(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6508558
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21V 21/02 20060101AFI20190422BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20190422BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20190422BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20190422BHJP
【FI】
F21V21/02
F21S2/00 630
F16B5/02
F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-176814(P2018-176814)
(22)【出願日】2018年9月21日
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆之
【審査官】
當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−260401(JP,A)
【文献】
特開2002−021816(JP,A)
【文献】
実公平07−001482(JP,Y2)
【文献】
実開昭55−014269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 21/02
F16B 5/02
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に設置する照明器具において、
筐体の左右方向外側に、前記構造体に前記筐体を取り付けるための一対の取付部材を有し、
該一対の取付部材は、筐体取付部と構造体取付部を有し、
該構造体取付部は、前記筐体取付部から正面視で前記筐体の左右方向外側かつ上下方向外側の位置に、正面視で開口が見える方向の構造体取付穴を有し、
前記一対の取付部材の筐体取り付け位置を互いに入れ替えることができることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
構造体に設置する照明器具において、
筐体の横方向に構造体に筐体を取り付けるための一対の取付部材を有し、
該一対の取付部材は、筐体取付部と構造体取付部を有し、
前記筐体取付部は前記筐体の横方向側面に取り付けられており、
前記構造体取付部は前記筐体取付部から前記筐体の後面に平行かつ横方向外側に90度折り曲げられ、さらに正面視で前記筐体の上下方向外側に設けられた位置に構造体取付穴を有し、
前記一対の取付部材の筐体取り付け位置を互いに入れ替えることができることを特徴とする照明器具。
【請求項3】
筐体の両側に左右一対の取付部材を有する照明器具において、
前記取付部材は筐体の側面に固定するための筐体取付部と、
構造体に固定するための構造体取付部とを有し、
前記構造体取付部には、前記筐体に隠れないように前記筐体取付部から正面視で前記筐体の左右方向外側かつ上下方向外側の位置に、構造体取付穴が正面視で開口が見える方向に開けられており、
前記左右一対の取付部材は上下垂直線に対して互いに線対称となる形状であることを特徴とする照明器具。
【請求項4】
前記左右一対の取付部材は、前記筐体に固定された状態において、前記構造体取付部の構造体取付面と前記筐体の後面との間に空間が設けられるように構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載された照明器具。
【請求項5】
前記筐体取付部は筐体の側面に固定されるものであって2個の筐体取付穴を有し、一方の前記筐体取付穴は丸穴であり、他方の前記筐体取付穴は前記丸穴の中心点を中心とした円弧状の長穴で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載された照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関し、特にレトロフィット用途として、旧来の照明器具の取付ピッチに合わせて設置することができる照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明分野において、最近ではLEDを利用した照明器具が普及しているが、以前は白熱ランプや放電ランプを使用した照明が主流だった。例えばトンネル照明においては、高効率・長寿命という特長から低圧ナトリウムランプを使用した照明が多く使用されていた。
【0003】
現在、低圧ナトリウムランプを使用した照明器具が老朽化するに伴い、LED照明器具に置き換えられることが多くなっている。特にトンネル照明では、交通規制を行いながら照明器具交換工事を実施する必要があるため、照明器具取付のためにアンカーボルトを新たに埋め込むなどの工事は少ないほうが好ましい。すなわち新しい照明器具の取付ピッチは旧来の照明器具の取付ピッチと同じである必要がある。
【0004】
旧来の低圧ナトリウムランプを使用した照明器具では、ランプ出力35W、55W、90Wのランプが主に使用されていた。現在のLED照明器具ではLED素子の効率や照射技術が改善されているので、90Wの低圧ナトリウムランプ相当の照明器具でも従来品より小さくできる。従ってLED照明器具の製造コストを考えると、光源モジュールを納める照明器具の筐体を1種類に統一したほうが有利となる。
【0005】
しかしながら旧来の低圧ナトリウムランプを使用した照明器具では、ランプ出力ごとに筐体が異なり、トンネルなどの構造体に取り付けるための取付ピッチは数多く使用されている品種に限っても2種類あった。特にトンネル内壁に直接アンカーボルトを打ち込み、照明器具の取付穴にボルトを通して取り付ける照明器具では、新しい照明器具の取付ピッチを旧来の照明器具の取付ピッチと同じにする必要がある。従って、LED照明器具の筐体を1種類に統一しても、2種類の取付ピッチに対応させる必要がある。
【0006】
従来技術を調べると、構造体の複数の取付ピッチに器具を対応させる技術として次のような方法があった。第1に構造体と器具本体との間にアダプター(台座部)を設け、このアダプターに複数の取付穴及び長穴を設け、さらに調整部材を組み合わせることで、構造体の取付ピッチに合わせてアダプターを固定する方法がある(特許文献1参照)。また、複数種類の構造体取付ピッチに合わせて複数の取付部材を用意する方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平07―001482号公報
【特許文献2】特開2002―021816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の技術をトンネル照明などの照明器具に採用しようとすると、アダプターの構造がかなり複雑になる。アダプターの製造コストは照明器具と比較すれば安価ではあるが、1か所のトンネルに多数設置されるため、アダプターのコストも無視できない。また特許文献2の技術をトンネル照明などの照明器具に採用しようとすると、多数の取付金具を用意する必要があるうえ、その現場で使用された1種類以外の金具を持ち帰る必要があるので無駄が多い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の照明器具は、筐体
の左右方向外側に、
前記構造体に
前記筐体を取り付けるための一対の取付部材を有し、該一対の取付部材は、筐体取付部と構造体取付部を有し、該構造体取付部は、
前記筐体取付部から
正面視で前記筐体の左右方向外側かつ上下方向外側の位置に、
正面視で開口が見える方向の構造体取付穴を有し、前記一対の取付部材の筐体取り付け位置を互いに入れ替えることができることを特徴とする照明器具である。
【0010】
また本発明の請求項2に記載された照明器具は、筐体の横方向に構造体に筐体を取り付けるための一対の取付部材を有し、該一対の取付部材は、筐体取付部と構造体取付部を有し、前記筐体取付部は前記筐体の横方向側面に取り付けられており、前記構造体取付部は前記筐体取付部から前記筐体の後面に平行かつ横方向外側に90度折り曲げられ、さらに正面視で前記筐体の上下方向外側に設けられた位置に構造体取付穴を有し、前記一対の取付部材の筐体取り付け位置を互いに入れ替えることができることを特徴と
する照明器具である。
【0011】
また本発明の請求項3に記載された照明器具は、筐体の両側に左右一対の取付部材を有する照明器具において、前記取付部材は筐体の側面に固定するための筐体取付部と、構造体に固定するための構造体取付部とを有し、前記構造体取付部には、前記筐体に隠れないように前記筐体取付部から正面視で前記筐体の左右方向外側かつ上下方向外側の位置に、構造体取付穴が正面視で開口が見える方向に開けられており、前記左右一対の取付部材は上下垂直線に対して互いに線対称となる形状であることを特徴とする照明器具である。
【0012】
また前記照明器具において、前記左右一対の取付部材は、前記筐体に固定された状態において、前記構造体取付部の構造体取付面と前記筐体の後面との間に空間が設けられるように構成されていてもよい。さらに 前記筐体取付部は筐体の側面に固定されるものであって2個の筐体取付穴を有し、一方の前記筐体取付穴は丸穴であり、他方の前記筐体取付穴は前記丸穴の中心点を中心とした円弧状の長穴で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡素な構造で1種類の取付金具を用いて2種類以上の取付ピッチに対応できる照明器具を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の照明器具の一例を示す正面図。(A)は長尺対応。(B)は短尺対応。
【
図3】本発明の照明器具の一例を示す下面図。(A)は長尺対応。(B)は短尺対応。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお図中の同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、トンネル照明器具1の設置状態を示す図である。
図1に示すように、トンネル照明器具1は、道路11が延びるトンネル10の壁面又は天井面(本実施形態では天井面)に、道路11に沿って所定間隔で設置される。道路11は、平行に延びる2本の車道外側線12A、12Bで路面12が区画されている。本実施形態では、トンネル照明器具1は、直近側(手前側)の車道外側線12Aから幅L1だけ路面12に進入した位置に、灯具直下軸Kが遠方側(手前側と反対側)の車道外側線12Bから幅L2だけ手前側に位置する姿勢でトンネル10の天井面に設置されている。なお、本明細書では、道路11が延びる方向(車両が走行する方向)を縦断方向Jと定義し、この縦断方向Jに直交する方向を横断方向Mと定義する。なお、本例のように、照明器具1がトンネル10の片側だけに配置される場合、この照明器具1は道路11の横断方向全体にわたって照明できるような配光を有している。
【0017】
図2から
図4に、本発明の照明器具の一例を示す。
図2は正面図であり、(A)は長尺の取付ピッチに対応して組み立てた場合の構成を示し、(B)は短尺対応の場合を示している。
図3は同じ照明器具を
図2における下から見た図であり、
図2と同様、(A)は長尺の取付ピッチに対応して組み立てた場合の構成を示し、(B)は短尺対応の場合を示している。
図4は同じ照明器具を
図2における左側から見た図である。
【0018】
図2に記載されている通り、照明器具1を正面から見て上下左右の方向を、本明細書においては「上」「下」「左」「右」と呼称する。本実施例の照明器具1は左右方向が
図1における縦断方向Jと一致するようにトンネル10などの構造体に設置される。また
図3に記載されている通り、本明細書においては照明器具1を下から見て上方向を「前」、下方向を「後」と呼称する。
【0019】
図2において、2は照明器具1の本体部である筐体であり、3は筐体2の内部に取り付けられている光源(図示しない)から放出される光を外部に出射する照射口である。2aから2dはそれぞれ筐体2の上面、下面、左側面、右側面である。また
図3に記載されている通り、2fは照射口3(
図2参照)を有する筐体の前面であり、2rは筐体の後面を示している。4L4Rは左右一対の取付部材であり、それぞれの取付部材は、ボルトなどを使用して筐体2の側面に固定するための筐体取付部5と、照明器具1をトンネル10などの構造体に固定するための構造体取付部6及び構造体取付穴7を有する。
図4においては筐体2と一方の取付部材4Lのみが見えており、他方の取付部材4Rは取付部材4Lの後ろに重なっているため見えていない。
【0020】
本実施例において、左右一対の取付部材は上下垂直線に対して互いに線対称となる形状である。すなわち
図2において、筐体2を除いて左右一対の取付部材4L4Rの筐体取付部5の取付面同士を接触させると、左右対称の形状となる。
図2(A)においては取付部材4Lを筐体2の左に取り付け、取付部材4Rを筐体2の右に取り付けているため左右の構造体取付穴の間隔が広くなっている。この構成により、取付ピッチが比較的長い旧来の照明器具(例えば取付ピッチ400mmの低圧ナトリウムランプ用)が設置されていた場所に、本照明器具を取り付けることができる。また、
図2(B)のように取付部材4Lを筐体2の右に取り付け、取付部材4Rを筐体2の左に取り付ければ、取付ピッチが比較的短い旧来の照明器具(例えば取付ピッチ300mmの低圧ナトリウムランプ用)が設置されていた場所に、本照明器具を取り付けることができる。このように本発明に係る照明器具は、一対の取付部材4L4Rの筐体取付位置を互いに入れ替えることによって、2種類の構造体取付ピッチに対応できる。
【0021】
また、構造体取付穴7の位置は筐体2の下端すなわち筐体2の下面2bより下側に設けられている。このため
図2(B)に示す通り、正面から見て構造体取付穴7が見えており、取付ピッチが比較的短い旧来の照明器具が設置されていた場所に、構造体のアンカーボルトに合わせて本照明器具を取り付けることができる。
【0022】
本実施例の照明器具を下から見た時の形状は
図3に記載されている通りであり、取付部材4L4Rの構造体取付部6は筐体2の後面2rよりもさらに後ろ側になるように構成されている。そのため左右一対の取付部材4L4Rは、筐体2に固定された状態において、構造体取付部6の構造体取付面と筐体2の後面2rとの間に空間が設けられるように構成されている。このような構造にすることで、筐体2の後面2rが平坦でない場合や後面に何かの部材が固定されている場合にも、それらがトンネル10などの構造体に接触することが無い。また、取付ピッチが比較的短い旧来の照明器具が設置されていた場所に照明器具を六角ナットなどで取り付ける際に、工事が容易となる。逆に構造体取付部6の構造体取付面と筐体2の後面2rとの段差が小さく、両者の間にほとんど空間が設けられない場合には、構造体取付穴7の位置を筐体2の下面2bより十分下側に設けることで、六角ナットやワッシャーが入る寸法に加え、工具を動かす間隔を確保する必要がある。
【0023】
図4に示す通り、本発明に係る取付部材を筐体側面側から見ると、筐体取付部5は筐体取付穴5a5bを有している。筐体取付穴5aは丸穴であり、他方の前記筐体取付穴5bは筐体取付穴5aの中心点を中心とした円弧状の長穴で構成されている。このような構成とすることで、構造体に設置する際に、筐体2と取付部材4L4Rとの固定を少し緩めたうえで筐体2の取付角度を変更・調整することができる。そのため、照明器具を設置する際に、
図1における灯具直下軸Kを所望の位置に正確に合わせることが可能となる。
図4では一方の取付部材4Lを図示しているが、他方の取付部材4Rも同様の構造となっている。
【0024】
以上の通り、本実施例においては正面視で長方形の筐体を有する照明器具について説明したが、筐体の形状はこれに限らず、正面視で正方形でも、円形の両端に平行部を設けた筐体でもよい。
【0025】
本実施例の構造体取付穴は、本実施例では取付部材1個につき1個の長穴で構成されているが、複数の丸穴でもよい。また複数の長穴で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 照明器具
2 筐体
4L,4R 取付部材
5 筐体取付部
6 構造体取付部
7 構造体取付穴
【要約】
【課題】旧来の照明器具が設置されていた場所に代替設置する照明器具において、旧来の照明器具合わせた取付ピッチを採用する必要があるが、旧来の照明器具の取付ピッチが複数存在する場合、それぞれの取付ピッチに合わせた取付部を構成する必要があるため、部材の数が増えてコストと手間が大きくなる。
【解決手段】筐体の両側に左右一対の取付部材4L4Rを有する照明器具において、前記照明器具前記取付部材は筐体に固定するための筐体取付部5と、構造体に固定するための構造体取付部6とを有し、前記構造体取付部には前記筐体に隠れないように前記筐体より正面視でさらに前記筐体の外側に位置する構造体取付穴7を有し、前記一対の取付部材の筐体取り付け位置を互いに入れ替えることができる。
【選択図】
図2