(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホイールのスポークが中空領域を有し、前記中空領域を介して前記発電風車から発電システムの外部まで電力線が延在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の発電システム。
前記発電風車は、翼部と、前記翼部の周囲に形成された筒状本体と、前記筒状本体の一方の縁部に形成されたフランジとを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る発電システムの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1から7)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0010】
[基本形態]
以下に、本発明に係る発電システムについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る発電システムを示す側方断面図である。同図に示すように、発電システム2は、空気入りタイヤ10(表層のみを示す)と、空気入りタイヤ10が装着されたホイール20とを含み、空気入りタイヤ10とホイール20との間には、内腔30が区画形成されている。空気入りタイヤ10は、内腔30に空気を充填するものである。そして、
図1に示す発電システム2では、内腔30において、1体の発電風車40がホイール20に取り付けられている。なお、発電風車40は内腔30において空気入りタイヤ10に取り付けることもでき、また内腔30に形成される発電風車40は複数体としてもよい。
【0012】
図1に示す発電システム2において、ホイール20は規定リムであり、内腔30には規定内圧が付与され、空気入りタイヤ10には規定荷重が加えられている。即ち、
図1に示す発電システム2内の空気入りタイヤ10及びホイール20は、いわゆる静荷重状態となっている。なお、
図1に示す符号RSは路面を示す。
【0013】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。さらに、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、本実施の形態においては、規定内圧は200kPa以上300kPa以下の範囲とし、規定荷重は最大負荷能力の40%以上90%以下とする。
【0014】
図2は、
図1に示す発電風車40の具体的構成例(プロペラ型)を示す斜視図である。また、
図3は、
図2の丸囲み部分A付近を詳細に示す側方透視図である。
図2に示す例では、発電風車40は、ベース部42と、ベース部42から鉛直方向に延在するタワー部44と、タワー部44の鉛直方向最高部に取り付けられたナセル46と、ナセル46の水平方向一方側に取り付けられた翼部48とを含む。
【0015】
ベース部42は、
図2に示すように、タワー部44を支持する役割を担うとともに、発電風車40が空気入りタイヤ10及びホイール20のいずれに取り付けられる場合においても、これらの部材10、20と接触する構成要素である。
【0016】
タワー部44は、
図2に示すように、ナセル46を支持する役割を担うとともに、発電風車40が空気入りタイヤ10及びホイール20のいずれに取り付けられる場合においても、内腔30での翼部48のタイヤ径方向位置を決定する構成要素である。
【0017】
ナセル46は、
図2に示すように、翼部48を支持する役割を担うとともに、主に、風力を電力に変換する構成要素である。より詳細には、ナセル46は、
図3に示すように、一端が翼部48に連結され、翼部48の回転力を伝達する回転軸46aと、回転軸46aの他端と連結され、回転軸46aの回転力を増幅する増速機46bと、増速機46bの回転軸46aとは逆側に連結され、増速機46bで増大された回転力を電力に変換する発電機46cと、発電機46cの増速機46bとは逆側に連結され、発電機46cで得られた電力を所望の電圧に変圧する変圧器46dとを含む。
【0018】
なお、本実施の形態において、ナセル46の上記構成要素のうち、増速機46bは必須構成要素ではない。また、変圧器46dについては、ナセル46の構成要素とせずに、発電システム2のいずれかの領域(例えば、
図8に示す二次電池80)に別体として格納してもよい。さらに、ナセル46には、これらの構成要素の他、翼部48の主平方向に対する角度を自動的に変化させるためのコンピュータ等を含ませることもできる。
【0019】
翼部48は、
図2に示すように、ロータヘッド48Xに回転方向において等間隔に連結された複数枚(
図2に示す例では3枚)の翼48a、48b、48cを含むとともに、
図3に示すように、ロータヘッド48X内に配置されたロータハブ48Yを含む。翼部48は、このような構成により、風力により得られる翼48a、48b、48cの回転力をロータヘッド48X及びロータハブ48Yを介して、ナセル46内に伝達する。
【0020】
(作用等)
図4は、内腔に発電風車が存在しない状態で、車両に装着したタイヤを転動させた場合の、気流状態を示す側方断面図である。同図中、符号10aは空気入りタイヤ10の内表面を、符号20aはホイール表面を、符号30は内腔を、そして符号RSは路面を示す。同図に示す多数の矢印の向きは気体の進行方向を示し、その大きさは気流の速度の大きさを示す。同図に示すように、内腔30では、気流がタイヤ周方向の至る所で層流となっており、タイヤ径方向外側に向かうほど気体がより大きな遠心力を受けるため、気流の速度が大きい。
【0021】
このような知見の下、本実施の形態の発電システム2においては、空気入りタイヤ10とホイール20とにより区画形成された内腔30に、空気入りタイヤ10又はホイール20の少なくともいずれかに少なくとも1体の発電風車40を取り付けている。また、タイヤ転動時の内腔30の気体圧力は、外気圧よりも遥かに高いことから、内腔30に存在する気体の密度は相当高い。
【0022】
このため、本実施の形態の発電システム2においては、密度の高い気体が層流状態で移動している状況下に発電風車40を設置するものであることから、発電風車40が気体と相対運動した場合に、密度の高い層流状態の気体が翼部48に衝突してナセル46の回転軸46aを効率的に回転させることができるため、効率的に電力を得ることができる。
【0023】
以上に示すように、本実施の形態の発電システム2は、電力を得るための発電風車40の取り付け位置を内腔30として改良を加えている。その結果、本発明に係る発電システム2によれば、上記の理由により風力を効率的に電力に変換することができる。
【0024】
なお、以上に示す、本実施の形態に係る発電システム2は、所定の空気入りタイヤ10を所定の規定のホイール(規定リム)20と組み合わせる段階で、空気入りタイヤ10の内表面10a及びホイール表面20aの少なくともいずれかに、発電風車40を取り付けることにより得られるものである。本実施の形態の発電システム2を製造する場合には、特に、上記の発電風車40の取り付けに際して、内表面10a及びホイール表面20aに干渉せず内腔30に発電風車40が格納できるように、
図2、3に示す発電風車40のタワー部44の長さを適宜設定することが肝要である。
【0025】
[付加的形態]
次に、本発明に係る発電システムの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から7を説明する。
【0026】
(付加的形態1)
図5は、
図4に示す場合において、車両(空気入りタイヤ:以下タイヤともいう)を、通常の走行手順で走行(即ち、増速走行、等速走行及び減速走行)させた場合の、タイヤの回転速度と内腔に存在する気体の回転速度との経時的変化の関係を示すグラフである。
【0027】
図5に示すように、タイヤ増速時には、タイヤと比較して気体により大きな慣性力が働く。このため、気体の回転速度の上昇は、タイヤ回転速度の上昇と比較して緩やかである。次に、タイヤ等速時には、タイヤに働く慣性力と気体に働く慣性力との間に差が無くなる。このため、気体の回転速度は、タイヤ回転速度に徐々に近づき、最終的にはタイヤ回転速度とほぼ同じとなる。最後に、タイヤ減速時には、タイヤ増速時と同様に、タイヤと比較して気体により大きな慣性力が働く。このため、気体の回転速度の低下は、タイヤ回転速度の低下と比較して緩やかである。
【0028】
これらの事実に鑑みれば、
図5に示すとおり、タイヤ転動第1期(タイヤ増速時及びタイヤ等速時の初期)には、タイヤ回転速度と気体の回転速度との間に差が生ずる。また、タイヤ転動第2期(タイヤ等速時の中期からタイヤ減速時の初期まで)には、タイヤ回転速度と気体の回転速度との間に差は殆ど生じない。さらに、タイヤ転動第3期(タイヤ減速時の中期以降)には、タイヤ回転速度と気体の回転速度との間に差が生ずる。
【0029】
以上の知見を基に、基本形態においては、上記空気入りタイヤ10及び上記ホイール20の少なくともいずれかに、上記発電風車40を固定すること(付加的形態1)ができる。発電風車40の固定は、一般的な留め具(面ファスナー、ボタン、バンド等)を用いて行うことができる。
【0030】
本実施の形態では、発電風車40は空気入りタイヤ10及びホイール20の少なくともいずれかに固定されているため、空気入りタイヤ10と同じ回転挙動を呈する。このため、本実施の形態では、
図5に示す、発電風車40(タイヤ10)が気体と十分に異なる回転速度を有する、換言すれば、発電風車40が気体に対して相対運動する、と考えられるタイヤ転動第1期及びタイヤ転動第3期に、特に効率的に発電することができる。
【0031】
特に、発電風車40をホイール20に固定した場合には、タイヤ転動時の振動に対して発電風車40が影響されにくいため、振動が発電風車40に伝わりにくく発電風車40が故障しにくく、発電風車40の耐久性を高めることができる。一方、発電風車40を空気入りタイヤ10に固定した場合には、ホイール20側よりも空気入りタイヤ10の内表面10aのほうが気体の流れが高速度であるため大きな発電量が得られる。
【0032】
(付加的形態2)
基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、上記発電風車40を、上記ホイール20に取り付けるとともに、タイヤ回転軸(図示せず)に平行な直線に対して回転可能とすること(付加的形態2)ができる。タイヤ回転軸とは、タイヤが回転するときの中心である。
【0033】
ここで、ホイールに取り付けた発電風車40を、タイヤ回転軸に平行な直線に対して回転可能とする構造としては、例えば、
図6に示すように、ホイール表面20aに固定された支持部Sと、支持部Sに回動軸部ATを介して連結されたタワー部44と、の間に弾性部材(例えば、バネ)50を配置し、タワー部44を支持部Sに対して回動可能とした構造が挙げられる。回動軸部ATは、タイヤ回転軸に平行な直線に沿って設けられている。即ち、
図6は、ホイールに取り付けた発電風車のタイヤ回転に伴う挙動を示す側面図である。同図中、(a)はタイヤに遠心力が働いていない状態を示し、(b)はタイヤに遠心力が働いている状態を示す。
【0034】
なお、本実施の形態において、弾性部材50は必須構成要件ではないが、弾性部材50を用いた場合には、発電風車40の回転を緩やかに行うことができ、発電風車40の耐久性を高めることができる。
【0035】
図6(a)に示すように、タイヤに遠心力が働いていない状態、即ち、タイヤの静止状態では、発電風車40はホイール表面20aに横たわっている。これに対し、
図6(b)に示すように、タイヤに遠心力が働いている状態、例えば、タイヤが増速走行している状態では、発電風車40はホイール表面20aに対して起立し、気体の流れに対向する発電態勢となる。そして、発電風車40が上記起立状態を保持する方向に風を受ける場合には、発電態勢を継続することができる。
【0036】
本実施の形態は、特に、空気入りタイヤ10をホイール20に組み付ける際に、発電風車40を起立させずに寝かせることで邪魔にならず、当該組み付けを良好に行うことができることから、リム組みに関する優れた作業性を実現することができる。なお、弾性部材50は引張方向に弾性力を有する、例えば、引張バネであり、その引張力は上記遠心力よりも小さく設定され、
図6(a)に示すように、タイヤに遠心力が働いていない状態(タイヤの静止状態)では、発電風車40をホイール表面20aに横たわらせる方向に引っ張り、
図6(b)に示すように、タイヤに遠心力が働いている状態(タイヤが増速走行している状態)では、引張力に遠心力が勝って発電風車40がホイール表面20aに対して起立する。このため、遠心力が生じたときのみ発電風車40は起立することになって他の状態で邪魔にならず、起立するときは回転が弾性部材50により緩やかとなる。
【0037】
(付加的形態3)
基本形態においては、上記発電風車40は上記空気入りタイヤ10又は上記ホイール20に対して摺動可能であること(付加的形態3)が好ましい。
【0038】
ここで、発電風車40を、空気入りタイヤ10又はホイール20に対して摺動可能とする構造としては、例えば、
図7に示すように、空気入りタイヤ10の内表面10aにタイヤ周方向に延在する2本のレール60a、60bを取り付け、このレール60a、60b間に発電風車40を配置して摺動させる構造が挙げられる。即ち、
図7は、タイヤ10の内表面10aに取り付けたレール60a、60b間に発電風車40を配置して、発電風車40をタイヤ周方向において摺動可能とした発電システム4を示す透視斜視図である。なお、図には明示しないが、レール60a、60bはホイール表面20aにタイヤ周方向に延在して取り付け、このレール60a、60bに対して発電風車40をタイヤ周方向において摺動可能に配置してもよい。
【0039】
レール60a、60bの空気入りタイヤ10の内表面10aへの固定又はホイール表面20aへの固定は、例えば、(図示しない)着脱式の面ファスナの一方要素(フック状要素)の裏面を空気入りタイヤ10の内表面10a(ホイール表面20a)に固定するとともに、当該面ファスナの他方要素(ループ状要素)の裏面にレール60を取り付け、これら両要素を結合させることにより、行うことができる。
【0040】
レール60a、60bは、金属、ゴム、及び樹脂の少なくともいずれかにより形成することができる。特に、レール60a、60bを空気入りタイヤ10の内表面10aに固定する場合であって、かつ、レール60a、60bをゴムや樹脂で形成する場合には、レール60a、60bを空気入りタイヤ10の内表面10aに対して加硫接着することができる。
【0041】
本実施の形態では、発電風車40は空気入りタイヤ10及びホイール20の少なくともいずれかに対してタイヤ周方向に摺動可能となっているため、発電風車40をレール60a、60bに固定せず摺動自在とすれば、空気入りタイヤ10と異なる回転挙動をし、タイヤの転動状態に左右されず、重力の影響を受けて、常に地面に最も近い位置に存在することとなる。
【0042】
このため、本実施の形態では、気体が回転速度を有していさえすれば、発電を行うことができるため、
図5に示す、タイヤ転動第1期からタイヤ転動第3期に至る全ての時間帯において、発電を効率的に行うことができる。
【0043】
(付加的形態4)
基本形態及び基本形態に付加的形態1等を加えた形態においては、上記発電風車40のタイヤ径方向寸法は、タイヤ断面高さの15%以上75%以下であること(付加的形態4)が好ましい。なお、本実施の形態における、発電風車40のタイヤ径方向寸法とは、発電風車40がホイール20のホイール表面20aに取り付けられている場合はホイール表面20aからタワー部44を介してタイヤ径方向に沿って起立し内腔30の風を受ける状態での寸法をいう。また、発電風車40のタイヤ径方向寸法とは、発電風車40が空気入りタイヤ10の内表面10aに取り付けられている場合は内表面10aからタワー部44を介してタイヤ径方向に沿って起立し内腔30の風を受ける状態での寸法をいう。また、タイヤ断面高さとは、空気入りタイヤ10を規定リムにリム組みし、かつ規定内圧を充填した無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。
【0044】
上記発電風車40のタイヤ径方向寸法を、タイヤ断面高さの15%以上とすることで、
図2に示す翼48a、48b、48cの表面積を十分に確保することができ、ひいては発電効率をさらに高めることができる。また、上記寸法をタイヤ断面高さの75%以下とすることで、タイヤ転動時にタイヤが変形した場合においても、空気入りタイヤ10側(ホイール20側)に取り付けた発電風車40がホイール20(空気入りタイヤ10)の表面に接触することを防止し、発電風車40の耐久性を高めることができる。なお、翼部48のタイヤ径方向寸法(外形の径寸法)は、発電風車40のタイヤ径方向寸法の75%以上95%以下であることが好ましい。翼部48のタイヤ径方向寸法を、発電風車40のタイヤ径方向寸法の75%以上95%以下とすることで、
図2に示す翼48a、48b、48cの表面積を十分に確保することができ、ひいては発電効率をさらに高めることができる。
【0045】
(付加的形態5)
基本形態及び基本形態に付加的形態1等を加えた形態においては、上記発電風車40によって得られた電力を蓄える二次電池を備えること(付加的形態5)が好ましい。ここで、二次電池とは、充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できるようになり、かつ、繰り返しの使用が可能な電池を意味する。
【0046】
図8は、
図2に示す発電風車40から取り出される電力の供給タイプを多数示す斜視図である。同図中、発電風車40はナセル46の発電機46cで発電した電力を中空としたタワー部44内を通して発電風車40の外部に供給するものである。そして、同図中、(a)は発電風車40から電力線70aを介して内腔30の外部に電力を直接供給するタイプであり、例えば、車両本体(図示せず)に給電する場合に用いることができる。また、(b)は発電風車40から電力線70aを介して電気を二次電池80に一旦蓄えた後に電力線70bを介して外部に電力を供給するタイプであり、(a)に示すタイプと同じ用途に用いることができる。さらに、(c)は発電風車40から電力線70aを介して本システム内の各種センサ90に電力を直接供給するタイプであり、例えば、本システム内に設置された空気圧センサの送信機回路に給電する場合に用いることができる。加えて、(d)は発電風車40から電力線70aを介して電気を二次電池80に一旦蓄えた後に電力線70bを介して本システム内の各種センサ90に電力を供給するタイプであり、(c)に示すタイプと同じ用途に用いることができる。
【0047】
本実施の形態は、
図8中、(b)、(d)のタイプに相当する。このように、発電風車40によって得られた電力を蓄える二次電池を備えることで、発電をしていない時間帯であっても、本発電システム2(内腔30)の内部又は外部に電力を供給することができる。なお、本発電システム2の内部とは、各種センサ90や、例えばナセル46内に発電(回転軸46aの回転)状態を監視するセンサが設置されていれば、その電力を供給してもよい。
【0048】
(付加的形態6)
基本形態及び基本形態に付加的形態1等を加えた形態においては、上記ホイール20のスポークが中空領域を有し、上記中空領域を介して上記発電風車40から発電システムの外部まで電力線が延在していること(付加的形態6)が好ましい。
【0049】
図9は、ホイールの中空領域に電力線が配置されているタイプの発電システムの例を示すタイヤ子午断面図である。同図中、符号6は発電システムを、符号10は空気入りタイヤを、符号20はホイールを、符号20bはホイール20のスポークに形成された中空領域を、符号20cは中空領域20bを気密に保つための圧力隔壁を、符号40は発電風車を、符号70a、70bは電力線を、そして符号80は二次電池をそれぞれ示す。
【0050】
図9に示す例は、
図8(b)に示す電力の供給タイプの一例である。
図9に示すように、ホイール20のスポークの中空領域20bを介して発電風車40から発電システム6の外部まで電力線70bを延在させることで、電動車両や、ハイブリッドカー、電力回生システムを搭載した車両のバッテリーに電力を供給することができる。
【0051】
なお、車両のバッテリーへ電力を供給するための具体的構造としては、スポークを介してホイール20と連結し車軸側であるハブ(図示せず)に取り付けられるハブ取付部20dにスリップリング等の機構を設けることにより、電力線70bを、内腔30から、ホイール20のスポークの中空領域20b及び車軸内を順次通して、車両のバッテリーまで延在させる構造が挙げられる。即ち、ハブ取付部20dに至り発電風車40から発電システム2の外部まで電力線70bが延在していることで、ハブ取付部20dを介して車両へ給電することができ、車両の省エネルギー化を図ることができる。なお、ハブ取付部20dを介して車両へ給電する場合、ホイール20のスポークの中空領域20bを介して発電風車40の外部に電力線70bを延在させる構成としてもよいが、スポークの中空領域20bを介さずに電力線70bをハブ取付部20dまで延在させてもよい。
【0052】
(付加的形態7)
基本形態及び基本形態に付加的形態1等を加えた形態においては、上記発電風車40は、翼部と、上記翼部の周囲に形成された筒状本体と、上記筒状本体の一方の縁部に形成されたフランジとを含むこと(付加的形態7)が好ましい。
【0053】
図10−1は、
図2に示す発電風車40の変形例を示す斜視図である。
図10−2は、
図10−1に示す発電風車40の側断面図である。同図中、符号100は発電風車を、符号102はベース部を、符号104はタワー部を、符号106はナセルを、符号108は翼部をそれぞれ示す。
【0054】
また、
図10−1及び
図10−2に示す発電風車100には、ナセル106を中心として4本の支柱110が放射状に延在している。また、支柱110の放射方向外側は筒状本体112と連結し、筒状本体112は翼部108の周囲を覆って配置されている。さらに、筒状本体112の一方の開口縁部には、筒状本体112の外側に延出する板状のフランジ114が形成されている。
【0055】
このように、発電風車100に、筒状本体112とフランジ114とを含ませることで、
図10−2に示すように、フランジ114が形成されていない側の他方の開口からフランジ114が形成された一方の開口に気体が流れると、一方の開口側において、筒状本体112の外側でフランジ114に気体が衝突することでフランジ114の下流側に渦が発生するため低圧となり、このために筒状本体112の内側では他方の開口から一方の開口に向けて気体を引き込もうとする作用が生じる。即ち、筒状本体112のフランジ114が形成された側の一方の開口縁部付近(フランジ付近)の気圧を、フランジ114が形成されていない側の他方の開口縁部付近(非フランジ付近)の気圧よりも低くすることができる。これにより、比較的高圧状態の非フランジ付近から比較的低圧状態となったフランジ付近への気流が生ずることとなり、気体の回転速度(気体の速度)を発電風車100付近で局所的に大きくすることができる。従って、本実施の形態によれば、高速度の気体が発電風車100に働くため、発電風車100を気体とより高いレベルで相対運動させることができることから、ナセル106の回転軸の回転速度を高くして発電機による発電量を増加させるため、さらに一層効率的に電力を得ることができる。
【0056】
なお、
図10−2に示す筒状本体112について、フランジ付近の開口の内径を非フランジ付近の開口の内径よりも大きくしてその間にテーパー112aを付与した場合には、小径側から大径側に気体が通過することで、フランジ114に気体をより衝突させることができると共に、フランジ114付近の低圧領域を広く得ることができ、気体の回転速度(気体の速度)を発電風車100付近で局所的にさらに大きくすることができる。このため、発電風車100を気体と極めて高いレベルで相対運動させることができることから、ナセル106の回転軸の回転速度を高くして発電機による発電量をより増加させるため、電力を極めて効率的に得ることができる。
【0057】
[その他の付加的形態]
さらに、本発明に係る発電システムの上記基本形態等に対し、任意選択的に実施可能な、その他の好ましい付加的形態を例示する。
【0058】
(発電風車の種類)
本発明において、発電風車は、
図2に示すタイプや
図10に示す種類に限られない。
図11は、本発明の発電システムに適用可能な発電風車の外観を示す斜視図である。同図中、(a)は
図2に示すプロペラ型の変形例であり、
図2に示す例に対して、ナセル46がタワー部44に対して水平面内で回転可能であるとともに、ナセル46の翼部48とは反対側に垂直尾翼Vfが取り付けられた例である。
図11(a)に示す例では、垂直尾翼Vfが横風を受けた場合にナセル46、翼部48がヨーイングするため、気流を直に受ける方向に効率的に翼部48を向けることができ、さらに電力を効率的に得ることができる。
【0059】
加えて、本発明の発電システムに適用可能な、その他の発電風車としては、
図11(b)の多翼型、
図11(c)のパドル型、
図11(d)のサボニウス型、
図11(e)のダリウス型、そして
図11(f)のジャイロミル型、の発電風車が挙げられる。タイヤの転動時には、発電風車の翼の回転軸にもタイヤ径方向外側の遠心力が働くところ、上記の各種発電風車の中で、
図11(c)から
図11(f)に示す発電風車は、翼の回転軸の延在方向が上記遠心力が働く方向と一致する。このため、タイヤの転動に伴うタイヤ径方向側への遠心力によって、翼の回転軸の回転方向が所望の方向から偏心することがないため、発電風車の耐久性を高いレベルで実現することができる。
【0060】
なお、
図11(a)、(b)に示すように、翼の回転軸の延在方向がタイヤ径方向に垂直な例では、タイヤ径方向外側から見た翼の形状とタイヤ径方向内側から見た翼の形状とが等しくない例のみならず、等しい場合も含まれる。前者については、翼のタイヤ周方向一方側から風を受けた場合にのみ翼が回転し、後者については、翼のタイヤ周方向各側から風を受けた場合のいずれについても翼がいずれかの方向に回転する。これに対し、
図11(c)から(f)に示すように、翼の回転軸の延在方向がタイヤ径方向と平行な例では、翼の形状がいかなる場合であっても、翼のタイヤ周方向各側から風を受けた場合のいずれについても翼がいずれかの方向に回転する。
【0061】
(発電風車の翼部に含まれる翼の数)
本発明において、発電風車の翼部に含まれる翼の数は、
図2、
図10及び
図11に示す数に限られないが、2枚以上20枚以下とすることが好ましい。当該翼の数を2枚以上とすることで、翼部に良好な回転バランスを持たせることができ、
図3に示す翼部48の軸に当たるロータヘッド48X及びロータハブ48Yの耐久性を高めることができる。また、当該翼の数を20枚以下とすることで、翼部全体が受ける風圧が過度に高くなることを抑制し、上記ロータヘッド48X及びロータハブ48Yに過度な力がかからないようにして、これらの構成要素48X、48Yの耐久性を高めることができる。
【0062】
なお、発電風車の翼部に含まれる翼の数を、3枚以上10枚以下とすることで、上記効果を、それぞれ、より高いレベルで奏することができる。
【0063】
(発電風車の翼部の受風面積)
本発明において、発電風車の翼部の受風面積は、空気入りタイヤを規定リムに組んで規定内圧を加えた無負荷状態におけるタイヤ子午断面視で、内腔面積(内腔30の断面積)の1%以上35%以下であることが好ましい。ここで、翼部の受風面積とは、翼部が回転した場合に描く最大円を、タイヤ子午断面に射影した図形の面積をいう。
【0064】
翼部の受風面積を内腔面積の1%以上とすることで、風力を電力に効率的に変換することができ、十分な発電効率を実現することができる。また、翼部の受風面積を内腔面積の35%以下とすることで、発電システムの重量を過度に大きくせずに高い発電効率を実現することができる。
【0065】
(発電風車のタイヤ周方向における配置態様)
本発明において、発電風車のタイヤ周方向における配置態様は、
図1に示すタイプに限られない。
図12は、本発明の発電システムに適用可能な発電風車のタイヤ周方向における配置態様を示す側方断面図である。同図中、(a)及び(b)は発電風車をホイールに取り付けた例であり、(c)、(d)及び(e)は発電風車を空気入りタイヤに取り付けた例であり、そして(f)は発電風車をホイールと空気入りタイヤとの双方に取り付けた例である。なお、
図12中、符号10は空気入りタイヤ、符号20はホイール、符号30は内腔、そして符号40は発電風車をそれぞれ示す。
【0066】
これらの例の中では、特に、
図12(a)、
図12(b)、
図12(d)及び
図12(e)に示す例が、タイヤ径方向の同じ位置において、タイヤ周方向に均等に発電風車40を配置していることから、ユニフォミティに関する優れた性能を実現できる点で好ましい。なお、発電システム内に、二次電池や空気圧センサの送信機回路も配置する場合には、発電風車と、当該電池及び回路との組み合わせにおいて、本発電システムのタイヤ周方向における重量差を出来る限り小さくするような配置が好適である。
【0067】
また、1つの発電システム中に配置する発電風車の数を8体以下とした場合には、タイヤ回転時に気流を十分に層流状態とすることができることから、電力を効率的に得ることができる。さらに、当該発電風車の数を8体以下とした場合には、発電システム自体の重量増加を抑制することができ、ひいては転がり抵抗に関する優れた性能を実現することができる。
【0068】
(発電風車のタイヤ幅方向における配置態様)
本発明において、発電風車のタイヤ幅方向における配置態様は、
図7や
図9に示すタイプに限られない。
図13は、本発明の発電システムに適用可能な発電風車のタイヤ幅方向における配置態様を示す側方断面図である。なお、
図13中、符号10は空気入りタイヤ、符号20はホイール、符号30は内腔、符号40は発電風車、そして符号Hは仕切り部材をそれぞれ示す。
【0069】
図13(a)はホイールに発電風車を1体配置した例であり、発電システムの重量を抑えて転がり抵抗に関する優れた性能を発揮させる点では、最も好適な例である。
【0070】
これに対し、
図13(b)はホイールに発電風車を複数体配置した例であり、タイヤ幅方向に隣り合う各発電風車40は、筒状の仕切り部材Hによって区画形成された空間にそれぞれ配置されている。これにより、隣り合う発電風車40、40により生ずる各気流同士の干渉を最小限に留めて、タイヤ周方向全体として気流を層流に近づけることができ、ひいては、電力を効率的に得ることができる。
【実施例】
【0071】
<実施例群1>
実施例群1は、発電風車がホイールに固定されているタイプの、複数の実施例に関する。
タイヤサイズを215/60R16とするとともに、リムサイズを16×6.5jとし、さらに空気圧を230kPaとし、下記表1に示す諸条件を満たす、実施例1から実施例7の発電システムを作製した。
【0072】
これに対し、タイヤサイズ、リムサイズ及び空気圧を上記の各実施例と同じとして、特許文献1に開示されている車両用電飾装置を作製し、これを従来例の発電システムとした。
【0073】
このように作製した、実施例1から実施例7及び従来例の各発電システムをドラム試験機に取り付け、60km/hまで8秒で加速した後、当該速度にて30秒間の等速走行を行い、さらに8秒かけて減速して停止させて、この間に得られた電力量を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、得られた電力量が多いことを示す。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1によれば、発電風車がホイールに固定されているタイプについて、本発明の技術的範囲に属する(電力を得るための発電風車の取り付け位置について改良を加えた)実施例1から実施例7の発電システムについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の発電システムに比べて、風力を効率的に電力に変換可能であることが判る。
【0076】
<実施例群2>
実施例群2は、発電風車がホイールに対して摺動可能なタイプの、複数の実施例に関する。
タイヤサイズを215/60R16とするとともに、リムサイズを16×6.5jとし、さらに空気圧を230kPaとし、下記表2に示す諸条件を満たす、実施例8から実施例12の発電システムを作製した。
【0077】
これに対し、タイヤサイズ、リムサイズ及び空気圧を上記の各実施例と同じとして、特許文献1に開示されている車両用電飾装置を作製し、これを従来例の発電システムとした。
【0078】
このように作製した、実施例8から実施例12及び従来例の各発電システムをドラム試験機に取り付け、60km/hまで8秒で加速した後、当該速度にて30秒間の等速走行を行い、さらに8秒かけて減速して停止させて、この間に得られた電力量を測定した。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、得られた電力量が多いことを示す。その結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2によれば、発電風車がホイールに対して摺動可能なタイプについて、本発明の技術的範囲に属する(電力を得るための発電風車の取り付け位置について改良を加えた)実施例8から実施例12の発電システムについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の発電システムに比べて、風力を効率的に電力に変換可能であることが判る。