(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について説明する前に、まず、比較例にかかるマーカ検出方法について説明する。この比較例にかかるマーカ検出方法では、ARToolKitと呼ばれる技術が用いられ、カメラの撮影画像からマーカが検出される。この方法では、
図15に示すような、白色の正方形の枠線の中に、黒色の正方形の形状をした2次元マーカが使用される。この方法では、2次元マーカを検出するために、この2次元マーカをカメラによって撮影した画像の全体が2値化される。これにより、元の画像で黒く表されていた部分が白く表わされ、元の画像で白く表されていた部分が黒く表わされた画像が得られる。次に、得られた画像の左上から白い塊が探索される。そして、白い塊が発見されると、その付近の部分画像に対しパターンマッチング処理が行わる。これによってマーカが検出される。しかしこの方法では、マーカではないものの白い塊として表された部分に対し、パターンマッチング処理が行われる可能性が高くなる。カメラで撮影された画像に黒色の箇所(すなわち、2値化した画像において白い塊として表れる箇所)が多いほど、パターンマッチング処理が増え、計算負荷が大きくなる。また、2次元マーカは、色が白黒であるため、2次元マーカが暗い場所などに設置された場合、検出が難しくなるという課題もある。
【0015】
<実施の形態の概要>
次に、実施の形態について説明する。まず、実施の形態の詳細な説明に先立って、本発明にかかる実施の形態の概要を説明する。
図1は、実施の形態にかかる伝送システム1の概要構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、伝送システム1は、発光マーカ装置10と、マーカ検出装置20とを含む。伝送システム1は、発光マーカ装置10によって表示されるマーカをマーカ検出装置20が検出し、マーカ検出装置20がマーカに応じた情報の出力を行うシステムである。
【0016】
発光マーカ装置10は、発光部11と発光制御部12とを有する。発光部11は、複数の発光パターンで発光可能であり、発光部11の各表示態様がそれぞれマーカをなす。発光制御部12は、所定のフレームレートで、複数の発光パターンのうちのいずれかの発光パターンによるフレームの表示を発光部11が行うよう制御する。なお、発光パターンには、発光が行われない無発光状態が含まれる。
【0017】
ここで、発光部11は、発光制御部12の制御の下、検出フレーム、情報伝達フレーム、及び終了フレームの3種類のマーカを表示する。検出フレームは、マーカ検出装置20がマーカの位置を検出するために用いられるフレームである。また、情報伝達フレームは、マーカ検出装置20に情報を送信するためのフレームである。換言すると、情報伝達フレームは、マーカ検出装置20が、検出したマーカから情報を読み取るためのフレームである。また、終了フレームは、マーカ検出装置20に情報の送信の完了を通知するためのフレームである。
【0018】
発光制御部12は、検出フレームの第1の発光パターンでの発光、検出フレームの第2の発光パターンでの発光、情報伝達フレームの所定の発光パターンでの発光、終了フレームとしての無発光を、順に、繰り返して発光部11に行わせるよう制御する。なお、第1の発光パターンと第2の発光パターンは異なる。
【0019】
マーカ検出装置20は、
図1に示されるように、画像取得部21と、マーカ認識部22と、情報出力部23とを有する。画像取得部21は、発光マーカ装置10の発光部11を撮影した画像を取得する。マーカ認識部22は、差分画像生成部221と、探索部222と、パターン解析部223とを含む。
【0020】
差分画像生成部221は、画像取得部21により取得された連続する2つの画像の差分画像を生成する。探索部222は、生成された差分画像に基づいて、画像内における発光部11の存在範囲を探索する。パターン解析部223は、差分画像の生成に用いられた連続する2つの画像の後に撮影された画像における、上述の存在範囲に属する部分画像に対し、予め定められたパターン画像とのマッチング処理を行う。情報出力部23は、パターン解析部223によるマッチング処理結果に応じた情報を出力する。
【0021】
伝送システム1によれば、発光マーカ装置10は、上述のとおり、発光パターンを変化させつつ連続的にマーカを表示する。そして、マーカ検出装置20は、発光部11を撮影した画像の差分画像を生成する。差分画像では、変化のない背景画像部分が失われ、変化のある発光部11の画像部分が抽出される。このため、画像内のどの位置に発光部11が存在するのかを容易に特定することが可能となる。したがって、パターンマッチング処理を行う対象の部分画像を容易に正確に特定することができる。このことは、マーカを含まない部分画像に対してパターンマッチング処理が行われることを抑制することができる。すなわち、伝送システム1によれば、マーカを検出するための画像処理の計算負荷を抑制することができる。
【0022】
<実施の形態の詳細>
次に実施の形態の詳細について説明する。
図2は、複数の発光マーカ装置10と複数のマーカ検出装置20とを有する伝送システム1について示す模式図である。
図2に示されるように、伝送システム1は、複数の発光マーカ装置10を含んでもよいし、複数のマーカ検出装置20を含んでもよい。
図2では、3つの発光マーカ装置10と3つのマーカ検出装置20とが示されているが、これらの数は一例であり、伝送システム1は、1以上の発光マーカ装置10と1以上のマーカ検出装置20とを含めばよい。
【0023】
なお、本実施の形態では、
図2に示されるように、マーカ検出装置20は、カメラ201と、ディスプレイ202とを有しており、例えば、スマートフォンなどのモバイル端末である。したがって、本実施の形態では、上述の画像取得部21がカメラ201により撮影した画像を取得し、上述の情報出力部23がディスプレイ202に情報を表示出力するものとして説明する。なお、これらは一例であり、画像取得部21は、カメラを備えた他の装置からマーカ検出装置20に伝送された画像を取得してもよい。この場合、マーカ検出装置20はカメラ201を備えていなくてもよい。また、情報出力部23は、表示出力に限らず、音声出力などの任意の出力を行ってもよい。
【0024】
図3は、実施の形態にかかる発光マーカ装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。発光マーカ装置10は、発光部11、メモリ101、及びプロセッサ102を含む。
【0025】
発光部11は、
図4に示されるようなドットマトリクスLED(Light Emitting Diode)であり、その発光パターンは、発光制御部12によって自由に制御可能である。なお、そのようなLEDの一例としては、ParaLight社製のA−3880EGが挙げられるが、これに限られない。本実施の形態では、
図4に示すように、ARToolKitにおける2次元マーカと同程度の検出距離を可能にする為に、LEDの個数が8×8のものが用いられている。なお、LEDの個数については、一例であり、使用するLEDのサイズ等に応じて任意に変更可能である。
【0026】
メモリ101は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ101は、プロセッサ102から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ102は、図示されていない入出力インタフェースを介してメモリ101にアクセスしてもよい。メモリ101は、プロセッサ102により実行されるソフトウェア(コンピュータプログラム)などを格納するために使用される。
【0027】
プロセッサ102は、メモリ101からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、発光制御部12を実現する。このように、発光マーカ装置10は、コンピュータとしての機能を備えている。プロセッサ102は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU、又はCPUであってもよい。プロセッサ102は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0028】
発光マーカ装置10は、例えば、美術館等の屋内の展示品の付近に予め設置されている。発光マーカ装置10は、予め設定された発光パターンにより、検出フレーム、情報伝達フレーム、及び終了フレームの表示を繰り返す。発光マーカ装置10の表示の具体例については、後述する。
【0029】
図5は、実施の形態にかかるマーカ検出装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。マーカ検出装置20は、カメラ201、ディスプレイ202、メモリ203、及びプロセッサ204を含む。
【0030】
カメラ201は、レンズ、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備えるデジタルカメラである。
【0031】
ディスプレイ202は、任意の画像を表示する表示装置であり、例えば液晶ディスプレイであってもよいし、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイであってもよい。
【0032】
メモリ203は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ203は、プロセッサ204から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ204は、図示されていない入出力インタフェースを介してメモリ203にアクセスしてもよい。メモリ203は、プロセッサ204により実行されるソフトウェア(コンピュータプログラム)、カメラ201により撮影された画像、マーカに応じて表示出力される情報等のデータなどを格納するために使用される。
【0033】
プロセッサ204は、メモリ203からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、画像取得部21、マーカ認識部22、及び、情報出力部23を実現する。このように、マーカ検出装置20は、コンピュータとしての機能を備えている。プロセッサ204は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU、又はCPUであってもよい。プロセッサ204は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0034】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0035】
次に、発光マーカ装置10における発光制御部12による発光部11の制御について説明する。本実施の形態では、マーカ検出装置20のカメラ201の撮影フレームレートが最も汎用的である30FPS(Frames Per Second)であると想定して、発光制御部12は30FPSで発光部11にフレームの表示を行わせる。このように、本実施の形態では、カメラ201の撮影フレームレートと、発光部11の表示のフレームレートとが同じである。
図6は、発光部11の発光パターンの時間推移の一例を示すタイムチャートである。上述の通り、発光制御部12の制御に従い、発光部11は、検出フレーム、情報伝達フレーム、終了フレームの順に、表示を行い、終了フレームの表示後、再び、検出フレーム、情報伝達フレーム、終了フレームの順に、表示を行う。すなわち、発光部11は、一連の表示を繰り返す。上述の通り、30FPSで表示が行わるため、発光制御部12は、1フレームあたり33ミリ秒の表示を行うよう発光を制御する。
【0036】
図6に示されるように、発光制御部12は、発光パターン51で検出フレームを発光部11に表示させた後、発光パターン52で検出フレームを発光部11に表示させる。ここで、発光制御部12は、発光パターン51での発光及び発光パターン52での発光が、それぞれ1フレームとなるよう制御する。このようにすることで、カメラ201の撮影フレームレートと、発光部11の表示のフレームレートとが同期していない場合であっても、すなわち、両者のタイミングが異なる場合であっても、カメラ201のシャッタースピードに依らず、カメラ201は、検出フレームとして、異なるパターンの連続する2枚の画像を撮影することができる。つまり、この連続する2枚の画像の差分画像において、発光部11の表示を残存させることができる。したがって、マーカ検出装置20は、カメラ201の撮影フレームレートと、発光部11の表示のフレームレートとが同期していない場合であっても、カメラ201のシャッタースピードに依らず、発光部11の画像内の位置を検出することができる。
【0037】
これについて、具体的に説明する。例えば、カメラ201が、第1の撮影において、発光パターン51の状態の発光部11を撮影し、第2の撮影において、発光パターン52の状態の発光部11を撮影した場合(すなわち、
図6のように、カメラ201の露光時間Tが、第1の撮影の際、発光パターン51の状態が維持される時間内に収まり、第2の撮影の際、発光パターン52の状態が維持される時間内に収まっている場合)、検出フレームとして、発光パターン51の画像と発光パターン52の画像の2枚が得られる。
【0038】
また、例えば、カメラ201が、第1の撮影において、発光パターン51の状態及び発光パターン52の状態の発光部11を撮影し、第2の撮影において、発光パターン52の状態及び発光パターン53の状態の発光部11を撮影した場合(すなわち、カメラ201の露光時間Tが、第1の撮影の際、発光パターン51の状態と発光パターン52の状態にまたがり、第2の撮影の際、発光パターン52の状態と発光パターン53の状態にまたがっている場合)、検出フレームとして、発光パターン51及び発光パターン52をマージした画像と発光パターン52及び発光パターン53をマージした画像の2枚が得られる。
【0039】
また、例えば、カメラ201が、第1の撮影において、発光パターン55の状態及び発光パターン51の状態の発光部11を撮影し、第2の撮影において、発光パターン51の状態及び発光パターン52の状態の発光部11を撮影した場合(すなわち、カメラ201の露光時間Tが、第1の撮影の際、発光パターン55の状態と発光パターン51の状態にまたがり、第2の撮影の際、発光パターン51の状態と発光パターン52の状態にまたがっている場合)、検出フレームとして、発光パターン55及び発光パターン51をマージした画像と発光パターン51及び発光パターン52をマージした画像の2枚が得られる。
【0040】
発光制御部12は、発光パターン52で検出フレームを発光部11に表示させた後、所定の発光パターンの情報伝達フレームを発光部11に表示させる。なお、情報伝達フレームの発光パターンは、検出フレームの発光パターンとは異なっている。本実施の形態では、発光制御部12は、この所定の発光パターンでの発光において、同一の発光パターンを連続する複数フレームに亘って表示するよう制御する。具体的には、例えば、
図6に示すように、検出フレームである発光パターン53は2フレームに亘って表示され、検出フレームである発光パターン54も2フレームに亘って表示される。このようにすることで、どのタイミングで撮影が行われても、1枚は必ず所定の発光パターンが表された画像が得られることとなる。したがって、発光マーカ装置10は、所定の発光パターンをマーカ検出装置20に伝達することができる。つまり、発光マーカ装置10は、発光パターン53及び発光パターン54をそれぞれ伝達することができる。
【0041】
なお、
図6に示した例では、4点を点灯させる発光パターンである発光パターン53と3点を点灯させる発光パターン54の2種類の発光パターンが、発光マーカ装置10からマーカ検出装置20に伝達されることとなる。このように、伝送システム1は、情報伝達フレームとして表示する発光パターンの種類を変更することで、伝送する情報量を任意に増減することができる。
【0042】
このように、伝送する情報量に応じて、情報伝達フレームの表示時間は可変となる。このため、情報の送信の完了を通知する必要がある。そこで、発光マーカ装置10は、終了フレームの表示を行う。具体的には、発光制御部12は、終了フレームとして、無発光の状態を発光部11に表示させる。ここで、発光制御部12は、終了フレームを複数フレームに亘って表示するよう制御する。具体的には、例えば、
図6に示すように、終了フレームである発光パターン55は2フレームに亘って表示される。このようにすることで、どのタイミングで撮影が行われても、1枚は必ず、何も点灯していない状態の画像が得られることとなる。したがって、マーカ検出装置20は、発光マーカ装置10からの情報の送信の完了を検出することができる。
【0043】
次に、マーカ検出装置20の詳細について説明する。マーカ検出装置20は、カメラ201により、発光マーカ装置10の発光部11を撮影する。そして、発光マーカ装置10から送信された発光パターンに応じて、すなわち、発光マーカ装置10が示すマーカに応じて、
図7に示すように、ディスプレイ202に情報を表示する。
図7に示した例では、対象物60の付近に設置された発光マーカ装置10の発光部11をマーカ検出装置20のカメラ201により撮影した際に、マーカに応じた情報61が、ディスプレイ202に表示された様子を示している。
【0044】
これは、次のようにして行われる。まず、マーカ検出装置20において、カメラ201を使用するための専用のアプリケーションソフトウェアが起動される。起動後、発光マーカ装置10の発光部11が映るようにカメラ201が向けられる。カメラ201により、発光部11が撮影されると、検出されたマーカに応じた情報61がディスプレイ202に表示される。マーカ検出装置20は、このような、マーカ探索と情報の表示を繰り返す。
【0045】
なお、上述の通り、発光マーカ装置10は、伝送システム1において、複数存在し得る。マーカ検出装置20は、これら複数の発光マーカ装置10の発光部11を同時に撮影しても、それぞれについて、個別に認識可能である。また、一つの発光マーカ装置10の発光部11を、複数のマーカ検出装置20のカメラ201でそれぞれ撮影し、それぞれのマーカ検出装置20においてマーカに応じた情報を表示することも可能である。
【0046】
図1に示した通り、マーカ検出装置20は、内部機能として、画像取得部21と、マーカ認識部22と、情報出力部23とを有する。以下、これらの詳細について説明する。
【0047】
画像取得部21は、カメラ201を用い、カメラ201により撮影した画像を共有メモリ(メモリ203)に保存する。カメラ201による撮影は連続的に行われ、共有メモリへの画像の保存も連続的に行われる。
【0048】
図8は、画像取得部21の動作の一例を示すフローチャートである。ステップ10(S10)において、画像取得部21は、カメラ201を起動する。続いて、ステップ11(S11)として、画像取得部21は、撮影して画像データを取得し、共有メモリに保持する。画像取得部21は、ステップ11の動作を繰り返し行い、連続的に画像データを取得する。
【0049】
マーカ認識部22は、画像取得部21が取得した画像から、マーカが存在するかしないかを判定する機能を有する。マーカ認識部22は、上述の通り、差分画像生成部221、探索部222、及びパターン解析部223を有する。
図9は、マーカ認識部22の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図9を参照しつつ、マーカ認識部22の処理について説明する。
図9に示されるように、マーカ認識部22の処理においては、まず、差分画像生成部221の処理が行われ、次に、探索部222の処理が行われ、最後に、パターン解析部223の処理が行われる。
【0050】
差分画像生成部221は、画像取得部21が取得した連続する2枚の画像の差分画像を計算する。このため、まず、ステップ20(S20)において、差分画像生成部221は、共有メモリから画像を2枚取得する。次に、ステップ21(S21)において、差分画像生成部221は、
図10に示すように、ステップ20で取得した2枚の画像の画素の差分を算出し、差分画像を取得する。ここで、
図10は、画像71と画像72との差分をとることで、背景物体73が除去され、差分画像74において、発光部11の発光パターンのみが差分として抽出される様子を示している。なお、ステップ21では、処理負荷を軽減するために、差分画像生成部221は、RGB値の内、例えばR値のみを比較し差分を取る。また、ステップ21において、差分画像生成部221は、得られた差分画像を白黒の2値化画像に変換する。ステップ21の後、処理は、探索部222によるステップ22へ移行する。
【0051】
探索部222は、差分画像に基づいてマーカを探索する。より詳細には、探索部222は、まず、差分画像に基づいて画像内における発光部11の存在範囲を探索する。具体的には、ステップ22(S22)において、探索部222は、誤検出率を抑えるため、予め定められたサイズ(例えば、10ピクセル×10ピクセル)以上の大きさの黒い塊の画素群を探す。このような画素群が発見されれば、この画素群の存在範囲が発光部11の存在範囲であると探索部222は判定する。すなわち、ステップ23(S23)において、探索部222は、黒い塊の画素群が差分画像内に存在するか否かを判定する。黒い塊の画素群が差分画像内に存在しない場合(ステップ23でNo)、処理はステップ20に戻り、共有メモリから画像が2枚取得され、再度同様の処理が行われる。差分画像において発光部11が発見されるまで、これらの処理が繰り返し行われる。黒い塊の画素群が差分画像内に存在する場合(ステップ23でYes)、ステップ24(S24)において、探索部222は、発光部11の存在範囲を保持する。具体的には、探索部222は、メモリ203等にこれを一時的に記憶する。
【0052】
探索部222が差分画像中の発光部11の存在範囲を検出できた場合は、続いて、パターン解析部223によるマーカのパターンの解析が行われる。すなわち、ステップ24の後、処理は、パターン解析部223によるステップ25へ移行する。
【0053】
パターン解析部223は、差分画像の生成に用いられた連続する2つの画像の後に撮影された画像に対し、マーカのパターンを解析する。具体的には、まず、ステップ25(S25)において、パターン解析部223は、情報伝達フレームの発光パターンを取得するため、共有メモリから新たに画像を取得する。本実施の形態では、パターン解析部223は、例えば2枚分の画像を取得する。これにより、パターン解析部223は、情報伝達フレームとして発光マーカ装置10が表示した発光パターンの画像を必ず取得できる。
【0054】
続いて、ステップ26(S26)において、パターン解析部223は、ステップ25で取得した画像に対し、ステップ24で保持された発光部11の存在範囲を含むようにトリミング処理を行う。このようにして、パターン解析部223は、マッチング処理を行う画像の対象範囲を限定している。また、パターン解析部223は、トリミング後の画像についてRGB値をHSV値に変換する。これは、発光している箇所を特定しやすいよう輝度情報を用いてマッチング処理が行われるためである。
【0055】
ステップ26の後、ステップ27(S27)において、パターン解析部223は、ステップ26における処理がなされた画像に対し、予め定められたマーカのパターン画像とのマッチング処理を行う。なお、このマッチング処理は、公知の任意のパターンマッチング処理を用いることができる。画像中において、予め定められたマーカのパターン画像が発見された場合(ステップ28でYes)、ステップ29(S29)において、パターン解析部223は、発見されたパターンに対応するID番号を保持する。具体的には、パターン解析部223は、メモリ203等にこれを一時的に記憶する。その後、処理は、ステップ25に戻り、さらに共有メモリから画像が2枚取得される。すなわち、次の情報伝達フレームのパターンを取得するために、同様の処理が行われることとなる。これに対し、予め定められたマーカのパターン画像が発見されなかった場合(ステップ28でNo)、ステップ30(S30)において、パターン解析部223は、ステップ25で取得された画像が、何も発光させていない終了フレームの画像であると判断する。続いて、ステップ31(S31)において、パターン解析部223は、ここまでで保持されたID番号を情報出力部23に通知する。ステップ31の後、処理は、情報出力部23による処理へと移行する。
【0056】
情報出力部23は、パターン解析部223によるマッチング処理結果に応じたCG(Computer Graphics)等の情報をディスプレイ202に表示出力する。具体的には、情報出力部23は、パターン解析部223から通知されたID番号に対応する情報の表示を行う。
【0057】
図11は、情報出力部23の動作の一例を示すフローチャートである。ステップ40(S40)において、情報出力部23は、探索部222から通知されたID番号に対応する情報を検索する。なお、この情報は例えばメモリ203等に記憶されている。続いて、ステップ41(S41)として、情報出力部23は、ディスプレイ202に、ステップ40で検索された情報を表示する。情報出力部23は、これらの処理を繰り返し行うことで、探索部222から新たなID番号が通知される毎に、ディスプレイ202に表示する情報を更新する。
【0058】
以上、実施の形態について説明した。本実施の形態では、2枚の画像の差分画像から、発光部11の存在範囲が抽出される。そして、この存在範囲に限定して、パターンマッチング処理が行われる。このため、マーカが存在しない部分の画像に対しパターンマッチング処理をする回数を抑制することができ、計算負荷を抑制することができる。
【0059】
ARToolKitにおける2次元マーカでは、単一のパターンのみを表示しているため、単一の情報しか伝達できない。また、屋内の美術館や科学館等では暗い場所が多く、そのような暗い場所ではARToolKitにおける2次元マーカを正しく検出できなかった。これに対し、本実施の形態では、情報伝達フレームにより、任意の情報量を発光マーカ装置10からマーカ検出装置20へと伝送可能である。また、発光によりマーカが示されるので、暗い場所においてもマーカ検出装置20はマーカを認識することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、フレームレートは、30FPSであったが、60FPSなど、他のフレームレートであってもよい。なお、LEDを点滅させると、人の目に付きやすくなり、視覚への影響が出るが、60FPS等のようにフレームレートを大きくすることで、視覚への影響を抑えることができる。
【0061】
また、上記の実施形態では、8×8のドットマトリクスLEDを使用したが、16×16のドットマトリクスLEDなどのように、より多くのLEDを使用して発光部11を構成することも可能である。また、発光部11は、LEDの代わりに、液晶パネルを用いて発光させることも可能である。
【0062】
また、実施の形態で示した発光パターンは、一例であり、発光パターンは種々の変更が可能である。例えば
図12に示されるように、台形のような発光パターンにより情報を表現することも可能である。また、
図13に示されるように、円形のような発光パターンにより情報を表現することも可能である。これら2つの発光パターンの情報伝達フレームを使用した時の発光部11の全体的な発光パターンの時間推移を
図14に示す。このように、発光パターンは、任意に設定可能である。