【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を示す。
<実施例1>
実施例1において、原材料等は下記のものを用いた。
リン含有物:流動式焼却炉で得られた下水汚泥焼却灰(成分を
図6に示す)
鉄溶解液:製鋼材料洗浄工程で排出された鉄含有廃塩酸をろ過(ろ紙5C相当)した溶液(成分を
図6に示す)
酸:塩酸(関東化学社製、特級試薬)
廃アルカリ溶液:プリント基板洗浄工程で排出された水酸化ナトリウム(NaOH)廃液(0.5mol)をろ過(ろ紙5C相当)した溶液。
還元剤:アスコルビン酸(和光純薬社製)
リン調整液:リン酸(関東化学社製、EL試薬)を水で0.001mol/Lに希釈したリン酸溶解液。
鉄調整液:塩酸鉄水和物を塩酸に溶解し、10g/Lに調整した鉄溶解液。
アルカリpH調整液:アンモニア溶液(関東化学社製、EL試薬)
【0057】
各工程は下記内容である。
(A0)前処理工程
下水汚泥焼却灰を500g採取してこれを原料とした(成分を
図6に示す)。この原料を70℃に加熱した廃アルカリ溶液5Lへ投入することでリンを抽出し(1回目抽出)、その後下水汚泥焼却灰とリン抽出液とを分離(固液分離)した。その後、新たに廃アルカリ溶液5Lを70℃に加熱し、下水汚泥焼却灰(1回目抽出残渣)を投入してリンを抽出し(2回目抽出)、その後再び固液分離を行い、アルカリ抽出残渣とリン抽出液を得た。アルカリ抽出残渣の成分を
図6に示す。固液分離はろ紙(5C(アドバンテック社製、以下の実施例において同じ))を用いて吸引ろ過を行った。1回目と2回目のリン抽出液は併せて一つのリン抽出液とし、肥料合成材料として利用した。
【0058】
(A1)溶解工程
前処理工程で得られたアルカリ抽出残渣へ塩酸(conc)を300ml加え、0.5時間(室温)撹拌抽出を行った。その後、水を加えて液量3Lに調整した。その後、鉄含有廃塩酸および溶解塩酸中の鉄およびリンの濃度をICP発光分光分析装置(SIIナノテクノロジー社製、以下の実施例において同じ)により定量した。この分析結果を基に、鉄含有廃塩酸を溶解塩酸中のリンのモル濃度比を超えない量を添加し、さらにpH0.6を下回るよう塩酸を添加した。
【0059】
(A2)溶解液分離工程
溶解工程で溶解させた溶解物を、ろ過(ろ紙5A相当)により不溶残渣(廃棄物残渣)とリン酸溶解液とに固液分離し、清澄なリン酸溶解液を得た。
【0060】
(A3)成分調整工程
リン酸溶解液に鉄調整液またはリン酸調整液を加え、FeとPのモル濃度比を1.0:1.0にした。溶解工程では、若干Feの濃度が足りない様調整したため、ICP発光分光分析装置によりリン酸溶解液の鉄およびリンの定量を行い、足りない鉄成分を調整した。この溶解液へ最終的に水および塩酸を加え、5Lの溶液かつpH0.6になるよう調整し、撹拌混合を行った。
【0061】
(A4)加熱工程
リン酸溶解液を70℃に加熱し、30分間保持した。これにより、重合リン酸を加水分解し、オルトリン酸へ変化させた。
【0062】
(A5)還元工程(鉄イオンの価数調整)
用いた鉄含有廃塩酸は多くがFe
2+であったため、リン酸溶解液1Lに対しアスコルビン酸(試薬)を1gの割合で加え、リン酸溶解液中に溶解したFeイオンの多くがFe
2+になるよう調整し、10分間撹拌した。
【0063】
(A6)リン酸鉄生成工程
(A6−1)アルカリ溶液添加
室温度(25℃)において、リン酸溶解液5Lに対し、アンモニア溶液(conc)を撹拌混合しながら加え、pHを1.45にした。pH調整を行うことで、FePO
4が析出した。FePO
4の析出後3時間撹拌し、再度pH1.45に再調整後12時間撹拌することで、均一なリン酸鉄を得た。
(A6−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
pH調整を行い、リン酸鉄析出物の色が十分に均一かつクリーム色(リン酸鉄色)に変化した後、リン酸溶解液5Lへ過酸化水素水10mlを加え混合し、FeイオンをFe
3+に酸化させた。この作業により、2価で存在し沈殿を生成しなかった鉄イオンを3価に変化させ、リン酸鉄の析出割合を高めた。更に空気が混ざるよう撹拌混合を8時間撹拌混合し、リン酸鉄が十分に析出するよう調整した。
【0064】
(A7)不溶物分離工程
リン酸鉄生成工程で処理した処理物を、室温環境下で吸引ろ過器(アドバンテック社製、以下の実施例において同じ)を用いてろ過(ろ紙5A相当)し、約100gのリン酸鉄(水和物)を得た。
【0065】
(A8)洗浄工程
その後、リン酸鉄を塩酸によりpH1.45に調整した水溶液1Lを用いて吸引ろ過洗浄を行い、さらに水2Lにて吸引ろ過洗浄を行った。析出物は80℃で乾燥を行って、リン酸鉄(水和物)を得た(以下「中間物」という)。
【0066】
(A9)再処理工程
得られたリン酸鉄(水和物)の中間物に対して、上記の溶解工程から始まり不溶物分離工程を経て洗浄工程に至る一連の処理をさらに1回繰り返すことで、リン酸鉄中のアルミニウム濃度を低減した。また、再処理工程において、回収したリン酸鉄を溶解し再析出を行う際、リン酸溶解液の濃度が低い場合は回収率が低下する傾向にあるため、試料に対し、酸(conc)と水を一定割合になるよう加え、リン酸鉄の再析出を行った。
【0067】
(A10)精製工程(熱処理・粒径制御・水和物調整)
得られたリン酸鉄水和物を80℃で乾燥させ、粉砕機で粉砕後600℃で焼成を行い、さらに粉砕することでリン酸鉄粉末(以下「結果物」という)を得た。
【0068】
この実施例1で得られたリン酸鉄粉末(結果物)と、先の中間物について、アルミニウムの成分量(wt%)を測定した。結果を
図6に示す。これにより、再処理工程を経ることにより、アルミニウム濃度が低減し、リン酸鉄粉末の純度が上がったことがわかる。
【0069】
また、実施例1のリン酸鉄粉末(結果物)について、比較例1の結果物とともに、X線回折装置(株式会社リガク社製RINT-2000)により、X線回折測定を行った。
比較例1は、実施例1のうち加熱工程(A4)を行わない、即ち、オルトリン酸化処理を行わない処理方法である。
実施例1のリン酸鉄粉末(結果物)についての結果を
図7(a)に、比較例1の結果物についての結果を
図7(b)に示す。このX線回折測定の結果、加熱工程を行わない比較例1の場合、即ち、オルトリン酸(PO
43-)の形に変化させずリン酸鉄を合成した場合、FePO
4の単相は析出せず、FePO
4と異なる不定比組成のリン酸鉄が生じていることが示された。そのため、オルトリン酸化処理を行うことにより、リン酸鉄(FePO
4)の純度を向上させることが分かった。
【0070】
<実施例2>
上記実施例1の前処理工程(A0)を行わずに、下水汚泥焼却灰の原料を最初から酸溶液で溶解する溶解工程(A1)からスタートし、他の工程は実施例1と同様にした。尚、再処理工程(A9)において、酸の量は、試料100gに対して60ml添加した。
そして、この実施例2のリン酸鉄粉末(結果物)について、X線回折測定を行った。結果を
図8に示す。このX線回折測定の結果、20°付近ほかの回折ピークがはっきりとし、単一相のリン酸鉄の結晶性を向上させることが分かった。
【0071】
<実施例3>
実施例3において、アルカリpH調整液としてアンモニア溶液に代えて水酸化ナトリウムの1mol/Lを用いた以外は、実施例1の原材料等は同じものを用いた。
【0072】
各工程は下記内容である。
(B0)前処理工程
実施例1と同様なので説明を省略する。
(B1)溶解工程
前処理工程で得られたアルカリ抽出残渣に塩酸(conc)を60ml加え、さらにpH0.6を下回るよう塩酸を添加し、約75℃(±5)で加熱し、0.5時間撹拌溶解した。即ち、実施例1,2と異なって、加熱工程(A4)がなく、加熱処理をこの溶解工程で行ったものである。これにより、オルトリン酸化処理が行われる。
その後、水を加え、鉄含有廃塩酸および鉄調整液を加え総液量1Lに調整した。また、溶解塩酸中の鉄およびリンの濃度をモル濃度比で1:1になるよう調整した。調整の際、ICP発光分光分析装置を用い定量した。
【0073】
(B2)溶解液分離工程
溶解工程で溶解させた溶解物を、ろ過(ろ紙5A相当)により不溶残渣(廃棄物残渣)とリン酸溶解液とに固液分離し、清澄なリン酸溶解液を得た。
【0074】
(B3)成分調整工程
リン酸溶解液へ鉄調整液を加え、溶液中のPおよびFeのモル濃度比が1.0:1.0になるよう調整し、最終的に水および塩酸を加え、1Lの溶液かつpH0.6以下になるよう調整した。
【0075】
(B4)還元工程(鉄イオンの価数調整)
室温度において、リン溶解液1Lに対しアスコルビン酸(試薬)を1gの割合で加え、10分間撹拌した。
【0076】
(B5)リン酸鉄生成工程
(B5−1)アルカリ溶液添加
室温度(25℃)において、リン溶解液1Lに対しアルカリpH調整液溶液(水酸化ナトリウム)を撹拌混合しながら加え、pH1.6に調整した。その後、3時間撹拌混合した。
(B5−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
リン溶解液1Lへ、過酸化水素水20mlを加え酸化させ、さらに空気が混ざるよう一晩(8時間)撹拌混合した。その際、pHは約1.0へ変化し、最終的にpH1.0になるよう酸を添加し調整した。
【0077】
(B6)不溶物分離工程
リン酸鉄生成工程で処理した処理物を、室温度で、吸引ろ過器を用いてろ過し、リン酸鉄を得た。
【0078】
(B7)洗浄工程
その後、リン酸鉄を、塩酸によりリン酸鉄析出時のpHに調整した水溶液(pH1.0)をそれぞれ200ml×2回用いて洗浄し、その後水200ml×2回にて洗浄した。
【0079】
(B8)再処理工程
この実施例では、再処理工程は行わなかった。
(B9)精製工程(熱処理・粒径制御・水和物調整)
80℃で脱水乾燥し、その後、遊星型ボールミル(レッチェ製、以下の実施例において同じ)にて粉砕し、105℃で乾燥して、粉末状のリン酸鉄水和物を得た。
【0080】
<実施例4>
実施例4は、アルカリpH調整液として水酸化ナトリウムの1mol/Lを用い、実施例3と略同様の処理を行った。実施例3と異なって、リン酸鉄生成工程(B5)の処理を以下のように行った。
(B5−1)アルカリ溶液添加
室温度(25℃)において、リン溶解液1Lに対しアルカリpH調整液溶液(水酸化ナトリウム)を撹拌混合しながら加え、pH1.8に調整した。その後、3時間撹拌混合した。
(B5−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
リン溶解液1Lへ、過酸化水素水を加えて酸化させ、さらに空気が混ざるよう撹拌混合を一晩(8時間)撹拌混合した。その際、pHは約1.2へ変化し、最終的にpH1.2になるよう酸を添加し調整した。
他の処理は、実施例3と同様である。
【0081】
実施例3及び4においては、要するに、アルカリpH調整液として水酸化ナトリウムを用いたものにおいて、実施例3は、リン酸鉄生成工程での最終のpHを、pH=1.0にし、実施例4は、リン酸鉄生成工程での最終のpHを、pH=1.2にしたものである。これら、実施例3及び4におけるアルカリ抽出残渣の塩酸溶解ろ過液,これに鉄含有廃塩酸を加えた鉄添加塩酸溶解ろ過液,最終の結果物について、成分分析を行った。実施例3に係る結果を
図9(a)に、実施例4に係る結果を
図9(b)に示す。
この結果から、室温(20℃)pH1.2前後で析出させたリン酸鉄中のアルミニウム濃度が低く、最適な析出pHであった。また、pHを1.0前後で析出した場合も、合成したリン酸鉄(FePO
4)中のアルミニウム(Al)含有量を1wt%以下に低減することが可能であった。また、酸濃度が低いpH1.0に比べpH1.2のアルミニウム(Al)の共析または付着量が低い傾向がみられるが、単にpHが低すぎるとFePO
4の析出量が減り、相対的にアルミニウム(Al)濃度が高まっているため、その傾向を示していると言える。しかしながら、pH1.2付近の低いpH域において、十分にアルミニウム(Al)ほかの不純物含有量の低減が可能であるということがいえる。
【0082】
<実施例5>
実施例5は、アルカリpH調整液としてアンモニア(NH
4OH)を用い、実施例3と略同様の処理を行った。実施例3と異なって、リン酸鉄生成工程(B5)の処理を以下のように行った、
(B5−1)アルカリ溶液添加
室温度(25℃)において、リン溶解液1Lに対しアルカリpH調整液溶液(アンモニア)を撹拌混合しながら加え、pH1.6に調整した。その後、3時間撹拌混合した。
(B5−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
リン溶解液1Lへ、過酸化水素水20mlを加え酸化させ、さらに空気が混ざるよう撹拌混合を一晩(8時間)撹拌混合した。その際、pHは約1.0へ変化し、最終的にpH1.0になるよう酸を添加し調整した。
他の処理は、実施例3と同様である。
【0083】
<実施例6>
実施例6は、アルカリpH調整液としてアンモニア(NH
4OH)を用い、実施例3と略同様の処理を行った。実施例3と異なって、リン酸鉄生成工程(B5)の処理を以下のように行った。
(B5−1)アルカリ溶液添加
室温度(25℃)において、リン溶解液1Lに対しアルカリpH調整液溶液(アンモニア)を撹拌混合しながら加え、pH1.6に調整した。その後、3時間撹拌混合した。
(B5−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
リン溶解液1Lへ、過酸化水素水を加え酸化させ、さらに空気が混ざるよう撹拌混合を一晩(8時間)撹拌混合した。その際、pHは約1.2へ変化し、最終的にpH1.2になるよう酸を添加し調整した。
他の処理は、実施例3と同様である。
【0084】
<実施例7>
実施例7は、実施例6において、再処理工程(B8)を行ったものである。再処理工程(B8)は以下のように行った。
(B81)溶解工程
アンモニア(NH
4OH)を添加してpH1.2にして得られたリン酸鉄粉末を100g採取し、塩酸60mLを加え70℃で加熱溶解を行った。
(B82)溶解液分離工程
再溶解の際に発生した不溶解残渣をろ過(ろ紙5C相当)により分離し、清澄なリン酸溶解液を得た。
【0085】
(B83)加熱工程
70℃で30分間加熱した。溶解工程で加熱処理してオルトリン酸化処理を行っているが、更にこの加熱工程で加熱を行って十分にオルトリン酸化を行った。
(B84)成分調整工程
鉄調整液およびリン調整液により、組成比P:Fe=1.0:1.0のモル比に調整した。
(B85)還元工程(鉄イオンの価数調整)
アスコルビン酸(試薬)を1gの割合で加え撹拌した。
【0086】
(B86)リン酸鉄生成工程
(B86−1)アルカリ溶液添加
アルカリ溶液(NaOH 1mol/L)でpH1.2に調整した。その後、12時間撹拌した。
(B86−2)酸化処理(鉄イオンの価数を3価へ調整)
リン溶解液へ過酸化水素水を1ml加え、30分さらに撹拌を行った。
【0087】
(B87)不溶物分離工程
リン酸鉄生成工程で処理した処理物を、吸引ろ過器を用いてろ過し、リン酸鉄を得た。
(B88)洗浄工程
その後、リン酸鉄を、pH1.1に調整した洗浄溶液を用いて200ml×2回洗浄し、更に、純水200ml×2回洗浄して精製リン酸鉄(FePO
4)を得た。
他の処理は、実施例6と同様である。
【0088】
実施例5〜7においては、要するに、アルカリpH調整液としてアンモニアを用いたものにおいて、実施例5は、リン酸鉄生成工程での最終のpHを、pH=1.0にし、実施例6は、リン酸鉄生成工程での最終のpHを、pH=1.2にし、実施例7は、実施例6に再処理工程を加えて行うとともに再処理工程でのリン酸鉄生成工程において最終のpHを、pH=1.0にしたものである。これら、実施例5及び6におけるアルカリ抽出残渣の塩酸溶解ろ過液,これに鉄含有廃塩酸を加えた鉄添加塩酸溶解ろ過液,最終の結果物について、成分分析を行った。また、実施例7の最終の結果物について、成分分析を行った。実施例5に係る結果を
図10(a)に、実施例6に係る結果を
図10(b)に、実施例7に係る結果を
図10(c)示す。
この結果から、アンモニア(NH
4OH)水溶液でpH調整した後、再処理工程で水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液でpH調整を行っても、加熱および酸化還元工程を経ることで、リン酸鉄の析出は可能であることがいえる。また、再析出工程でpH1.2に調整し、リン酸鉄を析出させた場合、さらにアルミニウム(Al)不純物の含有量を低減することができるといえる。
【0089】
<実施例8>
実施例8において、原材料等は下記のものを用いた。
リン含有物:リン酸亜鉛化成処理工程排出スラッジを焼成し、含有油分を炭化した焼成塗装スラッジ
酸:硝酸(関東化学社製、特級試薬)
アルカリpH調整液:アンモニア(NH
4OH)(関東化学社製、EL試薬)
リン調整液:リン酸(関東化学社製、EL試薬)を水で1:100に希釈したリン酸溶解液
鉄調整液:硝酸鉄(II)水和物をリン酸とのモル比が1:1になる量をビーカーへ採取し、6mol硝酸を撹拌しながら添加し、溶解に必要な最少量の硝酸を加え溶解した鉄溶解液
【0090】
各工程は下記内容である。
(C1)溶解工程
焼成塗装スラッジ100gに硝酸(conc)を300ml加え、8時間撹拌溶解した。その際、最初の1時間は反応熱に加え80℃になるよう加熱し、残りの7時間は室温で撹拌溶解した。試料へ硝酸を加えて溶解する際、硝酸が激しく発熱反応しNOxが発生した。これにより、オルトリン酸化処理が行われた。その後、水を加え総液量2Lに調整した。
【0091】
(C2)溶解液分離工程
溶解工程で溶解させた溶解物をろ過(ろ紙5C相当)し、リン酸溶解液を得た。
(C3)成分調整工程
このリン酸溶解液へ、リン調整液または鉄調整液を加え、溶液中のPおよびFeのモル濃度比が1.0:1.0になるよう調整した。この状態では、2Lに調整した液量を若干超えた液量となった。
【0092】
(C4)リン酸鉄生成工程
温度(25℃)において、アルカリpH調整液溶液(NH
4OH)を撹拌混合しながら加え、pH2.0に調整した。その後、6時間撹拌熟成した。これにより、酸化剤を添加することなく、熟成時の撹拌による空気酸化により、鉄の価数が3価になり、リン酸鉄水和物の析出が促進された。
【0093】
(C5)不溶物分離工程
リン酸鉄生成工程で処理した処理物から不溶物であるリン酸鉄をろ過により取り出した。
(C6)洗浄工程
リン酸鉄を、硝酸によりリン酸鉄析出時のpHに調整した水溶液(pH2.0)をそれぞれ1L×2回用いて洗浄し、その後水1L×2回にて洗浄した。
【0094】
(C7)再処理工程
得られたリン酸鉄(中間物)を再び酸溶解し、再析出精製を実施した。その際、pH調整はpH1.6に調整しリン酸鉄を得た。
(C8)精製工程
得られたリン酸鉄を脱水乾燥し、さらに600℃で3時間焼成し、リン酸鉄粉末(以下「結果物」という)を得た。
【0095】
この実施例8で用いた焼成塗装スラッジ,得られたリン酸鉄粉末(結果物)、先の中間物について、亜鉛の成分量(w%)を測定した。結果を
図11に示す。この結果から、亜鉛を含む溶解液においてpH2.0以下でリン酸鉄を析出し、再処理工程(再結晶)を経ることで、亜鉛の含有量を低減することが可能ということがいえる。
また、実施例8のリン酸鉄粉末(結果物)について、X線回折測定を行った。結果を
図12に示す。この結果から不純物を含まない、FePO
4の単結晶または水和物を含む単結晶が得られていることがいえる。
【0096】
<試験例>
上記の実施例1で得られたリン酸鉄を用いて、オリビン型リン酸鉄リチウムを合成し、これから、ラミネート型リチウムイオン二次電池(単セル)を作成して、定電流充放電測定を行い、性能を見た。結果を
図13に示す。この結果から、リチウムイオン二次電池正極活物質は不純物の混入により容量が低下し極めて敏感であるが、ラミネート型セルで120mAh/gの性能を発揮し、実用化レベルの性能を示していることから、電池材料用途として十分に利用できる高純度なリン酸鉄(リン酸塩)であるということがいえる。
【0097】
尚、上記オルトリン酸化処理は、第一及び第二の実施の形態では、加熱工程での加熱により行い、第三及び第四の実施の形態では、溶解工程での加熱処理で行ったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、リン酸鉄生成工程の前の何れかの工程で行い、あるいは、リン酸鉄生成工程の前に専用の工程を設けて行い、あるいはまた、リン酸鉄生成工程において行うようにして良く、適宜変更して差支えない。
【0098】
また、第一乃至第三の実施の形態では、リン酸鉄生成工程前に、溶解液中に3価で存在する鉄イオンを2価にする還元工程を専用に設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、溶解液中の鉄イオンがほとんど2価(Fe
2+)の鉄イオンの場合には特に設けることなく、酸化処理のみでもよく、適宜変更して差支えない。
【0099】
尚また、再処理工程は、前に行った溶解工程から不溶物分離工程に至る一連の処理と全く同じにして行っても良く、また、目的とする処理効果が得られるのであれば工程の内容を変えて行っても良く、適宜変更して差支えない。