取着された弾性部材と、弾性部材の内周面に取着された内筒とを備えている。
このブッシュの内筒の内側にアクスルアッシー14の両端の箇所(アクスルハウジング1402の両端の箇所)が回転可能に挿入されることで、一対のロアアーム16の後端16Bとアクスルアッシー14の両端とが結合されている。
一対のロアアーム16の後端16Bとアクスルアッシー14の両端とが結合された状態で、ロアアーム16の後端16Bに対してアクスルアッシー14の端部は、弾性部材がたわむ範囲内で上下方向や車幅方向に変位可能である。言い換えると、アクスルアッシー14に対してロアアーム16の後端16Bは、弾性部材がたわむ範囲内で上下方向や車幅方向に変位可能である。
【0013】
一対のロアアーム16の前端16Aにブッシュ32が取着されている。ブッシュ32は、図4(A)に示すように、ロアアーム16の前端16Aで支持された外筒3202と、外筒3202の内周面に取着された弾性部材3204と、弾性部材3204の内周面に取着された内筒3206とを備えている。
一対のロアアーム16の前端16Aは一対のサイドフレーム10に、車幅方向に対向しつつ各サイドフレーム10から下方に延在する一対の支持片36A、36Bの間に支軸を介して揺動可能に結合されている。
より詳細には、一対のサイドフレーム10にロアアーム16取着用のブラケット36が設けられている。
図1図2図4(A)に示すように、ブラケット36は、一対の支持片36A、36Bに加え、一対の支持片36A、36Bの前縁間を連結する前連結片36C、一対の支持片36A、36Bの上部間を連結する上連結片36Dを備え、一対の支持片36A、36Bの上端、前連結片36Cの上端、上連結片36Dがサイドフレーム10に溶着されている。
【0014】
本実施の形態では一対のロアアーム16は、前開き姿勢で配置され、一対のロアアーム16は、車両前方に至るにつれて次第に車幅方向外側に変位する姿勢で配置されている。
このような一対のロアアーム16の姿勢に対応して、一対の支持片36A、36Bは次のように設けられている。
図4(A)に示すように、一対の支持片36A、36Bの上部3602は、サイドフレーム10から下方に至るにつれ互いに平行しつつ車幅方向外側に変位する傾斜部となっている。
上部に続く一対の支持片36A、36Bの上下中間部は、互いに平行しつつ上下方向に延在している。
上下中間部は、支軸を支持する支軸支持部3604として形成され、支軸支持部3604は支軸を挿通する支軸挿通孔3606を含んで構成されている。
一対の支持片36A、36Bのうち車幅方向外側に位置する支持片36Aの上下中間部に続く下部3608は、支軸支持部3604と連続状に上下方向に延在している。すなわち、車幅方向外側に位置する支持片36Aの下端は、車幅方向において支軸支持部3604と同じ箇所に位置している。
【0015】
一対の支持片36A、36Bのうち車幅方向内側に位置する支持片36Bの下部の下端3610は、支軸支持部3604に対して車幅方向内側に偏位した箇所に位置している。
そして、支持片36Bの支軸支持部3604に続く下部は、下方に至るにつれて車幅方向において支軸支持部3604から次第に離れる傾斜部3612として形成されている。
【0016】
次にアクスルアッシー14およびロアアーム16の組み付けについて説明する。
まず、アクスルアッシー14の両端にロアアーム16の後端16Bを組み付ける。
次いで、図3に示すように、一対のロアアーム16の前後方向を一対のサイドフレーム10の前後方向に合わせた状態で一対のロアアーム16が組み付けられたアクスルアッシー14を一対のサイドフレーム10の下方から上方に持ち上げる。
この状態で、一対のスプリング20、一対のショックアブソーバ22、スタビライザー24を介してアクスルアッシー14を一対のサイドフレーム10および一対のクロスメンバ12に対して組み付ける。
また、図4(A)、(B)に示すように、一対のロアアーム16の前端16Aをそれぞれブラケット36の一対の支持片36A、36Bの間に挿入し、支持片36A、36Bの支軸挿通孔3606およびロアアーム16の前端16Aのブッシュ32の内筒3206の内側に支軸としてのボルト38を挿通し、ボルト38にナット40を締結することで一対のロアームの前端16Aを一対のサイドフレーム10に対して組み付ける。
【0017】
一対のロアームの前端16Aを一対のサイドフレーム10に組み付ける際、一対のロアアーム16の後端16Bは、ブッシュを介してアクスルアッシー14の両端に結合されているため、ブッシュの弾性部材の弾性力により一対のロアアーム16はアクスルアッシー14の軸心に対して直交する方向に延在した状態となっている。
したがって、一対のロアアーム16を前開き姿勢として組み付けるには、弾性部材の弾性力に抗して一対のロアアーム16を前開き姿勢に保持させて一対の支持片36A、36Bに組み付けなければならない。すなわち、一対のロアアーム16の前端16Aを車幅方向に広げた状態に保持しつつ、一対のロアアーム16の前端16Aを一対の支持片36A、36Bの間に挿入する必要がある。
そして、一対のロアアーム16の前端16Aを車幅方向に広げつつ、一対のロアアーム16の前端16Aを一対の支持片36A、36Bの間に挿入する作業は、手間暇のかかる煩雑な作業である。
【0018】
本実施の形態では、一対の支持片36A、36Bのうち車幅方向内側に位置する支持片36Bの下端は、支軸支持部3604に対して車幅方向内側に偏位した箇所に位置し、支持片36Bの下部は、下方に至るにつれて車幅方向において支軸支持部3604から次第に離れる傾斜部3612として形成されている。
そのため、図4(A)、(B)に示すように、一対のロアアーム16の前端16Aを一対の支持片36A、36Bの間に挿入して下方から上方に移動させることにより、一対のロアアーム16の前端16Aが傾斜部3612によって車幅方向外側に案内されるので、より簡単にかつより確実に一対のロアアーム16の前端16Aを前開きの姿勢として一対の支持片36A、36Bの間に挿入できる。
したがって、前開き姿勢の一対のロアアーム16の前端16Aをサイドフレーム10へ取り付ける作業の効率化を図る上で有利となる。
【0019】
また、本実施の形態では、支軸支持部3604の下方の支持片36B部分が全て傾斜部3612で形成されているので、傾斜部3612による一対のロアアーム16の前端16Aの案内を容易に行なう上で有利となる。
また、一対の支持片36A、36Bの双方に傾斜部3612を設けても良いが、本実施の形態のように、傾斜部3612を車幅方向内側に位置する支持片36Bのみに設けても、前開き姿勢の一対のロアアーム16の前端16Aをサイドフレーム10へ取り付ける作業の効率化を図る上で有利となる。この場合、車幅方向外側に位置する支持片36Aは、その支軸支持部3604と下端とが車幅方向において同じ位置に位置しており、すなわち、車幅方向外側に位置する支持片36Aにつては支軸支持部3604の下方の箇所に何ら加工を施していない。したがって、本実施の形態によれば、最小限の加工により一対のロアアーム16の前端16Aをサイドフレーム10へ取り付ける作業の効率化を図る上で有利となる。
【0020】
なお、本実施の形態では、一対のロアアーム16が前開きの姿勢で一対のサイドフレーム10に取り付けられる場合について説明したが、一対のロアアームが車両前方に至るにつれて次第に車幅方向内側に変位する前閉じの姿勢で一対のサイドフレーム10に取り付けられる場合にも本発明は無論適用される。その場合には、一対の支持片36A、36Bのうちの少なくとも車幅方向外側の支持片36Aの下端が、支軸を支持する支持片36Aの支軸支持部3604に対して車幅方向内側に偏位した箇所に位置し、支軸支持部3604の下方の支持片36Aの箇所と下端との間に、下方に至るにつれて車幅方向において支軸支持部3604から次第に離れる傾斜部が設けられる。
また、本実施の形態では、リンク式サスペンションが3リンク式サスペンションである場合について説明したが、本発明は、3リンク式サスペンションに一対のアッパーアームが加えられたラテラルロッド付き4リンク式サスペンションなど、従来公知の様々なリンク式サスペンションにも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
2 リンク式サスペンション
10 サイドフレーム
14 アクスルアッシー
16 ロアアーム
16A 前端
16B 後端
36A、36B 一対の支持片
3604 支軸支持部
3606 支軸挿通孔
3610 下端
3612 傾斜部
38 ボルト(支軸)
40 ナット
図1
図2
図3
図4