(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507957
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】マイクロチップ電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
G01N27/447 331E
G01N27/447 331Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-177929(P2015-177929)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-53726(P2017-53726A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】荒井 昭博
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−251821(JP,A)
【文献】
特開2009−265032(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02362212(EP,A2)
【文献】
特開平04−190134(JP,A)
【文献】
特開2009−109240(JP,A)
【文献】
特開2003−222633(JP,A)
【文献】
特表2005−501234(JP,A)
【文献】
国際公開第01/071331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電気泳動により試料を分離するための分離流路を有するとともにその分離流路の両端に上面側が開口したリザーバを有するマイクロチップを保持しておくマイクロチップ保持部と、
前記マイクロチップ保持部に保持されたマイクロチップの上面を覆うように前記マイクロチップ保持部に取り付けられ、前記リザーバのそれぞれの直上の位置に前記リザーバをそれぞれ露出させる貫通孔を有するチップカバーと、
前記チップカバーの前記貫通孔の周縁部と前記マイクロチップの前記リザーバの周縁部との間に挟み込まれて前記貫通孔の周縁部と前記リザーバの周縁部との間を封止する弾性部材と、
前記チップカバーの前記貫通孔を介して前記リザーバに流体を供給し又は前記リザーバ内の液を吸入するリザーバアクセス機構と、を備えたマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項2】
前記リザーバアクセス機構は、先端部がテーパ形状となっており、その先端部が鉛直下方向を向き、先端から分離媒体を吐出するニードルを含み、
前記チップカバーの前記貫通孔のうち前記マイクロチップの前記分離流路の一端側のリザーバに対応する貫通孔は、前記マイクロチップと対向する面側にいくにしたがって内径が小さくなるようにその内側面が傾斜したテーパ形状部を有し、そのテーパ形状部において、前記マイクロチップと対向する面とは反対側の面側から当該貫通孔に挿入された前記ニードル先端部の外周面を液密を保って保持するように構成されている請求項1に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項3】
前記マイクロチップは、前記リザーバの内側から前記マイクロチップ上面の前記弾性部材に囲われた領域の外側へ引き出されたチップ側電極を有し、
前記チップカバーの前記マイクロチップと対向する面側に、前記チップ側電極と接するカバー側接点を有する請求項1又は2に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項4】
前記マイクロチップ保持部は、複数の前記マイクロチップを同一平面内において保持するものであり、
前記チップカバーは、前記マイクロチップ保持部に保持された複数の前記マイクロチップの上面を同時に覆うものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電気泳動により試料を分離するための分離流路を有し、その分離流路の両端に液を貯留するためのリザーバを有するマイクロチップを用いて電気泳動分析を行なうマイクロチップ電気泳動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップ電気泳動では、プレートの内部に分離用流路を含む電気泳動流路を有するマイクロチップを使用し、その分離用流路の一端側に導入されたDNA、RNA又はタンパク質などの試料をその分離用流路の両端間に印加した電圧によりその分離用流路の他端方向に電気泳動させることにより分離させて検出する。
【0003】
上記のマイクロチップ電気泳動を全自動で行なう装置として、分離用流路の一端側に設けられたリザーバに分離媒体などの液を供給するためのニードルや、リザーバに供給された分離媒体を加圧により分離流路内に充填する加圧機構、分離用流路の他端側に設けられたリザーバ側に溢れてきた分離媒体を吸入する吸入ノズルを備えたものがある(特許文献1参照。)。
【0004】
このようなマイクロチップ電気泳動装置では、分離流路内に分離媒体を充填する際、ニードルからリザーバの一つに分離媒体を吐出した後、そのリザーバの上面を封止した状態でエアを供給して加圧することによって分離媒体を分離流路内に送り込み、分離流路の反対側端部のリザーバでは、分離流路から出てきた分離媒体を吸入ノズルによって吸入する。また、分離流路内の分離媒体を排出する際にも、リザーバの上面を封止した状態でエアを供給して加圧することによって分離媒体を反対側のリザーバへ送り出し、吸入ノズルで吸入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4375031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2枚のプレートを貼り合わせて構成されたマイクロチップでは、リザーバの容量がリザーバ用の貫通穴が設けられたプレートの厚みとその貫通穴の内径によって規定され、その容量はせいぜい2〜3μL程度である。かかる微少容量で、例えば5分以上の電気泳動を連続的に行なうためには、マイクロチップを構成するプレートとは別の部材を用いてリザーバ容量を増やすなどの工夫が必要となる。しかし、そうするとマイクロチップの構成が複雑になり、コストアップにつながる上、リザーバ内の自動洗浄が困難になり、マニュアル操作による洗浄が必要となる。
【0007】
また、リザーバ容量が微小であると、全自動で洗浄を繰り返しながら多検体を分析する場合には、リザーバ容量を超えない程度の微量の分注と吸入を何度も繰り返す必要があり、分析時間が長くなるという問題があった。さらに、分離流路内の残留溶液の排出を加圧によって行なう場合に、洗浄と分析を何度も繰り返すうちに、加圧による残留溶液の排出の際の飛沫がマイクロチップの上面に散らばり、最悪のケースではリザーバ間が短絡するという問題も生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、上記のようなマイクロチップ電気泳動装置において、マイクロチップの構成を複雑にすることなくリザーバの容量を確保するとともに、マイクロチップの上面への飛沫の堆積を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の一実施形態は、内部に電気泳動により試料を分離するための分離流路を有するとともにその分離流路の両端に上面側が開口したリザーバを有するマイクロチップを保持しておくマイクロチップ保持部と、マイクロチップ保持部に保持されたマイクロチップの上面を覆うように配置され、リザーバのそれぞれの直上の位置にリザーバをそれぞれ露出させる貫通孔を有するチップカバーと、チップカバーにおける貫通孔の周縁部とマイクロチップのリザーバの周縁部との間に挟み込まれて貫通孔の周縁部とリザーバの周縁部との間を封止するリング状の弾性部材と、チップカバーの貫通孔を介してリザーバに流体を供給し又はリザーバ内の液を吸入するリザーバアクセス機構と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の一実施形態によれば、マイクロチップの上面を覆うようにチップカバーが設けられているので、マイクロチップ表面への埃や微粒子の堆積を防止できる。そして、チップカバーはマイクロチップの分離流路の両端に設けられたリザーバのそれぞれを露出させる貫通孔を有し、貫通孔の周縁部とリザーバの周縁部との間が弾性部材によって封止されているので、分離流路に分離媒体を充填する際や分離流路の分離媒体を加圧により排出する際などに、リザーバからの飛沫がマイクロチップの上面に飛び散ることが防止され、分離流路への分離媒体の充填や分離流路の洗浄を容易に行なうことができる。また、チップカバーの貫通穴の周縁部とリザーバの周縁部との間が弾性部材によって封止されているので、チップカバーの貫通穴がリザーバと連続して1つのリザーバを形成し、リザーバ容量を増大させることとなる。これにより、マイクロチップの構成を複雑にすることなくリザーバの容量を増やすことができる。さらには、チップカバーが弾性部材を介してマイクロチップを押圧するため、マイクロチップの浮き上がりが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マイクロチップ電気泳動装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】同実施例における、(A)マイクロチップ保持部、(B)チップカバーの平面図である。
【
図3】同実施例において、マイクロチップ上にチップカバーが配置された状態を示す断面図である。
【
図4】同実施例において、分離媒体充填時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の一実施形態において、リザーバアクセス機構として、先端部がテーパ形状となっており、その先端部が鉛直下方向を向き、先端から分離媒体を吐出するニードルを含むものがある。その場合、チップカバーの貫通孔のうちマイクロチップの分離流路の一端側のリザーバに対応する貫通孔は、マイクロチップと対向する面側にいくにしたがって内径が小さくなるようにその内側面が傾斜したテーパ形状部を有し、そのテーパ形状部において、マイクロチップと対向する面とは反対側の面側から当該貫通孔に挿入されたニードル先端部の外周面を液密を保って保持するように構成されていることが好ましい。
【0013】
従来、分離流路への分離媒体の充填は、ニードルによってリザーバに分離媒体を供給した後、リザーバ上面を封止しながらエアを供給する機構を用いて加圧する必要があった。これに対し、チップカバーの貫通孔を上記構造にすることで、分離媒体を供給するニードルをその貫通孔に挿入するだけでリザーバ上面を封止でき、ニードルの先端から分離媒体を吐出するだけで分離流路への分離媒体の充填を行なうことができる。したがって、分離媒体の充填に要する工程数が少なくなり、一連の分析動作に要する時間を短縮することができる。
【0014】
また、マイクロチップは、リザーバの内側からマイクロチップ上面の弾性部材に囲われた領域の外側へ引き出されたチップ側電極を有し、チップカバーのマイクロチップと対向する面側にカバー側接点を有することが好ましい。そうすれば、マイクロチップの各リザーバへの電気的な接続が容易になる。
【0015】
以下、図面を用いてマイクロチップ電気泳動装置の一実施例について説明する。まず、
図1を用いて、一実施例の全体の構成について説明する。
【0016】
マイクロチップ4を上面に設置するマイクロチップステージ2(マイクロチップ保持部)が設けられている。この実施例では、マイクロチップステージ2の上面に4枚のマイクロチップ4が設置できるようになっている。図示は省略されているが、マイクロチップステージ2内には、マイクロチップ4の分離流路の所定位置に対して、試料を励起させる励起光を照射する光源や励起光により励起された試料から発せられた蛍光を検出する検出器が設けられている。
【0017】
マイクロチップステージ2の上面に、マイクロチップ4を覆うチップカバー6がネジ8によって固定されている。チップカバー6は、マイクロチップ4に設けられているリザーバ42a−42d(
図2(A)参照。)に対応する位置に貫通孔50a−50d(
図2(B)参照。)を有し、それらの貫通孔50a−50dを介してマイクロチップ4のリザーバに対し所定の処理を行なうことができるようになっている。
【0018】
チップカバー6の端部に端子接続部48(
図2(B)参照。)が設けられており、マイクロチップ4に設けられている流路38,40(
図2(A)参照。)の両端間に電圧を印加する電圧印加装置14の接続端子12がその端子接続部48に接続されている。後述するが、チップカバー6は、マイクロチップ4と対向する面にマイクロチップ4のリザーバから引き出された電極44a−44d(
図2(A)参照。)と接触する電極52a−52d(
図2(B)参照。)が設けられており、その電極52a−52dが配線パターンによって端子接続部48(
図2(B)参照。)まで引き出されている。
【0019】
マイクロチップステージ2の側方にマイクロタイタプレート16が配置されており、そのマイクロタイタプレート16の上面に、試料や分離媒体を収容する穴18が設けられている。
【0020】
マイクロタイタプレート16に収容された試料や分離媒体をマイクロチップ4のリザーバに供給するためのリザーバアクセス機構として分注部20が設けられている。分注部20はニードル22、シリンジポンプ24、切替バルブ26及び洗浄液ボトル28を有する。ニードル22は、先端が鉛直下方向を向いた状態で、マイクロチップステージ2とマイクロタイタプレート16の上方において水平面内方向(X、Y方向)と鉛直方向(Z方向)に移動するように構成されている。シリンジポンプ24はニードル22の基端に切替バルブ26を介して接続されている。切替バルブ26はシリンジポンプ24をニードル22側又は洗浄液ボトル28側のいずれか一方に選択的に接続する。
【0021】
さらに、マイクロチップ4のリザーバ内の液を吸入する吸入ノズル32を3つ備えた吸入部30が設けられている。吸入部30は、水平面内方向の一方向(X方向)と鉛直方向(Z方向)へ移動するように構成されている。3つの吸入ノズル32は、マイクロチップ4の3つのリザーバ42b−42dに同時に挿入されるようになっている。マイクロチップ4の内部の流路38及び40への液の注入や洗浄は、リザーバ42a側からニードル22によって液を供給すると同時に、流路38及び40から流出した液をリザーバ42b−42d側で吸入ノズル32によって吸入することにより行なう。
【0022】
図2を用いて、マイクロチップステージ2及びチップカバー6について説明する。
【0023】
図2(A)に示されているように、マイクロチップステージ2の上面の4か所に、マイクロチップ4を保持するチップホルダ34が設けられている。マイクロチップステージ2の上面の2ヶ所にチップカバー6を固定するためのネジ穴36が設けられている。チップカバー6にもネジ8を貫通させる穴46を有する。
【0024】
マイクロチップステージ2のチップホルダ34に保持されるマイクロチップ4は、電気泳動によって試料の分離を行なうための分離流路38と、試料を分離流路38に電気的に導入するための試料導入流路40が設けられている。分離流路38の一端にリザーバ42a、他端にリザーバ42bが設けられ、試料導入流路40の一端にリザーバ42c、他端にリザーバ42dが設けられている。マイクロチップ4の上面には、各リザーバ42a,42b,42c及び42dの内部からマイクロチップ4の一端側へ引き出された電極パターン44a,44b,44c及び44d(チップ側電極)が設けられている。
【0025】
チップカバー6は、チップホルダ34に保持された各マイクロチップ4のリザーバ42a−42dの直上にくる位置に、貫通孔50a−50dを備えている。チップカバー6の下面には、マイクロチップ4の各電極パターン44a−44dと電気的な接触をとるための電極52a−52d(カバー側接点)が設けられている。各電極52a−52dは配線パターンによってチップカバー6の一端部に設けられた端子接続部48まで引き出されている。端子接続部48には、電圧印加装置14の接続端子12(
図1参照)が接続され、各電極52a−52dを通じてマイクロチップ4の各リザーバ42a−42dへの電圧印加が行われる。
【0026】
チップカバー6をマイクロチップステージ2上に設置した状態における、マイクロチップ4とチップカバー6の断面を
図3に示す。なお、この図では、1枚のマイクロチップ4における分離流路38の一端側のリザーバ42aの部分と他端側のリザーバ42bの部分の構造を示しているが、リザーバ42c及び42dの部分の構造はリザーバ42bの部分の構造と同じである。
【0027】
チップカバー6の貫通孔50aが設けられている部分の下面側に、マイクロチップ4側へ隆起した隆起部54aが設けられている。貫通孔50aはチップカバー6の上面から隆起部54aの端面まで貫通するように設けられている。隆起部54aの端面の開口の縁に凹部55aが設けられており、その凹部55aによって弾力性を有する樹脂からなる円環状のOリング56a(弾性部材)が支持されている。Oリング56aは隆起部54aの端面とマイクロチップ4の上面におけるリザーバ42aの開口の周囲との間に挟み込まれ、リザーバ42aと貫通孔50aとの間を、液密を保って封止する。
【0028】
貫通孔50aは、下面側に内径の小さい小径部58を有する。Oリング56aによってリザーバ42aと小径部58は互いに連続した空間となるため、必要に応じて、リザーバ42a及び小径部58からなる空間を大容量のリザーバとして使用することができる。
【0029】
電極パターン44aはリザーバ42a内からマイクロチップ4の上面における隆起部54a直下の領域よりも外側にまで引き出されている。チップカバー6側の電極52aは、その端部が確実に電極パターン44aと接するように、板バネ状に設けられている。
【0030】
チップカバー6の貫通孔50bが設けられている部分の下面側にも、マイクロチップ4側へ隆起した隆起部54bが設けられている。貫通孔50bはチップカバー6の上面から隆起部54bの端面までを貫通するように設けられている。隆起部54bの端面の開口の縁に凹部55bが設けられており、その凹部55bによってOリング56bが支持されている。Oリング56bは隆起部54bの端面とマイクロチップ4の上面におけるリザーバ42bの開口の周囲との間に挟み込まれ、リザーバ42bと貫通孔50bとの間を、液密を保って封止する。Oリング56aによってリザーバ42bと貫通孔50aは互いに連続した空間となるため、必要に応じて、リザーバ42b及び貫通孔50aからなる空間を大容量のリザーバとして使用することができる。
【0031】
電極パターン44bはリザーバ42b内からマイクロチップ4の上面における隆起部54b直下の領域よりも外側にまで引き出されている。チップカバー6側の電極52bは、その端部が確実に電極パターン44bと接するように、板バネ状に設けられている。
【0032】
図4に示されているように、貫通孔52aの小径部58は、ニードル22の先端部のみが挿入可能な内径を有し、小径部58の上方に、上面側へ行くにしたがって内径が大きくなるように傾斜したテーパ形状部60が設けられている。貫通孔50aの小径部58にニードル22の先端が挿入されると、ニードル22の先端部の外周面と小径部58とテーパ形状部50との境界部分とが線接触して封止され、小径部58よりも下方側の空間の液密が保たれる。貫通孔50bは、液を吸入するためのノズル32の外径よりも大きい内径を有する。
【0033】
これにより、ニードル22を貫通孔50aに挿入して接続し、ニードル22の先端から液を吐出することで、リザーバ42aの上面を封止しつつエアによる加圧を行なう加圧機構を用いることなく、分離流路38内や試料導入流路40内に液を導入することができる。これにより、分離流路38や試料導入流路40への分離媒体の導入を短時間で行なうことができる。
【0034】
また、従来、分離流路38や試料導入流路40の内部の洗浄は、リザーバ42aに洗浄液を供給した後、加圧機構によってリザーバ42a側を加圧して洗浄液を分離流路38や試料導入流路40の内部に送り込み、リザーバ42b−42d側でそれらの流路38,40から流出した液を吸入するという動作を繰り返すことによって行なっていたため、長時間を要していた。
【0035】
これに対し、この実施例の構成では、ニードル22を貫通孔50aに挿入するだけでリザーバ42a側の液密が保たれるため、加圧機構を用いることなく、ニードル22から連続的に液を吐出して洗浄を行なうことができる。これにより、各流路38,40の洗浄に要する時間を短縮することができる。
【0036】
各リザーバ42a−42dの上面の開口の周囲が、チップカバー6との間に挟み込まれたOリングによって封止されているため、各リザーバ42a−42dから液が飛散してマイクロチップ4の上面に付着することが防止される。
【0037】
また、マイクロチップ4のリザーバ42aの容量はマイクロチップ4を構成するプレートの厚みと穴の内径で決まり、例えば2−3μL程度である。これを用いて、例えば5分以上の電気泳動を連続的に行なおうとすると、リザーバの容量が不足するため、別の部材を用いてリザーバの容量を増やすなどの工夫が必要となる。これに対し、この実施例では、チップカバー6の貫通孔50a−50dがリザーバ42a−42dと連続した空間を構成することによって大容量のリザーバとして用いることができるため、別の部材を用いるなどの工夫は不要である。
【0038】
以上において説明した実施例は、マイクロチップステージ2の上面に設置された複数のマイクロチップ4の上面を共通のチップカバー6で覆うものであるが、各マイクロチップ4の上面を個別に覆うものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 マイクロチップステージ
4 マイクロチップ
6 チップカバー
8 ネジ
12 接続端子
14 電圧印加装置
16 マイクロタイタプレート
18 穴
20 分注部
22 ニードル
24 シリンジポンプ
26 切替バルブ
28 洗浄液
30 吸入部
32 吸入ノズル
34 チップホルダ
36,46 ネジ穴
38 分離流路
40 試料導入流路
42a−42d リザーバ
44a−44d 電極パターン(チップ側電極)
48 端子接続部
50a−50d 貫通孔
52a−52d 電極(カバー側接点)
54a,54b 隆起部
55a,55b 凹部
56a,56b Oリング
58 小径部
60 テーパ形状部