特許第6507757号(P6507757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507757
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】異物解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2206 20180101AFI20190422BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20190422BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20190422BHJP
【FI】
   G01N23/2206
   G01N23/223
   G01N21/3563
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-57291(P2015-57291)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176817(P2016-176817A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祥子
(72)【発明者】
【氏名】土渕 毅
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−258340(JP,A)
【文献】 特開2010−223908(JP,A)
【文献】 特開平06−194319(JP,A)
【文献】 特開2013−017745(JP,A)
【文献】 特開2006−071311(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0196396(US,A1)
【文献】 Vasile-Dan Hodoroaba et al.,Gaining Improved Chemical Composition by Exploitation of Compton-to-Rayleigh Intensity Ratio in XRF Analysis,analytical chemistry,2014年 6月20日,Vol. 86 No. 14,pp. 6858-6864
【文献】 小川理絵、他,散乱X線の理論強度を用いる少量有機飼料の蛍光X線分析,X線分析の進歩42(X線工業分析 第46集),2011年 3月31日,P. 315-324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/3563
G01N 23/00−23/2276
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に含まれる異物としての有機元素を検出する赤外分光光度計および蛍光X線分析装置に接続されるコンピュータ装置を備え、前記試料を解析する異物解析装置であって、
前記赤外分光光度計で測定された前記試料の赤外線スペクトル情報を取得する赤外線スペクトル取得部と、
前記蛍光X線分析装置で測定された前記試料の蛍光X線スペクトル情報を取得する蛍光X線スペクトル取得部と、
前記蛍光X線スペクトル情報中のコンプトン散乱線の強度とレーリー散乱線の強度との比率が1.0以上であるかで、前記試料中に特定の有機元素が含まれるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で特定の有機元素が含まれると判定した場合には、前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、前記試料における含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成する作成部と、
前記赤外線スペクトル情報、前記主成分情報に基づいて、含有量の高いN種類の元素を検出する検出部と、
を含むことを特徴とする異物解析装置。
【請求項2】
さらに、前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、前記検出部で検出されたN種類の元素を前記試料の主成分とし、前記試料中に含まれる元素を定量する定量部を含む請求項1に記載の異物解析装置。
【請求項3】
前記判定部でC,H,Oを含む有機元素が含まれると判定した場合には、前記作成部は前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、CHOバランスを用いて含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成し、
前記判定部C,H,Oを含む有機元素が含まれていないと判定した場合には、前記作成部は前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、CHOバランスを用いずに含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の異物解析装置
【請求項4】
観察された前記試料の外観情報を取得する外観情報取得部と、
前記外観情報を関連付けた前記赤外線スペクトル情報と元素情報との関係を示す専用ライブラリを記憶させるメモリとが含まれ、
前記検出部は、取得した外観情報と専用ライブラリとに基づいて前記N種類の元素を検出することを特徴とする請求項3に記載の異物解析装置。
【請求項5】
前記外観情報は、色、形状及び/又は光沢であることを特徴とする請求項4に記載の異物解析装置
【請求項6】
前記メモリには、前記赤外線スペクトル情報における元素情報を示す一般ライブラリが記憶され、
前記検出部は、前記専用ライブラリを用いるか或いは前記一般ライブラリを用いるかが選択されることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の異物解析装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる異物を解析することができる異物解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料中に含まれる異物を解析することが求められている。そこで、試料に含まれる有機物(特にフィルム、プラスチック、ゴム等)を解析する場合にフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)が利用されている。
【0003】
このようなFTIRとして利用されるマイケルソン二光束干渉計では、赤外光源から発した赤外光をビームスプリッタで固定鏡と移動鏡との二方向に分割し、固定鏡で反射して戻ってきた赤外光と移動鏡で反射して戻ってきた赤外光とをビームスプリッタで合成して一つの光路へ送るという構成を有している。このとき、移動鏡を入射光軸方向で前後に移動させると、分割された二光束の光路長の差が変化するため、合成された光は移動鏡の位置に応じて光強度が変化する干渉光(インターフェログラム)となる。
そして、このような干渉光を試料の表面に照射し、試料の表面で反射した光の波長を赤外検出器で取得してライブラリで調べることにより、試料中の有機物を定量している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、試料に含まれる無機物(例えばCa,Zn,Si,Al,Mg,S,P,Fe,Cl,Cu等)を解析する場合には、蛍光X線分析装置(EDX)や原子吸光光度計(AA)や誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)が利用されている。
【0005】
例えば、EDXでは、試料の表面をアーク放電やスパーク放電により発光させてその発光光を分光器に導入し、各元素に特有の波長を有するスペクトルを取り出して検出し、得られたスペクトルの強度から成分濃度を算出している。
【0006】
ところで、近年では試料の多様化に伴い、有機物と無機物とを含む試料について、その有機物と無機物を解析することが重要になってきており、このような試料に対して分析者はFTIRで解析するとともにEDXで解析している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−148116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、FTIR及びEDXを利用して試料の解析を行う場合は、分析者の知識任せとなるため分析者によって解析結果が異なることがあるとともに、経験の浅い分析者の場合は解析が困難となることがあった。
そこで、本発明は、試料に含まれる異物を正確かつ容易に解析することができる異物解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の異物解析装置は、試料中に含まれる異物としての有機元素を検出する赤外分光光度計および蛍光X線分析装置に接続されるコンピュータ装置を備え、前記試料を解析する異物解析装置であって、前記赤外分光光度計で測定された前記試料の赤外線スペクトル情報を取得する赤外線スペクトル取得部と、前記蛍光X線分析装置で測定された前記試料の蛍光X線スペクトル情報を取得する蛍光X線スペクトル取得部と、前記蛍光X線スペクトル情報中のコンプトン散乱線の強度とレーリー散乱線の強度との比率が1.0以上であるかで、前記試料中に特定の有機元素が含まれるか否かを判定する判定部と、前記判定部で特定の有機元素が含まれると判定した場合には、前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、前記試料における含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成する作成部と、前記赤外線スペクトル情報、前記主成分情報に基づいて、含有量の高いN種類の元素を検出する検出部と、を含むようにしている。
【0010】
ここで、「設定閾値」とは、設計者等によって予め決められた任意の数値であり、例えば、「1.0」等となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の異物解析装置によれば、試料中に異物としての有機元素が含まれるか否かを容易に判定することができる。
【0012】
上記発明で、さらに、前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、前記検出部で検出されたN種類の元素を前記試料の主成分とし、前記試料中に含まれる元素を定量する定量部を含むようにしてもよい。
【0013】
N種類」とは、設計者等によって予め決められた任意の数値であり、例えば、「3種類」や「10種類」等となる。
【0014】
上記発明において、前記判定部でC,H,Oを含む有機元素が含まれると判定した場合には、前記作成部は前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、CHOバランスを用いて含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成し、前記判定部C,H,Oを含む有機元素が含まれていないと判定した場合には、前記作成部は前記蛍光X線スペクトル情報に基づいて、CHOバランスを用いずに含有量の高い少なくとも1種類の元素を示す主成分情報を作成するようにしてもよい。
【0015】
上記した本発明の異物解析装置によれば、解析がほぼ自動化されることにより、短時間でより正確な混合異物解析を実現することができる。
【0016】
上記発明において、観察された前記試料の外観情報を取得する外観情報取得部と、前記外観情報を関連付けた前記赤外線スペクトル情報と元素情報との関係を示す専用ライブラリを記憶させるメモリとが含まれ、前記検出部は、さらに取得した外観情報と専用ライブラリとに基づいて前記N種類の元素を検出するようにしてもよい。
ここで、前記外観情報は、色、形状及び/又は光沢であってもよい。
【0017】
上記発明において、前記メモリには、前記赤外線スペクトル情報における元素情報を示す一般ライブラリが記憶され、前記検出部は、前記専用ライブラリを用いるか或いは前記一般ライブラリを用いるかが選択されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る異物解析装置を示す構成図。
図2】本発明の装置による異物解析方法を説明するフローチャート。
図3】本発明の装置による異物解析方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0020】
図1は、本発明に係る異物解析装置の構成を示す図である。
異物解析装置1は、FTIR10と、EDX20と、コンピュータ30とを備える。
【0021】
FTIR10は、赤外光を出射する赤外光源部11と、インターフェログラム(赤外光)を検出する赤外検出器12aと鏡12bとを有する赤外光検出部12と、試料Sが配置される試料配置部13とを備える。
赤外光源部11は、赤外光を出射する赤外光源11aと、インターフェログラムを作成する主干渉計主要部11bと、鏡11c等とを備える。そして、赤外光源11aから出射された赤外光は、主干渉計主要部11bのビームスプリッタに照射されるようになっている。
【0022】
主干渉計主要部11bには、移動鏡を備えた移動鏡ユニットと、ビームスプリッタと、固定鏡を備えた固定鏡ユニットとが配置されている。
このような主干渉計主要部11bによれば、赤外光源11aから出射された赤外光は、ビームスプリッタに照射されて移動鏡と固定鏡との二方向に分割される。そして、移動鏡で反射された赤外光と固定鏡で反射された赤外光はビームスプリッタへ戻り、これらの赤外光はビームスプリッタで合成されて鏡11cへ送られる。このとき、移動鏡は入射光軸方向Mで前後に往復動しているため、分割された二光束の光路長の差は周期的に変化し、ビームスプリッタから鏡11cへ向かう光は、時間的に振幅が変動するインターフェログラムとなる。
【0023】
試料配置部13は、所定の位置(測定位置)に試料Sが配置されると、鏡11cによって集光された光が試料Sの測定点に照射され、試料Sの測定点で反射又は透過した光が鏡12bによって赤外検出器12aへ集光されて、赤外検出器12aで得られた赤外線スペクトル情報がコンピュータ30に出力される。
【0024】
EDX20は、分光スタンド20aを備え、分光スタンド20aの内部には、上向きに設置された対向電極20bと、発光光が導入される分光器20cとを備える。そして、分光スタンド20aの上面には、対向電極20bと対向する位置に開孔20dが形成されている。
【0025】
このようなEDX20によれば、分光スタンド20aの開孔20dを塞ぐように試料Sの測定点が当接され、この測定点と対向電極20bとの間で放電を行い、その発光光を分光器20cに導入して各元素に特有の波長を有するスペクトルを取り出して検出している。そして、分光器20cで得られた蛍光X線スペクトル情報は、コンピュータ30に出力される。
【0026】
コンピュータ30は、CPU(制御部)31とメモリ32とを備え、表示装置33と入力装置34とが連結されている。
CPU31が処理する機能をブロック化して説明すると、赤外検出器12aから赤外線スペクトル情報を取得する赤外線スペクトル取得部31aと、分光器20cから蛍光X線スペクトル情報を取得する蛍光X線スペクトル取得部31bと、入力装置34から外観情報を取得する外観情報取得部31cと、試料S中に有機元素が含まれるか否かを判定する判定部31dと、蛍光X線スペクトル情報に基づいて主成分情報を作成する作成部(半定量部)31eと、赤外線スペクトル情報と主成分情報と外観情報と専用ライブラリとに基づいてN種類の元素を検出する検出部31fと、蛍光X線スペクトル情報に基づいて試料S中に含まれる元素を定性及び定量する定量部31gと、赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいて分析する補助定量部31hとを有する。
【0027】
また、メモリ32には、専用ライブラリと一般ライブラリとが予め記憶されている(記憶ステップ)。専用ライブラリは、赤外線スペクトル情報における外観情報(色、形状、、光沢の有無)と元素情報との関係を示すものである。また、一般ライブラリは、赤外線スペクトル情報における元素情報を示すものであり、市販品を利用することができる。
【0028】
判定部31dは、蛍光X線スペクトル情報中のコンプトン散乱線の強度とレーリー散乱線の強度との比率と「1.0(設定閾値)」とを比較することで、試料S中に有機元素が含まれるか否かを判定する制御を行う。具体的には、比率が「1.0」以上であると判定したときには、試料S中に有機元素が含まれると判定し、一方、比率が「1.0」未満であると判定したときには、試料S中に有機元素が含まれていないと判定する。
【0029】
作成部(半定量部)31eは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて主成分情報を作成する制御を行う。
例えば、判定部31dで試料S中に有機元素が含まれていると判定した場合には、CHOバランスを用いて、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出するが、種類が6種類以上になる場合は含有量が1番目〜5番目に高い元素を検出し、この5種類の元素を主成分情報とする。また、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出できなかった場合には、含有量が1番目〜3番目に高い元素を検出し、この3種類の元素を主成分情報とする。
一方、判定部31dで試料S中に有機元素が含まれていないと判定した場合には、バランスを用いず、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出するが、種類が6種類以上になる場合は含有量が1番目〜5番目に高い元素を検出し、この5種類の元素を主成分情報とする。また、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出できなかった場合には、含有量が1番目〜3番目に高い元素を検出し、この3種類の元素を主成分情報とする。
【0030】
検出部31fは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と外観情報と専用ライブラリとに基づいてN種類の元素を検出する制御を行う。
例えば、主成分情報に基づいて元素ごとに検索波数範囲を限定し、外観情報と専用ライブラリとを用いて、含有量の高い10種類の元素を検出して表示装置33に表示し、さらにその中から含有量の高い3種類の元素を決定する。
【0031】
定量部31gは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて試料Sに含まれる元素を定性及び定量する制御を行う。
例えば、分析者が、検出部31fで表示された10種類の元素を確認し、10種類の元素を試料Sの主成分とするか、或いは、3種類の元素を試料Sの主成分とするかを示す入力信号を入力装置34で入力する。これにより、定量部31gは、入力された入力信号に基づいて、3種類の元素を試料Sの主成分として試料Sに含まれる元素を定量したり、10種類の元素を試料Sの主成分として試料Sに含まれる元素を定量したりする。
【0032】
補助定量部31hは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいてM種類の元素を検出し、最終的に試料S中に含まれる元素を定量する制御を行う。
例えば、分析者が、所望する検出元素の種類数Mを示す入力信号を入力装置34で入力すると、補助定量部31hは、入力された入力信号と赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいてM種類の元素を検出し、さらにM種類の元素を用いて蛍光X線スペクトル情報や赤外線スペクトル情報から試料Sに含まれる元素を定量する。
【0033】
ここで、本発明に係る異物解析装置1で試料Sを解析する異物解析方法(異物解析装置)について、図2及び図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップs101の処理において、赤外線スペクトル取得部31aは、赤外検出器12aから赤外線スペクトル情報を取得するとともに、蛍光X線スペクトル取得部31bは、分光器20cから蛍光X線スペクトル情報を取得する。
次に、ステップs102の処理において、外観情報取得部31cは、外観情報(色、形状、光沢の有無)が入力される入力画面等を表示装置33に表示し、分析者等によって入力された外観情報を取得する。
【0034】
次に、ステップs103の処理において、判定部31dは、蛍光X線スペクトル情報中のコンプトン散乱線の強度とレーリー散乱線の強度との比率が、「1.0」以上であるか否かを判定する。比率が「1.0」以上であると判定したときには、ステップs104の処理において、作成部31eは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて主成分情報を作成する。
次に、ステップs105の処理において、検出部31fは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と専用ライブラリとに基づいて、含有量の高い10種類の元素を検出して表示装置33に表示し、さらにその中から含有量の高い3種類の元素を決定する。
【0035】
ステップs105の処理において含有量の高い3種類の元素を決定することができたときには、ステップs106の処理において、定量部31gは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて、10種類又は3種類の元素を試料Sの主成分として、試料Sに含まれる元素を定量する。
次に、ステップs107の処理において、ステップs105の処理で得られた赤外線スペクトル解析結果及びステップs106の処理で得られた蛍光X線スペクトル解析結果を表示装置33に表示する。
【0036】
次に、ステップs108の処理において、分析者は、一般ライブラリを用いて分析するか否かを判断する。一般ライブラリの使用を選択したとき、或いは、ステップs105の処理において含有量の高い3種類の元素を決定できなかったとき(うまくヒットしないとき)には、ステップs109の処理において、補助定量部31hは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいて、M種類の元素を検出する。
次に、ステップs110の処理において、補助定量部31hは、蛍光X線スペクトル情報に基づいてM種類の元素を試料Sの主成分とし、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出するが、種類が6種類以上になる場合は含有量が1番目〜5番目に高い元素を検出し、この5種類の元素を主成分情報とする。また、含有量が0.1重量%以上となる元素を検出できなかった場合には、含有量が1番目〜3番目に高い元素を検出し、この3種類の元素を主成分情報とする。
【0037】
次に、ステップs111の処理において、補助定量部31hは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいて、試料Sに含まれる元素を定量する。
次に、ステップs112の処理において、ステップs110の処理で得られた蛍光X線スペクトル解析結果及びステップs111の処理で得られた赤外線スペクトル解析結果を表示装置33に表示する。
【0038】
一方、ステップs103の処理において、比率が「1.0」未満であると判定したときには、ステップs113の処理において、作成部31eは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて主成分情報を作成する。
次に、ステップs114の処理において、検出部31fは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と専用ライブラリとに基づいて、含有量の高い10種類の元素を検出して表示装置33に表示し、さらにその中から含有量の高い3種類の元素を決定する。
【0039】
ステップs114の処理において含有量の高い3種類の元素を決定することができたときには、ステップs115の処理において、定量部31gは、蛍光X線スペクトル情報に基づいて、10種類又は3種類の元素を試料Sの主成分として、試料Sに含まれる元素を定量する。
次に、ステップs116の処理において、ステップs114の処理で得られた赤外線スペクトル解析結果及びステップs115の処理で得られた蛍光X線スペクトル解析結果を表示装置33に表示する。
【0040】
次に、ステップs117の処理において、分析者は、一般ライブラリを用いて分析するか否かを判断する。一般ライブラリの使用を選択したとき、或いは、ステップs114の処理において含有量の高い3種類の元素を決定できなかったときには、ステップs118の処理において、補助定量部31hは、赤外線スペクトル情報と主成分情報と一般ライブラリとに基づいて、M種類の元素を検出する。
【0041】
次に、ステップs119の処理において、ステップs113の処理で得られた蛍光X線スペクトル解析結果及びステップs117の処理で得られた赤外線スペクトル解析結果を表示装置33に表示する。
【0042】
そして、ステップs108の処理又はステップs117の処理において一般ライブラリを用いないと判断したとき、或いは、ステップs112又はステップs119の処理が終了したときには、本フローチャートを終了させる。
【0043】
以上のように、本発明の異物解析装置によれば、赤外線スペクトル情報と蛍光X線スペクトル情報とを取得すれば、その後の解析がほぼ自動化されることによって、短時間でより正確な混合異物解析を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、試料に含まれる異物を解析することができる異物解析装置等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 異物解析装
10 FTIR(赤外分光光度計)
20 EDX(蛍光X線分析装置)
31a 赤外線スペクトル取得部(赤外線スペクトル取得ステップ)
31b 蛍光X線スペクトル取得部(蛍光X線スペクトル取得ステップ)
31d 判定部(判定ステップ)
S 試料
図1
図2
図3