(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選別手段は、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離を設定する距離設定手段と、前記距離と前記樹脂成形品の厚みとから検査範囲を設定する検査範囲設定手段と、前記検査範囲に欠点候補が含まれる場合に欠点と判断する欠点判断手段とで構成される、請求項1に記載の樹脂成形品の検査装置。
前記距離設定手段は、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離目標値を入力する距離入力手段と、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離入力手段の入力値と前記距離測定手段での測定値の差に応じて、前記距離が前記入力値と同じとなるように補正する距離補正手段とで構成される、請求項2に記載の樹脂成形品の検査装置。
前記X線放射手段が、1つ以上のX線放射手段と、前記樹脂成形品に対して2か所以上の異なる位置からX線を放射するよう前記1つ以上のX線放射手段を移動させるX線放射位置移動手段と、を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形品の検査装置。
前記X線放射手段が、1つ以上のX線放射手段と、前記樹脂成形品を2か所以上の位置に移動させる樹脂成形品位置移動手段と、を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形品の検査装置。
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂成形品の検査装置を用いる樹脂成形品の製造装置であって、樹脂成形品の検査装置による検査手段と、前記検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別手段と、で構成される樹脂成形品の製造装置。
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂成形品の検査装置を用いる高圧タンクの製造装置であって、樹脂成形品の検査装置による検査手段と、前記検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品を区別する選別手段と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成する外層形成手段と、を含む、高圧タンクの製造装置。
複数の経路でX線を放射し、樹脂成形品を透過したX線を1つ以上の位置で検出し、検出したX線画像に対して欠点候補を検出し、ステレオマッチング法により高さを測定し、得られた高さ情報画像と前記欠点候補として得られた画像とを論理積し、前記高さ位置から欠点候補の良否を選別する、樹脂成形品の検査方法。
前記選別する方法が、前記X線放射位置から前樹脂成形品までの距離を設定し、前記距離と樹脂成形品の厚みとから検査範囲を設定し、前記検査範囲に欠点候補が含まれる場合に欠点と判断する、請求項12に記載の樹脂成形品の検査方法。
前記距離の設定方法が、前記X線放射位置から前記樹脂成形品までの距離目標値を入力し、前記X線放射位置から前記樹脂成形品までの距離を測定し、前記距離入力値と前記距離測定値との差に応じて、前記距離が前記入力値と同じになるように前記距離を補正する、請求項13に記載の樹脂成形品の検査方法。
前記複数の経路でX線を放射する方法が、前記樹脂成形品に対して2か所以上の異なる位置からX線を放射するよう、X線の放射位置を移動させる、請求項12〜14のいずれかに記載の樹脂成形品の検査方法。
前記複数の経路でX線を放射する方法が、1つ以上の位置からX線を放射し、前記樹脂成形品を2か所以上の位置に移動させる、請求項12〜14のいずれかに記載の樹脂成形品の検査方法。
請求項12〜17のいずれかに記載の樹脂成形品の検査方法を用いる樹脂成形品の製造方法であって、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別工程と、を含む、樹脂成形品の製造方法。
請求項12〜17のいずれかに記載の樹脂成形品の検査方法を用いる高圧タンクの製造方法であって、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別工程と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成する外層形成工程と、を含む、高圧タンクの製造方法。
請求項12〜17のいずれかに記載の樹脂成形品の検査方法を用いる燃料電池車の製造方法であって、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品を区別する選別工程と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成し高圧タンクを得る外層形成工程と、得られた高圧タンクを車台に設置する設置工程を含む、燃料電池車の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の成形品を用いて作製した高圧タンクは、高圧ガス(特に高圧水素ガス)の充填および放圧を繰り返した際に、変形等が発生することがあり、信頼性低下の要因となっていた。このような突発的な異常は、発生要因が不明であり、またその検査方法もなかった。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、タンクの変形等の要因が、例えば2つの部品に分けて製造される樹脂成形品を接合した部位に存在する不純物や空隙に因ることを突き止めた。樹脂成形品の接合に一般的に用いられる溶着による接合方法を用いた場合、十分に溶着させるために接合部を押し込む工程が発生する。この工程で接合部には溶融した樹脂の盛り上がり(以下、バリと記す)が生じる。このバリの中の空隙や不純物は樹脂成形品の変形等を発生させる要因とはならない。しかし、樹脂成形品の内部の検査には、特許文献2に記載の検査方法にある通り、X線を透過させその透過量の変化によって内部の不純物や空隙の有無を検出することが一般的である。この実施の形態を
図3に示す。一般的なX線透過撮像による検査構成では判別出来ない欠点と非欠点部分の一例を説明するための模式図である。説明を簡便にするため、樹脂成形品2はX線放射手段1側の接合断面部のみを表示している。この構成では、X線放射手段1から放射されたX線は検査すべき接合部分とバリ部分の両方を透過するため、X線放射手段1から放射されたX線の透過量の変化が、接合部の空隙もしくは不純物によるものなのか、バリ部分の空隙もしくは不純物によるものなのかを判別することは難しかった。また、複数方向からのX線の照射によって欠点の発生位置を特定することも良く用いられるが、その発生位置からも、その部分がバリなのか、接合部なのかを判別することは難しかった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、高精度で樹脂成形品が良品であるか不良品であるかを検出することができ、将来変形等が発生し得る樹脂成形品を事前に検出することのできる、樹脂成形品の検査方法および製造方法、樹脂成形品の検査装置および製造装置、高圧タンクの製造方法および製造装置、樹脂成形品ならびに高圧タンクおよび燃料電池車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、上記課題を解決する本発明の一態様に関する樹脂成形品の検査装置は、複数の経路でX線を放射するX線放射手段と、樹脂成形品を透過したX線を検出する1つ以上のX線検出手段と、画像処理手段とを備え、前記画像処理手段は、前記X線検出手段が取得した2つ以上の画像に対して欠点候補を検出する欠点候補検出手段と、ステレオマッチング法による高さ測定手段と、前記高さ測定手段により得られた高さ位置情報を記録した画像と前記欠点候補検出手段により得られた欠点候補画像とを論理積する画像演算手段と、前記高さ位置から欠点候補の良否を判断する選別手段と、で構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の樹脂成形品の検査装置は、前記選別手段は、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離を設定する距離設定手段と、前記距離と前記樹脂成形品の厚みとから検査範囲を設定する検査範囲設定手段と、前記検査範囲に欠点候補が含まれる場合に欠点と判断する欠点判断手段とで構成されることが好ましい。
【0009】
また、樹脂成形品の検査装置は、前記距離設定手段は、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離目標値を入力する距離入力手段と、前記X線放射手段から前記樹脂成形品までの距離を測定する距離測定手段と、前記距離入力手段の入力値と前記距離測定手段での測定値の差に応じて、前記距離が前記入力値と同じとなるように補正する距離補正手段とで構成されることが好ましい。
【0010】
また、樹脂成形品の検査装置は、前記X線放射手段が、1つ以上のX線放射手段と、前記樹脂成形品に対して2か所以上の異なる位置からX線を放射するよう前記1つ以上のX線放射手段を移動させるX線放射位置移動手段を備えていることが好ましい。
【0011】
また、樹脂成形品の検査装置は、前記X線放射手段が、1つ以上のX線放射手段と、前記樹脂成形品を2か所以上の位置に移動させる樹脂成形品位置移動手段とで構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の樹脂成形品の検査装置は、前記樹脂成形品が高圧タンク用部材であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の樹脂成形品の製造装置は、樹脂成形品の検査装置による検査手段と、前記検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別手段を備えていることが好ましい。
【0014】
また、発明の高圧タンクの製造装置は、樹脂成形品の検査装置による検査手段と、前記検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品を区別する選別手段と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成する外層形成手段を備えることが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決する本発明の樹脂成形品の検査方法は、複数の経路でX線を放射し、樹脂成形品を透過したX線を1つ以上の位置で検出し、検出したX線画像に対して欠点候補を検出し、ステレオマッチング法により高さを測定し、得られた高さ情報画像と前記欠点候補として得られた画像とを論理積し、前記高さ位置から欠点候補の良否を選別する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の樹脂成形品の検査方法は、前記選別の方法が、前記X線放射位置から前樹脂成形品までの距離を設定し、前記距離と樹脂成形品の厚みとから検査範囲を設定し、前記検査範囲に欠点候補が含まれる場合に欠点と判断することが好ましい。
【0017】
また、本発明の樹脂成形品の検査方法は、前記距離の設定方法が、前記X線放射位置から前記樹脂成形品までの距離目標値を入力し、前記X線放射位置から前記樹脂成形品までの距離を測定し、前記距離入力値と前記距離測定値との差に応じて、前記距離が前記入力値と同じになるように前記距離を補正することが好ましい。
【0018】
また、本発明の樹脂成形品の検査方法は、前記複数の経路でX線を放射する方法が、前記樹脂成形品に対して2か所以上の異なる位置からX線を放射するよう、X線の放射位置を移動させることが好ましい。
【0019】
また、本発明の樹脂成形品の検査方法は、前記複数の経路でX線を放射する方法が、1つ以上の位置からX線を放射し、前記樹脂成形品を2か所以上の位置に移動させることが好ましい。
【0020】
また、本発明の樹脂成形品の検査方法は、前記樹脂成形品が高圧タンク用部材であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別工程を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の高圧タンクの製造方法は、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別工程と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成する外層形成工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の燃料電池車の製造方法は、樹脂成形品の検査方法による検査工程と、前記検査工程において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品を区別する選別工程と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成し高圧タンクを得る外層形成工程と、得られた高圧タンクを車台に設置する設置工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高精度で樹脂成形品が良品であるか不良品であるかを高精度に検出することができ、将来変形等の発生し得る樹脂成形品を事前に検出することのできる、樹脂成形品の検査方法および製造方法、樹脂成形品の検査装置および製造装置、高圧タンクの製造方法および製造装置、樹脂成形品ならびに高圧タンクおよび燃料電池車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<樹脂成形品の検査装置>
以下、本発明の樹脂成形品の検査装置に適用した実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施例は改変することができる。また、本発明の樹脂成形品の検査装置は様々な樹脂成形品の検査に適用できる。例えば、高圧タンク用部材や樹脂配管、樹脂構造部材などが挙げられる。ここでは、樹脂成形品検査の1つの例として、高圧タンク用ライナー部材の検査を例に詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明における検査対象である樹脂成形品および高圧タンクの概要について説明する。高圧タンクは、圧縮ガスや液化ガスなどの高圧ガスを充てんするための容器のことであり、たとえば高圧ガスが水素の場合では燃料電池自動車搭載用容器、高圧水素輸送用容器、および水素ステーション蓄圧器などがある。高圧タンクの構造は、特に限定されない。一例を挙げると、高圧タンクは、高圧タンク用部材であるライナー部材と、ライナー部材を覆う1または複数の補強層と、燃料電池に高圧ガスを供給するための供給系統(弁部材、各種配管系統等)からなる。
【0028】
高圧タンクの形状は特に限定されない。一例を挙げると、高圧タンクは、略円筒状である。高圧タンクは、タンク内へ高圧ガスを充填し、または、タンク内から高圧ガスを取り出すための開口部が形成されている。開口部は、供給系統によって閉止される。本発明において、樹脂成形品とは、例えば、高圧タンクを構成する部材のことであり、ライナー部材や、ライナー部材に補強層を形成した後の部材などが挙げられる。
【0029】
・ライナー部材
ライナー部材は、高圧タンクの筐体を構成するタンク容器の部材である。ライナー部材の形状は特に限定されない。一例を挙げると、ライナー部材は、略円筒状であり、内部に収容空間が形成されている。収容空間には、高圧ガスが充填される。ライナー部材には、上記の開口部が形成されている。ライナー部材は、1の部材から構成されてもよいが、製作の容易さから一般的には複数に分割された部材から構成される。この場合、複数に分割された部材は、接合等によって一体化され得る。また、ライナー部材を作製する方法は、ブロー成形、射出成形等が挙げられる。一方、本発明の検査方法は、ライナー部材が射出成形によって複数に分割された部材を接合する接合面の検査に好適に用いられる。
【0030】
ライナー部材の材質は特に限定されない。一例を挙げると、ライナー部材は、樹脂製、アルミニウムや鉄等の金属製等である。これらの中でも、樹脂製のライナー部材は、接合部に空隙や不純物が形成された場合に、高圧タンクに成形された後で変形や破壊等が起こりやすい。しかしながら、本発明の検査方法は、後述するとおり、空隙や不純物を適切に検出し得る。そのため、本発明の検査方法は、ライナー部材が樹脂製である場合に、特に好適である。樹脂は、X線吸収率がより高く、後述するX線検出器によってライナー部材における不純物等がより精度よく検出される点から、ライナー部材に、ポリオレフィン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体およびポリアミド樹脂のうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
【0031】
また、ライナー部材は、ポリアミド樹脂を含むことがより好ましい。ポリアミド樹脂は、X線吸収率が高いため、ポリアミド樹脂中の空隙や樹脂不純物等が検出されやすい。また特に、高圧ガスが水素ガスである場合、水素ガスは低分子量であるため、ライナー部材に溶け込みやすい。その結果、ライナー部材の接合部にわずかな空隙や不純物が存在する場合であっても、水素ガス用の高圧タンクは、接合部での変形や破壊等が生じやすい。後述する本発明の検査方法によれば、このような空隙や樹脂不純物等は、容易に検出され得る。そのため、本発明の検査方法は、ライナー部材がポリアミド樹脂製である場合に、特に不純物等が精度よく検出され、適切に判別され得る。
【0032】
・補強層
ライナー部材は、ライナー部材を補強するために、1または複数の補強層によって外表面が覆われることが好ましい。補強層の材料は特に限定されない。一例を挙げると、補強層は、繊維強化樹脂層である。繊維強化樹脂層を構成する繊維強化樹脂としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック等が例示される。これらの繊維強化樹脂は、併用されてもよい。また、それぞれの繊維強化樹脂からなる補強層がライナー部材を二重に覆ってもよい。繊維強化樹脂層は、繊維強化樹脂がたとえば、炭素繊維強化プラスチックである場合、ライナー部材の外表面に巻き付けられる炭素繊維強化プラスチック等の強化繊維と、強化繊維同士を結着する熱硬化性樹脂とから主に構成される。
【0033】
検査方法の説明に戻る。本発明の検査方法は、上記高圧タンクのうち、補強層が設けられる前のライナー部材の接合面に対して実施されることが好ましい。具体的な検査方法は、X線放射装置から、ライナー部材にX線を放射し、ライナー部材を透過したX線を、X線検出器を用いて検出することにより、ライナー部材が良品であるか不良品であるかを検査する。
【0034】
本発明の検査装置を説明するための模式図を
図1に示す。X線放射手段1は、樹脂成形品2にX線を放射するための機器である。X線放射装置の形状および寸法は特に限定されない。また、X線放射手段1は、X線放射装置を駆動するための図示しない電源ケーブル等が付帯されてもよい。この場合、電源ケーブル等は、樹脂成形品2と干渉しない形状、寸法であることが好ましい。また放射されたX線は、複数の経路で樹脂成形品にX線を照射する必要がある。本発明ではX線放射手段1aおよびX線放射手段1bの2つのX線放射手段によって、X線が放射される。放射されるX線は、X線放射手段側の樹脂成形品と、後述のX線検出手段側の樹脂成形品とを透過して、X線検出手段3によって検出される。なお、X線放射手段1の配置は特に規定しないが、複数のX線放射手段の少なくとも1つは、X線放射手段側の接合面とX線検出手段側の接合面との両方が透過経路とならないように配置することが好ましい。ここでは、樹脂成形品の接合面を挟み込む形でX線放射手段1aおよびX線放射手段1bが並行配置され、いずれもX線放射手段側の接合面とX線検出手段側の接合面との両方が照射経路とならないように配置されている。
【0035】
樹脂成形品2は、2分割された成形部材を円筒形に接合した高圧タンク用部材として例示されている。
【0036】
X線検出手段3は、樹脂成形品2を透過したX線を検出するための機器である。X線検出手段は、少なくとも1つ以上のX線検出器で構成されればよく、1つのX線検出手段で複数のX線放射手段1からの放射されるX線を検出する場合は、複数のX線放射手段から異なるタイミングでX線を放射してX線を検出するのでもよいし、複数のX線放射手段1の個数に併せて、複数のX線検出手段を配置して、同時にX線を検出してもよいし、1つのX線検出手段で、複数のX線放射手段1から放出されるX線を検出できる位置に、X線検出手段を移動させてもよい。一般的には、空隙であればX線は透過しやすいため周囲よりも強く検出され、不純物であれば不純物の比重と樹脂成形品を構成する樹脂材料の比重の大小に応じて強弱いずれかで検出される。また、バリ部分は樹脂成形品の通常部分よりも肉厚が増すため、全体的に弱く撮像される。なお、基準マーカ8は、樹脂成形品2の表面高さ位置を正確に求めるための基準であるので、X線検出手段に明確に検出できることが好ましいことから、樹脂で構成される樹脂成形品に対して、X線がより透過しにくい金属材料を用いることが好ましい。また、基準マーカ8は、樹脂成形品2の表面高さ位置を精度良く求めるために使用するものであるので、X線検出手段3で複数個が検出されるように複数個を配置しても良い。また、樹脂成形品の表面高さを精度良く求める手段としては、樹脂成形品の固定位置が機械的に高精度に位置決めされる機構(図示しない)を用意することで、基準マーカ8に類するものを配置せずに、あらかじめ定める高さ位置基準値を設定してもよい。また、樹脂成形品の固定位置の高さ位置を高精度に測定する測定手段(図示しない)を用いて、高さ位置基準値を逐次測定してもよい。測定手段はレーザー三角測量方式変位計、レーザー干渉計、超音波距離計、渦電流方式変位センサー、触針式変位計などが用いられるが、非接触であることや測定対象の材質に影響されにくいこと、および応答速度などの面からレーザー三角測量方式変位計が好適に用いられる。なお、本発明の実施形態の説明としては、基準マーカ8がX線検出手段3の検出範囲内に入る位置に一つ配置されているものとして、以降説明する。
【0037】
なお、X線検出手段3は汎用のX線検出器でもよい。一例を挙げると、X線検出手段3は直接変換方式のX線検出器でもよく、間接変換方式のX線検出器でもよい。より具体的には、X線検出手段3はX線フィルム、イメージインテンシファイア、コンピューテッドラジオグラフィ(CR)、フラットパネルディテクタ(FPD)等である。
【0038】
X線検出手段3のX線検出素子の配列は、2次元に検出素子が配列されたエリアセンサー方式でもよいし、1次元に検出素子が配列されたラインセンサー方式のX線検出器でもよい。いずれの検出方式を用いるかによって、検査範囲を順次変更する方式は最適化すればよい。エリアセンサー方式を採用する場合はエリアセンサーの検査視野に応じて逐次的に視野を切り替える機構を用意すればよく、ラインセンサー方式を採用する場合は連続的に検査視野を移動させる機構を用意すればよい。
【0039】
なお、X線検出手段3は、たとえばX線フィルムが用いられる場合と比べて現像工程等が不要となり、検査に要する時間が短縮化され得る点から、間接変換方式のFPDであることが好ましい。
【0040】
間接変換方式のFPDは、直接変換方式の検出器と比べて、使用可能温度等の制約がない。そのため、間接変換方式のX線検出器は、取扱性が優れる。さらに、間接変換方式のFPDは、セル方式シンチレータを備えることが好ましい。間接変換方式のFPDにおいては、放射線を可視光に変換するために、シンチレータパネルが使用される。シンチレータパネルは、ヨウ化セシウム(CsI)等のX線蛍光体を含み、放射されたX線に応じて、X線蛍光体が可視光を発光し、その発光をTFT(thin film transistor)やCCD(charge−coupled device)で電気信号に変換することにより、X線の情報をデジタル画像情報に変換する。しかしながら、間接変換方式のFPDは、X線蛍光体が発光する際に、蛍光体自体によって、可視光が散乱してしまう等により、画像の鮮鋭性が低くなりやすい。一方、セル方式シンチレータが採用されたFPDは、隔壁で仕切られたセル内に蛍光体が充填されており、光の散乱の影響を抑え得る。その結果、セル方式シンチレータを具備するFPDは、鮮鋭度が高く、樹脂成形品2中の不純物や空隙を高感度に検出し得る。
【0041】
本発明の検査方法において使用されるX線検出手段3は、大面積かつ高鮮鋭なセル方式シンチレータを容易に形成し得る点から、ガラス粉末を含有する感光性ペーストを用いて、ガラスを主成分とする隔壁をフォトリソグラフィーにより加工して作製されたセル方式シンチレータであることがより好ましい。X線検出手段3のセンサーのピクセルサイズは特に限定されない。一例を挙げると、センサーのピクセルサイズは、20〜300μmであることが好ましい。ピクセルサイズが20μm未満である場合、樹脂成形品2の変形や破壊に寄与しない微小な不純物まで検出し良品を不良品と誤って判断する傾向がある。また、このようなピクセルサイズでは、画像データが膨大となり、信号読み出し、画像処理に要する時間が長くなる傾向がある。一方、ピクセルサイズが300μmを超える場合、不純物等を充分に検出できない可能性がある。
【0042】
画像処理手段4は、X線検出手段3と接続されており、X線検出手段3によって取得される複数のX線検出画像から、前記複数の画像により欠点候補の高さ位置を算出する高さ位置算出手段と、前記高さ位置から欠点候補の良否を判断する選別手段5と、で構成される。
【0043】
画像処理手段4における処理の流れを、
図6を用いて説明する。
図6は、画像処理手段の処理の流れを説明するためのフロー図である。X線検出画像10aはX線照射手段1aから放射されるX線をX線検出手段3で検出した検出画像であり、X線検出画像10bはX線放射手段1bから放射されるX線をX線検出手段3で検出した検出画像である。検出画像は、X線の検出の強弱を輝度値で出力し、X線を強く検出した場所は輝度値が大きく(明るく)、X線を弱く検出した場所は輝度値が小さく(暗く)なる。
【0044】
S101は欠点候補検出手段で、X線検出画像から欠点候補となる領域を検出するものであり、2次元の画像データとして入力されるX線検出画像に対して欠点候補とそうでない部位を切り分けることが可能な明方向の輝度閾値と、暗方向の輝度閾値と満たす面積領域を欠点候補として検出する。検出は複数のX線検出画像のうち少なくとも1つのX線検出画像に対して実施すればよく、本発明の実施例においては、X線放射手段1aにより放射されたX線を検出したX線検出画像10aに対して実施している。なお、欠点候補の検出は閾値を満たす領域を検出面積の大きさで絞りこんでもよいし、検出形状の特徴量で絞り込んでもよい。例えば、欠点となる空隙及び不純物は接合面に沿って一様な方向を向いた細長い形状となることが一般的であるので、検出形状の向き(角度)とその細さ(縦横比)などを特徴量として絞り込んでもよい。また、欠点部位の上下には接合の際に発生するバリの影響で肉厚となり欠点の周囲は暗く検出されるため、輝度閾値での検出に先んじて、空間フィルタなどを用いてもよい。例えば、バリによる暗部の影響を押さえるには、X線検出画像における低周波数成分をカットするハイパスフィルタが有効であるが、この場合は、
図7に示す欠点候補画像の通り、X線検出画像の輝度が急変するバリ部分と通常の高圧タンク部材部分との境界線においても、欠点候補として誤検出領域9が検出される。
【0045】
S102は高さ測定手段であり、複数のX線検出画像に検出された同一点の高さを測定する。この高さ測定の原理に対する理解を深めるため、
図4および
図5を用いて詳しく説明する。
図4は、複数の経路でX線を照射した場合の欠点と非欠点部分のX線検出手段における検出位置の違いを説明するための模式図である。説明を簡便にするため、樹脂成形品2はX線放射手段1側の接合断面部のみを表示している。樹脂成形品2の接合部に接合部の空隙欠点6が存在し、バリ部分にバリ内の空隙7が存在し、さらに樹脂成形品2の表面に基準マーカ8が存在する場合、X線検出器3には、X線放射手段1aから放射されたX線によっては、接合部の空隙欠点6はX線検出器3上のXa1の座標位置に、バリ内の空隙7はXa2の座標位置に、基準マーカ8はXa3の座標位置に撮像され、
図5に示すX線検出画像10aのような画像として検出される。X線放射手段1bから放射されたX線によっては、接合部の空隙欠点6はX線検出器3上のXb1の座標位置に、バリ内の空隙7はXb2の座標位置に、基準マーカ8はXb3の座標位置に撮像され、
図5に示すX線検出画像10bのような画像として検出される。このとき、接合部の空隙欠点6の高さ位置Hd0は、X線放射手段1aおよびからX線放射手段1bからの距離をf、X線放射手段1aとX線放射手段1bとの間隔をwとすると、式1として算出される。
(式1)Hd0=f×w/(|Xa1−Xb1|)
また、バリ内の空隙7の高さ位置Hf0は、式2として算出される。
(式2)Hf0=f×w/(|Xa2−Xb2|)
それぞれの高さ位置HdおよびHfは、X線放射手段からの距離を示す値であるので、樹脂成形品2の表面位置に対してどの程度の高低差があるのかを高さ位置情報として有する必要があるため、本実施例では基準マーカ8の高さ位置を樹脂成形品2の表面位置Hm0として、式3として算出する。
(式3)Hm0=f×w/(|Xa3−Xb3|)
なお、樹脂成形品2の表面位置Hm0は前述の通り基準マーカ8の高さ位置を用いても良いが、前述の通り樹脂成形品の固定位置が機械的に高精度に位置決めされる機構を用意することで、基準マーカ8に類するものを配置せずに、あらかじめ定める高さ位置基準値を設定してもよい。また、高圧タンク用部材樹脂成形品の固定位置の高さ位置を高精度に測定する測定手段を用いて、高さ位置基準値を逐次測定してもよい。測定手段はレーザー三角測量方式変位計、レーザー干渉計、超音波距離計、渦電流方式変位センサー、触針式変位計などが用いられるが、非接触であることや測定対象の材質に影響されにくいこと、および応答速度などの面からレーザー三角測量方式変位計が好適に用いられる。
【0046】
これにより、欠点である接合部の空隙欠点6の樹脂成形品表面からの高さ位置Hd1は式4で求められる。
(式4)Hd1=Hd0−Hm0
同じように、欠点ではないバリ内の空隙7の樹脂成形品表面からの高さ位置Hf1は式5で求められる。
(式5)Hf1=Hf0−Hm0
この高さ測定処理を逐次的に実行するため、本発明の実施形態においてはステレオマッチング法と呼ばれる手法による処理を実行する。本処理はブロックマッチング法とも称され、複数の異なる視点で撮像された画像を用いて、撮像された画像間での同一点の撮像位置のズレ(視差)から高さ位置情報を算出するに際して一般的に採用されている手法であるので詳細の説明は割愛するが、一方の画像において注目画素を中心とした予め定める縦横一定サイズの画像ブロックを最初に設定し、他方の画像において正規化相関法などの画像の類似度算出手法によって一方の画像と他方の画像との類似度が最も高まる位置を求め、その位置を紐付ける両画像の座標位置情報から、高さ情報を逐次的に算出する手法である。この手法によって算出された高さ情報に対して、基準マーカ8に対応する部位の高さをHm0として取得し、視差を算出した画像全域からHm0を差分すると、基準マーカ8よりも高い位置、すなわち樹脂成形品2における基準マーカ8が存在する表面よりもX線検出手段3側にある高さ部位は正の値を持つ高さ情報が出力され、基準マーカ8よりも低い位置、すなわち樹脂成形品2における基準マーカ8が存在する表面よりもX線放射手段1側にある高さ部位は負の値を持つ高さ情報が出力されるため、そこから検査すべき領域の方向である正の値を持つ高さ領域の情報だけを出力すると、ステレオマッチング画像12が出力される。本発明の実施例においては、ステレオマッチング画像12においては、基準マーカ8に対応する部分は高さゼロとなり、接合部の空隙欠点6やバリ内の空隙7、およびX線検出画像1aにおける輝度の急変部分に対応する誤検出領域9を包括するブロック領域の一部で高さが出力される結果となっている。なお、ステレオマッチング法による高さ測定を行うにあたっては、欠点候補となる領域がより検出されやすいように、X線検出画像10aならびにX線検出画像10bに対して前処理を行っても良い。例えば、あらかじめ定める明方向もしくは暗方向の閾値を満たす領域を検出面積の大きさで絞りこんでもよいし、検出形状の特徴量で絞り込んでもよい。例えば、欠点となる空隙及び不純物は接合面に沿って一様な方向を向いた細長い形状となることが一般的であるので、検出形状の向き(角度)とその細さ(縦横比)などを特徴量として絞り込んでもよい。また、欠点部位の上下には接合の際に発生するバリの影響で肉厚となり欠点の周囲は暗く検出されるため、輝度閾値での検出に先んじて、空間フィルタなどを用いてもよい。例えば、バリによる暗部の影響を押さえるには、X線検出画像における低周波数成分をカットするハイパスフィルタが有効である。
【0047】
S103は画像演算手段である。欠点候補検出手段(S101)により生成された欠点候補画像11と、高さ測定手段(S102)で生成されたステレオマッチング画像12の論理積を算出することで、欠点候補の高さ位置算出画像13を得る。
【0048】
S104は選別手段である。
図1、11〜14における符号5は、画像処理手段4の一部である選別手段(S104)を表す。選別手段(S104)は、画像演算手段(S103)で演算された欠点候補の高さ位置算出画像13に対して、欠点候補の高さ測定値の情報から欠点候補が欠点であるか否かを選別する。具体的には、あらかじめ定める高さ閾値として、高さ上限値と下限値を設定し、この閾値の範囲内となる高さ測定値を有する欠点候補を、接合部に発生した欠点と判断し、この閾値の範囲内となる高さ測定値を有する欠点候補を、接合部の上下に存在するバリ内に存在する空隙や不純物、もしくは誤検出であると判断する。閾値としては、樹脂成形品の接合部の肉厚設計値を元にした上限値と下限値とが好適に用いられる。
【0049】
なお、前記選別手段(S104)は、X線放射手段1から樹脂成形品2までの距離を設定する距離設定手段と、前記距離と樹脂成形品の厚みとから検査範囲を設定する検査範囲設定手段と、検査範囲に欠点候補が含まれる場合に欠点と判断する欠点判断手段により構成しても良い。
【0050】
距離設定手段は、X線放射手段1から樹脂成形品2の表面までの距離Hm0を設定する。距離の設定は、樹脂成形品2の表面の固定位置がHm0に機械的に高精度に位置決めされる機構により設定しても良いし、X線放射手段1と樹脂成形品の間の距離を測定した結果をHm0として設定しても良いし、前述する基準マーカ8のステレオマッチング法により算出される高さ値をHm0として設定しても良いし、レーザー三角測量方式変位計、レーザー干渉計、超音波距離計、渦電流方式変位センサー、触針式変位計などの測定器を用いて測定した値をHm0として設定してもよい。非接触であることや測定対象の材質に影響されにくいこと、および応答速度、などの面からレーザー三角測量方式変位計による測定が好適に用いられる。また、より具体的には、距離設定手段はX線放射手段1から樹脂成形品2までの距離目標値を入力する距離入力手段と、X線放射手段1から樹脂成形品2までの距離を測定する距離測定手段と、距離入力手段の入力値と距離測定手段での測定値の差に応じて、距離が入力値と同じとなるように補正する距離補正手段とで構成してもよい。
【0051】
この場合、距離入力手段は、例えば撮影倍率が一定となるようにX線放射手段1から樹脂成形品2までの距離の目標値をHm0として入力する。距離測定手段はX線放射手段1と樹脂成形品2間の距離を測定するもので、前述するステレオマッチング法により算出される基準マーカ8の高さ値を測定値として用いても良いし、レーザー三角測量方式変位計、レーザー干渉計、超音波距離計、渦電流方式変位センサー、触針式変位計などの測定器を用いて測定した値を測定値として用いてもよい。非接触であることや測定対象の材質に影響されにくいこと、および応答速度、などの面からレーザー三角測量方式変位計による測定が好適に用いられる。
【0052】
距離補正手段は、距離入力手段の入力値と距離測定手段での測定値の差に応じて、距離が入力値と同じとなるように補正するが、X線放射手段1とX線検出手段3との間を最短距離で結ぶ光軸に対して平行な移動方向を有する1軸移動機構によって樹脂成形品2を移動させることで実現しても良い。
【0053】
検査範囲設定手段は、接合部の肉厚設計値から検査範囲の上限値と下限値を求めて設定する。具体的には、下限値を欠点が発生しても許容できる樹脂成形品2の表面方向からの深さ許容値を基に設定し、上限値を樹脂成形品2の肉厚設計値と欠点が発生しても許容できる深さ値とから設定する。なお、欠点の見逃し防止のために、検査範囲を肉厚設計値に対して広く取るよう上限値及び下限値を調整しても良い。上限値に対しては閾値を狭くすることが、下限値に対しては閾値を広くすることが、好適に行われる。
【0054】
欠点判断手段は、前述の式4または式5で求められる欠点候補の高さ位置が前述の検査範囲設定手段で定める上限及び下限値の範囲内に含まれているか否かを判断する。欠点はその高さが一定ではなく、形状によってある高さ範囲を有するため、欠点の一部が前述の検査範囲上限及び下限値の範囲内に含まれていれば欠点であると判断するが、欠点の面積が小さい場合や、欠点の高さの勾配が急峻な場合は、欠点の高さ情報に上限値及び下限値の範囲の値を含まない場合があるため、この場合も欠点として判定できるよう、欠点の高さの最大値が上限値より下で、かつ最小値が欠点下限値よりも低い場合も、欠点として判断しても良い。
【0055】
本発明の実施形態においては、誤検出領域9およびバリ内の空隙6はあらかじめ定める高さ上限値を下回るため、欠点と判定されず、接合部の空隙欠点5のみが高さ上限値と下限値の範囲内となったため、欠点として選別され、欠陥の選別結果画像14として出力された。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について、複数のX線放射経路を得るためにX線放射手段1を複数個備えた構成を例にして図面を参照して説明した。本発明は、たとえば次のような変形実施形態を採用することができる。
(1)複数のX線放射経路を得るため、X線放射手段1を、X線検出手段3におけるX線の検出のたびに移動させる構成。模式図を
図11に示す。
図11は、本発明の一実施形態において、X線放射手段を移動させる手段を設けた構成を説明するための模式図である。X線放射手段を移動させる手段は、移動方向がX線検出手段3に対して平行な方向で、かつ接合面に直行する向きとなる構成であることが好ましい。
(2)複数のX線放射経路を得るため、樹脂成形品2を、X線検出手段3における検出のたびに移動させる構成。模式図を
図12に示す。
図12は、本発明の一実施形態において、樹脂成形品2を移動させる手段を設けた構成を説明するための模式図である。樹脂成形品2を移動させる手段は、移動方向がX線検出手段3に対して平行な方向で、かつ到着面に直行する向きにとなる構成であることが好ましい。
【0057】
また、本発明の全ての実施形態は、例えば以下のいずれかのさらなる変形実施形態を組み合わせることもできる。
(1)X線放射手段を、樹脂成形品の内部に挿入した構成。模式図を
図13に示す。X線放射手段が検査対象の樹脂成形品の開口部に対して小さい場合、本構成を実現することができる。本構成では、放射されたX線は樹脂成形品の1層のみしか通過しないため、X線放射手段1を樹脂成形品2の外側に設置する場合に比べてノイズが少なく、高精度な検査を実現できる。
(2)X線検出手段を、樹脂成形品の内部に挿入した構成。模式図を
図14に示す。X線検出手段が検査対象の樹脂成形品の開口部に対して小さい場合、本構成を実現することができる。本構成においても、放射されたX線は樹脂成形品の1層のみしか通過しないため、X線検出手段3を樹脂成形品2の外側に設置する場合に比べてノイズが少なく、高精度な検査を実現できる。
【0058】
<樹脂成形品の製造装置>
本発明の一実施形態の樹脂成形品の製造装置について説明する。本実施形態の樹脂成形品の製造装置は、上記した樹脂成形品の検査装置による検査手段と、検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別手段と、を含む。以下、詳細に説明する。なお、本実施形態の樹脂成形品の製造装置は、これら検査手段および選別手段を含んでいればよく、他の手段は特に限定されない。そのため、以下に示される他の手段は例示であり、適宜設計変更され得る。
【0059】
(樹脂成形品の作製手段)
本手段は、樹脂成形品の作製手段である。たとえば、樹脂成形品が上記したライナー部材の場合、樹脂成形品の検査装置の実施形態において上記したとおり、ブロー成形、射出成形等によって作製され得る。
【0060】
(検査手段)
本手段は、複数の経路でX線を放射するX線放射手段と、樹脂成形品を透過したX線を検出する少なくとも1つ以上のX線検出手段と、画像処理手段とを備えたものである。検査手段において不純物や空隙等が検出された樹脂成形品は、不良品と判定され、後続の選別手段にて選別されて除去される。
【0061】
(選別手段)
本手段は、検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別するものである。本手段は、選別者によって人為的に実施されてもよく、良品あるいは不良品との情報を保持するコンピュータプログラムと連動する搬送手段によって機械的に行われてもよい。選別手段において選別されなかった良品の樹脂成形品は、高圧タンクの材料として採用され得る。
【0062】
以上、本実施形態の樹脂成形品の製造方法によれば、検査手段において、樹脂成形品に存在する不純物や空隙が適切に検出され得る。また、不純物等が検出された樹脂成形品は、選別工程において選別され、排除され得る。そのため樹脂成形品は、良品のみが選別され得る。選別された樹脂成形品は、後続する工程を経て、高圧タンクが製造され得る。その結果、本実施形態の樹脂成形品の製造方法によれば、不良品である樹脂成形品に対しては後続する工程が省略され得る。また、製造される高圧タンクの歩留りが向上する。
【0063】
<高圧タンクの製造装置>
本発明の一実施形態の高圧タンクの製造装置について説明する。本発明の高圧タンクの製造装置は、上記した樹脂成形品の検査装置による検査手段と、検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別する選別手段と、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用の外層を形成する外層形成手段とを含む。以下、詳細に説明する。なお、本発明の高圧タンクの製造装置は、これら検査手段、選別手段および外層形成手段を含んでいればよく、他の手段は特に限定されない。そのため、以下に示される他の手段は例示であり、適宜設計変更され得る。
【0064】
(樹脂成形品の作製手段)
本手段は、樹脂成形品の作製手段である。たとえば、樹脂成形品が上記したライナー部材の場合、樹脂成形品の検査装置の実施形態において上記したとおり、ブロー成形、射出成形等によって作製され得る。
【0065】
(検査手段)
本手段は、複数の経路でX線を放射するX線放射手段と、樹脂成形品を透過したX線を検出する少なくとも1つ以上のX線検出手段と、画像処理手段とを備えたものであり、樹脂成形品の製造装置の実施形態において上記した検査手段と同様である。
【0066】
(選別手段)
本手段は、検査手段において不良品と判定された樹脂成形品と、良品と判定された樹脂成形品とを区別するものであり、樹脂成形品の製造装置の実施形態において上記した選別手段と同様である。
【0067】
(外層形成手段)
本手段は、良品と判定された樹脂成形品に対し、補強用外層(補強層)を形成するものである。補強層は、検査装置の実施形態において上記したとおり、好適には繊維強化樹脂層であり、1または複数の補強層が樹脂成形品の外表面に設けられる。補強層が設けられた樹脂成形品は、さらに、燃料電池に高圧ガスを供給するための供給系統(弁部材、各種配管系統等)が適宜取り付けられ、高圧タンクとして使用される。
【0068】
以上、本発明の高圧タンクの製造装置によれば、検査装置において、樹脂成形品に存在する不純物や空隙が適切に検出され得る。また、不純物等が検出された樹脂成形品は、選別手段において選別され、排除され得る。さらに、良品と判定された樹脂成形品に対してのみ、補強層が形成される。そのため、本発明の高圧タンクの製造装置によれば、不良品である樹脂成形品に対して補強層が形成されることがないため、たとえば繊維強化樹脂が無駄に使用されることがない。また、製造される高圧タンクの歩留りが向上する。
【0069】
<樹脂成形品>
本発明の樹脂成形品について説明する。本発明の樹脂成形品は、上記した樹脂成形品の製造装置を用いて製造される。以下、詳細に説明する。なお、本発明の樹脂成形品は、これら製造装置を用いていればよく、他の手段は特に限定されない。そのため、以下に示される他の手段は例示であり、適宜設計変更され得る。
【0070】
(樹脂成形品の製造装置)
本装置は、樹脂成形品の製造装置である。上記した樹脂成形品の製造装置と同様である。
【0071】
以上、本発明の樹脂成形品によれば、製造装置において、樹脂成形品に存在する不純物や空隙が適切に検出され得る。また、不純物等が検出された樹脂成形品は、選別手段において選別され、排除され得る。そのため、本発明の樹脂成形品によれば、不良品である樹脂成形品に対して補強層が形成されることがないため、たとえば繊維強化樹脂が無駄に使用されることがない。また、製造される高圧タンクの歩留りが向上する。
【0072】
以上、本発明の樹脂成形品によれば、樹脂成形品は、良品のみが選別され得る。選別された樹脂成形品は、後続する工程を経て、高圧タンクが製造され得る。その結果、本発明の樹脂成形品によれば、不良品である樹脂成形品に対しては後続する工程が省略され得る。
【0073】
<高圧タンク>
本発明の一実施形態の高圧タンクについて説明する。本発明の高圧タンクは、上記した高圧タンクの製造装置を用いて製造される。以下、詳細に説明する。なお、本発明の高圧タンクは、これら製造装置を用いていればよく、他の手段は特に限定されない。そのため、以下に示される他の手段は例示であり、適宜設計変更され得る。
【0074】
(高圧タンクの製造装置)
本装置は、高圧タンクの製造装置である。上記した高圧タンクの製造装置と同様である。
【0075】
以上、本発明の高圧タンクによれば、良品と判定された樹脂成形品に対してのみ、補強層が形成される。そのため、本発明の高圧タンクによれば、不良品である樹脂成形品に対して補強層が形成されることがないため、たとえば繊維強化樹脂が無駄に使用されることがない。
【0076】
<燃料電池車>
本発明の一実施形態の燃料電池車について説明する。本発明の燃料電池車は、上記した高圧タンクを用いる。以下、詳細に説明する。なお、本発明の燃料電池車は、これら高圧タンクを用いていればよく、他の手段は特に限定されない。そのため、以下に示される他の手段は例示であり、適宜設計変更され得る。
【0077】
(高圧タンク)
本タンクは、高圧タンクである。上記した高圧タンクと同様である。
【0078】
以上、本発明の燃料電池車によれば、良品と判定された樹脂成形品に対してのみ、補強層が形成された高圧タンクが用いられる。そのため、本発明の燃料電池車によれば、不良品である高圧タンクが用いられることがないため、たとえば燃料電池車の他の構成部材が無駄に使用されることがない。
高精度で樹脂成形品が良品であるか不良品であるかを検出すること、および、将来変形等が発生し得る樹脂成形品を事前に検出することを可能とするため、複数の部材に分かれた樹脂成形品の接合面の検査において、少なくとも2つ以上の経路で放射されたX線が樹脂成形品を透過した際のX線検出結果から、欠点候補の高さ位置を計測することで、欠点を高精度に検出することのできる樹脂成形品の検査方法および製造方法、樹脂成形品の検査装置および製造装置に関する。