(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種に由来するか、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも1種に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明における各種測定値は、特に述べない限り23℃とする。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分の60重量%以上がポリアミド樹脂であり、前記ポリアミド樹脂100重量部に対し、ポリオレフィン樹脂を0.1〜50重量部を含み、前記ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位からなり、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンおよびビスアミノシクロヘキサンの少なくとも1種に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、かつ、末端アミノ基濃度と数平均分子量Mnが下記式(1)を満たし、前記ポリオレフィン樹脂は、エチレン由来の構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位を含む共重合体をカルボン酸誘導体で変性してなることを特徴とする。
式(1)
X=α[NH
2]+Mn
式(1)中、Mnは、ポリアミド樹脂の数平均分子量を表し、[NH
2]は、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)を表し、Xは、19,000〜45,000の範囲であり、αは480(単位:μeq/g
−1)である。
このような構成とすることにより、高い耐衝撃性を有し、かつ、吸水時の弾性率保持率に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
すなわち、本発明では、吸水時の弾性率保持率が相対的に高い、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位からなり、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも1種に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来ポリアミド樹脂(以下、「キシリレン系等のポリアミド樹脂」という)を選択している。そして、前記キシリレン系等のポリアミド樹脂に、耐衝撃改良成分として知られている特定のポリオレフィン樹脂を配合している。しかしながら、単に、キシリレン系等のポリアミド樹脂に、特定のポリオレフィン樹脂を配合しても、それだけでは、十分な衝撃強度を達成できないことが分かった。
かかる状況のもと、本願発明者は、キシリレン系等のポリアミド樹脂であって、かつ、式(1)を満たすポリアミド樹脂を用いることにより、吸水時弾性率保持率を維持しつつ、高い衝撃強度を達成できることを見出した。このメカニズムは推定であるが、キシリレン系等のポリアミド樹脂であって、式(1)を満たすもの(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)と、特定のポリオレフィン樹脂の間で、共有結合が形成され、適度に高分子量化され、前記特定のポリオレフィン樹脂がポリアミド樹脂組成物中に良好に分散し、シャルピー衝撃強度と吸水時弾性率保持率を向上させていると考えられる。
より具体的には、特定のポリオレフィン樹脂のカルボン酸誘導体と特定のポリアミド樹脂の末端アミノ基が共有結合を形成し、高分子量化する。特定のポリオレフィン樹脂と特定のポリアミド樹脂が共有結合した高分子量体が、そのような共有結合を形成していない特定のポリオレフィン樹脂および特定のポリアミド樹脂の相溶化剤として働くことで、耐衝撃性改質成分である特定のポリオレフィン樹脂がポリアミド樹脂組成物中に分散しやすくなると推定される。ここで、ポリアミド樹脂の数平均分子量が小さいと、特定のポリオレフィン樹脂と結合しても高分子量化しにくくなり、相溶化剤としての働きが劣る傾向にあり、ポリオレフィン樹脂が分散しにくくなる傾向にある。また、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が小さいと、ポリアミド樹脂と特定のポリオレフィン樹脂との間で形成される共有結合の数が減少することで高分子量化しにくくなり、相溶化剤としての働きが劣る傾向にあり、特定のポリオレフィン樹脂が分散しにくくなる傾向にある。一方、ポリアミド樹脂の数平均分子量が大きい、もしくは末端アミノ基濃度が高いと、特定のポリオレフィン樹脂と結合したときに高分子量化が進みすぎる傾向にあり、溶融粘度が過剰に高くなってコンパウンドが困難になる傾向にある。本発明では、キシリレン系等のポリアミド樹脂として、式(1)を満たすポリアミド樹脂を採用することにより、上記バランスを図っている。
【0009】
ここで、本発明では、式(1)について、後述する実施例で採用するデータに基づき、以下の通り、キシリレン系等のポリアミド樹脂の数平均分子量と末端アミノ基濃度の関係を定めている。
図1は、本願実施例において、キシリレン系等のポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度を縦軸とし、キシリレン系等のポリアミド樹脂の数平均分子量を横軸として示したグラフである。ひし形が良好な結果が得られたもの、すなわち、実施例を、三角が劣る結果が得られたもの、すなわち、比較例を示している。
図1から明らかなとおり、良好な結果が得られたひし形と、劣る結果が得られた三角形とは、驚くべきことに、2本の平行な線によって、明確に分けることができた。この2本の平行な線の傾きαは480であり、上側の線のXの値は、45000となり、下側の線のXの値は、19000となった。以上の結果に基づき、式(1)を定めた。Xは、20000以上とすることもでき、さらには22000以上とすることもでき、特には25000以上とすることもでき、より特には27000以上とすることもできる。また、Xは、44000以下とすることもでき、さらには42000以下とすることもでき、特には40000以下とすることもできる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<ポリアミド樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位からなり、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンおよびビスアミノシクロヘキサンの少なくとも1種に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
ポリアミド樹脂は、1種のみ用いても良いし、2種以上用いても良い。2種以上含む場合は、合計量をポリアミド樹脂の量とする。以下、他の成分についても同様に考える。
【0011】
前記ジアミン由来の構成単位は、70モル%以上が、好ましくは80モル%以上が、さらに好ましくは90モル%以上が、特に好ましくは95モル%以上が、キシリレンジアミンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも1種、好ましくはキシリレンジアミンの少なくとも1種に由来する。上限については、特に定めるものではないが、100モル%であってもよい。
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンの少なくとも1種が好ましく、パラキシリレンジアミン0〜70モル%およびメタキシリレンジアミン30〜100モル%であることがより好ましく、パラキシリレンジアミン0〜50モル%およびメタキシリレンジアミン50〜100モル%であることがより好ましい。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの少なくとも1種が好ましい。
キシリレンジアミンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン等が例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0012】
前記ジカルボン酸由来の構成単位は、50モル%以上が、好ましくは70モル%以上が、より好ましくは80モル%以上が、さらに好ましくは90モル%以上が、特に好ましくは95モル%以上が、炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。上限については、特に定めるものではないが、100モル%であってもよい。
炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸がさらに好ましく、アジピン酸およびセバシン酸が特に好ましく、セバシン酸が一層好ましい。
上述以外のジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0013】
本発明で用いるポリアミド樹脂の好ましい実施形態の一例として、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位からなり、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂が挙げられる。
【0014】
さらに、本発明では、上記ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、上記ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も使用できる。ジアミン由来の構成単位、ジカルボン酸由来の構成単位以外の構成単位は、例えば、上記ポリアミド樹脂の5重量%以下とすることができる。
【0015】
本発明で用いるポリアミド樹脂における末端アミノ基濃度は、上記式(1)を満たす限り特に定めるものではないが、下限値は、3μeq/g以上であることが好ましく、4μeq/g以上であることがより好ましく、10μeq/g以上であることがさらに好ましく、12μeq/g以上とすることもできる。上限値としては、80μeq/g以下であることが好ましく、72μeq/g以下であることがより好ましく、40μeq/g以下であることがさらに好ましく、30μeq/g以下とすることもでき、さらには、25μeq/g以下とすることもできる。
本発明で用いるポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、後述する本願実施例に記載の方法で測定した値とする。但し、測定機器については、実施例に記載の機器が入手困難な場合には、他の同種の機器によって測定してもよい(以下、他の測定方法についても同じ)。
【0016】
本発明で用いるポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは150μ当量/g未満、より好ましくは10〜120μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/gのものが好適に用いられる。このような末端基濃度を満たすポリアミド樹脂を用いることにより、粘度がより安定しやすくなり、成形加工性がより向上する傾向にある。
末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.3gを30mlのベンジルアルコールに窒素気流下160〜180℃で溶解し、窒素気流下80℃まで冷却し、撹拌しながらメタノール10mLを加え、N/100水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めることができる。
【0017】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が8000以上であることが好ましく、10000以上であることが好ましく、15000以上であることがさらに好ましい。数平均分子量の上限値としては、34000以下が好ましく、32000以下がより好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂の数平均分子量は、後述する本願実施例に記載の方法で測定した値とする。
【0018】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械特性に優れたポリアミド樹脂組成物(成形材料や成形品等)が得られやすい傾向にある。
【0019】
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0020】
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、150〜350℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましく、180〜280℃であることがさらに好ましく、180〜250℃であることが一層好ましい。融点をこのような範囲とすることにより、成形加工性により優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜110℃が好ましく、55〜110℃がより好ましく、特に好ましくは60〜110℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
【0021】
本発明で用いるポリアミド樹脂の相対粘度は、1.8〜3.2が好ましく、2.0〜3.2とすることもできる。相対粘度の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、水分率が0.01〜0.4%であることが好ましい。このような範囲のポリアミド樹脂を用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。本発明における水分率はJIS K 0068 化学製品の水分率測定方法に従い、カールフィッシャー滴定法によって測定される。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂が、組成物に含まれる樹脂成分の60重量%以上、より好ましくは70重量%以上を占める。上限は特に定めるものではないが、上記ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の合計が樹脂成分の100重量%であってもよい。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。具体的には、ポリアミド6、11、12、46、66、610、612、6I、6/66、6T/6I、6/6T、66/6T、66/6T/6I、他のポリアミドMX、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド等が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。
本発明のポリアミド樹脂組成物における他のポリアミド樹脂の割合は、配合する場合、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分の5〜25重量%の範囲内で配合することが好ましい。また、他のポリアミド樹脂を実質的に配合しない構成とすることもできる。実質的に配合しないとは、例えば、他のポリアミド樹脂の割合が、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分の5重量%未満であることをいう。
【0024】
<ポリオレフィン樹脂>
本発明で用いるポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂は、エチレン由来の構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位を含む共重合体をカルボン酸誘導体で変性してなる。
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、炭素数3〜8のα−オレフィンがより好ましく、炭素数3〜5のα−オレフィンがさらに好ましく、炭素数3または4のα−オレフィンが一層好ましい。炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセンおよび12−エチル−1−テトラデセンが例示され、プロピレンおよび1−ブテンが好ましい。
上記エチレン由来の構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位を含む共重合体は、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。上記共重合体は、ランダム重合体でも、ブロック重合体でもよい。
上記共重合体は、炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位を全構成単位の6〜25モル%の割合で含むことが好ましく、より好ましくは8〜22モル%、さらに好ましくは10〜20モル%である。
また、上記共重合体は、エチレン由来の構成単位を、全構成単位の94〜75モル%の割合で含むことが好ましく、より好ましくは92〜78モル%、さらに好ましくは、90〜80モル%である。
さらに、上記共重合体は、エチレン由来の構成単位および炭素数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。本発明で用いるポリオレフィン樹脂が、他の構成単位を含む場合、上記共重合体の全構成単位の10モル%以下の範囲であることが好ましい。
上記共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体が例示される。
【0025】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂は、上記共重合体をカルボン酸誘導体で変性してなる。カルボン酸誘導体は、上記共重合体の主鎖にグラフトしたり、上記共重合体の主鎖に組み込まれたりしている。本発明では、ポリオレフィン樹脂は、上記共重合体にカルボン酸誘導体がグラフトしたグラフト重合体であることが好ましい。
カルボン酸誘導体としては、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸の無水物であることが好ましく、不飽和カルボン酸の無水物であることがより好ましい。不飽和カルボン酸は、不飽和ジカルボン酸であることが好ましく、不飽和カルボン酸の無水物も、不飽和ジカルボン酸の無水物であることが好ましい。
カルボン酸誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、エンディック酸、無水エンディック酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物がさらに好ましく、マレイン酸および無水マレイン酸が特に好ましく、無水マレイン酸が一層好ましい。
上記共重合体をカルボン酸誘導体で変性する方法は、公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば、カルボン酸誘導体と上記共重合体の原料である単量体とを共重合する方法、カルボン酸誘導体を上記共重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。 無水マレイン酸(下記1)等の無水カルボン酸は、特定のポリアミド樹脂(下記2)の末端アミノ基(下記R
3)と共有結合し、下記3を生成する。下記3は、さらに反応してイミド基を有する下記4を生成したり、さらに、特定のポリアミド樹脂(下記5)の末端アミノ基(下記R
4)と共有結合して、アミド基を有する下記6を生成したりする。
また、マレイン酸(下記7)等のカルボン酸は、特定のポリアミド樹脂(下記8)の末端アミノ基(下記R
7)と共有結合し、上記無水マレイン酸等の場合と同様に、下記に示す9、10、12を生成する。通常は、下記3、4および6、ならびに、下記9、10および12は混合物の状態で組成物中に存在する。
従って、本発明におけるポリアミド樹脂組成物では、特定のポリアミド樹脂と特定のポリオレフィン樹脂がカルボン酸誘導体を介して結合している場合も、本発明の範囲に含まれる。
【化1】
【化2】
【0026】
カルボン酸誘導体による変性率は、0.1〜5.0重量%が好ましく、0.3〜4.0重量%がより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。本発明におけるカルボン酸誘導体による変性率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明で用いるポリオレフィン樹脂の市販品としては、三井化学製タフマー(商品名、グラフト重合体)、三菱化学製ゼラス(商品名)、モンテル製キャタロイ(商品名)などが挙げられる。
【0027】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂100重量部に対し、上記ポリオレフィン樹脂を0.1〜50重量部を含む。ポリオレフィン樹脂の配合量の下限値は、前記ポリアミド樹脂100重量部に対し、1重量部以上が好ましく、7重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましく、13重量部以上が特に、15重量部以上が一層好ましく、20重量部以上がより一層好ましい。ポリオレフィン樹脂の配合量の上限値は、前記ポリアミド樹脂100重量部に対し、45重量部以下が好ましく、35重量部以下がより好ましく、30重量部以下がさらに好ましく、28重量部以下とすることもできる。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に達成される。特に、ポリオレフィン樹脂の量が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、50重量部を超えると急激に分散性が劣る。
なお、本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリオレフィン樹脂以外の他のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよいが、実質的に他のポリオレフィン樹脂を含まない方が好ましい。実質的に含まないとは、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂のうち、他のポリオレフィン樹脂の量が5重量%以下であることをいう。
【0028】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、他のポリアミド樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。具体的には、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における他の熱可塑性樹脂の割合は、配合する場合、樹脂成分の5〜20重量%の範囲内で配合することが好ましい。また、他の熱可塑性樹脂を実質的に配合しない構成とすることもできる。実質的に配合しないとは、例えば、他の熱可塑性樹脂の割合が、樹脂成分の5重量%未満であることをいう。
【0029】
<他の添加剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上述の他、粉末状、繊維状、粒状及び板状等の各種有機または無機充填材、上記ポリオレフィン樹脂以外のエラストマー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、帯電防止剤、核剤、艶消剤、染顔料、着色防止剤、ゲル化防止剤等を配合することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の一実施形態として、ポリアミド樹脂と充填材の合計量が組成物の70重量%以上を占めるポリアミド樹脂組成物が挙げられる。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物の他の実施形態として、ポリアミド樹脂が組成物の70重量%以上を占めるポリアミド樹脂組成物が挙げられる。
【0030】
<ポリアミド樹脂組成物の特性>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度に優れ、例えば、JIS K 7111−1に従った4mm厚さの試験片としたときの、ノッチありシャルピー衝撃強度を10kJ/m
2以上、さらには用途等に応じて、それぞれ、15kJ/m
2以上、48kJ/m
2以上、60kJ/m
2以上、70kJ/m
2以上とすることができる。また、ノッチありシャルピー衝撃強度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、130kJ/m
2以下、さらには、120kJ/m
2以下であっても、実用レベルである。
【0031】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
ポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、必要に応じ配合される他の成分とをV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調整した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、ガラス繊維等の充填材以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維等の充填材を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
【0032】
さらに、ガラス繊維等の充填材以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調整しておき、この混合物をベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、ガラス繊維は押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
【0033】
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0034】
溶融混練に際しての加熱温度は、融点に応じて190〜350℃の範囲から適宜選択することができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。そのため、剪断発熱等を考慮したスクリュー構成を選定することが望ましい。また、混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する観点から、酸化防止剤や熱安定剤を使用することが望ましい。
【0035】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる。成形方法としては、従来公知の成形方法が各種採用できる。具体的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、プレス成形、ダイレクトブロー成形、回転成形、サンドイッチ成形及び二色成形等の成形方法を例示することができる。
本発明の成形品は、繊維、糸、ロープ、チューブ、ホース、フィルム、シート、各種成形材料、各種部品、完成品に広く用いられる。成形材料の一例として、連続繊維に本発明のポリアミド樹脂組成物を含浸させた繊維強化樹脂材料(例えば、プリプレグ)が例示される。ここで用いる連続繊維としては、炭素繊維およびガラス繊維が例示される。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、インサート成形用樹脂として用いることができる。具体的には、金型内に、樹脂フィルムやプリプレグ、その他のインサート部品を配した後、本発明のポリアミド樹脂組成物を注入して、一体化することが好ましい。ここで、インサート部品を構成する樹脂は、ポリアミド樹脂であることが好ましく、本発明のポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。尚、本発明のポリアミド樹脂組成物をインサート部品として用いても良いことは言うまでもない。この場合、注入する樹脂はポリアミド樹脂であることが好ましい。
利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
特に、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品は、衝撃強度が高く、かつ、吸水時弾性率保持率が高いことから、釣り糸等にも好ましく用いられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0037】
合成例
<MP10 サンプル1の合成>
セバシン酸10.00kgに次亜リン酸ナトリウム一水和物7.7gおよび酢酸ナトリウム4.0gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.68kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を250℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0038】
<MP10 サンプル2の合成>
MP10 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において195℃で3時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0039】
<MP10 サンプル3の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.70kgを用いること以外は、MP10 サンプル2と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0040】
<MP10 サンプル4の合成>
セバシン酸10.00kgに次亜リン酸ナトリウム一水和物7.7gおよび酢酸ナトリウム4.0gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.69kgを1.5時間かけて徐々に滴下し、温度を230℃まで上昇させた。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0041】
<MP10 サンプル5の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.63kgを用いること以外は、MP10 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.1%)を得た。
【0042】
<MP10 サンプル6の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.65kgを用いること以外は、MP10 サンプル2と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0043】
<MP10 サンプル7の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.73kgを用いること以外は、MP10 サンプル2と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0044】
<MP10 サンプル8の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.56kgを用いること以外は、MP10 サンプル2と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0045】
<MP10 サンプル9の合成>
混合ジアミン(メタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=70:30 mol/mol)6.60kgを用いること以外は、MP10 サンプル2と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MP10、融点215℃、水分率:0.02%)を得た。
【0046】
<MXD10 サンプル1の合成>
セバシン酸10.00kgに次亜リン酸ナトリウム一水和物7.7gおよび酢酸ナトリウム4.0gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン6.69kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を250℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(MXD10、融点190℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0047】
<MXD10 サンプル2の合成>
メタキシリレンジアミン6.56kgを用いること以外はMXD10 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において170℃で5時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(MXD10、融点190℃、水分率:0.02%)を得た。
【0048】
<MXD10 サンプル3の合成>
メタキシリレンジアミン6.75kgを用いること以外はMXD10 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MXD10、融点190℃、水分率:0.1%)を得た。
【0049】
<PXD10 サンプル1の合成>
セバシン酸10.00kgに次亜リン酸カルシウム1.2gおよび酢酸ナトリウム0.8gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、パラキシリレンジアミン6.68kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を300℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(PXD10、融点290℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0050】
<PXD10 サンプル2の合成>
パラキシリレンジアミン6.56kgを用いること以外はPXD10 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において200℃で3時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(PXD10、融点290℃、水分率:0.02%)を得た。
【0051】
<PXD10 サンプル3の合成>
パラキシリレンジアミン6.75kgを用いること以外はPXD10 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(PXD10、融点290℃、水分率:0.1%)を得た。
【0052】
<MXD6 サンプル1の合成>
アジピン酸8.90kgに次亜リン酸ナトリウム一水和物7.7gおよび酢酸ナトリウム4.0gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン8.26kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を250℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(MXD6、融点237℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0053】
<MXD6 サンプル2の合成>
メタキシリレンジアミン8.15kgを用いること以外はMXD6 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において200℃で3時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(MXD6、融点237℃、水分率:0.05%)を得た。
【0054】
<MXD6 サンプル3の合成>
メタキシリレンジアミン8.31kgを用いること以外はMXD6 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(MXD6、融点237℃、水分率:0.1%)を得た。
【0055】
<1,3−BAC6 サンプル1の合成>
アジピン酸8.70kgに次亜リン酸ナトリウム一水和物7.7gおよび酢酸ナトリウム4.0gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、シス/トランス=74/26 mol/mol)8.42kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を250℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(1,3−BAC6、融点232℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0056】
<1,3−BAC6 サンプル2の合成>
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、シス/トランス=74/26 mol/mol)8.31kgを用いること以外は1,3−BAC6 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において200℃で3時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(1,3−BAC6、融点232℃、水分率:0.05%)を得た。
【0057】
<1,3−BAC6 サンプル3の合成>
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、シス/トランス=74/26 mol/mol)8.49kgを用いること以外は1,3−BAC6 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(1,3−BAC6、融点232℃、水分率:0.1%)を得た。
【0058】
<1,4−BAC10 サンプル1の合成>
セバシン酸9.90kgに次亜リン酸カルシウム1.2gおよび酢酸ナトリウム0.8gを加え、反応缶内で0.1MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC、シス/トランス=15/85 mol/mol)6.90kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を300℃まで上昇させた。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化して、ポリアミド樹脂(1,4−BAC10、融点276℃、水分率0.1%)のペレット15kgを得た。
【0059】
<1,4−BAC10 サンプル2の合成>
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC、シス/トランス=15/85 mol/mol)6.78kgを用いること以外は1,4−BAC10 サンプル1と同様に重合を行い、得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に仕込み、減圧状態(0.5〜10Torr)において200℃で3時間加熱を続けることで、得られたペレットの固相重合を行い、ポリアミド樹脂(1,4−BAC10、融点276℃、水分率:0.02%)を得た。
【0060】
<1,4−BAC10 サンプル3の合成>
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC、シス/トランス=15/85 mol/mol)6.98kgを用いること以外は1,4−BAC10 サンプル1と同様に重合を行い、ポリアミド樹脂(1,4−BAC10、融点276℃、水分率:0.1%)を得た。
【0061】
<<その他のポリアミド樹脂>>
PA6:UBEナイロン 1024B(宇部興産株式会社製)
【0062】
<ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)の測定>
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により測定した。具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めた。また、検量線は6水準のポリメチルメタクリレート(PMMA)をHFIPに溶解させて測定し作成した。
【0063】
<ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度([NH
2])の測定>
試料(ポリアミド樹脂)0.5gを30mLのフェノール/エタノール=4/1(体積比)に溶解させ、メタノール5mLを加え、滴定液として0.01規定の塩酸にて自動滴定装置(平沼製作所製、COM−2000)にて滴定した。試料を加えず同様に滴定したものをブランクとし、下記式より末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)を算出した。
末端アミノ基濃度=(A−B)×f×10/C
(A:滴定量(mL)、B:ブランク滴定量(mL)、f:滴定液のファクター、C:試料量(g))。
本願実施例で用いた滴定液のファクターfは1.006である。
【0064】
<相対粘度>
ISO307に従い、相対粘度を測定した。具体的には、得られたポリアミド樹脂ペレット0.2gを精秤し、96重量%硫酸20mlに、25℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96重量%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から下式により相対粘度を算出した。結果を下記表2に示した。
相対粘度=t/t0
【0065】
<式(1)の値の算出>
上記で得られた数平均分子量および末端アミノ基濃度を下記式に代入して算出した。
式(1)
X=α[NH
2]+Mn
式(1)中、Mnは、ポリアミド樹脂の数平均分子量を表し、[NH
2]は、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)を表し、αは480(単位:μeq/g
−1)である。
【0066】
ポリオレフィン樹脂:下記表1に示すものを用いた。
【表1】
PO5(モデックAP P502)は、α‐オレフィン由来の構成単位を含まないポリオレフィン樹脂である。変性率の単位は、重量%である。
【0067】
<カルボン酸誘導体による変性率の測定>
試料(ポリオレフィン樹脂)0.15gに30mLのキシレンを加えて100℃で加熱し、試料を溶解させた。試料溶解後、エタノール2mlと指示薬(フェノールフタレイン液)を加え、滴定液として0.1規定の水酸化カリウムのメタノール溶液を用いて中和滴定を行った。試料を加えず同様に滴定したものをブランクとし、下記式よりカルボン酸誘導体による変性率を算出した。
カルボン酸誘導体による変性率(重量%)=(A−B)×f×100/C/2/1000000XDX100
(A:滴定量(mL)、B:ブランク滴定量(mL)、f:滴定液のファクター、C:試料量(g)、D:カルボン酸誘導体ユニットの分子量)。
本願実施例で用いた滴定液のファクターfは1.005である。
【0068】
実施例1
後述する表に示すポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂を下記表2に示す量(重量部)となるように秤量し、タンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械製、TEM37BS)の根元から投入し、溶融して押し出し、ストランドをネットベルトで空冷した後にペレタイジングし、ペレットを作製した。押出機の温度設定は、下記表2に示した。
【0069】
<シャルピー衝撃強度の測定>
上記で得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製、型式「SE130DU−HP」)を用いて、表2または表3に記載のシリンダー温度、金型温度30℃、成形サイクル55秒の条件で射出成形し、ISO多目的試験片(厚み:4mm)を成形した。このISO多目的試験片を、2枚の厚み6mmのガラス板で挟んだ状態で、150℃で1時間加熱することで、アニール処理を行った。このISO多目的試験片を、23℃/50%相対湿度の環境で1週間保管して調湿した後、JIS K 7111−1に従い、ノッチありシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m
2)を測定した。結果を下記表2に示した。
【0070】
<吸水時弾性率保持率>
上記<シャルピー衝撃強度の測定>と同様に、ISO多目的試験片の射出成形およびアニール処理を行った。このISO多目的試験片を、23℃/50%RHの環境で1週間保管して調湿した後、JIS K 7171に従い、曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。また、このISO多目的試験片を、JIS K 7114に従い、純水に23℃で28日間浸漬した後、JIS K 7171に従い、曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。下記式より吸水時弾性率保持率を算出した。
吸水時弾性率保持率(%)=A/BX100
(A:純水に浸漬後の曲げ弾性率(GPa)、B:純水に浸漬する前の曲げ弾性率(GPa))
結果を下記表2または表3に示した。
【0071】
<他の実施例および比較例>
実施例1と同様にして、但し、ポリアミド樹脂の種類、ポリオレフィン樹脂の種類および配合量、押出機の設定温度を下記表2または表3に示す通り変更し、実施例および比較例のペレットを製造した。また、下記表中、ポリオレフィン樹脂の種類欄が、「−」となっているものは、ポリオレフィン樹脂を添加していないことを意味する。また、後述するとおり、コンパウンドができなかった比較例については、シャルピー衝撃強度および吸水時弾性率保持率についての測定は行っておらず、「−」と示した。
以下に結果を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
上記結果から明らかなとおり、本発明のポリアミド樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度が高く、かつ、吸水時弾性率保持率が高かった。これに対し、ポリオレフィン樹脂を配合しない場合(比較例1〜8)では、シャルピー衝撃強度が劣っていた。
また、ポリオレフィン樹脂の量が多い場合(比較例9)、分散不良により、コンパウンドができなかった。
さらに、本発明で規定するポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂を用いた場合(比較例10)、シャルピー衝撃強度が劣ってしまった。
また、式(1)のXが19000未満の場合(比較例11〜17)、シャルピー衝撃強度が劣ってしまった。
一方、式(1)のXが45000を超える場合(比較例18〜22)、粘性が強くコンパウンドができなかった。
さらに、ポリアミド樹脂として、本発明で規定するポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を用いた場合(比較例23)、吸水時の弾性率保持率が低く、実用に耐えないものであった。