(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する第1および第2の辺(ED1、ED2)を含む縁に囲まれた表面(SF)を有し、前記表面に垂直な厚さ方向(DT)を有する脆性材料基板(4)を準備する工程と、
前記脆性材料基板の前記表面に刃先(51,51v)を押し付ける工程とを備え、前記刃先は、突起部(PP,PPv)と、前記突起部から延びかつ凸形状を有する側部(PS,PSv)とを有し、
前記押し付ける工程によって押し付けられた前記刃先を前記脆性材料基板の前記表面上で摺動させることによって、前記脆性材料基板の前記表面上に、前記第1および第2の辺のうち前記第1の辺に近い第1の位置(N1)と、前記第1および第2の辺のうち前記第2の辺に近い第2の位置(N2)との間で、前記第1の位置から前記第2の位置へ前記刃先を変位させることにより垂直クラックを伴わない溝状のスクライブライン(SL)を形成する工程と、
前記スクライブラインを形成する工程の後に、前記スクライブラインに沿って前記第2の位置から前記第1の位置の方へ、前記厚さ方向における前記脆性材料基板のクラックを伸展させることによってクラックライン(CL)を形成する工程と、
前記クラックラインに沿って前記脆性材料基板を分断する工程と
を備え、
前記クラックラインを形成する工程は、前記刃先が第2の辺を通過することによって開始される、脆性材料基板の分断方法。
【背景技術】
【0002】
フラットディスプレイパネルまたは太陽電池パネルなどの電気機器の製造において、ガラス基板などの脆性材料基板を分断することがしばしば必要となる。典型的な分断方法においては、基板の厚さ方向に少なくとも部分的に進行したクラックが基板の表面上においてライン状に延びているもの(以下、クラックラインと称する)が、スクライブ装置によって形成される。
【0003】
特開平9−188534号公報(特許文献1)によれば、ガラス板の上面にあるくぼみがスクライブ時に生じたガラスの欠けであり、これをスクライブラインと称している。また上記公報によれば、スクライブラインの刻設と同時に、スクライブラインから直下方向に延びるクラックが発生する。つまり、スクライブラインの形成と同時にクラックラインが形成される。
【0004】
クラックが厚さ方向に完全に進行した場合は、クラックラインの形成のみでクラックラインに沿って基板が分断され得る。一方、クラックが厚さ方向に部分的にしか進行していない場合は、クラックラインの形成後に、ブレーク工程と称される応力付与がなされる。ブレーク工程によりクラックラインのクラックを厚さ方向に完全に進行させることで、基板が分断される。このクラックラインが形成されなければ、ブレーク工程における応力付与がなされてもスクライブラインに沿った基板の分断を行うことはできない。従って、ガラス板を確実に分断するためには、クラックラインを確実に形成させることが必要とされてきた。
【0005】
また、クラックラインの形成には、その起点となるクラック(以下、起点クラックと称する)が必要である。起点クラックは、基板の縁への刃先の乗り上げによって容易に形成することができる。なぜならば基板の縁においては局所的な破壊が起こりやすいからである。この乗り上げた刃先がさらにガラス基板の表面上を摺動することで、起点クラックからクラックラインを伸展させることができる。しかしながら、刃先が基板の縁を乗り上げる動作は、刃先の大きなダメージ、または基板の縁の大きな欠けを招き得る。よってこのような動作を完全に避けること、またはその頻度を抑えることが望まれる場合も多い。
【0006】
起点クラックを形成する方法として、基板の縁への刃先の乗り上げに依存しない方法も検討されている。たとえば特開2000−264656号公報(特許文献2)によれば、スクライブ装置は、カッタと、カッタに振動を付与する振動発生部材とを有するスクライブ本体を含む。この方法によれば、スクライブ本体を、ワークから上方に離した状態でワーク面に沿って相対移動させることにより、カッタがスクライブ開始点の真上に位置させられる。次に、スクライブ本体を下降させることにより、カッタの先端がスクライブ本体の自重をもってスクライブ開始点に当てられる。その後、スクライブ本体に衝撃を付与することで、ワーク面において縁から離れたスクライブ開始点に起点クラックが形成される。ワークに振動を与えることで、起点クラックをきっかけにしてスクライブラインが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法に用いられる器具の構成を概略的に示す側面図である。
【
図1B】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法に用いられる器具が有する刃先の構成を
図1Aの矢印IBの視点で概略的に示す平面図である。
【
図2A】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法において形成されるスクライブラインの構成を概略的に示す断面図である。
【
図2B】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法において形成されるクラックラインの構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法の構成を概略的に示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1におけるガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1の第1の変形例のガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1の第1の変形例のガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図8】本発明の実施の形態1の第2の変形例のガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1の第3の変形例のガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図10】本発明の実施の形態2におけるガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図11】本発明の実施の形態2におけるガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図12】本発明の実施の形態2におけるガラス基板の分断方法の第3の工程を概略的に示す上面図である。
【
図13】本発明の実施の形態2の第1の変形例のガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図14】本発明の実施の形態2の第2の変形例のガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図15】本発明の実施の形態2の第2の変形例のガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図16】本発明の実施の形態2の第3の変形例のガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図17】本発明の実施の形態3におけるガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図18】本発明の実施の形態4におけるガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図19】本発明の実施の形態4におけるガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図20】本発明の実施の形態5におけるガラス基板の分断方法の第1の工程を概略的に示す上面図である。
【
図21】本発明の実施の形態5におけるガラス基板の分断方法の第2の工程を概略的に示す上面図である。
【
図22】本発明の実施の形態5の変形例のガラス基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。
【
図23A】本発明の実施の形態6におけるガラス基板の分断方法に用いられる器具の構成を概略的に示す側面図である。
【
図23B】本発明の実施の形態6におけるガラス基板の分断方法に用いられる器具が有する刃先の構成を
図23Aの矢印XXIIIBの視点で概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、脆性材料基板としてガラス基板を用いる。脆性材料基板としては、このほかにたとえば低温焼成セラミックスや高温焼成セラミックスなどからなるセラミック基板、シリコン基板、化合物半導体基板、サファイア基板、石英基板などが挙げられる。
【0021】
図1Aおよび
図1Bを参照して、本実施の形態におけるガラス基板の分断方法には、カッティング器具50が用いられる。カッティング器具50は刃先51およびシャンク52を有する。刃先51は、そのホルダとしてのシャンク52に保持されている。
【0022】
刃先51には、天面SD1(第1の面)と、天面SD1を取り囲む複数の面とが設けられている。これら複数の面は側面SD2(第2の面)および側面SD3(第3の面)を含む。天面SD1、側面SD2およびSD3(第1〜第3の面)は、互いに異なる方向を向いており、かつ互いに隣り合っている。刃先51は、天面SD1、側面SD2およびSD3が合流する頂点を有し、この頂点によって刃先51の突起部PPが構成されている。また側面SD2およびSD3は、刃先51の側部PSを構成する稜線をなしている。側部PSは突起部PPから線状に延びている。また側部PSは、上述したように稜線であることから、線状に延びる凸形状を有する。
【0023】
刃先51はダイヤモンドポイントであることが好ましい。すなわち刃先51は、硬度および表面粗さを小さくすることができる点からダイヤモンドから作られていることが好ましい。より好ましくは刃先51は単結晶ダイヤモンドから作られている。さらに好ましくは結晶学的に言って、天面SD1は{001}面であり、側面SD2およびSD3の各々は{111}面である。この場合、側面SD2およびSD3は、異なる向きを有するものの、結晶学上、互いに等価な結晶面である。
【0024】
なお単結晶でないダイヤモンドが用いられてもよく、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で合成された多結晶体ダイヤモンドが用いられてもよい。あるいは、微粒のグラファイトや非グラファイト状炭素から、鉄族元素などの結合材を含まずに焼結 された多結晶体ダイヤモンド粒子を鉄族元素などの結合材によって結合させた焼結ダイヤモンドが用いられてもよい。
【0025】
シャンク52は軸方向AXに沿って延在している。刃先51は、天面SD1の法線方向が軸方向AXにおおよそ沿うようにシャンク52に取り付けられることが好ましい。
【0026】
さらに
図2Aを参照して、カッティング器具50を用いてスクライブラインSLを形成するためには、ガラス基板4の表面SFに、刃先51の突起部PPおよび側部PSが、ガラス基板4が有する厚さ方向DTへ押し付けられる。次に側部PSを表面SF上に射影した方向におおよそ沿って、刃先51が表面上を摺動させられる。これにより表面SF上に、垂直クラックを伴わない溝状のスクライブラインが形成される。この溝状のスクライブラインは、ガラス基板4の塑性変形および削れの少なくともいずれかによって生じ得るが、削れによるガラスの微細な破片が生じないよう、塑性変形により形成されることが好ましい。
【0027】
さらに
図2Bを参照して、刃先51の摺動によって、スクライブラインSLおよびクラックラインCLが同時に形成される場合と、スクライブラインSLのみが形成される場合とがある。クラックラインCLは、スクライブラインSLのくぼみから厚さ方向DTに伸展したクラックであり、表面SF上においては線状に延びている。後述する方法によれば、スクライブラインSLのみが形成された後、それに沿ってクラックラインCLを形成することができる。
【0028】
図3を参照して、ガラス基板4の分断方法は主にステップS10〜S50を有する。以下、その詳細について説明する。
【0029】
図4を参照して、ステップS10(
図3)にて、まずガラス基板4が準備される。ガラス基板4は、互いに対向する辺ED1(第1の辺)および辺ED2(第2の辺)を含む縁に囲まれた、平坦な表面SFを有する。ガラス基板は、表面SFに垂直な厚さ方向DT(
図1A、
図2Aおよび
図2B)を有する。
図4で示す例においては、縁は長方形状である。よって辺ED1およびED2は互いに平行な辺である。また
図4で示す例においては辺ED1およびED2は長方形の短辺である。
【0030】
ステップS20(
図3)にて、ガラス基板4の表面SFに刃先51が位置N1で押し付けられる。位置N1の詳細は後述する。刃先51の押し付けは、
図1Aを参照して、ガラス基板4の表面SF上で刃先51の突起部PPが辺ED1および側部PSの間に配置されかつ刃先51の側部PSが突起部PPと辺ED2の間に配置されるように行なわれる。
【0031】
ステップS30(
図3)にて、ガラス基板4の表面SF上に複数のスクライブラインSL(図中では5つのライン)が形成される。スクライブラインSLの形成は、位置N1(第1の位置)および位置N3の間で行なわれる。位置N1およびN2の間には位置N2(第2の位置)が位置する。よってスクライブラインSLは、位置N1およびN2の間と、位置N2およびN3の間とに形成される。位置N1、N2およびN3はガラス基板4の表面SFの縁から離れている。よって、形成されるスクライブラインSLは、ガラス基板4の縁から離れている。位置N1は辺ED1およびED2のうち辺ED1に近い。位置N2は辺ED1およびED2のうち辺ED2に近い。スクライブラインSLは、ガラス基板4の表面SFに押し付けられた刃先51を表面SF上で摺動させることによるかき傷によって形成される。
【0032】
スクライブラインSLが形成される際には、本実施の形態においては、位置N1から位置N2へ刃先51が変位させられ、さらに位置N2から位置N3へ変位させられる。すなわち、
図1Aを参照して、刃先51が、辺ED1から辺ED2へ向かう方向である方向DAへ変位させられる。方向DAは、刃先51から延びる軸AXを表面SF上へ射影した方向に対応している。この場合、刃先51はシャンク52によって表面SF上を引き摺られる。
【0033】
図5を参照して、ステップS40(
図3)にて、スクライブラインSLが形成された後に、スクライブラインSLに沿って位置N2から位置N1の方へ(図中、破線矢印参照)、厚さ方向DT(
図2B)におけるガラス基板4のクラックを伸展させることによってクラックラインCLが形成される。クラックラインCLの形成は、アシストラインALおよびスクライブラインSLが位置N2で互いに交差することによって開始される。この目的で、スクライブラインSLを形成した後にアシストラインALが形成される。アシストラインALは、一種のクラックライン(
図2B)であり、厚さ方向DTにおけるガラス基板4のクラックにより形成される。
【0034】
アシストラインALの形成方法は特に限定されないが、
図5に示すように、表面SFの縁を基点として形成されてもよい。この場合、刃先51がガラス基板4の表面SFの縁に乗り上げる動作がアシストラインALの形成目的で必要となるが、アシストラインALの数は典型的には1つであり、スクライブラインSLの数よりも小さいので、この動作に起因した影響は小さい。
【0035】
なお位置N2から位置N1への方向に比して、位置N2から位置N3への方向へは、クラックラインCLが形成されにくい。つまりクラックラインCLの伸展のしやすさには方向依存性が存在する。よってクラックラインCLが位置N1およびN2の間には形成され位置N2およびN3の間には形成されないという現象が生じ得る。本実施の形態は位置N1およびN2間に沿ったガラス基板4の分断を目的としており、位置N2およびN3間に沿ったガラス基板4の分離は目的としていない。よって位置N1およびN2間でクラックラインCLが形成されることが必要である一方で、位置N2およびN3間でのクラックラインCLの形成されにくさは問題とはならない。
【0036】
ステップS50(
図3)にて、クラックラインCLに沿ってガラス基板4が分断される。具体的にはブレーク工程が行なわれる。なおクラックラインCLがその形成時に厚さ方向DTに完全に進行した場合は、クラックラインCLの形成とガラス基板4の分断とが同時に生じ得る。この場合、ブレーク工程を省略し得る。
【0037】
以上によりガラス基板4の分断が行なわれる。
【0038】
図6を参照して、第1の変形例は、アシストラインALとスクライブラインSLとの交差が、クラックラインCL(
図5)の形成開始のきっかけとして不十分な場合に関するものである。
図7を参照して、ガラス基板4へ応力を加えることでアシストラインALに沿ってガラス基板4が分離される。これによりクラックラインCLの形成が開始される。なお、
図6においてはアシストラインALがガラス基板4の表面SF上に形成されるが、ガラス基板4を分離するためのアシストラインALはガラス基板4の裏面(表面SFと反対の面)上に形成されてもよい。この場合、アシストラインALおよびスクライブラインSLは、平面レイアウト上、位置N2で互いに交差するが、互いに直接接触はしない。
【0039】
図8を参照して、第2の変形例においては、ステップS20(
図3)にて、ガラス基板4の表面SFに刃先51が位置N3で押し付けられる。ステップS30(
図3)にて、スクライブラインSLが形成される際には、本変形例においては、位置N3から位置N2へ刃先51が変位させられ、さらに位置N2から位置N1へ変位させられる。すなわち、
図1Aを参照して、刃先51が、辺ED2から辺ED1へ向かう方向である方向DBへ変位させられる。方向DBは、刃先51から延びる軸AXを表面SF上へ射影した方向と反対方向に対応している。この場合、刃先51はシャンク52によって表面SF上を押し進められる。
【0040】
図9を参照して、第3の変形例においては、ステップS30(
図3)にてスクライブラインSLが形成される際に、刃先51はガラス基板4の表面SFに位置N1に比して位置N2でより大きな力で押し付けられる。具体的には、位置N4を位置N1およびN2の間の位置として、スクライブラインSLの形成が位置N4に至った時点で、刃先51の荷重が高められる。言い換えれば、スクライブラインSLの荷重が、位置N1に比して、スクライブラインSLの終端部である位置N4およびN3の間で高められる。これにより、終端部以外での荷重を軽減しつつ、位置N2からのクラックラインCLの形成を誘起されやすくすることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図10を参照して、アシストラインALが本実施の形態においてはスクライブラインSLの形成前に形成される。アシストラインALの形成方法は、
図5(実施の形態1)と同様である。
【0042】
図11を参照して、次にステップS30(
図3)にて、スクライブラインSLが形成される。スクライブラインSLの形成方法は、
図4(実施の形態1)と同様である。アシストラインALおよびスクライブラインSLは位置N2で互いに交差する。
【0043】
図12を参照して、ガラス基板4へ応力を加えることでアシストラインALに沿ってガラス基板4が分離される。これにより、実施の形態1と同様のクラックラインCLの形成が開始される(図中、破線矢印参照)。なお、
図10においてはアシストラインALがガラス基板4の表面SF上に形成されるが、ガラス基板4を分離するためのアシストラインALはガラス基板4の裏面(表面SFのと反対の面)上に形成されてもよい。この場合、アシストラインALおよびスクライブラインSLは、平面レイアウト上、位置N2で互いに交差するが、互いに直接接触はしない。
【0044】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じである。
【0045】
図13を参照して、第1の変形例においては、クラックラインCLの形成が、アシストラインALおよびスクライブラインSLが位置N2で互いに交差することによって開始される。
【0046】
図14を参照して、第2の変形例においては、
図8(実施の形態1)と同様に、スクライブラインSLの形成が位置N3から位置N1へ行なわれる。
図15を参照して、ガラス基板4へ応力を加えることでアシストラインALに沿ってガラス基板4が分離される。これによりクラックラインCLの形成が開始される(図中、破線矢印参照)。
【0047】
図16を参照して、第3の変形例においては、ステップS30(
図3)にてスクライブラインSLが形成される際に、刃先51はガラス基板4の表面SFに位置N1に比して位置N2でより大きな力で押し付けられる。具体的には、位置N4を位置N1およびN2の間の位置として、スクライブラインSLの形成が位置N4に至った時点で、刃先51の荷重が高められる。言い換えれば、スクライブラインSLの荷重が、位置N1に比して、スクライブラインSLの終端部である位置N4およびN3の間で高められる。これにより、終端部以外での荷重を軽減しつつ、位置N2からのクラックラインCLの形成を誘起されやすくすることができる。
【0048】
(実施の形態3)
図17を参照して、本実施の形態においては、ステップS30(
図3)にて、スクライブラインSLは、以下のように形成される。
【0049】
位置N1から刃先51が辺ED2を越えて摺動させられる。刃先51が辺ED2を通過する際、スクライブライン直下の基板内部に生じた応力の歪みが解放され、辺ED2上に位置するスクライブラインSLの端から位置N1へ向かってクラックラインが伸展する(
図3:ステップS40)。
【0050】
スクライブラインSLを形成する際に刃先51に加えられる荷重は一定であってもよいが、位置N1から位置N2へ刃先51が変位させられた際に、位置N2で刃先51に加える荷重が増大させられてもよい。たとえば荷重が50%程度増大される。増大された荷重が加えられた刃先51が辺ED2を越えて摺動させられる。言い換えれば、スクライブラインSLの終端部で刃先51の荷重が増大される。刃先51が辺ED2に達すると、辺ED2上に位置するスクライブラインSLの端から位置N2を経由して位置N1へ向かってクラックラインが伸展する(
図3:ステップS40)。このように荷重の増大が行われる場合、応力の歪みも増大し、刃先51が辺ED2を通過する際にこの応力の歪みが解放されやすくなるので、クラックラインをより確実に形成することができる。
【0051】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じである。
【0052】
(実施の形態4)
図18を参照して、本実施の形態においては、ステップS30(
図3)にて、位置N1から位置N2を経由して辺ED2へ達するスクライブラインSLが形成される。
【0053】
図19を参照して、次に位置N2と辺ED2との間に応力が加えられる。これによりスクライブラインSLに沿ったクラックラインの形成が誘起される(
図3:ステップS40)。
【0054】
応力の印加として具体的には、表面SF上において位置N2と辺ED2との間(図中、破線および辺ED2の間の領域)で、押し付けられた刃先51が摺動させられる。この摺動は辺ED2に達するまで行なわれる。刃先51は好ましくは最初に形成されたスクライブラインSLの軌道に交差するように、より好ましくは最初に形成されたスクライブラインSLの軌道に重なるように摺動される。この再度の摺動の長さは、たとえば0.5mm程度である。またこの再度の摺動は、複数のスクライブラインSL(
図18)が形成された後にそれぞれに対して行なわれてもよく、あるいは、1つのスクライブラインSLの形成および再度の摺動を行なう工程がスクライブラインSLごとに順次行なわれてもよい。
【0055】
変形例として、位置N2と辺ED2との間に応力を加えるために、上述した刃先51の再度の摺動に代えて、表面SF上において位置N2と辺ED2との間にレーザ光が照射されてもよい。これにより生じた熱応力によっても、クラックラインの形成開始を誘起することができる。
【0056】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じである。
【0057】
(実施の形態5)
図20を参照して、本実施の形態においては、ステップS30(
図3)にて、位置N1から位置N2へ、そしてさらに位置N3へ刃先51を変位させることによって、表面SFの縁から離れたスクライブラインSLが形成される。スクライブラインSLの形成方法は
図4(実施の形態1)とほぼ同様である。
【0058】
図21を参照して、
図19(実施の形態4またはその変形例)と同様の応力印加が行われる。これによりスクライブラインSLに沿ったクラックラインの形成が誘起される(
図3:ステップS40)。
【0059】
図22を参照して、
図20の工程の変形例として、スクライブラインSLの形成において、刃先51が位置N3から位置N2へそして位置N2から位置N1へ変位させられてもよい。
【0060】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じである。
【0061】
(実施の形態6)
図23Aおよび
図23Bを参照して、上記各実施の形態において、刃先51(
図1Aおよび
図1B)に代わり、刃先51vが用いられてもよい。刃先51vは、頂点と、円錐面SCとを有する円錐形状を有する。刃先51vの突起部PPvは頂点で構成されている。刃先の側部PSvは頂点から円錐面SC上に延びる仮想線(
図23Bにおける破線)に沿って構成されている。これにより側部PSvは、線状に延びる凸形状を有する。
【0062】
なお、上記各実施の形態においてはガラス基板の縁の第1および第2の辺が長方形の短辺であるが、第1および第2の辺は長方形の長辺であってもよい。また縁の形状は長方形に限定されるものではなく、たとえば正方形であってもよい。また第1および第2の辺は直線状のものに限定されるものではなく曲線状であってもよい。また上記各実施の形態においてはガラス基板の表面が平坦であるが、表面は湾曲していてもよい。
【0063】
本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。