特許第6508296号(P6508296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508296
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20190422BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20190422BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20190422BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20190422BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20190422BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20190422BHJP
   B29K 79/00 20060101ALN20190422BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20190422BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B7/02 105
   B32B5/18
   B32B37/10
   B29C43/20
   B29C43/34
   B29K79:00
   B29L9:00
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-223148(P2017-223148)
(22)【出願日】2017年11月20日
(62)【分割の表示】特願2013-55613(P2013-55613)の分割
【原出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2018-27705(P2018-27705A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】大矢 修生
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 あすみ
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/074418(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/038873(WO,A1)
【文献】 特開2011−218779(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/043467(WO,A1)
【文献】 特開2005−050860(JP,A)
【文献】 特開2009−274284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 43/00−43/34,
43/44−43/48,
43/52−43/58,
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の多孔質層を含む2層以上の積層体であり、
前記多孔質層以外の層が、無孔のポリイミド又はポリアミドから選ばれる無孔層であり、
前記多孔質層がポリイミド多孔質層であり、
前記ポリイミド多孔質層が、平均孔径10〜500μmの複数のマクロボイドを有し、
前記積層体の厚み方向の熱コンダクタンスが1000W/mK以下であり、200℃以下での厚み方向と直交方向の線膨張係数が± 1×10-6K以下であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記積層体が3層以上であり、前記多孔質層が内層であり、最表層が前記無孔であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
積層体全体での空孔率が40%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記多孔質層が、
2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質層であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有し、
前記マクロボイド層の隔壁は、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜50μmの複数の細孔を有し、前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、少なくとも一方の表面層が平均孔径0.01〜200μ mの複数の細孔を有し、前記のマクロボイド層の隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)における細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が50〜95%である多孔質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、
前記無孔層が、熱融着層を有する無孔のポリイミド層であり、前記製造方法が
前記無孔のポリイミド前記ポリイミド多孔質層とを加熱プレスにより接着する工程を含む、積層体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有し、寸法安定性が高い多孔質層を含む積層体に関する。この多孔質層を含む積層体は、薄型テレビ、モバイル機器、ノートパソコン等の内部において、加熱に弱い電子部品を保護する断熱シートとして使用される。また、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。また、車載用電子機器類の熱からの保護にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、CPUの高性能化、回路基板の高集積化に伴い、これら電子部品からの発熱による電子機器類の内部での熱マネジメントの重要性が高まっている。これら電子機器類の内部で発生する熱を外部に放出する為に、小型のファンを設けるケースが多く見られる。しかしながら、小型のファンの設置にはスペースが必要であり、またその作動の為の電力が必要なことからモバイル機器類への適用は限定的にならざるを得ない。
【0003】
また、グラファイトシートのような高熱伝導率を有する部材により外部に熱を逃がす技術が開示されている。しかしながら、グラファイトシートは高価であり、また外部との温度差や接触する媒体との熱交換の効率により放熱効果が変化してしまうので、補完的な放熱機能以上の役割を期待した設計はし難いと思われる。
【0004】
また、スポンジ状の断熱材やフィルム状の断熱シートが種々提案され、産業上も使用されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、発泡剤を用いて製造される断熱材はそのままでは厚みが厚い為に使用できる箇所が限られる。また、プレスにより薄膜化して使用する例もあるが、柔軟性が失われ板状になる上に薄膜化には限界があるので電子機器類の内部で使用するには困難が伴う。
【0005】
さらに、これらの断熱材ではみかけの熱伝導率が材料固有の物性値として表記されて使用されるが、実際にはみかけの熱伝導率は厚みによって変わる為に、必ずしもみかけの熱伝導率から期待されるだけの断熱効果を発揮しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−259268号公報
【特許文献2】特開2011−184574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、実用的な耐熱性を有し寸法安定性が高い、多孔質層を含むフレキシブルな積層体を提供することにある。また、この積層体は、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
1.少なくとも1層の多孔質層を含む2層以上の積層体であり、
前記積層体の厚み方向の熱コンダクタンスが1000W/m2K以下であり、200℃以下での厚み方向と直交方向の線膨張係数が100ppm/K以下であることを特徴とする積層体。
【0009】
2.前記多孔質層以外の層が、無孔のポリイミド又はポリアミドから選ばれる層であることを特徴とする前記項1に記載の積層体。
【0010】
3.前記積層体が3層以上であり、多孔質層が内層であり、最表層が無孔フィルムであることを特徴とする前記項1に記載の積層体。
【0011】
4.積層体全体での空孔率が40%以上であることを特徴とする前記項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【0012】
5.前記多孔質層がポリイミド多孔質層であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【0013】
6.前記多孔質層が、
2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質層であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有し、
前記マクロボイド層の隔壁は、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜50μmの複数の細孔を有し、前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、少なくとも一方の表面層が平均孔径0.01〜200μmの複数の細孔を有し、前記のマクロボイド層の隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)における細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が50〜95%である多孔質膜であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【0014】
7.熱融着層を有するポリイミドフィルムとポリイミド多孔質膜を加熱プレスにより接着する工程を含む、前記項1〜6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によって、実用的な耐熱性を有し寸法安定性が高い、多孔質層を含むフレキシブルな積層体を提供することにある。また、この積層体は、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。また、この多孔質層を含む積層体は、薄型テレビ、モバイル機器、ノートパソコン等の内部において、加熱に弱い電子部品を保護する断熱シートとして使用される。また、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。また、車載用電子機器類の熱からの保護にも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明の積層体は、少なくとも1層の多孔質層を含む2層以上の積層体である。
【0017】
<多孔質層>
本願発明で用いる多孔質層は多孔質であることを特徴とし、多孔質層として多孔質膜を用いることができ、この多孔質膜はポリイミド多孔質膜等を用いることが好ましい。このポリイミド多孔質膜は、特に限定されるわけではないが、以下のものを用いることができる。
【0018】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを主たる成分とする多孔質ポリイミド膜であり、好ましくはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドからなる多孔質ポリイミド膜である。
【0019】
テトラカルボン酸二無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
【0021】
ジアミンは、任意のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例として、以下のものを挙げることができる。
【0022】
1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
【0023】
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0024】
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
【0025】
多孔質ポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを組み合わせて得られるポリイミドから形成されていることが好ましい。 本発明の多孔質ポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、以下の芳香族ポリイミドからなる多孔質ポリイミド膜であることが好ましい。
【0026】
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
次に、本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法について説明する。
本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法は、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)又は側鎖に極性基を有する高分子化合物(C)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程を含む。ここで、前記有機化合物(B)及び前記高分子化合物(C)は、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である。
【0027】
ポリアミック酸とは、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなり、ポリイミド前駆体或いはその部分的にイミド化したポリイミド前駆体である。ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合することで得ることができる。ポリアミック酸を熱イミド化若しくは化学イミド化することにより、閉環してポリイミドとすることができる。本発明におけるポリイミドは、イミド化率が約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが好ましい。
【0028】
ポリアミック酸を重合するための溶媒としては任意の有機極性溶媒を用いることができ、p−クロロフェノール、o−クロルフェノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノール、クレゾールなどの有機極性溶媒などを用いることができ、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を好ましく用いることができる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンは、上述したものを好ましく用いることができる。
【0029】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び上記の有機極性溶媒などを用いて任意の方法で製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンと略等モルで、好ましくは約100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは20〜60℃の温度で、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3〜60時間反応させることで、ポリアミック酸溶液を製造することができる。
【0030】
ポリアミック酸溶液を製造するときに、分子量を調整する目的で、任意の分子量調整成分を反応溶液に加えてもよい。
【0031】
ポリアミック酸の対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL、溶媒;NMP)は、本発明の多孔質ポリイミド膜が製造できる粘度であればよい。本発明の方法では、前記対数粘度が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5〜7であるポリアミック酸を用いることが好ましい。
【0032】
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。
【0033】
ポリアミック酸溶液(A)は、ポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなる。ポリアミック酸の含有量が0.3質量%未満だと多孔質ポリイミド膜を作製した際のフィルム強度が低下し、60質量%を超えると多孔質ポリイミド膜の物質透過性が低下する。ポリアミック酸溶液(A)におけるポリアミック酸の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは5〜10質量%であり、ポリアミック酸溶液(A)における有機極性溶媒の含有量は、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは85〜98質量%、更に好ましくは90〜95質量%である。
【0034】
ポリアミック酸溶液(A)は、有機極性溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させて得られる溶液であってもよく、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
【0035】
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物を挙げることができ、好ましくはポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、又はポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物である。
【0036】
極性基を有する有機化合物(B)及び極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させる有機化合物である。ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させることで、ポリイミド膜中に平均孔径が10〜500μmのマクロボイドを形成することができる。
極性基を有する有機化合物(B)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、極性基を有する有機化合物(B)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、極性基を有する有機化合物(B)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
【0037】
極性基を有する有機化合物(B)としては、例えば安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物、ニトリル基を有する有機化合物、水酸基を有する有機化合物、スルホン酸基を有する有機化合物などを用いることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に極性基を有する有機化合物としては、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物が好ましい。
【0038】
極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、前記高分子化合物(C)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、前記高分子化合物(C)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
【0039】
極性基を有する高分子化合物(C)としては、側鎖にCN基、OH基、COOH基、SO3H基、NH2基などの極性基を有する重合体(例えばビニル重合体など)などを挙げることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、極性基を有する高分子化合物(C)としては、ポリアクリロニトリルなどの側鎖にCN基、OH基、COOH基、SO3H基、NH2基などの極性基を有するビニル重合体が好ましい。
【0040】
ポリアミック酸溶液組成物において、前記高分子化合物(C)の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
【0041】
ポリアミック酸溶液組成物において、極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する場合、前記有機化合物(B)と前記高分子化合物(C)との合計の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
【0042】
極性基を有する高分子化合物(C)は、下記特徴(C1)〜(C4)の少なくとも1つ、好ましくは下記特徴(C1)〜(C3)、より好ましくは下記特徴(C1)〜(C4)のすべてを備えることが好ましい。
(C1)水、凝固溶媒及び/又は有機極性溶媒に不溶又は難溶であること。
(C2)熱イミド化工程で分解されること。
(C3)ポリアミック酸溶液組成物中に極性基を有する高分子化合物(C)が均質で懸濁していること。
(C4)ポリアミック酸と相溶しないこと。
極性基を有する高分子化合物(C)の作用機序については明確でないが、以下のように考えられる。
【0043】
c1)ポリアミック酸中に前記高分子化合物(C)が非相溶物として残存する。この高分子化合物(C)の一部または全部は、凝固溶媒に浸漬又は接触させてポリアミック酸の多孔質膜を作製する際において凝固浴中に溶出し、更には加熱イミド化する工程で分解される。その結果、ポリイミド膜のマクロボイド層の隔壁並びに表面層(a)及び(b)において、除去された高分子化合物(C)が存在していた部分は細孔を形成し、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
及び/又は
c2)ポリアミック酸溶液組成物の凝固を促進するなど、凝固過程に影響を与えることにより、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
ポリアミック酸溶液組成物に極性基を有する高分子化合物(C)を添加する場合には、該高分子化合物(C)は、原体そのままで、又は溶解溶液もしくは懸濁溶液などの形態で添加することができる。
【0044】
なお、ポリアミック酸溶液組成物の製造の際に、溶液が懸濁状になる場合があるが、十分な時間をかけて撹拌することで均質な状態を保つことができれば、本発明のポリイミドの製造に用いることができる。
【0045】
また、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度は、流延のしやすさ及びフィルム強度の観点から、好ましくは10〜10000ポアズ(1〜1000Pa・s)、より好ましくは100〜3000ポアズ(10〜300Pa・s)、更に好ましくは200〜2000ポアズ(20〜200Pa・s)、特に好ましくは300〜1000ポアズ(30〜100Pa・s)である。
【0046】
(流延)
本発明の多孔質ポリイミドの製造方法では、まず、ポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延する。流延方法は特に限定されず、例えば、ポリアミック酸溶液組成物をドープ液として使用し、ブレードやTダイなどを用いてガラス板やステンレス板等の上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延することができる。また、連続の可動式のベルト又はドラム上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的に個片又は長尺状の流延物を製造することができる。ベルト又はドラムは、ポリアミック酸溶液組成物及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属製、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま凝固浴に投入することもできる。また、必要に応じて流延物の片面又は両面を、水蒸気などを含むガス(空気、不活性ガスなど)と接触させてもよい。
【0047】
(ポリアミック酸の多孔質膜の作製)
次に、流延物を、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行うことで、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する。得られたポリアミック酸の多孔質膜は、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行う。
水を必須成分とする凝固溶媒は、水、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液を用いることができる。火災などの安全面、製造原価、及び得られる膜の均質性の確保の観点から、水と有機極性溶媒とを含む凝固溶媒を用いることが好ましい。凝固溶媒に含有してもよい有機極性溶媒としては、ポリアミック酸の貧溶媒であるエタノール、メタノール等のアルコ−ル類、アセトン等が挙げられる。
【0048】
凝固溶媒が水と有機極性溶媒との混合液である場合、凝固溶媒100質量%中の水の含有量は、好ましくは5質量%以上100質量%未満、より好ましくは20質量%以上100質量%未満、更に好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは45〜90質量%である。凝固溶媒100質量%中の有機極性溶媒の含有量は、好ましくは0質量%を超え95質量%以下、より好ましくは0質量%を超え80質量%以下、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜55質量%である。
【0049】
凝固溶媒の温度は、目的に応じて適宜選択して用いればよく、例えば−30〜70℃、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは10〜50℃の範囲で行うことが好ましい。
【0050】
(イミド化処理)
次に、得られたポリアミック酸の多孔質膜をイミド化して多孔質ポリイミド膜を製造する。イミド化としては、熱イミド化処理、化学イミド化処理等を挙げることができるが、本発明では熱イミド化処理が好ましい。
【0051】
(熱イミド化処理)
熱イミド化処理は、例えば、ポリアミック酸の多孔質膜を、ピン、チャック若しくはピンチロールなどを用いて熱収縮により平滑性が損なわれないように支持体に固定し、大気中にて加熱することにより行うことができる。反応条件は、例えば280〜600℃、好ましくは350〜550℃の加熱温度で、1〜120分間、好ましくは2〜120分間、より好ましくは3〜90分間、さらに好ましくは5〜60分の加熱時間から適宜選択して行うことが好ましい。
【0052】
本発明の方法では、熱イミド化処理において200℃以上の温度域での昇温速度が、25℃/分以上、好ましくは50℃/分以上であり、昇温速度の上限値は特に限定する必要はないが、昇温速度の上限値を設定する場合は、50〜500℃/分、好ましくは50〜400/分、より好ましくは70〜300℃/分、さらに好ましくは120〜200℃/分である。イミド化反応が顕著に起こる200℃以上の温度域において上記の昇温速度で加熱することにより、表面開口率及び孔径が大幅に向上し、気体などの物質透過性が大幅に向上した本発明の多孔質ポリイミド膜を得ることができる。
【0053】
なお、極性基を有する高分子化合物(C)を含むポリアミック酸溶液組成物を用いる場合には、ポリアミック酸の多孔質膜を前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度以上に加熱して熱イミド化することが好ましい。前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度は、例えば、熱重量測定装置(TGA)を用いて、空気中、10℃/分の条件で測定することができる。
【0054】
通常、ポリアミック酸溶液の流延物からポリイミドフィルムを成形する場合は、急激な加熱昇温を行うと急激に溶媒揮発が生じて発泡現象を誘発し良好なフィルムが得られないため、一定量の溶媒が溶液から揮発して溶液がゲル状になるまでは緩やかな昇温速度で加熱が行われる。一方、多孔質ポリイミド膜の場合は、前駆体であるポリアミック酸多孔質膜の形成工程である貧溶媒凝固浴への浸漬工程で大部分の良溶媒が抽出されるので、熱イミド化工程において上記のような発泡現象は生じない。しかしながら、ポリアミック酸のガラス転移温度がイミド化反応の進行に従って上昇するプロファイルと比べて大幅に高い温度で加熱処理を施すと、高分子の流動が生じて孔が閉塞して緻密化が生じ、通気性が悪化するという問題が生じる。
【0055】
これに対して、本発明者らは、ポリアミック酸多孔質膜の熱イミド化処理において200℃以上の温度域での昇温速度を50℃/分以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは100℃以上とすることで、表面開口率及び孔径が大幅に向上し、気体などの物質透過性が大幅に向上した本発明の多孔質ポリイミド膜を得ることができることを見出した。昇温速度を50℃/分以上とすることで物質透過性を向上させることができる作用機序についてはまだ明らかにされていないが、マクロボイドを有するポリアミック酸多孔質膜において空孔率が高いために緻密化が行われるだけの物質移動が起こらないことや、原料に用いた極性基を有する有機化合物(B)がポリアミック酸分子の流動を抑制することに起因すると推測される。
【0056】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、ポリアミック酸溶液或いはポリイミド溶液を介して製造する場合、用いるポリマーの種類、ポリマー溶液のポリマー濃度、粘度、有機溶液など、凝固条件(溶媒置換速度調整層の種類、温度、凝固溶媒など)などを適宜選択することにより、空孔率、膜厚、表面の平均孔径、最大孔径、中央部の平均孔径などを適宜設計することができる。
【0057】
本発明の多孔質ポリイミド膜は、目的に応じて少なくとも片面をコロナ放電処理、低温プラズマ放電或いは常圧プラズマ放電などのプラズマ放電処理、化学エッチングなどを施すことにより、膜の表面処理を行ってもよい。また、表面層(a)及び/又は(b)を面削りして用いてもよい。これらの処理により膜の物質透過性、表面孔径、濡れ性を制御することができる。
【0058】
<多孔質層以外の層>
本願発明は少なくとも1層の多孔質層を含む2層以上で構成されており、本願発明で用いる多孔質層以外の層は多孔質でない層を想定しており、無孔のフィルムを用いることも考えられ、無孔フィルムとしてポリイミドフィルムやポリアミドフィルムを用いることができる。
【0059】
本発明で用いられるポリイミドフィルムとしては、表面に熱融着性樹ポリイミド表面層を有する多層のポリイミドフィルムを用いることができ、例えば2層あるいは3層構造[熱融着性樹ポリイミド表面層/ポリイミド層(/熱融着性ポリイミド表面層)]の多層ポリイミドフィルムが挙げられる。このような多層ポリイミドフィルムは、例えば熱融着性ポリイミドフィルムを与えるポリイミド前駆体溶液をポリイミド層の少なくとも片面、或いは両面に、共押出し成形法によって積層する方法によって得ることができる。
【0060】
熱融着性多層ポリイミドフィルムにおける熱融着性ポリイミド表面層は、250〜400℃の温度範囲で熱圧着できる熱融着性ポリイミドからなるものが好ましい。好ましくは、熱融着性ポリイミドはガラス転移温度が200℃〜300℃である。
熱融着性ポリイミドは好適には1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE-Rと略記することもある。)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある。)とから製造される。また、熱融着性ポリイミドとしては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(DANPG)と4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)とから製造される。あるいは、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)およびピロメリット酸二無水物と1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンとから製造される。また、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とから、あるいは3,3’−ジアミノベンゾフェノンおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とから製造される。さらに、テトラカルボン酸成分中、100モル%中の12〜25モル%がピロメリット酸二無水物、5〜15モル%が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、残部が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、ジアミン成分として1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを必須成分とし、DSC測定によりTgが観測できる熱融着性ポリイミドも好適である。
【0061】
この熱融着性ポリイミドは、前記熱融着性を損なわない範囲で他のテトラカルボン酸二無水物、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物などで置き換えられてもよい。熱融着性のポリイミドは、前記各成分と、さらに場合により他のテトラカルボン酸二無水物および他のジアミンとを、有機溶媒中、約100℃以下、特に20〜60℃の温度で反応させてポリアミック酸の溶液とし、このポリアミック酸の溶液をド−プ液として使用できる。
【0062】
前記熱融着性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液は、酸成分のモル数がジアミンのモル数に対する比として、好ましくは0.92〜1.1、特に0.98〜1.1、そのなかでも特に0.99〜1.1であるような割合が好ましい。また、ポリアミック酸のゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマ−)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。また、イミド化促進の目的で、溶液中に塩基性有機化合物系触媒を添加することができる。例えば、イミダゾ−ル、2−イミダゾ−ル、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ルなどをポリアミック酸(固形分)に対して0.01〜20重量%、特に0.5〜10重量%の割合で使用することができる。これらは比較的低温でポリイミドフィルムを形成するため、イミド化が不十分となることを避けるために使用する。また、接着強度の安定化の目的で、熱融着性の芳香族ポリイミド原料ド−プに有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物または有機錫化合物を添加してもよい。例えば水酸化アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナ−トなどをポリアミック酸(固形分)に対してアルミニウム金属として1ppm以上、特に1〜1000ppmの割合で添加することができる。
【0063】
前記のポリアミック酸製造に使用する有機溶媒は、高耐熱性の芳香族ポリイミドおよび熱融着性の芳香族ポリイミドのいずれに対しても、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、クレゾ−ル類などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明の多層ポリイミドフィルムの熱融着性ポリイミド表面層を除いたポリイミド層を形成するポリイミドは、好適にはガラス転移温度が250℃以上或いはガラス転移温度を示さない高耐熱性ポリイミドであることが好適である。前記高耐熱性ポリイミドは、好適には3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下単にs−BPDAと略記することもある。)とパラフェニレンジアミン(以下単にPPDと略記することもある。)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(以下単にDADEと略記することもある。)および/またはピロメリット酸二無水物(以下単にPMDAと略記することもある。)とから製造される。この場合PPD/DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。また、s−BPDA/PMDAは100:0−50/50であることが好ましい。
【0065】
また、前記高耐熱性ポリイミドは、ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとから製造される。この場合DADE/PPD(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。
【0066】
さらに、前記高耐熱性ポリイミドは、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)および4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(DADE)とから製造される。この場合、酸二無水物中BTDAが20〜90モル%、PMDAが10〜80モル%、ジアミン中PPDが30〜90モル%、DADEが10〜70モル%であることが好ましい。
【0067】
前記高耐熱性ポリイミドでは、その物性を損なわない範囲で、他の種類の芳香族テトラカルボン酸二無水物や芳香族ジアミン、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を使用してもよい。
【0068】
前記の共押出し−流延製膜法においては、例えば前記高耐熱性ポリイミドのポリアミック酸溶液の片面あるいは両面に熱融着性ポリイミドの前駆体溶液を共押出して、これをステンレス鏡面、ベルト面等の支持体面上に流延塗布し、100〜300℃で半硬化状態またはそれ以前の乾燥状態とすることが好ましい。この半硬化状態またはそれ以前の状態とは、加熱および/または化学イミド化によって自己支持性の状態にあることを意味する。前記の共押出しは、例えば特開平3−180343号公報(特公平7−102661号公報)に記載の共押出法によって二層あるいは三層の押出し成形用ダイスに供給し、支持体上にキャストしておこなうことができる。
【0069】
前記の高耐熱性ポリイミドを与える押出し物層の片面あるいは両面に、熱融着性ポリイミドを与えるポリアミック酸溶液を積層して多層フィルム状物を形成して乾燥後、熱融着性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以上で劣化が生じる温度以下の温度、好適には最高加熱温度が375℃以上550℃以下の温度で加熱して乾燥およびイミド化すれば、高耐熱性ポリイミドの片面あるいは両面に熱融着性ポリイミド表面層を有する多層ポリイミドフィルムを好適に得ることができる。
【0070】
本発明の熱融着性ポリイミド表面層を有する多層ポリイミドフィルムは、ポリイミド層(基体層)の厚さは約5〜100μm、特に約7〜50μm程度である。また、熱融着性ポリイミド表面層の厚みは1〜10μm、特に2〜5μmが好ましい。1μm未満では熱融着によって良好な接着性能を得ることが難しくなる。一方、10μmを超えると、使用できなくはないが特に効果はなく、むしろ得られるポリイミドヒ−タ−の耐熱性が低下する。
【0071】
そして、熱融着性ポリイミド表面層を有する多層ポリイミドフィルムは、厚みが10〜100μm、特に10〜50μm、その中でも10〜25μmであることが好ましい。10μm未満では作製したフィルムの取り扱いが難しく、100μmより厚くても特に効果はなく、発熱体と加熱圧着して片側の熱融着性多層ポリイミドフィルムによって発熱体の金属を除く空間を充填する際に困難になり不利である。
【0072】
本発明の、熱可塑性ポリイミド樹脂は、ポリイミドヒーターを熱融着する際に、熱融着ポリイミド表面層と同様に熱溶融するものであり、好ましくはその温度で適当な流動性を示すものが好適である。したがって、150〜300℃好ましくは200〜300℃のガラス転移温度を有するものが好適であり、またポリイミドの繰返し単位の主鎖に2以上の複数のエーテル結合を有するポリイミドが好適である。例えば、酸成分が2,2’−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェンオキシ)フェニル]プロパン二無水物、ジアミン成分がm−フェニレンジアミンから得られるポリイミド、酸成分がs−BPDAとa−BPDAの混合物(混合割合がモル比でs−BPDA/a−BPDA=8/2程度)、ジアミン成分が1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンから得られるポリイミド、酸成分がピロメリット酸無水物、ジアミン成分が4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルから得られるポリイミドなどを好適に挙げることができる。
この熱可塑性ポリイミド樹脂は、限定されるものではないが、厚みが10μm〜5mm好ましくは10μ〜500μm程度のフィルムを、必要に応じて重ねて、好適に用いることができる。
【0073】
本発明で用いられるポリアミドフィルムとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・66共重合、ポリアミド12などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド6が好ましい。
【0074】
<積層体>
本発明の積層体は、多孔質層と多孔質層以外の層とをそれぞれ1層ずつ積層した2層構造でもよく、多孔質層をコア層としてその両面に多孔質層以外の層を積層した3層構造でもよく、4層構造・5層構造などのさらなる多層構造でもよい。2層構造の積層体の場合、多孔質層の厚みは、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜300μm、特に好ましくは5〜150μmであり、多孔質層以外の層の厚みは、好ましくは0.5〜200μm、より好ましくは1〜100μm、特に好ましくは2〜75mmである。また、3層構造の積層体の場合、多孔質層の厚みは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは2〜200μm、特に好ましくは5〜100μmであり、多孔質層以外の層の厚みは、好ましくは0.5〜150μm、より好ましくは1〜100μm、特に好ましくは2〜50μmであり、多孔質層の両面の多孔質層以外の層の厚みは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0075】
<積層体の物性>
本発明の積層体は、実用的な耐熱性を有し寸法安定性が高い、多孔質層を含むフレキシブルな積層体である。
【0076】
積層体の実用的な耐熱性は、積層体の熱コンダクタンスで確認し、熱コンダクタンスは、1000W/m2K以下であることが好ましく、750W/m2K以下であることがより好ましく、500W/m2K以下であることがさらに好ましい。1000W/m2K以下であると、1mm以下の厚みでも実用的な断熱特性が得られる点で好ましい。
【0077】
積層体の寸法安定性は、積層体の線膨張係数で確認し、積層体の線膨張係数は、200℃以下での厚み方向と直交方向の線膨張係数が100ppm/K以下であることが好ましく、70ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることがさらに好ましい。線膨張係数が100ppm/K以下であると、例えば電子機器内部等の狭い空間に多数の電子部品が配置されている箇所でも使用が容易であり、また回路基板との兼用も可能である点で好ましい。
【0078】
積層体全体での空孔率は、使用する目的に応じて適宜選択すればよいが、40%〜95%であることが好ましく、50%〜90%であることがより好ましく、60%〜80%であることがさらに好ましい。空孔率が40%〜95%であることにより、実用的な耐熱性を有し、また積層体自体の強度も維持できる。
【0079】
<積層体の製造方法>
本願発明の積層体の製造方法は、特に限定するものではないが、以下の方法で製造することができる。
1)加熱融着層を有するポリイミドフィルムとポリイミド多孔質膜を積層し、加熱プレスすることで、2層構造の積層体を作製する。
2)加熱融着層を有するポリイミドフィルムをポリイミド多孔質膜の両面に配置して積層し、加熱プレスすることで3層構造の積層体を作製する。
3)加熱融着層を有するポリイミドフィルムとポリイミド多孔質膜を交互に、かつポリイミドフィルムが最表面になるように5層積層し、加熱プレスすることで5層構造の積層体を作製する。
4)接着剤を用いて各層を接合することで積層体を作製する。
5)積層するフィルム表面にプラズマや電子線等を照射して化学的に活性な状態にしたのちに、他のフィルムと貼りあわせる事で接合して積層体を作製する。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
<多孔質層(多孔質フィルム)の評価>
1)多孔質フィルムの膜厚 膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
【0082】
2)多孔質フィルムの空孔率
所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を下式(1)によって求めた。
【0083】
空孔率=S×d×D/w×100 ・・・(1)(式中、Sは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度をそれぞれ意味する。ポリイミドの密度は1.34g/cm3とする。)
【0084】
3)多孔質フィルムの気体透過性
ガーレー値(0.879g/mm2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
【0085】
<多孔質層以外の層(無孔フィルム)の評価>
1)無孔フィルムの膜厚 膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
【0086】
<積層体の熱コンダクタンス>
株式会社アイフェイズ社製の熱伝導測定装置アイフェイズ・モバイル1uを用いて室温で熱伝導率を測定し、熱コンダクタンスを算出した。
【0087】
<積層体の線膨張係数>
線膨張係数(50〜200℃)測定:サンプルをTMA装置(引張りモ−ド、2g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定した。
【0088】
以下のフィルムを準備した。
ポリイミド多孔質膜A
ポリイミド多孔質膜B
ユーピレックスVT(宇部興産製)
カプトン100H/V(東レ・デュポン株式会社製)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜(ミリポア社製。Omnipore JVWP)
それぞれの膜特性を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
<実施例1>
1)5×10cmのサイズのユーピレックスVTとポリイミド多孔質膜Aを、ユーピレックスVT、ポリイミド多孔質膜A、ユーピレックスVTの順に積層し、280℃で6MPaの圧力で5分間、加熱プレスを行い、3層構造の積層体を得た。積層体はエタノールに5分間浸漬後も剥離することは無かった。このフィルム厚みと見かけの空孔率、熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
2)5×10cmのサイズのユーピレックスVTとポリイミド多孔質膜Bを、ユーピレックスVT、ポリイミド多孔質膜B、ユーピレックスVTの順に積層し、280℃で2MPaの圧力で10秒間、加熱プレスを行い、3層構造の積層体を得た。積層体はエタノールに5分間浸漬後も剥離することは無かった。このフィルム厚みと見かけの空孔率、熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
3)5×10cmのサイズのユーピレックスVTとポリイミド多孔質膜Bを、ユーピレックスVT、ポリイミド多孔質膜B、ユーピレックスVT、ポリイミド多孔質膜B、ユーピレックスVTの順に積層し、280℃で2MPaの圧力で10秒間、加熱プレスを行い、5層構造の積層体を得た。積層体はエタノールに5分間浸漬後も剥離することは無かった。このフィルム厚みと見かけの空孔率、熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
<比較例1>
カプトン100H/Vフィルムの熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
<比較例2>
ポリイミド多孔質膜Aの熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
<比較例3>
ポリイミド多孔質膜Bの熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
<比較例4>
PTFE多孔質膜の熱コンダクタンス、線膨張係数を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0093】
この積層体は、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。また、この多孔質層を含む積層体は、薄型テレビ、モバイル機器、ノートパソコン等の内部において、加熱に弱い電子部品を保護する断熱シートとして使用される。また、その空孔を生かして低誘電率回路用基板、高周波回路基板、電磁波シールドや電磁波吸収体などの電磁波制御材等の広範囲な基礎材料として利用可能である。また、車載用電子機器類の熱からの保護にも使用することができる。